JP5910344B2 - 車両用懸架装置 - Google Patents
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Description
以上の検討から明らかな通り、先発明に係る車両用懸架装置を実施する場合には、電動モータを動作させられない状況下でも、キャンバ角を手動で変更できる手段を別途備える事が望ましい。
尚、本発明を実施する場合に関連する技術を記載した刊行物として他に、車輪に加わる荷重を測定可能とする、転がり軸受ユニットの荷重測定装置を記載した、特許文献3が存在する。
又、前記アッパアームは、フレームと、伸縮機構と、電動モータと、減速機構と、1対のリンク腕とを備える。
このうちのフレームは、前記車体に対し支持されている。
又、前記伸縮機構は、1対のねじ軸と1対のねじナットとを備える(1対の送りねじ機構を備える)。このうちの1対のねじ軸は、外周面に互いに逆方向の雄ねじを形成しており、前記車体の前後方向に同一直線上に配置されている。又、前記1対のねじナットは、内周面に互いに逆方向の雌ねじを形成したもので、前記各ねじ軸の周囲にそれぞれ係合している。そして、これら1対のねじナットと1対のねじ軸とのうち、何れか一方の1対の部材を、前記フレームに対し軸方向への移動のみ可能に支持すると共に、他方の1対の部材を、このフレームに対し回転のみ可能に支持している。
又、前記電動モータは、前記フレームに支持されており、両方向(正方向及び逆方向)に回転可能である。
又、前記減速機構は、前記フレームを構成するギヤハウジング部の内側に配置されており、前記電動モータの動力を、前記伸縮機構を構成する前記他方の1対の部材に伝達する。
又、前記1対のリンク腕は、それぞれの基端部を前記伸縮機構を構成する前記一方の1対の部材のそれぞれの先端部に対し、直接若しくは他の部材を介して、少なくとも前記車体の上下方向の軸回りに回動可能に連結すると共に、それぞれの先端部を前記上部継手に対し、前記車体の上下方向の軸回りに回動可能に連結している。この為に例えば、前記1対のリンク腕の先端部を、前記上部継手の一部若しくはこの上部継手に取り付けられる部材に連結する。
そして、本発明の車両用懸架装置は、前記電動モータにより、前記減速機構を介して、前記伸縮機構を構成する前記他方の1対の部材を回転駆動する事で、この伸縮機構を構成する前記一方の1対の部材を軸方向に関して互いに反対方向に進退させる。
これにより、前記両リンク腕の開き角度を変化させ、前記車体の幅方向に関するこれら両リンク腕の長さを変化させる(アッパアームの全長を変化させる)事で、車輪のキャンバ角を変更する。
又、前記減速機構を収納した前記ギヤハウジング部に、取り外し可能な蓋部を設けている。そして、この蓋部を取り外す事により、前記減速機構を構成する軸に、手動操作用の工具を接続可能とし、この工具をこの減速機構を構成する軸に接続した状態で回転させる事で、前記電動モータによらずに、前記車体の幅方向に関する前記両リンク腕の長さを変更可能(キャンバ角を変更可能)としている。
これに対し、減速機構を逆作動(伸縮機構側から電動モータ側への回転力の伝達)不能に構成するには、例えば、減速機構を、ウォームとウォームホイールとを互いに噛合させて成るウォーム減速機とし、ウォームの条数を1条として、ウォーム歯の捩れ角の大きさを規制する。
更には、前記各ねじ軸の外周面に形成された雄ねじ及び前記各ねじナットの内周面に形成された雌ねじの条数を、それぞれ2条とする。
尚、この様な構成を採用する場合には、ウォーム(ウォーム軸)を、前記手動操作用の工具が接続される軸とする。
又、前記ウォームホイールを、ポリアミド66、ポリアミド樹脂の一種であるMCナイロン(登録商標)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の合成樹脂製とする。この場合には、合成樹脂中にガラス繊維や炭素繊維等を充填して、ウォームホイールの強度、剛性を向上させる事もできる。
更には、前記ウォームを、前記電動モータにより第二の減速機構(例えば歯車式減速機)を介して回転駆動する事もできる。
或いは、前記フレームを前記車体に対し上下方向に揺動可能に支持する。又、前記1対のリンク腕のそれぞれの基端部を、前記伸縮機構を構成する前記一方の1対の部材のそれぞれの先端部に対し、前記車体の上下方向の軸回りの回動のみ可能に連結する。
滑りねじ式の送りねじ機構を構成する場合には、ねじナットの内周面に形成された雌ねじを、ねじ軸の外周面に形成された雄ねじに摺動可能に係合させる。この様なねじ軸としては、例えばステンレス鋼製のねじ軸を使用でき、同じくねじナットとしては、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド66、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の合成樹脂製のねじナット、或いは、黄銅(真鍮)製のねじナットを使用できる。
一方、ボールねじ式の送りねじ機構を構成する場合には、ねじナットの内周面に形成された外径側ボールねじ溝と、ねじ軸の外周面に形成された内径側ボールねじ溝とを、それぞれ複数個のボールを介して係合させる。
即ち、本発明の車両用懸架装置の場合には、ギヤハウジング部に設けられた蓋部を取り外す事により、手動操作用の工具を用いて、減速機構を構成する軸を所定方向に所定量だけ回転させる事ができる。この為、電動モータによらずに、伸縮機構を伸縮させると共に、1対のリンク腕の開き角度を変化させて、車体の幅方向に関するこれら両リンク腕の長さを変更する事が可能になる。この結果、キャンバ角を所望の角度に変更する事が可能になる。そして、この様な本発明の車両用懸架装置によれば、エンジンを始動しない状態でキャンバ角を変更したい場合や、電動モータやモータコントローラが故障等した場合にも、キャンバ角を変更できる為、故障時等に於ける車両の走行安定性並びに利便性の向上を図れる。
即ち、本発明の車両用懸架装置の場合には、アッパアーム自体に、このアッパアームの全長(車体の幅方向に関するリンク腕の長さ)を可変にする為の構造を集約している。この為、ロアアーム等のその他の部材に関しては、従来構造の場合と同様のものを使用できる。又、車体側(例えばエンジンルーム)にも、アッパアームの全長を可変にする為の、油圧ポンプ等の駆動部材を設置する必要がない。更に、前記アッパアームは、送りねじ機構による伸縮機構と、電動モータと、減速機構と、リンク機構とを組み合わせた簡易な構成により、その全長を変更できる。従って、本発明によれば、車両の走行状況に応じてキャンバ角を適宜変更できる車両用懸架装置を簡易な構造で実現できて、装置全体としての小型・軽量化を図れる。この為、本発明の車両用懸架装置によれば、車両の旋回性能、直進性能の更なる向上を図れるだけでなく、バネ下荷重の増大を十分に抑える事ができて、乗り心地性や走行安定性を中心とする、車両の走行性能の向上も図れる。
又、キャンバ角の制御(アッパアームの全長制御)を電動モータの通電制御により行える為、例えば油圧式に行う場合に比べて制御性や応答性に優れると共に、エンジンの動力損失も生じなくて済む。更に、本発明によれば、左右の車輪のキャンバ角を、それぞれ独立して制御できる。
即ち、本例の場合には、前記ギヤハウジング部15aに設けられた蓋部41を取り外す事により、前記手動操作用の工具42を用いて、前記第一カウンタ軸30aを所定方向に所定量だけ回転させる事ができる。この為、前記電動モータ11によらずに、前記伸縮機構10(送りねじ機構9a、19b)を伸縮させると共に、前記リンク機構13を構成する1対のリンク腕36a、36bの開き角度を変化させて、車体の幅方向に関するこれら両リンク腕36a、36bの長さを変更する事が可能になる。この結果、キャンバ角を所望の角度に変更する事が可能になる。
電動モータ11を利用してキャンバ角を適宜変更できる点等を含め、その他の構成及び作用効果に就いては、前述した先発明に係る車両用懸架装置の場合と同様である。
更に本発明を実施する場合に、フレームに対し軸方向への移動のみ可能に支持する一方の1対の部材を1対のねじ軸とし、このフレームに対し回転のみ可能に支持する他方の1対の部材の1対のねじナットとする事もできる。この場合には、前記両ねじ軸の支持剛性並びに伸縮量を確保する為に、前記両ねじナットの軸方向寸法を十分に大きくする事が好ましい。
2 軸受ユニット
3 ナックル
4、4a、4b アッパアーム
5 ロアアーム
6 アッパボールジョイント
7 ロアボールジョイント
8 ショックアブソーバ
9、9a フレーム
10 伸縮機構
11 電動モータ
12、12a 歯車式減速機
13 リンク機構
14 フレーム本体
15、15a ギヤハウジング部
16 取付部
17 把持部
18 ボルト
19a、19b 送りねじ機構
20a、20b ねじ軸
21a、21b ねじナット
22 ねじ軸体
23 転がり軸受
24 ガイド筒
25 回り止め凹溝
26 回り止め凸部
27 ボールジョイント
28 ソケット部
29 出力軸
30、30a 第一カウンタ軸
31 第二カウンタ軸
32 第一小はすば歯車
33 第二小はすば歯車
34 第一大はすば歯車
35 第二大はすば歯車
36a、36b リンク腕
37 連結部材
38 ボールスタッド
39 ナット
40 ボール部
41 蓋部
42 工具
43 ねじ孔
44 係合凹部
45 雌スプライン溝
46 係合孔
47 雄スプライン溝
48 工具本体部
49 ハンドル部
Claims (3)
- 先端部が各方向の揺動変位を許容する上部継手を介してナックルの上部に連結されると共に、基端部が車体に対し支持されるアッパアームと、先端部が各方向の揺動変位を許容する下部継手を介して前記ナックルの下部に連結されると共に、基端部が前記車体に対し揺動可能に支持されるロアアームとを備え、
前記アッパアームが、
前記車体に対し支持されるフレームと、
この車体の前後方向に同一直線上に配置され、それぞれの外周面に互いに逆方向の雄ねじが形成された1対のねじ軸と、これら各ねじ軸の周囲にそれぞれ係合し、それぞれの内周面に互いに逆方向の雌ねじが形成された1対のねじナットとを備え、これら1対のねじナットと前記1対のねじ軸とのうち、何れか一方の1対の部材を、前記フレームに対し軸方向への移動のみ可能に支持すると共に、他方の1対の部材を、このフレームに対し回転のみ可能に支持した伸縮機構と、
前記フレームに支持され、両方向に回転可能な電動モータと、
このフレームを構成するギヤハウジング部の内側に配置され、前記電動モータの動力を、前記伸縮機構を構成する前記他方の1対の部材に伝達する減速機構と、
それぞれの基端部を、前記伸縮機構を構成する前記一方の1対の部材のそれぞれの先端部に対し、少なくとも前記車体の上下方向の軸回りに回動可能に連結すると共に、それぞれの先端部を前記上部継手に対し、前記車体の上下方向の軸回りに回動可能に連結した1対のリンク腕とを備えたものであり、
前記電動モータにより、前記減速機構を介して、前記伸縮機構を構成する前記他方の1対の部材を回転駆動する事で、この伸縮機構を構成する前記一方の1対の部材を軸方向に関して互いに反対方向に進退させ、前記両リンク腕の開き角度を変化させる事により、前記車体の幅方向に関するこれら両リンク腕の長さを変化させる機能を備え、
更に、前記伸縮機構と前記減速機構とのうちの少なくとも一方が逆作動不能に構成されており、このうちの減速機構を収納した前記ギヤハウジング部に取り外し可能な蓋部が設けられており、この蓋部を取り外す事により、前記減速機構を構成する軸に手動操作用の工具が接続可能となり、この工具をこの減速機構を構成する軸に接続した状態で回転させる事で、前記電動モータによらずに、前記車体の幅方向に関する前記両リンク腕の長さを変更可能とした車両用懸架装置。 - 減速機構を構成する軸の端部及び蓋部の一部に、手動操作用の工具とそれぞれ係合可能な同形状の係合部が形成されている、請求項1に記載した車両用懸架装置。
- フレームに対し軸方向への移動のみ可能に支持された一方の1対の部材が、1対のねじナットであり、前記フレームに対し回転のみ可能に支持された他方の1対の部材が、1対のねじ軸であり、
これら両ねじ軸は一体に構成されており、
これら両ねじ軸の外周面にそれぞれ多条の雄ねじが形成されており、前記両ねじナットの内周面にそれぞれ多条の雌ねじが形成されており、
減速機構が、複数のはすば歯車を備えた歯車式減速機であり、このうちの最終歯車が、一体に構成された前記両ねじ軸の軸方向中央部に支持固定されており、電動モータの出力軸に連結された軸が、手動操作用の工具が接続される軸である、
請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した車両用懸架装置。
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