JP5907843B2 - フィンスタビライザの油圧駆動回路、フィンスタビライザのフィン角度制御方法 - Google Patents
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Description
このようなフィンは水中に位置しており、船体の揺れに応じ、その角度を変化させることで潮流や水流に対する揚力(抵抗力)を変化させることで、揺れを効果的に抑えようというものである。
フィンの角度制御コントローラは、センサ等によって検出された船体の揺れ(角度、角速度)等に基づいて、フィンの目標角度を決定し、フィンの角度が決定された目標角度となるよう、油圧シリンダに作動油を送り込む。油圧シリンダは、送り込まれた作動油の流量に応じてシリンダ内のピストンが作動し、ピストンと一体に設けられたロッドを介してフィンの角度を変化させる。
ここで、フィン1の作動応答性を高めるため、油圧駆動回路には、作動油を蓄えておくアキュムレータ5が備えられるとともに、油圧ポンプ3を常に作動させている。
また、海象条件によりフィンが頻繁に作動しない場合でも、作動に備えて回路内の油圧を保持しておく必要があるため、常に最大流量で油圧ポンプ3からの吐出が行われているため、エネルギー消費の観点で改善の余地がある。
さらに、回路内の設定圧を油圧シリンダ2A,2Bを作動させるための圧力以上とするため、設定圧と作動圧との差分が動力損失となること、サーボ弁4において圧力損失が生じること等により、ここでも損失低減の余地がある。
加えて、このように損失が発生する回路構成においては、作動油が発熱するため、作動油の温度を下げるために作動油冷却用のクーラーや大型のタンクが必要となり、コストがかかるという問題もある。
このような構成によれば、構成部品点数が少なくて済み、また、油圧シリンダの作動量に応じて、サーボモータの回転数を変化させて油圧ポンプを作動させるので、無駄な圧力を発生している必要がなく、損失を低減できる。また、頻繁に作動しない状態では、サーボモータを停止させる等して、その回転数を低くしておけば、エネルギー消費を抑えるとともに、作動油の発熱を抑えてコストを低減することが可能となっている。
しかし、特許文献1に記載の技術は、フィンスタビライザを対象としたものではなく、操舵翼の角度調整を対象としており、応答性という点で、何らの工夫がなされていない。操舵翼の場合であれば、操舵翼の角度を変えたとしても、実際に船体の向きが変わるまでには時間がかかるため、フィンスタビライザのような高い応答性は求められていないからである。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、フィンの角度調整の応答性を高めることのできるフィンスタビライザの油圧駆動回路、フィンスタビライザのフィン角度制御方法を提供することを目的とする。
本発明は、船体の揺れを抑制するため、船体の両舷にそれぞれ設けられたフィンの角度を調節する油圧駆動回路であって、前記フィンの角度を変えるロッドを備え、該ロッドが設けられたピストンをシリンダ内で油圧により移動させる油圧シリンダと、前記油圧シリンダの前記シリンダ内で前記ピストンの一方の側に接続された第一の管路と、前記油圧シリンダの前記シリンダ内で前記ピストンの他方の側に接続された第二の管路と、前記第一の管路および前記第二の管路の一方に選択的に作動油を送り込むとともに、前記第一の管路および前記第二の管路の他方から選択的に前記作動油を吸い込むポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記モータの作動を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記船体の揺れに応じて決定された前記フィンの角度を示す指令フィン角と、実際の前記フィンの角度を示す実フィン角との差分である差分フィン角をN乗(Nは1を含まない1より大きな数)し、該N乗された前記差分フィン角を更新指令フィン角とし、該更新指令フィン角に対応した角度だけ前記フィンの角度を変えるための前記モータの回転数を決定して、該決定された前記回転数で前記モータを回転させることを特徴とする。
このような構成によれば、揺れに応じて決定された指令フィン角と、実フィン角との差分である差分フィン角をN乗する処理(Nは1を含まない1より大きな数)をすることで、差分フィン角を増幅させる。そして、増幅された差分フィン角に対応した回転数でモータを作動させるので、モータの回転数が高まって吐出される作動油量が増え、油圧シリンダの応答性が高まる。
つまり、差分フィン角が予め定めた角度未満であるときには、前記差分フィン角をそのまま前記更新指令フィン角としたり、差分フィン角に予め定めた係数を掛ける等して、これを更新指令フィン角とするのである。
これにより、差分フィン角が大きい場合に差分フィン角を増幅させることで、応答性を高めることができる。
これによって、フィンの実フィン角を、ポテンショメータ等のセンサを用いることなく取得することができる。
これにより、潮流や水流中でフィンによって発揮している揚力を、実際の状態に応じて調整(補正)することができる。
このようにして、フィンの角度を調整するにあたって必要な電力をバッテリから供給し、フィンからバッテリに回生蓄電することにより、外部から供給する消費エネルギを抑えることができる。
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について、図1を用いて説明する。
図1は、船舶の船体両舷に設けられたフィン1を駆動するための油圧駆動回路構成を示すものである。
この図1に示すように、フィン1の油圧駆動回路10Aは、フィン1の角度を変える油圧シリンダ11と、油圧シリンダ11に作動油を供給するポンプ12と、ポンプ12を駆動するサーボモータ(モータ)13と、サーボモータ13の作動を制御するコントローラ20と、を備える。
このポンプ12は、サーボモータ13の回転方向を変えることにより、ロッド側管路14およびヘッド側管路15のいずれか一方を選択的に吐出側とし、ロッド側管路14およびヘッド側管路15のいずれか他方を選択的に吸入側として、作動油を吐出することができる。これにより、ポンプ12から吐出された作動油は、ロッド側管路14またはヘッド側管路15を介し、ロッド側油室11r、ヘッド側油室11hに送り込まれる。これによって、シリンダ11c内でピストン11bが移動し、ロッド11aを介してフィン1の角度が変わる。
また、ピストン11bの移動により、ヘッド側管路15またはロッド側管路14からは、作動油がヘッド側管路15またはロッド側管路14を介して排出され、ポンプ12へと循環される。
コントローラ20は、受け取った制御指令と、圧力センサ21r,21h、ポテンショメータ22から受け取った検出信号とに基づき、サーボモータ13の回転数と回転方向を指示する指令信号を出力する。コントローラ20から出力された指令信号は、サーボアンプ24を経てサーボモータ13に入力され、サーボモータ13がその指令信号に基づいて作動することで、油圧シリンダ11が駆動され、フィン1の角度が変更される。なお、サーボモータ13には、ロータリーエンコーダ25が設けられ、サーボモータ13の回転数がサーボアンプ24にフィードバックされるようにしても良い。
図2に示すように、コントローラ20で受け取った制御指令に含まれる、目標となるフィン1の角度である指令フィン角θsと、ポテンショメータ22から受け取った検出信号に基づいて得られる、その時点での実際のフィン1の角度である実フィン角θrとから、指令フィン角θsと実フィン角θrの差分角度θ1を算出する(θ1=θs−θr)。
さらに、増幅指令フィン角θ2を、予め定められた係数Kxにより、さらに増幅し、これを、サーボモータ13の回転数指令値θ3とする。この回転数指令値θ3は、増幅指令フィン角θ2に対応した角度だけフィン1の角度を変えるためのサーボモータ13の回転数である。
予め定めた時間が経過した後は、コントローラ20は、サーボモータ13を、前記とは逆方向に回転させ、フィン1を元の角度に復帰させる。
また、差分角度θ1の絶対値が1°未満であるときには、油圧駆動回路10Aでフィン1を動かす角度が小さいため、回転数指令値θ3を差分角度θ1のまま、もしくは予め定めた係数を掛けるのみ等としても応答性に特に影響は少ない。そして、指令フィン角θsと実フィン角θrの差分角度θ1が大きい場合にのみ、サーボモータ13に入力する信号を増幅するようにすれば、応答性を有効に高めることができる。
さらに、差分角度θ1の絶対値が1°未満であるときには、回転数指令値θ3を、差分角度θ1のまま、あるいは予め定めた係数Kpを掛けてもよい、としたが、これに限るものではない。差分角度θ1の絶対値が小さい場合には、油圧駆動回路10Aでフィン1を動かす角度が小さいため、回転数指令値θ3を差分角度θ1のまま、あるいは予め定めた係数Kpを掛ける差分角度θ1のしきい値は、1°に限らず、3°、5°等、適宜に設定することができる。さらに、差分角度θ1が大きいほど、増幅指令フィン角θ2が大きくなるよう、差分角度θ1の角度を複数段階に区分して、増幅度合いを漸次大きくしてもよい。
これには、図3に示すように、ロータリーエンコーダ25の変化量に、これをサーボモータ13の回転角度に変換するための係数Krを掛ける。得られたサーボモータ13の回転角角度に基づき、予め用意されたサーボモータ13の回転角とポンプ12からの吐出量との関係を示すテーブルαq等から、ポンプ12における作動油の吐出量を特定する。
特定された作動油の吐出量を、油圧シリンダ11におけるピストン11bの作動油の受圧面積で除算する。これにより、油圧シリンダ11のピストン11bのストローク変化量が算出される。
そして、得られたピストン11bのストローク変化量に、予め定められた係数Kstを掛けることで、実フィン角θrを算出する。
次に、本発明のフィンスタビライザの油圧駆動回路、フィンスタビライザのフィン角度制御方法の第2実施形態について説明する。
ここで、以下に説明する第2実施形態において、上記第1実施形態と共通する構成については、図中に同符号を付してその説明を省略する。
図4に示すように、本実施形態の油圧駆動回路10Bは、ポテンショメータ22を備えない他は、部品構成は、上記第一の実施形態と同様となっている。
図5に示すように、コントローラ20に入力される制御指令に含まれる、目標となるフィン1の角度である指令フィン角θsに、予め定められた定数Ktを乗算することにより、指令フィン角θsにあるときのフィン1によって発生することのできる、船体の揺れを抑えるためのトルクを算出し、これを指定トルクTsとする。
また、予め用意されたサーボモータ13の駆動電流および駆動電圧と、その駆動電流および駆動電圧にあるときのフィン1で発生するトルクとの関係を示すテーブルαt等に基づき、コントローラ20(サーボアンプ24)でサーボモータ(図示せず)に対して出力している実際のサーボモータ13の駆動電流Diおよび駆動電圧Dvから、実際にフィン1で発生している実トルクTrを求める。
そして、得られた指定トルクTsと、実トルクTrとから、以下の式により、指令フィン角の補正値θhを算出し、これを、コントローラ20から出力する。
θh=(Ts−Tr)×θx/Tx
ここで、θxは、フィン1の角度、Txはフィン1が角度θxであるときの計画トルクである。
フィン1の角度とフィン1で発生しているトルクは大まかには比例関係と見なせるので、上述の式で補正角度を算出できる。また、詳細に算出しようとすれば、フィン1の角度と計画トルクとの関係を、予めテーブルもしくはマップで作成しておき、これを使って補正角度を求める方法も考えられる。
また、フィン1で発生しているトルクをパラメータとして制御を行うことにより、実際の潮流または水流の影響によって、コントローラ20からの指令フィン角θsと、実際のフィン1が発生している揚力とが一致しない場合でも、フィン1で発生すべき揚力の過不足を補正することにより、発生する揚力を最適化することができる。
次に、本発明のフィンスタビライザの油圧駆動回路、フィンスタビライザのフィン角度制御方法の第3実施形態について説明する。
ここで、以下に説明する第3実施形態において、上記第1実施形態と共通する構成については、図中に同符号を付してその説明を省略する。以下に示す第3実施形態の構成は、上記第1または第2実施形態の構成と組み合わせて用いることのできるものである。
上記第1、第2実施形態においては、サーボアンプ24を介してサーボモータ13で用いる電気は、船舶内の各部に電気を供給する発電機等の船内供給電源30から供給されている。これに対し、以下に示す第3実施形態では、図6に示す油圧駆動回路10Cでは、サーボアンプ24を介してサーボモータ13で用いる電気を、船内供給電源30と、バッテリ31とから供給できるようになっている。
例えば、バッテリ31としては、フィンスタビライザ駆動専用に限らず、船全体電源に共通する他のバッテリを適用してもよい。
10A,10B,10C 油圧駆動回路
11 油圧シリンダ
11a ロッド
11b ピストン
11c シリンダ
11h ヘッド側油室
11r ロッド側油室
12 ポンプ
13 サーボモータ(モータ)
14 ロッド側管路(第一の管路)
15 ヘッド側管路(第二の管路)
16 シャトル弁
17 タンク
18a,18b 安全弁
20 コントローラ
21r,21h 圧力センサ
22 ポテンショメータ
24 サーボアンプ
25 ロータリーエンコーダ
30 船内供給電源
31 バッテリ
32 電源コントローラ
Claims (6)
- 船体の揺れを抑制するため、船体の両舷にそれぞれ設けられたフィンの角度を調節する油圧駆動回路であって、
前記フィンの角度を変えるロッドを備え、該ロッドが設けられたピストンをシリンダ内で油圧により移動させる油圧シリンダと、
前記油圧シリンダの前記シリンダ内で前記ピストンの一方の側に接続された第一の管路と、
前記油圧シリンダの前記シリンダ内で前記ピストンの他方の側に接続された第二の管路と、
前記第一の管路および前記第二の管路の一方に選択的に作動油を送り込むとともに、前記第一の管路および前記第二の管路の他方から選択的に前記作動油を吸い込むポンプと、
前記ポンプを駆動するモータと、
前記モータの作動を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記船体の揺れに応じて決定された前記フィンの角度を示す指令フィン角と、実際の前記フィンの角度を示す実フィン角との差分である差分フィン角をN乗(Nは1を含まない1より大きな数)し、該N乗された前記差分フィン角を更新指令フィン角とし、該更新指令フィン角に対応した角度だけ前記フィンの角度を変えるための前記モータの回転数を決定して、該決定された前記回転数で前記モータを回転させることを特徴とするフィンスタビライザの油圧駆動回路。 - 前記コントローラは、前記差分フィン角が予め定めた角度以上であるときのみ、前記差分フィン角をN乗する処理を実行することを特徴とする請求項1に記載のフィンスタビライザの油圧駆動回路。
- 前記コントローラは、前記モータの回転角度に基づいて、前記油圧シリンダにおける前記ピストンのストローク変化量を算出し、算出された前記ストローク変化量から、前記フィンの実フィン角を算出することを特徴とする請求項1または2に記載のフィンスタビライザの油圧駆動回路。
- 前記コントローラは、前記モータに供給される駆動電流値および駆動電圧値に基づいて、前記フィンで前記船体に対して発生している実トルクを算出し、前記フィンで発生すべきトルクの指令値を補正することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のフィンスタビライザの油圧駆動回路。
- 前記モータに電力を供給するために、船内供給電源とバッテリとを備え、
前記フィンの角度が、前記更新指令フィン角に到達するまでの間は、前記船内供給電源または前記バッテリから前記モータに電力を供給し、
前記フィンの角度が、前記更新指令フィン角から元の角度に戻るときには、潮流または水流によって前記フィンが受ける圧力によって前記フィンの角度を変え、該フィンの角度の変化によって前記ポンプに戻る前記作動油により前記モータを逆転させて回生発電させ、回生発電された電力を前記バッテリに蓄電することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のフィンスタビライザの油圧駆動回路。 - モータの回転制御によりフィンスタビライザに作用する油圧を制御するフィンの角度制御方法であって、
船体の揺れに応じて決定されたフィンの角度を示す指令フィン角と、実際の前記フィンの角度を示す実フィン角との差分である差分フィン角をN乗(Nは1を含まない1より大きな数)することで更新指令フィン角を算出する工程と、
該更新指令フィン角に対応した角度だけ前記フィンの角度を変えるための前記モータの回転数を決定する工程と、
決定された前記回転数で前記モータを回転させる工程と、
を備えることを特徴とするフィンスタビライザのフィン角度制御方法。
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