JP5920771B2 - 液晶素子 - Google Patents

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Description

本願発明は液晶TV等の構成部材として有用な液晶素子に関する。
強誘電性液晶は現在のネマチック液晶に代わる、次世代高速液晶ディスプレイに用いられる新物質として、1979年R.B.Meyerによる強誘電性の設計・強誘電性液晶発見、1980年初頭、Clark-Lagerwallによる表面安定化による双安定性の報告に始まり、1980〜1990年代、多くの企業がその実現に向けて研究を行ってきた。しかし残念ながら、液晶表示セルとして、電極つきガラス基板間に水平配向を強制した状態での配向不良、動作不良の問題が解決せず、現在ではほとんど撤退を余儀なくされている。
強誘電性液晶(SmC)相、反強誘電性液晶(SmC)相を利用した最近の研究の流れでは、例えば次のようなものがある。
a) 強誘電性液晶の研究の流れの中で、「高分子安定化強誘電性液晶」という、山口東京理科大:小林駿介先生により発明された技術がある。この技術は、強誘電性液晶中に液晶骨格を持つアクリレートモノマーを混合しておき、水平配向セルを作成した後、UV光を照射することによって、強誘電性液晶の持つ双安定性を潰して、単安定にすることにより配向の乱れが現れることを妨げようとしたものである。双安定性という特徴を失うが、代わりに一様な配向が実現しやすいという利点を持つ(例えば非特許文献1参照)。
一方、近年、日立により開発されたネマチック液晶の水平方向電場による駆動方式(IPS)により、強誘電性液晶もあえて、問題が解決できない水平配向ではなくスメクチックの層がガラス基板に平行になる、垂直配向を用いようとする試みがいくつか試行され始めている。
b) 東京工業大学の竹添秀男研究室、ドイツ国ハレ大学のチェルスケ研究室等では、バナナ型(東京工業大学の渡邊順次研究室で発見された。)液晶と呼ばれる液晶分子が作るSmA(スメクチックA)相において、水平配向電場をかけることにより複屈折を誘起しようとする試みがなされている。バナナ型分子のSmA相では、バナナ型分子のバナナの曲がり方向は様々な方向を向いているが、バナナ型分子はバナナの曲がり方向に自発分極を持っている(例えば非特許文献2参照)。したがって、ある程度強い電場をかけると、電場方向に上記の分極が偏在することで、同時にバナナ型分子の持っている屈折率異方性(分子長軸方向ではなく、バナナの曲りに沿った2軸性の短軸側)を誘起し、複屈折による光透過を電場で制御することができる。
問題点としては、バナナ型分子の短軸方向の向きは、基本的にSmA相では熱的にランダムな方向を向こうとしている(=液体、無秩序相である)。これに対してSmC(カイラルスメクチックC)相の場合は、自発的に同じ方向を向こうとしている(=液晶層、秩序相)協同的に小さな力で変化が誘起される。つまり、駆動力は自発分極を使っているので大きいが、基本的には液体中で分子の配向を外場によって誘起するカー効果の変形であるため大きな電場を必要とする。同時に、バナナ型液晶の短軸方向の異方性(バナナの屈曲による)は、分子形状からそれほど大きくなく、誘起される屈折率異方性も小さいのが現状である。また、大きな複屈折を稼ぐためには、大きな駆動電圧を必要としていて実用上に難点がある。
c) 反強誘電性液晶の螺旋維持状態で常誘電性駆動を用いた方法として、京都大学の高西准教授(本発明の共同研究者)と株式会社日立製作所の共同研究により発明された方法で、2010年に特許出願されている(非特許文献3参照)。強・反強誘電性液晶を液晶セル中に垂直配向にして封入すると、層間でC−ダイレクター(層内での液晶分子が傾いている方向を示すベクトル)が螺旋を描くように回転する(Clark-Lagerwallの方法では、水平配向にすることにより螺旋をほどいていた)。この性質は、コレステリック相と同様に、カイラルな液晶が持つ本質的な性質である。このため、液晶セルを上から見た場合複屈折性を示さない。前述b)のバナナ型液晶の原理では、この状態(電場0)を黒の状態として用いる。ここで前述a)の高分子安定化強誘電性液晶の方法と同様に水平電場を印加すると、反強誘電相では、隣り合う層で自発分極が打ち消されているので、C−ダイレクター方向に向いて傾いている液晶分子の常誘電性の異方性によって、電場方向にC−ダイレクターをそろえるようなトルクが働き、この結果セルを上から見たときに、屈折率の異方性を生じて複屈折により透過光が現れる。本方法では、さらに電場強度を強くすると強誘電状態に転移して、C−ダイレクターが電場と垂直になるようにさらに回転が起こるが、この変形は螺旋をほどくモードとなるため、変形速度が遅くなり液晶表示素子としては、反強誘電性を保った電場強度の領域を用いる。螺旋を維持するねじり力と、電場との力のバランスで連続的なリターデーション変化を調整できる。また、この領域では、10〜100μsecと現在のディスプレイの10〜1000倍の駆動速度を実現できる。
問題点としては、螺旋を維持したまま螺旋の歪を利用して複屈折を発生させているため、バナナ型液晶同様に複屈折の絶対値が小さく、液晶層の厚みを十分にとらないと完全な白・黒を実現できないが、液晶層の厚みを厚くすると、既存のIPS電極では十分な電場がかからない。また、F(強誘電)状態への転移が起きる電場強度以下で駆動しなければならないので、電場によって駆動力を増強することができない。また、駆動電圧も、バナナ型液晶同様、螺旋を歪ませることができるような十分に高い電圧を必要とする。
d) 高分子安定化ブルー相とは、2002年に九州大学の菊池裕嗣氏により発明された技術(例えば特許文献1や、菊池裕嗣、梶山千里・「光学変調素子用液晶材料」、独立行政法人科学技術振興機構を参照)で、ブルー相内にある液晶秩序の欠陥に、重合性の分子を自発的に凝集させ、ブルー相の状態で光重合させることで、ブルー相の温度幅を数十℃も拡大して安定化することに成功したものである。前述a)の高分子安定化液晶相と異なり、重合により高分子化された物質が、液晶相の中で局在的に存在することを特徴とする。しかしながら、高分子安定化ブルー相では、液晶秩序の「欠陥」という、ブルー相など特殊な液晶相にしか存在しない場所をターゲットにして高分子化を行う必要がある。
上記の試みは、層内の分子傾きが有限の値を取る秩序相(SmC,SmCなど)において、傾いた分子の偏角(アジマス)方向の運動により光の透過を制御する方法であり、一定の傾きを保ったまま液晶分子11がみかけのコーン12の上を移動するモード(図1(b)参照)をゴールドストーンモードと呼び、C−ダイレクターの運動として記述している。現在の液晶ディスプレイに用いられているネマチック液晶のダイレクターの運動に比べて、このC−ダイレクターの運動(ゴールドストーンモード)は2〜3桁応答速度が速いという特徴を持っている。
他方、高温側に隣接するSmA相における電傾効果を利用した、高速な光バルブの動作原理が以前から提唱されている。電傾効果とは、カイラル対称性が破れた系において、自発分極が電場方向に揃うことにより、層内の分子の傾きが誘起される効果である。消光位を層垂直においておけば、チルトの発生に伴い複屈折による透過光が発生する。この液晶分子11の層法線13に対するチルトに関する運動はソフトモード(図1(a)参照)と呼ばれ、高速なゴールドストーンモードに比べてもさらに1〜2桁速い応答速度が期待され、その高速応答性は液晶応用技術の中でも特筆すべきものがある。しかしながら、その結合係数はSmA−SmC相転移点からの温度差に強く依存し、転移点に近くなると結合係数が発散する臨界現象を示すが、転移点から離れた温度ではきわめて小さくなってほとんどチルトを発生しない。
電傾効果の応用については、様々な文献と特許があるが、もともと平均的に分子が傾いていない相(SA相)における誘起秩序(チルト)であるために、その絶対値が小さく実用上問題がある。SmA−SmC相転移点近傍では臨界現象により、大きな結合係数が期待できるが、電傾係数の温度依存性が大きく、安定な表示を行うことができない。
特許第3779937号公報
東京理科大学 古江研究室、"高分子安定化液晶"、[online]、2006年、[平成24年1月13日検索]、インターネット<URL: http://www.rs.noda.tus.ac.jp/~furuelab/introduction/ps.html> 東京工業大学 竹添・石川研究室、"バナナ形液晶で理想的なディスプレイを開発"、[online]、2006年、[平成24年1月13日検索]、インターネット<URL: http://www.op.titech.ac.jp/lab/Take-Ishi/Japanese/Research/Highlight/jjap.html> 京都大学 ソフトマター物理学研究室、"反強誘電性液晶の電場応答"、[online]、2011年9月11日、[平成24年1月13日検索]、インターネット<URL: http://softmatter.scphys.kyoto-u.ac.jp/studySCA.html>
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、十分なチルトを発生させることができる大きな電傾係数が、広い温度範囲で得られる液晶素子を提供することを課題とする。
本発明者は、SmA−SmC相転移を示すある種の2種類の液晶化合物の混合系において、中間の濃度領域でInduced SmAと呼ばれる相が安定化され、広い温度範囲でSmA−SmC相転移の臨界現象が起こることを見出した。この混合系では、片側の化合物のSmC相が「hindered(隠された)SmC」相となって、この異常臨界現象を引き起こす。このような混合物では、電傾係数にも同様の影響が現れ、広い温度範囲で一様で大きな電傾係数が得られることを見出し本発明の完成に至った。この異常臨界現象を利用して混合物の材料設計を行い、SmA相における電場誘起チルトを起源とする超高速のソフトモードを利用して液晶表示素子に応用ができる。
すなわち、本発明は、第一の基板と、第二の基板と、前記第一の基板と第二の基板間に液晶組成物を含有する液晶層を挟持し、該基板の少なくとも一方には、該液晶層を制御する電極を有する液晶素子であって、該液晶組成物はスメクチックA相を示し、なおかつ少なくとも2種類以上の液晶化合物を含有し、該液晶化合物は単独でそれぞれスメクチックA相−スメクチックC相の相転移を有し、前記液晶層が10℃以上の温度幅でクリティカルソフトニングを生じることを特徴とするソフトモードを利用した液晶素子である。
本発明によれば、十分なチルトを発生させることができる大きな電傾係数を、広い温度範囲で得ることができ、超高速で安定な表示が可能な液晶素子に応用することができる。
(a)ソフトモード、及び(b)ゴールドストーンモードの説明図である。 液晶組成物の一例(Mixture A)の相図を示すグラフである。 他の液晶組成物(Mixture B)の相図の一例を示すグラフである。 他の液晶組成物(Mixture C)の相図の一例を示すグラフである。 SmA−SmC相転移点近傍での層圧縮弾性率Bのクリティカルソフトニング現象の一例を示すグラフである。 Mixture Aの層圧縮弾性率の濃度・温度依存性を説明する模式図を示す。 Mixture Cの層圧縮弾性率の濃度・温度依存性を説明する模式図を示す。 Mixture Aの電傾係数の濃度・温度依存性を説明する模式図を示す。 Mixture Cの電傾係数の濃度・温度依存性を説明する模式図を示す。
以下、好適な実施の形態に基づいて、本発明を説明する。
図2に、本発明で用いられる液晶組成物の相図の一例を示し、図3及び図4に、他の液晶組成物の相図の一例を示す。これらの相図は、左端に示される第1の液晶化合物と、右端に示される第2の液晶化合物との混合物との分率を横軸φとし、縦軸を温度Tとして表したものである。左端は第1の液晶化合物100%の組成を表し、右端は第2の液晶化合物100%の組成を表し、横軸の中間部は、第1の液晶化合物と第2の液晶化合物との混合物を表す。
図2に示すMixture Aと図3に示すMixture Bとでは、第1の液晶化合物及び第2の液晶化合物はそれぞれ高温側から等方相(Iso)−スメクチックA(SmA)相−スメクチックC(SmC)相を示す。ここで、SmA相は、カイラルスメクチックA(SmA)相を包含するものとし、SmC相は、カイラルスメクチックC(SmC)相や反強誘電性スメクチックC(SmC )相、フェリ誘電性相を包含するものとする。
図3のMixture Bの相図では、同じ液晶相(SmAとSmA、SmCとSmCなど)同士はよく混合し、Iso−SmA−SmC相転移を示す2種類の液晶化合物の混合系では、相転移温度の差を連続的に接続するように、相図が形成される。なお、一般に、2種類の液晶材料を混合すると、同一の液晶相の場合にはよく混合することが、混和試験の原理として知られており、未知の液晶相を同定する際に“相溶性試験”と呼ばれる混合試験により液晶相を同定する原理としても用いられる。図3は、混和試験の原理をよく満たした場合に相当する。事実、実用のネマチック液晶では転移温度や粘度などを調整するため、複数種の液晶材料を混合して使用している。また、SmC相は強誘電性を示す液晶材料として重要であり、複数のSmC(広い意味でSmC)を混合し、材料特性の改善が試みられてきた。
2つの液晶化合物のSmA−SmC相転移温度が極端に異なる場合や、第2の液晶化合物がSmC相を示さない場合には、図4に示すMixture CのようにSmC相は不安定化され、左端に示される第1の液晶化合物の割合が低下するにつれ、ある濃度を限界に消滅する。図4は、右端に示される第2の液晶化合物のSmA−SmC相転移温度が縦軸の温度範囲より低温側に存在するか、または第2の液晶化合物がSmC相を示さない場合に相当する。
これに対して、2種類の液晶化合物共に、類似の温度でSmC相を示すにもかかわらず、図2のMixture Aの相図のように、対称組成(1対1の濃度比)付近では、SmC相が消滅してSmA相が安定化される化合物の組み合わせが存在することが知られており、このSmA相を「Induced(誘起された)SmA相」と呼ぶ。
ここで第1の液晶化合物がリッチな領域、つまり相図の左端をMixture AとMixture Cで比べてみると、ほぼ同じ形で、図2及び図4において第2の液晶化合物の混合によりSmC相が不安定化し、SmA−SmC相転移温度が低下する特徴を示す。両者の違いは、第2の液晶化合物に類似温度でSmC相が有るか無いかの違いである。ここで、本発明者らは、Mixture Aにおける第2の液晶化合物が示すSmC相を「Hindered(隠された)SmC相」と呼ぶことにした。
さて、図2、図4で示したMixture AとMixture Cの相図は、第1の液晶化合物がリッチな領域(相図の左端)では熱力学的に類似の形を持ち、偏光顕微鏡観察においてもSmC相、SmA相ともに何ら特徴を見出すことができない。ここで代表発明者は以前より、液晶相の粘弾性的性質を研究しており、SmA−SmC相の転移点近傍で、層圧縮弾性率と呼ばれるスメクチックの層間の圧縮・膨張に関する弾性率がクリティカルソフトニングを起こすことを見出していた(S. Shibahara, J. Yamamoto, Y. Takanishi, K. Ishikawa, H. Takezoe and H. Tanaka, Critical Behavior of Layer Compression Modulus near the Smectic-A-Smectic-Cα* Transition, Phys. Rev. Lett. 85, 1670-1673(2000).)。この現象は、2次相転移であるSmA−SmC転移点近傍では、低温側のSmC相の秩序変数でもある層内分子の傾きを復元する力が発散的に減少することを起源とした臨界現象である。つまり、層に対する分子チルトを変化させることで、層の伸縮変形に容易に応答できる(弾性が弱くなる)ことを表している。
図5に、従来報告された、SmA−SmC相転移点近傍での層圧縮弾性率Bのクリティカルソフトニング現象の一例を示す。図5は、層圧縮弾性率Bの温度依存性を表すもので、層圧縮弾性率Bは、温度が低下するにつれ層圧縮弾性率Bが徐々に増大する(逆に言えば、温度が上昇するにつれ層圧縮弾性率Bが徐々に減少する)傾向を示すが、SmA−SmC相転移温度とSmA−SmC相転移温度より数℃高い温度との間の温度範囲においては、反対に、温度が低下するにつれ層圧縮弾性率Bが急激に減少する(逆に言えば、温度が上昇するにつれ層圧縮弾性率Bが急激に増大する)傾向を示している。これは、高温側で安定なSmA相では液晶分子の長軸方向が層に垂直な配向が安定であるのに対し、低温側で安定なSmC相では液晶分子の長軸方向が層に傾斜する配向が安定化するため、SmA−SmC相転移温度より数℃高い温度またはそれ以下の温度では、液晶分子が層に対する分子チルトを変化させることで、層の伸縮変形に容易に応答でき、層圧縮弾性率Bが減少することを表している。つまり、混合系が現実にSmC相を示さなくても、SmA−SmC相転移の臨界現象がSmA相内で観測でき、臨界温度を推定することができる。ただし、図5の例では、SmA−SmC相転移温度の近傍で層圧縮弾性率Bが減少する温度範囲(臨界温度領域)が5〜10℃程度と狭く、工業的な応用のためには、臨界温度領域を拡大することが必要である。
本発明者らは、SmA−SmC相転移における臨界現象を、粘弾性測定という方法を用いて研究して来た過程で、SmA−SmC相転移を示す2種類の液晶物質のある種の混合系で、臨界温度領域が広い温度範囲に拡大する、異常な臨界現象を発見した。すなわち、図2の相図に示すMixture Aでは、純粋物質や図4の相図に示すMixture Cの場合と異なり、異常な臨界現象を示す。
図6に、Mixture Aの層圧縮弾性率の濃度・温度依存性を説明する模式図を、また、図7に、Mixture Cの層圧縮弾性率の濃度・温度依存性を説明する模式図を示す。図6(a)及び図7(a)は、層圧縮弾性率B、温度T、濃度(組成)φの3軸からなる座標系のT−φ平面に図2及び図4の相図を置き、その相図の上に、φ〜φの3つの組成におけるBのT温度依存性のグラフを重ね合わせたものである。ここで、φは、図2及び図4の左端に示される第1の液晶化合物単独の場合を表し、φ〜φは、第1の液晶化合物を主化合物とし、第2の液晶化合物を副化合物とする混合物を表し、φからφ、φ、φの順で第2の液晶化合物の分率が増加する。
図6(b)及び図7(b)に示すように、副化合物の濃度を徐々に増やして、層圧縮弾性率Bの温度依存性をSmA−SmC相転移温度の近傍で測定すると、両者とも該相転移温度(これらの図では、Bが極小を示す温度に相当する。)が低下していくことがわかる。Mixture Cの場合は、図7(b)に示すように、濃度に依存した相転移温度の周りで、通常の臨界現象が観測されるのに対して、Mixture Aでは、図6(b)に示すように、副化合物の濃度を増やすにつれて臨界現象を示す温度領域(臨界領域)が異常に拡大して、広い温度範囲で臨界現象を示す異常性が現れることが分かる。この場合の臨界現象は、SmC相が熱力学的相図の中に保持される限界濃度を超え、相図上ではSmA相だけしか現れないとしても、原理的にはソフトニングが観測されるはずである。
この異常な臨界現象を引き起こす物理的なメカニズムについて、本発明者らは仮説ではあるが、主化合物のみならず、副化合物もが単独では、SmC相を示す温度範囲であることから、副化合物が単独であればSmC相を示すという、「Hindered(隠された)SmC相」の存在が、濃度揺らぎや過渡的なSmC構造形成などのダイナミクスを通して、SmA−SmC臨界現象に影響を与えているものと予想している。
また、混合物においてSmA相を示す組成及び温度ではあっても、その温度において、主化合物及び副化合物が、単独では、SmC相を示す範囲内又はSmA−SmC相転移温度よりやや高い臨界領域の範囲内にある。このことから、液晶組成物が全体ではSmA相を示していても、各液晶分子がSmC相のように容易に傾き、分子チルトが変化しやすい状態にあることで、図1(a)に示すように液晶分子11が層法線13に対するチルト角を増減する、ソフトモードの運動が起こりやすいためとも考えられる。
そこで、図2のMixture Aは、特定の温度範囲において、液晶組成物はSmA相を示すが、該液晶組成物に含まれる2種類以上の液晶化合物が単独ではそれぞれSmC相を示すことから、ソフトモードの運動を利用した液晶素子に応用すると、超高速な応答を広い温度範囲で得ることができる。液晶組成物にソフトモードの運動を誘起する方法として、電傾効果を利用する方法が挙げられる。電傾効果(electroclinic effect)とは、カイラル対称性が破れた系において、自発分極が電場方向に揃うことにより、層内の分子の傾きが誘起される効果である。層に関する傾きとはSmC相における秩序変数そのものなので、SmA相において分子の傾きを抑制する力は、SmA−SmC相転移を記述する自由エネルギーの秩序変数に対する変分そのものに対応する。つまり電傾係数は、層圧縮弾性率Bの臨界現象と同様に、2次相転移であるSmA−SmC相転移点の近傍では、チルトの発生を抑制する力の発散的な減少によって、電傾係数χが発散的に大きくなる。先に説明したように、電傾効果を工業的に応用して、本質的に超高速なソフトモードの運動を表示素子に使おうとした場合、従来は、この強い温度依存性が短所となり、また転移点から遠く離れた温度では高電圧を加えない限り十分なチルトは発生しない。
しかしながら、Mixture AのInduced SmA相に見られる異常な臨界現象は、同じ現象を電傾効果で観測すれば、広い温度範囲で一様で大きな電傾係数を持つことに完全に対応する。図8に、Mixture Aの電傾係数の濃度・温度依存性を説明する模式図を、また、図9に、Mixture Cの電傾係数の濃度・温度依存性を説明する模式図を示す。Mixture Cについては図9に示したように、副化合物の増加と共に単に転移温度が低下するだけで、相似の電傾効果が観測されるが、Mixture Aでは、図8に示すように、幅広い温度範囲で一様で大きな電傾係数が観測される。なお、図8及び図9の縦軸である、χの上に〜を添えた記号:
Figure 0005920771
は、層圧縮弾性率Bのソフトニングを含んだ実効的な電傾係数を表す。
Hindered(隠された)SmC相を持つ、Induced(誘起された)SmA相を形成するスメクチック液晶混合物では、SmA−SmC相の臨界領域の拡大により、異常電傾効果を起こす機構を持つことから、そのような液晶混合物を用いることで、ソフトモードを用いた超高速な液晶表示素子を作成する基本技術が得られる。工業的な応用には、よりフラットな温度特性をもち、微小な電場で大きなチルト角を発生する液晶混合物の探索が必要である。様々な材料デザインが可能だと思われるので、有効な物性を示す混合系を得られる可能性は極めて高いと思われる。
この異常な臨界現象を、先に述べた電傾効果と関連させて考えると、SmA相を示す液晶において、SmA−SmC相転移点から遠く離れた温度でも、SmC相への相転移の影響を受け、大きな電傾係数が広い温度範囲で実現されることになり、その物性を表示素子に応用することができる。異常な臨界現象を示す混合系とは、少なくとも2つ又はそれ以上の液晶化合物が共にSmC相を示すにも関わらず、混合系の液晶組成物全体では、SmA相が強く安定化されてSmC相への転移が起こらない「Induced SmA相」と呼ばれる相を示す混合系である。この混合系自体は、強誘電性液晶が精力的に研究されていた十数年前から、その存在が認識されていた。しかしながらこれまでInduced SmA相は、SmC相の実現温度を広げようとして混合を行った結果、SmC相が不安定化してしまう困った性質として扱われていた。後に述べるように、相図の形だけからは、本質的に臨界現象に異常性がみられるかどうかを調べることはできないのである。今回、粘弾性測定という研究により、混合系のSmA−SmC相転移の特徴は、相転移点からの距離とは単なる温度差だけでなく、濃度などの別の物理量やミクロな構造の特徴に依存して変化することが明確に示された。そこで本発明者らは、Induced SmA相では、不安定化した混合物の「Hindered(隠された)SmC」相の存在により、異常な臨界現象が起こり、臨界温度領域が拡大すると結論した。そこで、この異常な臨界現象を応用することにより、幅広い温度範囲で一様で大きな電傾係数をもたらす液晶混合系の材料を設計することができ、図1(a)に示すようなソフトモードでの高速応答が可能な液晶素子、例えば表示素子や光学素子等へ応用することができる。
液晶材料を2枚の基板間に充填する方法としては、従来の真空注入法、液晶滴下注入法(One Drop Fill)、フレキソ印刷法等が挙げられる。液晶材料を等方相やネマチック相等(より高温で安定な相)に加熱してから注入した後、必要なときに徐冷してネマチック相やスメクチック相等(より低温で安定な相)に相転移させることが好ましい。
第一の基板と第二の基板間に挟持される液晶層を駆動するため、第一の基板と第二の基板のうち少なくとも一方には、該液晶層を制御する電極を有する。
液晶組成物の示すスメクチックA相の層法線が基板に対して略水平である場合には、該電極が発生する電場が基板に対して略垂直であることが好ましい。基板に対して略垂直に電場を印加するには、第一の基板と第二の基板のそれぞれに電極を設けることが好ましい。
液晶組成物の示すスメクチックA相の層法線が基板に対して略垂直である場合には、液晶層を制御する電極が発生する電場が基板に対して略水平であることが好ましい。基板に対して略水平に電場を印加するには、極性の異なる2つの電極を同一の基板に設けることが好ましい。該電極は櫛歯電極であってもよい。
液晶材料としては、SmC相及びSmA相を有する液晶として、従来公知のビフェニル、ターフェニル、フェニルシクロヘキサン、フェニルビシクロヘキサン、ビフェニリルシクロヘキサン、安息香酸フェニルエステル、安息香酸ビフェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、ビフェニルカルボン酸フェニルエステル、シクロヘキシル安息香酸フェニルエステル、シクロヘキシル安息香酸シクロヘキシルエステル、フェニルピリミジン、ビフェニリルピリミジン、2,5−ジフェニルピリミジン、フェニルジオキサン、ビフェニリルジオキサン、ジフェニルアセチレン(別名トラン)、1−フェニル−2−シクロヘキシルエタン、1−フェニル−2−ビフェニリルエタン、1−シクロヘキシル−2−ビフェニリルエタン、シアノフェニルエステル、シアノビフェニルエステル、アルキルシアノビフェニル、アルキルシアノターフェニル、アゾキシベンゼンなどを骨格として、いわゆるコア部を形成し、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素など)、シアノ基、エーテル基、エステル基、アリール基等の置換基を有していてもよい液晶化合物などが挙げられる。液晶材料は、誘電率異方性が正のもの、負のもの、いずれも使用可能であり、誘電率異方性が正の液晶化合物と負の液晶化合物を併用することもできる。
液晶材料は、アキラルの液晶化合物でも、キラルの液晶化合物でもよい。キラルな液晶相(キラルネマチック相、キラルスメクチックA相、キラルスメクチックC相など)を得るため、キラルの液晶化合物を用いることもでき、また、アキラルの液晶化合物に非液晶性のキラル化合物を添加することもできる。傾斜スメクチック相、特にスメクチックC相を有する液晶が強誘電性、反強誘電性、又はフェリ誘電性液晶を示すためには、ラセミでない、キラルな系が好ましく、キラルの液晶化合物(液晶性のキラル化合物)又は非液晶性のキラル化合物を含有することが好ましい。これらのキラル化合物に不斉を導入するには、例えばメソゲンの末端の一方又は両方に連結する側鎖のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルコキシカルボニル基等を、分枝又は置換基を有する構造としたり、環式構造中に不斉原子や軸不斉、面不斉を含むものが挙げられる。
不斉原子として不斉炭素を有するキラル化合物も好適に用いられ、このキラル化合物(液晶性であっても非液晶性であってもよい)を含有する液晶組成物は好ましく用いられる。不斉炭素の位置はコア部に近いほうが好ましく、コア部からの直線的な原子数で数えて1〜4の間に不斉炭素があるのが特によい。あるいは、コア部の両側に不斉炭素が存在するのも好ましい。この場合も、コアに近い部分に位置することが特に好ましい。不斉炭素の構造としては、不斉炭素上の置換基がフッ素、メチル基、トリフルオロメチル基を含むものが特に好ましく用いられる。
液晶組成物が少なくとも一種類以上のフェニルピリミジン骨格をコア部に有する液晶と、少なくとも一種類以上のエステル結合をコア部に有する液晶を含有することが好ましい。エステル結合をコア部に有する液晶としては、例えば、安息香酸フェニルエステル、安息香酸ビフェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、ビフェニルカルボン酸フェニルエステル、シクロヘキシル安息香酸フェニルエステル、シクロヘキシル安息香酸シクロヘキシルエステルなどがあげられる。これらの骨格はハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素など)で置換することもできる。
液晶組成物が少なくとも一種類以上のモノレイヤーを形成する液晶と、少なくとも一種類以上のバイレイヤーを形成する液晶を含有することも好ましい。
モノレイヤーを形成する液晶化合物としては、液晶化合物の分子両端の側鎖がそれぞれ炭素原子数1〜18のアルキル基(該アルキル基に含まれる1つ以上の−CH−基が、−O−、−CO−、−COO−、−OCOO−、−CH=CH−、−C≡C−で置換されていもよい。)、アルコキシル基、アルケニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、F原子、Cl原子、Br原子、CN基、CF基、OCF基等のいずれかであるものが挙げられる。
バイレイヤーを形成する液晶化合物としては、液晶化合物の分子両端の側鎖の一方がアルキル基、アルコキシル基、アルケニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、F原子、Cl原子、Br原子、CN基、CF基、OCF基等のいずれかであり、分子両端の側鎖の他方が、炭素原子数10〜30のアルキル基(該アルキル基に含まれる1つまたは2つ以上の−CH−基がそれぞれ、−O−、−CO−、−COO−、−OCOO−、−CH=CH−、−C≡C−のいずれかで置換されていてもよい。ただし、酸素原子が相互に直接結合する場合を除く。)であって、その水素原子の8以上、より好ましくは10以上がフッ素原子で置換されている基であることが好ましく、その場合、1又は2以上のフッ素原子で置換されている炭素原子が、該フッ素原子で置換されているアルキル基の中で、好ましくは4つ以上、より好ましくは5つ以上連続している[−(CH2−p−で表される基であって、pは1又は2であり、n≧4のものを含む]ことが好ましい。該フッ素原子で置換されているアルキル基は、その部分構造として、炭素原子数が4以上のペルフルオロアルキル基又はペルフルオロアルキレン基[−(CFF又は−(CF−であってn≧4のもの]を含むことが好ましい。
液晶組成物がモノレイヤーを形成する液晶と、バイレイヤーを形成する液晶を含有する場合、モノレイヤーを形成する液晶を主化合物とすることも、また、バイレイヤーを形成する液晶を主化合物とすることもできる。
<液晶性化合物>
スメクチックC相を示す液晶性化合物としては、下記の一般式
Figure 0005920771
(式中、Rは各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO−、−SO−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、
Zは各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−O−SO−、−SO−O−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、
Aは各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つの隣接していない−CH−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、
nは1、2、3、4又は5である。)で表される液晶性化合物(LC−0)が好ましい。
また、下記の一般式
Figure 0005920771
(式中、Rは各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO−、−SO−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、
Zは各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−O−SO−、−SO−O−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、
Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、
Xは各々独立にハロゲン原子、シアノ基、メチル基、メトキシ基、−CF、又は−OCFを表し、
nは各々独立に0〜4の整数を表し、
、n、n及びnは、各々独立に0又は1を表すが、n+n+n+n=1〜4であり、
Cycloは各々独立に炭素原子数3〜10のシクロアルカンを表し、任意に二重結合を有していてもよい。)で表される液晶性化合物(LC−I)〜(LC−III)が好ましい。
ここで、Cycloはシクロヘキサン(シクロへキシレン基)であることが好ましく、例えば下記一般式
Figure 0005920771
(式中、Rは各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO−、−SO−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、
Zは各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−O−SO−、−SO−O−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、
Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、
Xは各々独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、メチル基、メトキシ基、CF基、又はOCF基を表し、
nは各々独立に0〜4の整数を表し、
、n、n及びnは、各々独立に0又は1を表すが、n+n+n+n=1〜4である。)で表される液晶性化合物(LC−I′)〜(LC−III′)が好ましい。
液晶性を発現するためには、環に対して1,4−置換であることが好ましい。すなわち該液晶性化合物に含まれる環式2価基が1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基、2,5−ピリミジンジイル基などであることが好ましい。
例えば下記一般式
Figure 0005920771
(式中、R11及びR12は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表すが、R11とR12が同時にフッ素原子となることはなく、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、
11〜X22は各々独立に水素原子、フッ素原子、CF基、又はOCF基を表し、
11〜L14は各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、
Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、
、b、c、dは各々独立に0又は1の整数を表すが、a+b+c+dは1、2又は3であり、aが0の場合はdは0であり、aが1の場合はcは0であり、cが1の場合はaは0であり、b=c=1の場合はa=d=0であり、
Cycloは各々独立に炭素原子数3〜10のシクロアルカンを表し、任意に二重結合を有していてもよい。)で表される液晶性化合物(LC−Ia)〜(LC−IIIa)が好ましい。
また、下記一般式
Figure 0005920771
(式中、R11及びR12は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表すが、R11とR12が同時にフッ素原子となることはなく、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、
環Aは各々1〜4つの水素原子がフッ素原子、CF基、OCF基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、又は、1,4−シクロヘキシレン基を表し、
環Bは1〜4つの水素原子がフッ素原子、CF基、OCF基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基を表し、
環Cは1〜4つの水素原子がフッ素原子、CF基、OCF基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−シクロヘキシレン基を表し、
Lは各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、
Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、
は0、1、又は2を表し、b、及びcは0、1、又は2の整数を表し、a、b及びcの合計は1、2または3を表す。)で表される液晶性化合物(LC−IV)、
Figure 0005920771
(式中、R21及びR22は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表すが、R21とR22が同時にフッ素原子となることはなく、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、
21〜X27は各々独立に水素原子、フッ素原子、CF基、又はOCF基を表し、
21〜L24は各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、
、b、c及びdは各々独立に0又は1の整数を表すが、a+b+c+dは1、2又は3であり、aが0の場合はdは0であり、aが1の場合はcは0であり、b=c=1の場合はa=d=0である。)で表される液晶性化合物(LC−V)が好ましい。
フェニルピリミジン系化合物のうち、強誘電性の発現に必要な傾いたスメクチック相を得るため、あるいは、分子の傾き角を大きくするため、もしくは融点を低下させるためには分子の環の部分に置換基として、少なくとも1つ以上のフッ素原子、CF基、あるいはOCF基が導入されることが好ましい。置換基としては形状の小さなフッ素を導入することが、液晶相を安定に保ち、また、高速応答性も保持する面で好ましい。置換基の数は1〜3が好ましい。
粘度が低く高速応答するため、環をつなぐ連結基(−Z−Y−Z−、又は−Y−L−Y−)としては、単結合、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CH=CH−、又は、−C≡C−からなるより選択されることが好ましく、特に、単結合であることが好ましい。分子の局部的な分極を抑制しスイッチング挙動への悪影響を少なくする面でも単結合が好ましい。一方、層構造の安定性を保つための材料としては粘度が高い方が好ましく、その場合には、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−からなるより選択されることが好ましく用いられ、特に、−CO−O−、−O−CO−が好ましく用いられる。
一方、融点を低下させる効果を大きくするという点では、側鎖(R、R11、R12、R21、R22)の一方または両方に水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、イソプロピル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルオキシカルボニルオキシ基を用いることが好ましい。
Δnを大きくするのに適していて、安定な強誘電性液晶相を示し、かつ、粘度が低く高速応答に適した化合物としては、下記一般式
Figure 0005920771
(式中、R21及びR22は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子、又はフッ素原子を表し、
該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO−、−SO−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、
21〜X24は各々独立に水素原子、ハロゲン、シアノ基、メチル基、メトキシ基、CF基、又はOCF基を表し、
環Aはフェニレン基またはシクロヘキシレン基を示し、
Lは各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、
は0、1、又は2を表し、b、及びcは0、1、又は2の整数を表し、a+b+cの合計は1又は2を表し、a=1のときc=0であり、c=1のときa=0である)で表される液晶性化合物(LC−VI)が好ましい。
上記一般式(LC−I)〜(LC−VI)におけるYは、好ましくは、各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜7のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、
より好ましくは、各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜5のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、
より好ましくは、各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜3のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)である。
TFT駆動に適していて、安定な強誘電性液晶相を示し、かつ、粘度が低く高速応答に適した化合物としては、下記一般式
Figure 0005920771
(式中、eは0又は1を示し、
21〜X26は各々独立に水素原子、又はフッ素原子基を表すが、eが0のときX21〜X24の少なくとも1つはフッ素原子で、eが1のときX21〜X26の少なくとも1つはフッ素原子であり、
21及びR22は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基中の、1つの−CH−基が−O−で置き換えられてもよく、
25は単結合、−CHO−、又は−OCH−を表し、
環Aはフェニレン基またはシクロヘキシレン基を表す。)で表される液晶性化合物(LC−VII)が特に好ましい。
液晶組成物に用いられる液晶性化合物は、上記の(LC−0)、(LC−I)〜(LC−III)、(LC−IV)、(LC−V)、(LC−VI)、(LC−VII)等のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせで用いてもよい。
<キラル化合物>
本発明に用いられる液晶組成物に含まれるキラル化合物としては、不斉原子をもつ化合物、軸不斉をもつ化合物、面不斉をもつ化合物、アトロプ異性体のいずれでもよく、該キラル化合物は重合性基を有するものでも、重合性基を有しないものでもよい。
不斉原子をもつ化合物において、不斉原子は不斉炭素原子であると立体反転が起こりにくく好ましいが、ヘテロ原子が不斉原子となっていてもよい。不斉原子は鎖状構造の一部に導入されていても、環状構造の一部に導入されていてもよい。
該液晶組成物が、不斉原子をもつ化合物として、一般式(IV)
Figure 0005920771
(式(IV)中、R及びRは各々独立に炭素原子数1〜30の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO−、−SO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよく、前記アルキル基が縮合又はスピロ環式系を含むものでもよく、前記アルキル基が1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含むことができる1つ又は2つ以上の芳香族又は脂肪族の環を含むものでもよく、またこれらの環はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンで任意に置換されていてもよく、
及びRのうちいずれか一方又は両方が不斉原子をもつ基であり、
Zは各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、
及びAは各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つの隣接していない−CH−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、
mは1、2、3、4又は5である。)で表される光学活性化合物が好ましい。
上記一般式(IV)においてR及びRの両方がキラルな基である、ジキラル化合物がより好ましい。ジキラル化合物の具体例として、下記一般式(IV−a1)から(IV−a11)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0005920771
Figure 0005920771
Figure 0005920771
一般式(IV−a1)から(IV−a11)において、Rは、各々独立に炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO−、−SO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよい。重合性基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
また、X及びXは、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、シアノ基、フェニル基(該フェニル基の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCFで置換されていてもよい。)、メチル基、メトキシ基、−CF、又は−OCFであることが好ましい。ただし、一般式(IV−a3)及び(IV−a8)において、*を付した位置が不斉原子となるためには、XはXと異なる基が選択される。
また、nは0〜20の整数である。
一般式(IV−a4)及び(IV−a9)におけるRは、水素原子又はメチル基が好ましい。
一般式(IV−a5)及び(IV−a10)におけるQは、メチレン基、イソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基などの二価の炭化水素基が挙げられる。
一般式(IV−a11)におけるkは、0〜5の整数である。
より好ましい例示として、R=C,C13,C17などの炭素原子数4〜8の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基が挙げられる。また、XとしてはCHが好ましい。
一般式(IV)及び(IV−a1)〜(IV−a11)における部分構造式、−A−(Z−A−は、より好ましくは、下記一般式(IV−b)
Figure 0005920771
(式中、環A、B、Cは、各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基又はナフタレンジイル基であり、これらの基においてベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCFで置換されていてもよく、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の炭素原子は、窒素原子に置換されていてもよい。Zの定義は式(IV)におけるのと同じである。)であり、さらに好ましくは、下記一般式(IV−b1)〜(IV−b6)
Figure 0005920771
(ただし、これらの式(IV−b1)〜(IV−b6)においてベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCFで置換されていてもよく、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の炭素原子は、窒素原子に置換されていてもよい。Zの定義は式(IV)におけるのと同じである。)が挙げられる。信頼性の面では、ピリジン環、ピリミジン環等の複素環よりもベンゼン環やシクロヘキサン環の方が好ましい。誘電率異方性を大きくするという面では、ピリジン環、ピリミジン環等の複素環を有する化合物を使うことが良いが、その場合には化合物の持つ分極性が比較的大きく、ベンゼン環やシクロヘキサン環等の炭化水素環である場合には、化合物の持つ分極性が低い。このため、キラル化合物の分極性に応じて、適切な含有量を選択することが好ましい。
また、液晶組成物に用いられるキラル化合物としては、軸不斉を有する化合物又はアトロプ異性体を用いることもできる。
軸不斉とは、下記に示すアレン誘導体や、
Figure 0005920771
下記に示すビフェニル誘導体など、
Figure 0005920771
結合軸の回転が妨げられている化合物中、軸の一端側で置換基X及びYが互いに異なり、軸のもう一端側でも置換基X及びYが互いに異なることで発現する。なお、ビフェニル誘導体など、結合軸の回転が立体障害などの影響によって妨げられる場合をアトロプ異性という。
キラル化合物に用いられる軸不斉をもつ化合物としては、例えば、
Figure 0005920771
が挙げられる。式(IV−c1)及び(IV−c2)中、X61とY61、X62とY62は、それぞれ、いずれか少なくとも一方が存在し、X61、X62、Y61、Y62は、各々独立にCH、C=O、O、N、S、P、B、Siのいずれかを表す。また、N、P、B、Siである場合は、所要の原子価を満足するように、アルキル基、アルコキシ基、アシル基等の置換基と結合されていてもよい。
61及びE62は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アリル基、ベンジル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基、アルキルケトン基、複素環基又はこれらの誘導体のいずれかを表す。
また、式(IV−c1)において、R61及びR62は、各々独立に、アルキル基、アルコキシル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基を表し、
63、R64、R65、R66、R67及びR68は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、又はジアルキルアミノ基を示し、
63、R64及びR65のうちの2つが、置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい、モノ又はポリメチレンジオキシ基を形成していてもよく、
66、R67及びR68のうちの2つが、置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい、モノ又はポリメチレンジオキシ基を形成していてもよい。
ただし、R65とR66が共に水素原子の場合は除く。
また、液晶組成物に用いられるキラル化合物としては、面不斉を有する化合物を用いることもできる。
面不斉を有する化合物としては、例えば下記に示すヘリセン(Helicene)誘導体
Figure 0005920771
(式(IV−c3)中、X61とY61、X62とY62は、それぞれ、いずれか少なくとも一方が存在し、X61、X62、Y61、Y62は、各々独立にCH、C=O、O、N、S、P、B、Siのいずれかを表す。また、N、P、B、Siである場合は、所要の原子価を満足するように、アルキル基、アルコキシ基、アシル基等の置換基と結合されていてもよい。
61及びE62は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アリル基、ベンジル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基、アルキルケトン基、複素環基又はこれらの誘導体のいずれかを表す。)
が挙げられる。このようなヘリセン誘導体においては、前後に重なり合う環の前後関係が自由に変換することができないため、環が右向きの螺旋構造をとる場合と左向きの螺旋構造をとる場合とが区別され、キラリティーを発現する。
液晶組成物に含まれるキラル化合物としては、螺旋構造のピッチが小さくなるように、ねじり力(Helical Twisting Power)が大きい化合物が好ましい。特に400nm以下となる螺旋ピッチの短いDHFLCを調整する際は、ねじり力が大きい化合物を使用することが好ましい。ねじり力が大きい化合物は所望のピッチを得るために必要な添加量が少なくできるので、原料コストの高いキラル化合物を最小限に抑えることができ、コスト削減の観点から好ましい。この観点から、好ましいキラル化合物として、不斉原子を有する化合物である、一般式(IV−d1)〜(IV−d3)で表される化合物
Figure 0005920771
や、軸不斉を有する化合物である、一般式(IV−d4)〜(IV−d5)で表される化合物
Figure 0005920771
が挙げられる。式(IV−d1)〜(IV−d5)中、R71及びR72は各々独立に、水素、ハロゲン、シアノ(CN)基、イソシアネート(NCO)基、イソチオシナネート(NCS)基又は炭素数1〜20のアルキル基を表すが、このアルキル基中の任意の1つ又は2つ以上の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、又は−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
71及びA72は各々独立に、芳香族性あるいは非芳香族性の3ないし8員環、又は、炭素原子数9以上の縮合環を表すが、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素原子数1〜3のアルキル基又はハロアルキル基で置き換えられてもよく、環の1つ又は2つ以上の−CH−は−O−、−S−、又は−NH−で置き換えられてもよく、環の1つ又は2つ以上の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、
71及びZ72は各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜8のアルキレン基を表すが、任意の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−N(O)=N−、−N=N(O)−、−CH=CH−、−CF=CF−、又は−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
71及びX72は各々独立に単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、又は−CHCH−を表し、
71及びm72は各々独立に1〜4の整数を表す。ただし、式(IV−d5)におけるm71及びm72のいずれか一方は0でもよい。
式(IV−d2)中、Ar71及びAr72は各々独立にフェニル基又はナフチル基を表し、これらの基においてベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCFで置換されていてもよい。
キラル化合物としては、メソゲンを有するキラル化合物を用いることもできる。このようなキラル化合物として、例えば
Figure 0005920771
が挙げられる。式(IV−e1)〜(IV−e3)中、
81、R82、R83及びY81は、各々独立に炭素原子数1〜30の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO−、−SO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよく、前記アルキル基が縮合又はスピロ環式系を含むものでもよく、前記アルキル基が1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含むことができる1つ又は2つ以上の芳香族又は脂肪族の環を含むものでもよく、またこれらの環はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンで任意に置換されていてもよく、
81、Z82、Z83、Z84及びZ85は各々独立に炭素原子数が1〜40個であるアルキレン基を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上のCH基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−、−CF−又は−C≡C−により置き換えられていてもよく、
81、X82及びX83は、各々独立に−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CHCH−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CF=CF−、−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−、又は単結合を表し、
81、A82及びA83は各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つの隣接していない−CH−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、
81、m82、m83はそれぞれ0又は1であり、m81+m82+m83は1、2又は3である。
CH*81及びCH*82は各々独立にキラルな2価の基を表し、
CH*83はキラルな3価の基を表す。
ここで、CH*81及びCH*82に用いられるキラルな2価の基としては、不斉原子を有する次の2価基
Figure 0005920771
Figure 0005920771
や、軸不斉を有する次の2価基
Figure 0005920771
が好ましい。ただし、CH*81及びCH*82に用いられるこれらの2価基において、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCFで置換されていてもよく、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の炭素原子は、窒素原子に置換されていてもよい。
CH*83に用いられるキラルな3価の基としては、CH*81及びCH*82に用いられるキラルな2価基の任意の位置に、−X83(Z8383)m8383が結合できることにより3価の基となればよい。
さらに好ましくは、キラルな2価基としてイソソルビド骨格を有する、次の化合物が挙げられる。
Figure 0005920771
式中、R91及びR92は各々独立に炭素原子数1〜30の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO−、−SO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよく、前記アルキル基が縮合又はスピロ環式系を含むものでもよく、前記アルキル基が1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含むことができる1つ又は2つ以上の芳香族又は脂肪族の環を含むものでもよく、またこれらの環はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンで任意に置換されていてもよく、
91及びZ92は各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。
液晶組成物層がクリティカルソフトニングを生じる温度幅は、10℃以上であることが好ましく、15℃以上がさらに好ましく、20℃以上であることが特に好ましい。ここで、クリティカルソフトニングを生じる温度幅とは、例えば図5において、層圧縮弾性率BがSmA相で極大を示す温度と、SmA−SmC転移点(層圧縮弾性率Bが極小を示す温度、TACという)との温度差をいう。
また、液晶組成物層が規格化電傾効果係数(χ‘)の値が0.2である温度範囲が5℃以上であることが好ましく、8℃以上であることがさらに好ましく、10℃以上であることが特に好ましい。ここで、電傾効果係数(χ、電傾係数、エレクトロクリニック係数ともいう。)とは、電場の強度に対するチルト角の大きさの比をいい、規格化電傾効果係数(χ‘)とは電傾効果係数(χ)の値をSmA−SmC転移点(TAC)のときの値を1として規格化したものをいう。液晶組成物にはSmCが消失してしまったために、SmA−SmC転移点(TAC)が観測されないものもあるが、その場合は相図を作成し、クリティカルソフトニング現象の測定、電傾効果係数(χ)の測定などを行い、外挿法などによりSmA−SmC転移点(TAC)のときの電傾効果係数(χ)の値を予測してよい。この予測も困難な場合には、SmAの最下限温度での電傾効果係数(χ)の値に対して規格化して、規格化電傾効果係数(χ‘)を求めればよい。
液晶組成物が少なくとも2種の分子長さの異なる液晶材料の混合物を含み、該分子長の比が1.0:1.2以上であることも好ましく、1.0:1.3以上であることがさらに好ましく、1.0:1.5以上であることが特に好ましい。この場合は、液晶組成物が少なくとも一種類以上のコア部がひとつである一般的な液晶化合物と、少なくとも一種類以上の、一般的な液晶化合物を2つつなげたダイマー、3つつなげたオリゴマー、数個つなげたオリゴマーなどから選ばれる分子長の長い液晶化合物を含むことが好ましい。分子長は例えばSpatran’06(Wavefunction社製)を用いてHartree−Fock法で得られたエネルギー最安定化の分子構造から見積もることができる。あるいは、実験的にスメクチックA相の層間隔から見積もることも、スメクチックC相の層間隔と傾き角から見積もることもできる。
液晶組成物層は、液晶組成物がSmA相を示す温度より低温側で、同一組成の液晶組成物がSmC相を示すことが好ましい。
本発明の液晶素子の動作温度は、液晶組成物に含まれる2つ以上の液晶化合物のSmA−SmC転移温度(またはSmC相の上限温度)の中で最高値となる温度よりも低い温度で動作させることが好ましく、また、質量分率が最も大きい成分である液晶化合物(主化合物)が単独で示すSmA−SmC転移温度(またはSmC相の上限温度)よりも低い温度で動作させることが好ましい。いずれかの液晶化合物が単独でSmC相より高温側にSmA相を有しない場合、または、SmC相とSmA相との間に他の液晶相を有する場合は、液晶化合物が単独で示すSmA−SmC転移温度の代わりに、該液晶化合物が単独でSmC相を示す上限温度を用いることができる。
本発明の液晶素子の動作温度は、該液晶組成物がSmA相を示す温度の範囲内であることが好ましい。該液晶組成物がその組成において低温側にSmC相を有することが好ましいが、必ずしもそれに限定されず、SmA相の低温側にSmC相以外の液晶相を有する場合や、SmA−SmC転移点が明確に現れない場合も考えられる。
液晶素子の動作温度範囲は、上記に例示された好ましい上限温度と下限温度との差となる温度幅として、例えば主化合物が単独でSmC相を示す上限温度と、液晶組成物がSmA相を示す下限温度の温度差が、20℃以上であることが好ましい。
液晶材料は、1種又は2種以上の液晶化合物を含有することができ、さらに、液晶性又は非液晶性の重合性化合物を含有する液晶材料であってもよい。液晶組成物が重合性化合物を含有する場合には、その組成物中に重合開始剤を少なくとも1種類以上含有することが好ましい。重合開始剤は、液晶組成物中の重合性化合物を効率よく重合させるために有用な化合物である。重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましく、具体的には以下の物が好ましい。
BASF社のイルガキュア651、イルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア127、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819、イルガキュアOXE01、イルガキュアOXE02、ルシリンTPO、ダロキュア1173。LAMBSON社のエサキュア1001M、エサキュアKIP150、スピードキュアBEM、スピードキュアBMS、スピードキュアPBZ、ベンゾフェノン。
これらの重合開始剤は、1種類でも良いが、2種類以上用いても良く、増感剤等を添加しても良い。
液晶組成物中に、必要に応じて顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、非反応性のオリゴマーや無機充填剤、有機充填剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、シランカップリング剤等を適宜添加しても良い。
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
(液晶化合物)
2種類のSmC相混合系のモデルの1つとして、次に示す10BとP10O10の混合系を用いた。10Bはコアとしてフェニル環とエステル結合を有し、また、1つの側鎖にキラル中心(下記の化学式中、*を添えた炭素原子)を有する。P10O10はフェニルピリミジン骨格を有する。
Figure 0005920771
Figure 0005920771
10B−P10O10混合系では、上述のようにSmA相が広く安定化される相図を示す。偏光顕微鏡による観察により同定した10Bの転移温度はIso−150℃−SmA−130℃−SmCであるが、P10O10を10%添加すると、SmA−SmC転移点は115℃に低下し、20%の添加では、SmA−SmC転移点は75℃に低下し、30%の添加では、室温までSmAとなりSmC相は発現しなかった。P10O10は、Iso−77℃−SmA−73℃−SmCとスメクチックC相を示すので、スメクチックC相を示す、10BとP10O10の混合により、スメクチックC相が消失し、スメクチックA相が安定化したことがわかる。
10B:P10O10=90%:10%、80%:20%の混合物について層圧縮弾性率を測定したところ、SmA−SmC転移点近傍のSmA相において、分子が層内で容易に傾きやすくなることを反映したクリティカルソフトニングが相転移点に向けて起きていることがわかった。クリティカルソフトニングがおきる温度幅は、10B:P10O10=90%:10%の混合物で15℃、80%:20%の混合物で35℃と、10B単独のときのクリティカルソフトニングがおきる温度幅(5℃)よりも広いものが観測された。
電傾効果の測定をするため、水平配向のセルに封入しSmA相で電場を印加して誘起されるチルト角を測定した。電傾効果の指標として、チルト角を電界で割った値である電傾係数を求め、その値を各混合物のTc(SmA−SmC転移温度)で規格化して評価した。この規格化した電傾係数(χ‘)がある程度の大きさ以上である温度領域が広い方が好ましいが、規格化電傾係数(χ‘)が0.2以上となる温度範囲を調べると、10B:P10O10=90%:10%の混合物では8℃、80%:20%の混合物では14℃と、10B単独の場合の温度幅(4℃)よりも広い温度幅を得ることができ、電傾効果を利用した素子に好適であることがわかった。
臨界現象に依存した効果を除いた、裸の電傾係数の絶対値は、液晶試料の分子形状、自発分極の大きさなどに依存して大きく変わるため、今後の材料設計で主化合物の選定を厳密に行うことで、誘起チルト角の大きさを大きくすることは十分可能であると考えられる。また、今回のモデル系でも十分な厚みを持つ試料を使えば、表示機能を担うのに十分なリターデーションを稼ぐことができると考えられる。
11…液晶分子、12…コーン、13…層法線。

Claims (9)

  1. 第一の基板と、第二の基板と、前記第一の基板と第二の基板間に液晶組成物を含有する液晶層を挟持し、該基板の少なくとも一方には、該液晶層を制御する電極を有する液晶素子であって、該液晶組成物はスメクチックA相を示し、なおかつ少なくとも2種類以上の液晶化合物を含有し、該液晶化合物は単独でそれぞれスメクチックA相−スメクチックC相の相転移を有し、前記液晶層が10℃以上の温度幅でクリティカルソフトニングを生じることを特徴とするソフトモードを利用した液晶素子。
  2. 前記液晶層が、規格化電傾効果係数(χ‘)の値が0.2である温度範囲が5℃以上である請求項記載の液晶素子。
  3. 前記液晶組成物が少なくとも一種類以上のフェニルピリミジン骨格をコア部に有する液晶と、少なくとも一種類以上のエステル結合をコア部に有する液晶を含有する請求項1又は2記載の液晶素子。
  4. 前記液晶組成物が少なくとも一種類以上のモノレイヤーを形成する液晶と、少なくとも一種類以上のバイレイヤーを形成する液晶を含有する請求項1〜のいずれか一項に記載の液晶素子。
  5. 前記液晶組成物が少なくとも2種の分子長さの異なる液晶材料の混合物を含み、該分子長の比が1:1.2以上である請求項1〜のいずれか一項に記載の液晶素子。
  6. 前記液晶組成物が少なくとも2種以上のお互いに非相溶な分子構造を有する液晶材料を含む請求項1〜のいずれか一項に記載の液晶素子。
  7. 前記液晶組成物の示すスメクチックA相の層法線が基板に対して略水平であり、該第一の基板と、該第二の基板のそれぞれに該液晶層を制御する電極を有し、該電極が発生する電場が基板に対して略垂直である請求項1〜のいずれか一項に記載の液晶素子。
  8. 前記液晶組成物の示すスメクチックA相の層法線が基板に対して略垂直であり、該液晶層を制御する電極が発生する電場が基板に対して略水平である請求項1〜のいずれか一項に記載の液晶素子。
  9. 前記液晶組成物が少なくとも一種類以上のキラル化合物を含有する請求項1〜のいずれか一項に記載の液晶素子。
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