JP5905788B2 - 熱可塑性樹脂発泡体の製造方法及び熱可塑性樹脂発泡体の製造装置 - Google Patents
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Description
熱可塑性樹脂発泡体の製造方法としては、熱風等の対流加熱を用いる方法や近赤外線等による輻射加熱を用いる方法等があり、それぞれ異なる装置によって適用されている。
熱風加熱を用いた熱可塑性樹脂発泡体の製造方法によれば、不活性ガスの噴射ノズルを備えた加熱炉内に、ベルトに載せられたシート状の熱可塑性樹脂組成物を送り込み、不活性ガスを熱媒体として、熱可塑性樹脂組成物を加熱して発泡させ、その後冷却して熱可塑性樹脂発泡体を得る。
また、発泡の完了までの時間を短縮するために、より高温にした熱風により加熱する場合は、急速加熱ができたとしても、表層の発泡のみが過度に進行し、表層と芯層との発泡バランスの悪い熱可塑性樹脂発泡体しか得られないという問題があった。
また、近赤外線ヒータ等の輻射加熱を用いた場合、熱可塑性樹脂組成物が搬送される際に蛇行やブレが生じてしまうことにより、近赤外線ヒータ等と熱可塑性樹脂組成物との間の距離にばらつきが生じる。したがって、昇温速度が部分的に変化してしまい、厚さ方向の発泡状態にバラつきが生じやすく、全体が均質に発泡された熱可塑性樹脂発泡体が得られ難いという問題があった。
本発明は、上記課題に鑑み、効率良く発泡状態が均質な熱可塑性樹脂発泡体を製造する方法及び熱可塑性樹脂発泡体の製造装置を提供する。
本発明では、熱風による発泡の前に、前記近赤外線により前記未発泡体を加熱するため、前記未発泡体の表層及び芯層を近赤外線により熱損失を抑えて効率良く加熱し、その後、熱風により均質に加熱することができる。
本発明では、未発泡体を前記熱分解型発泡剤の分解開始温度と同じ温度の熱風により分解開始温度よりも30℃低い温度から分解開始温度まで加熱する場合の昇温速度よりも、高い昇温速度となるように近赤外線で加熱する。そのため、前記未発泡体の昇温ないし発泡に要する時間を可及的に短くして熱可塑性樹脂発泡体を効率よく製造することができる。
ここで、発泡度とは、未発泡体の発泡度を0%とし、最終発泡倍率に対する実際の発泡倍率の割合を百分率で表したものである。また、発泡倍率は、加熱した後の前記未発泡体を直ちに水中浸漬により急冷却させて発泡の進行を停止させ、水中から取り出して24時間、常温(20℃±15℃;JISZ8703)にて乾燥させた後に、JISZ8807に準拠して求めた密度から算出されるものである。
本発明では、未発泡体の発泡度が20%を超えない範囲で近赤外線により加熱するため、未発泡体の表面形状が不均一となることによる局所的な変形が発生することを回避することができる。その結果、前記局所的に変形された箇所において近赤外線の熱源と未発泡体の表面との間の距離が近くなり過ぎて、前記変形された箇所において過度な発泡又は焼けが発生することを回避することができる。そして、未発泡体に過度な発泡又はやけが生じる前から熱風により加熱するため、未発泡体を均質に発泡させることができる。
本発明によれば、未発泡体の表面温度が前記熱分解型発泡剤の分解開始温度よりも高くなるまで前記近赤外線により前記未発泡体を加熱することにより、その後熱風による前記未発泡体の発泡を速やかに開始させることができる。
前記発泡炉は、熱風を加熱手段とするものであり、前記発泡炉の上流側に、近赤外線により前記未発泡体を加熱する加熱炉を備えていることを特徴とする。
本発明によれば、発泡炉の上流側において、前記未発泡体を前記近赤外線により加熱する加熱炉を有しているため、未発泡体を熱損失を抑えて効率良く加熱することができ、発泡状態が均質な熱可塑性樹脂発泡体を製造することができる。
本発明では、未発泡体を前記熱分解型発泡剤の分解開始温度の熱風により分解開始温度よりも30℃低い温度から分解開始温度まで加熱する場合よりも高い昇温速度で近赤外線により加熱する。そのため、前記未発泡体の昇温及び発泡に要する時間を可及的に短くして熱可塑性樹脂発泡体を効率よく製造することができる。
本発明では、前記加熱炉において、未発泡体の発泡度が20%を超えない範囲で加熱するため、未発泡体の表面形状が不均一となることによる局所的な変形が発生することを回避することができる。その結果、前記局所的に変形された箇所において近赤外線の発生源と未発泡体の表面との間の距離が近くなり過ぎて、前記変形された箇所において過度な発泡又は焼けが発生することを回避することができる。そして、未発泡体に過度な発泡又は やけが生じる前から熱風により加熱するため、未発泡体を均質に発泡させることができる。
本発明では、前記未発泡体の表面温度が前記熱分解型発泡剤の分解開始温度よりも高くなるまで前記近赤外線により前記未発泡体を加熱することにより、熱風による前記未発泡体の発泡を速やかに開始させることができる。
本発明では、前記加熱炉の前記送出口と前記発泡炉の前記挿入孔とが連結しているため、加熱炉で加熱された未発泡体を冷却させることなく発泡炉に挿入することができる。
本実施形態において、熱可塑性樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂及び熱分解型発泡剤を含む熱可塑性樹脂組成物からなり、架橋された未発泡体を、その発泡度が20%を超えない範囲でかつ表面が分解開始温度よりも高くなるまで近赤外線により加熱し、その後熱風により加熱して発泡させたものである。
なお、分解開始温度とは、熱分解型発泡剤がごくわずかでも分解し始める温度をいい、発泡剤の種類、粒径、添加する助剤により異なるが、例えば、アゾジカルボンアミドで助剤を添加しない場合は約160℃〜205℃である。
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、ポリプロピレン等のポリオレフィン系熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは単独で用いても、2種類以上適宜混合して使用してもよいが、ポリエチレン、ポリプロピレンがよく利用される。
なお、発泡剤は、樹脂の溶融温度以上の分解温度を持たなくてはならないこと、よく利用される熱可塑性樹脂であるポリエチレン、ポリプロピレンの融点が105℃、145℃であること、コスト的に安いことを考慮すると、上記発泡剤のうち、ADCAを用いることが望ましい。
具体的には、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレラート、ジ−(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。これらの有機過酸化物は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
この方法では、熱風加熱法の場合のような不活性ガスを用いる必要はない。
具体的には、加熱炉4と発泡炉5とは、原反シート10bが鉛直方向下向きに送出されるよう向きを変えた位置近傍すなわち、ローラー13Bの直下に原反シート10bの通路14に沿ってこの順で配置されている。
近赤外線ヒータ15は、複数の棒状のヒータランプ(不図示)が所定のピッチで平行に配列されてユニット状に構成されたものである。不図示のヒータランプは、波長が2.5μm以下の電磁波である近赤外線を放出するようになっている。
なお、上記の場合、近赤外線ヒータ15,15の表面と、原反シート10bの表面との間の距離が、3cmより小さくなると、原反シート10bの搬送中に近赤外線ヒータ15,15の表面と原反シート10bの表面とが接触してしまうおそれがあり、25cmより大きいと近赤外線が拡散して効率良く昇温させることが困難となる。
発泡炉5内には、この炉内を通過する原反シート10bに対して熱風ノズル(不図示)が配置されているとともに検温装置が設置されている。そして、熱風ノズルは、熱風を送出することにより加熱炉4内の空気を均一に加熱して発泡炉5全体を(分解開始温度以上、分解開始温度+100℃以下の範囲で)均一に昇温させて、原反シート10bの外表面及び内部の発泡を進行させることができるようになっている。
発泡炉5は、原反シート10bを熱可塑性樹脂発泡体(以下「発泡体シート」という)10cに発泡させた後、送出口5bから送出するようになっている。
まず、押出機2のホッパー8に、熱可塑性樹脂材料、発泡剤、架橋剤及びその他必要に応じて添加した添加剤を投入し、押出機2により発泡剤及び架橋剤の分解開始温度よりも低い温度でこれら熱可塑性樹脂材料、発泡剤、架橋剤及び添加剤を混練溶融して金型9に向けて押し出し、熱可塑性樹脂組成物からなる原反シート10aを成形する。
そして、原反シート10bは、発泡度が20%を超える前に、すなわち、原反シート10bの表面形状が近赤外線による加熱によって局所的に変形してしまう前に、加熱炉4の送出口4bから送出される。これにより、原反シート10bに局所的な変形が生じて近赤外線ヒータ15,15と原反シート10bの表面との間の距離が近くなり過ぎ、前記変形された箇所において過度な発泡若しくは焼けが発生することが回避される。
また、原反シート10bは、その表面温度が発泡剤の分解開始温度よりも高くなった時点で加熱炉4から送出され発泡炉5に送入される。したがって、加熱炉4と発泡炉5との間で原反シート10bの温度が低下しても、加熱炉4と発泡炉5との間が近接しているため、発泡炉5に送入された際に原反シート10bが分解開始温度よりも大幅に温度低下することが回避される。
また、熱可塑性樹脂発泡体の製造装置1によれば、加熱炉4における近赤外線ヒータ15,15による原反シート10bの表面の昇温速度を、基準昇温速度よりも速くなるよう設定しているため、原反シート10bを原反シート10bに含まれた発泡剤の分解開始温度の前後まで速やかに昇温させることができる。したがって、熱可塑性樹脂発泡体の製造装置1によれば、発泡体シート10cの製造効率を高めることができるという効果が得られる。
また、加熱炉4においては、原反シート10bの表面温度が発泡剤の分解開始温度よりも高くなるまで加熱されることが望ましいが、加熱炉4における加熱方法これに限られるものではなく、原反シート10bの発泡度が20%を超えない範囲、すなわち前記分解開始温度まで近赤外線ヒータ15,15により加熱されれば本発明の作用及び効果を得ることができる。
熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製、ペトロセン186R、融点111℃)100重量部に対し、発泡剤として分解温度が210℃であるアゾジカルボンアミド(ADCA)15重量部と、有機過酸化物としてジクミルパーオキサイド(日本油脂社製、パークミルD、1分半減期温度175℃,なお、1分半減期温度とは、有機過酸化物の半減期が1分となる分解温度をいう)1.5重量部とを、ラボプラストミル((株)東洋精機製作所製、R60)を用いて、135℃で3分間混練した後、140℃で3分間プレスし未架橋の原反シート10aを得た。
加熱炉4としては、内寸が幅56cm×奥行き56cm×高さ45cmである断熱仕様のボックスを用いた。そして、近赤外線ヒータ((株)ハイベック社製、ヒータランプとして、波長が1.2μm、ワット密度が4.2W/mm、有効加熱範囲が幅24cm×15.6cmのものを用い、ヒータランプ同士の間のピッチを2.6cmとしてヒータランプ6本を配列した縦×横:17cm×35cmのユニット状としたもの)を一対用意し、前記ボックスの高さ方向の中央部に33.4cmの距離をおいて対向配置させた。
内寸が幅56cm×奥行き56cm×高さ45cmである断熱仕様のボックス内に、熱風発生器((株)竹網社製、15kW)の熱風を供給可能にしたものを発泡炉5として用いた。発泡炉5は加熱炉の下流側に2cmの間隔を設けて配置した。
原反シート10bの上端縁にシールテープを結び、この原反シート10bを加熱炉4内の近赤外線ヒータ15,15の表面から原反シート10bの表面までの距離が16.5cmとなる位置に設置した。
近赤外線ヒータ15,15の出力を100%にして原反シート10bを加熱し、原反シート10bの表面温度が30.5℃から230℃になるまで昇温させた。なお、230℃とは、ADCAの分解開始温度(210℃)より高い温度である。この場合、原反シート10bの表面が180℃から210℃まで上昇するまでの昇温速度は、約3.2℃/秒であった。
加熱された原反シート10bの表面温度は、熱電対を用いて検温した。
加熱炉4と発泡炉5との間での原反シート10bの発泡度は17%であった。
また、原反シート10bが発泡炉5に送り込まれる直前の原反シート10bの表面温度は230℃であった。
その後、原反シート10bは、その発泡が完了した時点で発泡炉5から取出し、発泡体シート10cを得た。なお、原反シート10bの発泡完了の確認は、最終発泡倍率(30倍)に発泡された発泡体シート10cの切り出しサンプルとの目視比較により行った(以下、実施例2及び比較例1〜9において同様)。
原反シート10bの上端縁にシールテープを結び、この原反シート10bを、加熱炉4内の近赤外線ヒータ15,15の表面から原反シート10bの表面までの距離が16.5cmとなる位置に設置した。
近赤外線ヒータ15,15の出力を100%にして原反シート10bを加熱し、原反シート10bの表面温度が30.5℃から230℃になるまで昇温させた。なお、230℃とは、ADCAの分解開始温度(210℃)より高い温度である。この場合、原反シート10bの表面が180℃から210℃まで上昇するまでの昇温速度は、約3.2℃/秒であった。加熱された原反シートの表面温度は、熱電対を用いて検温した。
加熱炉4と発泡炉5との間での原反シート10bの発泡度は17%であった。
また、原反シート10bが発泡炉5に送り込まれる直前の原反シートの表面温度は232℃であった。なお、原反シートの表面温度が2℃上昇したのは、発泡炉5の送入口5aから漏れた熱風の影響を受けたためと考えられる。
その後、原反シート10bの発泡が完了した時点で発泡炉5から取出し、発泡体シート10cを得た。
原反シート10bの上端縁にシールテープを結び、この原反シート10bを加熱炉内の近赤外線ヒータの表面から原反シート10bの表面までの距離が16.5cmとなる位置に設置した。
近赤外線ヒータの出力を45%にして原反シート10bが発泡し終えるまで熱風加熱を用いずに加温した。この場合、原反シート10bの表面が180℃からADCAの分解開始温度(210℃)まで上昇するまでの昇温速度は、約1.04℃/秒であった。
原反シート10bの上端縁にシールテープを結び、この原反シート10bを加熱炉内の近赤外線ヒータの表面から原反シート10bの表面までの距離が16.5cmとなる位置に設置した。
近赤外線ヒータの出力を50%にして原反シート10bが発泡し終えるまで熱風加熱を用いずに加温した。この場合、原反シート10bの表面が180℃から210℃まで上昇するまでの昇温速度は、約1.28℃/秒であった。
原反シート10bの上端縁にシールテープを結び、この原反シート10bを加熱炉内の近赤外線ヒータの表面から原反シート10bの表面までの距離が16.5cmとなる位置に設置した。
近赤外線ヒータの出力を75%にして原反シート10bが発泡し終えるまで熱風加熱を用いずに加温した。この場合、原反シート10bの表面が180℃から210℃まで上昇するまでの昇温速度は、約2.22℃/秒であった。
原反シート10bの上端縁にシールテープを結び、この原反シート10bを加熱炉内の近赤外線ヒータの表面から原反シート10bの表面までの距離が16.5cmとなる位置に設置した。
近赤外線ヒータの出力を90%にして原反シート10bが発泡し終えるまで熱風加熱を用いずに加温した。この場合、原反シート10bの表面が180℃から210℃まで上昇するまでの昇温速度は、約3.2℃/秒であった。
原反シート10bの上端縁にシールテープを結び、この原反シート10bを加熱炉内の近赤外線ヒータの表面から原反シート10bの表面までの距離が16.5cmとなる位置に設置した。
近赤外線ヒータの出力を100%にして原反シート10bが発泡し終えるまで熱風加熱を用いずに加温した。この場合、原反シート10bの表面が180℃から210℃まで上昇するまでの昇温速度は、約3.2℃/秒であった。
原反シートの上端縁にシールテープを結び、230℃に加熱した熱風加熱による発泡炉に設置して原反シートを加熱した。原反シートの発泡が完了した時点で発泡炉から取出し、発泡体シートを得た。
なお、原反シート10bの表面が180℃から210℃に到達するまで昇温速度は、約0.63℃/秒であった。
原反シート10bの上端縁にシールテープを結び、250℃に加熱した熱風加熱による発泡炉に設置して原反シート10bを加熱した。原反シート10bの発泡が完了した時点で発泡炉から取出し、発泡体シートを得た。
なお、原反シート10bの表面が180℃から210℃に到達するまでの昇温速度は、約1.79℃/秒であった。
実施例1,2及び比較例1〜7によって原反シート10bから発泡体シート10cに成形されるまでに要した時間及び発泡均一性の結果は、表1,2のとおりである。なお、比較例6,7は、分解開始温度よりも20℃又は40℃高温で加熱したものである。したがって、比較例6,7よりも低い、ADCAの分解開始温度(210℃)の熱風で加熱した基準昇温速度は、比較例6,7の昇温速度よりも更に遅い。
実施例1,2によれば、比較例6,7よりも高い昇温速度となるように設定されたため、比較例6,7の場合に比べて、発泡完了までに要する時間を飛躍的に短縮することができた。なお、比較例6,7は、加熱炉4と発泡炉5との間を原反シート10bが移動する間に表面の温度が低下するのを見越して、ADCAの分解開始温度よりも高い温度で加熱しているものであり、また、比較例6,7の昇温速度は、基準昇温速度よりも速いため、実施例1,2によれば、基準昇温速度の熱風で加熱するよりも更に早く発泡を完了させることができることは言うまでもない。また、実施例1,2では、原反シート10bの表面温度が前記分解開始温度よりも高くなった時点で、かつ、発泡度が20%を超えない範囲で原反シート10bを加熱炉4から発泡炉5に移動させたため、均質な発泡体シート10cが得られた。
これに対し、比較例1〜5の場合は、近赤外線ヒータのみを用いて加熱し、熱風のみによる加熱を用いずに原反シート10bを加熱したため、発泡の均質性が得られなかった(均一性が×)。
これは、近赤外線ヒータ15,15により、表面の温度が内部温度よりも早く加熱されているため、表面と内部とで温度に差異が生じているためと考えられる。
なお、近赤外線加熱の出力を(100%より)低くして、実施例1および実施例2より発泡所要時間を長くして加熱しても、やはり均一性は改善されなかった。
近赤外線加熱の出力を、比較例1の場合より低くして、均一性が改善されたとしても発泡所要時間はさらに長くなり、本発明が解決しようとする課題に反することは言うまでもない。
4 加熱炉
5 発泡炉
10b 未発泡体
10c 発泡シート(熱可塑性樹脂発泡体)
Claims (7)
- 熱可塑性樹脂及び熱分解型発泡剤を含む熱可塑性樹脂組成物からなり、架橋された未発泡体を加熱して発泡する熱可塑性樹脂発泡体の製造方法において、
前記未発泡体をその発泡度が20%を超えない範囲となるように近赤外線により加熱して発泡させ、その後熱風により加熱して発泡することを特徴とする熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。 - 前記近赤外線により加熱することによる前記未発泡体の単位時間あたりの昇温速度が、前記未発泡体を前記熱分解型発泡剤の分解開始温度と同じ温度の熱風により前記分解開始温度よりも30℃低い温度から前記分解開始温度まで加熱する場合の前記未発泡体の単位時間あたりの昇温速度よりも速いことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
- 前記未発泡体の表面温度が前記熱分解型発泡剤の分解開始温度よりも高くなるまで前記近赤外線により前記未発泡体を加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
- 熱可塑性樹脂及び熱分解型発泡剤を含む熱可塑性樹脂組成物からなる未発泡体を加熱して発泡させる発泡炉を備えた熱可塑性樹脂発泡体の製造装置であって、
前記発泡炉は、熱風を加熱手段とするものであり、
前記発泡炉の上流側に、近赤外線により前記未発泡体をその発泡度が20%を超えない範囲となるように加熱して発泡させる加熱炉を備えていることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡体の製造装置。 - 前記近赤外線により加熱することによる前記未発泡体の単位時間当たりの昇温速度が、前記未発泡体を前記熱分解型発泡剤の分解開始温度と同じ温度の熱風により前記分解開始温度よりも30℃低い温度から前記分解開始温度まで加熱する場合の前記未発泡体の単位時間当たりの昇温速度よりも速くなるよう設定されていることを特徴とする請求項4に記載の熱可塑性樹脂発泡体の製造装置。
- 前記加熱炉は、前記未発泡体の表面温度が前記熱分解型発泡剤の分解開始温度よりも高くなるまで前記近赤外線により前記未発泡体を加熱するものであることを特徴とする請求項4又は5に記載の熱可塑性樹脂発泡体の製造装置。
- 前記加熱炉及び前記発泡炉は、それぞれ前記未発泡体の送入口と送出口とを有し、前記加熱炉の前記送出口と前記発泡炉の送入口とが連結されていることを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡体の製造装置。
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