前記製造方法では、挟み込み工程において、電子モジュールサブアッシーが上金型及び下金型で上下方向から挟み込まれることにより前記内部空間は密封されるが、前記充填工程で充填される溶融樹脂の粘度は低いことから、当該溶融樹脂は、その充填圧力により両金型外へ漏れるおそれがある。
本発明の目的は、回路基板を溶融樹脂で封止する際の金型外への樹脂漏れの発生を抑制可能な防水電子回路ユニットの製造方法及び電子回路ユニットを提供することである。
前記課題を解決するため、本発明者らは、コネクタのうち、特に、両金型による挟み込み方向と平行な面(例えば、コネクタの両側面)は、両金型による挟み込み方向の圧力をほとんど受けないため、当該両側面と金型の内面との間から前記溶融樹脂が漏れるおそれのあることに着目した。そして、このような挟み込み方向と平行な方向の面を低減させることにより、金型外への樹脂漏れの発生を抑制できることに想到した。
本発明はこのような観点からなされたものであり、電子部品が実装された回路基板及び前記回路基板に実装されるコネクタを有する電子回路ユニットと、前記回路基板を被覆する封止部材とを備えた防水電子回路ユニットの製造方法であって、前記電子回路ユニットを準備する電子回路ユニット準備工程と、前記封止部材の外形に対応する形状の内部空間を有する金型を前記電子回路ユニットの周囲に配置する金型配置工程と、硬化することにより前記封止部材となる溶融樹脂を前記内部空間に充填する樹脂充填工程と、を含み、前記電子回路ユニット準備工程では、前記コネクタとして、前記回路基板に対し当該回路基板の特定方向に並ぶように取り付けられるとともに当該回路基板のうち前記特定方向と交差する交差方向の端部から当該回路基板の外側に向かってそれぞれが突出する形状の複数の端子と、前記複数の端子をまとめて保持するハウジングとを有し、前記ハウジングは、前記複数の端子をまとめて保持する端子保持壁を含むとともに当該コネクタと嵌合される相手側コネクタのハウジングと嵌合可能な形状を有するハウジング本体と、このハウジング本体の外面のうち前記複数の端子の並び方向の外側を向く両側面から両外側に向かって張り出す張出部とを有し、前記張出部は、前記ハウジング本体の外面のうち前記回路基板と当該回路基板の厚さ方向に重ならない部位に形成されるとともに、前記ハウジング本体とつながる側の端部から離れる方向に向かうに従って次第に前記厚さ方向の寸法が小さくなる形状を有するものを準備し、前記金型配置工程では、前記金型として、前記厚さ方向の両側に分割可能であり、かつ、前記ハウジング本体の外面及び前記張出部の外面を前記並び方向の全域にわたって前記厚さ方向の両側から挟み込むことにより前記内部空間を密封可能な第一金型及び第二金型を用い、これら第一金型及び第二金型が前記ハウジング本体の外面及び前記張出部の外面を前記厚さ方向の両側から挟み込むように当該第一金型及び第二金型を配置することで前記回路基板の周囲に前記内部空間を形成し、かつ、当該内部空間を密封する防水電子回路ユニットの製造方法を提供する。
この発明によれば、前記ハウジング本体とつながる側の端部から離れる方向に向かうに従って次第に前記厚さ方向の寸法が小さくなる形状の張出部が、前記第一金型及び前記第二金型により前記厚さ方向の両側から挟み込まれるので、前記ハウジング本体のうち前記並び方向と平行な面のみならず、当該ハウジング本体の前記両側面から張り出す張出部も前記第一金型及び前記第二金型により前記厚さ方向の圧力を受ける。これにより、前記内部空間が密封されるので、前記樹脂充填工程において、前記ハウジングと前記金型との間を介しての当該金型外への樹脂漏れの発生が抑制される。
さらに、前記金型配置工程では、前記第一金型及び前記第二金型として、前記ハウジング本体の外面及び前記張出部の外面を前記厚さ方向の両側から挟み込んだときに当該ハウジング本体の外面及び当該張出部の外面に前記並び方向の全域にわたって食い込む形状の凸部をそれぞれが有するものを用いることが好ましい。
このようにすれば、前記樹脂充填工程での前記金型外への樹脂漏れの発生がさらに抑制可能となる。具体的には、前記金型配置工程において、前記第一金型及び前記第二金型により前記ハウジング本体及び前記張出部が挟み込まれることにより、当該ハウジング本体の外面及び張出部の外面に前記第一金型の凸部及び前記第二金型の凸部がそれぞれ食い込むので、前記樹脂充填工程において、前記ハウジング本体及び前記張出部に食い込んでいる各凸部よりも当該金型の外側への樹脂漏れの発生が一層抑制される。
この場合において、前記金型配置工程では、前記第一金型及び前記第二金型として、これら両金型を前記ハウジング本体の外面及び前記張出部の外面を前記厚さ方向の両側から挟み込むように配置したときに前記ハウジング本体の外面及び前記張出部の外面を前記厚さ方向の両側から挟持する挟持面をそれぞれが有し、前記凸部が前記挟持面から前記厚さ方向について前記ハウジング側に向かって突出して前記ハウジング本体の外面及び前記張出部の外面に食い込む形状のものを用いることが好ましい。
このようにすれば、前記金型配置工程では、前記挟持面で前記ハウジングが挟持されつつ前記凸部が当該ハウジングに食い込むので、前記凸部が前記ハウジングに食い込んだ状態が安定的に保持される。
加えて、前記金型配置工程では、前記第一金型及び前記第二金型として、前記挟持面及び前記交差方向における内側に形成された内端面を有する挟持部をそれぞれが有し、前記凸部のうちの前記交差方向における内側の端部が前記内端面とつながっているものを用いることが好ましい。
このようにすれば、前記第一金型及び前記第二金型で前記ハウジングを前記厚さ方向の両側から挟み込んだときに前記ハウジング本体の外面及び前記張出部の外面と前記挟持面との間に前記ハウジングの公差に起因した隙間が形成されたとしても、当該隙間への樹脂漏れの発生が抑制される。詳細には、前記凸部のうちの前記交差方向における内側の端部が前記内端面から前記交差方向に離間している場合は、前記隙間が形成されたときに前記樹脂充填工程において前記隙間のうち前記内端面から前記凸部までの部分に樹脂漏れが発生する。そうすると、当該製造方法で得られた防水電子回路ユニットには、前記樹脂充填工程における樹脂の前記隙間への漏れに起因した薄肉の成形部が形成される。この成形部には応力集中が発生することによるクラックが生じやすく、このため封止部材による封止が担保されないおそれがある。これに対し、本発明では、前記凸部のうちの前記交差方向における内側の端部が前記内端面とつながっているので、仮に前記ハウジングの公差に起因した隙間が形成されたとしても、前記樹脂充填工程において、前記ハウジング本体及び前記張出部に食い込んでいる各凸部よりも当該金型の外側、すなわち、前記隙間への樹脂漏れの発生が抑制される。
より具体的には、前記金型配置工程では、前記第一金型及び前記第二金型として、前記凸部のうちの前記内端面とつながった端部から前記ハウジング本体の外面及び前記張出部の外面に至るまでの部位が、前記内端面を前記ハウジング側に延長したときの仮想面を含んで当該仮想面から前記交差方向について内側に位置する形状を有するものを用いることが好ましい。
このようにすれば、前記隙間への樹脂漏れの発生が一層抑制されるので、当該製造方法により得られる防水電子回路ユニットへの前記成形部の形成がさらに抑制される。具体的には、前記凸部のうちの前記内端面とつながった端部から前記ハウジング本体の外面及び前記張出部の外面に至るまでの部位が、前記仮想面を含んで当該仮想面から前記交差方向について内側に位置する形状を有するので、前記樹脂充填工程において、前記仮想面から外側への樹脂漏れの発生が抑制される。よって、当該製造方法により得られる防水電子回路ユニットでは、前記封止部材のうち前記仮想面と対応する面から外側への前記成形部の形成が抑制される。
また、本発明において、前記金型配置工程では、前記第一金型及び前記第二金型で前記ハウジング本体の外面を前記厚さ方向の両側から挟み込んだときの挟持圧により前記端子保持壁と前記複数の端子とが前記厚さ方向において密着するまで前記ハウジング本体を弾性変形させるように前記第一金型及び第二金型を配置することが好ましい。
このようにすれば、前記樹脂充填工程において、前記ハウジングと前記端子との間を介しての樹脂漏れの発生が抑制されるので、接続信頼性が向上する。具体的には、前記端子のうち前記回路基板に取り付けられた側とは反対側、すなわち、相手側コネクタと嵌合する側の部位に前記溶融樹脂が至るのが抑制されるので、接続不良の発生が抑制される。
また、本発明は、電子部品が実装された回路基板とこの回路基板に実装されるコネクタとを備え、前記コネクタを前記回路基板の厚さ方向の両側から挟み込むことにより前記回路基板を取り囲む形状の内部空間を形成可能な金型で前記コネクタを前記回路基板の厚さ方向の両側から挟み込んで前記内部空間へ溶融樹脂を流し込むことにより前記回路基板を封止するための電子回路ユニットであって、前記コネクタは、前記回路基板に対し当該回路基板の特定方向に並ぶように取り付けられるとともに当該回路基板のうち前記特定方向と交差する方向の端部から当該回路基板の外側に向かってそれぞれが突出する形状の複数の端子と、前記複数の端子をまとめて保持するハウジングとを有し、前記ハウジングは、前記複数の端子をまとめて保持する端子保持壁を含むとともに当該コネクタと嵌合される相手側コネクタのハウジングと嵌合可能な形状を有するハウジング本体と、このハウジング本体の外面から前記複数の端子の並び方向に張り出す張出部とを有し、前記ハウジング本体は、前記並び方向の全域にわたって前記金型により前記回路基板の厚さ方向の両側から挟持される被挟持面を有し、前記張出部は、前記ハウジング本体の外面のうち前記回路基板と当該回路基板の厚さ方向に重ならない部位に形成されるとともに、前記被挟持面のうち前記並び方向の端部につながり、かつ、当該被挟持面とつながる側の端部から離れる方向に向かうに従って次第に前記回路基板の厚さ方向の寸法が小さくなる形状を有する電子回路ユニットを提供する。
この発明によれば、前記ハウジング本体の前記被挟持面と前記張出部とを前記厚さ方向の両側から金型で挟み込み、当該金型の内部空間に溶融樹脂を充填することにより、その樹脂の充填時における前記金型外への樹脂漏れの発生を抑制しながら前記回路基板の防水構造を構築することができる。具体的には、前記ハウジング本体は、前記並び方向の全域にわたって前記金型により前記回路基板の厚さ方向の両側から挟持される被挟持面を有し、前記張出部は、前記被挟持面のうち前記並び方向の端部につながり、かつ、当該被挟持面とつながる側の端部から離れる方向に向かうに従って次第に前記回路基板の厚さ方向の寸法が小さくなる形状を有するので、前記厚さ方向の両側から前記被挟持面及び張出部の外面を前記並び方向の全域にわたって挟み込むことにより、前記回路基板の周囲に前記内部空間を形成し、かつ、当該内部空間を密封可能な形状の金型で当該被挟持面及び張出部を前記厚さ方向の両側から挟み込むことにより、前記ハウジングの外面のうち前記被挟持面及び前記張出部の外面が前記金型により確実に挟み込まれる。よって、前記金型の内面と前記被挟持面及び前記張出部の外面との間に隙間が形成されることが抑制されるので、金型外への樹脂漏れの発生を抑制しながら前記回路基板の防水構造を構築することができる。
以上のように、本発明によれば、回路基板を封止樹脂で封止する際の金型外への樹脂漏れを抑制可能な防水電子回路ユニットの製造方法及び電子回路ユニットを提供することができる。
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態の防水電子回路ユニット10及びその製造方法について、図1ないし図7を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の防水電子回路ユニット10は、回路基板20及びこの回路基板20に実装されたコネクタ30を有する電子回路ユニット12と、回路基板20を封止する封止部材14とを備える。
回路基板20は、回路構成用の導体パターンが形成されたプリント配線板と、このプリント配線板に実装された各種電子部品21とを含む。この回路基板20は、特定方向(以下、「左右方向」という)に並ぶように形成された複数の端子挿通孔20aと、これら端子挿通孔20aよりも左右方向の外側に形成されたピン挿通孔20bとを有する。ここで、図1に示すように、回路基板20の厚さ方向を上下方向とし、複数の端子挿通孔20aの並び方向を左右方向とし、上下方向及び左右方向のそれぞれに直交する方向を前後方向とする。なお、本実施形態では、複数の端子挿通孔20aは、前後の2列に並ぶように形成されている。
コネクタ30は、回路基板20に固定される複数の端子40と、これら端子40をまとめて保持するハウジング50とを有する。
各端子40は、回路基板20の端子挿通孔20aに挿通される被挿通部と、この被挿通部の上端から前方に向かって延びる形状を有しハウジング50に保持される被保持部とを有する。本実施系形態では、被挿通部は上下方向に長い形状を有しており、被保持部は前後方向に長い形状を有する。
図1〜図3に示すように、ハウジング50は、略直方体状の外形を有するハウジング本体51と、このハウジング本体51の左右両側の側面から左右方向の外側に張り出す張出部56と、位置決めピン58とを有する。このハウジング50は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の絶縁材料により一体的に成形されており、左右方向の中心を基準として左右対称な形状を有する。ハウジング本体51は、相手側コネクタのハウジングと嵌合する嵌合部52と、この嵌合部52の後端につながった端子保持壁53とを有する。
嵌合部52は、前方から挿入される相手側コネクタのハウジングを受け入れるとともに当該相手側コネクタのハウジングと嵌合可能な形状を有する。具体的には、嵌合部52は、平板状の天壁52aと、この天壁52aと上下方向に間隔を有して当該天壁52aと平行に配置される底壁52bと、天壁52a及び底壁52bのそれぞれの幅方向(左右方向)両端部同士をつなぐ左右の側壁52cとを有する。
端子保持壁53は、天壁52a、底壁52b及び左右の側壁52cの後端につながっている。この端子保持壁53は、後述の上金型61及び下金型62に挟持される被挟持面53aと、端子40を当該端子保持壁53の後方から前方へ挿通させて当該端子40の被保持部を保持する端子保持部53bとを有する。被挟持面53aは、回路基板20と平行な面である。端子保持部53bは、端子40の被保持部を前後方向に挿通可能な端子挿通穴を有する。つまり、端子保持壁53は、端子挿通穴を残して嵌合部52の後端を塞ぐ形状を有する。
張出部56は、ハウジング本体51の左右両側の側面から、より詳細には、端子保持壁53の左右両側の側面から左右方向の外側に向かって張り出す形状を有する。この張出部56は、端子保持壁53とつながる側の端部から離れる方向(左右方向の外側)に向かうに従って次第に上下方向の寸法が小さくなる形状を有する。図2に示すように、張出部56は、コネクタ30が回路基板20に実装された状態において当該回路基板20と上下方向(回路基板20の厚さ方向)に重ならない部位、すなわち、回路基板20よりも前方に形成される。本実施形態では、張出部56は、端子保持壁53の上部につながっており、端子保持壁53側から離れる方向に向かうにしたがって下方に傾斜する上側傾斜部56aと、端子保持壁53の下部につながっており、端子保持壁53側から離れる方向に向かうにしたがって上方に傾斜する下側傾斜部56bと、上側傾斜部56a及び下側傾斜部56bの後端を塞ぐ閉塞部56cとを有する。上側傾斜部56aの下端は、下側傾斜部56bの上端とつながっている。図2及び図3に示すように、張出部56は、前方に開口する形状の肉抜部56dを有する。そして、上側傾斜部56aの外面は、端子保持壁53の上側の被挟持面53aとつながっており、下側傾斜部56bの外面は、端子保持壁53の下側の被挟持面53aとつながっている。
位置決めピン58は、回路基板20のピン挿通孔20bとともに、ハウジング50の回路基板20に対する相対位置を決定する位置決め手段を構成する。位置決めピン58は、ピン挿通孔20bを上から下へ挿通可能な形状を有する。
次に、この防水電子回路ユニット10の製造方法を説明する。以下に説明するように、本実施形態の製造方法は、電子回路ユニット準備工程と、金型配置工程と、樹脂充填工程と、離型工程とを含む。
前記電子回路ユニット準備工程は、回路基板20を形成するとともに、この回路基板20及び当該回路基板に実装されたコネクタ30を有する電子回路ユニット12を得る工程である。この工程では、前記プリント配線板にはんだペーストを印刷した後、当該プリント配線板の所定箇所に電子部品21を配置するとともに、端子40の被挿通部が端子挿通孔20aに挿通され、かつ、位置決めピン58がピン挿通孔20bに挿通されるようにコネクタ30をプリント配線板に固定する。そして、これをリフロー炉へ投入後、冷却する。これにより、回路基板20が形成されるとともに、コネクタ30の回路基板20への実装が完了する。
前記金型配置工程は、封止部材14の外形に対応する形状の内部空間S(図5を参照)を有する金型を電子回路ユニット12の周囲に配置する工程である。この工程では、前記金型として、図4に示すように、電子回路ユニット12のハウジング50を上下方向から挟み込むようにハウジング50の上に配置される上金型61及びハウジング50の下に配置される下金型62と、ハウジング本体51内に前方から嵌め込まれる補助金型63とが用いられる。
上金型61は、ハウジング50の上面、より詳細には、端子保持壁53の上側の被挟持面53a及び上側傾斜部56aの上面を下金型62との間で挟み込む上挟持部61cと、この上挟持部61cから下向きに突出する凸部61bとを有する。上挟持部61cは、端子保持壁53の上側の被挟持面53a及び上側傾斜部56aの外面と対向する位置(上下方向の内側)に形成された上挟持面61aと、前後方向の内側に形成された内端面61dとを有する。上挟持面61aは、上側の被挟持面53a及び上側傾斜部56aの外面に沿う形状、すなわち、上側の被挟持面53a及び上側傾斜部56aの外面と当接したときに当該上側の被挟持面53a及び上側傾斜部56aの外面との間に隙間を生じさせない形状を有する。内端面61dは、上金型61の抜きのためにその上端から下端(ハウジング50側)に向かうにしたがって次第にかつ僅かに前方に傾斜する平坦な平面となっている。凸部61bは、上挟持面61aの左端から右端に至るように、すなわち、上挟持面61aの左右方向の全域にわたって連続的に延びる形状を有する。図6に示すように、凸部61bは、上挟持面61aから当該上挟持面61aと直交する上下方向の下向きに延びる内側面61eと、この内側面61eの下端から前方かつ上方に延びて上挟持面61aにつながる形状の外側面とを有する。外側面は、内側面61eからみて前方に向かって凸となるように湾曲している。
下金型62は、ハウジング50の下面、より詳細には、端子保持壁53の下側の被挟持面53a及び下側傾斜部56bの下面を上挟持部61cとの間で挟み込む下挟持部62cと、この下挟持部62cから上向きに突出する凸部62bとを有する。下挟持部62cは、端子保持壁53の下側の被挟持面53a及び下側傾斜部56bの外面と対向する位置(上下方向の内側)に形成された下挟持面62aと、前後方向の内側に形成された内端面62dとを有する。下挟持面62aは、下側の被挟持面53a及び下側傾斜部56bの外面に沿う形状、すなわち、下側の被挟持面53a及び下側傾斜部56bの外面と当接したときに当該下側の被挟持面53a及び下側傾斜部56bの外面との間に隙間を生じさせない形状を有する。内端面62dは、下金型62の抜きのためにその下端から上端(ハウジング50側)に向かうにしたがって次第にかつ僅かに前方に傾斜する平坦な平面となっている。凸部62bは、下挟持面62aの左端から右端に至るように、すなわち、下挟持面62aの左右方向の全域にわたって連続的に延びる形状を有する。この凸部62bは、上金型61の凸部61bと上下対称な形状を有する。
補助金型63は、嵌合部52の内側を埋める形状を有する。この補助金型63は、嵌合部52の内側に配置されたときに端子40と干渉しないように当該端子40を受け入れる形状の端子受入部63aを有する。
この金型配置工程では、まず、補助金型63が嵌合部52内に配置される。続いて、電子回路ユニット12が上金型61及び下金型62により上下方向の両側から挟持される。具体的には、上挟持面61aが上側の被挟持面53a及び上側傾斜部56aの外面に対向し、かつ、下挟持面62aが下側の被挟持面53a及び下側傾斜部56bの外面に対向する姿勢でこれら両金型61,62によりハウジング50が挟み込まれる。これにより、回路基板20の周囲に内部空間Sが形成され、かつ、当該内部空間Sが密封される(図5を参照)。このとき、被挟持面53a、上側傾斜部56a及び下側傾斜部56bが各挟持面61a,62aにより上下から挟持される。そして、図7に示すように、凸部61bは被挟持面53a及び上側傾斜部56aの外面に食い込み、凸部62bは被挟持面53a及び下側傾斜部56bの外面に食い込む。なお、この図7では、説明のために、上金型61及び下金型62により挟み込まれる前のハウジング50の外形を二点鎖線で示し、両金型61,62の外形を実線で示している。またこのとき、両金型61,62がハウジング50を挟持する挟持圧によりハウジング本体51が弾性変形し、それにより端子保持部53bと各端子40との上下方向のそれぞれの隙間が閉塞されて当該端子保持部53bと当該各端子40とが上下方向において密着する。
前記樹脂充填工程では、前記金型配置工程で密封された内部空間Sにエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を溶融させた溶融樹脂を充填する。これにより、回路基板20及びこの回路基板20と複数の端子40とのはんだ付け箇所が溶融樹脂に覆われる。なお、本実施形態では、内部空間Sに溶融樹脂を充填するための充填口の図示は省略されている。
前記離型工程は、上金型61、下金型62及び補助金型63を取り外す工程である。この工程は、前記溶融樹脂が硬化して封止部材14となった後に実行される。
以上の工程により、防水電子回路ユニット10が製造される。なお、前記金型配置工程において、各凸部61b,62bがハウジング50に食い込むため、前記離型工程後のハウジング50の外面のうち、各凸部61b,62bと対応する部位、すなわち、被挟持面53a及び張出部56の外面には、各凸部61b,62bと対応する形状の凹部が形成される。
以上説明したように、本実施形態の防水電子回路ユニット10の製造方法によれば、ハウジング本体51とつながる側の端部から離れる方向に向かうに従って次第に上下方向の寸法が小さくなる形状の張出部56が、上金型61及び下金型62により上下方向の両側から挟み込まれるので、ハウジング本体51のうち左右方向と平行な面である被挟持面53aのみならず、当該ハウジング本体51の両側面から張り出す張出部56も両金型61,62により確実に挟み込まれる。これにより、内部空間Sが密封されるので、前記樹脂充填工程での金型外への樹脂漏れの発生が抑制される。
また、本実施形態の製造方法では、前記金型配置工程において、上側の被挟持面53a及び上側傾斜部56aの外面に上金型61の凸部61bが食い込み、かつ、下側の被挟持面53a及び下側傾斜部56bの外面に下金型62の凸部62bが食い込むので、前記樹脂充填工程において、端子保持壁53及び張出部56に食い込んでいる各凸部61b,62bよりも当該金型61,62の外側への樹脂漏れの発生が一層抑制される。このとき、被挟持面53a、上側傾斜部56a及び下側傾斜部56bは、各挟持面61a,62aにより挟持されているので、各凸部61b,62bがハウジング50に食い込んだ状態が安定的に保持される。
また、本実施形態の製造方法の前記金型配置工程では、第一金型61及び第二金型62でハウジング本体51の外面を上下方向の両側から挟み込んだときの挟持圧により、端子保持部53bと各端子40とが上下方向において密着するまでハウジング本体51を弾性変形させるように両金型61,62を配置するので、前記樹脂充填工程におけるハウジング50と各端子40との間を介しての嵌合部52側への樹脂漏れの発生が抑制される。つまり、前記樹脂充填工程において、各端子40の前端側へ溶融樹脂が至るのが抑制されるので、接続不良の発生が抑制される。
また、本実施形態の電子回路ユニット12によれば、上金型61及び下金型62を用いることにより簡便に回路基板20の防水構造が構築される。すなわち、被挟持面53aと張出部56とを上下方向の両側から上金型61及び下金型62で挟み込み、両金型61,62の内部空間Sに溶融樹脂を充填することにより、その樹脂の充填時における金型外への樹脂漏れの発生を抑制しながら回路基板20の防水構造を構築することができる。
(第二実施形態)
第二実施形態では、第一実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第一実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。この第二実施形態は、第一実施形態において生じるおそれのある不都合をさらに解消するものである。
前記第一実施形態では、ハウジング50に厚さ方向の寸法誤差が生じ、第一金型61及び第二金型62でハウジング50を厚さ方向の両側から挟み込んだときに各挟持面61a,62aがハウジング50の外面に密着しなくなった場合、被挟持面53a及び張出部56の外面と各挟持面61a,62aとの間に隙間が形成される。第一実施形態では、凸部61b,62bのうちの内側の端部(内側面)が内端面61d,62dから金型の外側に離間しているため、凸部61b,62bの内側の領域にも隙間が形成される。そうすると、前記樹脂充填工程においてこの隙間に樹脂が進入することにより、当該製造方法で得られた防水電子回路ユニット10には、前記隙間の形状に対応する形状の薄肉の成形部が形成される。この成形部には応力集中が発生することによるクラックが生じやすく、このため封止部材14による封止が担保されない場合がある。本実施形態は、このような不都合を解消するものである。
図11から図15は、本発明の第二実施形態の防水電子回路ユニットの製造方法で用いる上金型61の凸部61bの近傍を示している。この図11から図15では、ハウジング50に厚さ方向の寸法誤差が生じた場合の当該ハウジング50の外面を二点鎖線で示している。なお、本実施形態においても、下金型62の凸部62bの形状は上金型61の凸部61bの形状と上下対称となっているので、以下、上金型61を例に説明する。
図11に示されるように、本実施形態の凸部61bの内側面61eは、上挟持部61cの内端面61dにつながっている。より具体的には、この凸部61bの内側面61eは、内端面61dと面一となっている。換言すれば、当該凸部61bのうちの内端面61dとつながった端部から被挟持面53a及び上側傾斜部56aに至るまでの部位は、内端面61dをハウジング50側に延長したときの仮想面と一致している。なお、この凸部61bの外側面は、第一実施形態と同様に、内側面61eの下端から前方かつ上方に延びて上挟持面61aにつながっている。
このように、本実施形態の金型配置工程では、第一金型61及び第二金型62として、各凸部61b,62bのうちの内側面がそれぞれ内端面61d,62dとつながっているものを用いることから、第一金型61及び第二金型62でハウジング50を厚さ方向の両側から挟み込んだときに被挟持面53a及び張出部56の外面と各挟持面61a,62aとの間にハウジング50の公差に起因した隙間が形成されたとしても、当該隙間への樹脂漏れの発生が抑制される。つまり、第一実施形態と異なり、当該製造方法で得られた防水電子回路ユニット10に前記成形部が形成されるのが抑制される。
さらに、第一金型61及び第二金型62として、凸部61b,62bのうちの内端面61d,62dとつながった端部から被挟持面53a及び張出部56の外面に至るまでの部位が、内端面61d,62dをハウジング50側に延長したときの仮想面と一致する形状を有するものを用いるので、前記隙間のうち内端面61d,62dから内側面までの部分(凸部よりも内側の領域)への樹脂漏れの発生が回避される。そのため、当該製造方法により得られる防水電子回路ユニット10では、封止部材14のうち前記仮想面と対応する面から外側への前記成形部の形成が抑制される。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上記実施形態では、張出部56が端子保持壁53の左右両側の側面から左右方向の外側に向かって張り出す形状を有する例を示したが、この張出部56は、嵌合部52の左右の側壁52cから左右方向の外側に向かって張り出す形状とされてもよい。ただし、端子保持壁53は、端子挿通穴を除いて嵌合部52の後端を塞ぐ形状、すなわち、前後方向に厚肉な構造を有するので、当該端子保持壁53を上金型61及び下金型62により上下方向から挟み込んだときの端子保持部53bの変形量は、嵌合部52を上金型61及び下金型62により上下方向から挟み込んだときの端子保持部53bの変形量に比べると無視できる程度に小さくなる。よって、張出部56は、上記実施形態のように、端子保持壁53の左右の側面につながる形状である方が好ましい。
また、上記実施形態では、上側傾斜部56aは、端子保持壁53とつながる側の端部から左右方向の外側に向かうにしたがって下方に向かって直線状に延びる形状を有し、下側傾斜部56bは、端子保持壁53とつながる側の端部から左右方向の外側に向かうにしたがって上方に向かって直線状に延びる形状を有する例について示したが、各傾斜部56a,56bの形状は、これに限られない。この張出部56は、ハウジング本体51とつながる側の端部から離れる方向に向かうに従って次第に上下方向の寸法が小さくなる形状であればよいので、例えば、各傾斜部56a,56bは、互いに上下方向に離間する方向に向かって凸となるように湾曲する形状であってもよく、あるいは、互いに上下方向に近づく方向に向かって凸となるように湾曲する形状であってもよい。さらに、各傾斜部56a,56bのいずれか一方は、被挟持面53aとつながるとともに当該被挟持面53aと平行な面を有する形状であってもよい。なお、いずれの場合であっても、上金型61の上挟持面61a及び下金型62の下挟持面62aは、張出部56の外形に沿った形状に設定される。
また、上記第一実施形態では、図6に示すように、凸部61bの内側面61eが、上挟持面61aから上下方向の下向きに直線状に延びる形状である例を示したが、図8に示すように、この内側面61eは、外側面からみて後方(内側)に向かって凸となるように湾曲した形状であってもよい。すなわち、凸部61bは、上挟持面61aから下方に向かって突出する半球状であってもよい。また、図9に示すように、凸部61bは、前後に2列に並ぶ形状であってもよい。この場合、凸部61bの上挟持面61aからの突出量を、図6及び図8に示す凸部61bの突出量より小さくしたとしても、前記図6及び図8に示す凸部61bの場合と同様の樹脂漏れ抑制の機能が維持される。したがって、この場合、前記樹脂漏れ抑制の機能を維持しながら、凸部61bがハウジング50に食い込んだときに当該ハウジング50に発生する応力を分散させることができる。なお、このことは、下金型62の凸部62bについても同様である。
また、図10に示すように、端子保持壁53は、被挟持面53aより前側に形成されたリブ53cをさらに有してもよい。このリブ53cは、少なくとも上側の被挟持面53aと天壁52aとの境界及び下側の被挟持面53aと底壁52bとの境界を含む部位に形成される。このようにすれば、ハウジング50の剛性が向上するので、上金型61及び下金型62により端子保持壁53及び張出部56を挟持したときの端子保持部53bの変形が抑制される。
また、上記第二実施形態では、図11に示すように、凸部61bの内側面61eが、上挟持面61aから上下方向の下向きに直線状に延びる形状である例を示したが、図12に示すように、この内側面61eは、外側面からみて後方(内側)に向かって凸となるように湾曲した形状であってもよい。また、凸部61bは、図13に示すように、前後に3列に並ぶ形状であってもよい。この3列のうちの最も後方に配置された凸部の内側面61eは、内端面61dと面一となるように、すなわち、前記仮想面と一致するように形成されている。この場合、凸部61bの上挟持面61aからの突出量を、図11及び図12に示す凸部61bの突出量より小さくしたとしても、この図11及び図12に示す凸部61bの場合と同様の樹脂漏れ抑制の機能が維持される。また、凸部61bは、図14に示すように、前後に3列に並ぶ形状であってもよい。この3列のうちの最も後方に配置された凸部の内側面61eは、図13に示される凸部61bのそれと異なり、前記仮想面から前後方向について内側に位置する形状を有する。あるいは、凸部61bは、図15に示すように、前後に3列に並ぶ形状であって、そのうちの最も後方に配置された凸部の内側面61eが、図13及び図14に示される凸部61bのそれと異なり、前記仮想面から前後方向について外側に位置する形状であってもよい。以上のことは、下金型62の凸部62bについても同様である。