JP5916443B2 - 光波距離計 - Google Patents

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Description

本願発明は、二地点間の直線距離を光電的に測定する光波距離計に関する。
この種の光波距離計には、一般に位相差方式光波距離計といわれるものがある。具体的には、周波数を異にする搬送波信号を複数重畳した駆動信号によって発光素子を発光させて光として送出し、この光を、目標反射物で反射されて得られる測距光、或いは参照光路を通過させて得られる参照光として、それぞれ受光素子で受光し、係る測距信号と参照信号の位相差を解析して目標反射物までの測距値を算出するものがある。係る光波距離計では、目標反射物からの反射光量が一定ではないことから、受光光量が位相差の解析に最適な状態(最適光量)となるように調整する必要がある。
そこで、例えば、目標反射物と受光素子の間にモータ駆動する可変式受光濃度フィルタを設け、可変式受光濃度フィルタを機械的に絞ることで、受光光量を調整するものがある(特許文献1)。
或いは、光を送出する発光素子にデジタルポテンショメータを接続して、発光素子への負荷抵抗を電気的に変化させることで、目標反射物からの反射光量が大きいときは発光素子の送出光量を少なくし、逆に反射光量が小さいときは発光素子の送出光量を大きくすることで、受光光量を調整するものがある(特許文献2)。
特公昭51−8340号公報(図2等) 特開2011−013108号公報(段落番号0030〜0034、図1)
しかし、特許文献1のような可変式受光濃度フィルタを備えるものは、光量調整が機械的に制御されるため、光量調整に時間がかかっていた。特に、光波距離計から数km離れた測定地点にプリズムを配置して行われるような遠距離測距においては、送出された測距光が大気の揺らぎによって光路を曲げられ、受光光量が大きく変化した結果、光量調整に数秒〜10秒程かかるという問題が発生していた。
一方、特許文献2では、光量調整が電気的に制御されることで、機械的な制御よりも光量調整は数分の1早くなる。しかし、図1に示すように、デジタルポテンショメータの負荷抵抗値と発光素子の送出光量との関係は反比例の関係にあり、抵抗値がある抵抗値r(デジタルポテンショメータの最小分解能の抵抗値)だけ変化した場合、抵抗値が小さい領域では光量の変化が大きく、抵抗値が大きい領域では光量の変化が小さくなり、抵抗値の領域によって光量分解能が異なる。即ち、抵抗値の変化量に対する光量の変化量が一定ではないため、狙いの送出光量を得るのに最適な抵抗値の設定を予測しづらかった。その結果、抵抗値を少しずつ変化させながら光量調整するしかなく、調整時間の短縮を阻む原因となっていた。
本願発明は、係る問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、光量調整の時間短縮により高速な測距を可能とし、かつ測距光用の受光濃度フィルタ並びに参照光用の受光濃度フィルタを無くし、かつ測距値のバラツキの改善も可能にした光波距離計を提供することにある。
前記目的を達成するために、請求項1に係る光波距離計では、周波数を異にする搬送波信号を複数重畳した駆動信号によって駆動されて、強度変調された光を目標反射物及び参照光路に択一的に送出する光送出手段と、前記目標反射物で反射された測距光及び前記参照光路を通過した参照光を受光して、測距信号及び参照信号を出力する受光手段と、前記測距信号及び前記参照信号を周波数変換して中間周波信号とし、測距信号と参照信号の位相差を解析し、前記目標反射物までの測距値を算出する演算手段と、を備えた光波距離計において、前記駆動信号は、前記演算手段からの有効無効設定信号により、有効時間内は前記光送出手段を駆動し、無効時間内は前記光送出手段を駆動しないように操作され、前記有効無効設定信号の周期は、前記複数の搬送波信号のうち最も周波数の低い搬送波信号の周期の2以上の自然数倍であることを特徴とする。
また、前記有効無効設定信号の周波数は、前記中間周波信号の周波数の3以上の自然数倍であることを特徴とする。
請求項に係る光波距離計では、請求項に記載の光波距離計において、前記有効無効設定信号の設定を、前記測距光と前記参照光のそれぞれについて、記憶手段に逐次記憶することを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、光送出手段の送出光量は、直流電源からの負荷抵抗を流れる電流と駆動信号の振幅、及びパルス数で決定される。そこで本願発明は、駆動信号(例えば、周波数を異にする搬送波信号F1、F2、F3を重畳したF1F2F3重畳信号)のうち最も周波数の低い搬送波信号(搬送波信号F3とする)の周波数fよりも低速な周波数fを出力する有効無効設定信号を設けた。そして、この有効無効設定信号を駆動信号に重畳して、周波数fの周期内での駆動信号を有効又は無効にする時間を操作することで、即ち駆動信号のパルス数を操作することで、光送出手段の発光回数を操作して、光量調整を行う。
例えば、有効無効設定信号の周期Tを搬送波信号F3の周期Tの1000倍とし、その周期T内で有効時間および無効時間との比率を1 : 1と設定すれば、駆動信号の有効時間および無効時間の比率も1 : 1となる。その結果、光送出手段の発光回数は1/2倍となり、即ち駆動信号の信号振幅は1/2倍に下げることができ、受光手段での受光光量も1/2倍に下げることができる。また周期T内で有効時間および無効時間の比率を1:7と設定すれば、駆動信号の有効時間および無効時間の比率も1:7となる。その結果、駆動信号の信号振幅は1/8倍に下げることができ、受光手段での受光光量も1/8倍に下げることができる。即ち、図2に示すように、有効時間と光送出手段の送出光量との関係は比例関係となり、有効時間と受光手段の受光光量との関係も同様に比例関係となる。よって、有効無効設定信号の周期T内の有効時間および無効時間の割合を調整することで、設定した有効時間と光送出手段の送出光量が対応し、光量分解能が均一となるので、光量調整の予測が容易となる。
以上により、有効無効設定信号の周期T内の有効時間および無効時間の割合を設定することで、光量調整ができる。そして、例えば、有効時間を信号F3の周期Tの500倍と設定し光量Aを得た場合、光量Aを1/4倍に下げたいならば、有効時間を周期Tの125倍に設定し直せば良いことが容易に予測できる。これにより、極めて短時間で光量調整が終了するため、高速な測距が可能となる。
さらに、有効無効設定信号による光量調整の考え方は、測距光だけでなく参照光の光量調整にも適用できる。よって、従来の光波距離計で必要であった、測距光を減光する可変式受光濃度フィルタおよび受光固定濃度フィルタだけでなく、参照光を減光する受光固定濃度フィルタをも無くすことができるので、これらのフィルタを撤廃する分コストダウンが可能になる。また、フィルタ駆動用のモータを無くすことができるので、光波距離計の不具合率も低減できる。
また、可変式受光濃度フィルタを用いない特許文献2の光波距離計の光量調整では、測距光の受光光量が最適光量となるように調整すると、参照光の受光光量は最適光量にできず、測距値にバラツキが生じていた。これに対し本願発明の光波距離計の光量調整では、測距光の受光光量も参照光の受光光量も最適に調整できるので、測距値のバラツキを減らすことができる。さらに、光量調整時間が短縮できるので、この短縮した時間を測距時間に充てることで、測距値のバラツキは従来の光波距離計よりも改善することができる。
また、光送出手段の駆動信号に有効無効設定信号を重畳することで、受光後の中間周波信号の振幅・位相情報に影響を及ぼしてはならない。そこで本願発明は、有効無効設定信号の周波数fを、周波数変換後の中間周波信号の周波数Δf,Δf,Δfの3以上の自然数倍とした。この条件下であれば、駆動信号に有効無効設定信号を掛けても側波帯が中間周波信号の周波数Δf,Δf,Δfと同じ周波数にならず、演算手段において位相差を算出する過程で、デジタルフィルタ技術によりノイズとして測定されることがなく、デジタル変換する際に入力される中間周波信号の振幅・位相情報に影響が出ることがないため、測距値に誤差が生じるのを防ぐことができる。
請求項に係る発明によれば、有効無効設定信号の有効時間および無効時間の設定を、測距光および参照光のそれぞれについて記憶手段に記憶させておくことで、再調整が必要な場合、記憶手段から呼び出して使うことで、再度調整する手間が省け、光量調整時間の更なる短縮が図れる。
デジタルポテンショメータ抵抗値と発光素子の送出光量の関係を説明する図。 本願発明における有効時間と発光素子の送出光量の関係を説明する図。 本願発明における第1の実施例に係る光波距離計のブロック図。 有効無効設定信号の周期を信号F3の周期の2以上の自然数倍とした場合の各信号の例を示す図。 有効無効設定信号の周期を信号F3の周期の非自然数倍とした場合の各信号の例を示す図。 送光部でのスペクトラムを示す図。 受光部でのスペクトラムを示す図。 (a)f=Δfの場合のスペクトラムを示す図。(b)f=Δfの場合のスペクトラムを示す図。 (a)f=2Δfの場合のスペクトラムを示す図。(b)f=2Δfの場合のスペクトラムを示す図。 (a)f=3Δfの場合のスペクトラムを示す図。(b)f=3Δfの場合のスペクトラムを示す図。 有効無効信号のdutyと受光光量の関係の実測データを示す図。 特許文献2の光波距離計における測距光と参照光の光量調整の概念図。 特許文献2の光波距離計における測距光と参照光の光量調整の概念図。 本実施例の光波距離計における測距光と参照光の光量調整の概念図。 本願発明の第2の実施例に係る光波距離計のブロック図。
図3は、本願発明の第1の実施例に係る光波距離計のブロック図である。実施例の光波距離計は、位相差方式の光波距離計であって、以下に示す光送出手段(発光素子19)と、受光手段(受光素子30)と、演算手段(演算処理部15)と、記憶手段(記憶部18)を構成要素に含む。図3に基づいて、本願発明に係る光波距離計の第1の実施例の構成を説明する。
発振器1で出力された搬送波信号F1は分周部2で複数の搬送波信号F1,F2,F3(以下、単に信号F1,F2,F3と称す)に分周され、周波数重畳回路3で重畳される。信号F1,F2,F3の周波数f,f,fは、fから順に周波数が低いものとなっており、それぞれの分解能に応じて測距値の各桁が決定される。F1F2F3重畳信号(以下、駆動信号60という)は、演算処理部15からの有効無効設定信号16によりPWM変調回路17で操作され、有効時間内はそのまま駆動回路4に出力されるが、無効時間内は駆動回路4には何も出力しない。ここで、有効無効設定信号16およびPWM変調回路17を追加したことが、従来の光波距離計と異なるところである。
以下、有効時間内における動作を説明する。駆動回路4では、有効無効設定信号16で操作された駆動信号60で発光素子19を駆動する。発光素子19は、負荷抵抗8を介し直流電源9からも駆動される。
また、信号F1はPLL(Phase Locked Loop)5や周波数生成回路7にも入力され、発振器6や周波数生成回路7から受光用周波数変換器32,35,38に必要なlocal信号F1+△f1,F2+△f2,F3+△f3が出力される。
発光素子19から送出された光は、ビームスプリッタ20で2つに分割され、シャッター切換28によって択一的に出射される。一方の光は、光波距離計から外部に出力され測距光路21を経て目標反射物23で反射され、受光光学24で集光され、受光素子30に入力される。他方の光は、内部参照光路26を経て受光素子30に入力される。測距光路21を経た測距光と参照光路26を経た参照光は、シャッター切換28により、どちらかが受光素子30に入力される。ここで、測距光路21上に可変式受光濃度フィルタや固定受光濃度フィルタ、参照光路26上に固定受光濃度フィルタが無いところが、従来の光波距離計と異なるところである。
受光素子30で受光された測距光および参照光は、電気信号に変換され、増幅器31で増幅されたのち周波数変換器32,35,38に入力される。周波数変換器32,35,38では、信号F1,信号F2,信号F3を、周波数の低い扱いやすい信号、中間周波信号Δf1,Δf2,Δf3にする。そして、低域フィルタ33,36,39で、周波数変換器32,35,38で生成されたノイズを除去し、ADコンバータ(以下、ADC)34,37,40でアナログ信号をデジタルデータへ変換し、演算処理部15で信号処理を行う。演算処理部15では、測距光と参照光のそれぞれについて、中間周波信号Δf1,Δf2,Δf3の振幅情報や位相情報を解析する。
ここで、演算処理部15で取得される測距光および参照光の振幅情報は、受光光量が振幅情報や位相情報の解析に最適な状態(最適光量)となるように、即ち測距値算出に最適な振幅値になるように、有効無効設定信号16の設定に活用される。つまり、振幅値が大きければ有効時間を減らして無効時間を増やし、逆に振幅値が小さければ有効時間を増やして無効時間を減らすように、有効無効設定信号16を設定することで、振幅調整が成される。
最後に、送出光駆動回路や受光検出回路の温度位相ドリフトおよび電気回路による遅延は、測距光と参照光に共通に含まれる誤差であることに着目し、この誤差を減らすため、測距信号と参照信号の位相差から目標反射物までの測距値を算出する。
以下、有効無効設定信号16の条件と設定について詳細に説明する。
まず、周波数重畳回路3から出力された駆動信号60(F1F2F3重畳信号)が、演算処理部15からの有効無効設定信号16によりPWM変調回路17で操作されるしくみを説明する。信号F1,F2,F3の順に周波数f,f,fが低速になり、その周期T,T,Tは長くなるものとする。駆動信号60は、例えば、信号F1,F2,F3が電気的に全て”High”になった時間に”High”を出力するものとし、それ以外は”Low”とする。有効無効設定信号16は、駆動信号60を有効にするか無効にする信号であり、その周波数をfとし、その周期Tは、信号F1,F2,F3のうち最も周波数の低い信号F3の周期T2以上の自然数倍とする。
= M×T(但し、Mは2以上の自然数) ・・・・(1)
式(1)を有効無効設定信号16の条件とする理由を図4を用いて説明する。図4は、有効無効設定信号16の周期Tを信号F3の周期T2以上の自然数倍とした場合の各信号の例を示す図である。横軸は時間、縦軸は信号出力を示す。式(1)でM=2とした場合が図4である。図4では、有効無効設定信号16は、有効時間の間は電気的に” High”とし、無効時間の間は” Low”とし、設定時間は信号F3の一周期を最小単位1ブロックとして考え、有効時間を1ブロック、無効時間を1ブロックとしている。この有効無効設定信号16と駆動信号60とで更に重畳すると、PWM変調が成される。PWM変調とは、パルス幅変調とも呼ばれ、信号のduty比を変化させて変調する変調方式である。有効無効設定信号16の有効時間と周期T(有効時間+無効時間)の比を100%で表したものがduty[%]になる。図4において、dutyは1:2、つまり50%である。有効無効設定信号16の有効時間および無効時間の比率は1:1であり、PMW変調後の駆動信号60の立ち上がり回数(以下発光回数と呼ぶ)は、有効時間内は3回、無効時間内は3回である。よって、有効無効設定信号16の周期Tを信号F3の周期T2以上の自然数倍とした場合は、有効時間内の発光回数と無効時間内の発光回数を消灯回数とした比率は1:1になり、有効時間と無効時間との比率と同じとなる。従って、図2に示すように、有効時間と発光素子19の送出光量(発光回数)との関係は比例関係となる。
一方、有効無効設定信号16の周期Tを、最も周波数の低い信号F3の周期T2以上の自然数倍にしない場合を説明する。図5は、有効無効設定信号16の周期Tを信号F3の周期Tの非自然数倍とした場合の各信号の例を示す図であり、M=2.5とした場合である。図5において、有効無効設定信号16のdutyは1:2、つまり有効時間および無効時間の比率は1:1であるが、PMW変調後の駆動信号60の発光回数は、有効時間内は8回、無効時間内は7回である。よって、有効時間内の発光回数と無効時間内の発光回数を消灯回数とした比率は8:7になり、有効時間と無効時間との比率と同じでは無くなる。即ち、周期Tを周期T2以上の自然数倍にしない場合には、図2のような関係が成り立たず、設定した有効時間と発光素子19の送出光量が対応しない。これは、光量調整の予想ができなくなるため、好ましくない。従って、有効無効設定信号16の周期は、複数の搬送波信号のうち最も周波数の低い搬送波信号の周期の2以上の自然数倍とすることが、光量調整時間の短縮のための条件である。
上記の式(1)の条件下で、有効無効設定信号16のdutyを設定変更すれば、即ち有効時間および無効時間の比率を変えれば、これに伴って発光素子19の発光回数(パルス数)が変わり、送出光量が調整でき、受光素子30での受光光量が調整できる。
例えば、有効無効設定信号16の周期Tを信号F3の周期Tの1000倍とし、その周期T内で有効時間および無効時間との比率を1 : 1と設定すれば、上述のとおり、駆動信号60の有効時間および無効時間の比率も1 : 1となる。その結果、発光素子19の発光回数は1/2倍となり、駆動信号60の信号振幅は1/2倍に下げることができ、受光素子30での受光光量も1/2倍に下げることができる。また、周期T内で有効および無効時間の比率を1:7と設定すれば、駆動信号の有効時間および無効時間の比率も1:7となる。その結果、駆動信号60の信号振幅は1/8倍に下げることができ、受光素子30での受光光量も1/8倍に下げることができる。
また、有効時間と無効時間の合計を1000ブロックとし、有効時間および無効時間の比率を1000:0にすればduty100%になるし、有効時間および無効時間の比率を1:999にすればduty0.1%になり、送出光量を1/1000倍に減らすことができる。このとき、ブロック数を大きくすれば、無効時間が大きく(有効無効設定信号16の周波数fが小さく)でき、よりdutyを小さくでき、光量調整の範囲(ダイナミックレンジ)は限りなく広げることが可能である。これについては、後述する。
次に、有効無効設定信号16の設定の操作方法について説明する。
有効無効設定信号16の有効時間お有効無効設定信号16の設定の操作方法よび無効時間の比率は、演算処理部15にて自由に設定できるようにする。演算処理部15では、受光後の中間周波信号Δf1,Δf2,Δf3の振幅情報や位相情報を解析する。このときの測距光および参照光の振幅情報は、有効無効設定信号16の設定(有効時間および無効時間の比率の決定)に活用される。中間周波信号Δf2,Δf3の振幅は中間周波信号Δf1の振幅と同じ振幅であるとすると、演算処理部15は、中間周波信号Δf1の振幅(受光光量)が最適光量よりも大きければ有効無効設定信号16の有効時間を減らして無効時間を増やし、逆に中間周波信号Δf1の振幅(受光光量)が最適光量よりも小さければ有効時間を増やし無効時間を減らすような設定に変更して、光量調整を行う。このとき、図2に示す関係が成り立つことから、設定した有効時間と発光素子19の送出光量が比例対応し、光量分解能が均一であるので、光量調整は容易に予測ができる。例えば、有効時間を信号F3の周期Tの500倍と設定し光量Aを得た場合、光量Aを1/4倍に下げたいならば、有効時間を周期Tの125倍に設定し直せば良いことが容易に予測できる。
ここで、有効無効設定信号16について、さらに好ましい条件を説明する。
発光素子19の駆動信号60に有効無効設定信号16を重畳することで、受光後の中間周波信号Δf1,Δf2,Δf3の振幅・位相情報に影響を及ぼしてはならない点に、留意が必要である。以下、中間周波信号Δf1についての有効無効設定信号16による影響を説明する。なお、中間周波信号Δf2,Δf3についての影響は、Δf1と同様であるため省略する。
図6は送光部でのスペクトラムを示す図、図7は受光部でのスペクトラムを示す図であり、横軸は周波数[Hz]、縦軸は信号の出力電力[dBm]を示す。信号F1は有効無効設定信号16でPWM変調されるため、送光部では、図6のような信号F1の周波数f周辺に側波帯を持つスペクトラムになる。一方受光部では、この送光信号にLocal信号F1+Δf1を掛け合わせ、図7のような周波数変換された中間周波信号Δf1の周波数Δf周辺に側波帯を持つスペクトラムになる。図7のままでは、周波数Δfとその側波帯との分離が困難で、真の測距信号となる周波数Δfの振幅、位相計算に誤差が生じてしまう。これに対し、近年ではデジタルフィルタ技術により、側波帯の信号周波数が周波数Δfの自然数倍であれば、周波数Δfの側波帯が除去できることが知られている。例えば、側波帯の信号周波数が2Δf,3Δf,4Δf,5Δf,・・・であれば、これらの側波帯は除去することができる。よって、このデジタルフィルタ技術を利用することを前提とし、有効無効設定信号16の周波数fの条件を、PWM変調による側波帯が周波数Δf以外の周波数Δfの自然数倍としてみる。
(i)まず、有効無効設定信号16の周波数fをf=Δfとした場合である。このときのスペクトラムを図8(a)(b)に示す。Δfの信号が真の測距信号である。実際には図8(a)のような負の周波数は無いため、正の周波数成分に置き換えたスペクトラムは図8(b)のようになる。図8(b)において、Δfには、真の測距信号(細線)と側波帯成分(太線)の2つの信号が混在していることがわかる。側波帯成分(太線)はノイズとなり、測定誤差の原因になるため、f=Δfは不適切である。
(ii)次に、f=2Δfとした場合である。このときのスペクトラムを図9(a)(b)に示す。Δfの信号が真の測距信号である。実際には図9(a)のような負の周波数は無いため、正の周波数成分に置き換えたスペクトラムは図9(b)のようになる。図9(b)において、Δfには真の測距信号(細線)と側波帯成分(太線)の2つの信号が混在していることがわかる。側波帯成分(太線)は測定誤差の原因になるため、f=2Δfは不適切である。
(iii)次に、f=3Δfとした場合である。このときのスペクトラムを図10(a)(b)に示す。Δfの信号が真の測距信号である。実際には図10(a)のような負の周波数は無いため、正の周波数成分に置き換えたスペクトラムは図10(b)のようになる。図10(b)において、Δfには真の測距信号(細線)しかなく、側波帯 2Δf,4Δf,5Δf,7Δfは全てΔfの自然数倍上にあり、これらはデジタルフィルタ技術により除去できる。従ってf=3Δfは適切であると言える。
この結果を数式を用いて検証する。信号F1以外のPWM変調によって発生する信号について考える。送光信号のPWM変調によって発生する信号yを、式(2)とする。但し、nはfのn番目の側波帯を表し、nは自然数とする。
=cos{2π(f±nf)t} ・・・(2)
Local信号yを、式(3)とする。
=cos{2π(f+Δf)t} ・・・(3)
周波数変換後の中間周波信号はこの2つの信号を乗算することから得られる。
×y=cos{2π(f+Δf)t}×cos{2π(f±nf)t}= 1/2[cos {2π(2f+Δf±nf)t}] +1/2[cos{2π(Δf±nf)t}] ・・・(4)
2つの信号のうち周波数が低いほうを測定する。
=1/2[cos{2π(Δf±nf)t}] ・・・(5)
測定周波数はΔfであり、好ましくないのは、PWM変調によって発生する信号周波数|Δf±nf|がΔfとなる場合、つまり、
|Δf±nf|=Δf・・・(6)
である。式(6)の条件となるのは、場合わけにより以下の4通りが挙げられる(但しn>0)。
Δf+nf= Δf ・・・(7)
Δf+nf=−Δf ・・・(8)
Δf−nf= Δf ・・・(9)
Δf−nf=−Δf ・・・(10)
このうち、n>0になるnが存在するのは式(10) の場合しかなく、nf=2Δfであるとき、好ましくない。ここで、デジタルフィルタ技術(fがΔfの自然数倍であれば、PWM変調によって発生する信号がデジタルフィルタにより除去できる)を使うことを前提とすると、f=kΔf(但し、kは自然数)とおくと、nkΔf=2Δf、つまり、
nk=2 ・・・(11)
となる。式(11)の条件を満たすのは、(I)k=1(f=Δf)でn=2の場合(図8参照)と、(II)k=2(f=2Δf)でn=1の場合(図9参照)である。よって、この条件(I)及び(II)を回避すれば良いことが分かる。従って、好ましいのは、k=1及びk=2以外の場合であれば良いので、
nf=kΔf (但し、kは3以上の自然数)・・・(12)
(k=3の場合図10参照)とすれば、側波帯は全てΔfにはならずデジタルフィルタで除去可能となり、駆動信号60に有効無効設定信号16を重畳しても、中間周波信号Δf1,Δf2,Δf3の振幅・位相情報に影響を及ぼさないこととなる。
具体的には、有効無効設定信号16の周波数fは、周波数Δf,Δf,Δfの3以上の自然数倍であれば良いので、例えば、f=60kHzであれば、Δf=Δf=Δf=f/3=20kHzと統一しても良い。これに限らず、Δf=f/3=20kHz、Δf=f/4=15kHz、Δf=f/10=6kHzなどとしても良い。
以上により、有効無効設定信号16の好ましい条件には以下の2つがある。式(1)より、周期Tは、信号F3の周期Tの自然数倍であること、式(12)より、周波数fは、周波数Δf,Δf,Δfの3以上の自然数倍であることである。これを踏まえて、有効無効設定信号16の周波数fはどのように決定すれば良いかを述べる。式(1)について、T=1/f、T=1/fとすると、
1/f=M(1/f) 但し、Mは自然数 ・・・(13)
と表すことができ、つまり
=f/M ・・・(14)
である。これと式(12)の条件を踏まえると、kΔf=f/M であり、
M=(f/Δf)(1/k) ・・・(15)
と書き換えられる。 Mが大きいほど、有効無効設定信号16のdutyを小さく(有効時間と有効時間+無効時間の比を小さく)することが可能であり、これは光量調整の範囲(ダイナミックレンジ)を広げられることを意味する。従って、有効無効設定信号16の周波数fを決める場合、まず、Mを大きくしたい場合は、f/Δf を大きくするか、又はkを小さく設定すれば良い。逆にMを小さくしたい場合は、f/Δf を小さくするか、又はkを大きく設定すれば良い。
ここまでの説明は、測距光、参照光のどちらでも適用することができる。上記の有効無効設定信号16の設定は、測距光と参照光とでそれぞれの受光光量が異なるため、時間的な隔たりを設け、同時に操作しないようにすれば良い。
そして、測距光と参照光について、それぞれに最適な有効無効設定信号16の設定(有効時間および無効時間の比率)は、記憶部18に記憶し、使いたいときにいつでも呼び出せるようにしておく。
以上から、本実施例によれば、第1に、式(1)の条件下で、有効無効設定信号16を設定(周期T内の有効時間および無効時間の割合を調整)することで、光量調整ができる。そして、設定した有効時間と発光素子19の送出光量は比例関係にある(光量分解能が均一である)ので、最適な設定を容易に予測することができる。これにより、極めて短時間で光量調整が終了するため、高速な測距が可能となる。
この光量調整は、可変式受光濃度フィルタを用いずに光量調整を行うので、フィルタのモータ制御時間が無くなり、特許文献1の光波距離計よりも大幅な時間短縮が図れる。さらに、狙いの送出光量を得るのに最適な設定の予測が可能なことから、光量分解能が不均一な特許文献2の光波距離計よりも調整時間は短くなる。
なお、図11は、有効無効設定信号16のdutyと中間周波信号Δf1の受光光量の関係の実測データを示す図である。横軸は有効無効設定信号16のduty[%]、縦軸の受光光量はADC34で読み取った周波数Δfの信号振幅を数値化したものである。図11から、実際に、有効無効設定信号16のdutyと受光光量が比例関係にあることが判る。
そして、さらに式(12)の条件を満たす有効無効設定信号16では、駆動信号60に有効無効設定信号16を重畳すると、測距信号の側波帯が中間周波信号の周波数Δf, Δf, Δfと同じ周波数にならず、デジタルフィルタ技術によりノイズとして測定されることがなく、中間周波信号Δf1,Δf2,Δf3の振幅・位相情報に影響が出ることがないため、測距値に誤差が生じるのを防ぐことができる。
また、有効無効設定信号16の有効時間および無効時間の比率の最適な設定を、測距光および参照光のそれぞれについて記憶部18に記憶させておくことで、再調整が必要な場合、記憶部18から呼び出して使うことで、再度調整する手間が省け、光量調整時間の更なる短縮が図れる。
さらに、有効無効設定信号16の周波数fを決める場合、式(15)に示すとおり、Mを大きくしたい場合は、f/Δfを大きくするか、またはkを小さく設定すれば良い。逆にMを小さくしたい場合は、f/Δfを小さくするか、またはkを大きく設定すれば良い。よって、光量調整の範囲(ダイナミックレンジ)は、制限無く決めることができる。特許文献2の光波距離計では、信号振幅調整範囲を拡張したい場合、受光固定濃度フィルタを用いているため、フィルタの調整範囲は一定に決められており、部品変更をしなくては拡張できない。これに対し、本実施例の光波距離計では、式(15)に示すとおり、Mを大きくし、かつ有効無効設定信号16のdutyを小さくするだけで容易に拡張することができる。よって、プリズム測距およびシート測距用の濃度フィルタのように様々な濃度のフィルタを無くすことが可能になる。
第2に、有効無効設定信号16の設定による光量調整の考え方は、測距光だけでなく参照光の光量調整にも適用できる。よって、特許文献1の光波距離計で必要であった測距光減光用の可変式受光濃度フィルタだけでなく、特許文献2の光波距離計で必要であった測距光減光用の受光固定濃度フィルタ、さらに参照光減光用の受光固定濃度フィルタをも撤廃することができるので、従来よりもコストダウンが可能になる。また、フィルタ駆動用のモータを無くすことができるので、光波距離計の不具合率も低減できる。
第3に、発光素子にデジタルポテンショメータを接続して負荷抵抗を電気的に変化させることで受光光量を調整する、特許文献2の光波距離計の光量調整では、参照光の測距時は測距光の測距時の光量調整結果を使用するため、測距光の受光光量が最適光量となるように調整すると、参照光の受光光量は最適光量にできず、測距値にバラツキが生じていた。
具体的に、図12,図13は、特許文献2の光波距離計における測距光(MEAS)と参照光(CAL)の光量調整の概念図である。(i)測距光(MEAS)の光量が最適光量よりも多いときは、デジタルポテンショメータの抵抗値を大きくして光量を少なくし、最適光量に合わせる。この光量調整に伴って、参照光(CAL)の光量は最適光量よりも少なくなる。そして、参照光(CAL)が下限光量以上であれば、測距を行う(図12)。(ii)測距光(MEAS)の光量が最適光量よりも少ないときは、デジタルポテンショメータ制御は行わない。参照光(CAL)が下限光量以上であれば、測距を行う(図13)。特許文献2の光波距離計では、以上の操作により、可変濃度フィルタで光量を落とす制御を、デジタルポテンショメータ内の抵抗値を増やす制御に置き換えている。
これに対し、図14は本実施例の光波距離計における測距光(MEAS)と参照光(CAL)の光量調整の概念図である。本願発明の光波距離計の光量調整では、測距光(MEAS)と参照光(CAL)のそれぞれに対して最適な有効無効設定信号16を設定し、測距光(MEAS)と参照光(CAL)のそれぞれで最適な光量調整ができるので、特許文献2の光波距離計よりも測距値のバラツキを減らすことができる。さらに、本願発明の光波距離計は光量調整時間が短縮できるので、この短縮した時間を測距時間に充てることができる。この結果、測距値のバラツキは、特許文献1の光波距離計よりも改善することができる。
図15は本願発明の第2の実施例に係る光波距離計のブロック図である。第2の実施例では、図15に示すとおり、周波数重畳回路3では信号F2,
F3のみを重畳し、PWM変調回路17で有効無効設定信号16とPWM変調された後に、周波数重畳回路50にて信号F1と重畳している。その他の構成は第1の実施例と同様である。
信号F1の周波数fは最も高速なため、様々な回路を通過する度に波形の乱れが生じ、温度位相ドリフトによる距離誤差の原因になる。第2の実施例では、信号F1の重畳を最後に行う構成とすることで、信号F1信号の波形の乱れ、つまりは温度位相ドリフトを防ぐことができる。
また、第1及び第2の実施例において、低域フィルタ33とADC34との間、低域フィルタ36とADC37との間、低域フィルタ39とADC40との間に帯域フィルタを追加し、側波帯ノイズおよびその他のノイズなどを更に除去する構成にしても良い。
15 演算処理部(演算手段)
18 記憶部(記憶手段)
16 有効無効設定信号
19 発光素子(光送出手段)
21 測距光路
23 目標反射物
26 参照光路
30 受光素子(受光手段)
60 駆動信号
F1、F2、F3 搬送波信号
Δf1、Δf2、Δf3 中間周波信号

Claims (2)

  1. 周波数を異にする搬送波信号を複数重畳した駆動信号によって駆動されて、強度変調された光を目標反射物及び参照光路に択一的に送出する光送出手段と、
    前記目標反射物で反射された測距光及び前記参照光路を通過した参照光を受光して、測距信号及び参照信号を出力する受光手段と、
    前記測距信号及び前記参照信号を周波数変換して中間周波信号とし、測距信号と参照信号の位相差を解析し、前記目標反射物までの測距値を算出する演算手段と、
    を備えた光波距離計において、
    前記駆動信号は、前記演算手段からの有効無効設定信号により、有効時間内は前記光送出手段を駆動し、無効時間内は前記光送出手段を駆動しないように操作され、
    前記有効無効設定信号の周期は、前記複数の搬送波信号のうち最も周波数の低い搬送波信号の周期の2以上の自然数倍であり、
    前記有効無効設定信号の周波数は、前記中間周波信号の周波数の3以上の自然数倍であることを特徴とする光波距離計。
  2. 前記有効無効設定信号の設定を、前記測距光と前記参照光のそれぞれについて、記憶手段に逐次記憶することを特徴とする請求項1に記載の光波距離計。
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