JP5918969B2 - 抗菌剤(Clostridium細菌用)及びその製造方法 - Google Patents
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Description
クロストリジウム属の細菌は、グラム染色で陽性となり、偏嫌気性で芽胞を形成するという特徴をもつ。また、クロストリジウム属の細菌には、ヒトや動物の腸内で常在菌として存在するものがあり、病原性の菌も存在する。この中で、特にクロストリディウム ディフィシル(Clostridium difficile、以下、C.difficileと記載する。)、又はウェルシュ菌(Clostridium perfringens)による大腸炎等の感染症が問題となっている。
また、米国やカナダ、欧州等の多くの先進国で、C.difficileに起因する院内感染は、重大な問題になっている。たとえば、米国だけでも、年間約70万例が発生しており、保険医療制度の費用は年間32億ドルに上っている。また、EU加盟国においても、関連する医療費が年間44億ドルと推定されている。
このC.difficileの感染症に対しては、殆どの抗菌剤が効果を示さず、僅かに治療薬としてバンコマイシン、メトロニダゾールが使われている。
バンコマイシン(Vancomycin)は、細菌の細胞壁合成酵素阻害作用を有するグリコペプチド系抗生物質であり、広い抗菌スペクトルで高い抗菌活性を有することが特徴である。また、メトロニダゾール(Metronidazole)は、ヘリコバクター・ピロリ菌に対する2次除菌療法の薬剤として認可された抗菌薬であり、C.difficile感染症に対しても使用される。
しかしながら、C.difficile感染症は罹患率・死亡率が高いことが特徴である。
我が国では、現在のところ、C.difficileの感染検査が行なわれていないものの、潜在的な感染者が多く存在すると考えられている。
従来技術1のホップ抽出物によれば、ボツリヌス菌やC.difficileの増殖を阻害する抗菌剤を提供できる。
また、C.difficile感染症に対しては、殆どの抗生物質等の抗菌剤が有効性を示さず、バンコマイシン、メトロニダゾールが使われているに過ぎなかった。しかしながら、服薬を止めたときの再発や薬剤耐性が大きな問題となっていた。
このため、新規なC.difficile感染症治療薬となる抗菌剤の開発が待望されていた。なお、非特許文献1及び2には、クロストリジウム属の細菌についての記載はない。
本発明の抗菌剤は、3−アシルテトロン酸類で表される化合物を含むクロストリジウム属(Clostridium)細菌用の抗菌剤であって、前記3−アシルテトロン酸類は、式
本発明の抗菌剤は、3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類で表される化合物を含むクロストリジウム属(Clostridium)細菌用の抗菌剤であって、前記3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類は、式
本発明の抗菌剤は、請求項1に記載の3−アシル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン類で表される化合物、請求項2に記載の3−アシルテトロン酸類で表される化合物、及び請求項3に記載の3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類で表される化合物において、それぞれ、前記式中のRにおける直鎖状アルキル基の炭素数は5〜13以外のものを除くことを特徴とする。
本発明の抗菌剤は、請求項1に記載の3−アシル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン類で表される化合物、請求項2に記載の3−アシルテトロン酸類で表される化合物、及び請求項3に記載の3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類で表される化合物において、それぞれ、前記式中のRにおける直鎖状アルキル基の炭素数は9〜13以外のものを除くことを特徴とする。
本発明の抗菌剤は、前記クロストリジウム属は、クロストリディウム ディフィシル(Clostridium difficile)及び/又はウェルシュ菌(Clostridium perfringens)であることを特徴とする。
本発明の大腸炎治療用の組成物は、前記抗菌剤を用いたことを特徴とするクロストリジウム属細菌用の大腸炎治療用の組成物であることを特徴とする。
本発明の非ヒト動物の大腸炎の治療方法は、前記3−アシル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン類で表される化合物、前記3−アシルテトロン酸類で表される化合物、及び/又は前記3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類で表される化合物を投与することを特徴とする。
本発明の抗菌剤の製造方法は、4-ヒドロキシ-6-メチルピロン、テトロン酸、及び/又は4-ヒドロキシクマリンの1種を基質とし、有機溶媒中、アミン塩基存在下において、酸クロリド又は酸無水物と前記基質とを反応させ、0〜50℃で12〜24時間撹拌し、3−アシル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン類、3−アシルテトロン酸類、及び/又は3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類で表される化合物を合成するクロストリジウム属(Clostridium)細菌用の抗菌剤の製造方法であって、前記3−アシル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン類は、式
前記3−アシルテトロン酸類は、式
前記3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類は、式
本発明の抗菌剤の製造方法は、4-ヒドロキシ-6-メチルピロン、テトロン酸、及び/又は4-ヒドロキシクマリンを基質とし、有機溶媒中、縮合剤およびアミン塩基存在下において、カルボン酸と前記基質とを反応させ、0〜50℃で12〜24時間撹拌し、3−アシル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン類、3−アシルテトロン酸類、及び3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類で表される化合物を合成するクロストリジウム属(Clostridium)細菌用の抗菌剤の製造方法であって、前記3−アシル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン類は、式
前記3−アシルテトロン酸類は、式
前記3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類は、式
上述のように、クロストリジウム属の細菌、特にC.difficileやウェルシュ菌に選択的で、腸内フローラのバランスを崩さない抗菌化合物は、非常に少なく我が国での認可例もなかった。
このため、本発明の発明者らは、鋭意実験・研究を行って、クロストリジウム属の細菌に対する抗菌活性評価を行なった。この結果、幾つかの公知ラクトン類が、病原性腸内細菌C.difficileやウェルシュ菌等に対する高い抗菌活性と、腸内細菌類における抗菌選択性があることを見出し、本発明を完成させた。これらの公知ラクトン類は、非特許文献1と2に記載されている化合物の数種である。
すなわち、本発明の実施の形態に係るクロストリジウム属の細菌に選択的な抗菌活性を有するラクトン化合物は、3−アシル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン類(3−Acyl−4−hydroxy−6−methylpyrone)、3−アシルテトロン酸類(3−Acyltetronic acid)、及び/又は3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類(3−Acyl−4−hydroxycoumarin)で表される化合物である。
すなわち、これらの化合物は、クロストリジウム属のC.difficileに対するin vitro抗菌活性評価において、汎用薬であるバンコマイシンと同等、又はより高活性であった。
具体的には、これらの化合物は、0.5μg/mL〜64μg/mL程度において、クロストリジウム属の菌選択性の効果が得られる。
この置換基であるRに炭素数4〜30の直鎖状又は分岐鎖状又は環を形成していてもよいアルキル基を用いることができる理由として、炭素数1の3−アシル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン類、3−アシルテトロン酸類、3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類がクロストリジウム属の細菌に選択的に抗菌作用を示すことを本発明者が見いだしたことが挙げられる。この上で、炭素数4〜30の直鎖状又は分岐鎖状又は環を形成していてもよいアルキル基により極性が少なくなり、クロストリジウム属の細菌の細胞壁の代謝を阻害する等の作用を大きくするものと考えられる。炭素数が少なくなり4未満になると、脂溶性が減少して細菌内に取り込まれにくくなり、抗菌性が落ちると考えられる。また逆に、炭素数が大きくなりすぎると、脂溶性が大きくなり、融点や溶解度等に関する影響がでるため、細菌内に取り込まれにくくなり、抗菌性が落ちると考えられる。
この直鎖状又は分岐鎖状又は環を形成していてもよいアルキル基の炭素数としては、上記の理由により炭素数4〜20がより好ましく、炭素数5〜18が更に好ましいことが実験的に分かっている。また、炭素数9〜18にて、クロストリジウム属の細菌、特にC.difficileやウェルシュ菌に対する抗菌活性及び選択性が最も高くなるという効果が得られる。このため、下記の実施例では炭素数が9及び13の例を示した。
つまり、本発明の実施の形態に係る上記の一般式(1)〜(3)に係る化合物は、クロストリジウム属の細菌に対して、汎用の治療薬であるバンコマイシンと同等以上に高活性となる。これに加えて、他の腸内細菌に対しては比較的活性が低く、腸内フローラに影響与えにくい選択性がある抗菌剤及び治療薬として使用できる。
このキャリアとしては、シリコーン、コラーゲン、ゼラチン等の生体親和性材料を含んでもよい。あるいはまた、種々の乳濁液であってもよい。
さらには、例えば、希釈剤、香料、防腐剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、乳化剤、可塑剤などから選択される1または2以上の製剤用添加物を含有させてもよい。
本発明の実施の形態に係る医薬組成物の投与経路は、特に限定されないが、非経口的に投与することもできる。
非経口投与としては、例えば、静脈内、動脈内、皮下、真皮内、筋肉内または腹腔内の投与が挙げられる。
また、本発明の実施の形態に係る抗菌剤は、抗癌剤等を含む各種治療により免疫力が低下した患者に対する抗生物質治療後の症例、院内感染を含む各種症例の治療に用いることができる。
投与回数および期間は、投与状態をモニターし、その状態により再度あるいは繰り返し投与を行う。
このため、本発明の実施の形態に係る抗菌剤は、広く動物の治療、家畜の発育増進等の対象とすることができる。
また、疾病の予防や健康増進のため、健康食品のような食物、動物用の飼料、又は食餌に含ませることもできる。
また、本発明の実施の形態に係る抗菌剤は、様々な形態で利用することができる。たとえば、食品、化粧品、清涼飲料、和菓子、洋菓子、清涼飲料水、うがい剤、手洗い用消毒剤、ウェットティッシュ、トイレタリー商品、消毒剤等に配合することができる。
また、本発明の実施の形態に係る抗菌剤の適用製品として、具体的には、食品包装材、食品保存容器、漬物類、畜肉製品、魚肉製品等の食品、家畜用の飼料、ペットフード等に用いることができる。
当該添加剤は、必ずしも一つだけではなく、幾つかのものを組み合わせて使用してもよく、製品の種類、組成、予想される汚染乃至腐敗原因微生物、pH、水分活性、要求される保存温度、保存期間等に応じて組み合わせて使用することができる。
本発明の実施の形態に係るクロストリジウム属の細菌に選択的な抗菌活性を有するラクトン化合物である、3−アシル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン類、3−アシルテトロン酸類、及び/又は3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類は、市販品等にて入手可能な化合物を用いて、以下の合成方法(A)又は合成方法(B)により合成し製造することができる。
これらの合成方法により、非特許文献1、2より純度が高く、収量が多く、高品質な化合物を得ることが可能となる。
基質に対して、有機溶媒中、アミン塩基存在下において、酸クロリド、又は酸無水物を作用させ、0〜50℃の温度範囲で12〜24時間撹拌することで合成される。
用いる有機溶媒としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の塩化アルカン類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類が挙げられ、好ましくはジクロロメタン、アセトニトリルを用いる。
用いるアミン塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の3級アミン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等のピリジン類が挙げられ、より好ましくは4−(ジメチルアミノ)ピリジンを用いる。
基質に対して、有機溶媒中、縮合剤およびアミン塩基存在下において、カルボン酸を作用させ、0〜50℃の温度範囲で12〜24時間撹拌することで合成される。
用いる有機溶媒としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の塩化アルカン類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類が挙げられ、好ましくはジクロロメタン、アセトニトリルを用いる。
用いる縮合剤としては、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド等の置換カルボジイミド類を使用することができ、より好ましくは、N−[3−(ジメチルアミノ)]プロピル−N'−エチルカルボジイミド、及びその塩酸塩を使用する。
用いるアミン塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の3級アミン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等のピリジン類が挙げられ、より好ましくは4−(ジメチルアミノ)ピリジンを用いる。
3−アシル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン類は、4−ヒドロキシ−6−メチルピロンを基質として用いて合成することができる。
また、3−アシルテトロン酸類は、テトロン酸を基質として用いて合成することができる。
また、3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類は、4−ヒドロキシクマリンを基質として用いて合成することができる。
3−アシル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン類として、下記の式(I)の3−デカノイル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロンを合成して使用した。
この3−デカノイル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロンは、上記の実施の形態の一般式(1)において、置換基であるRとして炭素数9の直鎖状アルキル基を備える実施例である。
4−ヒドロキシ−6−メチルピロン(100mg,0.79mmol、)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(145mg,1.18mmol 1.5equiv.)をジクロロメタン(4mL)に溶解し、デカン酸無水物(284mg,0.87mmol,1.1equiv.)を室温で加えた。
室温で12時間撹拌した後、5%クエン酸水溶液(10mL)を加え、酢酸エチル(20 mL)を用い抽出した。
得られた有機層を分離し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶液を濃縮後、酢酸エチルーヘキサン混合溶媒を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製すると、3−デカノイル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン(137mg,62%)が白色固体として得られた。
なお、いずれの基質や試薬も、和光純薬工業株式会社製等の市販品を用いた。以下同様である。
4−ヒドロキシ−6−メチルピロン(100mg,0.79mmol)、デカン酸(150mg,0.87 mmol,1.1equiv.)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(145mg,1.18mmol 1.5equiv.)をジクロロメタン(4mL)に溶解し、N−[3−(ジメチルアミノ)]プロピル−N'−エチルカルボジイミド(226mg,1.18mmol 1.5equiv.)を室温で加えた。
室温で12時間撹拌した後、5%クエン酸水溶液(10mL)を加え、酢酸エチル(20mL)を用い抽出した。
得られた有機層を分離し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶液を濃縮後、酢酸エチルーヘキサン混合溶媒を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製すると、3−デカノイル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン(170mg,77%)が白色固体として得られた。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ=0.88(t,3H,J=6.9 Hz),1.20−1.42(m,14H),1.58−1.80(m,2H),2.54(s,3H),2.82(t,2H,J=7.8Hz),5.71(s,1H)
3−アシルテトロン酸類として、下記の式(II)の3−デカノイルテトロン酸を合成して使用した。
この3−デカノイルテトロン酸は、上記の実施の形態の一般式(2)において、置換基であるRとして炭素数9の直鎖状アルキル基を備える実施例である。
上記の実施例1の合成方法(A)と同様の製造方法にて、テトロン酸を基質として合成した。
テトロン酸(100mg,1.00mmol)、デカン酸(190mg,1.10mmol 1.1equiv.)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(183mg,1.50mmol 1.5equiv.)をジクロロメタン(4mL)に溶解し、N−[3−(ジメチルアミノ)]プロピル−N'−エチルカルボジイミド(290mg,1.50mmol 1.5equiv.)を室温で加えた。
室温で12時間撹拌した後、5%クエン酸水溶液(10mL)を加え、酢酸エチル(20mL)を用いて抽出した。
得られた有機層を分離し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。
乾燥後の溶液を濃縮後、酢酸エチル−ヘキサン混合溶媒を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製すると、3−デカノイルテトロン酸(145mg,57%)が無色油状物質として得られた。
1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ=0.86(t,3H,J=6.9Hz),1.10−1.42(m,14H),1.60−1.78(m,2H),2.90(t,2H,J=7.6Hz),4.64(s,1H).
3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類として、下記の式(III)の3−デカノイル−4−ヒドロキシクマリンを合成して使用した。
この3−デカノイル−4−ヒドロキシクマリンは、上記の実施の形態の一般式(3)において、置換基であるRとして炭素数9の直鎖状アルキル基を備える実施例である。
上記の実施例1及び実施例2の合成方法(A)と同様の製造方法にて、4−ヒドロキシクマリンを基質として合成した。
4−ヒドロキシクマリン(100mg,0.62mmol)、デカン酸(117mg,0.68mmol 1.1 equiv.)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(114 mg,0.93mmol 1.5 equiv.)をジクロロメタン(4mL)に溶解し、N−[3−(ジメチルアミノ)]プロピル−N'−エチルカルボジイミド(180mg,0.93mmol 1.5 equiv.)を室温で加えた。
室温で12時間撹拌した後、5%クエン酸水溶液(10mL)を加え、酢酸エチル(20mL)を用い抽出した。
得られた有機層を分離し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。
乾燥後の溶液を濃縮後、酢酸エチル−ヘキサン混合溶媒を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、3−デカノイル−4−ヒドロキシクマリン(170mg,87%)が白色固体として得られた。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ=0.87(t,3H,J=6.9Hz),1.10−1.44(m,14H),1.62−1.78(m,2H),3.18(t,2H,J=7.5Hz),7.25−7.38(m,2H),7.67(dt,1H,J=1.8,8.1Hz),8.04(dd,1H,J=1.8,8.1Hz).
3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類として、下記の式(IV)の3−ミリスチリノイル−4−ヒドロキシクマリンを合成して使用した。
この3−ミリスチリノイル−4−ヒドロキシクマリンは、上記の実施の形態の一般式(3)において、置換基であるRとして炭素数13の直鎖状アルキル基を備える実施例である。
上記の実施例1、実施例2、及び実施例3の合成方法(A)と同様の製造方法にて、4−ヒドロキシクマリンを基質として合成した。
4−ヒドロキシクマリン(100mg,0.62mmol)、ミリスチン酸(155 mg,0.68mmol 1.1equiv.)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(114mg,0.93mmol 1.5 equiv.)をジクロロメタン(4mL)に溶解し、N−[3−(ジメチルアミノ)]プロピル−N'−エチルカルボジイミド(180mg,0.93mmol 1.5 equiv.)を室温で加えた。
室温で12時間撹拌した後、5%クエン酸水溶液(10mL)を加え、酢酸エチル(20mL)を用いて抽出した。
得られた有機層を分離し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。
乾燥後の溶液を濃縮後、酢酸エチル−ヘキサン混合溶媒を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、3−ミリスチリノイル−4−ヒドロキシクマリン(173 mg,75%)が白色固体として得られた。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ=0.86(t,3H,J=6.9Hz),1.08−1.47(m,22H),1.58−1.72(m,2H),3.14(t,2H,J=7.5Hz),7.25−7.38(m,2H),7.66(dt,1H,J=1.8,8.1Hz),8.02(dd,1H,J=1.8,8.1Hz).
(in vitro微量液体希釈法)
上記の実施例1、2、3、4の化合物について、in vitro微量液体希釈法による抗菌活性評価を行った。また、比較例1としてバンコマイシンを用いた。
このin vitro微量液体希釈法は、日本化学療法学会標準法で示された微量液体希釈法に従い行った(日本化学療法学会「微量液体希釈法によるMIC測定法(微量液体希釈法)」、Chemotherapy,1990、38、、p.102〜105、及び日本化学療法学会「微量液体希釈法によるMIC測定法(日本化学療法学会標準法)の一部修正」、Chemotherapy、1993、41、、p.183〜189を参照)。
この結果を、下記の表1に示す:
結果として、実施例1、2の化合物は、黄色ブドウ球菌、大腸菌には低活性であるが、C.difficileやウェルシュ菌を含むClostridium属に対しては高い活性を示し、菌選択性が見られた。特に、実施例1の化合物は、C.difficileに対してバンコマイシンを上回る活性を有していた。また、実施例2の化合物は、他の菌には影響が少なく、C.difficileに対してよりも著しく高い活性を示した。これらにより、腸内フローラの他の菌に影響を少なくして、C.difficileやウェルシュ菌の感染による治療に用いることができる抗菌剤を提供できる。
また、実施例3及び4の化合物は、黄色ブドウ球菌に対しても高い活性を有したが、C.difficileに対しより高い活性を有することが分かった。
次に、上述の実施例1〜3の化合物を用いて、広範囲な腸内細菌株に対し、in vitro寒天希釈法による抗菌活性評価を行った。このin vitro寒天希釈法による抗菌活性評価は、日本化学療法学会標準法の示す測定法に基づいて行った(日本化学療法学会「寒天平板希釈法によるMIC測定法」、日本化学療法学会雑誌Vol.56,2008年1号(1月)、p.49〜57参照)。
寒天希釈法については、ABCM寒天培地(栄研製)を用い、37℃、20時間で行ない、嫌気性菌については嫌気培養を行なった。
この結果を、下記の表2に示す:
結果として、上述のin vitro微量液体希釈法と同様の傾向が得られた。すなわち、実施例1、2の化合物は、C.difficileやウェルシュ菌を含むクロストリジウム属の細菌に対する菌選択性が明らかであった。また、特に実施例2の化合物は、C.difficileに対する選択性があった。
また、実施例3の化合物は腸内細菌株に対し全体的に中程度の活性を示すが、C.difficileに対し高い活性を有していた。
Claims (10)
- 請求項1に記載の3−アシル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン類で表される化合物、請求項2に記載の3−アシルテトロン酸類で表される化合物、及び請求項3に記載の3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類で表される化合物において、
それぞれの前記式中のRにおける直鎖状アルキル基の炭素数は5〜13以外のものを除く
ことを特徴とするクロストリジウム属細菌用の抗菌剤。 - 請求項1に記載の3−アシル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン類で表される化合物、請求項2に記載の3−アシルテトロン酸類で表される化合物、及び請求項3に記載の3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類で表される化合物において、
それぞれの前記式中のRにおける直鎖状アルキル基の炭素数は9〜13以外のものを除く
ことを特徴とするクロストリジウム属細菌用の抗菌剤。 - 前記クロストリジウム属は、クロストリディウム ディフィシル(Clostridium difficile)及び/又はウェルシュ菌(Clostridium perfringens)である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のクロストリジウム属細菌用の抗菌剤。 - 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の抗菌剤を用いた
ことを特徴とするクロストリジウム属細菌用の大腸炎治療用の組成物。 - 請求項1に記載の3−アシル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン類で表される化合物、請求項2に記載の3−アシルテトロン酸類で表される化合物、及び/又は請求項3に記載の3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類で表される化合物を投与する
ことを特徴とする非ヒト動物の大腸炎の治療方法。 - 4-ヒドロキシ-6-メチルピロン、テトロン酸、及び/又は4-ヒドロキシクマリンの1種を基質とし、有機溶媒中、アミン塩基存在下において、酸クロリド又は酸無水物と前記基質とを反応させ、0〜50℃で12〜24時間撹拌し、3−アシル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン類、3−アシルテトロン酸類、及び/又は3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類で表される化合物を合成するクロストリジウム属(Clostridium)細菌用の抗菌剤の製造方法であって、
前記3−アシル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン類は、式
前記3−アシルテトロン酸類は、式
前記3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類は、式
ことを特徴とするクロストリジウム属(Clostridium)細菌用の抗菌剤の製造方法。 - 4-ヒドロキシ-6-メチルピロン、テトロン酸、及び/又は4-ヒドロキシクマリンを基質とし、有機溶媒中、縮合剤およびアミン塩基存在下において、カルボン酸と前記基質とを反応させ、0〜50℃で12〜24時間撹拌し、3−アシル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン類、3−アシルテトロン酸類、及び3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類で表される化合物を合成するクロストリジウム属(Clostridium)細菌用の抗菌剤の製造方法であって、
前記3−アシル−4−ヒドロキシ−6−メチルピロン類は、式
前記3−アシルテトロン酸類は、式
前記3−アシル−4−ヒドロキシクマリン類は、式
ことを特徴とするクロストリジウム属(Clostridium)細菌用の抗菌剤の製造方法。
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