以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
以下の例においては、本発明にかかる電気機器の具体例として加熱調理機器である炊飯器を挙げて説明する。もちろん、電気機器は炊飯器に限定されず、オーブンや電子レンジ等の他の加熱調理機器であってもよいし、加熱調理機器に限定されず、洗濯機や掃除機などの他の家電機器であってもよいし、家電機器に限定されずCDプレーヤや携帯電話機等の一般的な電気機器であってもよい。本発明に係る電気機器は、交流電源からの交流電力を整流し、その整流した直流電力により負荷を駆動する電気機器であれば、どのようなものであってもよい。
<装置構成>
図1は、本発明の実施の形態による炊飯器100を斜め上方から見た概略斜視図である。
図1を参照して、炊飯器100は、炊飯器本体1と、炊飯器本体1に開閉可能に取り付けられた蓋体2とを含む。炊飯器本体1は蓋体2に対して下部に位置する。
炊飯器本体1の前面には、蓋体2を開けるための開ボタン3が配される。炊飯器本体1の後面には電源コード47が配される。この電源コード47の大部分は、炊飯器本体1内のコードリール(図示せず)に引き出し可能に巻き付けられていている。
蓋体2の上面の前部には、炊き方や調理名などを表示する液晶表示部5と、複数の操作スイッチ6とが配され、さらに、操作スイッチ6には動作状態を表わすためのLED(Light Emitting Diode)インジケータ61が設けられている。操作スイッチ6は物理的な押下を受け付けるスイッチであってもよいし、静電容量式タッチキーであってもよい。操作スイッチ6が静電容量式タッチキーである場合には、インジケータ61に替えてタッチキーのバックライトが用いられてもよい。なお、液晶表示部5は表示部の一例である。
蓋体2の上面の後部には、内鍋7(図2)内の蒸気を排出するための蒸気排出口2aが設けられる。
図2は、蓋体2を開いた状態の炊飯器100の概略斜視図である。
図2を参照して、炊飯器本体1には、被加熱物の一例としての米や水などを収容するための内鍋7が収納されている。
炊飯器本体1の上面の前部には被係止部8が設けられており、蓋体2の下面の前部には係止部23が設けられている。被係止部8には係止部23が解除可能に係止する。
炊飯器本体1内には、蓋体2をロックするための蓋ロック部9が設けられている。蓋ロック部9が蓋体2をロックしていないときには、開ボタン3を押すと被係止部8が後方に移動するため、被係止部8に対する係止部23の係止は解除される。蓋ロック部9が蓋体2をロックしているときは、開ボタン3を押しても被係止部8が後方に移動しないため、被係止部8に対する係止部23の係止は解除されない。
蓋体2は、蓋体2を閉じたときに内鍋7側とは反対側に位置する外蓋21と、蓋体2を閉じたときに内鍋7側に位置する内蓋22とを含む。
外蓋21内には撹拌モータ24が設置されている。外蓋21の中央部内には回転可能に連結軸(図示せず)が設置され、撹拌モータ24が発生した回転駆動力を、プーリ(図示せず)やベルト(図示せず)を介して受けて回転する。
炊飯器本体1と蓋体2との間には回転体25が回転可能に配置されて、蓋体2に着脱可能に取り付けられている。より詳しくは、回転体25の蓋体2側の部分からは回転軸29の一方の端部が突出している(図4参照)。回転軸29は、一方の端部が外蓋21の上記連結軸に着脱可能に連結されて、上記連結軸と一体に回転する。また、回転軸29は回転体25に対して回転可能となっている。
回転体25には第1,第2撹拌体26A,26B(これらを代表させて撹拌体26とも称する)が取り付けられている。第1,第2撹拌体26A,26Bは、それぞれ、径方向において回転体25と隣り合って、内鍋7内の米などに接触した撹拌状態と、内鍋7内の米などから乖離した非撹拌状態とを切替可能になっている。すなわち、第1,第2撹拌体26A,26Bのそれぞれは、一方の端部が回転体25に回動可能に取り付けられて、他方の端部が、回転体25から離れたり、回転体25に近づいたりすることが可能になっている。なお、第1,第2撹拌体26A,26Bは撹拌体の一例である。
図3は、回転体25を内鍋7側から見た概略図である。
図3を参照して、回転体25は、蓋体側部材27と、この蓋体側部材27の内鍋7側の表面に着脱可能に取り付けられた内鍋側部材28とを有している。蓋体側部材27と内鍋側部材28との間には、第1,第2撹拌体兼用傘ギア30と、第1撹拌体用ギア31A,32A,33Aと、第2撹拌体用ギア31B,32B,33Bとが配置されている。回転軸29の回転駆動は、第1,第2撹拌体兼用傘ギア30および第1撹拌体用ギア31A,32A,33Aを介して第1撹拌体用回動軸34Aに伝わると共に、第1,第2撹拌体兼用傘ギア30および第2撹拌体用ギア31B,32B,33Bを介して第2撹拌体用回動軸34Bに伝わる。これにより、回転軸29が回転すれば、第1,第2撹拌体26A,26Bを第1,第2撹拌体用回動軸34A,34Bを中心に回動させて、図2,図3に示す非撹拌状態から図4に示す撹拌状態に切り替えたり、上記撹拌状態から上記非撹拌状態に切り替えたりすることが可能になっている。
なお、図4では、第1,第2撹拌体26A,26Bを視認できるように、炊飯器本体1および蓋体2の図示を省略している。
図5は、炊飯器100を鉛直面で切った断面の概略図である。
図5を参照して、炊飯器100は、上記炊飯器本体1と、炊飯器本体1内に収納される内鍋7と、炊飯器本体1の上部に開閉可能に取り付けられ、内鍋7を覆うように閉じることが可能な蓋体2と、蓋体2を閉じたときに内鍋7側とは反対側に位置する外蓋21と、蓋体2を閉じたときに内鍋7側に位置する内蓋22と、内蓋22を加熱するための蓋ヒータ4aと、内鍋7の側面を加熱することで内鍋7内の被加熱物を保温するための保温ヒータ4bと、炊飯器本体1内の下側に配置され、内鍋7を誘導加熱するための誘導コイル4cと、内鍋7の温度を検知するための温度センサ15aと、内鍋7に収容された被加熱物の重量を検知するための重量センサ15bと、蓋体2に着脱可能に取り付けられた回転体25とを含む。なお、誘導コイル4cは加熱部の一例である。
外蓋21内には撹拌モータ24が設置されている。回転体25の回転軸29は内蓋22を貫通し、その一方の端部が図示しないプーリやベルトを介して撹拌モータ24に接続されている。
外蓋21の表面には液晶表示部5および操作スイッチ6が設けられ、外蓋21内には、液晶表示部5および操作スイッチ6と接続され、その操作に従って炊飯器100全体を制御するためのメイン制御部が含まれる。メイン制御部には、メインCPU(Central Processing Unit)10aと、メインROM(Read Only Memory)11aおよびメインRAM(Random Access Memory)12aなどである記憶部とが含まれる。
炊飯器本体1と内鍋7との間の空間には、メインCPU10aからの制御信号を受けて、誘導コイル4cによる誘導加熱など、炊飯器本体1に含まれる各部を制御するためのサブ制御部が含まれる。サブ制御部には、サブCPU10bと、サブROM11bおよびサブRAM12bなどである記憶部とが含まれる。
サブ制御部および誘導コイル4c近傍には、これらの発熱を冷却するための冷却ファン13が配置される。
<制御系構成>
図6は、炊飯器100の制御系の構成の概要を表わしたブロック図である。
図6を参照して、炊飯器100の制御系は、大きくは、蓋体2側のメイン制御系と炊飯器本体1側のサブ制御系とに分かれる。蓋体2側のメイン制御系はメインCPU10aを含み、炊飯器本体1側のサブ制御系はサブCPU10bを含む。
メインCPU10aはメイン制御系に含まれる各機能を制御する他、サブCPU10bに対して制御信号を出力して、サブCPU10bにサブ制御系に含まれる各機能の制御を実行させる。また、サブCPU10bは各種信号をメインCPU10aに対して出力する。
メインCPU10aとサブCPU10bとは電気的に分離(絶縁)されている。そのため、メインCPU10aとサブCPU10bとの間の上記信号のやり取りは、好ましくは無線通信が利用される。一例として、フォトカプラが用いられてもよい。すなわち、メイン制御系およびサブ制御系は、それぞれ、通信部54a,54bを含み、上記信号をやり取りする。通信部54a,54bは好ましくは無線通信を行ない、一例として、フォトカプラが挙げられる。
メイン制御系には電源回路50a、サブ制御系には電源回路50b,50cが含まれる。炊飯器本体1に含まれる電源コード47(図示せず)を介して商用電源470から供給された交流電力は、サブ制御系の電源回路50b,50cにもたらされる。
サブ制御系の電源回路50cは供給された交流電力を直流電力に変換してサブCPU10bに供給する。サブ制御系の電源回路50bはメイン制御系への電源供給用の電源回路であって、供給された交流電力を直流電力に変換した後に、メイン制御系に供給するための交流電力に変換して絶縁トランス40に渡す。交流電力は絶縁トランス40において変圧された後にメイン制御系の電源回路50aに入力される。メイン制御系の電源回路50aは、入力された交流電力を直流電力に変換してメインCPU10aに供給する。すなわち、電源回路50aおよび電源回路50bは、絶縁トランス40によって電気的に絶縁されており、電磁誘導によって電源回路50aから電源回路50bへ電気エネルギーを伝達する。
図7は、図6の制御系構成の内のメイン制御系の詳細を表わしたブロック図である。一部、説明のためにサブ制御系の構成も図示されている。
図7を参照して、メイン制御系にはメインCPU10aが含まれる。メインCPU10aは電源回路50aから電力供給を受けて動作する。
メインCPU10aには、メインCPU10aで実行されるプログラムを記憶するためのROM11aと、プログラム実行の際の作業領域となるRAM12aとが電気的に接続される。
メインCPU10aには、さらに、通信部54a、液晶表示部5、操作スイッチ6、LEDインジケータ61、ブザー14、タイマー16、着脱検知部55、モータ駆動回路57、および蓋開閉検知部56が電気的に接続されている。
メインCPU10aは操作スイッチ6からの操作信号の入力を受け付けることで対応するプログラムを選択し、実行する。メインCPU10aは、プログラムを実行することで液晶表示部5での表示、LEDインジケータ61の点灯/消灯、ブザー14の鳴動を制御する。また、サブ制御系に含まれる各部のうち上記プログラムの実行に基づいて制御対象となる構成を制御するための制御信号を通信部54aに渡すことで、サブCPU10bに対して出力する。
モータ駆動回路57は撹拌モータ24を駆動させるための機構であり、メインCPU10aは上記プログラムの実行に従って、必要なタイミングで必要な駆動量で撹拌モータ24を駆動させるよう、モータ駆動回路57を制御する。なお、モータ駆動回路57には、後述する蓋開閉検知部56からの検知信号も入力され、その検知に応じて撹拌モータ24を駆動/非駆動するようにしてもよい。
着脱検知部55は、蓋体2に着脱可能に構成されている回転体25の着脱を検知するための機構である。具体的な構成は特定の構成に限定されるものではないが、一例として、回転体25の回転軸29に動力を伝える撹拌モータ24のパルス信号に基づいてその回転量を判断し、回転体25の着脱を検知する構成が挙げられる。他の構成として、たとえば着脱を検知するためのセンサを用いてもよい。
蓋開閉検知部56は蓋体2の炊飯器本体1に対する開閉状態を検知するための機構である。具体的な構成は特定の構成に限定されるものではないが、一例として、被係止部8に対する係止部23の係止を検知するためのセンサを用いてもよい。
また、図7の構成の他、回転体25に対する撹拌体26の状態(撹拌状態、非撹拌状態)を検知するための機構が含まれてもよい。この機構の構成もまた特定の構成に限定されるものではないが、たとえば、センサを用いてもよいし、撹拌モータ24のパルス信号に基づいてその回転量を判断することで撹拌体26の状態を検知してもよい。
これらの検知信号はメインCPU10aに入力され、必要に応じて制御に用いられる。
図8は、図6の制御構成の内のサブ制御系の詳細を表わしたブロック図である。一部、説明のためにメイン制御系の構成も図示されている。
図8を参照して、サブ制御系にはサブCPU10bが含まれる。サブCPU10bは電源回路50cから電力供給を受けて動作する。
サブCPU10bには、同期検出部43、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)45、カレントトランス59、リレー51a,51b、パルス信号を発生させるための発振回路52、蓋ロック駆動部44、ファン駆動回路58、温度検知回路41、およびリセット制御を行なうためのリセット回路53が電気的に接続されている。
商用電源470からの電力線は、リレー51cを経て整流回路48に接続されている。商用電源470および整流回路48を結ぶ電力線には、カレントトランス59が介挿接続される。詳細には、カレントトランス59は、電力線およびダイオードD1,D2の接続ノードと、電力線および整流回路48の接続ノードとの間に配され、電力線に流れる電流を検出する。すなわち、カレントトランス59は「電流検出部」に対応する。なお、任意の形式の電流検出部を、カレントトランス59に代えて適用することができる。カレントトランス59による電流検出値はサブCPU10bに入力される。
整流回路48は、ブリッジ接続された4つのダイオードを含み(図9参照)、商用電源470からの交流電圧を全波整流する。整流回路48は、整流した直流電力をチョークコイル42およびコンデンサ49からなる平滑回路へ出力する。平滑回路は、整流された直流電力を平滑化して誘導コイル4cおよび共振コンデンサ46の並列回路に供給する。
IGBT45は、誘導コイル4cに供給する電力を制御するための「電力制御素子」を構成する。IGBT45にはダイオードD7が逆並列に接続される。電力制御素子としては、IGBTを例示するが、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)等の電力スイッチング素子を用いてもよい。
IGBT45は、サブCPU10bからの制御信号に応答してオン/オフすることにより、誘導コイル4cへの電力の供給と遮断とを切替える。具体的には、IGBT45をオンすると、整流回路48から誘導コイル4cに電力が供給される。そして、IGBT45をオフすると、誘導コイル4cおよび共振コンデンサ46からなる共振回路の内部に電流が流れる。共振回路に共振が発生した状態で内鍋7が誘導加熱される。
さらに、商用電源470からの電力線は、ダイオードD1,D2を経て蓋ヒータ4aおよび保温ヒータ4bの一方端子に接続される。蓋ヒータ4aおよび保温ヒータ4bの他方端子は、ダイオードブリッジからなる整流回路48の直流出力側の接地線に接続される。すなわち、誘導コイル4cと蓋ヒータ4aおよび保温ヒータ4bとは接地線が共通に接続されている。
ダイオードD1,D2は、商用電源470からの交流電力を整流し、その整流した直流電力を蓋ヒータ4aおよび保温ヒータ4bに供給する。蓋ヒータ4aおよび保温ヒータ4bへの給電経路には、リレー51a,51bが接続される。リレー51a,51bはサブCPU10bからの制御信号に応答してオン/オフされる。リレー51a,51bは、蓋ヒータ4aおよび保温ヒータ4bへの給電経路を遮断可能な「開閉装置」を構成する。
サブCPU10bにはさらに通信部54bが電気的に接続され、メインCPU10aからの制御信号を通信部54bで受信してその制御信号に従って各部を制御する。このとき、サブCPU10bは、ROM11bに記憶されているプログラムを読み出してRAM12bに展開しつつ実行するようにしてもよい。
すなわち、サブCPU10bは、メインCPU10aからの制御信号に従ってIGBT45のオン/オフを制御することで、誘導コイル4cでの誘導加熱を制御する。このとき、同期検出部43が商用電源470から供給される交流電力から同期信号を抽出し、サブCPU10bに入力する。サブCPU10bは、同期信号に基づくタイミングでIGBT45のオン/オフを制御する。
また、サブCPU10bは、メインCPU10aからの制御信号に従ってリレー51a,51bのオン/オフを制御することで、蓋ヒータ4aおよび保温ヒータ4bでの加熱および保温を制御する。
蓋ロック駆動部44は蓋ロック部9を駆動させるための機構であり、サブCPU10bはメインCPU10aからの制御信号に従って蓋ロック部9に施錠/解錠させるよう蓋ロック駆動部44を制御する。
ファン駆動回路58は冷却ファン13を駆動させるための機構であり、サブCPU10bはメインCPU10aからの制御信号に従って冷却ファン13を駆動させるよう、ファン駆動回路58を制御する。
温度検知回路41は内鍋7内の温度を検知するための機構であり、温度センサ15aからのセンサ信号に基づいて温度を検知して、検知信号をサブCPU10bに入力する。
リレー51cは、商用電源470から供給された電力の、蓋ヒータ4a、保温ヒータ4b、および誘導コイル4cへの供給を遮断する。リレー51cの励磁コイルは、メイン制御系のメインCPU10aに接続される。メインCPU10aから励磁コイルに電力が供給されると、リレー51cの接点が閉成(オフ)される。励磁コイルの非通電時には、リレー51cに接点が開放(オン)される。すなわち、メイン制御系のメインCPU10aは、実行するプログラムに従って蓋ヒータ4a、保温ヒータ4b、および誘導コイル4cへ電力の供給を直接遮断するための制御が可能となる。
<加熱制御>
上述したように、サブ制御系において、商用電源470からの交流電力は、整流回路48により整流され、チョークコイル42およびコンデンサ49からなる平滑回路により平滑化されて誘導コイル4cおよび共振コンデンサ46の並列回路に供給される。
また、商用電源470からの交流電力は、ダイオードD1,D2により整流され、その整流された直流電力が蓋ヒータ4aおよび保温ヒータ4bに供給される。
サブCPU10bは、メインCPU10aから入力される制御信号と、カレントトランス59から入力される電流検出値と、同期検出部43から入力される同期信号とに基づいて、これらの負荷に供給する電力を制御する。これにより、炊飯および保温の各工程において適切な加熱制御が行なわれる。
図9および図10には、加熱制御の実行中における商用電源470から誘導コイル4cおよび蓋ヒータ4aに供給される電流の流れが模式的に示される。図9および図10において、IGBT45およびリレー51aはいずれもオンされているものとする。なお、図示は省略するが、リレー51bもオンすることにより、ダイオードD1,D2に対して蓋ヒータ4aと並列に接続される保温ヒータ4b(図8)に対しても電流が供給される。
図9を参照して、商用電源470から供給される交流電力の正の半周期では、正電力線ACLp、整流回路48のダイオードD3、およびチョークコイル42を通って誘導コイル4cに電流が供給される。この電流はIGBT45を流れると、整流回路48のダイオードD6を通って負電力線ACLnに還流される。以下では、誘導コイル4cに供給される電流を「Icoil」とも表記する。
また、交流電力の正の半周期では、正電力線ACLp、ダイオードD2を通って蓋ヒータ4aに電流が供給される。この電流は蓋ヒータ4aを流れると、整流回路48のダイオードD6を通って負電力線ACLnに還流される。以下では、蓋ヒータ4aに供給される電流を「Iheat」とも表記する。
負電力線ACLnには、カレントトランス59が介挿接続されている。カレントトランス59は、負電力線ACLnに流れる電流を検出する。図9に示すように、交流電力の正の半周期では、誘導コイル4cに流れる電流Icoilおよび蓋ヒータ4aに流れる電流Iheatの合計が負電力線ACLnに流れる電流となる。すなわち、サブCPU10bに入力されるカレントトランス59の電流検出値Iは、電流Icoilおよび電流Iheatの合計値となる(I=Icoli+Iheat)。
正電力線ACLpには同期検出部43が接続されている。同期検出部43は、商用電源470から供給される交流電力から同期信号を抽出してサブCPU10bに出力する。具体的には、同期検出部43は、正電力線ACLpおよび接地ノードとの間に直列接続された抵抗R1,R2と、トランジスタ430と、抵抗R3とを含む。トランジスタ430は、コレクタが抵抗R3を介して電源回路50c(図8)から電源電圧を受ける電源ノードに接続され、エミッタが接地ノードに接続され、かつ、ベースが抵抗R1およびR2の接続ノードに接続される。正電力線ACLpの電圧は抵抗R1およびR2の直列回路によって分圧され、その分圧電圧がトランジスタ430のベースに入力される。
交流電力の正の半周期において、抵抗R1およびR2による分圧電圧がトランジスタ430がオンするときのベース−エミッタ間電圧より高くなると、トランジスタ430がオンされる。トランジスタ430がオンされることにより、同期検出部43からはL(論理ロー)レベル(接地電圧レベルに相当)の同期信号が出力される。
これに対して、図10を参照して、商用電源470から供給される交流電力の負の半周期では、負電力線ACLn、整流回路48のダイオードD5、およびチョークコイル42を通って誘導コイル4cに電流が供給される。この電流はIGBT45を流れると、整流回路48のダイオードD4を通って正電力線ACLpに還流される。
また、負電力線ACLn、ダイオードD1を通って蓋ヒータ4aに電流が供給される。この電流は蓋ヒータ4aを流れると、整流回路48のダイオードD4を通って正電力線ACLpに還流される。
ここで、図10に示すように、交流電力の負の半周期では、誘導コイル4cに流れる電流Icoilが負電力線ACLnに流れる電流となる。すなわち、サブCPU10bに入力されるカレントトランス59の電流検出値Iは、電流Icoilとなる(I=Icoil)。
同期検出部43では、抵抗R2およびR3による分圧電圧が負の電圧となるため、トランジスタ430はオンされない。トランジスタ430がオフ状態に維持されることにより、同期検出部43からはH(論理ハイ)レベル(電源電圧レベルに相当)の同期信号が出力される。
本実施の形態では、カレントトランス59は、負電力線ACLn上であって、負電力線ACLnおよびダイオードD1の接続ノードと、負電力線ACLnおよび整流回路48の接続ノードとの間に配される。これにより、カレントトランス59は、上述したように、交流電力の正の半周期では誘導コイル4cに流れる電流Icoilおよび蓋ヒータ4aに流れる電流Iheatの合計値を検出する一方で、交流電力の負の半周期では誘導コイル4cに流れる電流Icoilのみを検出することができる。
なお、図示は省略するが、カレントトランス59を、正電力線ACLp上であって、正電力線ACLpおよびダイオードD2の接続ノードと、正電力線ACLpおよび整流回路48の接続ノードとの間に配するように構成してもよい。この場合、カレントトランス59は、交流電力の正の半周期において誘導コイル4cに流れる電流Icoilを検出し、交流電力の負の半周期において誘導コイル4cに流れる電流Icoilおよび蓋ヒータ4aに流れる電流Iheatの合計値を検出することとなる。
サブCPU10bは、カレントトランス59による電流検出値および同期検出部43からの同期信号を受けると、同期信号がLレベルのときの電流検出値を電流Icoilおよび電流Iheatの合計値として取得する。また、同期信号がHレベルのときの電流検出値を電流Icoilとして取得する。さらに、サブCPU10bは、上記の合計値から電流Icoilを差し引くことで蓋ヒータ4aに流れる電流Iheatを取得できる。すなわち、単一のカレントトランス59の電流検出値に基づいて、電流Icoilおよび電流Iheatの各々を取得することができる。
サブCPU10bは、電流Icoilおよび電流Iheatを取得すると、同期信号に基づくタイミングでIGBT45のオン/オフを制御するとともに、リレー51a,51bのオン/オフを制御する。以下、上述のカレントトランス59による電流検出値に応じたサブCPU10bにおける加熱制御について説明する。
図11は、整流回路48の出力電圧、カレントトランス59の電流検出値、および同期信号の時間的な変化を示す図である。
上述したように、整流回路48では、交流電力の正の半周期にダイオードD3,D6が導通し、負の半周期にダイオードD4,D5が導通することによって、出力電圧が図11に示すような波形となる。また、同期検出部43から出力される同期信号は、交流電力の正の半周期ではLレベルを示す一方で、負の半周期ではHレベルを示す。
さらに、カレントトランス59による電流検出値は、交流電力の正の半周期では電流Icoilおよび電流Iheatの合計値を示し、負の半周期では電流Icoilを示す。
サブCPU10bは、カレントトランス59による電流検出値から電流Icoilを取得すると、その取得した電流Icoilに基づいてIGBT45のオンデューティ比を設定する。IGBT45のオンデューティ比とは、IGBT45のオン時間とオフ時間との合計時間に対するオン時間の割合を示す。サブCPU10bは、同期信号に基づき交流電力の半周期ごとにIGBT45のオンデューティー比を設定する。
具体的には、サブCPU10bは、炊飯および保温の各工程において、メインCPU10aから誘導コイル4cに供給される電力を指示する制御信号を受ける。そして、サブCPU10bは、制御信号により指示される電力が誘導コイル4cに供給されるように、電流Icoilに応じてIGBT45のオンデューティー比を設定する。サブCPU10bは、設定されたオンデューティー比に従って交流電力の半周期ごとにIGBT45のオン/オフを制御する。
IGBT45がオンされて誘導コイル4cが通電されると、誘導コイル4および共振コンデンサ46の並列回路に共振が生じる。これにより、IGBT45のコレクタ−エミッタ間に印加される電圧が変化するため、IGBT45のコレクタ電圧は、図11に示すような動作波形を示す。IGBT45のコレクタ電圧は、IGBT45のオンデューティー比を大きくするに従って増大する。また、IGBT45のオンデューティー比を大きくするに従ってIGBT45に供給される電流が増大する。
サブCPU10bは、上述したIGBT45のオンオフ制御の実行中において、カレントトランス59の電流検出値と予め設定された判定値Ithとを比較する。この判定値Ithは、たとえば、電源コード47の定格電流に基づいて設定される。そして、サブCPU10bは、その比較結果に応じてリレー51a,51bのオン/オフを制御する。
具体的には、サブCPU10bは、電流Icoilおよび電流Iheatの合計値が判定値Ithに達したと判定されると(図11の時刻t5)、リレー51a,51bをオフする(時刻t6)。これにより、蓋ヒータ4aおよび保温ヒータ4bへの給電経路を遮断する。蓋ヒータ4aおよび保温ヒータ4bの通電を停止したことによって電流Iheatが零となるため、カレントトランス59の電流検出値は判定値Ithよりも小さい値に低下する。なお、リレー51a,51bのいずれか一方をオフすることにより、蓋ヒータ4aおよび保温ヒータ4bの一方への給電経路を遮断するように構成してもよい。
このように、電流Icoilおよび電流Iheatの合計値と判定値Ithとの比較結果に応じて蓋ヒータ4aおよび保温ヒータ4bの通電制御を行なうことにより、各工程に適した誘導コイル4cによる誘導加熱を実行しつつ、電源コード47に過電流が流れるのを回避できる。
以上説明したように、この発明の実施の形態による電気機器によれば、商用電源470に対して並列に接続された整流回路48(ダイオードブリッジ)およびダイオードD1,D2のそれぞれから整流された直流電力を受ける誘導コイル4cと蓋ヒータ4aおよび保温ヒータ4bとの接地線を共通に接続し、かつ、交流電力を伝達するための電力線および整流回路48の接続ノードと、電力線およびダイオードD1,D2の接続ノードとの間に電流検出部(カレントトランス59)を設けることにより、誘導コイル4cに流れる電流と、誘導コイル4c、蓋ヒータ4aおよび保温ヒータ4bに流れる電流の合計値とを交流電力の半周期ごとに交互に検出することができる。これにより、単一の電流検出部による電流検出値に基づいて、誘導コイル4cの通電制御と蓋ヒータ4aおよび保温ヒータ4bの通電制御とが実行可能となる。
なお、上記の実施の形態において、整流回路48はこの発明における「ダイオードブリッジ」に対応し、誘導コイル4cはこの発明における「第1の負荷」の一実施例に対応する。また、ダイオードD1,D2はこの発明における「整流器」の一実施例に対応し、蓋ヒータ4aおよび保温ヒータ4bはこの発明における「第2の負荷」の一実施例に対応し、カレントトランス59はこの発明における「電流検出部」の一実施例に対応する。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。