JP5910776B2 - オキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物の製造方法 - Google Patents

オキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、オキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物の製造方法に関する。
オキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物は、液晶材料、医薬品、これらの中間体等として有用な化合物であり、各種の製造方法が検討されている。
例えば、下記特許文献1には、液晶材料等の中間体として有用な物質である、末端にハロゲン原子を有するオキシジフルオロシメチレン骨格を有する化合物の製造方法として、下記工程からなる方法が記載されている。
しかしながら、この方法は、3工程を要するために製造工程が煩雑であり、しかも中間生成物の安定性が劣り、取り扱いが難しいという問題点がある。
下記特許文献2には、末端に低級アルキル基を有するオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物の製造方法として、下記工程からなる方法が記載されている。
この方法は、反応物質として、高価で毒性の高いジブロモジフルオロメタン、及びオゾン破壊係数が高い気体成分であるブロモジフルオロメタンを用いるために、反応時の取り扱いが難しく、しかも、収率が低く多量の副生物の除去が必要である。
下記特許文献3には、末端にハロゲン原子を有するオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物の製造方法として、下記工程からなる方法が記載されている。
しかしながら、この方法についても、高価で毒性の高いジブロモジフルオロメタンを使用するという問題がある上に、収率が低く、多量の副生物の除去が必要となり、工業的な実施には更に改善が望まれる。
特表2003−525286号公報 特開2003−261478号公報 特開2013−241401号公報
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、ジブロモジフルオロメタン等の取り扱いの難しい原料を用いることなく、簡便な工程によって、分離が困難な不純物を生じることなく、高い収率でオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物を製造できる方法を提供することである。
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その過程において、チオノカルボン酸エステルという特定の化合物を原料として用い、これを式:XF(式中、Xは塩素、臭素、又はヨウ素を表し、及びnは1〜5の自然数を表す。)で表される化合物(本明細書中、当該化合物を単にフッ素化剤XFと称する場合がある。)(例、五フッ化ヨウ素)と反応させる方法によれば、分離が困難な不純物の生成を抑制して、簡単な精製工程によって、高純度のオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物を収率良く得ることが可能となることを見出した。
本発明者は、更に、この方法で原料として用いるチオノカルボン酸エステルについて、ハロゲン化チオカルボニル化合物を原料として用い、これを特定の化合物と反応させる方法によれば、比較的安全な原料を用いて、穏和な反応条件で、当該チオノカルボン酸エステルを収率よく得ることが可能であること、を見出した。本発明者は、また更に、当該反応を上記したフッ素化剤XF(例、五フッ化ヨウ素)によるフッ素化反応と組み合わせることによって、安全性の高い原料を用いて、比較的簡単な反応工程によって、分離が困難な不純物を生じることなく、高収率でオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物を製造することが可能となること、を見出した。
本発明者は、更に、この方法で得られる化合物は、それ自体が、液晶材料等として有用な化合物であること、を見出した。本発明者らは、また更に、この方法で得られる、反応性を有する原子又は基を有する化合物は、更に、特定の芳香族ボロン酸化合物と反応させる方法によって、収率よく芳香環基等の各種の基を導入されることができ、従って、医薬品、液晶材料等として有用な各種の化合物等に変換可能であること、を見出した。
本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねた結果完成されたものである。
即ち、本発明は、下記のオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物の製造方法を提供するものである。
項1.
一般式(2):
Ar2−Z−Ar1 (2)
(式中、
Ar1及びAr2は、同一又は異なって、それぞれ置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基を表し、及び
Zは、基:−CF2−O−を表す。)
で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物の製造方法であって、
一般式(1):
(式中、Ar1及びAr2は、上記に同じである。)
で表されるチオノカルボン酸エステルを、式:XF(式中、Xは塩素、臭素、又はヨウ素を表し、及びnは1〜5の自然数を表す。)で表される化合物と反応させることを特徴とする、製造方法。
項2.
更に、前記一般式(1):
(式中、Ar1及びAr2は上記に同じ)
で表されるチオノカルボン酸エステルを得る工程として、
一般式(3):
(式中、Ar1は上記に同じであり、Xはハロゲン原子を示す)
で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物を、一般式(4):
Ar2-M (4)
(式中、Arは上記に同じであり、Mはアルカリ金属、一価の銅、又は基:-MgY1(Yはハロゲン原子である)である)
で表される化合物と反応させる工程を含む、上記項1に記載のオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物の製造方法。
項3.
一般式(9―1):
Ar−Ar−Z−Ar (9―1)
(式中、Arは置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基であり、Arは、置換基を有することのある二価の炭化水素基であり、Arは、置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基であり、Zは基:−CF2−O−である。)
で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物、又は
一般式(9−2):
Ar−Z−Ar9−Ar5 (9―2)
(式中、Ar及びZは上記に同じであり、Arは、置換基を有することのある二価の炭化水素基であり、Arは、置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基である。)
で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物の製造方法であって、
反応工程(I):
一般式(1−1):
(式中、Ar及びAr4は、一方が、ボロン酸化合物に対して反応性を有する基若しくは原子を置換基として有する基、又はボロン酸基を置換基として有する基であり、他方が、置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基である。)
で表されるチオノカルボン酸エステルを、式:XF(式中、Xは塩素、臭素、又はヨウ素を表し、及びnは1〜5の自然数を表す。)で表される化合物と反応させて、一般式(2−1):
Ar−Z−Ar (2−1)
(式中、Ar、Ar、及びZは上記に同じである。)
で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物を得る工程、及び
反応工程(II)
反応工程(I)で得られた一般式(2−1)で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物を、一般式(8):
Ar−D (8)
(式中、Dは、一般式(2―1)で表される化合物が、ボロン酸化合物に対して反応性を有する基若しくは原子を有する化合物である場合には、ボロン酸基を示し、一般式(2―1)で表される化合物がボロン酸基を有する化合物である場合には、ボロン酸化合物に対して反応性を有する基を示す。Arは、置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基を示す。)
で表される化合物と反応させて、上記一般式(9―1)又は一般式(9−2)で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物を得る工程
を含む方法。
項4.
更に、一般式(1−1):
(式中、Ar及びAr4は上記に同じ)
で表されるチオノカルボン酸エステルを得る工程として、
一般式(3−1):
(式中、Arは上記に同じであり、Xはハロゲン原子を示す)
で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物と、
一般式(4−1):
Ar-M (4―1)
(式中、Arは上記に同じであり、Mはアルカリ金属、一価の銅、又は基:-MgY1(Yはハロゲン原子である)である)
で表される化合物と反応させる工程を含む、上記項3に記載のオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物の製造方法。
項5.ボロン酸基が、下記式(a)
(式中、M及びMは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、低級アルキル基、又は一価金属原子を示す。或いは、MとMは、互いに結合して、二価の脂肪族炭化水素基を形成し、ホウ素原子と共に環状構造を形成してもよい。)
で表される基である、上記項3又は4に記載のオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物の製造方法。
以下、本発明のオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物の製造方法について、具体的に説明する。
(I)チオノカルボン酸エステルのフッ素化反応工程
本発明では、下記一般式(1)
(式中、
Ar1及びAr2は、同一又は異なって、それぞれ置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基である。)
で表されるチオノカルボン酸エステルを原料として用い、これをフッ素化剤XFと反応させることによって、
一般式(2):
Ar2−Z−Ar1 (2)
(式中、Ar1及びAr2は上記に同じであり、Zは基:−CF2−O−である。)
で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物
を得ることができる。
フッ素化剤XFとしては、IF、BrF、及びClFが例示される。フッ素化剤XFは、特に好ましくはIFである。
この方法によれば、上記一般式(1)で表されるチオノカルボン酸エステルという特定の化合物を原料として用い、これをフッ素化剤XF(特に好ましくは、五フッ化ヨウ素(IF5))という特定のフッ素化剤でフッ素化することによって、分離が難しい不純物の生成を抑制して、高純度のオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物を収率良く得ることができる。しかも、フッ素化剤として用いる五フッ化ヨウ素は、爆発性のない沸点100.5℃、融点9.4℃の扱い易い液体であり、工業的に有用なフッ素化剤である。
上記一般式(1)において、Ar1及びAr2で表される基の内で、置換基を有することのある芳香環基としては、置換基を有することのあるフェニル基、置換基を有することのあるナフチル基、置換基を有することのあるピリジル基等を例示できる。置換基を有することのあるシクロアルキル基におけるシクロアルキル基としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロブチル基等の炭素数4〜6のシクロアルキル基を例示できる。置換基を有することのあるアルキル基におけるアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル,イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル基等の炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を例示できる。これらの各基における置換基は、後述するフッ素化剤XF(特に好ましくは、五フッ化ヨウ素)によるフッ素化反応に対して不活性な置換基であれば特に限定はない。また、上記一般式(1)で表されるチオノカルボン酸エステルを、後述する一般式(3)で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物と一般式(4)で表される化合物との反応で作製する場合には、この反応に対しても不活性な置換基であればよい。この様な置換基の具体例としては、アルキル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルコキシ基、芳香環基、ハロゲン原子、−SF5、ボロン酸基等を例示できる。本明細書中、置換基の数は、1個、又はそれ以上であることができる。本明細書中、「低級」とは、炭素数が6程度以下であることを意味し得る。
これらの内で、アルキル基及びシクロアルキル基としては、上記した各基と同様の基を例示できる。フルオロアルキル基としては、炭素数1〜6程度の直鎖状又は分岐鎖状の低級アルキル基の水素元素の一部又は全部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基を例示できる。アルコキシ基としては、炭素数1〜6程度の直鎖状又は分岐鎖状の低級アルコキシ基を例示できる。フルオロアルコキシ基としては、炭素数1〜6程度の直鎖状又は分岐鎖状の低級アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたフルオロアルコキシ基を例示できる。置換基としての芳香環基としては、フェニル基、ナフチル基等を例示でき、これらの芳香環基は、更に反応に対して不活性な置換基を有してもよい。
ボロン酸基は、下記式(a)
で表される基である。該ボロン酸基において、M及びMは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、低級アルキル基、又は一価金属原子を示す。更に、MとMは、互いに結合して、二価の脂肪族炭化水素基を形成し、ホウ素原子と共に環状構造を形成してもよい。この様な二価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数2〜6程度の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基を例示できる。
上記式(a)で表されるボロン酸基において、M及びMで表される原子又は基の内で、低級アルキル基としては、上記した置換基としてのアルキル基と同様の基を例示できる。一価金属原子としては、Na、K、Li等のアルカリ金属を例示できる。
とMが結合して、二価の脂肪族炭化水素基となる場合に、(a)で表されるボロン酸基の具体例としては、下記式で表される基を例示できる。
上記した各基は、例えば、ボロン酸とエチレングリコール又はピナコールとを反応させることによって容易に得ることができる。
尚、置換基としてボロン酸基を有する化合物を原料とする場合には、一部が脱水縮合した状態となる場合があるが、本発明は、この様な縮合体の状態の化合物、例えば、三量体等を原料として用いてもよい。
本発明では、Ar1及びAr2としては、それぞれ、置換基を有することのある芳香環基が好ましい。
上記したAr1で表される基の内で、置換基を有することのある芳香環基の具体例としては、下記一般式(I):
で表される基を例示できる。上記一般式(I)において、L1〜L4は、同一又は相異なって、それぞれ、水素原子、フッ素原子、又は低級アルキル基を示す。これらの基の内で、低級アルキル基としては、上記したAr1及びAr2における低級アルキル基と同様の基を例示できる。Aは、水素原子、フッ素原子、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基 又はSF5を示す。これらの内で、アルコキシ基、フルオロアルキル基及びフルオロアルコキシ基としては、上記したAr1及びAr2における各基と同様の基を例示できる。
上記一般式(I)において、ベンゼン環におけるL〜L4とA1の置換位置は、一般式(I)に記載した位置に限定されず、ベンゼン環上の任意の位置であることができる。
上記した一般式(I)で表される基の例としては、フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基、2、6−ジフルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,3,4−トリフルオロフェニル基、2,3,5−トリフルオロフェニル基、2,3,6−トリフルオロフェニル基、2,4,5−トリフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,5−ジフルオロ−4−メトキシフェニル基、4−(トリフルオロメトキシ)フェニル基、3,5−ジフルオロ−4−(トリフルオロメトキシ)フェニル基、4−(ペンタフルオロスルファニル)フェニル基、などを挙げることができる。
Ar2で表される基の内で、置換基を有することのある芳香環基の具体例としては、下記一般式(II):
で表される基を例示できる。上記一般式(II)において、L5〜L8は、同一又は相異なって、それぞれ、水素原子、フッ素原子、又は低級アルキル基を示す。これらの基の内で、低級アルキル基としては、上記したAr1及びAr2における低級アルキル基と同様の基を例示できる。A2は、ハロゲン原子、低級アルキル基、シクロアルキル基、又は芳香環基を示し、シクロアルキル基及び芳香環基は、更に、置換基として、低級アルキル基、置換基を有することのある芳香環基等を有してもよい。これらの基の内で、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を例示でき、低級アルキル基としては上記したAr1及びAr2における低級アルキル基と同様の基を例示できる。芳香環基としては、フェニル基、ナフチル基などを例示でき、置換基を有することのある芳香環基としては、置換基として低級アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、フェニル基等を有する芳香環基を例示でき、置換基としてのフェニル基は、更に、置換基としてハロゲン原子を有してもよい。これらの基における低級アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子は、Ar1及びAr2における各基と同様の基である。
上記一般式(II)において、ベンゼン環におけるL5〜L8とA2の置換位置は、一般式(II)に記載した位置に限定されず、ベンゼン環の任意の位置とすることができる。
上記一般式(II)で表される基の具体例としては、フェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−ペンチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロブチルフェニル基、4−シクロペンチルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−(4−プロピルシクロヘキシル)フェニル基、ビフェニル基、3,5−ジフルオロビフェニル基、4’−メチルビフェニル基、4’−エチルビフェニル基、4’−プロピルビフェニル基、4’−ブチルビフェニル基、4’−ペンチルビフェニル基、4’−ヘキシルビフェニル基、4’−シクロヘキシルビフェニル基、ターフェニル基、2,6−ジフルオロターフェニル基4−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−ヨードフェニル基、4−クロロ−2−フルオロフェニル基、4−ブロモ−2−フルオロフェニル基、4−ヨード−2−フルオロフェニル基、4−クロロ−2,6−ジフルオロフェニル基、4−ブロモ−2,6−ジフルオロフェニル基、4−ヨード−2,6−ジフルオロフェニル基、4’−クロロビフェニル基、4’−ブロモビフェニル基、4’−ヨードビフェニル基、4’−クロロ−3−フルオロビフェニル基、4’−ブロモ−3−フルオロビフェニル基、4’−ヨード−3−フルオロビフェニル基、4’−クロロ−3,5−ジフルオロビフェニル基、4’−ブロモ−3,5−ジフルオロビフェニル基、4’−ヨード−3,5−ジフルオロビフェニル基などを例示できる。
Ar1が上記一般式(I)で表される基であり、Ar2が上記一般式(II)で表される基であるアリールチオノカルボン酸アリールエステルを原料とする場合には、特に、後述する条件でフッ素化剤XF(特に好ましくは、五フッ化ヨウ素)によるフッ素化を行う場合には、分離が困難な不純物は生じ難く、及びカラムクロマトグラフィー、再結晶などの通常の分離手段によって簡単に精製することができ、高純度の目的物を容易に得ることができる。
上記反応において、フッ素化剤XF(特に好ましくは、五フッ化ヨウ素(IF5))の使用量は、一般式(1)で表されるチオノカルボン酸エステル1モルに対して、0.2モル〜20モル程度とすることが好ましく、0.3モル〜5モル程度とすることがより好ましく、0.4モル〜2モル程度とすることが更に好ましい。反応温度については特に限定的ではないが、通常、−20℃〜200℃程度、好ましくは0℃〜100℃程度とすればよい。
反応時間は、反応条件によって異なるので、一概に規定できないが、通常、5分間〜300時間程度の範囲である。
反応溶媒は必要に応じて使用すればよいが、使用することが好ましい。反応溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテルなどの脂肪族溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、フルオロトリクロロメタン、1,1,2-トリクロロトリフルオロエタン、2−クロロ−1,2−ジブロモ−1,1,2−トリフルオロエタン、1,2−ジブロモヘキサフルオロプロパン、1,2−ジブロモテトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロテトラクロロエタン、1,2−ジフルオロテトラクロロエタン、ヘプタフルオロ−2,2,3−トリクロロブタン、1,1,1,3−テトラクロロテトラフルオロプロパン、1,1,1−トリクロロペンタフルオロプロパン、1,1,1−トリクロロトリフルオロエタン、ポリクロロトリフルオロエチレンなどのハロゲン化脂肪族溶媒、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボナートなどのエステル溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル溶媒、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ニトロベンゼンなどの芳香族溶媒、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4−メチルテトラヒドロピラン、モノグライム、ジグライムなどのエーテル溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水、ニトロメタン、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、テトラメチルウレア、1,3−ジメチルプロピレンウレア、ヘキサメチルフォスフォルアミド(HMPA)などが挙げられ、単独もしくは任意の2種以上の混合物として用いられる。
本発明では、特に、一般式(1)で表されるチオノカルボン酸エステルと五フッ化ヨウ素との反応を、有機塩基及びHFの少なくとも一方の存在下に行うことが好ましく、有機塩基及びHFの両方の存在下に行うことがより好ましい。これにより、一般式(2):
Ar2−Z−Ar1 (2)
(式中、Ar1、Ar2、及びZは上記に同じである。)で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物の収率を大きく向上させることができる。
有機塩基としては、脂肪族アミン(第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン)、脂環式アミン(第二級アミン、第三級アミン)、芳香族アミン(第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン)、複素環式アミンなどを用いることができる。これらの有機塩基は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。これらの有機塩基の具体例は、以下の通りである。
脂肪族第一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン等が例示され;
脂肪族第二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が例示され;及び
脂肪族第三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等が例示される。
脂環式第二級アミンとしては、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリンが例示され;及び
脂環式第三級アミンとしては、N−メチルピペラジン、N−メチルピロリジン、5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン−5−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが例示される。
芳香族アミンとしては、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ハロアニリン、ニトロアニリン等が例示される。
複素環式アミンとしては、ピリジン、ピリミジン、ピペラジン、キノリン、イミダゾールなどが例示される。
更に、有機塩基としては、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン等のポリマー担持アミン化合物も例示される。
有機塩基の使用量は、触媒量から大過剰の範囲で選ぶことができるが、一般式(1)で表されるチオノカルボン酸エステル1モルに対して、好ましくは0.5〜5モル程度、さらに好ましくは0.6モル〜4モル程度、より好ましくは0.8〜3モル程度である。
HFの使用量は、触媒量から大過剰の範囲で選ぶことができるが、好ましくは有機塩基1モルに対して1〜10モル程度であり、より好ましくは1〜5モル程度である。
有機塩基とHFとは、それぞれ別個に添加してもよく、或いは、有機塩基のフッ酸塩として添加してもよい。
フッ素化剤XFとして五フッ化ヨウ素を用い、且つ塩基としてピリジンを用いる場合は、五フッ化ヨウ素を、ピリジン及びフッ化水素との固体の複合体として用いてもよい。この複合体には、フッ素化反応を著しく阻害しない程度において、IF−ピリジン−HF複合体を構成していない、IF、ピリジン、HF、又はそれらの組み合わせが含まれていてもよい。
上記複合体は、例えば、ピリジン50モル%と無水フッ化水素50モル%からなる混合物に五フッ化ヨウ素(IF5)を加えて混合することによって得ることができ、それぞれの等モル量からなるIF−ピリジン−HFの複合体は、固体であり、取り扱い易い化合物であることから、フッ素化剤として該複合体を用いることによって、チオノカルボン酸エステルのフッ素化反応の操作が簡便となり、効率良く反応を行うことができる。
上記した方法によって、一般式(2):
Ar2−Z−Ar1 (2)
(式中、Ar1は及びAr2は上記に同じであり、Zは基:−CF2−O−である。)
で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物を高収率で得ることができる。
上記した方法で得られたオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物は、必要に応じて、クエンチ、抽出、乾燥、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶などの公知の方法によって精製して回収することができる。
上記した方法において、原料として用いる下記一般式(1)で表されるチオノカルボン酸エステルを製造する方法については特に限定はなく、例えば、クロロチオンギ酸エステルと芳香族化合物とを反応させる方法(H.Viola, et al., Chem. Ber., 101, 3517(1968))、カルバニオンをジチオ炭酸エステル又はチオン炭酸エステルで処理する方法(Liebigs Ann.Chem., 1973, 1637)、オルトエステルを硫化水素と反応させる方法(A. Ohno, et al., Tetrahedron Lett., 1968, 2083)、カルボン酸エステルを五硫化二リン又はLawesson反応剤で処理する方法(Synthesis, 1973, 149 ; Bull. Chem. Soc. Belg., 87, 293(1987))、チオノカルボン酸塩化物とアルコール又はフェノールとを反応させる方法(S.Scheithauer et al., Chem. Ber., 98, 838(1965))、ニトリルをアルコールと反応させ、次いで硫化水素と反応させる方法(Liebigs Ann. Chem., 1974, 671)、メチル芳香族化合物を硫黄とアルコールとで処理する方法(Z. Chem., 6,108(1966))、チオアシルジスルフィッドとアルコラートとを反応させる方法(K.A.Latif et al.,Tetrahedron, 26, 4247(1970))等の各種の公知の方法によって得ることができる。本発明では、例えば、ハロゲン化チオカルボニル化合物を原料として用い、これを特定の一般式で表される化合物と反応させる方法によって、比較的安全な原料を用いて、簡単な製造工程によって、高収率でチオノカルボン酸エステルを得ることができる。以下、この方法について具体的に説明する。
(II)チオノカルボン酸エステルの製造工程
この工程では、下記一般式(3)
(式中、Ar1は上記に同じであり、Xはハロゲン原子を示す)
で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物、及び一般式(4):
Ar2-M (4)
(式中、Arは上記に同じであり、Mはアルカリ金属、一価の銅、又は基:-MgY1(Yはハロゲン原子である)を示す)
で表される化合物を原料として用い、これらの化合物の反応により、前記一般式(1):
(式中、Ar1は及びAr2は、上記に同じ)
で表されるチオノカルボン酸エステルを得る。
この方法によれば、ジブロモジフルオロメタン、ブロモジフルオロメタン等の取り扱いが困難な原料を用いることなく、比較的安全な原料を用いて、簡単な製造工程によって、高収率でチオノカルボン酸エステルを得ることができる。
以下、まず、この工程で用いる原料化合物について説明する。
(i)ハロゲン化チオカルボニル化合物
原料として用いる一般式(3)
で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物において、Ar1は、置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基であり、具体的には、一般式(1)におけるAr1と同一である。一般式(3)におけるAr1の具体例としては、一般式(1)におけるAr1の具体例と同様の基を挙げることができる。
上記一般式(3)において、Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などを例示でき、特に、塩素原子が好ましい。
(ii)一般式(4)の化合物
上記反応で用いる原料の内で、一般式(4):
Ar2-M (4)
において、Ar2は置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基であり、具体的には、一般式(1)におけるAr2と同一である。
尚、一般式(4)の化合物において、Mが基:-MgY1である場合には、置換基としてのハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子等が好ましい。
上記一般式(4)において、Mがアルカリ金属である化合物、即ち、一般式(4’):Ar2-M1(式中、Ar2は上記に同じであり、M1はアルカリ金属である)で表されるアルカリ金属化合物は、一般式(5):Ar2-Y2(式中、Ar2は上記に同じであり、Y2はフッ素以外のハロゲン原子又は水素原子である。)で表されるハロゲン化物を、一般式(6):R-M1(式中、Rはアルキル基又はフェニル基であり、M1はアルカリ金属である)で表される有機アルカリ金属化合物と反応させることによって得ることができる。ここで、Mで表されるアルカリ金属としては、Li、Na、K等を例示できる。
一般式(5):Ar2-Y2で表されるハロゲン化物において、Y2で表されるフッ素以外のハロゲン原子の具体例として、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を例示できる。
一般式(6):R-M1で表される有機アルカリ金属化合物において、Rはアルキル基又はフェニル基である。アルキル基としては、例えば、炭素数1〜5程度の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を例示できる。
一般式(6):R-M1で表される有機アルカリ金属化合物の使用量は、一般式(5):Ar2-Y2で表されるハロゲン化物1モルに対して、0.9〜5.0モル程度とすればよく、0.9〜1.5モル程度とすることが好ましい。
一般式(5):Ar2-Y2で表されるハロゲン化物と一般式(6):R-M1で表される有機アルカリ金属化合物との反応は、反応に不活性な非プロトン性有機溶媒中で行うことが好ましい。非プロトン性有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等を例示できる。これらの、非プロトン性有機溶媒は、必要に応じて、二種以上混合して用いてもよい。
反応溶媒中の原料濃度については特に限定はないが、例えば、一般式(5):Ar2-Y2で表されるハロゲン化物の濃度として、0.1mol/L〜3mol/L程度とすればよい。
一般式(5):Ar2-Y2で表されるハロゲン化物と一般式(6):R-M1で表される有機アルカリ金属化合物との反応における反応温度は、室温以下とすることが好ましく、−78℃〜2℃程度とすることがより好ましい。
反応時の圧力については、特に限定はなく、通常は常圧下で反応を行うことができる。反応時の雰囲気については、特に限定はないが、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。反応時間は、特に限定はないが、通常、5分〜10時間程度とすればよい。
上記した方法によれば、一般式(4’):Ar2-M1(式中、Ar2及びM1は上記に同じである)で表されるアルカリ金属化合物を得ることができる。
上記した方法で得られる一般式(4’):Ar2-M1で表されるアルカリ金属化合物を、一般式(3)で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物と反応させることによって、目的とする一般式(1):
(式中、Ar1及びAr2は上記に同じである)
で表されるチオノカルボン酸エステルを得ることができる。
別法として、一般式(4’):Ar2-M1(式中、Ar2及びM1は上記に同じである)で表されるアルカリ金属化合物を一価の銅化合物と反応させて一般式(4’’):Ar2-Cu(式中、Ar2は上記に同じである)で表される化合物へ変換した後、これを一般式(3)で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物と反応させる方法によれば、一般式(1)で表されるチオノカルボン酸エステルの収率をより向上させることができる。
一般式(4’’):Ar2-Cuで表される銅化合物は、一般式(4’):Ar2-M1で表されるアルカリ金属化合物と一価の銅化合物とを反応させることによって得ることができる。この反応では、一価の銅化合物としては、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅などのハロゲン化銅:シアン化銅(CuCN)等を用いることができる。
一価の銅化合物の使用量は、一般式(4’):Ar2-M1で表されるアルカリ金属化合物1モルに対して、0.1〜5モル程度とすればよく、0.7〜1.2モル程度とすることが好ましい。
一般式(4’):Ar2-M1で表されるアルカリ金属化合物と一価の銅化合物との反応は、非プロトン性有機溶媒中で行うことが好ましい。非プロトン性有機溶媒としては、例えば、前述した一般式(5):Ar2-Y2で表されるハロゲン化物と一般式(6):R-M1で表される有機アルカリ金属化合物との反応に用いる溶媒と同様の溶媒を用いることができる。
溶媒中の原料濃度については特に限定はないが、例えば、一般式(4’):Ar2-M1で表されるアルカリ金属化合物の濃度として、0.1mol/L〜3mol/L 程度とすればよい。
一般式(4’):Ar2-M1で表されるアルカリ金属化合物と一価の銅化合物との反応の反応温度は、室温以下とすることが好ましく、−78℃〜室温程度とすることが好ましく、−30〜2℃程度とすることがより好ましい。
反応時の圧力については特に限定はなく、通常は常圧下で反応を行うことができる。反応時の雰囲気については、特に限定はないが、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。反応時間は、通常、5分〜10時間程度とすればよい。
上記した方法によって、一般式(4):Ar2-Mで表される金属化合物の内で、MがCuである化合物、即ち、一般式(4’’):Ar2-Cuで表される銅化合物を得ることができる。
上記一般式(4)において、Mが基:-MgY1である化合物、即ち、一般式(4’’’):Ar2-MgY1(式中、Ar2は上記に同じであり、Y1はハロゲン原子である)で表されるグリニャール化合物は、一般式(7):Ar2-Y1(式中、Ar2及びY1は上記に同じである)で表されるハロゲン化物をマグネシウム化合物と反応させて、得ることができる。ここで、Y1で表されるハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素等を例示できる。
この反応で用いることができるマグネシウム化合物としては、一般式(7):Ar2-Y1で表されるハロゲン化物と反応してグリニャール化合物を形成できる化合物であれば特に限定はない。この様なマグネシウム化合物の具体例としては、金属マグネシウム、i-PrMgCl(イソプロピルマグネシウムクロリド)、i-PrMgBr(イソプロピルマグネシウムブロミド)、n-BuLiとi-PrMgCl またはi-PrMgBr とから調製できるアート錯体i-PrBu2MgLi等を例示できる。
マグネシウム化合物の使用量は、一般式(7):Ar2-Y1で表されるハロゲン化物1モルに対して、1〜10モル程度とすればよく、1〜2モル程度とすることが好ましい。
一般式(7):Ar2-Y1で表されるハロゲン化物とマグネシウム化合物との反応は、通常、反応に不活性な非プロトン性溶媒中で行うことが好ましい。非プロトン性溶媒としては、例えば、一般式(5):Ar2-Y2で表されるハロゲン化物と一般式(6):R-M1で表される有機アルカリ金属化合物との反応に用いる溶媒と同様の溶媒を用いることができる。
反応溶媒中の原料濃度については特に限定はなくが、例えば、一般式(7):Ar2-Y1で表されるハロゲン化物の濃度として、0.5〜10mol/L程度とすればよい。
一般式(7):Ar2-Y1で表されるハロゲン化物とマグネシウム化合物との反応では、反応温度は、0〜100℃程度とすることが好ましく、20〜70℃程度とすることがより好ましい。
反応時の圧力については、特に限定はなく、通常は常圧下で反応を行うことができる。反応時の雰囲気については、特に限定はないが、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。反応時間は、通常、30分〜10時間程度とすればよい。
一般式(7):Ar2-Y1で表されるハロゲン化物とマグネシウム化合物との反応は、LiCl、ヨウ素、ジブロモエタン等の存在下に行うことによって、一般式(4’’’):Ar2-MgY1で表されるグリニャール化合物の収率をより向上させることができる。これらの化合物の使用量は、一般式(7):Ar2-Y1で表されるハロゲン化物1モルに対して、1.0〜5.0モル程度とすることが好ましく、1.0〜1.2モル程度とすることがより好ましい。
上記した方法によって、一般式(4’’’):Ar2-MgYで表されるグリニャール化合物を得ることができる。
(iii)反応方法
上記した通り、この反応工程では、一般式(3)
(式中、Ar1は上記に同じであり、Xはハロゲン原子を示す)で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物を、一般式(4):
Ar2-M (4)
(式中、Arは上記に同じであり、Mはアルカリ金属、一価の銅、又は基:-MgY1を示す)
で表される化合物と反応させることによって、一般式(1):
(式中、Ar1は及びAr2は、上記に同じ)
で表されるチオノカルボン酸エステルを得ることができる。
一般式(4):Ar2-Mで表される化合物の使用量は、一般式(3)で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物1モルに対して、0.8〜2モル程度とすればよく、0.9〜1.2モル程度とすることが好ましい。特に、Mがアルカリ金属又は一価の銅である場合には、一般式(4):Ar2-Mで表される化合物の使用量は、一般式(3)で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物1モルに対して、1〜1.5モル程度とすることが好ましく、1〜1.2モル程度とすることがより好ましい。
上記した反応工程では、特に、一般式(4):Ar2-Mで表される化合物としては、Mがアルカリ金属、特に、Liである化合物が副生成物の生成抑制の観点から好ましい。
一般式(2)で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物と一般式(4):Ar2-Mで表される化合物との反応は、非プロトン性有機溶媒中で行うことが好ましい。非プロトン性有機溶媒としては、例えば、一般式(5):Ar2-Y2で表されるハロゲン化物と一般式(6):R-M1で表される有機アルカリ金属化合物との反応に用いる溶媒と同様の溶媒を用いることができる。
反応溶媒中の原料濃度については特に限定はないが、例えば、一般式(3)で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物の濃度として、0.1mol/L〜3mol/L 程度とすればよい。
ハロゲン化チオカルボニル化合物と一般式(4)で表される化合物との反応の反応温度は、一般式(4):Ar2-Mで表される化合物において、Mがアルカリ金属又は一価の銅である場合には、室温以下とすることが好ましく、−30〜2℃程度とすることがより好ましい。また、一般式(4):Ar2-Mで表される化合物において、Mが基:-MgY1である場合には、−78℃〜室温程度とすることが好ましく、−50〜0℃程度とすることがより好ましい。
反応時の圧力については、特に限定はなく、通常は常圧下で行うことができる。反応時の雰囲気については、特に限定はないが、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。反応時間は、通常、5〜10時間程度とすればよい。
上記した方法によれば、一般式(1):
(式中、Ar1は及びAr2は、上記に同じ)
で表されるチオノカルボン酸エステルを収率よく得ることができる。特に、一般式(4):Ar2-Mで表される化合物において、MがCuである化合物、即ち、一般式(4’’):Ar2-Cuで表される銅化合物を用いる場合には、一般式(1)で表されるチオノカルボン酸エステルを特に収率良く得ることができる。
上記反応工程では、特に、一般式(3)で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物と一般式(4):Ar2-Mで表される化合物との反応を、触媒の存在下に行うことによって、一般式(1)で表されるチオノカルボン酸エステルの収率をより向上させることができる。特に、一般式(4):Ar2-Mで表される化合物が、一般式(4’):Ar2-M1で表されるアルカリ金属化合物である場合に、一般式(1)で表されるチオノカルボン酸エステルの収率を大きく向上させることができる。
触媒としては、一般式(4):Ar2-Mで表される化合物において、Mがアルカリ金属又は一価の銅の場合には、3価の鉄化合物、2価のニッケル化合物等を用いることができ、これらの化合物を一種単独又は二種以上混合して用いることができる。これらの化合物の具体例としては、3価の鉄化合物として、トリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)、塩化第二鉄等を例示でき、2価のニッケル化合物として、塩化ニッケル等を例示できる。 これらの触媒の使用量は、一般式(3)で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物1モルに対して、0.03モル程度以上とすることが好ましい。触媒の使用量の上限については特に限定はないが、過剰に使用してもより効果が向上することはなく、コスト的に不利になるので、ハロゲン化チオカルボニル化合物1モルに対して0.5モル程度以下とすることが好ましく、0.1モル程度以下とすることがより好ましい。
また、一般式(4):Ar2-Mで表される化合物において、Mが基:-MgY1である場合には、触媒としては、3価の鉄化合物、1価若しくは2価の銅化合物、2価のニッケル化合物、2価の亜鉛化合物、2価のコバルト化合物等を用いることができ、これらの化合物を一種単独又は二種以上混合して用いることができる。これらの化合物の具体例としては、3価の鉄化合物として、トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III)、塩化第二鉄等を例示でき、1価若しくは2価の銅化合物として、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅などのハロゲン化銅:シアン化銅(CuCN)、塩化第二銅、テトラクロロ銅(II)ジリチウム (Li2CuCl4)等を例示でき、2価のニッケル化合物として、塩化ニッケル等を例示でき、2価の亜鉛化合物として、塩化亜鉛等を例示でき、2価のコバルト化合物として塩化コバルト等を例示できる。これらの触媒の使用量は、一般式(3)で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物1モルに対して、0.01〜2.00モル程度とすることが好ましく、0.01〜0.10モル程度とすることがより好ましい。
本発明では、上記した方法によって一般式(3)
(式中、Ar1は上記に同じであり、Xはハロゲン原子を示す)
で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物を、一般式(4):
Ar2-M (4)
(式中、Arは上記に同じであり、Mはアルカリ金属、一価の銅、又は基:-MgYを示す)
で表される化合物を直接反応させて、一般式(1):
(式中、Ar1は及びAr2は、上記に同じ)
で表されるチオノカルボン酸エステルを得ることができる。しかし、この方法に代えて、一般式(4)で表される化合物の原料となる一般式(5):Ar2-Y2又は一般式(7):Ar2-Y1で表されるハロゲン化物を原料として、連続した反応によって、一般式(1)で表されるチオノカルボン酸エステルを得てもよい。
例えば、一般式(4):Ar2-Mにおいて、Mがアルカリ金属又は一価の銅である場合には、一般式(4):Ar2-Mで表される金属化合物の原料となる一般式(5):Ar2-Y2で表されるハロゲン化物と一般式(6):R-M1で表される有機アルカリ金属化合物とを反応させた後、必要に応じて、得られた生成物を一価の銅化合物と反応させ、その後、引き続き、一般式(3)
(式中、Ar1は、置換基を有することのある芳香環基を示し、Xはハロゲン原子を示す)で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物を添加して反応させる方法によって、一般式(1):
(式中、Ar1は及びAr2は、上記に同じ)
で表されるチオノカルボン酸エステルを得ることができる。
また、一般式(4)Ar2-Mにおいて、Mが基:-MgY1である場合には、一般式(4’’’):Ar2-MgY1で表されるグリニャール化合物の原料となる一般式(7):Ar2-Y1で表されるハロゲン化物とマグネシウム化合物とを反応させた後、反応生成物を一般式(3):
(式中、Ar1及びXは上記に同じ)
で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物と反応させる方法によっても、一般式(1):
(式中、Ar1は及びAr2は、上記に同じ)
で表されるチオノカルボン酸エステルを得ることができる。
これらの方法では、中間生成物である一般式(4’):Ar2-M1で表されるアルカリ金属化合物、一般式(4’’):Ar2-Cuで表される銅化合物、一般式(4’’’):Ar2-MgYで表されるグリニャール化合物等を分離することなく、連続した方法で目的とする一般式(1)で表されるチオノカルボン酸エステルを収率よく得ることができる。この方法における各反応工程における反応条件は、前述した各反応工程毎の反応条件と同様とすればよい。
上記した方法で得られたチオノカルボン酸エステルは、必要に応じて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶などの公知の方法によって精製して回収することができる。
上記した方法で得られる一般式(1)のチオノカルボン酸エステルは、更に、前述したフッ素化剤XF(特に好ましくは、五フッ化ヨウ素(IF5))をフッ素化剤とするフッ素化反応工程に供することによって、分離の困難な不純物を殆ど生じることなく、高収率で、一般式(2)で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物とすることができる。
従って、チオノカルボン酸エステルの製造工程と、フッ素化剤XF(特に好ましくは、五フッ化ヨウ素(IF5))をフッ素化剤とするフッ素化反応工程を組み合わせて実施することによって、比較的安全性の高い原料を用いて、工業的に有利な方法によって、高収率でオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物を得ることが可能となる。
上記した方法で得られる一般式(2):
Ar2−Z−Ar1 (2)
(式中、Ar1、Ar2、及びZは上記に同じである。)で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物は、液晶材料、医薬品、これらの中間体等として有用な化合物である。
また、一般式(2)において、Ar1又はAr2が、ボロン酸化合物に対して反応性を有する基若しくは原子、又はボロン酸基を置換基として有する基である場合には、更に、一般式(2)の化合物を、ボロン酸化合物、又はボロン酸化合物に対して反応性を有する基若しくは原子を有する化合物と反応させることによって、カップリング反応が生じて、上記一般式(2)の化合物に、更に、置換基を有することのある芳香環基等のその他の基を導入することができる。この方法で得られる化合物は、例えば、液晶材料等として有用な各種の化合物である。以下、この反応について具体的に説明する。
(III)カップリング反応工程
この反応工程では、原料としては、チオノカルボン酸エステルのフッ素化反応工程で得られた一般式(2)で表される化合物の内で、Ar1及びAr2の一方が、ボロン酸化合物に対して反応性を有する基若しくは原子を置換基として有する基、又はボロン酸基を置換基として有する基である化合物を用いる。以下、この反応工程で用いる原料について説明する。
(i)オキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物
原料として用いるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物としては、一般式(2−1):
Ar−Z−Ar (2−1)
で表される化合物を用いることができる。上記一般式(2−1)において、Zは、基:−CF2−O−である。Ar及びAr4は、一方が、ボロン酸化合物に対して反応性を有する基若しくは原子を置換基として有する基、又はボロン酸基を置換基として有する基であり、他方が、置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基である。
これらの基の内で、ボロン酸化合物に対して反応性を有する基若しくは原子を置換基として有する基としては、一般式(2)におけるAr1及びAr2で表される基の内で、ボロン酸化合物に対して反応性を有する基若しくは原子を置換基として有する、芳香環基、シクロアルキル基又はアルキル基であればよい。ボロン酸化合物に対して反応性を有する基若しくは原子の具体例としては、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を例示できる。
ボロン酸基を置換基として有する基としては、一般式(2)におけるAr1及びAr2で表される基の内で、下記式(a)
で表されるボロン酸基を置換基として有する、芳香環基、シクロアルキル基又はアルキル基であればよい。
尚、置換基としてボロン酸基を有する化合物を原料とする場合には、一部が脱水縮合した状態となる場合があるが、本発明は、この様な縮合体の状態の化合物も原料として用いることができる。
上記したボロン酸化合物に対して反応性を有する基若しくは原子と、ボロン酸基は、それぞれ、芳香環基、シクロアルキル基又はアルキル基に直接置換する他、これらの基に対する置換基に更に結合していてもよい。
Ar及びAr4の内のもう一方の基である、置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基としては、一般式(2)におけるAr又はAr2で表される基の内で、ボロン酸化合物に対して反応性を有する基若しくは原子、及びボロン酸基をいずれも置換基として有さない基であればよい。
上記した一般式(2−1)で表される化合物としては、Ar及びAr4の一方が、ボロン酸化合物に対して反応性を有する基若しくは原子を置換基として有する基である化合物が好ましく、特に、Arがボロン酸化合物に対して反応性を有する基若しくは原子を置換基として有する基である化合物が好ましい。
上記した一般式(2−1)で表される化合物は、一般式(1)で表される化合物の内で、Ar2がArであり、Ar1がAr4である化合物、即ち、一般式(1−1):
(式中、Ar及びAr4は上記に同じ)
で表されるチオノカルボン酸エステルを原料として、前述した方法と同様にして、フッ素化剤XF(特に好ましくは、五フッ化ヨウ素)でフッ素化することによって得ることができる。更に、上記した一般式(1−1)で表されるチオノカルボン酸エステルは、一般式(4)で表される化合物の内で、Ar2がAr3である、一般式(4−1):
Ar-M (4−1)
(式中、Arは上記に同じであり、Mはアルカリ金属、一価の銅、又は基:-MgY1を示す)
で表される化合物を原料として、前述した方法と同様にして、一般式(3―1):
(式中、Ar4は上記に同じであり、Xはハロゲン原子を示す)
で表されるハロゲン化チオカルボン酸化合物と反応させることによって得ることができる。
上記一般式(2−1)で表される化合物の具体例としては、下記一般式(2a):
で表される化合物を例示できる。
一般式(2a)において、Zは、基:−CF2−O−である。L1〜L8は、同一又は相異なって、それぞれ、水素原子、フッ素原子、又は低級アルキル基を示す。これらの基の内で、低級アルキル基としては、上記したAr1及びAr2おける低級アルキル基と同様の基を例示できる。
A1は、水素原子、フッ素原子、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基 又はSF5を示す。これらの内で、アルコキシ基としては、上記したAr1及びAr2におけるフルオロアルキル基と同様の基を例示できる。フルオロアルキル基としては、上記したAr1及びAr2におけるフルオロアルキル基と同様の基を例示でき、CF3が好ましい。フルオロアルコキシ基としても、上記したAr1及びAr2におけるフルオロアルキコキシ基と同様の基を例示でき、-OCF3が好ましい。
A3は、フッ素以外のハロゲン原子、又は置換基としてフッ素以外のハロゲン原子を有する低級アルキル基、シクロアルキル基、若しくはフェニル基を示す。
上記一般式(2a)において、各ベンゼン環におけるL1〜LとA1の置換位置と、L〜LとA3の置換位置は、それぞれ、一般式(2a)に記載した位置に限定されず任意である。
上記一般式(2a)において、一般式(2−1)におけるArに対応する基である下記式
で表される基の具体例は、上記した一般式(I)で表される基の具体例と同様である。
また、一般式(2a)において、一般式(2−1)におけるArに対応する基である下記式
で表される基の具体例としては、4−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−ヨードフェニル基、4−クロロ−2−フルオロフェニル基、4−ブロモ−2−フルオロフェニル基、4−ヨード−2−フルオロフェニル基、4−クロロ−2,6−ジフルオロフェニル基、4−ブロモ−2,6−ジフルオロフェニル基、4−ヨード−2,6−ジフルオロフェニル基、4’−クロロビフェニル基、4’−ブロモビフェニル基、4’−ヨードビフェニル基、4’−クロロ−3−フルオロビフェニル基、4’−ブロモ−3−フルオロビフェニル基、4’−ヨード−3−フルオロビフェニル基、4’−クロロ−3,5−ジフルオロビフェニル基、4’−ブロモ−3,5−ジフルオロビフェニル基、4’−ヨード−3,5−ジフルオロビフェニル基などを例示できる。
上記一般式(2a)で表される化合物は、後述する一般式(8)で表される化合物の内で、ボロン酸化合物に対して、反応性を有する原子又は基を有する化合物であり、後述する条件に従ってボロン酸化合物と反応させることにより、カップリング反応が生じてボロン酸化合物に含まれる芳香環基やその他の基を導入することができる。
上記一般式(2a)で表される化合物は、下記一般式(1a):
で表されるアリールチオノカルボン酸アリールエステルを原料として、これをフッ素化剤XF(特に好ましくは、五フッ化ヨウ素(IF5))でフッ素化する方法によって得ることができる。上記一般式(1a)におけるL1〜L8は、A1及びAは上記に同じである。一般式(1a)の化合物と五フッ化ヨウ素との反応条件については、前述した一般式(1)のチオノカルボン酸エステルと五フッ化ヨウ素との反応と同様である。
また、一般式(1a)で表されるアリールチオノカルボン酸アリールエステルについては、一般式(3a):
(式中、L〜L、及びAは上記に同じであり、Xはハロゲン原子である)で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物を、一般式(4a):
(式中、L〜L、及びAは上記に同じであり、Mはアルカリ金属、一価の銅、又は基:-MgY1(Yはハロゲン原子である)を示す)
で表されるアリール化合物と反応させることによって得ることができる。
一般式(3a)におけるXで表されるハロゲン原子は、一般式(3)と同様であり、一般式(4a)におけるMは一般式(4)と同様である。
一般式(3a)で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物と一般式(4a)で表されるアリール化合物との反応は、一般式(3)でハロゲン化チオカルボニル化合物と一般式(4)で表される化合物との反応と同様の方法で行うことができる。
一般式(4a)で表されるアリール化合物の内で、Mがアルカリ金属であるアリール化合物、即ち、一般式(4a’):
(式中、L〜L、及びAは上記に同じであり、Mはアルカリ金属である)
で表されるアリール化アルカリ金属化合物は、一般式(5a):
(式中、L〜L、及びAは上記に同じであり、Y2はF以外のハロゲン原子又は水素原子である。)
で表されるハロゲン化アリール化合物と一般式(6):R-M1(式中、Rはアルキル基又はフェニル基であり、M1はアルカリ金属である)で表される有機アルカリ金属化合物とを反応させることによって得ることができる。一般式(5a)におけるY2は、上記一般式(5)におけるY2と同様である。
一般式(5a)で表されるハロゲン化アリール化合物と一般式(6)で表される有機アルカリ金属化合物との反応は、一般式(5)でハロゲン化物と一般式(6)で表される有機アルカリ金属化合物との反応と同様の方法で行うことができる。
更に、一般式(4a)で表されるアリール化合物の内で、Mが一価の銅であるアリール化合物、即ち、一般式(4a’’):
(式中、L〜L、及びAは上記に同じである。)
で表されるアリール化銅合物は、一般式(4a’):
(式中、L〜L、A、及びMは上記に同じである。)で表されるアリール化アルカリ金属化合物と一価の銅化合物とを反応させることによって得ることができる。
一般式(4a’)で表されるアリール化アルカリ金属化合物と一価の銅化合物との反応は、上記した一般式(4’):Ar2-M1で表されるアリール化アルカリ金属化合物と一価の銅化合物との反応と同様の方法で行うことができる。
上記一般式(4a)において、Mが基:-MgY1であるアリール化合物、即ち、一般式(4a’’’):
(式中、L〜L、及びAは上記に同じであり、Y1はハロゲン原子である)
で表されるアリール化グリニャール化合物は、一般式(7a):
(式中、A、L〜L、及びYは上記に同じである。)
で表されるハロゲン化アリール化合物とマグネシウム化合物とを反応させることによって得ることができる。
一般式(7a)で表されるハロゲン化アリール化合物とマグネシウム化合物との反応は、一般式(7):Ar2-Y1で表されるハロゲン化物とマグネシウム化合物との反応と同様の方法で行うことができる。
(ii)一般式(8)の化合物
上記一般式(2−1):
Ar−Z−Ar (2−1)
で表される化合物とカップリング反応を行う化合物としては、一般式(8):
Ar−D (8)
で表される化合物を用いる。一般式(8)において、Dは、一般式(2―1)で表される化合物が、ボロン酸化合物に対して反応性を有する基若しくは原子を有する化合物である場合にはボロン酸基を示し、一般式(2―1)で表される化合物がボロン酸基を有する化合物である場合には、ボロン酸化合物に対して反応性を有する基を示す。
これらの内で、ボロン酸基は、上記した式(a)
で表される基と同様の基を例示できる。
上記一般式(8)において、Dがボロン酸化合物に対して反応性を有する基又は原子である場合には、その具体例としては、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を挙げることができる。
一般式(8)で表される化合物の内で、ボロン酸基を有する化合物は、式(a)で表される基を有することによって、ボロン酸、ボロン酸エステル、又はボロン酸塩となる。
一般式(8)において、Ar5で表される基は、置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基である。置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、及び置換基を有することのあるアルキル基における芳香環基、シクロアルキル基及びアルキル基としては、それぞれ上記した一般式(1)におけるAr1及びAr2で表される基と同様の基を例示できる。これらの各基に対する置換基としては、一般式(2−1)で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物との反応に対して不活性な基であれば特に限定はない。この様な置換基の具体例としては、フッ素原子、アルキル基、置換基を有することがあり、ヘテロ原子を含むことのある環状脂肪族炭化水素基、又は置換基を有することのあるフェニル基を挙げることができる。これらの各基は、一般式(2−1)で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物との反応に対して不活性な基であり、反応には殆ど関与しない基である。
上記した置換基としてのアルキル基の具体例は、前述したAr1及びAr2おけるアルキル基と同様である。また、置換基を有することがあり、ヘテロ原子を含むことのある環状脂肪族炭化水素基としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロブチル基等の炭素数4〜6のシクロアルキル基、これらのシクロアルキル基の炭素原子の一個又は二個以上が酸素原子等のヘテロ原子に置き換わったヘテロ環状炭化水素基などの4〜6員環の環状脂肪族炭化水素基を例示できる。環状脂肪族炭化水素基及びフェニル基に置換し得る基としては、フッ素原子、低級アルキル基などを例示できる。この場合、環状脂肪族炭化水素基及びフェニル基に対する置換基としての低級アルキル基としても、上記した低級アルキル基と同様の基を例示できる。これらの置換基は、環状脂肪族炭化水素基及びフェニル基のそれぞれに対して、任意の位置に一個又は二個以上結合することができる。
上記一般式(8)で表される化合物の内で、ボロン酸化合物は、該ボロン酸化合物が脱水縮合した化合物、例えば、環状三量体としても用いることができる。該環状三量体は、ボロキシン化合物と称されるものであり、下記化学式で表されるものである。
上記した一般式(8)で表される化合物の内で、ボロン酸化合物の具体例としては、一般式(8a):
で表される化合物を挙げることができる。
上記一般式(8a)において、L〜L12は、同一又は相異なって、それぞれ、水素原子、又はフッ素原子を示す。Aは、水素原子、フッ素原子、低級アルキル基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるフェニル基を示す。D’は、上記一般式(8)におけるDの内で、ボロン酸基を示す。
上記一般式(8a)における低級アルキル基は、一般式(8)における置換基としてのアルキル基と同様の基を例示できる。一般式(8a)における置換基を有することのあるシクロアルキル基、及び置換基を有することのあるフェニル基としても、一般式(8)における置換基として示された基と同様の基を例示できる。
尚、上記一般式(8a)におけるベンゼン環の置換基である、L〜L12及びAの置換位置は、上記一般式(8a)に示す位置に限定されず、ベンゼン環の任意の位置に置換することができる。上記一般式(8a)で表されるボロン酸化合物としては、特にAがD’に対してパラ位に置換している化合物が好ましい。
上記一般式(8a)で表されるボロン酸化合物の具体例として、フェニルボロン酸、4−フルオロフェニルボロン酸、4−メチルフェニルボロン酸、4−エチルフェニルボロン酸、4―プロピルフェニルボロン酸、4−ブチルフェニルボロン酸、4―フェニルフェニルボロン酸、4−ヘキシルフェニルボロン酸、4−シクロヘキシルボロン酸、2―フルオロ−4−プロピルフェニルボロン酸、3−フルオロ−4−プロピルフェニルボロン酸、2,3−ジフルオロ−4−プロピルフェニルボロン酸、4−(4−フルオロシクロヘキシル)-フェニルボロン酸、4−(4−プロピルシクロヘキシル)フェニルボロン酸、4’−メチルビフェニルボロン酸、4’−エチルビフェニルボロン酸、4’−プロピルビフェニルボロン酸、4’−ブチルビフェニルボロン酸、4’−フェニルビフェニルボロン酸、4’−ヘキシルビフェニルボロン酸、2―フルオロ−4’−プロピルビフェニルボロン酸、3−フルオロ−4’−プロピルビフェニルボロン酸、2−フルオロ−4’−ペンチルビフェニルボロン酸、3−フルオロ−4’−ペンチルビフェニルボロン酸等を例示できる。
上記一般式(8a)で表されるボロン酸化合物が脱水縮合した環状三量体は、下記化学式で表されるものである。
(iii)反応方法
本発明では、上記した一般式(2−1):
Ar−Z−Ar (2−1)
(式中Ar及びArは上記に同じ)で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物と、一般式(8):
Ar−D (8)
(式中Ar及びDは上記に同じ)で表される化合物とを反応させることによって、カップリング反応が生じて、下記一般式(9―1):
Ar−Ar−Z−Ar (9―1)
(式中、Ar及びZは上記に同じであり、Arは、置換基を有することのある二価の炭化水素基であり、Arは、置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基である。)で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物、又は下記一般式(9−2):
Ar−Z−Ar9−Ar5 (9―2)
(式中、Ar及びZは上記に同じであり、Arは、置換基を有することのある二価の炭化水素基であり、Arは、置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基である。)で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物が得られる。
上記一般式(9―1)及び(9−2)において、Ar及びArで表される置換基を有することのある二価の炭化水素基は、一般式(2−1)において、Ar又はAで表される基の内で、ボロン酸化合物に対して反応性を有する基若しくは原子を有する基、又はボロン酸基を有する基から、当該反応性を有する基若しくは原子、又はボロン酸基が脱離した二価の基であり、具体的には、置換基を有することのあるアリーレン基、置換基を有することのあるシクロアルキレン基又は置換基を有することのあるアルキレン基である。また、Ar及びArで表される基は、それぞれ一般式(2−1)において、Ar又はAで表される基の内で、置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基に対応する基である。
この反応により、高価な添加剤などを用いることなく、比較的安価な原料を用いて、高収率でオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物を得ることができる。
上記反応では、一般式(8)で表される化合物の使用量は、一般式(2−1)で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物1モルに対して、0.5〜2.0モル程度とすることが好ましく、0.8〜1.2モル程度とすることがより好ましい。
上記反応は、必要に応じて溶媒を用いて行うことができる。溶媒としては、芳香族化合物、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、脂肪族エーテル化合物、環状エーテル化合物、非プロトン性極性溶媒、プロトン溶媒を使用することが望ましい。これらの内で、芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン等を例示でき、脂肪族炭化水素としては、ヘキサン、ヘプタン等を例示でき、脂環式炭化水素としては、シクロヘキサン等を例示でき、脂肪族エーテル化合物としては、ジエチルエーテル、DMG、メチル−tert−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等を例示でき、環状エーテル化合物としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等を例示できる。非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド(DMAc)等を例示できる。これらの溶媒は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
溶媒の使用量については、特に限定的ではないが、通常、一般式(2−1)で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物に対して、0〜20倍質量程度とすればよい。
反応温度についても特に限定的ではないが、通常、10℃〜200℃の範囲が好ましい。
上記したカップリング反応は、塩基性条件化で行うことが好ましい。塩基としては、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルコキサイドが好ましい。塩基の使用量は、一般式(8)で表されるボロン酸化合物、及び該ボロン酸化合物が脱水縮合した環状3量体からなる群から選ばれた少なくとも一種の芳香族ボロン酸化合物1モルに対して、0.8〜4モル程度とすることが好ましい。
上記したカップリング反応は、触媒の存在下に実施することが好ましい。触媒としては、遷移金属原子単体もしくはそれらを含むものが好ましい。特に、ニッケル、パラジウム、は白金等の金属単体、これらのうち少なくとも一つを含む合金などが好ましい。また、これらの金属を活性炭に担持させて用いても良い。 触媒の使用量は、一般式(8)で表されるボロン酸化合物、及び該ボロン酸化合物が脱水縮合した環状3量体からなる群から選ばれた少なくとも一種の芳香族ボロン酸化合物1モルに対して、0.0005〜0.2モル程度とすることが好ましい。
この反応により、一般式(2−1)で表される化合物から、高収率で、下記一般式(9―1):
Ar−Ar−Z−Ar (9―1)
(式中、Ar、Ar、Ar及びZは上記に同じである。)
で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物、又は下記一般式(9−2):
Ar−Z−Ar9−Ar5 (9―2)
(式中、Ar、Ar、Ar及びZは上記に同じである。)
で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物を得ることができる。
本発明では、特に、一般式(2−1)において、Ar3が、ボロン酸化合物に対して反応性を有する基若しくは原子を置換基として有する基、又はボロン酸基を置換基として有する基である化合物を原料として得られる、一般式(9−1)の化合物が好ましい。
上記反応において、原料として、
一般式(2a):
(式中、Z、L1〜L8、A1及びAは上記に同じである。)
で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有するアリール化合物、及び
一般式(8a):
(式中、Z、L9〜L12、A及びD’は上記に同じである。)
で表されるボロン酸化合物、及び該ボロン酸化合物が脱水縮合した環状三量体からなる群から選ばれた少なくとも一種の芳香族ボロン酸化合物を、
用いる場合には、下記一般式(9a):
(式中、Z、L〜L12、A、及びAは上記に同じである。)
で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有するビアリール化合物を高収率で得ることができる。
尚、上記一般式(2a)で表される化合物の内で、Aがハロゲン原子(Br、Cl、I)である化合物については、ハロゲン原子をボロン酸化合物に変換することによって、ボロン酸基を置換基として有する化合物に変換することができる。この化合物は、例えば、一般式(8)において、Dがボロン酸化合物に対して反応性を有する基若しくは原子である化合物と反応させることによって、対応する一般式(9−1):Ar−Ar−Z−Ar で表される化合物に変換することができる。
上記した方法で得られるオキシジフルオロメチレン骨格を有するビアリール化合物は、必要に応じて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶などの公知の方法によって精製して回収することができる。
本発明によれば、チオノカルボン酸エステルを原料として用い、これを五フッ化ヨウ素と反応させる方法によって、分離の困難な不純物の生成を抑制して、高純度のオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物を収率良く得ることができる。
更に、この方法で用いるチオノカルボン酸エステルは、ハロゲン化チオカルボニル化合物と特定の化合物を反応させる方法によって、比較的安全な原料を用いて、穏和な反応条件で、収率よく得ることができる。このため、この反応を上記した五フッ化ヨウ素によるフッ素化反応と組み合わせることによって、安全性の高い原料を用いて、比較的簡単な反応及び精製工程によって、高収率でオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物を製造することができる。
更に、上記方法で得られるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物には、特定のボロン酸化合物、又はボロン酸化合物に対して反応性を有する基を有する化合物と反応させることによって、芳香環基等の各種の基を導入することができる。
よって、上記した反応工程を適宜組み合わせて実施することによって、液晶材料、医薬、これらの中間体などとして有用な各種のオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物を、比較的安価で安全な原料を用いて、簡便な工程によって、高純度の化合物を高い収率で得ることが可能となる。
以下、実施例及び参考例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
フッ素樹脂容器に3,5-ジフルオロ-4'-プロピルビフェニル-4-チオノカルボン酸3,4,5-トリフルオロフェニルエステル (1.65 g, 3.9 mmol)を入れ、酢酸エチル(10mL)を加え、さらに五フッ化ヨウ素(IF5) (0.86 g, 3.9 mmol)、及びトリエチルアミン・3フッ酸塩(NEt3-3HF) (0.62 g, 3.9 mmol)を加え65℃で6時間撹拌した。
アルカリで反応を停止し、有機層を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび再結晶にて精製を行い、白色固体の4-[ジフルオロ-(3,4,5-トリフルオロフェノキシ)-メチル]- 3,5-ジフルオロ-4'-プロピルビフェニル (1.50 g, 3.5 mmol)を得た。単離収率は90%、純度は99.88%であった。
あった。
1H-NMR (CDCl3) δ 7.47 (d, 2H, Ar), 7.28 (d, 2H, Ar), 7.20 (d, 2H, Ar), 6.99 (m, 2H, Ar), 2.64 (t, 2H, benzyl), 1.68 (m, 2H, CH2), 0.97 (m, 3H, CH3). 19F-NMR (CDCl3) δ -58.85(t, 2F, CF2O), -105.89 (m, 2F, Ar), -127.77 (m, 2F, Ar), -158.50 (m, 1F, Ar)。
実施例2
原料を3,5-ジフルオロ-4'-ペンチルビフェニル-4-チオノカルボン酸3,4,5-トリフルオロフェニルエステルとした以外は、実施例1と同様にして、反応及び精製を行い、白色固体の4-[ジフルオロ-(3,4,5-トリフルオロフェノキシ)-メチル]- 3,5-ジフルオロ-4'-ペンチルビフェニルを得た。単離収率は89%、純度は99.90%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ 7.50 (d, 2H, Ar), 7.28 (d, 2H, Ar), 7.21 (d, 2H, Ar), 6.94 (m, 2H, Ar), 2.60 (t, 2H, benzyl), 1.71 (m, 2H, CH2), 1.40 (m, 2H, CH2), 1.30 (m, 2H, CH2), 0.90 (t, 3H, CH3). 19F-NMR (CDCl3) δ -58.88(t, 2F, CF2O), -105.90 (m, 2F, Ar), -127.77 (m, 2F, Ar), -158.49 (m, 1F, Ar)。
実施例3
(i)アリールチオノカルボン酸アリールエステルの製造工程
200 mL三つ口フラスコを窒素置換し、1-ブロモ-3,5-ジフルオロベンゼン (10.0 g, 51.8 mmol)とテトラヒドロフラン(THF) (9 mL)を加えた。-78℃に冷却し、リチウムジイソプロピルアミド (THF/ヘプタン/エチルベンゼン溶液, 34.5 mL, 51.8 mmol)を加え、さらにCuCl (5.13 g, 51.8 mmol)を加えて1時間撹拌した。次いで、3,4,5-トリフルオロフェニル-クロロチオホルメート (11.7 g, 51.8 mmol)を加え1時間撹拌し、反応を終了させた。
反応液をトルエン/塩酸水で抽出し、有機層を減圧留去した。得られた固体を再結晶にて精製し、黄色固体の4-ブロモ-2,6-ジフルオロ-チオノ安息香酸3,4,5-トリフルオロフェニルエステル (16.5 g, 43.0mmol) を得た。単離収率は83%であった。
1H-NMR(CDCl3)δ 7.22(m, 2H, Ar), 6.85(m, 2H, Ar). 19F-NMR (CDCl3) δ-111.52 (d, 2F, Ar), -132.73 (m, 2F, Ar), -162.50 (m, 1F, Ar)。
(ii)アリールチオノカルボン酸アリールエステルのフッ素化工程
上記工程(i)で得た4-ブロモ-2,6-ジフルオロチオノ安息香酸3,4,5-トリフルオロフェニルエステル (10 g, 26.1 mmol)とアセトニトリル(15 mL)をフッ素樹脂容器に加え、さらに五フッ化ヨウ素(IF5) (5.79 g, 26.1 mmol)、及びトリエチルアミン・3フッ酸塩(NEt3-3HF )(4.20 g, 26.1 mmol)を加え65℃で4時間撹拌した。
この後は実施例1と同様に精製を行い、白色固体の4-[ジフルオロ-(3,4,5-トリフルオロフェノキシ)-メチル]-1-ブロモ-3,5-ジフルオロベンゼン (8.92 g, 22.9 mmol)を得た。単離収率は88%、純度は99.82%であった。
1H-NMR(CDCl3)δ 7.19(m, 2H, Ar), 6.94(m, 2H, Ar). 19F-NMR (CDCl3) δ -62.98 (t, 2F, CF2O), -109.82 (m, 2F, Ar), -133.23 (m, 2F, Ar), -163.75 (m, 1F, Ar)。
(iii)カップリング反応工程
200mL三口フラスコに、上記工程(ii)で得た4-[ジフルオロ-(3,4,5-トリフルオロ-フェノキシ)-メチル]-1-ブロモ-3,5-ジフルオロベンゼン (10.0 g, 25.7 mmol)、4−プロピルフェニルボロン酸 (4.63 g, 28.3 mmol)、K2CO3 (8.51 g, 61.7 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (148mg, 0.129 mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル (53.6 mg, 0.129 mmol)を順に入れて系内を窒素置換した後、脱気したDMAc(10 mL)と脱気した水(30 mL)を加え、反応液温度85℃で5時間攪拌した。得られた粗体をトルエンで抽出し、有機相をNaHCO3水溶液、水で洗浄した後、濃縮した。得られた粗体をシリカクロマトグラフィーおよび再結晶により精製し、白色固体の4-[ジフルオロ-(3,4,5-トリフルオロフェノキシ)-メチル]- 3,5-ジフルオロ-4'-プロピルビフェニル (9.03g, 21.1 mmol) を得た。以下の各種スペクトルデータの測定結果は該当化合物の構造を強く支持するものであった。
1H-NMR (CDCl3) δ 7.47 (d, 2H, Ar), 7.28 (d, 2H, Ar), 7.20 (d, 2H, Ar), 6.99 (m, 2H, Ar), 2.64 (t, 2H, benzyl), 1.68 (m, 2H, CH2), 0.97 (m, 3H, CH3). 19F-NMR (CDCl3) δ -58.85(t, 2F, CF2O), -105.89 (m, 2F, Ar), -127.77 (m, 2F, Ar), -158.50 (m, 1F, Ar)。
実施例3−2
反応器に、4-[ジフルオロ-(3,4,5-トリフルオロ-フェノキシ)-メチル]-3,5-ジフルオロフェニルボロン酸 (5.0 g, 14.1 mmol)、1−ブロモ-4-プロピルベンゼン (2.55g, 12.8 mmol)、K2CO3 (4.25 g, 30.7 mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB) (412 mg, 1.28mmol)、ビス(ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)ジクロロパラジウム(II) (9.1mg, 0.0128 mmol)を順に入れて系内を窒素置換した後、脱気したDMAc(3.8 mL)と脱気した水(11.3mL)を加え、反応液温度85℃で4時間攪拌した。得られた粗体を精製し、白色固体の4-[ジフルオロ-(3,4,5-トリフルオロフェノキシ)-メチル]- 3,5-ジフルオロ-4'-プロピルビフェニル (4.84g, 11.3 mmol)を得た。単離収率は88.3%であった。以下の各種スペクトルデータの測定結果は該当化合物の構造を支持するものであった。
1H-NMR (CDCl3) δ 7.47 (d, 2H, Ar), 7.28 (d, 2H, Ar), 7.20 (d, 2H, Ar), 6.99 (m, 2H, Ar), 2.64 (t, 2H, benzyl), 1.68 (m, 2H, CH2), 0.97 (m, 3H, CH3). 19F-NMR (CDCl3) δ -58.85(t, 2F, CF2O), -105.89 (m, 2F, Ar), -127.77 (m, 2F, Ar), -158.50 (m, 1F, Ar)。
実施例4
(i)アリールチオノカルボン酸アリールエステルの製造工程
窒素置換した200mL三つ口フラスコに金属マグネシウム (0.95 g, 39.2 mmol),とTHF(10 mL)を入れ、さらに少量のヨウ素を加え撹拌した。p−ブロモクロロベンゼン(5.00 g, 26.1 mmol) を室温で加えた後緩やかに撹拌した。還流下8時間撹拌した後、室温に冷却し4−クロロフェニルマグネシウムブロマイド(グリニャール試薬)のTHF溶液を得た。次いで、3,4,5−トリフルオロフェニル-クロロチオホルメート (5.92 g, 26.1 mmol)を加え1時間撹拌し、反応を終了させた。
この後は実施例3と同様に精製し、黄色固体の4−クロロチオノ安息香酸―3,4,5−トリフルオロフェニルエステル(6.72 g, 22.2 mol)を得た。単離収率は85%だった。
1H-NMR (CDCl3) δ8.07 (m, 2H, Ar), 7.51 (m, 2H, Ar), 7.17 (m, 2H, Ar). 19F NMR (CDCl3) δ -132.85 (Ar, 2F), -162.58 (Ar, 1F)。
(ii)アリールチオノカルボン酸アリールエステルのフッ素化工程
上記工程で得られた4-クロロチオノ安息香酸3,4,5-トリフルオロフェニルエステルを用いる以外は、実施例3のアリールチオノカルボン酸アリールエステルのフッ素化工程と同様にして、反応及び精製を行った。
その結果、白色固体の4-[ジフルオロ-(3,4,5-トリフルオロフェノキシ)-メチル]-1-クロロベンゼンが得られた。単離収率は92%、純度は99.86%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ7.42 (m, 2H, Ar), 7.39 (m, 2H, Ar), 6.96 (m, 2H, Ar). 19F-NMR (CDCl3) δ-62.03 (d, 2F, CF2O), -134.49 (m, 2F, Ar), -163.56 (m, 1F, Ar)。
(iii)カップリング反応工程
200mLsus製のオートクレーブに、上記工程(ii)で得られた4-[ジフルオロ-(3,4,5-トリフルオロフェノキシ)-メチル]-(10.0 g, 32.4 mmol)、4-(4-プロピルシクロヘキシル)フェニルボロン酸(4 (8.37 g, 34.0 mmol)、K2CO3 (13.43 g, 97.2 mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB) (522 mg, 1.62mmol)、ビス(ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)ジクロロパラジウム(II) (22.9mg, 0.0324 mmol)を順に入れて系内を窒素置換した後、脱気したDMAc(10 mL)と脱気した水(30 mL)を加え、反応液温度98℃で5時間攪拌した。この後は実施例3の工程(iii)と同様に精製し、白色固体の4-[ジフルオロ-(3,4,5-トリフルオロフェノキシ)-メチル]- 3,5,2'-トリフルオロ-4'-(4-プロピルシクロヘキシル)ビフェニル (13.2g, 27.9 mmol) を得た。単離収率は86%であった。以下の各種スペクトルデータの測定結果は該当化合物の構造を強く支持するものであった。
1H-NMR (CDCl3) δ7.54 (m, 2H, Ar), 7.46 (m, 2H, Ar), 7.42 (m, 2H, Ar), 7.39 (d, 2H, Ar), 6.88 (d, 2H, Ar), 6.99 (m, 2H, Ar), 2.69 (m, 1H, Cy), 1.79 (m, 2H, Cy), 1.84 (m, 1H, Cy), 1.31 (m, 2H, Cy), 1.27 (t, 2H, CH2), 1.15 (m, 2H, CH2), 0.88 (m, 3H, CH3). 19F-NMR (CDCl3) δ-63.00 (t, 2F, CF2O), -132.70 (d, 2F, Ar), -164.40 (t, 1F, Ar)。
実施例5
(i)アリールチオノカルボン酸アリールエステルの製造工程
200 mL三つ口フラスコを窒素置換し、1-クロロ-3,5-ジフルオロベンゼン (10.0 g, 67.3 mmol)とテトラヒドロフラン(THF) (9 mL)を加えた。-78℃に冷却し、n-ブチルリチウムヘプタン溶液 (46.0 mL, 69.0 mmol)を加え、さらにCuCl (6.66 g, 67.3 mmol)を加えて1時間撹拌した。次いで、3,4,5-トリフルオロフェニル-クロロチオホルメート (15.2 g, 67.3 mmol)を加え1時間撹拌し、反応を終了させた。
この後は実施例3の工程(i)と同様に精製し、黄色固体の4-クロロ-2,6-ジフルオロ-チオノ安息香酸3,4,5-トリフルオロフェニルエステル (20.0 g, 59.2 mmol) を得た。単離収率は88%であった。
1H-NMR(CDCl3)δ7.06 (d, 2H, Ar), 6.85 (m, 2H, Ar). 19F-NMR (CDCl3) δ-111.32 (d, 2F, Ar), -132.73 (m, 2F, Ar), -162.50 (m, 1F, Ar)。
(ii)アリールチオノカルボン酸アリールエステルのフッ素化工程
上記工程(i)で得た4-クロロ-2,6-ジフルオロチオノ安息香酸3,4,5-トリフルオロフェニルエステルを用いる以外は、実施例3の工程(ii)と同様にして、反応及び精製を行った。
その結果、白色固体の4-[ジフルオロ-(3,4,5-トリフルオロフェノキシ)-メチル]-1-クロロ-3,5-ジフルオロベンゼンを得た。単離収率は90%、純度は99.85%であった。
1H-NMR(CDCl3)δ7.05 (d, 2H, Ar), 6.96 (m, 2H, Ar). 19F NMR (CDCl3): δ-62.94 (t, 2F, CF2O), -109.74 (m, 2F, Ar), -133.30 (m, 2F, Ar), -163.88 (m, 2F, Ar)。
(iii)カップリング反応工程
200mL三口フラスコに、上記工程(ii)で得た4-[ジフルオロ-(3,4,5-トリフルオロフェノキシ)-メチル]-1-クロロ-3,5-ジフルオロベンゼン (10.1 g, 29.3 mmol)、4−プロピルフェニルボロン酸 (5.01 g, 30.8 mmol)、K2CO3 (12.1 g, 87.9 mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB) (472 mg, 1.47mmol)、ビス(ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)ジクロロパラジウム(II) (20.7mg, 0.0293 mmol)を順に入れて系内を窒素置換した後、脱気した水(40 mL)を加え、反応液温度90℃で3時間攪拌した。この後は実施例3の工程(iii)と同様に精製し、白色固体(11.0g, 25.6 mmol) を得た。以下の各種スペクトルデータの測定結果は実施例3と全く同じ測定結果であり、該当化合物の構造を強く支持するものであった。
1H-NMR (CDCl3) δ 7.47 (d, 2H, Ar), 7.28 (d, 2H, Ar), 7.20 (d, 2H, Ar), 6.99 (m, 2H, Ar), 2.64 (t, 2H, benzyl), 1.68 (m, 2H, CH2), 0.97 (m, 3H, CH3). 19F-NMR (CDCl3) δ -58.85(t, 2F, CF2O), -105.89 (m, 2F, Ar), -127.77 (m, 2F, Ar), -158.50 (m, 1F, Ar)。
比較例1 原料として(4−メトキシフェニル)チオ酢酸 O−エチル(2.1 g, 10 mmol)を用い、これをフッ素樹脂容器に入れ、酢酸エチル(8 mL)を加え、さらに五フッ化ヨウ素(IF5) (2.66 g, 12 mmol)、トリエチルアミン・3フッ酸塩(NEt3-3HF)(1.93 g, 12 mmol)を加え室温で2.5h撹拌させた。その後は実施例1と同様の方法で精製を行った。
その結果、1−(2−エトキシ−2,2−ジフルオロエチル)―4−メトキシベンゼンを含む白色固体(1.8 g)が得られたが、生成物には、不純物として、原料化合物のベンジル位にヨウ素が付加した1−(2−エトキシ−2,2−ジフルオロ−1−ヨードエチル)―4−メトキシベンゼンが含まれており、GC純度は95.20%であった。この不純物は、一般的な精製方法では除去が困難であり、液晶用化合物等としての用途には不適切であった。
これに対して、実施例1〜5のフッ素化工程の結果から明らかなように、アリールチオノカルボン酸アリールエステルを原料として五フッ化ヨウ素でフッ素化した場合には、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶という一般的な精製方法によって、不純物がほぼ完全に除去され、非常に高純度の生成物が容易に得られた。

Claims (5)

  1. 一般式(2):
    Ar2−Z−Ar1 (2)
    (式中、
    Ar1 は、置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基を表し、Ar 2 は、置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又はシクロアルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルコキシ基、ハロゲン原子、−SF 5 、及びボロン酸基からなる群より選択される置換基を有することのあるアルキル基を表し、

    及び
    Zは、基:−CF2−O−を表す。)
    で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物の製造方法であって、
    一般式(1):
    (式中、
    Ar1及びAr2は、上記に同じである。)
    で表されるチオノカルボン酸エステルを、式:XF(Xは塩素、臭素、又はヨウ素であり、及びnは1〜5の自然数である。)で表される化合物と反応させることを特徴とする、製造方法。
  2. 更に、前記一般式(1):
    (式中、Ar1及びAr2は上記に同じ)
    で表されるチオノカルボン酸エステルを得る工程として、
    一般式(3):
    (式中、Ar1は上記に同じであり、Xはハロゲン原子を示す)
    で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物を、一般式(4):
    Ar2-M (4)
    (式中、Arは上記に同じであり、Mはアルカリ金属、一価の銅、又は基:-MgY1(Yはハロゲン原子である)である)
    で表される化合物と反応させる工程を含む、請求項1に記載のオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物の製造方法。
  3. 一般式(9―1):
    Ar−Ar−Z−Ar (9―1)
    (式中、Arは置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基であり、Arは、置換基を有することのある二価の炭化水素基であり、Arは、置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基であり、Zは基:−CF2−O−である。)
    で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物、又は
    一般式(9−2):
    Ar−Z−Ar9−Ar5 (9―2)
    (式中、Ar及びZは上記に同じであり、Arは、置換基を有することのある二価の炭化水素基であり、Arは、置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基である。)
    で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物の製造方法であって、
    反応工程(I):
    一般式(1−1):
    (式中、Ar及びAr4は、一方が、ボロン酸化合物に対して反応性を有する基若しくは原子を置換基として有する基、又はボロン酸基を置換基として有する基であり、他方が、置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基である。)
    で表されるチオノカルボン酸エステルを、式:XF(Xは塩素、臭素、又はヨウ素であり、及びnは1〜5の自然数である。)で表される化合物と反応させて、一般式(2−1):
    Ar−Z−Ar (2−1)
    (式中、Ar、Ar、及びZは上記に同じである。)
    で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物を得る工程、及び
    反応工程(II)
    反応工程(I)で得られた一般式(2−1)で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物を、
    一般式(8):
    Ar−D (8)
    (式中、Dは、一般式(2―1)で表される化合物が、ボロン酸化合物に対して反応性を有する基若しくは原子を有する化合物である場合には、ボロン酸基を示し、一般式(2―1)で表される化合物がボロン酸基を有する化合物である場合には、ボロン酸化合物に対して反応性を有する基を示す。Arは、置換基を有することのある芳香環基、置換基を有することのあるシクロアルキル基、又は置換基を有することのあるアルキル基を示す。)で表される化合物と反応させて、上記一般式(9―1)又は一般式(9−2)で表されるオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物を得る工程
    を含む方法。
  4. 更に、前記一般式(1−1):
    (式中、Ar及びAr4は上記に同じ)
    で表されるチオノカルボン酸エステルを得る工程として、
    一般式(3−1):
    (式中、Arは上記に同じであり、Xはハロゲン原子を示す)
    で表されるハロゲン化チオカルボニル化合物と、一般式(4−1):
    Ar-M (4―1)
    (式中、Arは上記に同じであり、Mはアルカリ金属、一価の銅、又は基:-MgY1(Yはハロゲン原子である)である)
    で表される化合物と反応させる工程を含む、請求項3に記載のオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物の製造方法。
  5. ボロン酸基が、下記式(a)
    (式中、M及びMは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、低級アルキル基、又は一価金属原子を示す。或いは、MとMは、互いに結合して、二価の脂肪族炭化水素基を形成し、ホウ素原子と共に環状構造を形成してもよい。)
    で表される基である、請求項3又は4に記載のオキシジフルオロメチレン骨格を有する化合物の製造方法。
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