JP5925190B2 - 水不透過性のセラミック分離膜の製造方法および該製造方法で得られるセラミック分離膜 - Google Patents

水不透過性のセラミック分離膜の製造方法および該製造方法で得られるセラミック分離膜 Download PDF

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Description

本発明は、水不透過性のセラミック分離膜の製造方法及び該製造方法で得られるセラミック分離膜に関する。特に、水(水蒸気を含む)とガス(例えば、水素ガス、酸素ガス、窒素ガス等)とを分離する水不透過性のセラミック製ガス分離膜の製造方法に関する。
なお、本出願は2011年4月11日に出願された日本国特許出願2011−087685号に基づく優先権を主張しており、当該日本国出願の全内容は本明細書中に参照として援用されている。
分離膜は、一般的に複数の細孔を有した多孔質膜であり、この細孔の大きさ(孔径)を調整することによりガスや液体を分離、精製、又は吸着することができる。このため、かかる分離膜は工業的分野を始め様々な分野において広く用いられている。なお、該分離膜はその材質によって有機分離膜と無機分離膜とに分類することができ、それぞれに異なった性質を有している。
有機分離膜は、高分子材料で構成される。このため水不透過性を有し、例えば、水(水蒸気を含む)と所望のガス(例えば、水素ガス、酸素ガス、窒素ガス等)とを分離し、純度の高いガスを得るために好ましく用いることができる。かかる一例として、例えば非特許文献1にはポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる分離膜が開示されている。しかし、該有機分離膜は耐熱性や耐薬品性に乏しいため、高温環境や様々な薬品に晒されるような環境で使用することが難しく、その用途が限定される。一方、無機分離膜は複数の細孔を有するセラミック等の無機多孔質材料(アルミナ(Al)、シリカ(SiO)等)から構成される。かかる無機分離膜は、該細孔の大きさ(孔径)を制御することによって、化合物等の分離や吸着等を選択的に行うことができる。また、無機分離膜は上記有機分離膜に比べ耐熱性や耐薬品性等に優れるため、様々な環境で使用することができる。しかし、無機材料からなる無機分離膜は一般に親水性であり、水透過性を有しているので、上記有機分離膜のように水と所望のガスとを分離することが難しい。
このため、より広範な環境下(例えば高温環境下や様々な薬品に晒される環境下)において、水と所望のガスとを好適に分離し得る分離膜の開発が望まれている。そこで近年、無機分離膜の表面に疎水性を付与することによって、水不透過性のセラミック分離膜を作製する技術の開発が進められている(特許文献1〜3)。例えば非特許文献2には、γ−アルミナからなる無機分離膜の表面を有機クロロシランで修飾した、水不透過性のセラミック分離膜が開示されている。
日本国特許出願公開平02−31824号公報 日本国特許出願公開2002−263456号公報 日本国特許出願公開2006−519095号公報
Mark Stuart. Using Hydrophobic Membranes to Protect Gas Sensors.[online]. Sensors ARTICLE ARCHIVES, May 1998. [retrieved on 2010-08-23]. Retrieved from the Internet:< http://archives.sensorsmag.com/articles/0598/gas0598/index.htm> Journal of membrane science 243 (2004) 125-132
上述のように、水不透過性のセラミック分離膜を作製するには、セラミック分離膜の表面を有機化合物で修飾するという方法が一般的である。しかし、かかる方法でセラミック分離膜を作製すると、該セラミック分離膜に形成された細孔が有機化合物によって塞がれる場合がある。この場合、セラミック分離膜のガス透過性が下がり、分離膜としての処理能力が低下する虞がある。即ち、従来のセラミック分離膜においては水不透過性とガス透過性とがトレードオフの関係にあり、両方の性質が高いレベルで共存するセラミック分離膜を作製する方法の開発が望まれている。
本発明は上述の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、耐熱性や耐薬品性に優れ、且つ、水不透過性とガス透過性とが高いレベルで共存するセラミック分離膜を製造する方法を提供することである。また、本発明は、他の側面として、かかる製造方法によって得られた水不透過性のセラミック分離膜を提供する。
上記目的を実現するべく、本発明によって、水不透過性のセラミック分離膜(以下、適宜「セラミック分離膜」と略称する。)を製造する方法が提供される。ここで開示される製造方法は、(A)多孔質基材の表面に、所定のガス種を分離する孔径の細孔を複数有したセラミック製の多孔質膜を形成すること;(B)上記多孔質膜の上に、少なくともフッ素原子を含む有機ケイ素化合物を付与すること;(C)上記有機ケイ素化合物が付与された多孔質膜を、上記有機ケイ素化合物の沸点以上の温度(典型的には、沸点よりも高い温度)で熱処理すること;を包含する。そして、上記多孔質膜の少なくとも表面に上記有機ケイ素化合物由来のフッ素原子を残存させることを特徴とする。
ここで開示される製造方法では、多孔質膜の上に少なくともフッ素原子を含む有機ケイ素化合物(以下、適宜「フッ素含有有機ケイ素化合物」と略称する。また、単に「有機ケイ素化合物」と称する場合もある。)が付与されている。かかる有機ケイ素化合物由来のフッ素原子は、疎水性を有する化合物(もしくは特性基)の状態で多孔質膜の表面に存在(残存)し得る。従って、ここで開示される製造方法によれば多孔質膜の表面に好適な疎水性を付与し得、水不透過性のセラミック分離膜を製造することができる。また、ここで開示される製造方法では、フッ素含有有機ケイ素化合物の付与された多孔質膜を該有機ケイ素化合物の沸点以上の温度で熱処理する。これによって、本発明の効果が損なわれない程度に該有機ケイ素化合物を取り除かれるため、多孔質膜上の細孔が有機ケイ素化合物によって塞がれることを抑制し得る。従って、ここで開示される製造方法によれば高いガス透過性が維持されたセラミック分離膜を得ることができる。
即ち、ここで開示される製造方法によれば、従来のセラミック分離膜においてトレードオフの関係にあった水不透過性とガス透過性とが高いレベルで共存するセラミック分離膜を製造することができる。
ここで開示される製造方法の好ましい一態様では、上記有機ケイ素化合物は、1分子あたり10以上の炭素原子を有している。また、上記フッ素原子の数(N)に対する上記炭素原子の数(N)の比(N/N)が、0.5以上2以下である。さらに、上記炭素原子の数(N)に対する上記ケイ素原子の数(NSi)の比(NSi/N)が、0.01以上0.2以下である。
上記比率で構成された有機ケイ素化合物を熱処理することによって、多孔質膜の少なくとも表面に好適な量のフッ素原子を残存させることができる。したがって、ここで開示される製造方法によれば多孔質膜の表面に好適な疎水性を付与することができ、ひいては水不透過性に優れたセラミック分離膜を製造することができる。
ここで開示される製造方法の好ましい一態様では、上記有機ケイ素化合物はフルオロ基もしくはパーフルオロ基を含むシラン系有機化合物である。
フルオロ基もしくはパーフルオロ基を有する有機ケイ素化合物は、フッ素原子を好適に多孔質膜の上に付加することができる。また、上記化合物と多孔質膜(セラミック)とは比較的結合力が強いため、熱処理後に好適な数のフッ素原子を残存させ得る。
ここで開示される製造方法の好ましい一態様では、上記多孔質膜は酸化アルミニウム(アルミナ:Al)である。
酸化アルミニウム(アルミナ)は多孔質材料のなかでも比較的安価で取扱性に優れる。また、ガス分離に好適な孔径を有する多孔質構造を容易に形成することができるため、優れたガス透過性を有したセラミック分離膜を容易に製造できる。なかでもα−アルミナは、化学的安定性に優れ、融点や機械的強度が高い、という特性を有している。このため、α−アルミナを用いることで幅広い用途(例えば工業的分野)で広く利用可能なセラミック分離膜を製造することができる。
ここで開示される製造方法の好ましい一態様では、上記熱処理は、エネルギー分散型X線分光法(EDS(EDXとも言う。):Energy Dispersive X-Ray Spectrometry)に基づく分析で、上記多孔質膜を構成するアルミニウム原子の数100に対して、1以上10以下の割合で上記フッ素原子を上記多孔質膜の表面に残存させる。
この場合、好適な数のフッ素原子が多孔質膜の表面に残存するため、多孔質膜の気孔を塞ぐことなく(即ち高いガス透過性を保ったまま)、従来に比べ該多孔質膜の疎水性を向上させることができる。
ここで開示される製造方法の好ましい一態様では、上記熱処理の温度を、200℃以上(好ましくは300℃以上)に設定する。かかる温度は、典型的には200℃以上であって、典型的には、有機ケイ素化合物が完全に除去されない温度より低い温度(例えば700℃以下)である。
上記熱処理の温度が200℃を大幅に下回った場合、付与した有機ケイ素化合物が十分に除去されず、多孔質膜上の気孔が塞がれてしまう場合がある。かかる場合、得られたセラミック分離膜の本来の機能性(典型的には、高いガス透過性)が低下する虞がある。一方、700℃を大幅に上回った場合は、有機ケイ素化合物が完全に気化してしまい、ここで開示される製造方法の効果が薄れる虞がある。このため、熱処理温度を上記範囲とすることで、多孔質膜の表面から有機ケイ素化合物を好適に取り除くことができる。したがって、本発明の効果(即ち、高いガス透過性と水不透過性とを両立)を高いレベルで実現することができる。さらに好ましくは上記熱処理の温度を350℃以上(例えば350℃以上650℃以下)に設定するとよい。この場合、より好適な水不透過性を有する(例えば、0.2MPa(2bar)以下の水圧が加えられても水を透過させない)セラミック分離膜を製造することができる。
また、本発明は、他の側面として、上述した何れかの製造方法によって得られた水不透過性のセラミック分離膜を提供する。
上述した何れかの製造方法によって得られたセラミック分離膜は、ガス透過性と水不透過性とが高いレベルで共存しており、上述のトレードオフの関係を打破するものである。さらに、かかる分離膜はセラミック材料で構成されているため、耐熱性や耐薬品性に優れている。したがって、幅広い用途で利用することができ、例えば所望のガスと水(水蒸気を含む)とを分離するガス分離膜として好適に用いることができる。
ここで開示される製造方法で得られるセラミック分離膜の好ましい一態様では、ガス吸着法に基づく平均孔径が0.3nm以上100μm以下である。
セラミック分離膜の平均孔径が0.3nmを大幅に下回る場合、ガス透過性が低下する虞がある。一方、平均孔径が100μmを大幅に上回る場合、ここで開示される製造方法によって多孔質膜の表面に疎水性が付与された場合であっても、水不透過性が低下する虞がある。したがって、多孔質膜の細孔の平均孔径は上記数値範囲内に設定されていることが好ましい。なお、本明細書において「平均孔径」は、特に言及した場合を除き、窒素(もしくはアルゴン)を用いた従来公知のガス吸着法に基づく測定値をいう。かかる測定において、気孔は外部に開かれた開孔を意味し、閉じられた空間(閉孔)は含まれない。また本明細書において、「気孔率(%)」とは、上記測定により得られる気孔容積(Vb(cm))を見かけの体積(Va(cm))で除して100を掛けることにより算出した値(Vb/Va×100(%))を意味する。なお、見かけの体積Vaは、該サンプルの平面視での面積Sと厚さTとの積から算出することができる。
図1は、本発明の製造方法によって得られるセラミック分離膜の一例を模式的に示した図である。 図2は、サンプル1のエネルギー分散型X線分光分析スペクトルを示した図である。 図3Aは、サンプル1のα−アルミナ膜の断面のSEM写真である。 図3Bは、図3Aにおける炭素原子(C)の分布を示したSEM−EDSマッピングの結果である。 図3Cは、図3Aにおける酸素原子(O)の分布を示したSEM−EDSマッピングの結果である。 図3Dは、図3Aにおけるアルミニウム原子(Al)の分布を示したSEM−EDSマッピングの結果である。 図4は、サンプル1とサンプル5に係るセラミック分離膜の透過性を示したグラフである。 図5は、サンプル1のTG−DTA測定の結果を示したチャートである。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
<セラミック分離膜の構成>
ここで開示される製造方法で得られるセラミック分離膜の一例について、図1を参照しながら説明する。ここで開示されるセラミック分離膜20は、水不透過性であり、多孔質基材10の表面に形成されている。以下、セラミック分離膜20と多孔質基材10とを合わせて膜エレメント1ともいう。このセラミック分離膜20(膜エレメント1)は、所定のガス種を分離する孔径の細孔を複数有しているため、例えば水(水蒸気を含む)とガスとの混合物から目的のガスを分離するために用いることができる。ここで、上記分離目的となるガスとしては、例えば水素(H)、窒素(N)、酸素(O)等が挙げられる。
セラミック分離膜20を構成する多孔質膜の材料としては、従来公知のセラミック材料の中から適宜選択することができる。例えば、酸化アルミニウム(アルミナ:Al),酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO),酸化マグネシウム(マグネシア:MgO),酸化ケイ素(シリカ:SiO),酸化チタン(チタニア:TiO),酸化セリウム(セリア:CeO),酸化イットリウム(イットリア:Y),チタン酸バリウム(BaTiO)等の酸化物系材料;コーディエライト(2MgO・2Al・5SiO)、ムライト(3Al・2SiO)、フォルステライト(2MgO・SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)、サイアロン(Si・Al)、ジルコン(ZrO・SiO)、フェライト(MO・Fe)等の複合酸化物系材料;窒化ケイ素(シリコンナイトライド:Si),窒化アルミニウム(アルミナイトライド:AlN)等の窒化物系材料;炭化ケイ素(シリコンカーバイド:SiC)等の炭化物系材料;ハイドロキシアパタイト等の水酸化物系材料;炭素(C)、ケイ素(Si)等の元素系材料;もしくはこれらを二種以上含む無機複合材料;等を用いることができる。また、天然鉱物(粘土、粘土鉱物、シャモット、ケイ砂、陶石、長石、シラス)や、高炉スラグ、フライアッシュ等を用いることもできる。
なかでも、酸化アルミニウム(α‐アルミナ、γ‐アルミナ)、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化チタン(チタニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化ケイ素(シリカ)、ムライト、コーディエライト、炭化ケイ素(シリコンカーバイド)及び窒化ケイ素(シリコンナイトライド)からなる群から選択される1種または2種以上であることが好ましく、アルミナまたはシリカを主体として構成されたセラミック粉末がより好ましい。なお、ここでいう「主体とする」とは、セラミック粉末全体の50質量%以上(好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%〜100質量%)がアルミナまたはシリカであることを意味する。
例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)は多孔質材料のなかでも比較的安価で取扱性に優れる。また、ガス分離に好適な孔径を有する多孔質構造を容易に形成することができるため、優れたガス透過性を有したセラミック分離膜を容易に製造できる。さらに、上記酸化アルミニウムの中でもα−アルミナを特に好ましく用いることができる。α−アルミナは、化学的に安定で、融点や機械的強度が高い、という特性を有している。このため、α−アルミナを用いることで幅広い用途(例えば工業的分野)で利用可能なセラミック分離膜を製造することができる。
上述の通り、セラミック分離膜20は所定のガス種を分離する大きさの細孔を複数有している。かかる細孔の孔径(平均孔径)は特に限定されないが、例えば分離対象となるガス(ガスを構成する分子)の分子径よりも大きく、且つ、その他の分子の分子径よりも小さくなるように設定するとよい。このように、セラミック分離膜20(典型的には、該セラミック分離膜を構成する多孔質膜)の平均孔径を制御することによって、所定のガス種(分離対象)のみを透過させることができる。例えば、水素(H)ガスを含む混合物から該水素ガス(分子径:0.289nm程度)を分離する場合、多孔質膜の平均孔径を0.3nm以上100μm以下(好ましくは0.3nm以上100nm以下、より好ましくは0.3nm以上1nm以下)とすることが好ましい。平均孔径を上記範囲とすることで、本発明の効果(即ち、高いガス透過性と水不透過性とを両立)を高いレベルで実現することができる。
また、セラミック分離膜20の気孔率も特に限定されず、分離対象たるガス種等に応じて適宜変更することができる。例えば、上記水素ガスを分離する場合は多孔質膜の気孔率を10%以上75%以下(好ましくは20%以上60%以下、より好ましくは30%以上50%以下)とすることが好ましい。かかる数値範囲内の気孔率を有する場合、好適な水不透過性とガス透過性を有するため好ましい。
セラミック分離膜20の形状は特に限定されず、目的とする膜エレメント(セラミック分離膜)の形状や後述する多孔質基材の形状に応じて、種々の形状を採用し得る。例えば、チューブ状(円筒状)、円筒の周側面を垂直に押し潰したフラットチューブラ−状(中空扁平状)、平板(薄板)状、中空箱型状、あるいはハニカム構造を有した円柱状等が挙げられる。なお、図1に示す構成の膜エレメント1はチューブ状であり、多孔質基材10の外周面10aを覆うようにセラミック分離膜20が形成されている。
かかるセラミック分離膜20の膜厚は特に限定されないが、例えば10μm以下(典型的には10nm以上10μm以下、好ましくは50nm以上5μm以下、より好ましくは100nm以上3μm以下)とすることができる。上述の数値範囲の膜厚を有するセラミック分離膜20は、好適な水不透過性とガス透過性を有するため好ましい。
ここで開示されるセラミック分離膜(多孔質膜)20の表面には、フッ素含有有機ケイ素化合物に由来するフッ素原子が存在している。ここで、「セラミック分離膜(多孔質膜)の表面」とは、単にセラミック分離膜(多孔質膜)の最も凸な部分(即ち、厚み方向における長さが最も長い部分)のみを指すものではなく、セラミック分離膜(多孔質膜)の内部(特に、セラミック分離膜(多孔質膜)の内部における表面近傍領域)を含む領域を指すものである。
上記フッ素原子は、フッ素含有有機ケイ素化合物から由来しており、疎水性を有する化合物(もしくは特性基)の状態でセラミック分離膜の表面に存在し得る。そして、該フッ素原子(フッ素原子を含む化合物もしくは特性基)により、セラミック分離膜の表面に疎水性が付与される。かかるフッ素原子は有機ケイ素化合物由来のものであれば特に限定されず、例えば上記有機ケイ素化合物を熱分解することによって生じ得る化合物や、セラミックを構成する金属原子と結合した特性基等の状態で、セラミック分離膜の表面に存在し得る。
セラミック分離膜の表面に存在するフッ素原子の数は、上記セラミック分離膜を構成するセラミックに含まれる金属原子(アルミナの場合には、Al原子)の数100に対して、0.1以上(例えば0.1以上100以下、好ましくは1以上50以下、より好ましくは1以上10以下)であると好ましい。このように、セラミックに含まれる金属原子の数100に対し、少なくとも0.1以上の割合でフッ素原子が存在していれば、セラミック分離膜の表面に疎水性を付与することができる。なお、上記原子の数は、従来公知のエネルギー分散型X線分光法(EDS:Energy Dispersive X-Ray Spectrometry)、例えば走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)−EDSを用いて解析(分析)することで把握し得る。この場合、典型的には標準物と測定対象物との特性X線強度を比較して得られる相対強度に、原子番号効果補正(Z)と吸収補正(A)と蛍光励起補正(F)との3要因に係る補正を施し、原子の定量を行う(ZAF補正計算法)。本明細書においても、かかる補正計算を行った値を採用し得る。
また、セラミック分離膜の表面には、上記フッ素原子の他に炭素原子(C)、酸素原子(O)、ケイ素原子(Si)等が存在していてもよい。炭素原子の数は、セラミックに含まれる金属原子の数100に対して、例えば300以上600以下(好ましくは400以上500以下、より好ましくは450±25)とすることができる。また、酸素原子の数は、セラミックに含まれる金属原子の数100に対して、例えば50以上300以下(好ましくは100以上250以下、より好ましくは175±25)とすることができる。さらに、ケイ素原子の数は、セラミックに含まれる金属原子の数100に対して、例えば0.1以上(例えば0.1以上100以下、好ましくは1以上50以下)とすることができる。上記比率で構成された表面を有するセラミック分離膜は、優れた疎水性を発揮し得るため好ましい。
多孔質基材10としては、従来公知の無機基材の中から用途に応じて適宜選択することができ、典型的にはセラミックもしくは金属であり得る。より具体的には、酸化アルミニウム(アルミナ:Al),酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO),酸化マグネシウム(マグネシア:MgO),酸化ケイ素(シリカ:SiO),酸化チタン(チタニア:TiO),酸化セリウム(セリア:CeO),酸化イットリウム(イットリア:Y),チタン酸バリウム(BaTiO)等の酸化物系材料;コーディエライト(2MgO・2Al・5SiO)、ムライト(3Al・2SiO)、フォルステライト(2MgO・SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)、サイアロン(Si・Al)、ジルコン(ZrO・SiO)、フェライト(MO・Fe)等の複合酸化物系材料;窒化ケイ素(シリコンナイトライド:Si),窒化アルミニウム(アルミナイトライド:AlN)等の窒化物系材料;炭化ケイ素(シリコンカーバイド:SiC)等の炭化物系材料;ハイドロキシアパタイト等の水酸化物系材料;炭素(C)、ケイ素(Si)等の元素系材料;もしくはこれらを二種以上含む無機複合材料;等、既に多孔質膜20の材料として例示したセラミック材料や、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)等の金属材料等を用いることができ、セラミック材料(典型的にはアルミナ、例えばα−アルミナ)を用いることがより好ましい。
また、多孔質基材10は上記セラミック分離膜(多孔質膜)20を構成するセラミックと同種のセラミックで構成されている(例えば同種のセラミック材料粉末を用いて作製されている)ことがより好ましい。この場合、多孔質基材10とセラミック分離膜20との界面における接合性が向上し、より耐久性に優れた膜エレメント1を得ることができる。
多孔質基材10に形成されている細孔(貫通孔)の大きさは、上記セラミック分離膜20に形成されている細孔よりも大きいことが好ましい。より具体的には、平均孔径を、例えば0.1μm以上10μm以下(好ましくは0.1μm以上1μm以下、より好ましくは0.5μm±0.3μm)程度とすることができる。多孔質基材の平均孔径が0.1μmを大幅に下回る場合、セラミック分離膜としての特性(例えばガス分離能)を発揮することが難しくなる。一方、上記平均孔径が100μmを大幅に上回る場合、機械的強度が不足する虞がある。よって、多孔質基材の平均孔径は上記範囲内にあることが好ましい。また、同様の理由から、多孔質基材の気孔率は、例えば10%以上75%以下(好ましくは20%以上60%以下、より好ましくは30%以上50%以下)程度とすることができる。
多孔質基材10の形状は、目的とする膜エレメント(セラミック分離膜)の形状に応じて、種々の形状を採用し得る。例えば、チューブ状(円筒状)、円筒の周側面を垂直に押し潰したフラットチューブラ−状(中空扁平状)、平板(薄板)状、中空箱型状、あるいはハニカム構造を有した円柱状等が挙げられる。なお、図1に示す構成の膜エレメント1では、チューブ状の多孔質基材10が用いられている。
所望する形状の多孔質基材10は、市販品を用いることもできるし、例えば従来公知の成形技法(金型成形、冷間静水圧成形、押出成形、射出成形、鋳込み成形、プレス成形等)や焼成技法を用いて製造することもできる。例えば多孔質基材の材料としてセラミック材料を用いる場合は、先ず粉末状の無機多孔質材料(セラミック材料)とバインダとを溶媒中に均一に分散させることによって、スラリー状(ペースト状、インク状を含む。)の分散液を調製する。なお、該スラリー状の分散液は、必要に応じて分散剤や界面活性剤等の添加剤を含み得る。次に、上記成形技法を用いてスラリー状の分散液を所望の形状に成形する。そして、該成形体を、典型的には焼結を促進するための添加剤(例えばAlに対するMgO、SiOや、Siに対するY、Al、MgO等)とともに、焼成し焼結させることによって製造することができる。
上記無機多孔質材料は典型的には粉末状(粒状)であり、かかる粒径は特に限定されないが、例えば0.1μm以上(好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上)であって、50μm以下(好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下)であるとよい。上記範囲を満たす材料は、緻密でより耐久性に優れた多孔質基材を形成し得る。なお、本明細書において、粒径とはレーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定により測定した体積基準の粒度分布において微粒子側からの累積50%に相当する平均粒径(メジアン径)を示す。
<水不透過性のセラミック分離膜の製造方法>
次に、当該水不透過性のセラミック分離膜を製造する方法(以下、適宜「製造方法」と略称する。)について説明する。
ここで開示される製造方法は、(A)多孔質基材の表面に、所定のガス種を分離する孔径の細孔を複数有したセラミック製の多孔質膜を形成すること;(B)上記多孔質膜の上に、フッ素含有有機ケイ素化合物を付与すること;(C)上記有機ケイ素化合物が付与された多孔質膜を、該有機ケイ素化合物の沸点以上の温度で熱処理すること;を包含する。そして、ここで開示される製造方法では、上記多孔質膜の少なくとも表面にフッ素含有有機ケイ素化合物由来のフッ素原子を残存させることを特徴とする。なお、上述した工程以外の工程等については本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の基準に照らして適宜決定することができる。
A.多孔質膜の形成
ここで開示される製造方法では、先ず、多孔質基材の表面に多孔質膜(セラミック分離膜)を形成する。多孔質膜を形成する方法は、従来公知の薄膜形成プロセスにおいて用いられる各種の方法を採用することができる。かかる方法としては、例えば、ディップコーティング法、スピンコーティング法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、ゾル―ゲル法、電気泳動法、スプレー法等が挙げられる。
多孔質膜の形成方法としてディップコーティング法を採用した場合、先ず、多孔質膜を構成するセラミック材料(典型的には粉末状)を溶媒中に均一に分散させた分散液を用意する。そして、かかる分散液に所望の形状を有する多孔質基材を一定時間浸漬させた後、該多孔質基材を分散液から一定速度で引き上げる。なお、多孔質基材を浸漬させている間、該分散液の温度(及び粘度)を一定に保つことで再現性良く薄膜を形成し得る。また多孔質基材の浸漬及び引き上げは分散液の液面に対して垂直に行うとよい。かかる方法では、分散液中のセラミック材料(粉末)の濃度や多孔質基材の引き上げ速度等を調整することによって、多孔質膜の膜厚を制御し得る。
セラミック材料としては、典型的には粉末状(粒状)のものを用いる。かかる粒径は特に限定されないが、典型的には上記多孔質基材の材料として用いたものよりも小さな粒径であり得る。例えば0.01μm以上(好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上)であって、30μm以下(好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下)であるとよい。上記範囲を満たす材料は、緻密で機械的強度が高く、より耐久性に優れた多孔質膜を形成し得る。
分散溶媒としては、上記セラミック材料を好適に分散し得るもののうち、1種または2種以上を特に限定することなく用いることができる。かかる分散溶媒は、無機系溶媒、有機系溶媒のいずれを用いてもよい。無機系分散溶媒としては、水または水を主体とする混合溶媒であることが好ましい。該混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、例えば、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)の1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。また、有機系分散溶媒としては、例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤等が挙げられる。かかる分散液における溶媒の含有率は、特に限定されないが、分散液全体の1質量%以上50質量%以下(典型的には5質量%以上35質量%以下)が好ましい。
また、上記分散溶媒には、必要に応じてバインダや任意で付加し得る他の成分(例えば、増粘剤や分散剤等の添加剤)を添加することもできる。バインダや添加剤等は特に限定されるものではなく、多孔質膜の製造において従来公知のものから適宜選択して用いることができる。例えば、該バインダとしては、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等のセルロースまたはその誘導体;ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール;ポリテトラフルオロエチレン;等が挙げられる。バインダ等の含有率は特に限定されないが、分散液全体の2質量%以上20質量%以下とすることができる。
多孔質基材としては、上記「セラミック分離膜の構成」において述べたものの中から用途等に応じて適宜選択して用いることができる。
そして、該多孔質基材の表面に付着した分散液を除去した(典型的には乾燥により揮発させた)後に、適当な焼成処理を行うことによって多孔質基材の表面に多孔質膜を形成することができる。
分散液の除去には従来公知の手法(例えば自然乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、低湿風乾燥、真空乾燥、赤外線乾燥、遠赤外線乾燥、電子線による乾燥等)を適宜用いることができる。具体的には、例えば乾燥温度200℃以下(典型的には80℃以上150℃以下、好ましくは100℃以上150℃以下)で、所定時間(例えば0.5時間〜5時間)加熱乾燥することができる。
焼成処理の条件は特に限定されないが、例えば焼成温度を1000℃以上(典型的には1000℃以上2000℃以下、例えば1000℃以上1500℃以下)、焼成時間を0.1時間以上(典型的には0.5時間以上10時間以下、例えば1時間以上5時間以下)あるいは24時間以上とすることができる。焼成雰囲気は特に限定されず、例えば酸化性雰囲気下(典型的には大気中)や非酸化性雰囲気下(典型的には、窒素(N)やアルゴン(Ar)等の不活性ガスの雰囲気下)等であり得る。さらに、かかる焼成は一定の温度で一度に行ってもよく、異なる温度で段階的に行ってもよい。例えば、700℃〜800℃程度まで昇温し、かかる温度で0.1時間〜0.5時間程度焼成(保持)した後、1000℃〜1500℃程度まで昇温し、1時間〜5時間程度焼成(保持)することができる。
B.有機ケイ素化合物の付与
ここで開示される製造方法では、次に、上記多孔質膜20の表面にフッ素含有有機ケイ素化合物を付与する。
ここで用いられるフッ素含有有機ケイ素化合物は、少なくともフッ素原子(F)と、ケイ素原子(Si)と炭素原子(C)とを含む化合物である。構造にケイ素を含む(好ましくは、基本骨格(主鎖)にケイ素を含む)有機化合物は、高温(典型的には200℃以上、例えば300℃以上600℃以下)で熱分解反応することにより、上記多孔質膜の表面にSi−Si結合、Si−N結合、Si−C結合のような結合を好適に生じ得る。このため、有機ケイ素化合物中に含まれるフッ素原子を、多孔質膜の表面に好適に付加することができる。また上記化合物と多孔質膜(セラミック)とは比較的結合力が強いため、熱処理後に該多孔質材表面にフッ素原子を好適に残存させ得る。
ここで用いられるフッ素含有有機ケイ素化合物は、市販品をそのまま用いることもできるし、例えば上記構成原子を含む化合物を用いて(典型的には重合させて)合成することもできる。なかでも、単分子あたりに炭素原子(C)が10以上(例えば10以上50以下、好ましくは10以上30以下、より好ましくは20±5)含まれるフッ素含有有機ケイ素化合物を好ましく用いることができる。また、単分子あたりにフッ素原子(F)が10以上(例えば10以上50以下、好ましくは10以上40以下、より好ましくは25±10)含まれていることが好ましい。さらに、単分子あたりにケイ素原子(Si)が1以上(例えば1以上50以下、典型的には1以上10以下)含まれていることが好ましい。
上記フッ素含有有機ケイ素化合物は、フッ素原子の数(N)と炭素原子の数(N)との比(N/N)は、0.5以上2以下(好ましくは0.5以上1.5以下、より好ましくは0.5以上1以下)であるとよい。さらに、炭素原子の数(N)とケイ素原子の数(NSi)との比(NSi/N)は、0.01以上0.2以下(好ましくは0.01以上0.08以下、より好ましくは0.05±0.02)であるとよい。上記比率で構成された有機ケイ素化合物を熱処理することによって、多孔質膜の少なくとも表面に好適な量のフッ素原子を残存させることができる。したがって、上述の製造方法によれば多孔質膜の表面に好適な疎水性を付与することができ、水不透過性に優れたセラミック分離膜を製造することができる。
上記フッ素含有有機ケイ素化合物は、フルオロ基もしくはパーフルオロ基を含むシラン系有機化合物であるとよい。有機ケイ素化合物としてシラン系有機化合物を用いると、多孔質膜の表面にフッ素原子を好適に付加することができる。また、上記化合物と多孔質膜(セラミック)とは比較的結合力が強いため、熱処理後に好適な数のフッ素原子を残存させることができる。
シラン系有機化合物としては、フッ素原子を1つ以上含んだ側鎖を有していることが好ましく、フッ素原子を2つ以上含んだ側鎖(例えば、パーフルオロ基)を有していることがより好ましい。かかるシラン系有機化合物としては、例えば、1H,1H,2H,2H−パーフルオロドデシルトリエトキシシラン(PFDTES:perfluorododecyl-1H,1H,2H,2H-triethoxysilane:C181921Si)、1H,1H,2H,2H−パーフルオロテトラデシルトリエトキシシラン(perfluorotetradecyl-1H,1H,2H,2H-triethoxysilane:C201925Si)、1H,1H,2H,2H−パーフルオロヘキシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
また、フッ素含有有機ケイ素化合物はシロキサン系有機化合物であってもよい。かかるシロキサン系有機化合物は、フッ素原子を少なくとも1原子含んだ側鎖を有しているとより好ましく、シロキサン系有機化合物の具体例としては、パーフルオロポリシロキサン(perfluoropolysiloxane)等のポリシロキサンが挙げられる。
フッ素含有有機ケイ素化合物の沸点は特に限定されないが、例えば100℃以上400℃以下(好ましくは100℃以上300℃以下、より好ましくは150℃以上250℃以下)とすることができる。沸点が上記数値範囲内の有機ケイ素化合物は、後述する熱処理において有機ケイ素化合物を好適に熱分解することができるため、好ましく用いることができる。なお、ここで用いられる有機ケイ素化合物は、上述したような有機化合物を含む混合物の状態であってもよい。
フッ素含有有機ケイ素化合物を付与する方法としては従来公知の種々の方法を用いることができ、特に限定されない。かかる方法として、例えばディップコーティング法、スピンコーティング法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、ゾル―ゲル法、電気泳動法、スプレー法等を採用することができ、なかでもディップコーティング法を好ましく用いることができる。かかる手法によれば、該多孔質膜の表面上(即ち、最も凸な部分)のみならず、気孔内(典型的には該気孔の内壁のうち開口部近傍の領域)にも好適に有機ケイ素化合物を付与し得る。
例えば付与方法としてディップコーティングを採用した場合は、先ず上記有機ケイ素化合物を溶媒中に均一に分散させた分散液を用意する。溶媒としては、例えば上記「多孔質膜の形成」で既に記載したものを適宜用いることができる。また、本発明の効果を著しく悪化させない程度において、任意で付加し得る他の成分(例えば、バインダ、増粘剤や分散剤等の添加剤)を適宜添加することもできる。次に、かかる分散液に多孔質膜が形成された多孔質基材を一定時間(典型的には数分〜数十分、例えば1分〜20分)浸漬させた後、該多孔質基材を分散液から一定速度で引き上げる。多孔質基材を浸漬させている間、該分散液の温度(及び粘度)を一定に保つことで再現性良く有機ケイ素化合物を付与し得る。また、上記浸漬及び引き上げは分散液の液面に対して垂直に行うとよい。なお、ここでは浸漬を促進し得る操作(例えば、減圧や加温等の操作)を適宜併用することもできる。そして、多孔質膜の表面に付着した分散溶媒を除去する(典型的には加熱乾燥により揮発させる)ことにより、多孔質膜の表面に有機ケイ素化合物を付与することができる。分散液の除去方法は上記「多孔質膜の形成」と同様であり得る。
なお、ディップコーティング法では、分散液中の有機ケイ素化合物の濃度や、引き上げの速度、ディップ回数等を調整することによって付与する有機ケイ素化合物の量(厚み)を制御することができる。1回あたりの付与量は、一般的には該溶液の濃度が高いほど多くなり、また引き上げ速度が低速なほど少なくなる。また、ディップ回数と付与量とは概ね比例関係にあり、1回あたりの付与量とディップ回数との積から総付与量を見積もることができる。かかる付与量は特に限定されないが、例えば該有機ケイ素化合物層の厚みが1nm以上1000nm以下(好ましくは1nm以上100nm以下、より好ましくは1nm以上50nm以下)程度となるよう付与することができる。これによって、疎水性を発揮するために適切な量の有機ケイ素化合物が多孔質膜上に付与され、熱処理後においても好適な数のフッ素原子を多孔質膜上に残存させることができる。なお、かかる厚みは例えば一般的な電子顕微鏡(典型的には透過型電子顕微鏡)によって多孔質膜の断面を観察することにより、把握し得る。
C.熱処理
ここで開示される製造方法では、次に、有機ケイ素化合物が付与された多孔質膜を、有機ケイ素化合物の沸点以上(典型的には、沸点よりも高い温度)の温度で熱処理する。これによって、本発明の効果が損なわれない程度に該有機ケイ素化合物を取り除くことができる。したがって、多孔質膜上の細孔が有機ケイ素化合物によって塞がれることを抑制し得る。
上記熱処理の温度は上記で用いたフッ素含有有機ケイ素化合物の沸点よりも高い温度(沸点以上の温度)で行う。従って、例えば付与した有機ケイ素化合物の種類(沸点)等に応じて適宜変更することができる。かかる熱処理の温度は、典型的には200℃以上であって、好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上に設定するとよい。また、例えば700℃以下であって、好ましくは650℃以下、より好ましくは600℃以下に設定することができる。この場合、有機ケイ素化合物を多孔質膜の表面から好適に取り除くことができる。
さらに、上記熱処理の温度をより高くすることによって多孔質膜の表面にさらに好適なガス透過性を付与することができる。例えば、有機ケイ素化合物として1H,1H,2H,2H−パーフルオロドデシルトリエトキシシランを用いた場合、上記熱処理の温度を350℃以上(例えば350℃以上650℃以下、好ましくは400℃以上500℃以下)に設定することによって、水不透過性に優れたセラミック分離膜を製造することができる。具体的には、350℃で熱処理を行った場合、水圧0.2MPa(2bar)以下において水の透過を防止できるセラミック分離膜が得られる。また、450℃で熱処理を行った場合、水圧0.4MPa(4bar)以下において水の透過を防止できるセラミック分離膜が得られる。即ち、ここで開示される製造方法によれば、従来のセラミック分離膜においてトレードオフの関係にあった水不透過性とガス透過性とが高いレベルで共存するセラミック分離膜を製造することができる。
熱処理の時間は、多孔質膜上に付与した有機ケイ素化合物の種類等に応じて適宜変更することができ、例えば0.5時間以上3時間以下(好ましくは0.5時間以上2時間以下)に設定することができる。好ましくは設定した熱処理温度に達してから0.1時間以上(典型的には0.1時間以上3時間以下、例えば0.5時間以上2時間以下)保持することが好ましい。これによって、有機ケイ素化合物を多孔質膜の表面から好適に取り除くことができる。
ここで開示される製造方法では、上記多孔質膜の表面にフッ素含有有機ケイ素化合物由来のフッ素原子を残存させる。より具体的には、有機ケイ素化合物は炭素(C)、酸素(O)、フッ素(F)、ケイ素(Si)等の原子を含んでいる。そして、該フッ素含有有機ケイ素化合物は熱処理によって分解されると、上記原子の一部は分解後に再結合し、多孔質膜表面に付与された時よりも分子量の小さい化合物(もしくは特性基)となって多孔質膜の表面に残存し得る。これによって、多孔質膜(セラミック分離膜)の表面(セラミック分離膜内部における表面近傍領域を含む)に、有機ケイ素化合物由来のフッ素原子が残存し得る。ここで、「有機ケイ素化合物由来のフッ素原子が残存する」とは、セラミック分離膜の表面に有機ケイ素化合物由来のフッ素化合物が付与されている状態や、有機ケイ素化合物から由来し、フッ素原子を含んだ特性基がセラミック分離膜のセラミックに結合しているような状態を包含する。
また、ここで開示される製造方法では、有機ケイ素化合物の熱分解により、フッ素原子をセラミック分離膜の表面に残存させている。上記有機ケイ素化合物には、ケイ素原子(Si)が含まれている。このケイ素原子(Si)は、セラミックからなるセラミック分離膜との接合相性がよく、かかるケイ素原子(Si)を介して、フッ素原子(F)がセラミック分離膜の表面に付与されやすくなっている。
セラミック分離膜の表面に存在するフッ素原子の数は、上記セラミック分離膜を構成するセラミックに含まれる金属原子の数100に対して、0.1以上(例えば0.1以上100以下、好ましくは1以上50以下、より好ましくは1以上10以下)であると好ましい。このように、セラミックに含まれる金属原子の数100に対し、少なくとも0.1以上の割合でフッ素原子が存在していれば、セラミック分離膜の表面に疎水性を付与することができる。
例えば、多孔質膜(セラミック分離膜)が酸化アルミニウムであるとき、多孔質膜(セラミック分離膜)の表面に残存するフッ素原子の数は、エネルギー分散型X線分光分析に基づく分析値で、酸化アルミニウム(Al)に含まれるAl原子100に対して0.1以上(例えば0.1以上100以下、好ましくは1以上50以下)であることが好ましい。Al原子100に対し、少なくとも0.1の割合でフッ素原子が残存していれば、セラミック分離膜の表面に疎水性を付与することができる。さらに、Al原子100に対し、1の割合でフッ素原子がセラミック分離膜の表面に残存していれば、セラミック分離膜の表面に好適な疎水性を付与することができる。
ここで開示される製造方法では、有機ケイ素化合物が付与された多孔質膜を、有機ケイ素化合物の沸点以上の温度で熱処理している。これによって、上記多孔質膜の表面に有機ケイ素化合物由来のフッ素原子を残存させることができる。該多孔質膜表面にフッ素原子を残存させることで、水不透過性を有した(疎水性の)セラミック分離膜を製造できる。さらに、ここで開示される製造方法では、有機ケイ素化合物が付与されたセラミック分離膜を、有機ケイ素化合物の沸点以上の温度で熱処理している。これによって、有機ケイ素化合物がセラミック分離膜上から取り除かれる。このため、有機ケイ素化合物によってセラミック分離膜の細孔が塞がれることを抑制し得る。従って、かかる製造方法で得られたセラミック分離膜は、高いガス透過性を有している。
即ち、ここで開示される製造方法によれば、従来のセラミック分離膜においてトレードオフの関係にあった水不透過性とガス透過性とが高いレベルで共存するセラミック分離膜を製造することができる。
<セラミック分離膜の使用>
上記製造方法によって得られたセラミック分離膜は、種々の目的で使用することができる。例えば、かかるセラミック分離膜は、水(水蒸気を含む)と所定のガス種とを分離する分離膜(例えば、水素分離膜、酸素分離膜、窒素分離膜等)に用いることができる。
以下、ここで開示される製造方法によって得られたセラミック分離膜を、水素分離膜として用いた場合について図1を参照しつつ説明する。かかる水素分離膜は、水素(H)ガスと水とが混合している混合物から水素ガスを分離する目的で使用される。具体的には、先ず上記混合物(水(水蒸気を含む)と水素ガス)をセラミック分離膜(水素分離膜)20に接触させて、所定の圧力(例えば0.2MPa(2bar)以下)で加圧する。ここで、上記セラミック分離膜20の表面には疎水性が付与されており、該分離膜は水不透過性を有している。従って、加圧された状態であっても水はセラミック分離膜20を透過しない。また、このセラミック分離膜20は高いガス透過性が維持されているため、水素ガスはセラミック分離膜20を透過する。このため、該水素ガスは多孔質基材10側(即ち、チューブ状の内側)に流入する。このように、ここで開示されるセラミック分離膜(水素分離膜)20は、水素ガスと水との混合物から水素ガスのみを好適に分離することができる。
<実施例>
次に、本発明に関する実施例を説明する。この実施例では、作製条件を変えた5種類の膜エレメントを用意した。なお、以下で説明する実施例は、本発明を限定することを意図したものではない。
(サンプル1)
先ず、無機多孔質材料としてのアルミナ粉末(α―アルミナ、粒径3μm)を、バインダ(エチルセルロース系ポリマー)とともに分散媒(水)へ分散させ、スラリー状のアルミナ分散液を調製した。次に、押出成形を用いてスラリー状の分散液をチューブ状の成形体に成形した。かかる成形体を空気雰囲気下で焼成(1500℃、2時間)することによって、チューブ状の多孔質基材を作製した。この多孔質基材の気孔率は40%、平均孔径は0.7μmであった。
次に、上記多孔質基材の表面にα−アルミナからなるセラミック分離膜(α−アルミナ膜)を形成した。具体的には、多孔質材料としてのアルミナ粉末(α―アルミナ、粒径1μm)を、バインダ(ポリビニルアルコール系バインダ)とともに分散媒(水)へ分散させ、スラリー状のアルミナ分散液を調製した。そして、ディップコーティング法を用いて、上記チューブ状の多孔質基材の外周面に上記α−アルミナ分散液を付与した。溶媒を乾燥させた後に、空気雰囲気下で焼成(1200℃、2時間)することによって、多孔質基材の表面に膜厚100μmのセラミック分離膜(α−アルミナ膜)を形成した。このα−アルミナ膜の気孔率は39%、平均孔径は65nmであった。
次に、フッ素含有有機ケイ素化合物を上記α―アルミナ膜の表面に付与した。本実施例では、上記有機ケイ素化合物として、パーフルオロドデシルトリエトキシシラン(perfluorododecyl-1H,1H,2H,2H-triethoxysilane、以下「PFDTES」と略称する。)を用いた。このPFDTESを、ディップコーティング法を用いて、α―アルミナ膜の表面に膜厚50nmで付与した。そして、PFDTESが付与されたα−アルミナ膜を、酸素雰囲気下で熱処理(350℃、1時間)することによって、α―アルミナ膜の表面からPFDTESを取り除いた。このようにして得られたセラミック分離膜を備えた膜エレメントをサンプル1と称する。
以下、サンプル2〜5の作製条件について説明する。なお、以下のサンプルの作製において特に言及していないプロセスについては、上記サンプル1と同じプロセスを行っているものとする。
(サンプル2)
サンプル2では、上記熱処理の温度を400℃に設定した。
(サンプル3)
サンプル3では、セラミック分離膜として、平均孔径4nmのα−アルミナ膜を形成した。
(サンプル4)
サンプル4では、α−アルミナ膜の表面にデシルトリメトキシシラン(decyltrimethoxysilane、以下「DTMS」と略称する。)を付与した。また、ここでは上記熱処理の温度を450℃に設定した。
(サンプル5)
サンプル5では、α―アルミナ膜の表面に何も付与せず、該α−アルミナ膜を形成した後に熱処理(350℃、1時間)を実施した。
上述した各サンプルの構成について表1に纏める。
(セラミック分離膜表面の解析)
ここでは、先ず、サンプル1のセラミック分離膜(熱処理後のα−アルミナ膜)の断面をSEMで観察した。得られた写真を図3Aに示す。次に、かかる制限視野内において、エネルギー分散型X線分光分析(SEM−EDS分析)を行い、元素の定性及び定量を行った。
SEM−EDSの分析結果を、図2に示す。図2は、サンプル1のエネルギー分散型X線分光分析スペクトルを示した図である。当該スペクトル図において、縦軸はカウント数を示し、横軸はX線の強度を示している。かかる分析の結果、炭素(C)、酸素(O)、フッ素(F)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)のピークが確認された。即ち、熱処理後のサンプル1のα−アルミナ膜には、上述の各原子が存在(残存)していることが分かった。また、ZAF補正を行った分析値によれば、α−アルミナ膜の表面にはアルミニウム原子100に対して、フッ素原子が4存在していた。そこで、上記確認された元素の分布を明らかにすべく、炭素(C)、酸素(O)及びアルミニウム(Al)の各元素についてSEM−EDSマッピングを行った。
かかるマッピングにより得られた結果を図3B〜図3Dに示す。図3Bは、α−アルミナ膜の断面における炭素原子(C)の分布を示したSEM−EDSマッピングの結果である。図3Cは、α−アルミナ膜の断面における酸素原子(O)の分布を示したSEM−EDSマッピングの結果である。図3Dは、α−アルミナ膜の断面におけるアルミニウム原子(Al)の分布を示したSEM−EDSマッピングの結果である。図3Bに示すように、SEM−EDS分析の結果、炭素原子(C)は、α−アルミナ膜の内部(典型的には表面より5μ以上内部の領域)では殆ど検出されず、即ち、表面及び内部の表面近傍領域に存在していることが分かった。このことから、検出された炭素原子はα−アルミナ膜の表面に付与されていた有機ケイ素化合物(PFDTES)に由来するものであると考えられる。一方、図3C及び図3Dに示すように、酸素原子(O)とアルミニウム原子(Al)は、α−アルミナ膜の内部に多く存在していることが分かった。このことから、酸素原子(O)とアルミニウム原子(Al)はセラミック分離膜(α−アルミナ膜)を構成するアルミナに由来すると考えられる。
以上のことから、セラミック分離膜の表面には、熱処理された有機ケイ素化合物に由来する物質が存在している(熱処理後に残存している)と考えられる。即ち、図2において存在が確認されたフッ素(F)とケイ素(Si)は、有機ケイ素化合物から由来する原子であり、上記炭素と同様にセラミック分離膜の表面に存在している(熱処理後に残存している)と考えられる。
(水接触角の測定)
次に、サンプル1及びサンプル5の疎水性を評価するために「水接触角」を測定した。「水接触角」の測定にあたっては、JIS R 3257(1999)に準拠して測定を行った。具体的には、1μLの水をα−アルミナ膜の表面に滴下し、滴下した水滴の接線と試験対象の表面との成す角度θを「水接触角θ」とし、θ/2法を用いて水接触角θを測定した。
上記測定の結果、サンプル1のα−アルミナ膜の表面における水接触角θは、120°以上であった。一方、サンプル5のα−アルミナ膜の表面における水接触角θは、50°以下であった。このように、サンプル1の方がサンプル5よりも水接触角θが大きかったことから、サンプル1はサンプル5よりも濡れにくい(疎水性が高い)ことが分かった。
(水透過性の評価)
次に、各サンプルの水透過性を測定した。具体的には各サンプルを直径30mmの円形に切り取りホルダーに固定した。そして、各サンプルのα−アルミナ膜側に水を接触させた状態で多孔質基材の方向に向かって水を加圧した。そして水に加える圧力を段階的に高めていき、多孔質基材側に水が透過した時の圧力を「許容圧力」として測定した。各サンプルの許容圧力(MPa)を、表1の該当欄に示す。
表1に示すように、サンプル1,4では、0.2MPa(2bar)以上の圧力を加えるまでは、多孔質基材側に水が透過しなかった。即ち、サンプル1,4については、0.2MPa以下の水圧において水を透過させない水不透過性膜であることがわかった。一方、有機ケイ素化合物が付与されていないサンプル5では、圧力を加えなくても多孔質基材側に水が透過した。即ち、α―アルミナのみで構成された分離膜は、水不透過性を有していなかった。また、サンプル2,3は、0.4MPa(4bar)以上の圧力を加えても多孔質基材側に水が透過しなかった。このことから、熱処理の温度を400°に上げたサンプル2やα−アルミナ膜の細孔の平均孔径を4nmにしたサンプル3には、より好適な水不透過性が付与されたと考えられる。
(選択透過性の評価)
次に、サンプル1及び5の選択透過性について評価した。ここでは、窒素(N)ガス、蒸留水、無水エタノール(99.5%、和光純薬工業株式会社製)、トルエン(99.5%、和光純薬工業株式会社製)を用いて、上記「水透過性の評価」と同様の方法で選択透過性の評価を行った。当該評価結果を図4に示す。なお、図4における横軸は混合物に加えた圧力(bar)を示しており、縦軸は各物質の透過量(mol/m.s.Pa)を示している。また、図4において、黒く塗りつぶしたプロットがサンプル1の透過量を、白抜きのプロットがサンプル5の透過量をそれぞれ示している。
図4に示すように、窒素(N)ガスの透過量をサンプル1とサンプル5で比較すると、サンプル1とサンプル5の両方で窒素(N)ガスが好適に透過されており、サンプル1とサンプル5のNガス透過性は同程度であった。
水(HO)の透過量をサンプル1とサンプル5で比較すると、サンプル5では圧力を加えた状態で水を透過させているのに対して、サンプル1では2bar程度の圧力が加えられても水を透過させていなかった。即ち、サンプル1は好適な水不透過性を有していると解される。
エタノール(Ethanol)の透過性をサンプル1とサンプル5で比較すると、圧力が低い(1.2bar以下)の状態において、サンプル5ではエタノールを透過させているのに対して、サンプル1ではエタノールを透過させていなかった。そして、圧力が強くなる(1.2bar以上)とサンプル1においてもエタノールに対する透過性が生じ、サンプル5と同じ傾向の透過性が生じることが分かった。
トルエン(Toulene)の透過量をサンプル1とサンプル5で比較すると、サンプル1とサンプル5とで同じ傾向の透過性を有していた。即ち、サンプル1及びサンプル5はトルエンに対しては好適な透過性を有していることが分かった。
上述のように、サンプル5は、混合物に含まれる全ての物質を透過させた。これに対して、サンプル1では2bar以下の加圧条件下では水に対する不透過性を有しており、且つ1.2bar以下の加圧条件下ではエタノールに対する不透過性を有していた。即ち、サンプル1は水(加圧条件によってはエタノールも含む)に対する不透過性を有しているとともに、他の物質(Nガス、エタノール、トルエン)に対しては透過性を有するといった選択透過性を有していると考えられる。従って、サンプル1に係るセラミック分離膜は水やエタノール(特に水)を含んだ混合物から所定の物質を分離するために好適に使用できることが分かった。
(TG−DTA評価)
また、有機ケイ素化合物の熱処理による変化を確認するため、示差熱熱重量同時測定(TG−DTA:Thermo Gravimeter−Differential Thermal Analysis)を行った。ここでは、ここでは、株式会社リガク製の装置「Thermoplus」を用い、上記作製したサンプル1(多孔質膜の表面にPFDTESが付与されたサンプル)について測定を行った。具体的には、大気雰囲気下において、昇温速度5.0℃/minで室温から600℃まで上昇させて、発熱ピーク温度と重量変化を確認した。測定結果を図5に示す。
図5に示す通り、サンプル1では250℃付近(254.1℃)に顕著な重量の減少が確認された。その後、250℃〜550℃付近に発熱ピークを伴った重量の減少がみられ、凡そ600℃を超えると重量変化はほぼ見られなくなった。このため、ここで開示される製造方法において有機ケイ素化合物としてPFDTESを用いる場合には、熱処理の温度を200℃以上700℃以下(典型的には250℃以上600℃以下、例えば300℃以上600℃以下)に設定することで、多孔質膜に好適なガス透過性と水不透過性とを付与し得ることが示された。
ここで開示される製造方法によって得られた水不透過性の分離膜では、ガス透過性と水不透過性とが高いレベルで共存している。従って、例えば所望のガスと水(水蒸気を含む)とを分離するガス分離膜として好適に用いることができる。また、かかる分離膜はセラミックで構成されているため、耐熱性や耐薬品性に優れ、様々な分野で使用することができる。
1 膜エレメント
10 多孔質基材
20 セラミック分離膜(多孔質膜)

Claims (8)

  1. 水不透過性のセラミック分離膜を製造する方法であって:
    多孔質基材の表面に、所定のガス種を分離する孔径の細孔を複数有したセラミック製の多孔質膜を形成すること;
    前記多孔質膜の上に、少なくともフッ素原子を含む有機ケイ素化合物を付与すること;
    前記フッ素原子含有有機ケイ素化合物が付与された多孔質膜を、前記フッ素原子含有有機ケイ素化合物の沸点以上であって且つ300℃以上700℃以下の温度で熱処理すること;
    を包含し、
    前記多孔質膜の少なくとも表面に前記フッ素原子含有有機ケイ素化合物由来のフッ素原子を残存させることを特徴とする、水不透過性のセラミック分離膜の製造方法。
  2. 前記フッ素原子含有有機ケイ素化合物は、1分子あたり10以上の炭素原子を有しており、
    前記フッ素原子の数(N)に対する前記炭素原子の数(N)の比(N/N)が、0.5以上2以下であり、
    前記炭素原子の数(N)に対する前記ケイ素原子の数(NSi)の比(NSi/N)が、0.01以上0.2以下である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記フッ素原子含有有機ケイ素化合物は、フルオロ基もしくはパーフルオロ基を含み、且つ、沸点が100℃以上300℃以下のシラン系有機化合物である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記多孔質膜は酸化アルミニウムである、請求項1〜3の何れか一項に記載の製造方法。
  5. エネルギー分散型X線分光法に基づく分析で、前記多孔質膜を構成するアルミニウム原子の数100に対して、1以上10以下の割合で前記フッ素原子を前記多孔質膜の表面に残存させる、請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記熱処理の温度を、350℃以上に設定する、請求項1〜5の何れか一項に記載の製造方法。
  7. 水不透過性のセラミック分離膜であって、
    多孔質基材と、
    該多孔質基材の表面に形成されている多孔質膜と、
    を備え、
    前記多孔質膜は酸化アルミニウムであり、
    前記多孔質膜の表面には、フッ素含有有機ケイ素化合物由来のフッ素原子が付着しており、
    前記多孔質膜をエネルギー分散型X線分光法で分析したときに、前記酸化アルミニウムを構成しているアルミニウム原子の数100に対して前記フッ素原子の数が1以上10以下である、水不透過性のセラミック分離膜。
  8. ガス吸着法に基づく平均孔径が0.3nm以上100μm以下である、請求項7に記載のセラミック分離膜。
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