以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
<実施の形態1>
図1に、本発明の窒化物半導体素子の一例である実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の模式的な断面図を示す。
ここで、実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子100は、基板1と、基板1の表面に接して設置されたアルミニウム含有窒化物中間層2と、アルミニウム含有窒化物中間層2の表面に接して設置された窒化物半導体下地層3と、窒化物半導体下地層3の表面に接して設置されたn型窒化物半導体コンタクト層4と、n型窒化物半導体コンタクト層4の表面に接して設置されたn型窒化物半導体クラッド層5と、n型窒化物半導体クラッド層5の表面に接して設置された窒化物半導体活性層6と、窒化物半導体活性層6の表面に接して設置されたp型窒化物半導体クラッド層7と、p型窒化物半導体クラッド層7の表面に接して設置されたp型窒化物半導体コンタクト層8と、p型窒化物半導体コンタクト層8の表面に接して設置された透光性電極層9と、を備えている。そして、n型窒化物半導体コンタクト層4の露出表面に接するようにしてn側電極11が設置されており、透光性電極層9の表面に接するようにしてp側電極10が設置されている。
以下、実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子100の製造方法の一例について説明する。
まず、図2の模式的断面図に示すように、基板1の表面上にアルミニウム含有窒化物中間層2を積層する。ここで、アルミニウム含有窒化物中間層2は、基板1とターゲットとの間にDC−continuous方式により電圧を印加して行なわれるDCマグネトロンスパッタ法によって形成される。
図3に、基板1の表面上にアルミニウム含有窒化物中間層2を積層するのに用いられるDCマグネトロンスパッタ装置の一例の模式的な構成を示す。
ここで、DCマグネトロンスパッタ装置は、チャンバ21と、チャンバ21の内部の下方に設置されたヒータ23とヒータ23と向かい合うようにして設置されたカソード28と、チャンバ21の内部のガスをチャンバ21の外部に放出するための排気口25と、を備えている。
なお、ヒータ23はヒータ支持材24によって支持されている。また、カソード28は、アルミニウムからなるAlターゲット26と、マグネット支持材29に支持されたマグネット27とを有している。また、チャンバ21には、チャンバ21の内部にアルゴンガスを供給するためのArガス供給管30と、チャンバ21の内部に窒素ガスを供給するためのN2ガス供給管31とが接続されている。
そして、基板1の表面上にアルミニウム含有窒化物中間層2を積層するにあたっては、まず、以上のような構成のDCマグネトロンスパッタ装置の内部のヒータ23上に基板1が設置される。基板1は、基板1の成長面(アルミニウム含有窒化物中間層2が成長する面)がAlターゲット26の表面と向かい合うようにして所定の距離dをあけて配置される。
基板1としては、たとえば、a面、c面、m面またはr面などの露出面を有するサファイア(Al2O3)単結晶、スピネル(MgAl2O4)単結晶、ZnO単結晶、LiAlO2単結晶、LiGaO2単結晶、MgO単結晶、Si単結晶、SiC単結晶、GaAs単結晶、AlN単結晶、GaN単結晶またはZrB2などのホウ化物単結晶などからなる基板を用いることができる。なお、基板1の成長面の面方位は特に限定されるものではなく、ジャスト基板やオフ角を付与した基板などを適宜用いることができるが、なかでも、基板1としてサファイア単結晶からなるサファイア基板を用い、サファイア基板のc面上に後述するアルミニウム含有窒化物中間層2を形成した場合には、結晶粒の揃った柱状結晶の集合体からなる良好な結晶性のアルミニウム含有窒化物中間層2を積層することができる傾向が大きくなる点で好ましい。
また、上記の距離dは、Alターゲット26の表面の中心と、基板1の成長面との間の最短距離を意味しており、その距離dは、100mm以上250mm以下とされることが好ましく、120mm以上210mm以下とされることがより好ましく、150mm以上180mm以下とされることがさらに好ましい。これは、DCマグネトロンスパッタ法によるアルミニウム含有窒化物中間層2の積層時には高エネルギの反応種が基板1に供給されることになるが、上記の距離dを100mm以上とした場合には、上記の反応種が基板1の成長面に与えるダメージを小さくすることができ、上記の距離dを250mm以下とした場合には、プラズマ放電が起きやすくなるとともにアルミニウム含有窒化物中間層2の形成速度も大きくなるため、基板1の成長面の法線方向(垂直方向)に伸長する結晶粒の揃った柱状結晶の集合体からなる良好な結晶性のアルミニウム含有窒化物中間層2を積層することができる傾向にある。したがって、このような良好な結晶性のアルミニウム含有窒化物中間層2の表面上に窒化物層を成長させることによって、転位密度が低く結晶性に優れた窒化物層(本実施の形態では窒化物半導体下地層3)を再現性良く得ることができ、ひいては良好な特性を有する窒化物半導体素子を再現性良く作製することができる。
また、上記の距離dを120nm以上210nm以下とした場合、特に150nm以上180nm以下とした場合には、さらに良好な結晶性のアルミニウム含有窒化物中間層2を積層することができるため、そのようなアルミニウム含有窒化物中間層2の表面上にはさらに転位密度が低く結晶性に優れる窒化物層を再現性良く成長させることができる傾向が大きくなり、ひいてはさらに良好な特性を有する窒化物半導体素子を再現性良く作製することができる傾向が大きくなる。
次に、チャンバ21の内部にArガス供給管30からアルゴンガスを供給するとともにN2ガス供給管31から窒素ガスを供給することによって、基板1とAlターゲット26との間にアルゴンガスおよび窒素ガスを導入する。そして、基板1とAlターゲット26との間にDC−continuous方式により電圧を印加することによって基板1とAlターゲット26との間のアルゴンガスおよび窒素ガスのプラズマを発生させる。これにより、Alターゲット26のスパッタが行なわれることによって、基板1の表面上にアルミニウムと窒素との化合物からなるアルミニウム含有窒化物中間層2が積層する。なお、DC−continuous方式は、Alターゲット26のスパッタリング中において、所定の大きさの直流電圧(時間によって方向が変化しない電圧)を基板1とAlターゲット26との間に連続的に印加する方式である。
ここで、チャンバ21の内部に供給されるガスにおいて窒素ガスが占める体積比率(窒素比率:%)は50%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、100%であること(窒素ガスのみが供給されること)が最も好ましい。上記の窒素比率が50%以上とした場合、特に75%以上とした場合には、アルミニウム含有窒化物中間層2中に取り込まれる不純物の量を抑えることができるため、アルミニウム含有窒化物中間層2の結晶性を向上させることができる。また、上記の窒素比率が100%である場合には、チャンバ21の内部に窒素ガスのみが供給されることになるため、アルミニウム含有窒化物中間層2の結晶性をさらに大きく向上させることができる。このように結晶性に優れたアルミニウム含有窒化物中間層2の表面上に窒化物層を成長させた場合には転位密度が低く結晶性に優れる窒化物層が再現性良く得られる傾向にあり、ひいては良好な特性を有する窒化物半導体素子を再現性良く作製することができる傾向が大きくなる。
なお、上記においては、チャンバ21の内部にアルゴンガスと窒素ガスとを供給する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、たとえば、窒素ガスの少なくとも一部をアンモニアガスに置き換えてもよく、アルゴンガスの少なくとも一部を水素ガスに置き換えてもよい。
図4に、基板1の表面上にアルミニウム含有窒化物中間層2を積層するのに用いられるDCマグネトロンスパッタ装置の他の一例の模式的な構成を示す。図4に示す構成のDCマグネトロンスパッタ装置は、基板1とAlターゲット26との間に間隔をあけて基板1の成長面に対してAlターゲット26を傾けて配置している点に特徴がある。
ここで、Alターゲット26は、基板1の成長面の法線方向に対して角度θだけ傾けて配置されている。ここで、結晶性に優れたアルミニウム含有窒化物中間層2を積層する観点からは、角度θは10°以上45°以下であることが好ましく、20°以上45°以下であることがより好ましい。
このように、基板1とAlターゲット26との間に間隔をあけて基板1の成長面に対してAlターゲット26を傾けて配置した状態で、基板1とAlターゲット26との間にDC−continuous方式により電圧を印加してDCマグネトロンスパッタ法によってアルミニウム含有窒化物中間層2を積層した場合には、アルミニウム含有窒化物中間層2の積層時に基板1に供給される高エネルギの反応種による基板1の成長面へのダメージを低減することができるため、結晶性に優れたアルミニウム含有窒化物中間層2を積層することができる傾向にある。
また、基板1の成長面に対してAlターゲット26を傾けて配置することにより、基板1の成長面内におけるアルミニウム含有窒化物中間層2の厚さの均一性と結晶性の均一性とが向上するため、基板1の成長面内における窒化物半導体素子の特性の均一性が向上し、窒化物半導体素子の歩留まりが向上する傾向にある。
特に、基板1の成長面の口径が100mm(4インチ)、125mm(5インチ)、150mm(6インチ)と大きくなるほど、上記の均一性の向上の効果が顕著に現れる傾向にある。
また、図4に示す構成のDCマグネトロンスパッタ装置においても、Alターゲット26の表面の中心と、基板1の成長面との間の最短距離dは、100mm以上250mm以下とされることが好ましく、120mm以上210mm以下とされることがより好ましく、150mm以上180mm以下とされることがさらに好ましい。図4に示す構成のDCマグネトロンスパッタ装置においても、上記の最短距離dを上記のように設定することによって、上述した理由により、さらに結晶性に優れたアルミニウム含有窒化物中間層2を積層することができる傾向にある。
また、図4に示す構成のDCマグネトロンスパッタ装置においても、チャンバ21の内部に供給されるガスにおいて窒素ガスが占める体積比率(窒素比率:%)は50%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、100%であること(窒素ガスのみが供給されること)が最も好ましい。図4に示す構成のDCマグネトロンスパッタ装置においても、チャンバ21の内部に供給されるガスの窒素比率を上記のように設定することによって、上述した理由により、さらに結晶性に優れたアルミニウム含有窒化物中間層2を積層することができる傾向にある。
図5に、基板1の表面上にアルミニウム含有窒化物中間層2を積層するのに用いられるDCマグネトロンスパッタ装置のさらに他の一例の模式的な構成を示す。図5に示す構成のDCマグネトロンスパッタ装置は、基板1と間隔をあけて基板1の成長面に対して傾くように配置された第1のAlターゲット26aを有する第1のカソード28aと、基板1と間隔をあけて基板1の成長面に対して傾くように配置された第2のAlターゲット26bを有する第2のカソード28bと、を備えている点に特徴がある。
ここで、第1のカソード28aは、第1のAlターゲット26aと、第1のマグネット支持材29aに支持された第1のマグネット27aとを有している。また、第2のカソード28bは、第2のAlターゲット26bと、第2のマグネット支持材29bに支持された第2のマグネット27bとを有している。
また、第1のAlターゲット26aは、基板1の成長面の法線方向に対して角度θ1だけ傾けて配置されている。ここで、結晶性に優れたアルミニウム含有窒化物中間層2を積層する観点からは、角度θ1は10°以上45°以下であることが好ましく、20°以上45°以下であることがより好ましい。
また、第2のAlターゲット26bは、基板1の成長面の法線方向に対して角度θ2だけ傾けて配置されている。ここで、結晶性に優れたアルミニウム含有窒化物中間層2を積層する観点からは、角度θ2は10°以上45°以下であることが好ましく、20°以上45°以下であることがより好ましい。
なお、結晶性に優れたアルミニウム含有窒化物中間層2を積層する観点からは、上記の角度θ1またはθ2のいずれか一方が上記の範囲に設定されることが好ましく、θ1およびθ2の双方が上記の範囲に設定されることがさらに好ましい。
また、図5においては、基板の成長面に対して傾いて配置されたAlターゲットを2つ設置したDCマグネトロンスパッタ装置について説明したが、アルミニウム含有窒化物中間層2の成膜速度を向上させる観点からは、基板の成長面に対して傾いて配置されたAlターゲットはたとえば3つ、4つ、5つなどに増設することが可能である。
図5に示す構成のDCマグネトロンスパッタ装置において、第1のAlターゲット26aの表面の中心と、基板1の成長面との間の最短距離d1は、100mm以上250mm以下とされることが好ましく、120mm以上210mm以下とされることがより好ましく、150mm以上180mm以下とされることがさらに好ましい。図5に示す構成のDCマグネトロンスパッタ装置において、上記の最短距離d1を上記のように設定することによって、上述した理由により、さらに結晶性に優れたアルミニウム含有窒化物中間層2を積層することができる傾向にある。
また、図5に示す構成のDCマグネトロンスパッタ装置において、第2のAlターゲット26bの表面の中心と、基板1の成長面との間の最短距離d2は、100mm以上250mm以下とされることが好ましく、120mm以上210mm以下とされることがより好ましく、150mm以上180mm以下とされることがさらに好ましい。図6に示す構成のDCマグネトロンスパッタ装置において、上記の最短距離d2を上記のように設定することによって、上述した理由により、さらに結晶性に優れたアルミニウム含有窒化物中間層2を積層することができる傾向にある。
なお、結晶性に優れたアルミニウム含有窒化物中間層2を積層する観点からは、上記の最短距離d1またはd2のいずれか一方が上記の範囲に設定されることが好ましく、d1およびd2の双方が上記の範囲に設定されることがさらに好ましい。
また、図5に示す構成のDCマグネトロンスパッタ装置においても、チャンバ21の内部に供給されるガスにおいて窒素ガスが占める体積比率(窒素比率:%)は50%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、100%であること(窒素ガスのみが供給されること)が最も好ましい。図5に示す構成のDCマグネトロンスパッタ装置においても、チャンバ21の内部に供給されるガスの窒素比率を上記のように設定することによって、上述した理由により、さらに結晶性に優れたアルミニウム含有窒化物中間層2を積層することができる傾向にある。
上述したように、本実施の形態においては、基板とターゲットとの間にDC−continuous方式により電圧を印加するDCマグネトロンスパッタ法によるアルミニウム含有窒化物中間層の積層時に、以下の(a)〜(c)の少なくとも1つの条件を採用することによって、基板の成長面の法線方向に伸長する結晶粒の揃った柱状結晶の集合体からなる良好な結晶性のアルミニウム含有窒化物中間層を基板の成長面上に積層している。そして、このような良好な結晶性のアルミニウム含有窒化物中間層の表面上に窒化物層を成長させることによって、転位密度が低く結晶性に優れた窒化物層を再現性良く得ることができ、ひいては良好な特性を有する窒化物半導体素子を再現性良く作製することができるようになる。
(a)ターゲットの表面の中心と基板の成長面との間の最短距離を100mm以上250mm以下とすること、より好ましくは120mm以上210mm以下とすること、さらに好ましくは150mm以上180mm以下とすること。
(b)DCマグネトロンスパッタ装置に供給されるガスにおいて窒素ガスが占める体積比率(窒素比率:%)を50%以上とすること、より好ましくは75%以上とすること、さらに好ましくは100%とすること(窒素ガスのみが供給されること)。
(c)基板の成長面に対してターゲットを傾けて配置すること。
なお、基板の成長面上に良好な結晶性のアルミニウム含有窒化物中間層を積層するためには、上記の条件(a)〜(c)のいずれか1つの条件を採用すればよいが、より良好な結晶性のアルミニウム含有窒化物中間層を得るためには上記の条件(a)〜(c)のいずれか2つの条件を採用することが好ましく、上記の条件(a)〜(c)のすべての条件を採用することが最も好ましい。
また、アルミニウム含有窒化物中間層2は、基板1の成長面を隙間なく覆っていることが好ましい。基板1の成長面がアルミニウム含有窒化物中間層2から露出している場合には、アルミニウム含有窒化物中間層2上に形成される窒化物層にヒロック(hillock)やピット(pit)が生じるおそれがある。
なお、アルミニウム含有窒化物中間層2としては、たとえばAlx0Gay0Nの式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x0≦1、0≦y0≦1、x0+y0≠0)を積層することができ、なかでも、基板1の成長面の法線方向に伸長する結晶粒の揃った柱状結晶の集合体からなる良好な結晶性のアルミニウム含有窒化物中間層2を得る観点からはAlNの式で表わされる窒化物半導体(窒化アルミニウム)からなる窒化物半導体層を積層することが好ましい。
また、基板1の成長面上に積層されるアルミニウム含有窒化物中間層2の厚さは5nm以上100nm以下とすることが好ましい。アルミニウム含有窒化物中間層2の厚さが5nm未満である場合には、アルミニウム含有窒化物中間層2がバッファ層としての機能を十分に発揮しないおそれがある。また、アルミニウム含有窒化物中間層2の厚さが100nmを超える場合にはバッファ層としての機能が向上することなく、アルミニウム含有窒化物中間層2の形成時間だけが長くなるおそれがある。また、アルミニウム含有窒化物中間層2のバッファ層としての機能を面内において均一に発揮させる観点からは、アルミニウム含有窒化物中間層2の厚さを10nm以上50nm以下とすることがより好ましい。
また、アルミニウム含有窒化物中間層2の積層時における基板1の温度は、300℃以上1000℃以下であることが好ましい。アルミニウム含有窒化物中間層2の積層時における基板1の温度が300℃未満である場合には、アルミニウム含有窒化物中間層2が基板1の成長面の全面を覆うことができず、基板1の成長面の一部がアルミニウム含有窒化物中間層2から露出するおそれがある。また、アルミニウム含有窒化物中間層2の積層時における基板1の温度が1000℃を超える場合には、基板1の成長面での原料のマイグレーションが活発になりすぎて、柱状結晶の集合体というよりはむしろ単結晶の膜に近いアルミニウム含有窒化物中間層2が形成されて、アルミニウム含有窒化物中間層2のバッファ層としての機能が低下するおそれがある。
また、アルミニウム含有窒化物中間層2の積層時におけるチャンバ21の内部の圧力は、0.2Pa以上であることが好ましい。アルミニウム含有窒化物中間層2の積層時におけるチャンバ21の内部の圧力が0.2Pa未満である場合には、チャンバ21の内部における窒素量が少なくなって、Alターゲット26からスパッタされたアルミニウムが窒化物とならない状態で基板1の成長面上に付着するおそれがある。また、アルミニウム含有窒化物中間層2の積層時におけるチャンバ21の内部の圧力の上限は特に限定されず、チャンバ21の内部にプラズマを発生させることができる程度の圧力であればよい。
また、アルミニウム含有窒化物中間層2の積層時においてチャンバ21の内部に不純物が存在しないことが望ましいため、良好な結晶性を有するアルミニウム含有窒化物中間層2を得る観点からは、スパッタ直前のチャンバ21の内部の圧力は1×10-3Pa以下であることが好ましい。
また、アルミニウム含有窒化物中間層2の形成速度は、0.01nm/秒以上1nm/秒以下であることが好ましい。アルミニウム含有窒化物中間層2の形成速度が0.01nm/秒未満である場合にはアルミニウム含有窒化物中間層2が基板1の成長面上に均一に広がって成長せずに島状に成長して基板1の成長面を均一にアルミニウム含有窒化物中間層2が覆うことができず、基板1の成長面がアルミニウム含有窒化物中間層2から露出するおそれがある。また、アルミニウム含有窒化物中間層2の形成速度が1nm/秒を超える場合には、アルミニウム含有窒化物中間層2が非晶質となって、アルミニウム含有窒化物中間層2上に転位密度が小さく優れた結晶性を有する窒化物層を成長させることができなくなるおそれがある。
また、アルミニウム含有窒化物中間層2の積層前の基板1の成長面については前処理を行なってもよい。ここで、基板1の成長面の前処理の一例としては、シリコン基板に対してよく行なわれるものと同様のRCA洗浄を行なうことによって、基板1の成長面を水素終端化する処理が挙げられる。これにより、基板1の成長面上に良好な結晶性のアルミニウム含有窒化物中間層2を再現性良く積層することができる傾向にある。
また、基板1の成長面の前処理の他の一例としては、基板1の成長面を窒素ガスのプラズマに曝す処理が挙げられる。これにより、基板1の成長面に付着した有機物や酸化物などの異物を除去し、基板1の成長面の状態を整えることができる傾向にある。特に、基板1がサファイア基板である場合には、基板1の成長面を窒素ガスのプラズマに曝すことによって、基板1の成長面が窒化されて、基板1の成長面上に積層されるアルミニウム含有窒化物中間層2が面内で均一に形成されやすくなる傾向にある。
次に、図6の模式的断面図に示すように、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によって、アルミニウム含有窒化物中間層2の表面上に窒化物半導体下地層3を積層する。
ここで、窒化物半導体下地層3としては、たとえばAlx1Gay1Inz1Nの式で表わされるIII族窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x1≦1、0≦y1≦1、0≦z1≦1、x1+y1+z1≠0)を積層することができるが、柱状結晶の集合体からなるアルミニウム含有窒化物中間層2中の転位などの結晶欠陥を引き継がないようにするためにはIII族元素としてGaを含むものであることが好ましい。アルミニウム含有窒化物中間層2中の転位を引き継がないようにするためにはアルミニウム含有窒化物中間層2との界面付近で転位をループさせる必要があるが、窒化物半導体下地層3がGaを含むIII族窒化物半導体からなる場合には転位のループが生じやすい。したがって、Gaを含むIII族窒化物半導体からなる窒化物半導体下地層3を用いることによって、アルミニウム含有窒化物中間層2との界面付近で転位をループ化して閉じ込めて、アルミニウム含有窒化物中間層2から窒化物半導体下地層3に転位が引き継がれるのを抑えることができる。特に、窒化物半導体下地層3がAlx1Gay1N(0<x1<1、0<y1<1)の式で表わされるIII族窒化物半導体からなる場合、特にGaNからなる場合には、アルミニウム含有窒化物中間層2との界面付近で転位をループ化して閉じ込めることができるため、転位密度が小さく良好な結晶性を有する窒化物半導体下地層3が得られる傾向にある。
また、窒化物半導体下地層3の積層直前のアルミニウム含有窒化物中間層2の表面を熱処理を行なってもよい。この熱処理によって、アルミニウム含有窒化物中間層2の表面の清浄化と結晶性の向上を図ることができる傾向にある。この熱処理は、たとえばMOCVD法が用いられるMOCVD装置内で行なうことができ、熱処理時の雰囲気ガスとしては、たとえば水素ガスや窒素ガスなどを用いることができる。また、上記の熱処理時におけるアルミニウム含有窒化物中間層2の分解を防ぐためには、熱処理時の雰囲気ガスにアンモニアガスを混合してもよい。また、上記の熱処理は、たとえば900℃以上1250℃以下の温度でたとえば1分間以上60分間以下の時間行なうことができる。
なお、窒化物半導体下地層3には、n型ドーパントが1×1017cm-3以上1×1019cm-3以下の範囲でドーピングされていてもよいが、良好な結晶性を維持する観点からは窒化物半導体下地層3はアンドープであることが好ましい。なお、n型ドーパントとしては、たとえばシリコン、ゲルマニウムおよび錫などを用いることができ、なかでもシリコンおよび/またはゲルマニウムを用いることが好ましい。
また、窒化物半導体下地層3の積層時の基板1の温度は800℃以上1250℃以下であることが好ましく、1000℃以上1250℃以下であることがより好ましい。窒化物半導体下地層3の積層時の基板1の温度が800℃以上1250℃以下である場合、特に1000℃以上1250℃以下である場合には、結晶性に優れた窒化物半導体下地層3を成長させることができる傾向にある。
次に、図7の模式的断面図に示すように、MOCVD法によって、窒化物半導体下地層3の表面上に、n型窒化物半導体コンタクト層4、n型窒化物半導体クラッド層5、窒化物半導体活性層6、p型窒化物半導体クラッド層7およびp型窒化物半導体コンタクト層8をこの順に積層して積層体を形成する。
ここで、n型窒化物半導体コンタクト層4としては、たとえば、Alx2Gay2Inz2Nの式で表わされるIII族窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x2≦1、0≦y2≦1、0≦z2≦1、x2+y2+z2≠0)にn型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
なかでも、n型窒化物半導体コンタクト層4は、Alx2Ga1-x2N(0≦x2≦1、好ましくは0≦x2≦0.5、より好ましくは0≦x2≦0.1)の式で表わされるIII族窒化物半導体にn型ドーパントとしてシリコンがドーピングされた窒化物半導体層であることが好ましい。
また、n型窒化物半導体コンタクト層4へのn型ドーパントのドーピング濃度は、n側電極11との良好なオーミック接触の維持、n型窒化物半導体コンタクト層4におけるクラックの発生の抑制および良好な結晶性の維持の観点から、5×1017cm-3以上5×1019cm-3以下の範囲内であることが好ましい。
また、窒化物半導体下地層3とn型窒化物半導体コンタクト層4との厚さの合計は、これらの層の良好な結晶性を維持する観点から、4μm以上20μm以下であることが好ましく、4μm以上15μm以下であることがより好ましく、6μm以上15μm以下であることがさらに好ましい。窒化物半導体下地層3とn型窒化物半導体コンタクト層4との厚さの合計が4μm未満である場合にはこれらの層の結晶性が悪化したり、これらの層の表面にピット(pit)が生じるおそれがある。一方、窒化物半導体下地層3とn型窒化物半導体コンタクト層4との厚さの合計が15μmを超える場合には、基板1の反りが大きくなって、素子の収率低下を招くおそれがある。また、窒化物半導体下地層3とn型窒化物半導体コンタクト層4との厚さの合計が4μm以上15μm以下である場合、特に6μm以上15μm以下である場合には、これらの層の結晶性を良好なものとすることができるとともに、基板1の反りが大きくなって、素子の収率低下を有効に防止することができる傾向にある。なお、これらの層の厚さの合計のうちn型窒化物半導体コンタクト層4の厚さの上限は特に限定されるものではない。
また、n型窒化物半導体クラッド層5としては、たとえば、Alx3Gay3Inz3Nの式で表わされるIII族窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x3≦1、0≦y3≦1、0≦z3≦1、x3+y3+z3≠0)にn型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。n型窒化物半導体クラッド層5は、III族窒化物半導体からなる複数の窒化物半導体層をヘテロ接合した構造や超格子構造であってもよい。また、n型窒化物半導体クラッド層5の厚さは特に限定されないが、好ましくは0.005μm以上0.5μm以下であり、より好ましくは0.005μm以上0.1μm以下である。n型窒化物半導体クラッド層5へのn型ドーパントのドーピング濃度については、良好な結晶性維持および素子の動作電圧低減の観点から、1×1017cm-3以上1×1020cm-3以下であることが好ましく、1×1018cm-3以上1×1019cm-3以下であることがより好ましい。
また、窒化物半導体活性層6がたとえば単一量子井戸(SQW)構造を有する場合には、窒化物半導体活性層6としては、たとえば、Ga1-z4Inz4Nの式で表わされるIII族窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0<z4<0.4)を量子井戸層とするものを用いることができる。また、窒化物半導体活性層6の厚みは特に限定されないが、発光出力を向上させる観点からは、1nm以上10nm以下であることが好ましく、1nm以上6nm以下であることがより好ましい。
窒化物半導体活性層6がたとえばGa1-z4Inz4Nの式で表わされるIII族窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0<z4<0.4)を量子井戸層とする単一量子井戸(SQW)構造からなる場合には、所望の発光波長となるように、窒化物半導体活性層6のIn組成や厚さが制御される。しかしながら、窒化物半導体活性層6の形成時の基板1の温度が低いと結晶性が悪化するおそれがある一方で、窒化物半導体活性層6の形成時の基板1の温度が高いとInNの昇華が顕著になって固相中へのInの取り込まれ効率が低減してIn組成が変動するおそれがある。そのため、Ga1-z4Inz4Nの式で表わされるIII族窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0<z4<0.4)を井戸層とする単一量子井戸(SQW)構造からなる窒化物半導体活性層6の形成時の基板1の温度は700℃以上900℃以下であることが好ましく、750℃以上850℃以下であることがより好ましい。
また、窒化物半導体活性層6としては、たとえば、Ga1-z4Inz4Nの式で表わされるIII族窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0<z4<0.4)を量子井戸層とし、この井戸層よりもバンドギャップの大きいAlx5Gay5Inz5Nの式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x5≦1、0≦y5≦1、0≦z5≦1、x5+y5+z5≠0)を量子障壁層とを交互に1層ずつ積層した多重量子井戸(MQW)構造を有するものを用いることもできる。なお、上記の量子井戸層および/または量子障壁層にはn型またはp型のドーパントがドーピングされていてもよい。
また、p型窒化物半導体クラッド層7としては、たとえばAlx6Gay6Inz6Nの式で表わされるIII族窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x6≦1、0≦y6≦1、0≦z6≦1、x6+y6+z6≠0)にp型ドーパントをドーピングした層などを積層することができ、なかでもAlx6Ga1-x6Nの式で表わされるIII族窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0<x6≦0.4、好ましくは0.1≦x6≦0.3)にp型ドーパントをドーピングした層を積層することが好ましい。なお、p型ドーパントとしては、たとえばマグネシウムなどを用いることができる。
また、p型窒化物半導体クラッド層7のバンドギャップは、窒化物半導体活性層6への光閉じ込めの観点から、窒化物半導体活性層6のバンドギャップよりも大きくすることが好ましい。また、p型窒化物半導体クラッド層7の厚さは特に限定されないが、好ましくは0.01μm以上0.4μm以下であり、より好ましくは0.02μm以上0.1μm以下である。良好な結晶性のp型窒化物半導体クラッド層7を得る観点からは、p型窒化物半導体クラッド層7へのp型ドーパントのドーピング濃度は、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であることが好ましく、1×1019cm-3以上1×1020cm-3以下であることがより好ましい。
また、p型窒化物半導体コンタクト層8としては、たとえばAlx7Gay7Inz7Nの式で表わされるIII族窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x7≦1、0≦y7≦1、0≦z7≦1、x7+y7+z7≠0)にp型ドーパントをドーピングした層などを積層することができ、なかでもGaN層にp型ドーパントをドーピングした層を用いることが良好な結晶性の維持および良好なオーミック接触を得る観点から好ましい。
また、p型窒化物半導体コンタクト層8へのp型ドーパントのドーピング濃度は、良好なオーミック接触の維持、p型窒化物半導体コンタクト層8におけるクラックの発生の抑制および良好な結晶性の維持の観点から、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下の範囲内であることが好ましく、5×1019cm-3以上5×1020cm-3以下の範囲内であることがより好ましい。また、p型窒化物半導体コンタクト層8の厚さは特に限定されるものではないが、窒化物半導体発光ダイオード素子100の発光出力を向上させる観点からは、0.01μm以上0.5μm以下であることが好ましく、0.05μm以上0.2μm以下であることがより好ましい。
上記のn型窒化物半導体コンタクト層4、n型窒化物半導体クラッド層5、窒化物半導体活性層6、p型窒化物半導体クラッド層7およびp型窒化物半導体コンタクト層8がそれぞれIII族窒化物半導体から構成される場合には、これらの層はたとえば以下のようにしてMOCVD法によって積層される。
すなわち、MOCVD装置の反応炉の内部に、たとえばトリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)およびトリメチルインジウム(TMI)からなる群から選択された少なくとも1つのIII族元素の有機金属原料ガスと、たとえばアンモニアなどの窒素原料ガスとを供給してこれらを熱分解し、反応させることによって積層することができる。
また、n型ドーパントであるシリコンをドーピングする場合には、MOCVD装置の反応炉の内部に、たとえばシラン(SiH4)をドーピングガスとして上記の原料ガスに加えて供給することにより、シリコンをドーピングすることが可能である。
また、p型ドーパントであるマグネシウムをドーピングする場合には、MOCVD装置の反応炉の内部に、たとえばビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CP2Mg)をドーピングガスとして上記の原料ガスに加えて供給することにより、マグネシウムをドーピングすることが可能である。
次に、図8の模式的断面図に示すように、p型窒化物半導体コンタクト層8の表面上にたとえばITO(Indium Tin Oxide)からなる透光性電極層9を形成した後に、透光性電極層9の表面上にp側電極10を形成する。その後、p側電極10の形成後の積層体の一部をエッチングにより除去することによって、n型窒化物半導体コンタクト層4の表面の一部を露出させる。
その後、図1に示すように、n型窒化物半導体コンタクト層4の露出した表面上にn側電極11を形成することによって、実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子100を作製することができる。
以上のようにして作製された実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子100においては、上述のように、基板1の成長面の法線方向(垂直方向)に伸長する結晶粒の揃った柱状結晶の集合体からなる良好な結晶性のアルミニウム含有窒化物中間層2の表面上に窒化物半導体下地層3、n型窒化物半導体コンタクト層4、n型窒化物半導体クラッド層5、窒化物半導体活性層6、p型窒化物半導体クラッド層7およびp型窒化物半導体コンタクト層8がこの順序で積層されているため、アルミニウム含有窒化物中間層2の表面上に積層されたこれら層については転位密度が低くなり優れた結晶性を有している。したがって、このような優れた結晶性を有する層から形成された実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子100は、動作電圧が低く、発光出力の高い素子となる。
図9に、実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子100を用いた発光装置の一例の模式的な断面図を示す。ここで、図9に示す構成の発光装置200は、実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子100を第1のリードフレーム41上に設置した構成を有している。そして、窒化物半導体発光ダイオード素子100のp側電極10と第1のリードフレーム41とが第1のワイヤ45で電気的に接続されているとともに、窒化物半導体発光ダイオード素子100のn側電極11と第2のリードフレーム42とが第2のワイヤ44で電気的に接続されている。さらに、透明なモールド樹脂43で窒化物半導体発光ダイオード素子100がモールドされていることによって、発光装置200は砲弾型の形状とされている。
図9に示す構成の発光装置は、実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子100を用いていることから、動作電圧が低く、発光出力の高い発光装置とすることができる。
<実施の形態2>
本実施の形態においては、窒化物半導体発光ダイオード素子ではなく、窒化物半導体レーザ素子を作製した点に特徴がある。
図10に、本発明の窒化物半導体素子の他の一例である実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子の模式的な断面図を示す。
実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子においては、基板1の表面上に、アルミニウム含有窒化物中間層2、窒化物半導体下地層3、n型窒化物半導体クラッド層54、n型窒化物半導体光ガイド層55、窒化物半導体活性層56、窒化物半導体保護層57、p型窒化物半導体光ガイド層58、p型窒化物半導体クラッド層59およびp型窒化物半導体コンタクト層60がこの順序で積層されている。そして、p型窒化物半導体クラッド層59の上面およびp型窒化物半導体コンタクト層60の側面をそれぞれ覆うようにして絶縁膜61が形成されている。また、n型窒化物半導体クラッド層54の露出表面に接するようにしてn側電極11が設置されており、p型窒化物半導体コンタクト層60の露出表面に接するようにしてp側電極10が設置されている。
以下、実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子の製造方法の一例について説明する。まず、図11の模式的断面図に示すように、実施の形態1と同様にして、基板1の成長面上に、アルミニウム含有窒化物中間層2および窒化物半導体下地層3をこの順序で積層した後に、MOCVD法によってn型窒化物半導体クラッド層54、n型窒化物半導体光ガイド層55、窒化物半導体活性層56、窒化物半導体保護層57、p型窒化物半導体光ガイド層58、p型窒化物半導体クラッド層59およびp型窒化物半導体コンタクト層60をこの順序で積層して積層体を形成する。
ここで、n型窒化物半導体クラッド層54としては、たとえばAlx8Gay8Inz8Nの式で表わされるIII族窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x8≦1、0≦y8≦1、0≦z8≦1、x8+y8+z8≠0)にn型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
また、n型窒化物半導体光ガイド層55としては、たとえばAlx9Gay9Inz9Nの式で表わされるIII族窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x9≦1、0≦y9≦1、0≦z9≦1、x9+y9+z9≠0)にn型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
また、窒化物半導体活性層56としては、たとえば、互いに組成の異なる、Alx10Gay10Inz10Nの式で表わされるIII族窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x10≦1、0≦y10≦1、0≦z10≦1、x10+y10+z10≠0)と、Alx11Gay11Inz11Nの式で表わされるIII族窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x11≦1、0≦y11≦1、0≦z11≦1、x11+y11+z11≠0)とを1層ずつ交互に積層した層などを積層することができる。
また、窒化物半導体保護層57としては、たとえばAlx12Gay12Inz12Nの式で表わされるIII族窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x12≦1、0≦y12≦1、0≦z12≦1、x12+y12+z12≠0)などを積層することができる。
また、p型窒化物半導体光ガイド層58としては、たとえばAlx13Gay13Inz13Nの式で表わされるIII族窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x13≦1、0≦y13≦1、0≦z13≦1、x13+y13+z13≠0)にp型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
また、p型窒化物半導体クラッド層59としては、たとえばAlx14Gay14Inz14Nの式で表わされるIII族窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x14≦1、0≦y14≦1、0≦z14≦1、x14+y14+z14≠0)にp型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
また、p型窒化物半導体コンタクト層60としては、たとえばAlx15Gay15Inz15Nの式で表わされるIII族窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x15≦1、0≦y15≦1、0≦z15≦1、x15+y15+z15≠0)にp型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
次に、図12の模式的断面図に示すように、図11に示す積層体のp型窒化物半導体クラッド層59およびp型窒化物半導体コンタクト層60のそれぞれの一部をエッチングなどにより除去することによってp型窒化物半導体クラッド層59の表面の一部を露出させるとともに、図11に示す積層体の一部をエッチングなどにより除去することによってn型窒化物半導体クラッド層54の表面の一部を露出させる。
その後、図10に示すように、p型窒化物半導体コンタクト層60の表面を露出させる一方でp型窒化物半導体クラッド層59の露出表面を覆うようにたとえば酸化ケイ素などからなる絶縁膜61を形成する。そして、n型窒化物半導体クラッド層54の露出した表面上にn側電極11を形成するとともに、p型窒化物半導体コンタクト層60と接するp側電極10を絶縁膜61上に形成することによって、実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子を作製することができる。
ここで、実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子においても、実施の形態1と同様に、基板とターゲットとの間にDC−continuous方式により電圧を印加するDCマグネトロンスパッタ法によるアルミニウム含有窒化物中間層2の積層時に、上記の(a)〜(c)の少なくとも1つの条件を採用することによって、基板1の成長面の法線方向に伸長する結晶粒の揃った柱状結晶の集合体からなる良好な結晶性のアルミニウム含有窒化物中間層2を基板1の成長面上に積層している。そして、このような良好な結晶性を有するアルミニウム含有窒化物中間層2の表面上に窒化物半導体下地層3、n型窒化物半導体クラッド層54、n型窒化物半導体光ガイド層55、窒化物半導体活性層56、窒化物半導体保護層57、p型窒化物半導体光ガイド層58、p型窒化物半導体クラッド層59およびp型窒化物半導体コンタクト層60をこの順序で成長させている。
したがって、実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子においても、アルミニウム含有窒化物中間層2の表面上に積層されたそれぞれの層について転位密度を低くして高い結晶性を有する層とすることができるため、動作電圧が低く、発光出力の高い素子とすることができる。
<実施の形態3>
本実施の形態においては、窒化物半導体発光ダイオード素子や窒化物半導体レーザ素子などの発光デバイスではなく、電子デバイスの一例である窒化物半導体トランジスタ素子を作製した点に特徴がある。
図13に、本発明の窒化物半導体素子の他の一例である実施の形態3の窒化物半導体トランジスタ素子の模式的な断面図を示す。
ここで、実施の形態3の窒化物半導体トランジスタ素子においては、基板1の成長面上に、アルミニウム含有窒化物中間層2および窒化物半導体下地層3がこの順序で積層されており、窒化物半導体下地層3の表面上にアンドープGaNなどからなる窒化物半導体電子走行層71が積層され、窒化物半導体電子走行層71の表面上にn型AlGaNなどからなるn型窒化物半導体電子供給層72が積層されている。そして、n型窒化物半導体電子供給層72の表面上にソース電極74、ドレイン電極75およびゲート電極73が形成されている。
以下、実施の形態3の窒化物半導体トランジスタ素子の製造方法の一例について説明する。まず、実施の形態1と同様にして、基板1の成長面上に、アルミニウム含有窒化物中間層2および窒化物半導体下地層3をこの順序で積層する。
次に、図14の模式的断面図に示すように、MOCVD法によって、窒化物半導体下地層3の表面上に窒化物半導体電子走行層71を積層し、窒化物半導体電子走行層71の表面上にn型窒化物半導体電子供給層72を積層する。
その後、図13に示すように、n型窒化物半導体電子供給層72の表面上に、ソース電極74、ドレイン電極75およびゲート電極73をそれぞれ形成することによって、実施の形態3の窒化物半導体トランジスタ素子を作製することができる。
ここで、実施の形態3の窒化物半導体トランジスタ素子においても、実施の形態1と同様に、基板とターゲットとの間にDC−continuous方式により電圧を印加するDCマグネトロンスパッタ法によるアルミニウム含有窒化物中間層2の積層時に、上記の(a)〜(c)の少なくとも1つの条件を採用することによって、基板1の成長面の法線方向に伸長する結晶粒の揃った柱状結晶の集合体からなる良好な結晶性のアルミニウム含有窒化物中間層2を基板1の成長面上に積層している。そして、このような良好な結晶性を有するアルミニウム含有窒化物中間層2の表面上に窒化物半導体下地層3、窒化物半導体電子走行層71およびn型窒化物半導体電子供給層72をこの順序で成長させている。
したがって、実施の形態3の窒化物半導体トランジスタ素子においても、アルミニウム含有窒化物中間層2の表面上に積層されたそれぞれの層については転位密度が低く結晶性に優れた層とすることができるため、電子移動度などの特性が向上した素子とすることができる。
<実験例1>
まず、図15の模式的断面図に示すサファイア基板101を図16に示すDC−continuous方式により電圧を印加して行なわれるDCマグネトロンスパッタ装置のチャンバ21の内部のヒータ23上に設置した。
ここで、サファイア基板101のc面がAlターゲット26の表面と対向し、かつAlターゲット26の表面の中心とサファイア基板101のc面との最短距離dが50mmとなるようにサファイア基板101を設置した。その後、ヒータ23によってサファイア基板101を500℃の温度に加熱した。
次に、DCマグネトロンスパッタ装置のチャンバ21の内部に窒素ガスのみを20sccmの流量で供給した後に、サファイア基板101の温度は500℃に維持した。
そして、サファイア基板101とAlターゲット26との間にDC−continuous方式により3000Wのバイアス電圧を印加して窒素プラズマを生成した。引き続いて、チャンバ21の内部の圧力を0.5Paに保持し、チャンバ21の内部に窒素ガス(ガス全体に対する窒素ガスの体積比率は100%)を20sccmの流量で供給することによって、DC−continuous方式により電圧を印加して行なわれるDCマグネトロンスパッタ法を用いた反応性スパッタにより、図17の模式的断面図に示すように、サファイア基板101のc面上に窒化アルミニウム(AlN)の柱状結晶の集合体からなる厚さ25nmのAlNバッファ層102を積層した。このときのAlNバッファ層102の形成速度は0.04nm/秒であった。
なお、図16に示すDCマグネトロンスパッタ装置のカソード28中のマグネット27は、サファイア基板101のc面の窒化中およびAlNバッファ層102の積層中のいずれの場合にも揺動させておいた。また、AlNバッファ層102の積層は、予め測定しておいたAlNバッファ層102の成膜速度にしたがって所定の時間だけ行なわれ、AlNバッファ層102の厚さが25nmとなったところで窒素プラズマを停止してサファイア基板101の温度を低下させた。また、スパッタ直前のチャンバ21の内部の圧力は1×10-4Pa以下であった。
次に、AlNバッファ層102の積層後のサファイア基板101をDCマグネトロンスパッタ装置のチャンバ21から取り出し、MOCVD装置の反応炉の内部に設置した。ここで、AlNバッファ層102の積層後のサファイア基板101は、高周波誘導加熱式ヒータで加熱するため、グラファイト製のサセプタ上に設置された。なお、AlNバッファ層102の積層後のサファイア基板101を抵抗加熱式ヒータで加熱する場合には、AlNバッファ層102の積層後のサファイア基板101は、グラファイト製のサセプタ上に設置される石英製のトレイ上に設置される。
その後、反応炉の内部にアンモニアガスを供給しながら、キャリアガスとして窒素ガスおよび水素ガスを供給した状態でサファイア基板101の温度を約15分間かけて1125℃まで上昇させた。ここで、反応炉の内部の圧力を常圧とし、キャリアガスである水素ガスと窒素ガスの流量比(水素ガスの流量/窒素ガスの流量)を50/50とした。そして、サファイア基板101の温度が1125℃で安定したのを確認した後、TMGガスの反応炉の内部への供給を開始して、図18の模式的断面図に示すように、AlNバッファ層102の表面上に厚さ5μmのアンドープのGaNからなるGaN下地層103をMOCVD法により積層した。なお、アンモニアガスは、III族元素に対するV族元素のモル比(V族元素のモル数/III族元素のモル数)が1500となるように反応炉の内部に供給された。
その後、GaN下地層103の積層後のサファイア基板101を反応炉から取り出した。そして、薄膜X線回折法を用いて、GaN下地層103のX線ロッキングカーブを測定し、そのX線ロッキングカーブからGaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)を算出した。その結果を表1に示す。表1に示すように、実験例1におけるGaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅は382(arcsec)であった。
次に、サファイア基板101の温度を1125℃として、Siのドーピング濃度が1×1019/cm3となるようにシランガスを反応炉の内部に供給することによって、図19の模式的断面図に示すように、GaN下地層103の表面上に厚さ3μmのSiドープn型GaNコンタクト層104をMOCVD法により積層した。
次に、反応炉の内部へのTMGガスおよび水素ガスの供給を停止した後に、サファイア基板101の温度を800℃に低下させた。そして、反応炉の内部の状態が安定するのを確認した後に、原料ガスとしてのTMGガス、TMIガスおよびアンモニアガスを反応炉の内部に供給し、さらにはSiのドーピング濃度が1×1018/cm3となるようにシランガスを反応炉の内部に供給することによって、図19に示すように、n型GaNコンタクト層104の表面上に厚さ8nmのSiドープn型In0.01Ga0.99N障壁層105を積層した。
次に、シランガスの供給を停止した後に、TMGガスおよびTMIガスを供給することによってIn0.1Ga0.9Nからなる量子井戸層を3nmの厚さに積層した。
以上のような量子障壁層と量子井戸層の形成手順を繰り返すことによって、図19に示すように、7層のn型GaNからなる量子障壁層と6層のIn0.1Ga0.9Nからなる量子井戸層とが1層ずつ交互に積層された多重量子井戸構造のMQW活性層106をn型In0.01Ga0.99N障壁層105の表面上に積層した。
次に、サファイア基板101の温度を1100℃まで上昇させ、キャリアガスを窒素ガスから水素ガスに変更した。そして、反応炉の内部にTMGガス、TMAガスおよびCP2Mgガスを供給して、その後2分間に亘って供給した後、TMGガスおよびTMAガスの供給を停止した。これにより、図19に示すように、厚さ20nmのMgドープp型Al0.2Ga0.8Nクラッド層107をMQW活性層106の表面上に積層した。
次に、サファイア基板101の温度を1100℃に保持するとともに、反応炉の内部にアンモニアガスを供給しながら、TMAガスの供給を停止した。その後、反応炉の内部へのTMGガスとCP2Mgガスの供給量を変更することによって、図19に示すように、厚さ0.2μmのMgドープp型GaNコンタクト層108をp型Al0.2Ga0.8Nクラッド層107の表面上に積層した。
p型GaNコンタクト層108の積層後は、直ちにヒータへの通電を停止するとともに、反応炉の内部に供給されるキャリアガスを水素ガスから窒素ガスに変更した。そして、サファイア基板101の温度が300℃以下になったことを確認して、上記の層の積層後のサファイア基板101を反応炉から取り出した。
次に、図19に示すように、p型GaNコンタクト層108の表面上にITO層109を形成した後に、ITO層109の表面上にチタン層、アルミニウム層および金層をこの順序で積層することによってp側ボンディングパッド電極110を形成した。
次に、図20の模式的断面図に示すように、p側ボンディングパッド電極110の形成後の積層体の一部をドライエッチングにより除去することによって、n型GaNコンタクト層104の表面の一部を露出させた。
その後、図21の模式的断面図に示すように、n型GaNコンタクト層104の露出した表面上にニッケル層、アルミニウム層、チタン層および金層をこの順序で積層することによってn側ボンディングパッド電極111を形成した。
そして、サファイア基板101の裏面を研削および研磨してミラー状の面とした後に、サファイア基板101を350μm角の正方形状のチップに分割することによって、実験例1の窒化物半導体発光ダイオード素子を作製した。
以上のようにして作製した実験例1の窒化物半導体発光ダイオード素子のp側ボンディングパッド電極110とn側ボンディングパッド電極111との間に20mAの順方向電流を流したところ、順方向電流20mAにおける順方向電圧は3.3Vであった。なお、この順方向電圧は窒化物半導体発光ダイオード素子の動作電圧に相当する。また、ITO層109を通して実験例1の窒化物半導体発光ダイオード素子の発光を観察したところ、その発光波長は445nmであり、発光出力は22.3mWであった。これらの結果を表1に示す。
<実験例2〜8>
実験例2〜8においては、Alターゲット26の表面の中心とサファイア基板101のc面との最短距離dをそれぞれ75mm(実験例2)、100mm(実験例3)、150mm(実験例4)、180mm(実験例5)、210mm(実験例6)、250mm(実験例7)および280mm(実験例8)としたこと以外は実験例1と同様にして、AlNバッファ層102およびGaN下地層103を形成して、GaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)を算出した。その結果を表1に示す。表1に示すように、実験例2〜8におけるGaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)はそれぞれ273(実験例2)、42(実験例3)、40(実験例4)、34(実験例5)、40(実験例6)、50(実験例7)および242(実験例8)であった。
また、実験例2〜8においては、上記の変更以外は実験例1と同様にして、窒化物半導体発光ダイオード素子(実験例2〜8の窒化物半導体発光ダイオード素子)をそれぞれ作製した。そして、実験例2〜8の窒化物半導体発光ダイオード素子のそれぞれについて、順方向電流20mAにおける順方向電圧、発光波長および発光出力を測定した。その結果を表1に示す。
表1に示すように、実験例2〜8の窒化物半導体発光ダイオード素子の順方向電流20mAにおける順方向電圧はそれぞれ、3.2V(実験例2)、3.0V(実験例3)、2.9V(実験例4)、2.9V(実験例5)、3.0V(実験例6)、3.0V(実験例7)および3.2V(実験例8)であった。
また、表1に示すように、実験例2〜8の窒化物半導体発光ダイオード素子の発光波長はそれぞれ、447nm(実験例2)、448nm(実験例3)、445nm(実験例4)、448nm(実験例5)、447nm(実験例6)、448nm(実験例7)および450nm(実験例8)であった。
また、表1に示すように、実験例2〜8の窒化物半導体発光ダイオード素子の発光出力はそれぞれ、23.8mW(実験例2)、25.0mW(実験例3)、25.8mW(実験例4)、25.5mW(実験例5)、25.1mW(実験例6)、24.8mW(実験例7)および23.1mW(実験例8)であった。
<実験例9〜12>
実験例9〜12においては、図22に示す構成のDC−continuous方式により電圧を印加して行なわれるDCマグネトロンスパッタ装置を用い、サファイア基板101のc面の法線方向に対するAlターゲットの傾斜角度θをそれぞれ10°(実験例9)、20°(実験例10)、45°(実験例11)および50°(実験例12)としたこと以外は実験例5と同様にして、AlNバッファ層102およびGaN下地層103を形成して、GaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)を算出した。その結果を表1に示す。表1に示すように、実験例9〜12におけるGaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)はそれぞれ、40(実験例9)、33(実験例10)、35(実験例11)および180(実験例12)であった。
また、実験例9〜12においては、上記の変更以外は実験例1と同様にして、窒化物半導体発光ダイオード素子(実験例9〜12の窒化物半導体発光ダイオード素子)をそれぞれ作製した。そして、実験例9〜12の窒化物半導体発光ダイオード素子のそれぞれについて、順方向電流20mAにおける順方向電圧、発光波長および発光出力を測定した。その結果を表1に示す。
表1に示すように、実験例9〜12の窒化物半導体発光ダイオード素子の順方向電流20mAにおける順方向電圧はそれぞれ、3.0V(実験例9)、2.9V(実験例10)、3.0V(実験例11)および3.2V(実験例12)であった。
また、表1に示すように、実験例9〜12の窒化物半導体発光ダイオード素子の発光波長はそれぞれ、449nm(実験例9)、451nm(実験例10)、448nm(実験例11)および447nm(実験例12)であった。
また、表1に示すように、実験例9〜12の窒化物半導体発光ダイオード素子の発光出力はそれぞれ、25.0mW(実験例9)、25.6mW(実験例10)、24.8mW(実験例11)および22.2mW(実験例12)であった。
<実験例13〜15>
実験例13〜15においては、図16に示すチャンバ21の内部に供給されるガスを窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガスにしたこと以外は実験例4と同様にして、AlNバッファ層102およびGaN下地層103を形成して、GaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)を算出した。その結果を表1に示す。なお、実験例13〜15においては、チャンバ21の内部に供給されるガスにおいて窒素ガスが占める体積比率(窒素比率)はそれぞれ、75%(実験例13)、50%(実験例14)および25%(実験例15)であった。表1に示すように、実験例13〜15におけるGaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)はそれぞれ、77(実験例13)、222(実験例14)および422(実験例15)であった。
また、実験例13〜15においては、上記の変更以外は実験例1と同様にして、窒化物半導体発光ダイオード素子(実験例13〜15の窒化物半導体発光ダイオード素子)をそれぞれ作製した。そして、実験例13〜15の窒化物半導体発光ダイオード素子のそれぞれについて、順方向電流20mAにおける順方向電圧、発光波長および発光出力を測定した。その結果を表1に示す。
表1に示すように、実験例13〜15の窒化物半導体発光ダイオード素子の順方向電流20mAにおける順方向電圧はそれぞれ、3.1V(実験例13)、3.2V(実験例14)および3.3V(実験例15)であった。
また、表1に示すように、実験例13〜15の窒化物半導体発光ダイオード素子の発光波長はそれぞれ、447nm(実験例13)、448nm(実験例14)および449nm(実験例15)であった。
また、表1に示すように、実験例13〜15の窒化物半導体発光ダイオード素子の発光出力はそれぞれ、24.3mW(実験例13)、22.1mW(実験例14)および21.5mW(実験例15)であった。
(評価)
表1に示すように、Alターゲット26の表面の中心とサファイア基板101のc面との最短距離d(mm)が100mm以上250mm以下の範囲内にある実験例3〜7においては、最短距離dがこの範囲外にある実験例1、2および8と比べて、GaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)が極端に狭くなっていることから優れた結晶性のGaN下地層103が得られており、また順方向電圧が低くかつ発光出力が高い優れた特性の窒化物半導体発光ダイオード素子が得られることがわかった。
また、表1に示すように、上記の最短距離d(mm)が150mm以上210mm以下の範囲内にある実験例4〜6においては、最短距離dがこの範囲外にある実験例3および7と比べて、GaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)が狭くなっていることから優れた結晶性のGaN下地層103が得られており、また順方向電圧が低くかつ発光出力が高い優れた特性の窒化物半導体発光ダイオード素子が得られることがわかった。
また、表1に示すように、上記の最短距離d(mm)が150mm以上180mm以下の範囲内にある実験例4〜5においては、最短距離dがこの範囲外にある実験例6と比べて、GaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)が狭くなっていることから優れた結晶性のGaN下地層103が得られており、また順方向電圧が低くかつ発光出力が高い優れた特性の窒化物半導体発光ダイオード素子が得られることがわかった。
図23に、実験例1〜8におけるGaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)とAlターゲット26の表面の中心とサファイア基板101のc面との最短距離d(mm)との関係を示す。なお、図23において、縦軸がGaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)であり、横軸がAlターゲット26の表面の中心とサファイア基板101のc面との最短距離d(mm)を示している。
図23に示すように、Alターゲット26の表面の中心とサファイア基板101のc面との最短距離dが100mm以上250mm以下の範囲内のときにはGaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)が極端に狭くなっており、GaN下地層103の結晶性が大きく優れていることがわかる。
また、図23に示すように、GaN下地層103の結晶性をさらに優れたものとする観点からは、GaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)がさらに狭くなるように、上記の最短距離dを150mm以上210mm以下の範囲内とすることが好ましく、150mm以上180mm以下の範囲内とすることが特に好ましいことがわかる。
また、表1に示すように、サファイア基板101のc面の法線方向に対するAlターゲットの傾斜角度θが10°以上45°以下の範囲内にある実験例9〜11においては、その傾斜角度θが50°である実験例12と比べて、GaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)が極端に狭くなっていることから優れた結晶性のGaN下地層103が得られており、また順方向電圧が低くかつ発光出力が高い優れた特性の窒化物半導体発光ダイオード素子が得られることがわかった。
また、表1に示すように、サファイア基板101のc面の法線方向に対するAlターゲットの傾斜角度θが20°以上45°以下の範囲内にある実験例10〜11においては、その傾斜角度θが10°である実験例9と比べて、GaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)が狭くなっていることから優れた結晶性のGaN下地層103が得られており、また順方向電圧が低くかつ発光出力が高い優れた特性の窒化物半導体発光ダイオード素子が得られることがわかった。
また、表1に示すように、チャンバ21の内部に供給されるガスの窒素比率が50%以上の範囲内にある実験例4および13〜14においては、窒素比率がその範囲内にない実験例15と比べて、GaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)が狭くなっていることから優れた結晶性のGaN下地層103が得られており、また順方向電圧が低くかつ発光出力が高い優れた特性の窒化物半導体発光ダイオード素子が得られることがわかった。
また、表1に示すように、チャンバ21の内部に供給されるガスの窒素比率が75%以上の範囲内にある実験例4および13においては、窒素比率がその範囲内にない実験例14と比べて、GaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)が狭くなっていることから優れた結晶性のGaN下地層103が得られており、また順方向電圧が低くかつ発光出力が高い優れた特性の窒化物半導体発光ダイオード素子が得られることがわかった。
さらに、表1に示すように、チャンバ21の内部に供給されるガスの窒素比率が100%である実験例4においては、窒素比率が100%ではない実験例13と比べて、GaN下地層103の(004)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)が狭くなっていることから優れた結晶性のGaN下地層103が得られており、また順方向電圧が低くかつ発光出力が高い優れた特性の窒化物半導体発光ダイオード素子が得られることがわかった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。