以下、本発明による料金精算用ICカードおよび決済処理装置の好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下、本発明による料金精算用ICカードおよび決済処理装置について説明するが、かかる決済処理装置をコンピュータにより実行可能な料金精算プログラムとして実施するようにしてもよいし、あるいは、料金精算プログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしてもよいことは言うまでもない。
[第1実施形態]
非接触ICカードを利用した従来の運賃精算技術では、改札口を出る際に非接触ICカードの残高が不足していると、自動改札機を通過することはできない。そこで、本実施形態では、自動改札機の通過時に非接触ICカードの残高が不足していることが判明した場合であっても、銀行口座から料金を引落とすことを条件に、自動改札機を通過させる。
本実施形態の前提として、非接触ICカードの利用者は、料金精算時に残高が不足した場合に、鉄道会社が指定した銀行を介して不足分を引落とすことを了承する契約(以後、「ダイレクト契約」と呼ぶことにする)を結んでいるものとする。
また、銀行サーバ500は、鉄道会社指定の銀行のサーバであり、上記ダイレクト契約を実行するために必要な認証処理を含むシステム(以下、「オンライン決済システム」と呼ぶ)を既に備えているものとする。
さらに、本実施形態では、料金精算時に残高が不足した場合、駅を出場した後に不足分をオンラインで決済する出場後オンライン決済を行う。鉄道会社サーバ400は、この出場後オンライン決済を、銀行サーバ500に定期的に依頼するバッチ処理で実行する。
図1は、本発明の実施形態による料金精算用ICカードおよび決済処理装置を含む、運賃決済システムの一構成例を示す図である。
図1に示す運賃決済システムは、料金精算用ICカード100、自動改札機200、決済処理装置300、鉄道会社サーバ400、銀行サーバ500を含んで構成されている。料金精算用ICカード100は、各鉄道利用者が携帯する、本発明の電子乗車券を構成する。本実施形態において、自動改札機200と決済処理装置300は各駅に設置され、相互に専用回線で接続されているものとする。また、鉄道会社サーバ400と、銀行サーバ500とは、各駅とは独立して設けられ、決済処理装置300と、鉄道会社サーバ400と、銀行サーバ500とは、相互にインターネット等の広域ネットワーク20で接続されているものとする。
まず、料金精算用ICカード100、自動改札機200、決済処理装置300、鉄道会社サーバ400、銀行サーバ500の機能的構成について図1を参照して説明する。
料金精算用ICカード100は、近接型通信により最寄りの自動改札機200と情報の送受信を行うICチップを搭載している。料金精算用ICカード100はカード番号と利用可能残高とルート情報等を記憶する。
カード番号とは、料金精算用ICカード100固有の番号であり、通常はICカード発行時に付与されている。本実施形態においてカード番号は利用者を一意に識別する利用者識別情報として機能する。また、ルート情報とは、料金精算用ICカード100の利用者がそれぞれの駅の自動改札機を入出場する際に記録される、乗車駅と途中の乗換駅等を含む乗車履歴となる乗車ルートの情報である。料金精算用ICカード100のハードウェア構成については公知であるので説明を省略する。
自動改札機200は、各駅に設置され、利用者の駅への入出場と運賃の支払いを監視および管理するものである。特に図示はしていないが、各駅に一つ以上設定されている。駅に入場または出場しようとする利用者が所持する料金精算用ICカード100から、利用可能な金額である利用可能残高の他に、その料金精算用ICカード100を一義的に識別することが可能な情報としてカード番号を取得する。
自動改札機200は、料金精算用ICカード100との上記通信に加え、LAN(Local Area Network)等の社内ネットワークにより構成される専用回線を介して決済処理装置300と通信する。さらに、自動改札機200は、決済処理装置300からの指示にしたがって、料金精算用ICカード100の利用者の駅への入場または駅からの出場を許可または不許可とする。また、図示していないが、自動改札機200には、液晶パネルなどの情報を表示する表示画面や音声を出力するスピーカなどの情報出力部を設け、必要な情報をメッセージなどの形式で利用者に通知するようにしてもよい。
具体的には、自動改札機200には図示しない扉が備えられており、通行が許可された場合は扉を開放して利用者の入場または出場を可能とする。一方で、通過が不許可となった場合、自動改札機200は、扉を閉じて、利用者が入場または出場できないようにする。自動改札機200のハードウェア構成については公知であるので説明を省略する。
決済処理装置300は、自動改札機200から料金精算用ICカード100に記憶された利用可能残高とルート情報を取得する。決済処理装置300は、ルート情報から運賃を算出し、算出した運賃を利用可能残高と比較して、運賃支払いの決済と、自動改札機200の通過を許可するかまたは不許可とするかの判定とを実行する。さらに決済処理装置300は、自動改札機200に通過を許可とするまたは不許可とする旨の指示を送信する。自動改札機200はこの指示に基づいて料金精算用ICカード100の利用者に対して通過を許可するまたは不許可とするための必要な動作を実行する。本明細書では、説明を簡便にするため、自動改札機200に通過の許可または不許可、すなわち、入場および出場の許可または不許可を含む各種指示を送信することを、自動改札機200を制御するという。
決済処理装置300の機能的構成の詳細について図1を参照して説明する。
図1に示すように、決済処理装置300は、自動改札機200と、鉄道会社サーバ400と、銀行サーバ500と通信するための通信部301と、自動改札機200から、料金精算用ICカード100に記憶されたカード情報と利用可能残高と乗車駅や乗換駅等のルート情報を含む運賃の支払いのために必要な決済情報を取得する決済情報取得部311と、上記ルート情報から運賃を算出して、当該運賃と上記利用可能残高を比較して利用可能残高が運賃を下回るか否かを判定する残高判定部312と、残高が下回る場合に、利用可能残高と運賃とから算出した不足分を、所定のセキュリティ条件の下で銀行から引落とす引落処理を実行する引落処理部313と、料金精算用ICカード100がかざされると料金精算用ICカード100の情報を読み取り、決済処理装置300、鉄道会社サーバ400、銀行サーバ500と連動して、通過を許可するか否かを決定して自動改札機200の扉を制御し、必要に応じて料金精算用ICカード100の情報の書き換えを行う通過許可部314と、鉄道会社サーバ400および銀行サーバ500と連動し、当該銀行サーバから当該鉄道会社サーバに入金を行う決済支援部315と、決済処理装置300の各種処理を制御する主制御部310と、を備える。
主制御部310は、決済情報取得部311、残高判定部312、引落処理部313、通過許可部314、決済支援部315を制御して、各種処理を実行させる。さらに主制御部310は、必要に応じて通信部301を介して、自動改札機200に各種指示を送信することにより、自動改札機200の制御も行う。
本実施形態では、決済処理装置300は各駅に設置されており、通信部301は、自動改札機200との通信を専用の通信回線を介して行い、鉄道会社サーバ400と、銀行サーバ500とはネットワーク20を介して行うものとして説明するが、これは例示にすぎず、決済処理装置300を各駅と独立して設置するようにしてもよい。この場合、通信部301は、自動改札機200との通信を、鉄道会社サーバ400と銀行サーバ500との通信と同様に、ネットワーク20を介して行うようにすることができる。また、決済処理装置300を鉄道会社サーバ400と一体として構成してもよい。
本実施形態において決済処理装置300は、CPU(Central Processing Unit)と、各種処理をするために必要なプログラムとデータなどを記憶した、ROM(Read Only Memory)、RAM(Randum Access Memory)などの記憶部と、自動改札機200と鉄道会社サーバ400と銀行サーバ500との通信が可能な通信部301とを含むコンピュータにより実現される。
すなわち、決済情報取得部311、残高判定部312、引落処理部313、通過許可部314、決済支援部315、および主制御部310は、CPUがROM、RAM、ハードディスクなどの記憶部に記憶された各種プログラムおよびデータなどの情報を読み込んで実行することによって実現される。決済情報取得部311、残高判定部312、引落処理部313、通過許可部314、決済支援部315、さらに必要に応じて自動改札機200は、主制御部310の制御の下に各種処理を実行する。
主制御部310の制御の下に実行される決済情報取得部311、残高判定部312、引落処理部313、通過許可部314、決済支援部315の処理の詳細については、動作例の説明で詳細する。
鉄道会社サーバ400は、決済処理装置300との上記通信を行う通信部401と、ダイレクト契約済の全ての料金精算用ICカード100に関わる情報を保持するカード会員DB(DataBase)402と、料金精算用ICカード100全ての利用履歴を保持するカード利用履歴DB(DataBase)403と、上記各種DBの検索や更新等の管理を行うDB管理部404と、を備える。
本実施形態において鉄道会社サーバ400は、CPUと、各種処理をするために必要なプログラムとデータなどを記憶した、ROM、RAM、ハードディスクなどの記憶部と、決済処理装置300との通信が可能な通信部401と、を含むコンピュータによって実現される。
すなわち、DB管理部404は、CPUがROM、RAM、ハードディスクなどの記憶部に記憶された各種プログラムおよびデータなどの情報を読み込んで実行することによって実現される。カード会員DB402とカード利用履歴DB403とは、鉄道会社サーバ400と独立して、設置してもよいし、あるいは、鉄道会社サーバ400に備えられた記憶部に設けてもよい。また、決済処理装置300自体の機能の一部または全部を、鉄道会社サーバ400または自動改札機200の中に組み込んでもよい。その場合、鉄道会社サーバ400及び/または自動改札機200は、協業して決済処理手段として機能する。
カード会員DB402は、ダイレクト契約を結んでいる全てのカード会員に関して、会員情報を保持する。ダイレクト契約とは、既に説明したように、料金精算時に残高が不足した場合に、鉄道会社が指定した銀行のオンライン決済システムを介して不足分を引落とすことを了承する契約である。会員情報には、カード番号、口座名義人、ログインID、ログインPWが含まれる。カード番号の項目は、各料金精算用ICカードに固有の番号を保持する。口座名義人の項目は、上記ダイレクト契約のオンライン決済システムで引落とす口座の名義人の氏名を保持する。ログインIDとログインPWの項目は、上記ダイレクト契約のオンライン決済システムにログインする際の利用者IDおよびパスワードを保持する。
カード利用履歴DB403は、ダイレクト契約を結んでいるカード会員に限らず、全てのカード会員に関して、履歴情報を保持する。履歴情報には、カード、適用項目、日時、金額、残高が含まれる。カード番号は、各料金精算用ICカードに固有の番号を保持する。摘要項目は、乗車履歴なら乗車区間、他の入出金履歴なら入出金の内容(例えば、オンライン決済システムからのチャージ履歴なら銀行名)を保持する。日時の項目は、当該摘要の発生した日時を保持する。金額の項目は、出金履歴なら負の金額、入金履歴なら正の金額を保持する。残高の項目は、当該入出金の後に残された利用可能残高を保持する。
銀行サーバ500は、鉄道会社指定の銀行のサーバであり、既に説明したように、上記ダイレクト契約を実行するために必要な認証処理などを含むオンライン決済システムを既に備えているものとする。銀行サーバ500は、一般的な銀行のシステムに基づいて構築することが可能であるので、そのハードウェア構成については省略する。
次に、図2および図3のフローチャートを用いて、本第1実施形態における出場後オンライン決済の一例について説明する。以下の処理は、特に言及のない限り、それぞれの構成部に含まれるCPUの制御に基づいて実行される。
図2は、図1の料金精算用ICカード100および乗車駅の決済処理装置300を含む運賃決済システムにより実行される入場処理の一例を示すフローチャートである。入場処理は、利用者が乗車する駅に入場するため、乗車駅の自動改札機200を通過する際の一連の処理であり、利用者が料金精算用ICカード100を自動改札機200にかざした時を契機として開始する。
ステップS101において、乗車駅の決済処理装置300の決済情報取得部311は自動改札機200を介して、料金精算用ICカード100に記憶されたカード番号と利用可能残高を取得する。
ステップS102において、決済処理装置300の残高判定部312は、ステップS101で取得した利用可能残高が初乗り運賃未満であるか否かを判定する。すなわち、初乗り運賃が最低必要な残高として設定されている。
残高判定部312により利用可能残高が初乗り運賃以上であると判定された場合、ステップS102においてNOと判定され、処理はステップS103に進む。
ステップS103において、通過許可部314は入場許可と判定し、入場許可処理が実行される。具体的には、決済処理装置300の通過許可部314は、自動改札機200を介して、利用者がかざした料金精算用ICカード100に乗車駅の情報を書き込む。さらに通過許可部314は自動改札機200を制御して、自動改札機200の扉を開放する。利用者が自動改札機200を通過することにより、入場処理は正常終了する。
一方、利用可能残高が初乗り運賃未満である場合、ステップS102においてYESと判定され、処理はステップS104に進む。ステップS104において、決済処理装置300の決済支援部315は、通信部301を介して鉄道会社サーバ400に、ステップS101で取得したカード番号を送信して、当該カード番号がカード会員DB402に登録されているか否かの照会を依頼し、照会結果を取得する。
ステップS105において、決済処理装置300の決済支援部315は、ステップS104で取得した照会結果から、利用者がダイレクト契約を結んでいるか否かを判定する。ステップS104で送信したカード番がダイレクト契約を結んでいない(以後、「未登録」と呼ぶ)と判定された場合、ステップS105においてNOと判定され、処理はステップS106に進む。
ステップS106において、決済処理装置300の通過許可部314は、入場不許可と判定し、入場不許可処理を実行する。ここで、入場不許可処理とは、自動改札機200を制御して扉を閉じ、自動改札機200の表示画面に「残高不足」等のメッセージを表示する等の一連の処理である。入場不許可処理の詳細については、公知の技術であるので省略する。これにより、利用者は自動改札機200を通過できないこととなり、入場処理は異常終了する。
一方、ステップS104で送信したカード番号が登録済(ダイレクト契約有り)で、口座名義とログインIDが取得できた場合、ステップS105においてYESと判定され、処理はステップS107に進む。この時点で、決済処理装置300の決済支援部315により不足分については銀行サーバ500から鉄道会社サーバ400に入金を行うことが確定する。
ステップS107において、決済処理装置300の通過許可部314は自動改札機200を制御して、自動改札機200の表示画面に「残高不足ですが、出場後にオンライン決済します」等のメッセージを表示する。その後、処理はステップS103に進み、自動改札機200での入場処理は正常終了する。
次に、図3は、図1の料金精算用ICカード100および降車駅の決済処理装置300を含む運賃決済システムにより実行される第1実施形態の出場処理を示すフローチャートである。
出場処理とは、利用者が降車した駅から出場するため、自動改札機200を通過する際の一連の処理であり、利用者が料金精算用ICカード100を自動改札機200にかざした時を契機として開始する。
ステップS121において、降車駅の決済処理装置300の決済情報取得部311は、自動改札機200を介して、料金精算用ICカード100に記憶されたカード番号とルート情報と利用可能残高を取得する。
ステップS122において、決済処理装置300の残高判定部312は、ステップS121で取得したルート情報から運賃を算出する。
ステップS123において、決済処理装置300の残高判定部312は、ステップS122で算出した運賃が、ステップS121で取得した利用可能残高を超えるか否かを判定する。運賃が利用可能残高以下の場合、ステップS121においてNOと判定され、処理はステップS124に進む。
ステップS124において、決済処理装置300の通過許可部314は、ステップS121で取得した利用可能残高からステップS122で算出した運賃を差し引きその残高を、自動改札機200を介して、料金精算用ICカード100に新たな利用可能残高として記憶させる。
さらに、ステップS125において、決済処理装置300の通過許可部314は、出場許可と判定し、出場許可処理が実行される。具体的には、決済支援部315は通信部301を介して、ステップS121で取得されたカード番号とルート情報と利用可能残高、およびステップS122で算出した運賃を、ネットワーク20を介して鉄道会社サーバ400に送信し、カード利用履歴DB403に乗車履歴として記録させる。さらに、通過許可部314は自動改札機200を制御して、自動改札機200の扉を開放する。利用者が自動改札機200を通過することにより、出場処理は正常終了する。
一方、運賃が利用可能残高を超える場合、ステップS123においてYESと判定され、処理はステップS126に進む。ステップS126において、決済処理装置300の決済支援部315は、通信部301を介して鉄道会社サーバ400に、ステップS121で取得したカード番号を送信して、利用者のログインIDとログインPWの照会を依頼し、照会結果を取得する。
ステップS127において、決済処理装置300の決済支援部315は、ステップS126で取得した照会結果から、利用者がダイレクト契約を結んでいるか否かを判定する。ステップS126で送信したカード番号が未登録(ダイレクト契約無し)であった場合、ステップS127においてNOと判定され、処理はステップS128に進む。
ステップS128において、決済処理装置300の通過許可部314は、出場不許可処理を実行する。ここで、出場不許可処理とは、自動改札機200を制御して扉を閉じ、自動改札機200の表示画面に「残高不足」等のメッセージを表示する等の一連の処理である。出場不許可処理の詳細については、公知の技術であるので省略する。これにより、利用者は自動改札機200を通過できないこととなり、出場処理は異常終了する。
一方、ステップS126で送信したカード番号が登録済(ダイレクト契約有り)で、ログインIDとログインPWが取得できた場合、ステップS127においてYESと判定され、処理はステップS129に進む。この時点で、決済処理装置300の決済支援部315により不足分については銀行サーバ500から鉄道会社サーバ400に入金を行うことが確定する。
ステップS129において、決済処理装置300の通過許可部314は、自動改札機200の表示画面に「残高不足ですが、出場後にオンライン決済します」等のメッセージを表示させる。
ステップS130において、通過許可部314は出場許可と判定し、出場許可処理が実行される。具体的には、決済処理装置300の通過許可部314は、自動改札機200を介して、利用者がかざした料金精算用ICカード100に記憶される利用可能残高を0に更新する。通過許可部314は、自動改札機200を制御して、自動改札機200の扉を開放する。利用者は自動改札機200を通過して駅を出場する。
この処理により料金精算用ICカード100の残高は本来マイナスとなるべきであるが、後述する出場後オンライン決済で調整が行われることを前提として処理される。すなわち、後述する出場後オンライン決済で引落とされた金額は、利用者の料金精算用ICカード100からの支払として充当される。
ステップS131において、決済処理装置300の決済支援部315は、通信部301を介して鉄道会社サーバ400に、不足分を出場後にオンライン決済する旨を通知し、さらにステップS121で取得されたカード番号とルート情報と利用可能残高、ステップS122で算出した運賃、および銀行口座から引落して充当する金額に関する情報を通知する。ステップS131において、決済支援部315が鉄道会社サーバ400に不足分を出場後にオンライン決済する旨を通知すると、ステップS132の出場後オンライン決済が予約される。
本実施形態では、ステップS132の出場後オンライン決済は、鉄道会社サーバ400が銀行サーバ500にまとめて依頼する定期的なバッチ処理の中に組み込まれて実行される。具体的には、鉄道会社サーバ400では、ステップS131で鉄道会社サーバ400に通知された情報に基づいて出場後オンライン決済の処理がバッチ処理の一部として組み込まれる。
そして定期的なバッチ処理を銀行サーバ500に依頼することにより、鉄道会社サーバ400は、ステップS132の出場後オンライン決済を実行して、不足分の金額を引落とす。そして、鉄道会社サーバ400は、ステップS131で通知された情報をカード利用履歴DB403に乗車履歴とチャージ履歴として記録する。これにより、料金精算用ICカード100の利用可能残高は実際に0となり、出場処理は正常終了する。
以上説明したように、本発明の第1実施形態によれば、ダイレクト契約を結んだ利用者は、残高不足の場合でも、出場後オンライン決済により銀行サーバ500から不足分が引落とされる。したがって、料金精算用ICカードの利用者が、駅に入場するために自動改札機を通過する際、または下車して自動改札機を通過する際に、当該ICカードの残高が運賃よりも不足した場合でも、自動改札機で止められることはない。したがって、円滑に料金を精算することができ、ラッシュ時における混雑も緩和することができる。
また、オンライン決済を定期的なバッチ処理にまとめて銀行サーバ500に依頼するので、銀行側の負担も少なくてすむ。例えば1日分の引落をまとめて、一括処理で銀行サーバ500から引落とせば、トラフィックの量を最低限に抑えることができる。
なお、本実施形態では、残高不足の利用者が出場した場合、不足分を銀行サーバ500から引落とす処理を定期的なバッチ処理にまとめて銀行サーバ500に依頼することとしたが、出場直後に不足分を銀行サーバ500から引落とすようにしてもよい。
以上の説明において、銀行サーバ500からの引落は必ず成功するものとしているが、実際には、銀行口座の残高不足で引落不能となる場合もあり得る。そのような場合には、例えば同一利用者名義の定期預金口座から借り入れることができる追加契約を結んでおく等の方策を別途取らなければならない。このような引落不能時にも利用者を出場させてしまうリスクを回避するため、利用者が出場する前に不足分の引落を完了させる実施形態として、第2実施形態と第3実施形態を以下では説明する。
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態と略同様であるが、第1実施形態では、自動改札機200の通過時に残高が不足していることが判明すると、不足分を銀行口座から引落とすことを前提に、利用者を自動改札機から通過させ、不足分の清算を利用者の出場後に行っていたが、第2実施形態では、自動改札機200を通過する際に不足分の引落をオンラインで決済する略リアルタイムオンライン決済を行う点が第1実施形態と異なる。
具体的には、料金精算時に残高が不足することが見込まれた場合、今後の所定時間以内に発生が予想される引落に備えて、銀行サーバ500にカード会員の口座を予め特定させておき、当該引落の依頼を受信した時には速やかに引落を完了できるように準備させておく。このように、略リアルタイムオンライン決済を行うために準備する処理を「スタンバイ処理」と呼ぶ。また、上記所定時間を過ぎても上記引落の依頼がない場合は、いつまでも待つわけにはいかないので、銀行サーバ500におけるスタンバイ処理は取り消されるものとする。
本実施形態では、銀行サーバ500が、このようなスタンバイ処理の機能を既に備えていることを前提とする。第2実施形態の構成例は、図1に示す第1実施形態と同様の構成で実現できるので、詳細な説明は省略する。
次に、図4および図5のフローチャートを用いて、本第2実施形態における動作の一例について説明する。以下の処理は、特に言及のない限り、それぞれの構成部に含まれる図示していないCPUの制御に基づいて実行される。
図4は、図1の料金精算用ICカード100および乗車駅の決済処理装置300を含む運賃決済システムにより実行される第2実施形態の入場処理の一例を示すフローチャートである。入場処理とは、利用者が乗車する駅に入場するため、自動改札機200を通過する際の一連の処理であり、利用者が料金精算用ICカード100を自動改札機200にかざした時、それを契機として開始する。
ステップS201において、乗車駅の決済処理装置300の決済情報取得部311は、自動改札機200を介して、料金精算用ICカード100から、カード番号と利用可能残高を取得する。
ステップS202において、決済処理装置300の残高判定部312は、ステップS201で取得した利用可能残高が所定の金額未満であるか否かを判定する。ここで、所定の金額とは、運賃がそれを超えることはないと考えられる金額であり、すなわち、最低限必要となる残高(以下、「最低必要残高」と呼ぶ)である。
なお、ここで最低必要残高は、事前に設定された金額であってもよく、あるいは、利用者自らが設定してもよいが、設定を高くし過ぎると、後述するスタンバイ処理が増えすぎて、銀行サーバ500の負担が増加することになる。一方、最低必要残高の設定を低くし過ぎると、後述する出場処理における引落失敗の確率が高くなる。最低必要残高は、このようなトレードオフを考慮して適宜決定してもよい。また、その性質から、他の実施形態において入場時に利用可能残高と常に比較される初乗り運賃を第1の最低必要残高とすると、本実施形態ではステップS202で設定する所定の金額は第2の最低必要残高となる。
利用可能残高が最低必要残高以上である場合、ステップS202においてNOと判定され、処理はステップS203に進む。ステップS203において、決済処理装置300の通過許可部314は、入場許可と判定し、入場許可処理が実行される。具体的には、決済処理装置300の通過許可部314は、自動改札機200を介して、利用者がかざした料金精算用ICカード100に乗車駅の情報を書き込む。さらに、この時点で通過許可部314は、自動改札機200を制御して、自動改札機200の扉を開放する。利用者が自動改札機200を通過することにより、入場処理は正常終了する。
一方、利用可能残高が最低必要残高未満である場合、ステップS202においてYESと判定され、処理はステップS204に進む。ステップS204において、決済処理装置300の決済支援部315は、通信部301を介して鉄道会社サーバ400のDB管理部404に、ステップS201で取得したカード番号を送信して、カード会員DB402に登録されている口座名義とログインIDの照会を依頼し、照会結果を取得する。
ステップS205において、決済処理装置300の決済支援部315は、ステップS204で取得した照会結果から、利用者がダイレクト契約を結んでいるか否かを判定する。ステップS204で送信したカード番号が未登録(ダイレクト契約無し)であった場合、ステップS205においてNOと判定され、処理はステップS206に進む。
ステップS206において、決済処理装置300の残高判定部312は、ステップS201で取得した利用可能残高が初乗り運賃未満であるか否かを判定する。利用可能残高が初乗り運賃以上である場合、ステップS206においてNOと判定され、処理はステップS203に進む。すなわち、入場許可処理が実行されて、入場処理は正常終了する。一方、利用可能残高が初乗り運賃未満である場合、ステップS206においてYESと判定され、処理はステップS207に進む。
ステップS207において、決済処理装置300の通過許可部314は、入場不許可と判定し、第1実施形態と同様の入場不許可処理を実行する。これにより、利用者は自動改札機200を通過できないこととなり、入場処理は異常終了する。
一方、ステップS204で送信したカード番号が登録済(ダイレクト契約有り)で、口座名義とログインIDが取得できた場合、ステップS205においてYESと判定され、処理はステップS208に進む。この時点で、決済処理装置300の決済支援部315により不足分については銀行サーバ500から鉄道会社サーバ400に入金を行うことが確定する。
ステップS208において、決済処理装置300の決済支援部315は、ステップS204で取得した利用者の口座名義とログインIDを、銀行サーバ500に送信して、スタンバイ処理を依頼する。
スタンバイ処理とは、今後所定時間以内に発生が予想される引落に備えて、カード会員の口座を予め特定しておき、当該引落の依頼を受信した時には速やかに引落を完了できるように準備する、銀行サーバ500側の処理である。既に説明したように、本実施形態では銀行サーバ500が、スタンバイ処理の機能を既に備えていることを前提としている。
上記所定時間を過ぎても上記引落の依頼がない場合は、スタンバイ処理は取り消されるものとする。この後、処理はステップS209に進む。ステップS209において、決済処理装置300の残高判定部312は、ステップS201で取得した利用可能残高が初乗り運賃未満であるか否かを判定する。利用可能残高が初乗り運賃以上である場合、ステップS209においてNOと判定され、処理はステップS203に進む。すなわち、入場許可処理が実行されて、入場処理は正常終了する。一方、利用可能残高が初乗り運賃未満である場合、ステップS209においてYESと判定され、処理はステップS210に進む。
ステップS210において、決済処理装置300の主制御部310は、自動改札機200の表示画面に「残高不足ですが、出場時にオンライン決済します」等のメッセージを表示させる。その後、処理はステップS203に進み、入場処理は正常終了する。ここで表示されるメッセージは、第1実施形態の入場処理で表示されるメッセージとは異なる。すなわち、第1実施形態では「出場後に」であったものが、第2実施形態では「出場時に」と表示される。
次に、図5を参照して、第2実施形態の出場処理について説明する。図5は、図1の料金精算用ICカード100および降車駅の決済処理装置300を含む運賃決済システムにより実行される第2実施形態の出場処理の一例を示すフローチャートである。
出場処理は、利用者が降車した駅から出場するため、降車駅の自動改札機200を通過する際の一連の処理であり、利用者が料金精算用ICカード100を自動改札機200にかざした時を契機として開始する。
ステップS221において、降車駅の決済処理装置300の決済情報取得部311は、自動改札機200を介して、料金精算用ICカード100から、カード番号とルート情報と利用可能残高を取得する。
ステップS222において、降車駅の決済処理装置300の残高判定部312は、ステップS221で取得したルート情報から運賃を算出する。
ステップS223において、降車駅の決済処理装置300の残高判定部312は、ステップS222で算出した運賃が、ステップS221で取得した利用可能残高を超えるか否かを判定する。運賃が利用可能残高以下の場合、ステップS223においてNOと判定され、処理はステップS224に進む。
ステップS224において、決済処理装置300の主制御部310は、ステップS221で取得した利用可能残高から今回の運賃を差し引いて、通過許可部314により自動改札機200を介して、料金精算用ICカード100に新たな利用可能残高として記憶する。
さらに、ステップS225において、決済処理装置300の通過許可部314は、出場許可と判定し、出場許可処理が実行される。具体的には、決済処理装置300の決済支援部315は、ステップS221で取得されたカード番号とルート情報と利用可能残高、およびステップS222で算出した運賃を、ネットワーク20を介して鉄道会社サーバ400に送信し、カード利用履歴DB403に乗車履歴として記録させる。さらに、通過許可部314は自動改札機200を制御して、自動改札機200の扉を開放する。利用者が自動改札機200を通過することにより、出場処理は正常終了する。
一方、運賃が利用可能残高を超える場合、ステップS223においてYESと判定され、処理はステップS226に進む。ステップS226において、決済処理装置300の決済支援部315は、通信部301を介して鉄道会社サーバ400に、ステップS221で取得したカード番号を送信し、利用者のログインIDとログインPWの照会を依頼して、照会結果を取得する。
ステップS227において、決済処理装置300の決済支援部315は、ステップS226で取得した照会結果から、利用者がダイレクト契約を結んでいるか否かを判定する。
ステップS226で送信したカード番号が未登録(ダイレクト契約無し)であった場合、ステップS227においてNOと判定され、処理はステップS228に進む。
ステップS228において、決済処理装置300の通過許可部314は、出場不許可と判定し、上述の第1実施形態と同様の出場不許可処理を実行する。これにより、利用者は自動改札機200を通過できないこととなり、出場処理は異常終了する。
一方、ステップS226で送信したカード番号が登録済(ダイレクト契約有り)で、ログインIDとログインPWが取得できた場合、ステップS227においてYESと判定され、処理はステップS229に進む。この時点で、決済処理装置300の決済支援部315により不足分については銀行サーバ500から鉄道会社サーバ400に入金を行うことが確定する。
ステップS229において、決済処理装置300の引落処理部313は、ステップS226で取得したログインIDとログインPWで銀行サーバ500にログインし、不足分の金額を引落して、直ちにログアウトする。ここで引落とされた金額は、利用者の料金精算用ICカード100からの支払として充当される。ここで、銀行サーバ500側での引落は、引落金額以上の口座残高があり、前述の入場処理のステップS208でスタンバイ処理が実行されており、かつ当該スタンバイ処理がまだ取り消されていない場合、すなわち、ステップS208で説明した所定時間以内に出場した場合にのみ成功し、それ以外の場合は失敗して、その旨の応答が銀行サーバ500から返される。
ステップS230において、決済処理装置300の決済支援部315は、ステップS229での銀行サーバ500の応答から、上記引落が成功したか否かを判定する。上記引落が失敗したとの応答が銀行サーバ500から返された場合、ステップS230においてNOと判定され、処理はステップS228に進み、出場処理は異常終了する。結果として利用者は通過できなくなる。一方、上記引落が成功したとの応答が銀行サーバ500から返された場合、ステップS230においてYESと判定され、処理はステップS231に進む。
ステップS231において、決済処理装置300の通過許可部314は、自動改札機200を介して、利用者がかざした料金精算用ICカード100に記憶される利用可能残高を0に更新する。実際には、一旦マイナスとなったのであるが、不足分が直ちに銀行サーバ500からチャージされた結果として、0となったのである。
ステップS232において、決済処理装置300の通過許可部314は、出場許可と判定し、出場許可処理が実行される。具体的には、決済処理装置300の決済支援部315は、ステップS221で取得されたカード番号とルート情報と利用可能残高、ステップS222で算出した運賃、およびステップS229で引落した金額を、ネットワーク20を介して鉄道会社サーバ400に送信し、カード利用履歴DB403に乗車履歴とチャージ履歴として記録させる。この時点で通過許可部314は自動改札機200を制御して、自動改札機200の扉を開放する。利用者は自動改札機200を通過して駅を出場する。これにより、出場処理は正常終了する。
以上説明したように、本発明の第2実施形態によれば、利用者が乗車駅に入場した段階で銀行サーバ500をスタンバイさせておくので、残高不足の時でも、降車駅で出場する直前に銀行サーバ500から不足分を引落とすことができる。
これにより、本発明の第1実施形態の効果に加えて、第1実施形態で言及した、引落不能でも利用者を出場させてしまうというリスクが回避されるという効果を得ることができる。
ただし、第2実施形態でも、銀行サーバ500に長時間のスタンバイ処理という負担をかけることになる一方で、上記のように、スタンバイ処理の負担を軽減するための所定金額や所定時間を設定すると、運賃が所定金額を上回る、あるいは、乗車時間が所定時間を上回る等の想定外の事態によりスタンバイ処理が解除され、結果として、引落失敗が生じる可能性が残る。そこで、長時間のスタンバイ処理を不要とする手法について、以下の第3実施形態で説明する。
[第3実施形態]
第3実施形態は降車駅の自動改札機200を通過する際に不足分の引落をオンラインで決済する略リアルタイムオンライン決済を行う点においては第2実施形態と略同様であるが、第3実施形態では、スタンバイ処理を料金精算用ICカード100が自動改札機200から所定の距離以内に近づいた時に開始する点が第2実施形態と異なる。
具体的には、料金精算用ICカード100が自動改札機200から所定の距離以内に近づいた時に料金精算時に残高が不足することが見込まれた場合、今後の所定時間以内に発生が予想される引落に備えて、銀行サーバ500にカード会員の口座を予め特定させておき、当該引落の依頼を受信した時には速やかに引落を完了できるように準備させるスタンバイ処理を実行する。
第3実施形態の構成例は、基本的に第1実施形態と同様で、図1によって示される。ただし、料金精算用ICカード100は、通常の近接型通信に加えて、数m〜十数mの距離から自動改札機200に検知される遠隔型通信の機能も備えているものとする。この遠隔型通信機能は、後述する出場準備処理において利用される。
次に、図6乃至図8のフローチャートを用いて、本第3実施形態における動作の一例について説明する。以下の処理は、特に言及のない限り、それぞれの構成部に含まれる図示していないCPUの制御に基づいて実行される。
図6は、図1の料金精算用ICカード100および乗車駅の決済処理装置300を含む運賃決済システムにより実行される第3実施形態の入場処理の一例を示すフローチャートである。入場処理とは、利用者が乗車する駅に入場するため、乗車駅の自動改札機200を通過する際の一連の処理であり、利用者が料金精算用ICカード100を自動改札機200にかざした時、それを契機として開始する。
ステップS301において、乗車駅の決済処理装置300の決済情報取得部311は、自動改札機200を介して、料金精算用ICカード100から、カード番号と利用可能残高を取得する。
ステップS302において、決済処理装置300の残高判定部312はステップS301で取得した利用可能残高が初乗り運賃未満であるか否かを判定する。
利用可能残高が初乗り運賃以上である場合、ステップS302においてNOと判定され、処理はステップS303に進む。ステップS303において、決済処理装置300の通過許可部314は、入場許可と判定し、入場許可処理が実行される。具体的には、決済処理装置300の通過許可部314は、自動改札機200を介して、利用者がかざした料金精算用ICカード100に乗車駅の情報を書き込む。さらに、この時点で通過許可部314は自動改札機200を制御して、自動改札機200の扉を開放する。利用者が自動改札機200を通過することにより、入場処理は正常終了する。
一方、利用可能残高が初乗り運賃未満である場合、ステップS302においてYESと判定され、処理はステップS304に進む。ステップS304において、決済処理装置300の決済支援部315は、通信部301を介して鉄道会社サーバ400に、ステップS301で取得したカード番号を送信して、当該カード番号がカード会員DB402に登録されているか否かの照会を依頼し、照会結果を取得する。
ステップS305において、決済処理装置300の決済支援部315は、ステップS304で取得した照会結果から、利用者がダイレクト契約を結んでいるか否かを判定する。
ステップS304で送信したカード番号が未登録(ダイレクト契約無し)であった場合、ステップS305においてNOと判定され、処理はステップS306に進む。ステップS306において、決済処理装置300の通過許可部314は、入場不許可と判定し、第1実施形態と同様の入場不許可処理を実行する。これにより、利用者は自動改札機200を通過できないこととなり、入場処理は異常終了する。
一方、ステップS304で送信したカード番号が登録済(ダイレクト契約有り)であった場合、ステップS305においてYESと判定され、処理はステップS307に進む。この時点で、決済処理装置300の決済支援部315により不足分については銀行サーバ500から鉄道会社サーバ400に入金を行うことが確定する。
ステップS307において、決済処理装置300の主制御部310は、自動改札機200の表示画面に「残高不足ですが、出場時にオンライン決済します」等のメッセージを表示させる。その後、処理はステップS303に進み、入場処理は正常終了する。
ここで表示されるメッセージが、第1実施形態の入場処理とは異なる。すなわち、第1実施形態では「出場後に」であったものが、第3実施形態では「出場時に」と表示される。
次に、第3実施形態の出場処理について説明する。第3実施形態の出場処理は、出場準備処理と出場本処理とからなる。
図7は、図1の料金精算用ICカード100および乗車駅の決済処理装置300を含む運賃決済システムにより実行される第3実施形態の出場準備処理の一例を示すフローチャートである。
出場準備処理とは、利用者が自動改札機200の数m近傍に近づいてから、実際に料金精算用ICカード100を自動改札機200にかざすまでの間、銀行サーバ500にスタンバイ処理を依頼する処理である。出場準備処理は、降車駅に設置されている複数の自動改札機200のうちのいずれかが、料金精算用ICカード100の遠隔型通信を検知し、通信部301と通信を開始すると、その旨を決済処理装置300の主制御部310に通知した際に、その通知を契機として開始する。
ステップS321において、降車駅の決済処理装置300の決済支援部315は、料金精算用ICカード100の遠隔型通信を検知した自動改札機200を介して、料金精算用ICカード100から、カード番号を取得する。
ステップS322において、決済処理装置300の決済支援部315は、上記カード番号の料金精算用ICカード100が、既に出場準備処理中であるか否かを判定する。料金精算用ICカード100の遠隔型通信は複数の自動改札機200に検知される可能性があるので、既に出場準備処理が開始されている場合がある。そのような場合は、ステップS322においてYESと判定され、重複処理を避けるために、処理は直ちに終了する。
一方、上記カード番号の料金精算用ICカード100が、未だ出場準備処理中でない場合、ステップS322においてNOと判定され、処理はステップS323に進む。ステップS323において、決済処理装置300の決済支援部315は、通信部301を介して鉄道会社サーバ400に、ステップS321で取得したカード番号を送信し、利用者の口座名義とログインIDの照会を依頼して、照会結果を取得する。
ステップS324において、決済処理装置300の決済支援部315は、ステップS323で取得した照会結果から、利用者がダイレクト契約を結んでいるか否かを判定する。
ステップS323で送信したカード番号が未登録(ダイレクト契約無し)であった場合、ステップS324においてNOと判定され、処理は直ちに終了する。一方、ステップS323で送信したカード番号が登録済(ダイレクト契約有り)で、利用者の口座名義とログインIDが取得された場合、ステップS324においてYESと判定され、処理はステップS325に進む。
ステップS325において、決済処理装置300の決済支援部315は、ステップS323で取得した利用者の口座名義とログインIDを、銀行サーバ500に送信して、スタンバイ処理を依頼する。スタンバイ処理については、第2実施形態の入場処理のステップS208で説明したスタンバイ処理と同様である。第2実施形態では入場処理でスタンバイ処理を開始したため、利用者が出場するまで長時間のスタンバイ処理が必要となったが、本第3実施形態のスタンバイ処理は、出場するまでの数秒間で通常は終了する。
ステップS326において、決済処理装置300の決済支援部315は、上記カード番号の料金精算用ICカード100との遠隔型通信が続行中であるか否かを判定する。利用者は自動改札機200に近づいても出場するとは限らず、また離れていく可能性があるからである。利用者が出場せずに遠隔型通信が途切れた場合、ステップS326においてNOと判定され、処理はステップS327に進む。
ステップS327において、決済処理装置300の決済支援部315は、ステップS325で依頼したスタンバイ処理の取り消しを、銀行サーバ500に依頼する。これにより、出場準備処理は終了する。
一方、上記カード番号の料金精算用ICカード100との遠隔型通信が続行中である場合、ステップS326においてYESと判定され、処理はステップS328に進む。ステップS328において、決済処理装置300の決済支援部315は、上記カード番号の料金精算用ICカード100が既に出場したか否かを判定する。利用者が料金精算用ICカード100をいずれかの自動改札機200にかざして、その結果、後述する出場本処理が既に終了している場合、ステップS328においてYESと判定され、処理はステップS327に進み、スタンバイ処理が取り消されて、出場準備処理は終了する。
一方、利用者が未だ料金精算用ICカード100をいずれの自動改札機200にもかざしていない場合、ステップS328においてNOと判定され、処理はステップS326に戻り、料金精算用ICカード100との遠隔型通信が途切れるか、利用者が出場するまでの間、ステップS326およびS328のループ処理が繰り返される。
以上、出場準備処理について説明したが、料金精算用ICカード100の遠隔型通信を検知した自動改札機200と、実際に利用者が料金精算用ICカード100をかざして通過しようとする自動改札機200は同じとは限らないので、出場本処理については別途説明する。
図8は、図1の料金精算用ICカード100および降車駅の決済処理装置300を含む運賃決済システムにより実行される第3実施形態の出場本処理の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の出場本処理は、利用者が降車した駅から出場するため、降車駅の自動改札機200を通過する際の一連の処理であり、図7を参照して説明した出場準備処理が実行されていることが前提となり、かつ、利用者が料金精算用ICカード100を自動改札機200にかざした時に、それを契機として開始する。
ステップS341において、降車駅の決済処理装置300の決済情報取得部311は、自動改札機200を介して、料金精算用ICカード100から、カード番号とルート情報と利用可能残高を取得する。
ステップS342において、決済処理装置300の残高判定部312は、ステップS341で取得したルート情報から運賃を算出する。
ステップS343において、決済処理装置300の残高判定部312は、ステップS342で算出した運賃が、ステップS341で取得した利用可能残高を超えるか否かを判定する。運賃が利用可能残高以下の場合、ステップS343においてNOと判定され、処理はステップS344に進む。
ステップS344において、決済処理装置300の主制御部310は、ステップS341で取得した利用可能残高から今回の運賃を差し引いて、通過許可部314により自動改札機200を介して、料金精算用ICカード100に新たな利用可能残高として記憶する。
さらに、ステップS345において、決済処理装置300の通過許可部314は、出場許可と判定し、出場許可処理を実行する。具体的には、決済処理装置300の決済支援部315は、ステップS341で取得されたカード番号とルート情報と利用可能残高、およびステップS342で算出した運賃を、ネットワーク20を介して鉄道会社サーバ400に送信し、カード利用履歴DB403に乗車履歴として記録させる。さらに、この時点で通過許可部314は自動改札機200を制御して、自動改札機200の扉を開放する。利用者が自動改札機200を通過することにより、出場本処理は正常終了する。
一方、運賃が利用可能残高を超える場合、ステップS343においてYESと判定され、処理はステップS346に進む。ステップS346において、決済処理装置300の決済支援部315は、通信部301を介して鉄道会社サーバ400に、ステップS341で取得したカード番号を送信し、利用者のログインIDとログインPWの照会を依頼して、照会結果を取得する。
ステップS347において、決済処理装置300の決済支援部315は、ステップS346で取得した照会結果から、利用者がダイレクト契約を結んでいるか否かを判定する。
ステップS346で送信したカード番号が未登録(ダイレクト契約無し)であった場合、ステップS347においてNOと判定され、処理はステップS348に進む。ステップS348において、決済処理装置300の通過許可部314は、出場不許可と判定し、第1実施形態で説明したのと同様の出場不許可処理を実行する。これにより、利用者は自動改札機200を通過できないこととなり、出場本処理は異常終了する。
一方、ステップS346で送信したカード番号が登録済(ダイレクト契約有り)で、ログインIDとログインPWが取得できた場合、ステップS347においてYESと判定され、処理はステップS349に進む。ステップS349において、決済処理装置300の引落処理部313は、ステップS346で取得したログインIDとログインPWで銀行サーバ500にログインし、不足分の金額を引落して、直ちにログアウトする。ここで引落とされた金額は、利用者の料金精算用ICカード100からの支払として充当される。
ここで、銀行サーバ500側での引落は、前述の出場準備処理で確実にスタンバイ処理が実行されているため、ほぼ必ず成功するが、引落金額以上の口座残高がない場合は当然失敗し、その旨の応答が銀行サーバ500から返される。
ステップS350において、決済処理装置300の決済支援部315は、ステップS349での銀行サーバ500の応答から、上記引落が成功したか否かを判定する。上記引落が失敗したとの応答が銀行サーバ500から返された場合、ステップS350においてNOと判定され、処理はステップS348に進み、決済処理装置300の通過許可部314は、出場不許可と判定し、出場不許可処理を実行する。これにより、利用者は自動改札機200を通過できないこととなり、出場本処理は異常終了する。
一方、上記引落が成功したとの応答が銀行サーバ500から返された場合、ステップS350においてYESと判定され、処理はステップS351に進む。ステップS351において、決済処理装置300の通過許可部314は、自動改札機200を介して、利用者がかざした料金精算用ICカード100に記憶される利用可能残高を0に更新する。実際には、一旦マイナスとなったのであるが、不足分が直ちに銀行サーバ500からチャージされた結果として、0となる。
ステップS352において、決済処理装置300の通過許可部314は、出場許可と判定し、出場許可処理が実行される。具体的には、決済処理装置300の決済支援部315は、ステップS341で取得されたカード番号とルート情報と利用可能残高、ステップS342で算出した運賃、およびステップS349で引落した金額を、ネットワーク20を介して鉄道会社サーバ400に送信し、カード利用履歴DB403に乗車履歴とチャージ履歴として記録させる。さらに、この時点で通過許可部314は自動改札機200を制御して、自動改札機200の扉を開放する。利用者が自動改札機200を通過することにより、出場本処理は正常終了する。
以上説明したように、本発明の第3実施形態によれば、利用者が降車駅の自動改札機200から所定の距離以内に近づいた時に銀行サーバ500をスタンバイさせ、続いて自動改札機200に料金精算用ICカードをかざした時、直ちに不足分を銀行サーバ500から引落とすことができる。
これにより、本発明の第1実施形態および第2実施形態の効果に加えて、銀行サーバ500に長時間のスタンバイ処理という負担を掛けることなく、残高不足の時に利用者をほぼ確実に通過させることができるという効果を得ることができる。また、将来的に処理時間が短縮されれば、上記のような遠隔型通信を用いた出場準備処理は不要となり、出場本処理の近接型通信だけで瞬時に引落とせるようになることは言うまでもない。
以上、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明した。なお、上述の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
上述の実施形態では、決済処理装置300を、入出場処理を実行する自動改札機200と同じ駅構内に設置されるものとして説明したが、本発明はこれに限定されない。決済処理装置300は、例えば、鉄道会社サーバ400または銀行サーバ500と一体として設置してもよいし、自動改札機200、鉄道会社サーバ400、銀行サーバ500と独立して設置してもよい。また、上記の実施形態の入場処理において、残高不足が判明した段階で、利用者指定のメールアドレスに、残高不足の通知メールを送信してもよい。この機能は、利用者の安否確認にも利用することができる。
上記全ての実施形態において、電子乗車券として料金精算用ICカードを説明したが、料金精算用ICカードに換えて、表示部や入力部を備えた携帯端末を電子乗車券として用いてもよい。この場合、当該携帯端末の表示部またはスピーカを報知部として、自動改札機200に表示したメッセージを当該携帯端末の表示部により表示またはスピーカにより音声を再生して報知するようにしてもよい。さらには、残高不足時には自動的に銀行から不足分を引落とすようにしたが、不足分を銀行から引落とすか否かを利用者に問い合わせ、利用者の指示に基づいて銀行から不足分を引落すか否かを判定するようにしてもよい。
また、上記全ての実施形態において、ダイレクト契約を結ぶ銀行は一つだけとしたが、同様のオンライン決済システムを備える複数の銀行から選べるようにしてもよい。その場合、カード会員DB402には、各カード会員が契約した銀行を特定するための銀行番号などの項目を追加すればよい。
また、上記全ての実施形態において、引落処理部313は、残高が不足した場合に、不足分を、利用者IDおよびパスワードを用いて銀行から引落とすものとしたが、引落処理部313は、所定のセキュリティ条件の下で引落処理を実行できればよく、引落処理部313が実行する所定のセキュリティ条件を確保するための手段は、利用者IDおよびパスワードに限定されないことはいうまでもない。
さらに、上記全ての実施形態において、決済処理装置および電子乗車券がオンライン決済を行う対象を鉄道機関の場合を例に説明したが、本発明は鉄道機関のみならず、航空機関、船舶機関などあらゆる交通機関、およびそれらの組み合わせに適用可能である。
上述した一連の処理は、既に言及したように、ソフトウェアにより実行されが、一部をハードウェアにより実行させることもできる。ソフトウェアを構成するプログラムは、コンピュータなどにネットワークや記録媒体からインストールされる。コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパソコンであってもよい。
このようなプログラムを含む記録媒体は、利用者にプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されるリムーバブル記憶媒体により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態で利用者に提供される記録媒体などで構成される。リムーバブル記憶媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスクまたは光磁気ディスクなどにより構成される。光ディスクは、例えば、CD−ROM(Compact Disk−Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)などにより構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini−Disk)などにより構成される。また、装置本体に予め組み込まれた状態で利用者に提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されている料金精算用ICカード100、自動改札機200、決済処理装置300、鉄道会社サーバ400、銀行サーバ500のそれぞれのROMや、記憶部などで構成される。
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。