JP5924292B2 - 炭素繊維強化樹脂成形品及び複合構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素繊維強化樹脂成形品とそれを金属部品と組み合わせて使用した複合構造体に関する。さらに詳しく述べると、本発明は、導電性を有する液体の存在下において使用したときに、併用する金属部品との接触界面において電食に原因する腐食を金属部品において引き起こすことのない炭素繊維強化樹脂成形品、及び複合構造体に関する。本発明の炭素繊維強化樹脂成形品及び複合構造体は、各種の一般機械、電気機器、産業機器、自動車、航空機等の移動機械、家庭電化製品などにおいて広く使用することができ、とりわけ自動車部品において有利に使用することができる。
周知の通り、炭素繊維は軽くて強く(機械的特性)、優れた寸法安定性と耐熱性を有し(熱的特性)、電気伝導性や電磁遮断特性に優れ(電気的特性)ることから、繊維強化樹脂成形品の製造に広く用いられており、それにより製造されたものが、炭素繊維強化樹脂成形品である。なお、炭素繊維強化樹脂あるいはプラスチックは、以下、省略して「CFRP」ともいう。
また、CFRP成形品は、単独で使用される場合もあるけれども、両者の利点を引き出すため、金属部品と組み合わせて使用されることが多い。例えば橋梁等のように鋼板をCFRP板で補強した構築物や、担架の軽量化のために枠体を構成する鉄製パイプをアルミニウム製パイプとCFRP製パイプの結合構造体に代えた物品や、航空機の機体の軽量化やメンテナンスの低減のために機体を構成するアルミニウム合金製部品に代えて、CFRP層と導電層(金属箔)とを金属ファスナを介して接合した積層複合材料を使用した物品が提案されている。しかしながら、これらの積層複合材料やその他の複合構造体では、以下で説明するように、金属部品における腐食の発生が大きな問題として存在している。
特許文献1は、アルミニウム製パイプとCFRP製パイプの結合構造体から枠体を構成した担架に関する。この担架の場合、結合面から電食反応(ガルバニック・コロージョン)が発生し、寿命が短くなるという問題があるため、アルミニウム製パイプとCFRP製パイプの結合部に、ガラス繊維強化プラスチック又は四フッ化エチレンから電気的絶縁層を介在させることを提案している。しかしながら、かかる電気的絶縁層の存在は、結合構造体の構造を複雑にし、製造工程の数を増加させるとともに製造コストも上昇させるという問題がある。
特許文献2は、CFRP層と導電層(金属箔)とを金属ファスナを介して接合した積層複合材料を使用した航空機の機体に関する。この機体の場合、金属ファスナが、被雷時に雷電流が積層複合材料を突き抜けて機体内部に侵入する案内路を構成し、かつCFRPとの接触により電食を引き起こす可能性があるので、金属ファスナを絶縁体のキャップで覆ってシールすることが提案されている。しかしながら、絶縁体のキャップは、電食の抜本的な解決手段とはなり得ないばかりか、脱落のおそれがあり、製造コストも上昇する。特許文献2では、耐雷性を高めるためにCFRP層と金属ファスナとの密着性を上げ、かつ静電気拡散性を改良することが主眼となっており、複雑で製造コストの上昇を伴う機体構造を提案しているにすぎない。
特開平11−123765号公報 特開2012−6528号公報
したがって、本発明の目的は、金属部品と接触状態で使用される各種のCFRP成形品において、それらのCFRP成形品の使用中に相対する金属部品において発生する電食及びそれによる金属部品の局所的腐食を抑制もしくは防止することにある。
本発明の目的はまた、金属部品の電食及び腐食を防止可能なCFRP成形品や、かかるCFRP成形品と金属部品の複合構造体、そしてこれらの物品の製造方法を提供することにある。
本発明のこれらの目的やその他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解することができるであろう。
本発明者は、炭素繊維強化樹脂成形品(CFRP成形品)の使用中にそれらのCFRP成形品に併用する金属部品において発生する電食の原因を究明すべく鋭意研究した結果、CFRP成形品と金属部品の接触界面あるいはその近傍に存在するかもしくはそのような接触界面あるいはその近傍に適用される導電性を有する液体(水、塩水等;液滴、水分、湿気、雨水などの場合もある;本発明では、かかる液体を総称的に「電解液」という。)が金属部品の表面において悪影響(電子の移動)を引き起こすことが大きな原因であるという知見を得、本発明を完成した。すなわち、本発明者は、CFRP成形品のマトリックス樹脂に所定量のシリコーン化合物を添加することでCFRP成形品の表面に撥水性を付与し、このCFRP成形品と電解液との接触面積を低減することで、相対する金属部品に向かう電子の流れを抑制することができ、最終的に電食の防止により耐電食性を向上させ得るということを発見した。
本発明は、一つの面において、金属部品と接触状態で使用されるCFRP成形品であって、該CFRP成形品のマトリックス樹脂中に炭素繊維及び粒子状又はオイル状のシリコーン化合物が分散し、配合されてなることを特徴とするCFRP成形品にある。
また、本発明は、もう1つの面において、本発明によるCFRP成形品と、該CFRP成形品に接触して配置された金属部品とが組み合わされて一体化されていることを特徴とする金属−CFRP複合構造体にある。なお、CFRP成形品と金属部品とを一体化するとき、使用される製造方法やその他のファクタに応じて、両者の間に、例えば接着剤などの結合手段やボルトとナット、その他の締結手段を介在させてもよく、さもなければ介在させなくてもよい。
本発明によれば、以下の詳細な説明から理解されるように、CFRP成形品と金属部品の一体化複合構造体において、軽くて強く(機械的特性)、優れた寸法安定性と耐熱性を有し(熱的特性)、電気伝導性や電磁遮断特性に優れ(電気的特性)ることなどのCFRPの特性を生かしつつ、導電性を有する液体(電解液)の存在下で、一体化複合構造体の金属部品の電食とそれによる腐食を防止もしくは抑制することができるので、各種の一般機械、電気機器、産業機器、自動車、航空機等の移動機械、家庭電化製品などにおいて本発明を広く使用することができ、とりわけ自動車部品において、金属部品の電食及び腐食を引き起こさない高強度部材として有利に使用することができる。また、すぐれた特性により、一体化複合構造体の利用範囲を、従来の範囲よりもさらに広い範囲とすることができ、かつCFRP成形品と金属部品の組み合わせ例もさらに多種多様とすることができる。
また、本発明によれば、CFRP成形品と金属部品の間に絶縁層を設けたり積層構造をさらに複雑にすることが必要でなくなるので、工数の増加、異種材の配置やそれらの操作による製造コストの増加などを防止することができる。
さらに、本発明によれば、CFRP成形品のマトリックス樹脂に所定量のシリコーン化合物を添加することで、CFRP成形品そのものに電食を抑制する機能を持たせることができる。ここで、シリコーン化合物を添加することに代えて、CFRP成形品の表面にシリコーンコーティングを施す手法も別案として考慮されるけれども、シリコーンコーティングを施す場合には、例えば塗装設備の初期投資、工程増によるサイクルタイムの増加などに原因して製造コストが増加し、また、エンジニアリングプラスチックをマトリックス樹脂として用いる場合、CFRP成形品の表面とシリコーンコーティング材の接着性を確保することが困難になる。本発明では、CFRPの成形前にシリコーン化合物を添加するだけで所期の効果を達成できるという点で優位性がある。
本発明による炭素繊維強化樹脂成形品の構成を模式的に示した断面図である。 本発明による複合構造体の一形態を模式的に示した断面図である。 本発明による複合構造体のもう1つの形態を模式的に示した斜視図である。 本発明による複合構造体のもう1つの形態を模式的に示した斜視図である。 金属部品と炭素繊維強化樹脂成形品の接触界面における電食の発生のメカニズムを説明した模式図である。 耐電食性の評価に使用された金属部品の供試体の平面図(表面及び裏面)である。 耐電食性の評価に使用された試験装置を模式的に示した断面図である。 耐電食性の評価結果をプロットしたグラフである。
次いで、本発明を実施するための好ましい形態を添付の図面を参照しながら説明する。なお、本発明の炭素繊維強化樹脂(CFRP)成形品及び金属−CFRP複合構造体は、図面に示したものに限定されるわけではなく、本発明の範囲内において種々に変更し改良することができる。
本発明は、金属部品と接触状態で使用されるCFRP成形品にある。ここで、「接触状態」とは、金属部品とCFRP成形品とが、少なくとも一部の領域において互いに接触していることを意味する。金属部品とCFRP成形品とは、例えば射出成形法などを使用した場合、両者の間に接着剤などのような結合手段を介在させずに射出接合で強固に結合させることができる。本発明の実施に当たっては、必要に応じて、金属部品とCFRP成形品との間に接着剤のような結合手段を介在させてもよく、さもなければその他の締結手段を使用してもよい。適当な締結手段として、例えば、ボルト及びナットの組み合わせなどを挙げることができる。
本発明のCFRP成形品は、CFRP成形品のマトリックス樹脂中に炭素繊維(CF)及び粒子状又はオイル状のシリコーン化合物が分散し、配合されてなることを特徴とする。この特徴を模式的に示したものが図1であり、この図から、本発明によるCFRP成形品1は、マトリックス樹脂2と、このマトリックス樹脂2の中に分散した炭素繊維3とシリコーン化合物(ここでは、粒子状のシリコーンゴム)4とから構成されていることが分かる。マトリックス樹脂中における炭素繊維及びシリコーン化合物の分散形態は、所期の効果が達成される限りにおいて特に限定されるものではなく、常用の手法に従って分散処理を行うことで得ることができる。
CFRP成形品は、マトリックス樹脂を主体として構成される。マトリックス樹脂は、任意の樹脂を包含するけれども、好ましい樹脂は、CFRP成形品の製造において常用されている熱可塑性の樹脂である。熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として使用したCFRPペレットは射出成形が可能であるので、形状自由度が高く、任意の形状をもったCFRP成形品を得ることができる。好ましい熱可塑性樹脂としては、例えば、汎用の熱可塑性樹脂、例えば塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などや、いわゆるエンジニアリングプラスチック、例えばポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。
マトリックス樹脂中に分散される炭素繊維(CF)は、マトリックス樹脂と同様に、任意の炭素繊維を包含することができる。すなわち、炭素繊維としては、PANプリカーサ(ポリアクリロニトリル繊維)を原料としたPAN系炭素繊維、コールタールを原料としたピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維のいずれを使用してもよく、必要に応じて、異なる種類の炭素繊維を組み合わせて使用してもよい。また、使用する炭素繊維は、その種類ばかりでなく、形態もまた限定されるものではない。すなわち、炭素繊維は、原糸が短繊維及び長繊維のいずれであってもよく、原糸が短繊維のときはステープルの形態を、原糸が長繊維のときはフィラメントの形態を挙げることができる。また、本発明の実施では、これらの形態に炭素繊維がとらわれることなく、必要に応じて、切断、粉砕、紡績等の工程を経て、例えば、チョップド糸、フェルト、マットなどの形態に加工されていてもよい。
炭素繊維は、所望とする効果などに応じて、広い範囲でCFRP成形品中に配合することができる。CFの配合量は、通常、CFRP成形品の全量を基準として、約10〜70体積%の範囲が好ましく、さらに好ましくは、約10〜50体積%の範囲である。通常、CFの配合量が増加すればするほど、得られるCFRP成形品において物性の向上を達成することができるけれども、繊維の分散性が悪くなる結果、成形しにくくなるきらいがある。一般的には、射出成形によりCFRP成形品を製造する場合、CFの配合量が約10〜30体積%の範囲のものを多く使用することができる。
マトリックス樹脂中に分散されるシリコーン化合物は、マトリックス樹脂及び炭素繊維と同様に、CFRP成形品中において粒子状あるいはオイル状で分散し得る限りにおいて、任意のシリコーン化合物を包含することができる。シリコーン化合物は、周知のように、ジクロロジメチルシランをはじめとする各種のシラン類を加水分解し、さらに脱水縮合して生成したオリゴマーあるいはポリマーであり、必要に応じて市販品を利用することができる。適当なシリコーン化合物として、例えば、粒子状のシリコーンゴム(シリコーンパウダー)や液滴状のシリコーンオイルを挙げることができる。
シリコーン化合物は、所望とする効果などに応じて、比較的に少ない量でCFRP成形品中に配合することができる。シリコーン化合物の配合量は、通常、CFRP成形品の全量を基準として、約1〜10重量%の範囲が好ましく、約2〜6重量%の範囲がさらに好ましく、最も好ましくは、約2〜4重量%の範囲である。シリコーン化合物の配合量が増加すればするほど、得られるCFRP成形品において金属部品の耐電食性の向上を達成できると予想されるけれども、得られる成形品の物性が低下するであろう。
本発明のCFRP成形品は、必要に応じて、炭素繊維及びシリコーン化合物以外の任意の添加剤を配合して物性の向上等を図ってもよい。適当な添加剤として、例えば、粘度調整剤、酸化防止剤、光安定剤、着色剤、難燃剤、改質剤、防かび剤、抗菌剤などを挙げることができる。
本発明のCFRP成形品は、CFRP成形品の製造に従来より常用されている各種の手法を任意に使用して、あるいはその手法を任意に変更して製造することができる。例えば、適当量の炭素繊維を含むマトリックス繊維のペレット(CFRPペレット)を適当量のシリコーン化合物(具体的には、シリコーンパウダー又はシリコーンオイル)と、例えばニーダー、ミキサーなどの適当な混合装置で入念に混練して混練物中にシリコーン化合物を均一に分散させた後、得られた混練物を例えば射出成形機などで成形することによって、所望とするCFRP成形品を容易にかつ低コストで製造することができる。
本発明はまた、本発明の炭素繊維強化樹脂成形品(CFRP成形品)と、このCFRP成形品に接触して配置された金属部品とが組み合わされて一体化されてなる金属−CFRP複合構造体にある。この金属−CFRP複合構造体において、CFRP成形品と金属部品は、任意の形態で組み合わさり、接触し、一体化することができる。一般的には、CFRP成形品の表面、凸部、凹部又は貫通部の少なくとも一つの部位に金属部品が接触状態を保って配置されていることが好ましい。ここで、「接触状態」は、先に説明したように、金属部品とCFRP成形品とが十分に接触した状態が確保されていればよく、両者の間に接着剤のような結合手段が介在していてもよく、していなくてもよく、さらには、例えばボルト及びナットの組み合わせのようなその他の締結手段で両者を締結してもよい。
また、金属−CFRP複合構造体において、CFRP成形品及び金属部品は、互いに同一もしくは異なる形状を有することができ、かつそれぞれ任意の形状を有することができる。例えば、CFRP成形品及び金属部品は、CFRP成形板及び金属板の平面どうしあるいは側面どうしを突き合わせた構造を採用してもよく、CFRP成形円板に金属ボルトを取り付けた構造や、CFRP成形円板の貫通孔に円環状金属インサートを嵌合した構造を採用してもよい。金属−CFRP複合構造体は、CFRP成形品と金属部品を常用の技法、例えば射出接合法を使用して接合及びで一体化することで容易に製造することができる。
金属部品は、本発明の耐電食性向上の効果が得られる限り、任意の金属材料から形成することができる。すなわち、適当な金属材料は、CFRP成形品と接着して使用されたときに電食を被り得る金属材料であり、具体的には、CFRP成形品との自然電位に差がある金属材料である。適当な金属材料として、以下のものに限定されるわけではないけれども、鉄、ステンレス、アルミニウム、亜鉛又はそれらの合金、例えばジュラルミンなどを挙げることができる。なお、金属部品は、必要に応じて、同一もしくは異なる種類の金属材料から作製された2つ以上の金属部材を組み合わせて1つの部品としたものであってもよい。
本発明の金属−CFRP複合構造体では、CFRP成形品と接触する金属部品の接触界面近傍の位置において耐電食性の顕著な向上を達成することができる。この優れた効果は、上記したように、電解液が金属部品の表面において悪影響(電子の移動)を引き起こす原因を排除することで達成することができたものであるので、図5を参照して以下で説明する金属部品における電食(腐食)の発生を理解することで、本発明で耐電食性の向上が達成される理由を容易に理解することができるであろう。
図5には、金属部品と炭素繊維強化樹脂成形品の接触界面における電食の発生のメカニズムが模式的に示されている。図示の金属−CFRP複合構造体は、CFRP板1の側面とアルミニウム板5の側面どうしを突き合わせて接合し、一体化したものである。この複合構造体を本発明でいう電解液の一種である水の中に浸漬し、CFRP板1とアルミニウム板5の接触界面(CI)付近の挙動を観察する。
CFRP板1とアルミニウム板5の自然電位(E)についてみると、図示されるように、CFRP板1の単体の電位がPCFPRで、アルミニウム板5の単体の電位がPAlであるので、両者の自然電位には明確な差異がある。また、CFRP板1とアルミニウム板5の接触界面付近では混成電位(Pmix)が発生し、腐食電流CAが流れて電子の移動が起こるため、アルミニウム板5の腐食領域Cにおいて電食が起こり、図示されるように、アルミニウム板5の腐食が進行する。かかる腐食は、CFRP板1から水中への電子の移動量がアルミニウム板5のアルミニウムの腐食量に対応するために発生する。なお、図5では電解液として水を示したけれども、水の代わりに塩化ナトリウム水溶液、塩水、雨水、結露などの導電性を有する液体がアルミニウム板5に付着した場合にも、同様な電食の発生を観察することができる。
これに対して、本発明では、CFRP板の内部にシリコーン化合物が配合されているため、発現する撥水性を利用して電食を防止することができる。すなわち、CFRP/水の接触面積を、CFRP板に撥水性を付与することで低減し、電子の移動量を低減することの結果、電食によるアルミニウム板の腐食量を低減することができる。換言すると、CFRP板の表面に電解液が付着する作用をシリコーン化合物の働きにより抑制もしくは防止することができ、その結果、腐食電流(電子e)の流れを防止して、アルミニウム板の腐食も防止することができる。
本発明の金属−CFRP複合構造体は、それぞれ任意の形状を有するCFRP成形品と金属部品を適当な部位で突き合わせて接合し、一体化することによって製造することができる。図2〜図4は、かかる金属−CFRP複合構造体の実施例を模式的に示したものである。図2の金属−CFRP複合構造体10は、平板状のCFRP成形品1の表面に金属部品5の裏面を接着剤6の薄層を介して接合したものである。接着剤6は、例えば、エポキシ樹脂であることができる。なお、接着剤6の薄層は、使用する接合手段などによっては省略することも可能である。
図3の金属−CFRP複合構造体10は、CFRP成形円板15に金属ボルト11を取り付けたボルト締結構造を示している。ボルト締結部をこのように構成することで、金属ボルト/CFRP界面での電食を防止することができる。また、図4の金属−CFRP複合構造体10は、円環状のCFRP成形品25の中央貫通孔に円環状の金属インサート21を嵌合したボルト締結のための金属インサート構造を示している。このように構成することで、金属インサート/CFRP界面での電食を防止することができる。
上記から理解できるように、本発明の金属−CFRP複合構造体は、要するに、水や塩水等の導電性を有する液体中で、あるいは金属部品にそのような液体が付着するおそれのある、そのような液体が存在する場所あるいはその近傍で、あるいはそのような液体、水分又は湿気、結露、雨水などを含む雰囲気中で使用されるが、かかる過酷な条件下においても金属部品の電食や腐食を効果的に防止することができる。
(耐電食性の評価)
本例では、金属−CFRP複合構造体における金属部品の耐電食性の評価のため、評価手段として確立されている「カップリング電流測定法」を採用した。なお、カップリング電流測定法は、金属部品に対応する電極(供試体)とCFRP成形品に対応する電極(供試体)の間でカップリング電流量(結合電流量)として測定される電子量が、相手金属である金属部品において進行する電食量(腐食量)に対応することに基いた評価手段である。
(電極供試体の作製)
アルミニウム製金属部品及びCFRP成形品(マトリックス樹脂はポリアミド樹脂)のそれぞれについて、同一形状及びサイズの電極供試体を作製した。図6は、一方の電極であるアルミニウム電極5の表面(A)及び裏面(B)を模式的に示したものである。図示されるように、アルミニウム電極5のサイズは、幅が10mm、長さが20mm、そして厚さtが4mmである。アルミニウム電極5の表裏両面をマスキングテープ7で被覆した後、試験面の一部(6mm×6mm)を露出させて試験面5aを形成した。得られたアルミニウム電極供試体5を引き続く評価試験で使用した。
図示しないけれども、CFRP電極供試体も同様の形状及びサイズで作製した。ただし、CFRP電極供試体は、それにシリコーン化合物(商品名「信越シリコーン(X−22−8171)」、信越化学工業株式会社製)を異なる量で配合した場合の結果を考察するため、下記の3種類の供試体を作製した。
供試体A:シリコーン化合物0重量%
供試体B:シリコーン化合物2重量%
供試体C:シリコーン化合物4重量%
(評価試験)
図7に示す試験装置を使用して評価試験を実施した。処理槽に5%食塩(NaCl)水溶液8を収容した。次いで、先に作製したアルミニウム電極供試体5とCFRP電極供試体(A、B又はC)1を両者の試験面を向い合せた状態で配置した。対向する2つの供試体の間の間隔は、10mmであった。また、アルミニウム電極供試体5とCFRP電極供試体1を直流電源(図示せず)に接続し、接続の途中に電流計9を配置した。2枚の電極供試体の間に定電流(40mA)を24時間にわたって通電した後のカップリング電流値を測定した。
(測定結果及び評価)
測定の結果、得られたカップリング電流値は、図8にプロットしたように、CFRP電極供試体Aの場合に約12μA、CFRP電極供試体Bの場合に約9.5μA、そしてCFRP電極供試体Cの場合に約5μAであった。
これらの測定結果から、CFRP成形品におけるシリコーン化合物の増加に伴い、カップリング電流値が減少していることが分かる。すなわち、カップリング電流値の減少は、電食によりイオン化したアルミニウムの量が減少していることを意味するので、通常であるなら、約1重量%以上の量でシリコーン化合物を添加することで耐電食性を向上できることがわかる。
本発明のCFRP成形品及び金属−CFRP複合構造体は、機械的特性、熱的特性、電気的特性などに優れ、また、電導性を有する液体の存在下で、金属部品の電食とそれによる腐食を防止もしくは抑制することができるので、各種の一般機械、電気機器、産業機器、自動車、航空機等の移動機械、家庭電化製品などにおいて広く使用することができ、とりわけ自動車部品において、金属部品の電食及び腐食を引き起こさない高強度部材として有利に使用することができる。
1 炭素繊維強化樹脂成形品
2 マトリックス樹脂
3 炭素繊維
4 シリコーン化合物
5 金属部品
6 接着剤層
7 マスキング材
8 電解液
10 複合構造体
11 金属ボルト
15 CFRP部品
21 金属インサート
25 CFRP部品

Claims (8)

  1. 金属部品と接触状態で使用される炭素繊維強化樹脂成形品であって、該樹脂成形品のマトリックス樹脂中に炭素繊維及び粒子状又はオイル状のシリコーン化合物が分散し、配合されてなることを特徴とする炭素繊維強化樹脂成形品。
  2. 前記炭素繊維は、該樹脂成形品の全量を基準として10〜70体積%の量で配合されている、請求項1に記載の炭素繊維強化樹脂成形品。
  3. 前記シリコーン化合物は、該樹脂成形品の全量を基準として1〜10重量%の量で配合されている、請求項1又は2に記載の炭素繊維強化樹脂成形品。
  4. 前記金属部品は、前記炭素繊維強化樹脂成形品と接着して使用されたときに電食を被り得る金属材料から製造された物品である、請求項1に記載の炭素繊維強化樹脂成形品。
  5. 前記金属材料は、鉄、ステンレス、アルミニウム、亜鉛又はそれらの合金から選ばれる、請求項4に記載の炭素繊維強化樹脂成形品。
  6. 導電性を有する液体中で、そのような液体の近傍で、あるいはそのような液体、水分又は湿気を含む雰囲気中で使用される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂成形品。
  7. 請求項1に記載の炭素繊維強化樹脂成形品と、該樹脂成型品に接触して配置された金属部品とが組み合わされて一体化されていることを特徴とする複合構造体。
  8. 前記樹脂成型品の表面、凸部、凹部又は貫通部の少なくとも一つの部位に前記金属部品が接触状態を保って配置されている、請求項7に記載の複合構造体。
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