JP5915891B2 - ガラス - Google Patents

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Description

本発明はガラスに関し、特にプラズマディスプレイパネル(PDP)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)のガラス板等に好適なガラスに関する。
PDPは、以下のようにして作製される。まず前面ガラス板の表面にITO膜、ネサ膜等の透明電極を成膜し、その上に誘電体層を形成すると共に、背面ガラス板の表面にAl、Ag、Ni等の電極を形成し、その上に誘電体層を形成し、更にその上に隔壁を形成する。次に、前面ガラス板と背面ガラス板を対向させて電極等の位置合わせを行った後、前面ガラス板と背面ガラス板の外周縁部を450〜550℃の温度域でフリットシールする。その後、排気管を通じて、パネル内部を真空排気し、更にパネル内部に希ガスを封入する。
従来、PDPには、フロート法等により板厚1.5〜3.0mmに成形されたソーダ石灰ガラス(熱膨張係数:約84×10−7/℃)からなるガラス板が用いられていた。しかし、ソーダ石灰ガラスは、歪点が500℃程度であるため、熱処理工程で熱変形、熱収縮が生じ易かった。このため、現在では、ソーダ石灰ガラスと同等の熱膨張係数を有し、且つ高歪点のガラス板が使用されている(特許文献1参照)。
特開平8−290938号公報 特開2005−89286号公報
上記の通り、ガラス板の歪点を高めると、ガラス板の熱収縮や熱変形を低下させることが可能になる。更に、フロート法でガラス板を成形する場合に、フロートバスの操業条件の変動に伴い、ガラス板の温度履歴が変化することに起因して、ガラス板の熱収縮や熱変形の度合いがばらつき易くなるが、この問題に対しても、ガラス板の歪点を高める方法が有効である。
しかし、特許文献1に記載のガラス板は、歪点が十分に高くない(600℃以下)ため、熱収縮や熱変形の問題を十分に解消することができない。
一方、特許文献2には、600超〜650℃の歪点を有するガラス板が開示されているが、このガラス板は、熱膨張係数が低過ぎるため、シールフリット等の周辺部材の熱膨張係数に整合せず、シール不良等の不具合を惹起させ易い。更に、このガラス板は、高温粘度が高過ぎるため、溶融温度、成形温度が高くなり、結果として、ガラス板の製造コストを低廉化することができない。
そこで、本発明は、歪点が十分に高く、且つ周辺部材の熱膨張係数に整合し、しかも高温粘度が低いガラス(特にガラス板)を創案することを技術的課題とする。
本発明者は、鋭意検討した結果、ガラス組成を所定範囲に規制することにより、上記技術的課題を解決できることを見出し、本発明として提案するものである。すなわち、本発明のガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 45〜55%(但し、55%を含まず)、Al 10.0超〜15%、B 0〜15%、MgO 0〜3.7%未満、CaO 2.9超〜8%、SrO 4.0超〜15%、BaO 2.0超〜14%未満(但し、14.0%を含まず)、LiO 0〜10%、NaO 4.0超〜15%、KO 0〜10%、ZrO 0〜7%、Fe 0.01〜1%を含有することを特徴とする。
本発明のガラスは、上記のようにガラス組成範囲を規制されている。このようにすれば、歪点600超〜650℃、熱膨張係数70×10−7〜100×10−7/℃、104.0dPa・sにおける温度1200℃未満、液相粘度104.0dPa・s以上を達成し易くなる。
発明のガラスは、ガラス組成として、下記酸化物換算の質量%で、SiO−Alが30〜45%(但し、45%を含まず)、MgO+CaO+SrO+BaOが17.0超〜40%、MgO+CaOが2.9超〜10%、質量比CaO/MgOが1.0超、CaO+SrOが6.92〜23%、質量比NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)が0.137〜0.355であることが好ましい。ここで、「SiO−Al」は、SiOの含有量からAlの含有量を引いた値を指す。「MgO+CaO+SrO+BaO」は、MgO、CaO、SrO、及びBaOの合量を指す。「MgO+CaO」は、MgOとCaOの合量を指す。「CaO+SrO」は、CaOとSrOの合量を指す。「MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO」は、MgO、CaO、SrO、BaO、LiO、NaO、及びKOの合量を指す。
発明のガラスは、更に、SOを0.01〜1質量%含み、且つフロート法で成形されてなることが好ましい。
発明のガラスは、歪点が600超〜650℃であることが好ましい。「歪点」は、ASTM C336−71に基づいて測定した値を指す。
発明のガラスは、30〜380℃における平均熱膨張係数が70×10−7〜100×10−7/℃であることが好ましい。ここで、「熱膨張係数」は、ディラトメーターにより測定した値を指す。
発明のガラスは、104.0dPa・sにおける温度が1200℃以下であることが好ましい。ここで、「104.0dPa・sにおける温度」は、白金球引き上げ法で測定した値を指す。
発明のガラスは、液相粘度が104.0dPa・s以上であることが好ましい。ここで、「液相粘度」は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値を指す。「液相温度」は、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れた後、この白金ボートを温度勾配炉中に24時間保持して、結晶が析出する温度を測定した値を指す。
発明のガラスは、FPDに用いることが好ましい。
発明のガラスは、PDPに用いることが好ましい。
発明のガラスは、板状であることが好ましい。
本発明のガラスは、ガラス組成として、下記酸化物換算の質量%で、SiO 45〜55%(但し、55%を含まず)、Al 10.0超〜15%、B 0〜15%、MgO 0〜3.7%(但し、3.7%を含まず)、CaO 2.9超〜8%、SrO 4.0超〜15%、BaO 2.0超〜14%(但し、14.0%を含まず)、LiO 0〜10%、NaO 4.0超〜15%、KO 0〜10%、ZrO 0〜7%、Fe 0.01〜1%を含有することを特徴とする。上記のように、各成分の含有量を規制した理由を下記に示す。
SiOは、ガラスネットワークを形成する成分である。その含有量は45〜55%未満、好ましくは49〜52%である。SiOの含有量が多過ぎると、高温粘度が不当に高くなり、溶融性、成形性が低下し易くなることに加えて、熱膨張係数が低くなり過ぎて、シールフリット等の周辺部材の熱膨張係数に整合させ難くなる。なお、本発明に係るガラス組成系では、SiOの含有量を増加させても、歪点があまり上昇しない。一方、SiOの含有量が少な過ぎると、耐失透性が低下し易くなる。更に、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下し易くなり、結果として、PDP等を製造する際の熱処理工程で、ガラス板に割れが発生し易くなる。
Alは、歪点を高める成分であると共に、耐候性、化学的耐久性を高める成分であり、更にはガラスの表面硬度を高める成分である。その含有量は10.0超〜15%、好ましくは11.0超〜14.5%、より好ましくは11.5〜14%である。Alの含有量が多過ぎると、高温粘度が不当に高くなり、溶融性、成形性が低下し易くなる。一方、Alの含有量が少な過ぎると、歪点が低下し易くなる。
は、ガラスの粘度を下げることにより、溶融温度、成形温度を低下させる成分であるが、歪点を低下させる成分であり、また溶融時の成分揮発に伴い、炉耐火物材料を消耗させる成分である。よって、Bは任意成分であり、その含有量は0〜15%、好ましくは0〜1.5%、より好ましくは0〜0.1%未満である。
MgOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。また、MgOは、アルカリ土類酸化物の中では、ガラスを割れ難くする効果が大きい成分である。しかし、MgOは、ZrOと共存する場合に、ZrO系の失透結晶を著しく析出させることにより、液相粘度を著しく低下させる成分である。また、CaOと共存する場合に、CaMgSiO系の失透結晶を析出させ易い成分である。よって、MgOは任意成分であり、その含有量は0〜3.7%未満、好ましくは0.01〜3%、より好ましくは0.02〜2%、更に好ましくは0.03〜0.5%である。
CaOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。また、CaOは、アルカリ土類酸化物の中では、ガラスを割れ難くする効果が大きい成分である。CaOの含有量は2.9超〜8%、好ましくは3〜7.5%、より好ましくは4.2〜6%である。CaOの含有量が多過ぎると、耐失透性が低下し易くなり、ガラス板に成形し難くなる。一方、CaOの含有量が少な過ぎると、上記効果を享受し難くなる。
SrOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。また、SrOは、ZrOと共存する場合に、ZrO系の失透結晶を析出し難くする成分である。SrOの含有量は4.0超〜15%、好ましくは5〜14%、より好ましくは7.0超〜13%、更に好ましくは9.2〜12.5%である。SrOの含有量が多過ぎると、長石族の失透結晶が析出し易くなり、また原料コストが高騰する。一方、SrOの含有量が少な過ぎると、上記効果を享受し難くなる。
BaOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。BaOの含有量は2.0超〜14%未満、好ましくは2.0超〜8%未満、より好ましくは2.0超〜5%未満である。BaOの含有量が多過ぎると、バリウム長石族の失透結晶が析出し易くなり、また原料コストが高騰する。更に、密度が増大して、支持部材のコストが高騰し易くなる。一方、BaOの含有量が少な過ぎると、高温粘度が不当に高くなり、溶融性、成形性が低下し易くなる。
LiOは、熱膨張係数を調整する成分であり、また高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。しかし、LiOは、原料コストが高いことに加えて、歪点を大幅に低下させる成分である。よって、LiOは任意成分であり、その含有量は0〜10%、好ましくは0〜2%、より好ましくは0〜0.1%未満である。
NaOは、熱膨張係数を調整する成分であり、また高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。NaOの含有量は4〜15%、好ましくは4.3超〜12%、さらに好ましくは4.5〜9%、最も好ましくは5〜7%である。NaOの含有量が多過ぎると、歪点が低下し易くなることに加えて、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下し易くなる。結果として、PDP等を製造する際の熱処理工程で、ガラス板に熱収縮や熱変形が生じたり、割れが発生し易くなる。
Oは、熱膨張係数を調整する成分であり、また高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。Alを10%超含むガラス系において、KOの含有量が多過ぎると、KAlSiO系の失透結晶が析出し易くなる。また、KOの含有量が多過ぎると、歪点が低下し易くなり、また熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下し易くなる。結果として、PDP等を製造する際の熱処理工程で、ガラス板に熱収縮や熱変形が生じたり、割れが発生し易くなる。よって、KOは任意成分であり、その含有量は0〜10%、好ましくは0.1〜7%である。
ZrOは、高温粘度を上げずに、歪点を高める成分である。ZrOの含有量が多過ぎると、密度が高くなり易く、またガラスが割れ易くなり、更にはZrO系の失透結晶が析出し易くなり、ガラス板に成形し難くなる。よって、ZrOは任意成分であり、その含有量は0〜7%、好ましくは0.1〜6.5%、より好ましくは2〜6%である。
ガラス中のFeはFe2+又はFe3+の状態で存在するが、特にFe2+は近赤外領域に強い光吸収特性を有する。このため、Fe2+は、大容量のガラス溶解窯において、ガラス溶解窯内の輻射エネルギーを吸収し易く、溶融効率を高める効果を有する。また、Fe3+は、鉄の価数変化の際に酸素を放出するため、清澄効果も有する。更に、ガラスの製造コストを低廉化するために、高純度原料(Feの含有量が極めて少ない原料)の使用を制限して、少量のFeを含む原料を使用することが好ましい。一方、Feの含有量が多過ぎると、窯の輻射エネルギーが、エネルギー源の近傍で吸収されて、窯の中央部に到達せず、ガラス溶解窯の熱分布にムラが生じ易くなる。よって、Feの含有量は0.01〜1%である。また、Feの好適な下限範囲は0.05%超、0.10%超、特に0.20%超である。なお、本発明では、酸化鉄は、Feの価数に係らず、「Fe」に換算して表記するものとする。
更に、下記の成分含有量、成分比を有することが好ましい。
SiO−Alは、ガラスネットワークを構成する成分の内、主要構成成分のSiOと歪点を高める寄与が大きいAlの差である。SiO−Alが大き過ぎると、歪点が低下し易くなる。一方、SiO−Alが小さ過ぎると、耐失透性が低下し易くなる。よって、SiO−Alの含有量は30〜45%未満、32〜43%、特に34〜40%が好ましい。
MgO+CaO+SrO+BaOは、歪点を低下させずに、高温粘度を低下させる成分である。MgO+CaO+SrO+BaOの含有量が多過ぎると、耐失透性が低下し易くなり、また原料コストが高騰する。一方、MgO+CaO+SrO+BaOの含有量が少な過ぎると、高温粘度が高くなり過ぎる。よって、MgO+CaO+SrO+BaOの含有量は17.0超〜40%、18〜30%、特に19〜25%が好ましい。
MgO+CaOは、アルカリ土類金属酸化物の中では、高温粘度を低下させることにより、ガラス溶解窯内の上昇流、下降流、バッチ投入口方向への後退流の移動速度を高めて、ガラスを均質化させる2成分の総和である。また、MgO+CaOは、アルカリ土類金属酸化物の中では、ガラスの割れ難さを最も維持し得ると共に、密度を最も低下させる2成分の総和である。密度を低下させると、PDP等の支持部材のコストを低廉化することができる。MgO+CaOの含有量は2.9超〜10%、特に3.4超〜9.4%未満が好ましい。MgO+CaOの含有量が多過ぎると、耐失透性、特にZrO系の失透結晶が析出し易くなる。一方、MgO+CaOの含有量が少な過ぎると、ガラス溶解窯内でのガラス融液の移動速度が低下し過ぎて、ガラス融液が均質化されず、結果として、溶融性、成形性が低下し易くなる。
質量比CaO/MgOは、アルカリ土類酸化物の内、高温粘度を低下させる効果が大きいMgOとCaOの比である。耐失透性の観点から見ると、ZrO系の失透結晶を特に発生させ易いMgOに対して、MgOと比較してZrO系の失透結晶を発生させ難いCaOの比である。質量比CaO/MgOは、ZrO系の失透結晶の析出を抑制しつつ、高温粘度を低下させるために、1超、2超、2.5超、特に3.4超が好ましい。
CaO+SrOの含有量は6.92〜23%、8〜21%、特に9〜20%が好ましい。CaO+SrOの含有量が多過ぎると、耐失透性が低下し易くなる。一方、CaO+SrOの含有量が少な過ぎると、ガラス溶解窯内でのガラス融液の移動速度が低下し過ぎて、ガラス融液が均質化されず、結果として、溶融性、成形性が低下し易くなる。
質量比NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)は、高温粘度を低下させる効果が大きい成分の総量(MgO、CaO、SrO、BaO、LiO、NaO、及びKOの総量)に対するNaOの含有量の比である。質量比NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)は0.137〜0.355、0.140〜0.300、特に0.158超〜0.250が好ましい。質量比NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)が大き過ぎると、高歪点を維持し難くなり、また溶融性、成形性が低下し易くなる。一方、質量比NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)が小さ過ぎると、高温粘度を低下させるために、LiOやKOの含有量を増加せざるを得ず、結果として、原料コストが高騰する。なお、KOの含有量を優先的に増加させると、Alを10%超含むガラス系では、KAlSiO系の失透結晶が析出し易くなる。一方、質量比NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)が小さ過ぎても、高歪点を維持し難くなり、また耐失透性が低下して、液相粘度が低下し易くなる。
上記の成分以外にも、例えば、以下の成分を添加してもよい。
TiOは、紫外線による着色を防止すると共に、耐候性を高める成分である。しかし、TiOの含有量が多過ぎると、ガラスが失透したり、ガラスが茶褐色に着色し易くなる。よって、TiOの含有量は0〜10%、特に0〜0.1%未満が好ましい。
は、耐失透性を高める成分、特にZrO系の失透結晶の析出を抑制する成分であり、またガラスを割れ難くする成分である。しかし、Pの含有量が多過ぎると、ガラスが乳白色に分相し易くなる。よって、Pの含有量は0〜10%、0〜0.2%、特に0〜0.1%未満が好ましい。
ZnOは、高温粘度を低下させる成分である。ZnOの含有量が多過ぎると、耐失透性が低下し易くなる。よって、ZnOの含有量は0〜10%、特に0〜5%が好ましい。
SOは、清澄剤として作用する成分であり、その含有量は0〜1%、特に0.01〜1%が好ましい。なお、フロート法でガラス板を成形すると、安価にガラス板を大量生産し得るが、この場合、清澄剤として芒硝を用いることが好ましい。
Sbは、清澄剤として作用する成分であるが、フロート法でガラス板を成形する場合、ガラスを着色させる成分であり、また環境的負荷が懸念される成分である。Sbの含有量は0〜1%、特に0〜0.1%未満が好ましい。
Asは、清澄剤として作用する成分であるが、フロート法でガラス板を成形する場合、ガラスを着色させる成分であり、また環境的負荷が懸念される成分である。Asの含有量は0〜1%、特に0〜0.1%未満が好ましい。
SnOは、清澄剤として作用する成分であるが、耐失透性を低下させる成分である。SnOの含有量は0〜1%、特に0〜0.1%未満が好ましい。
上記成分以外にも、溶解性、清澄性、成形性を高めるために、F、Cl、CeOを合量で各々1%まで添加してもよい。また、化学的耐久性を高めるために、Nb、HfO、Ta、Y、Laを各々3%まで添加してもよい。更に、色調の調整のために、上記以外の希土類酸化物、遷移金属酸化物を合量で2%まで添加してもよい。
本発明のガラスにおいて、30〜380℃における平均熱膨張係数は70×10−7〜100×10−7/℃、特に80×10−7〜90×10−7/℃が好ましい。このようにすれば、シールフリット等の周辺部材の熱膨張係数に整合し易くなる。なお、熱膨張係数が高過ぎると、耐熱衝撃性が低下し易くなり、結果として、PDP等を製造する際の熱処理工程で、ガラス板に割れが発生し易くなる。
本発明のガラスにおいて、密度は2.90g/cm以下、特に2.85g/cm以下が好ましい。このようにすれば、PDP等の支持部材のコストを低廉化し易くなる。なお、「密度」は、周知のアルキメデス法で測定可能である。
本発明のガラスにおいて、600超〜650℃、605超〜650℃、特に610超〜650℃が好ましい。このようにすれば、PDP等を製造する際の熱処理工程で、ガラス板に熱収縮や熱変形が生じ難くなる。
本発明のガラスにおいて、104.0dPa・sにおける温度は1200℃以下、特に1180℃以下が好ましい。このようにすれば、低温でガラス板を成形し易くなる。
本発明のガラスにおいて、102.5dPa・sにおける温度は1520℃以下、特に1460℃以下が好ましい。このようにすれば、低温でガラス原料を溶解し易くなる。なお、「102.5dPa・sにおける温度」は、白金球引き上げ法で測定可能である。
本発明のガラスにおいて、液相温度は1160℃以下、特に1100℃以下が好ましい。液相温度が上昇すると、成形時にガラスが失透し易くなり、成形性が低下し易くなる。
本発明のガラスにおいて、液相粘度は104.0dPa・s以上、特に104.3dPa・以上が好ましい。液相粘度が低下すると、成形時にガラスが失透し易くなり、成形性が低下し易くなる。
本発明のガラスにおいて、誘電率は8以下、7.9以下、特に7.8以下が好ましい。このようにすれば、セルを1回発光させるために必要な電流量が小さくなるため、PDP等の消費電力を低減し易くなる。ここで、「誘電率」は、ASTM D150−87に基づいて、25℃、1MHzの条件で測定した値を指す。
本発明のガラスにおいて、体積電気抵抗率(150℃)は11.0以上、特に11.5以上が好ましい。このようにすれば、ガラス中のアルカリ成分が移動し難くなるため、アルカリ成分がITO膜等の電極と反応し難くなり、結果として、電極の電気抵抗が変化し難くなる。ここで、「体積電気抵抗率(150℃)」は、ASTM C657−78に基づいて、150℃で測定した値を指す。
本発明のガラスにおいて、誘電正接は0.05以下、0.01以下、特に0.005以下が好ましい。誘電正接が高くなると、画素電極等に電圧が印加された際に、ガラスが発熱して、PDP等の動作特性に悪影響を及ぼすおそれがある。ここで、「誘電正接」は、ASTM D150−87に基づいて、25℃、1MHzの条件で測定した値を指す。
本発明のガラスにおいて、ヤング率は78GPa以上、特に80GPa以上が好ましい。また、比ヤング率は、27.5GPa/(g/cm)以上、特に28GPa/(g/cm)以上が好ましい。このようにすれば、ガラス板が撓み難くなるため、搬送工程や梱包工程における取り扱いの際に大きく揺動して落下したり、他の部材と接触して破損し難くなる。ここで、「ヤング率」は、共振法で測定した値を指す。「比ヤング率」は、ヤング率を密度で割った値である。
本発明のガラスは、上記のガラス組成範囲になるように、調合したガラス原料を連続溶融炉に投入し、ガラス原料を加熱溶融した後、得られたガラス融液を脱泡した上で、成形装置に供給し、板状等に成形、徐冷することにより、作製することができる。
ガラス板の成形方法としては、フロート法、スロットダウンドロー法、オーバーフローダウンドロー法、リドロー法等を例示できるが、安価にガラス板を大量生産する場合、フロート法を採用することが好ましい。
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例は単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
表1〜6は、試料No.1〜42を示している。
次のようにして、試料No.1〜42を作製した。まず表中のガラス組成になるように調合したガラスバッチを白金坩堝に入れ、1550℃で2時間溶融した。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出して、平板形状に成形した後、徐冷した。その後、各測定に応じて、所定の加工を行った。得られた各試料について、熱膨張係数α、密度d、歪点Ps、徐冷点Ta、軟化点Ts、10dPa・sにおける温度、10dPa・sにおける温度、102.5dPa・sにおける温度、10dPa・sにおける温度、液相温度TL、液相粘度log10ηTL、体積電気抵抗率ρ(150℃、250℃、350℃)、誘電率ε、誘電正接tanδ、ヤング率、比ヤング率を評価した。これらの結果を表1〜6に示す。
熱膨張係数αは、ディラトメーターにより30〜380℃における平均熱膨張係数を測定した値である。なお、測定試料として、直径5.0mm、長さ20mmの円柱試料を用いた。
密度dは、公知のアルキメデス法で測定した値である。
歪点Ps、徐冷点Ta、軟化点Tsは、ASTM C336−71に基づいて測定した値である。
10dPa・sにおける温度、10dPa・sにおける温度、102.5dPa・sにおける温度は、白金球引き上げ法で測定した値である。なお、10dPa・sにおける温度は、成形温度に相当している。
液相温度TLは、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れた後、この白金ボートを温度勾配炉中に24時間保持して、結晶が析出する温度を測定した値である。液相粘度log10ηTLは、液相温度TLにおけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値である。なお、液相温度が低い程、また液相粘度が高い程、耐失透性が向上し、成形時にガラス中に失透結晶が析出し難くなり、結果として、大型のガラス板を安価に作製し易くなる。
体積電気抵抗率ρは、各温度において、ASTM C657−78に基づいて測定した値を指す。
誘電率ε、誘電正接tanδは、ASTM D150−87に基づいて、25℃、1MHzの条件で測定した値である。
ヤング率は、共振法で測定した値を指す。また、比ヤング率は、ヤング率を密度で割った値である。
表1〜6から明らかなように、試料No.1〜33、39〜42は、歪点が600超〜650℃であるため、高い耐熱性を有する。また、試料No.1〜33、39〜42は、熱膨張係数が70×10−7〜100×10−7/℃であるため、PDP等の構成部材の熱膨張係数に整合させ易い。更に、試料No.1〜33、39〜42は、10dPa・sにおける温度が1200℃未満、液相粘度が104.0dPa・s以上であるため、生産性に優れている。
一方、試料No.34は、歪点が高いものの、アルカリ成分、特にNaOを含有していないため、高温粘度が高かった。また、試料No.34は、熱膨張係数が低過ぎるため、PDP等の周辺部材の熱膨張係数に整合させることが困難であると考えられる。
試料No.35は、特許文献1に記載のガラスである。また、試料No.35、36は汎用のガラスである。試料No.35、36は、歪点が約580℃以下であるため、熱処理工程で熱収縮が大きく、高精細のディスプレイ等を作製し難いと考えられる。
試料No.37は、MgOの含有量が所定範囲外であるため、ZrO系の失透結晶が析出し易く、液相温度が高かった。
試料No.38は、SrOの含有量が少な過ぎるため、10dPa・sにおける温度が上昇し、ガラスの製造コストが高騰する虞がある。
本発明のガラスは、PDP、フィールドエミッションディスプレイ等のFPD以外にも、シリコン太陽電池、色素増感型太陽電池に適用することも可能である。

Claims (10)

  1. ガラス組成として、下記酸化物換算の質量%で、SiO 45〜55%(但し、55%を含まず)、Al 10.0超〜15%、B 0〜15%、MgO 0〜3.7%(但し、3.7%を含まず)、CaO 2.9超〜8%、SrO 4.0超〜15%、BaO 2.0超〜14%(但し、14.0%を含まず)、LiO 0〜10%、NaO 4.0超〜15%、KO 0〜10%、ZrO 0〜7%、Fe 0.01〜1%を含有することを特徴とするガラス。
  2. SiO−Alが30〜45%(但し、45%を含まず)、MgO+CaO+SrO+BaOが17.0超〜40%、MgO+CaOが2.9超〜10%、質量比CaO/MgOが1.0超、CaO+SrOが6.92〜23%、質量比NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)が0.137〜0.355であることを特徴とする請求項1に記載のガラス。
  3. 更に、SOを0.01〜1質量%含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス。
  4. 歪点が600超〜650℃であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のガラス。
  5. 30〜380℃における平均熱膨張係数が70×10−7〜100×10−7/℃であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のガラス。
  6. 104.0dPa・sにおける温度が1200℃以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のガラス。
  7. 液相粘度が104.0dPa・s以上であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のガラス。
  8. フラットパネルディスプレイに用いることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のガラス。
  9. プラズマディスプレイパネルに用いることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のガラス。
  10. 板状であることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載のガラス。
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