JP5904331B2 - アレイ探傷装置および方法 - Google Patents

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Description

この発明は、超音波を用いた測定装置および方法に関するものであり、特にアレイ探触子を用いて試験体に発生した腐食量を求める装置および方法に関するものである。なおこの発明は、試験体の凹部の凹み量測定全般に適用できるものであるが、以下では試験体の腐食量測定を例として説明する。さらに、腐食量測定は「探傷」という文言の意味に含まれるとする。
近年構造物の老朽化が問題となっており、適切な維持管理が要求されている。鋼板の腐食についても同様であり、検査を行って腐食があれば修理を行う必要がある。したがって、腐食量を定量的に求める検査装置および方法が必要となってきている。従来、鋼板の腐食検査法として、例えば超音波斜角探触子を用いた方法がある(非特許文献1)。非特許文献1では、鋼部材中に超音波を斜めに伝搬させ、腐食で反射されたエコーの大きさから腐食量を推定するというものである。
また従来法として、SH波を用いた方法もある(非特許文献2)。非特許文献2では、試験体の探傷面に対してほぼ平行にSH波が伝搬するようにして、腐食からのエコーを受信し、エコーの大小から腐食の大小を推定するという検査法が開示されている。
特開平11−281630号公報
安波博道 他著、「トラス橋床版埋設鋼部材の腐食調査への超音波探傷法の適用」、防錆管理、pp.1-5、2011年8月 辻英朗 他著、「鋼管ポール埋設部腐食判定・診断システムの紹介」、NIPPON DENRO TECHNICAL REPORT, NO.45, pp.23-28、2007年7月 木村友則 他著、「SH板波の発生に必要な振動子寸法に関する検討」、日本非破壊検査協会、平成23年秋季講演大会講演概要集、pp. 95-96、2011年10月
以上のような従来の探傷方法において、例えば上記非特許文献1の方法では、探触子と鋼材との接触状況によりエコーの大きさが変わるという問題があった。すなわち、腐食量が一定であっても、探触子と鋼材との接触状況が良好な場合には大きなエコーが受信され、不良な場合には小さなエコーが受信される。このため、腐食量の定量的な評価は困難という問題があった。
また上記非特許文献2のような検査法では、SH波を用いており、SH波を非特許文献2に示されているような斜角探触子で送受信する場合、非常に粘度の高い接触媒質が必要である。このような接触媒質を用いる場合、エコー高さを安定させて保つことが困難である。すなわち非特許文献1と同様に、腐食量以外にもエコーの大きさを左右する要因が大きく、このため定量的な評価は困難であった。
このように、探触子と試験体との接触状態によってエコーの大きさは変化するので、エコーの大きさから腐食量を求めると精度が良くないという問題があった。
この発明は、上記のような課題を解消し、探触子と試験体との接触状態等によって生じるエコーの変化に影響されずに精度が良く腐食量を求める等の探傷が行えるアレイ探傷装置および方法を提供することを目的とする。
この発明は、電気信号によって駆動され超音波を試験体中に伝搬させ、かつ前記試験体中を伝搬した超音波を電気信号に変換する複数の素子を並べて設けたアレイ探触子と、
前記アレイ探触子の各素子を駆動しかつ前記各素子からの電気信号を受信してアレイ探傷を行う送受信器と、を備え、前記送受信器は、前記アレイ探触子の各素子をそれぞれ所望のタイミングで駆動し各素子で得られる電気信号を受けて、送信時に所望の角度で超音波が伝搬された場合に生じる前記電気信号を求めさらに合成波を生成し、角度に対する前記合成波の振幅の角度特性を求めて振幅が相対的に大きく変化する角度から前記試験体内に存在する凹部の凹み量を求めることを特徴とするアレイ探傷装置にある。
この発明では、探触子と試験体との接触状態等によって生じるエコーの変化に影響されずに精度が良く腐食量を求める等の探傷が行えるアレイ探傷装置および方法を提供できる。
この発明によるアレイ探傷装置のアレイ探触子における角度制御を説明するための図である。 この発明における腐食量測定を説明するための図である。 この発明におけるカットオフ角θの求め方を説明するための図である。 この発明の実施の形態1によるアレイ探傷装置の構成図である。 この発明の実施の形態1によるアレイ探傷方法を説明するためのフローチャートである。 この発明の実施の形態1による探傷方法に基づく腐食測定のシミュレーションでの鋼板における3次モードの位相速度分散特性と腐食部の分散特性を併せて示した図である。 この発明の実施の形態1による探傷方法に基づく腐食測定のシミュレーションで用いたアレイ探触子の周波数応答特性を示す図である。 この発明の実施の形態1による探傷方法に基づく腐食測定のシミュレーションにおける角度θと3次モードのSH板波の周波数との関係を示した図である。 この発明の実施の形態1による探傷方法に基づく腐食測定のシミュレーションにおける音場シミュレーション結果の一例を示す図である。 この発明の実施の形態1による探傷方法に基づく腐食測定のシミュレーションにおける音場シミュレーション結果の別の例を示す図である。 この発明の実施の形態1による探傷方法に基づく腐食測定のシミュレーションにおける受信された合成波の一例を示す図である。 この発明の実施の形態1による探傷方法に基づく腐食測定のシミュレーションにおける受信された合成波の別の例を示す図である。 この発明の実施の形態1による探傷方法に基づく腐食測定のシミュレーションで得られた角度θに対する合成波の振幅の角度特性を示す図である。 この発明の実施の形態1による探傷方法における基準の角度特性を求めるための構成を説明するための概略図である。 この発明の実施の形態1による探傷方法に基づく腐食測定のシミュレーションで得られた基準の角度特性の一例を示す図である。 図13の角度特性を図15の基準の角度特性で正規化した結果を示す図である。 この発明の実施の形態1による探傷方法における基準の角度特性を求めるための別の構成を説明するための概略図である。 この発明によるアレイ探傷装置のアレイ探触子の素子ピッチについて説明するための図である。 この発明によるアレイ探傷装置のアレイ探触子の素子ピッチについて説明するための図である。 この発明の実施の形態2における送信時における超音波の重ね合わせを説明するための図である。 この発明の実施の形態2における超音波の送信について説明するための図である。 この発明の実施の形態2における超音波の受信について説明するための図である。 この発明の実施の形態2によるアレイ探傷装置の構成図である。 この発明の実施の形態2によるアレイ探傷方法を説明するためのフローチャートである。 この発明の実施の形態2による探傷方法に基づく腐食測定のシミュレーションにおける音場シミュレーション結果の一例を示す図である。 この発明の実施の形態2による探傷方法に基づく腐食測定のシミュレーションにおける各素子における受信信号を示す図である。 この発明の実施の形態2による探傷方法に基づく腐食測定のシミュレーションにおける各素子における受信信号を合成した波形の一例を示す図である。 この発明の実施の形態2による探傷方法に基づく腐食測定のシミュレーションにおける各素子における受信信号の合成波の波形の一例を示す図である。 この発明の実施の形態2による探傷方法に基づく腐食測定のシミュレーションで得られた角度θに対する合成波の振幅の角度特性を示す図である。 この発明の実施の形態2による探傷方法に基づく腐食測定のシミュレーションにおいて透過法で求めた基準の角度特性の一例を示す図である。 図29の角度特性を図30の基準の角度特性で正規化した結果を示す図である。 この発明の実施の形態3によるアレイ探傷装置の構成図である。 この発明の実施の形態3によるアレイ探傷方法を説明するためのフローチャートである。 一般的なSH板波の概念図である。 一般的な位相速度の分散特性の例を示す図である。 一般的な群速度の分散特性の例を示す図である。 一般的なSH板波の周波数と伝搬状況を説明するための図である。 斜角探触子により試験体中にSH板波を励振する状況を説明する図である。
この発明は、単純にエコーの大きさから腐食量を求めるのではなく、アレイ探触子によって超音波の送信および受信の角度を変化させ、受信信号の振幅が大きく変化する角度を見出すことにより腐食量等を求めるアレイ探傷装置および方法に関するものである。
この発明は、超音波のカットオフ現象を利用して腐食量を求める。この発明による装置および方法を説明する前に、まずSH板波およびカットオフ現象について図34−図37を参照しながら説明する。図34はSH板波の概念図である。図35は位相速度の分散特性の例である。図36は群速度の分散特性の例である。図37はSH板波の周波数と伝搬状況を説明する図である。図34−図37において、1は試験体、2は探触子、3は腐食部(凹部)である。
SH板波とは、図34に示すように、紙面に対して垂直に振動しながら、上下両側を気体や液体で満たされた試験体内を伝搬する板波である。図34では(a)−(c)に1次モードから3次モードのSH板波を示しており、波長をλで示している。SH板波の波数βは、下記式(1)に示す分散方程式で与えられることが広く知られている。
Figure 0005904331
ここで、ωは各周波数、Vは横波音速、tは試験体の板厚である。またnは整数であり、モードの次数に対応する。
またSH板波に限らず、一般的に波の位相速度Vおよび群速度Vは、それぞれ、以下の式(2)(3)で与えられる。
Figure 0005904331
式(1)−式(3)を用い、試験体をt=19mmの鋼板とした場合の位相速度Vおよび群速度Vを計算した結果(周波数に対する変化)を、それぞれ、図35および図36に示す。ここでは、鋼の横波音速を3240m/sとして計算した。図35,36では、2次モードから7次モードまでの位相速度および群速度を示している。
図36に示すように、各モードには群速度が零となる周波数が存在する。群速度が零ということは、波として伝搬しないことを意味している。すなわち、群速度が零となる周波数以下では、SH板波は伝搬しない。この周波数をカットオフ周波数と呼ぶ。一方、式(1)を整理して周波数fを求める式に変形すると、
Figure 0005904331
となる。カットオフ周波数では群速度が零となり、位相速度(図35参照)が無限大になるので、式(4)においてV→∞とすることで求めることができる。すなわち、板厚が腐食によりtからt’になった場合のカットオフ周波数をfとすると、
Figure 0005904331
となる。
さて、SH板波の周波数とfとの関係について図37を参照しながら説明する。図37は、周波数によりSH板波が反射される場合(図37の(a))と透過する場合(図37の(b))を示す。(a)に示すように、f以下の周波数のSH板波が腐食部3に伝搬してきた場合、腐食部3では群速度が零であるため伝搬していかない。このため、探触子2の方向に戻っていく。すなわち、腐食部3からの反射波が受信される。これに対し(b)に示すように、fを超える周波数のSH板波が腐食部3に伝搬してきた場合、群速度はある値を持つので腐食部3を伝搬し、透過していく。このように、SH板波の周波数を変化させながら試験体1中を伝搬させ、腐食部3からの反射波が受信される場合はSH板波の周波数がf以下とし、腐食部3からの反射波が受信されない場合はSH板波の周波数がfを超えると判断することができる。すなわちSH板波の周波数を変化させ、反射波の振幅が大きく変化(周囲と比べて相対的に大きく変化)する周波数を求め、これをfとすれば式(5)からt’を求めることができ、t−t’という簡単な式から腐食部3の腐食量(傷の凹み量)を求めることができる。
しかし従来は、このような検査方法は行われていなかった。その理由を、図38を参照しながら説明する。図38は斜角探触子により試験体1中にSH板波を励振する状況を説明する図である。図中、4は斜角探触子のくさび、5はSH波用探触子である。
従来のSH板波発生方法は、図38に示すようにSH波用探触子5をくさび4上に設置し、くさび4内の波長λと試験体1内のSH板波の波長λとが、下記式(6)に示す関係になるように、くさび4の入射角αを設定していた。
Figure 0005904331
このような関係を満足すれば、位相速度VのSH板波が強く励振される。また式(6)は、下記の式(7)のように書き換えることができる。
Figure 0005904331
ここでVは、くさび4を伝搬するSH波の音速である。Vおよびαはくさび4の固有の値であり、温度などによる微小な変動を除けば常に一定の値を保つ。すなわち、式(7)から分かるように、試験体1中に伝搬されるSH板波の位相速度Vは、温度などによる微小な変動を除け常に一定である。
位相速度が常に一定であれば、図35に示した位相速度の計算例から分かるように、SH板波の周波数も各モード毎に単一となる。図35の例の場合、例えば位相速度を6200m/sとすると、2次モードは0.2MHz(スケールアウトしているが予測可能)、3次モードは0.3MHz、4次モードは0.4MHzの周波数のSH板波が励振される。すなわち、従来の斜角探触子では入射角αが一定であるために単一の位相速度のSH板波しか伝搬させることができず、結果として周波数を変えることが困難であった。可変角の斜角探触子を用いて入射角αを変えることにより周波数を変化させるという方法も考えられるが、上述のようにSH波の接触媒質は非常に粘性の高いものが必要であるので、可変角斜角探触子でSH波を送受することは現実的ではない。したがって従来では、SH板波の周波数を変化させながらの探傷は、行われていなかった。
この問題を解決するため、この発明では、アレイ探触子を用い角度を変化させることによりSH板波の周波数を変化させ、カットオフ現象を利用して腐食部3の腐食量を測定するというものである。なお、アレイ探触子に相当するセンサを用いて腐食の検査を行うという従来技術は、例えば上記特許文献1に記載されている。しかしこの従来技術はカットオフ現象を利用するものではなく、この発明とは原理が異なり、装置構成や方法も異なるものである。
以下、この発明によるアレイ探傷装置および方法を各実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、各実施の形態において、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。
実施の形態1.
この発明に係わる実施の形態1によるアレイ探傷装置および方法に関して説明する。まずアレイ探触子による角度制御について、図1を参照しながら説明する。図1は、アレイ探触子により伝搬方向θを変える様子を説明する図であり、図中、1は試験体、6はアレイ探触子である。図1では、超音波送受信素子からなる8つの素子6aが直線上(ここでは伝搬方向を傾ける方向)に沿って並べて設けられたアレイ探触子6を、試験体1に設置した状態を示している。図1では、アレイ探触子6の一番左側の素子が最初に(一番時間的に早く)励振され、以降右隣の素子が順次時間を遅延させて励振され、一番右側の素子が最後に(一番時間的に遅く)励振された状態である。図1の(a)では、各素子に与える励振の遅延時間差は少なく、このためSH波の伝播方向を示した角度θも小さくなっている。一方、図1の(b)では、各素子の与える励振の遅延差が大きいため、角度θも大きくなっている。なお角度θはアレイ探触子6の面、試験体1の面の垂直線とのなす角を示す。
このように、アレイ探触子6の各素子6aの励振タイミングを変化させるというフェーズドアレイ方式を用いれば、角度θを変化させることができる。角度θと腐食量(すなわち凹み量)との関係について、以下に説明する。
(SH波の伝播方向(θ)と腐食量との関係)
アレイ探触子6で励振されたSH波の角度をθとすると、スネルの法則より下記式(8)が成り立つ。
Figure 0005904331
ここで、kおよびkは、それぞれ、SH波および板波の波数である。式(8)を展開すると、次式を得る。
Figure 0005904331
式(9)を式(4)に代入すると、
Figure 0005904331
となる。式(10)から分かるように、角度θを変化させるとSH板波の周波数が変化する。従って、フェーズドアレイ方式で各素子の励振タイミングを制御し、角度θを変化させることより、周波数を変えることができる。
(腐食量測定の具体例)
具体的な方法について、図2を参照しながら説明する。図2は腐食量測定を説明するための図であり、試験体1の健全部における位相速度の分散特性Aと、腐食部3における位相速度の分散特性Bを示している。またアレイ探触子6の周波数応答特性Cも併せて示している。この発明に用いるアレイ探触子6は、図2に示すように、試験体1の健全部におけるカットオフ周波数以上で動作し、腐食部3のカットオフ周波数fを跨ぐような広帯域な特性を持つものとする。このような周波数特性を有するアレイ探触子6の励振タイミングを制御し、角度θを変化させ、SH板波の周波数を変化させる。SH板波の周波数がf以下の場合には腐食部3からの反射波をアレイ探触子6で受信できるが、fを超える場合には板波は腐食部3を透過するため、反射波を受信できない。この発明は、このような原理に基づきfを求め、腐食量を求めるものである。
ここまで、SH板波のカットオフ周波数、フェーズドアレイ方式によるSH板波の周波数変化方法について説明した。以下では、腐食量を求める具体的な方法を示す。角度θを変化させ、SH板波の周波数がfと一致した場合、式(10)の右辺と式(5)の右辺が等しくなるので、
Figure 0005904331
となる。ここで、θはf=fとなる角度である。この角度を、この発明ではカットオフ角と呼ぶことにする。上式を整理すると、下記式(11)を得る。
Figure 0005904331
カットオフ角θは、腐食部3からの反射波の振幅が急激に変化する角度である。式(11)から分かるように、カットオフ角θを求めることができれば、健全部の厚さtは既知であるので、腐食部3における厚さt’を求めることができる。また腐食量は、t−t’という簡単な引き算で求めることができる。このように、カットオフ角θcから腐食量を求めるという方法は、反射波の大きさから腐食量を求める方法と比較すると、アレイ探触子6と試験体1との接触状態の影響を受けづらい。したがって、従来よりも精度良く腐食量を測定することが可能となる。なお、角度θと位相速度Vとの間には式(9)の関係式があるので、角度θに対応した位相速度が存在し、カットオフ角θに対応したカットオフ位相速度も存在する。この発明では角度θを変化させた場合について説明するが、位相速度を用いても同様である。すなわち位相速度Vpを変化させ、合成波の振幅が相対的に大きく変化する位相速度から腐食量を求めることも可能である。
カットオフ角θを求める様子を、図3に示す。式(9)から分かるように、θが小さい場合にはsinθ/Vが小さくなり、したがって位相速度Vは速い。位相速度が速いと、図2に示した分散特性の計算例から分かるように周波数は低くなり、f以下だと腐食部で反射されるので大きな反射波が受信される。θを大きくしていくと位相速度が遅くなり、周波数は高くなっていく。fより高いと腐食部を透過するので、反射波の振幅は低下する。カットオフ角θは、反射波の振幅が大幅に変化する角度として求めることができる。図3では、振幅が約半減した角度をθとしているが、必ずしも半減した角度である必要はない。
(アレイ探傷装置の構成および動作)
これまでは、腐食量測定法の原理について説明した。この原理に基づいて腐食量を測定するアレイ探傷装置の構成および動作について以下に説明する。図4はこの発明の実施の形態1におけるアレイ探傷装置の構成図である。図4において、7は送受信器、8は信号源、9は送信用遅延回路、10は受信用遅延回路、11はA/D変換器、12は加算器、13はメモリ、20は信号処理部、70は制御部である。図4では、例として8素子のアレイ探触子6を用いた場合の構成図を示しているが、8素子でなくても構わない。
まず、送受信器7の構成について説明する。信号源8からの信号線は、アレイ探触子6の素子数の分だけ分配され、送信用遅延回路9(各送信用遅延回路部(Delay))に接続される。送信用遅延回路9は、アレイ探触子6の各素子6aへ接続される。アレイ探触子6の各素子6aは受信用遅延回路10(各受信用遅延回路部(Delay))にも接続されており、受信用遅延回路10はA/D変換器11(各A/D変換器(A/D))に接続される。またA/D変換器11は加算器12(各加算部(+))に接続され、加算器12はメモリ13に接続される。そしてメモリ13は、信号処理部20に接続される。
また、70は送受信器7の探傷動作の全体を制御する制御部であり、各部に所望の動作を行わせるための制御信号を送り(信号線は図が見辛くなるので省略)、また探傷のための設定した情報(例えば角度θ等)をメモリ13に格納する。制御部70,信号処理部20は例えばコンピュータで構成される(同一のコンピュータでも構成可能)。
次に、制御部70からの制御信号による制御によるアレイ探傷装置の動作について説明する。制御部70からの制御信号に従って信号源8からアレイ探触子6の各素子を励振するための信号が発せられ、送信用遅延回路9に伝達される。送信用遅延回路9では各回路部(Delay)に、試験体1中に伝搬するSH波が所望の角度θで伝搬するようにそれぞれに遅延時間が設定され(制御部70による)、遅延を与えられた励振信号はアレイ探触子6の各素子6aに伝達され、SH波を角度θで伝搬させる励振タイミングで各素子6aが励振される。この際、必要があれば増幅器で信号を増幅する。図4では、送信用増幅器TAを含んだ構成図を示している。なお、アレイ探触子6の各素子6aから送信された直後の超音波は単なるSH波であり、SH板波ではない。試験体1の底面や上面で反射されながら伝搬して初めてSH板波となる。したがって、送信および受信においては、あえて「SH波」という文言を使用して説明する。
アレイ探触子6の各素子6aから送信されたSH波は、伝搬過程でSH板波となり、試験体1中を伝搬し、腐食部3の場所に到達する。SH板波の周波数が腐食部3におけるカットオフ周波数fより高いと腐食部3を透過し、アレイ探触子6の方向にはSH波は伝搬してこない。一方、SH板波の周波数f以下だと反射し、アレイ探触子6の方向に伝搬してくる。
伝搬してきたSH板波は、アレイ探触子6の各素子でSH波として受信され電気信号に変換され、受信用遅延回路10に伝達される。この際、必要があれば増幅器で信号を増幅する。図4では、受信用増幅器RAを含んだ構成図を示している。受信用遅延回路10では各回路部(Delay)に、送信時と対応して所望の角度θで受信するように遅延量が設定され(制御部70による)、遅延を与えられた受信信号がA/D変換器11に伝達される。A/D変換器11でディジタル化された受信信号は、加算器12に伝達され、合成波となる。この合成波が、探傷に必要な各種ファクタを予め格納したメモリ13に保存される。メモリ13には、合成波に併せて制御部70からの設定した上記角度θの値が例えばそれぞれ組み合わせて保存される。従ってメモリ13は編集機能も含む記憶部で構成される。
ここまでの動作で、メモリ13には角度θと合成波が保存される。この動作を制御部70の制御により、送信用遅延回路9および受信用遅延回路10の各回路部(Delay)での遅延時間を変化させ、予め設定した角度範囲において角度θを走査しながら行う。すなわち、角度θと合成波が1つのセットとしてメモリ13に保存され、角度走査終了時には、このセットが走査した数だけ存在する。なお角度θの走査ピッチや走査方法、走査範囲などについては、この発明では限定しない。試験状況に応じた角度走査を行えばよい。
信号処理部20において、メモリ13に保存された合成波の振幅を求め、角度θに対する合成波の振幅の角度特性を求める。この角度特性において、振幅が大きく(周囲と比べて相対的に大きいまたは閾値との比較に基づく)変化する角度を見出し、これをカットオフ角θとする。信号処理部20においては、式(11)にθを代入してt’を求める計算を行う。さらにt−t’という計算を行うことにより(tも例えば予めメモリ13に格納)、腐食量が求まる。
なお、メモリ13に保存する合成波の情報として合成波全てを保存しなくても、実施の形態1における腐食量測定は可能である。合成波の最大振幅だけを保存しておけば、合成波の角度特性を求めることができる。すなわち、合成波の振幅だけをメモリ13に保存する装置や方法でもよい。さらに、合成波の振幅の最大値だけをメモリに保存する装置や方法でも、構わない。
以上動作を説明したが、探傷方法の要旨をフローチャートで説明する。図5は、探傷方法説明用のフローチャートである。まずstep1として、アレイ探触子6の各素子6aから送信されるSH波の角度が所望の角度になるよう、送信用遅延回路9および受信用遅延回路10の各回路部(Delay)にそれぞれの遅延条件が設定される。これによりstep2で、送信用遅延回路9での上記遅延条件に従ってアレイ探触子6の各素子6aが励振される。step3ではアレイ探触子6で腐食部3からの反射波が受信される。step4では、受信用遅延回路10での上記遅延条件の遅延量が受信信号に与えられる。step5では、A/D変換された各素子からの信号が加算器12で加算されて合成波が求められ、メモリ13に保存される。メモリ13には、角度θと合成波がセットで保存される。
step6では、予め設定した角度範囲を走査したかどうか、判断される(設定値との比較)。判断の結果、走査していない場合にはstep7として遅延条件を変えてstep1に戻り、送信用遅延回路9および受信用遅延回路10での遅延時間を変化させる。走査していた場合にはstep8で、アレイ探触子6の送信および受信を終了する。
step9では、カットオフ角θを求め(合成波の振幅を求め、角度θに対する合成波の振幅の角度特性を求め、この角度特性において、振幅が大きく変化する角度を見出し、これをカットオフ角θとする)、step10では、腐食量を求められ(式(11)にθを代入してt’を求め、さらにt−t’を計算して腐食量を求める)、これらの処理は、信号処理部20において行われる。
(シミュレーション結果)
以上、アレイ探傷装置の構成および動作について説明した。この原理を確認するため、厚さ19mmの鋼板に発生した5mmの腐食を測定するシミュレーションを行った。以下、シミュレーション結果について図6−図16を参照しながら説明する。図6は、厚さ19mmの鋼板における3次モードの位相速度分散特性であり、5mmの腐食部(厚さは14mm)の分散特性を併せて示している。図7は、シミュレーションで用いたアレイ探触子の周波数応答特性である。図8は、角度θと3次モードのSH板波の周波数との関係を示した図である。図9は、角度θを38°とした場合の音場シミュレーション結果である。図10は、角度θを48°とした場合の音場シミュレーション結果である。図11は、角度θを38°とした場合に受信された合成波である。図12は、角度θを48°とした場合の合成波である。図13は、角度に対する合成波の振幅の角度特性である。図14は、基準の角度特性を求める構成図である。図14において、14は試験片である。図15は、基準の角度特性である。図16は、正規化された角度特性である。
(アレイ探触子の応答特性)
まず、アレイ探触子の応答特性について説明する。図2で説明したように、アレイ探触子6は、試験体の健全部のカットオフ周波数よりも高い領域で動作し、かつ、腐食部のカットオフ周波数を跨ぐような周波数特性が必要である。そこで、まず厚さ19mmの鋼板における健全部のカットオフ周波数および腐食部3でのカットオフ周波数fを求めた。図6に、その様子を示す。図に示すように、試験体1を鋼として厚さを19mmとした場合、健全部および腐食部のカットオフ周波数fは、それぞれ、0.26MHzおよび0.35MHzである。そこで上記条件を満足するように、0.26MHzより高い周波数領域で動作し、かつ、0.35MHzを跨ぐ(含む)ように、図7に示す特性を有する探触子をシミュレーションに用いた。
上述したように、角度θを変えるとSH板波の周波数も変化する。厚さ19mmの鋼板で3次モードの場合の周波数を、式(4)を用いて計算した結果を図8に示す。図に示すように、角度θが38°の場合には周波数は0.324MHzであるので、この角度であれば健全部のカットオフ周波数(0.26MHz)より大きいのでSH板波は伝搬可能である。また角度θが48°の場合には周波数は0.382MHzとなるので、腐食部3でのカットオフ周波数(f=0.35MHz)よりも大きい。したがって、これまで述べてきた腐食量測定原理によると、θ=38°では腐食部3を透過せずに反射し、θ=48°では腐食部3を透過する。この様子を、音場シミュレーションで確認した。
角度θを38°とし、図7に示した周波数応答特性を有する信号でアレイ探触子を励振した場合の音場シミュレーション結果を、図9に示す。アレイ探触子6の素子数は32、配列ピッチは2.28mm、開口面寸法(アレイ探触子6の素子6aが並べられた面の長さ)は約71mmとした。図9では、左端の素子を励振してから10μs〜170μ後の粒子速度の振幅の大きさを濃淡で示している。図9の10μsの図に示すように、アレイ探触子6からは斜めに超音波が伝搬する。この時点は送信直後であり、未だSH板波になっていない様子が分かる。30μsの図から、SH板波が形成されている様子が分かる。また、板厚方向に対し、振幅の弱い場所が3箇所存在する様子も分かる。図34に示したように、これは3次モードである。すなわち、設計通りのSH板波が形成されている。
70μsの時点でSH板波が腐食部3に到達する。角度θが38°で周波数が0.324MHzであり、腐食部3におけるカットオフ周波数(f=0.35MHz)以下なので、SH板波は腐食部3の部分を伝搬しない。このためSH板波のエネルギーの多くはアレイ探触子6の方向へ戻ってくる。結果として、腐食部3からの反射波を、アレイ探触子6で受信することができる。なお図9ではエネルギーが透過しているようにも見えるが、透過するエネルギーは反射するエネルギーに比べて小さいものである。
角度θを48°とし、図7に示した周波数応答特性を有する信号でアレイ探触子を励振した場合の音場シミュレーション結果を、図10に示す。アレイ探触子6の構成は、θ=38°の場合と同じである。アレイ探触子6から48°の角度で送信されたSH波は伝搬過程で3次モードのSH板波となり、腐食部3に到達する。しかし周波数が0.382MHzであり、カットオフ周波数(f=0.35MHz)よりも大きい。したがって図10の90μs以降の音場に示すように、SH板波のエネルギーの多くは腐食部3を透過していく。結果として、腐食部3からの反射を、アレイ探触子6では殆ど受信できない。
シミュレーションで得られた合成波を、図11および図12に示す。図11が角度θを38°とした場合の合成波であり、図12が角度θを48°として場合の合成波である。これらの図に示すように、角度θが38°の場合には大きな信号が受信されているが、角度θが48°の場合には小さな信号しか受信されない。
図11および図12は、角度θを38°および48°とした場合の受信信号であるが、角度θを10°から70°まで1°間隔で変化させて受信信号を計算し、角度に対する合成波の振幅の角度特性を求めた結果を図13に示す。図13に示すように、θが40°を越えると合成波の振幅が急激に小さくなる。振幅がピークから半減した角度をカットオフ角θとすると、θ=43°であった。鋼板の厚さが19mmであるので、式(11)から腐食部3の厚さを求めると、t’=13.9mmである。すなわち腐食量測定結果としては、t−t’=5.1mmである。一方シミュレーションで与えた腐食部3の腐食量は5mmであるので、この発明で示した腐食量測定方法が妥当であることが示された。
(角度θに対する合成波の振幅の角度特性の求め方)
上述した腐食量測定では、角度θに対する合成波の振幅の角度特性を求め、ピークから半減した角度をカットオフ角θとした。θの求め方として、試験片を用いて角度特性を正規化する方法も考えられる。例えば試験体1に対して上述した作業を行う前に、図14(アレイ探触子のみ示し送受信器の図示は省略されている)に示すように同じ材料で同じ厚さの試験片を用い、基準反射面として端面を対象として同様の作業を行い、角度θに対する合成波の振幅の角度特性を求めておく。これを基準の角度特性とし、例えば一時、メモリ13に格納しておく。その後、試験体1に対して上述した作業を行い、角度θに対する合成波の振幅の角度特性を求め、基準の角度特性で正規化し、この正規化された角度特性からカットオフ角θを求めるというものである。
試験片14を用いてカットオフ角θを求める方法の妥当性を確認するため、同様のシミュレーションを行った。厚さ19mmの鋼板に対し、角度θを10°から70°まで1°間隔で変化させ、端面からの反射波を基にして合成波を求め、基準の角度特性を求めた。結果を図15に示す。また、図13に示した角度特性を、図15に示した基準の角度特性で正規化した結果を、図16に示す。図16に示すように、相対振幅が半減する角度をカットオフ角θとすると、θ=42.7°となる。式(11)から腐食部3の厚さを求めると、t’=14mmである。すなわち腐食量測定結果としては、t−t’=5mmである。一方、シミュレーションで与えた腐食部3の腐食量は5mmであるので、正規化された角度特性を用いても精度良く腐食量を測定できることが確認された。
さらに試験片14を用いず、試験体1を用いて基準の角度特性を求める方法もある。この方法について、図17を参照しながら説明する。図17(アレイ探触子のみ示し2つのアレイ探触子に接続された送受信器の図示は省略されている)は、2つのアレイ探触子6,15を用いて基準の角度特性を求める方法を説明する図である。図中、15は受信用アレイ探触子である。図17に示すように、アレイ探触子6とは異なる場所に、受信用アレイ探触子15を設置する。そしてアレイ探触子6から受信用アレイ探触子15の方向に、SH板波を伝搬させる。この場合の角度θは、腐食部3の腐食量測定の場合と逆向きになる。受信用アレイ探触子15では、伝搬してきたSH板波を受信する。図17では図示はしていないが、受信用アレイ探触子15は送受信器7に接続されており、送受信器7において合成波を求め、角度θに対する合成波の振幅の角度特性を求める。これを基準の角度特性とし、腐食部3を対象として角度θに対する合成波の振幅の角度特性を求め、基準の角度特性で正規化し、この正規化された角度特性からカットオフ角θを求めることも可能である。
このように、試験体1を用いて基準の角度特性を求めることも可能である。この方法であれば、試験片14は不要である。
カットオフ角θの求め方についてまとめる、以下のようになる。
(i) 予め閾値を設定し、ピークに対して閾値以下になった角度をθとする。
(ii) 試験片を用いて基準の角度特性を求め、実際の試験体での角度特性を正規化し、正規化した特性において予め設定した閾値以下になった角度をθとする。
(iii) 受信用アレイ探触子を用いて基準の角度特性を求め、実際の試験体での角度特性を正規化し、正規化した特性において予め設定した閾値以下になった角度をθとする。
以上の3通りの求め方がある。3つの内、どれを採用してもよい。また閾値は試験状況に適した値を用いればよい。ここでの説明は半減値としが、半減値でなくても構わない。
(アレイ探触子の構成)
これまでは、腐食量測定のための装置構成や方法について説明してきた。この方法では、試験体1に対してSH板波を伝搬させる必要があるが、そのためにはアレイ探触子6の構成が重要である。ここでは、アレイ探触子6の構成について説明する。まず、アレイ探触子6の素子ピッチについて、図18および図19を参照しながら説明する。図18および図19は、アレイ探触子6の素子ピッチをそれぞれ、λ/3およびλ/4とした場合の音場シミュレーション結果である。図18,19では、アレイ探触子6の左端を励振してから80μs後までの音場を、粒子速度の振幅を濃淡で示している。試験体1は厚さ19mmの鋼板とした。周波数は0.4MHzとし、4次モードのSH板波を伝搬させた。図35に示したように、この場合の位相速度は6200m/sとなるので、波長λは15.5mmとなる。これらの図に示すように、図18のλ/3配列では右側にSH板波が伝搬し、左側には明確なモードとならない波動が伝搬する。図19のλ/4配列にすることで、右側にSH板波が伝搬し、左側には殆ど波動が伝搬しない。このように、素子ピッチをλ/4以下にするとSH板波を片側だけに伝搬させることができる。したがって、アレイ探触子6の素子ピッチをλ/4以下とすると、精度の良い腐食量測定が可能となる。
また、アレイ探触子の開口面寸法について説明する。斜角探触子を用いた場合では、SH板波の発生に必要な振動子寸法は、上記非特許文献3に示されている。アレイ探触子を用いた場合は、斜角探触子の振動子寸法を試験体に投影した値が指標となるので、非特許文献3に示されている式を応用して、下記式(12)
Figure 0005904331
とする。ここでaは、アレイ探触子6の開口面寸法である。したがってアレイ探触子6の開口面寸法を、式(12)を満足する値にすると、精度の良い腐食量測定が可能となる。
(超音波のモード)
最後に、超音波のモードについて説明する。これまでは、試験体1にSH板波を伝搬させ、カットオフ現象を利用して腐食量を測定する装置および方法について説明した。しかしカットオフ現象はSH板波だけに起こるものではなく、ラム波と呼ばれている板波でも起こる現象である。したがってこの発明によるアレイ探傷装置および方法において、ラム波を用いても構わない。ラム波の場合には式(11)の関係式をそのまま使用することはできないが、角度θを変えることで周波数を変化させ、受信信号が大きく変化する角度θから腐食量を求めることは可能である。もちろん、角度θの替わりに位相速度を用いても同様である。
以上説明したように、アレイ探触子を用いて角度θを変えながら試験体中に超音波を伝搬させ、腐食部からの反射波を合成し、角度θに対する合成波の振幅の角度特性を求め、カットオフ角θから腐食量を測定することにより、反射波の大きさから腐食量を求める従来技術とは異なり探触子と試験体との接触状態の影響を少なくすることができるので、腐食量を精度良く測定できるという効果がある。
実施の形態2.
実施の形態1は、送信時および受信時に遅延を与え、角度θを変えながら合成波を求めるという装置および方法であった。しかしSH板波をSH波の重ね合わせと考えると、必ずしも送信時および受信時において遅延を与える必要はなく、送信および受信を別個に行って受信信号をメモリに保存してから遅延を与えて合成し、角度θに対する合成波の振幅の角度特性を求めるという方法も考えられる。実施の形態2は、このようにして求めた合成波の振幅の角度特性から腐食量を求めるという装置および方法に関するものである。
(実施の形態2における腐食測定の原理)
実施の形態2における腐食測定の原理を、図20−図22を参照しながら説明する。図20は、送信時における超音波の重ね合わせを説明する図である。図21は、超音波の送信を説明する図である。図22は、超音波の受信を説明する図である。
まず、超音波の重ね合わせについて説明する。図1で説明したように、アレイ探触子6を用いれば角度θを変化させて超音波を試験体1中へ伝搬させることが可能である。この場合、アレイ探触子6の各素子の励振タイミングを素子毎に変えて送信し、各素子から送信された超音波が重ね合わさって波面を構成し、角度θで伝搬していく。すなわち試験体1中を伝搬する超音波は、アレイ探触子6の各素子で送信された超音波の重ね合わせで構成されていると考えることができる。この様子を図20に示す。図25では、試験体1中の超音波が重ね合わせで形成されている状況を示しており、(a)は図1に示した図と同様である。図1ではアレイ探触子6の各素子6aを#1−#8として示しており、(b)−(e)の各素子から送信された超音波の重ね合わせで、(a)のように試験体1中の超音波が構成される様子を示している。
アレイ探触子6で送信されたSH波が重ね合わせで形成されると考えると、試験体1中を伝搬するSH板波もこれらの重ね合わせとして考えることができる。すなわち、アレイ探触子6の各素子を個別に送信して腐食部3からの反射波を受信し、最終的に合成波を求める時点で伝搬が角度θとなるように励振タイミングに遅延を与えれば、実施の形態1と同様の合成波が得られる。個別に送信する様子を図21に示す。図21では、(a)の構成で、(b)−(e)に示すようにアレイ探触子6の各素子#1〜#8から別個に送信されるSH波を示している。
アレイ探触子6の各素子#1〜#8における受信も、送信と同様である。受信の様子を図22に示す。図22では、アレイ探触子6の一番左側の素子#1で送信し、各素子#1−#8で受信した場合の状況を示している。(b)に示すように、#1は腐食部3から一番遠いので、受信信号は時間的に一番遅れたものになる。また(e)に示すように、#8は腐食部3に一番近いので、受信信号は時間的に一番早いものになる。これらの受信信号に対して角度θに対応した遅延を与え、合成する。素子数は8個の場合は、8個の受信信号を合成することになる。なお受信時は、送信時と逆になるので遅延量は負となる。
図22では8個の受信信号の合成を示したが、これは1回の送信で得られるものである。この作業を送信回数だけ繰り返すので、8素子で送信する場合は送信回数は8回となる。結局、受信信号は8×8=64個となる。これらに対し、角度θに対応した送信時の遅延および受信時の遅延を与え、全てを合成することにより、合成波を得られる。この最終的な合成波は、実施の形態1における角度θの合成波と同じものとなる。
また送信時および受信時の遅延量は、送信素子および受信素子の位置が分かれば、素子ピッチと音速および角度θから算出する。素子ピッチと音速は探傷を行う前から既知の値であるため、受信信号の合成時に必要な情報は、送信素子および受信素子の位置情報となる。これらの情報を用いて角度θを変化させて合成波を求め、角度θに対する合成波の振幅の角度特性を求める。その後の処理は、実施の形態1と同様である。
(アレイ探傷装置の構成および動作)
次に、アレイ探傷装置の構成について説明する。図23はこの発明の実施の形態2におけるアレイ探傷装置の構成図である。図23において、16は送信切り替えスイッチである。なお図23ではアレイ探触子6は8素子の構成となっているが、実施の形態1と同様に8素子でなくても構わない。信号源8からの信号線は、送信切り替えスイッチ16に接続される。送信切り替えスイッチ16からの信号線は、アレイ探触子6の各素子6aへ接続される。またアレイ探触子6の各素子6aはA/D変換器11される。またA/D変換器11はメモリ13に接続される。メモリ13は、信号処理部20に接続される。制御部70は送受信器7の探傷動作の全体を制御する。実施の形態1と異なる点は、送信切り替えスイッチ16があること、送信用遅延回路9、受信用遅延回路10、および加算器12がないことである。制御部70は送信切り替えスイッチ16での切り替えタイミングの制御も行う。
続いて、アレイ探傷装置の動作について説明する。信号源8からはアレイ探触子6の各素子6aを励振するための信号は発せられ、送信切り替えスイッチ16に伝達される。この際、必要があれば増幅器で信号を増幅する。図23では、送信用増幅器TAを含んだ構成図を示している。送信切り替えスイッチ16では、アレイ探触子6の内の1個の素子だけからSH波が送信するように信号が出力される。そして、アレイ探触子6の1個の送信素子から試験体1中へSH波が送信される。図23では、アレイ探触子6の一番左側の素子を送信素子とした場合の様子を示している。
アレイ探触子6の内の1素子から送信されたSH波は、明確なSH板波にはならずに試験体1中を伝搬するので、実施の形態2では伝搬時においてもSH波という文言を用いて説明する。伝搬したSH波は腐食部3の場所に到達する。腐食部3で反射される成分もあれば、透過する成分もある。SH波の重ね合わせによりSH板波としての性質を有することになるので、反射および透過の条件は、実施の形態1で示したSH板波の伝搬の時と同様である。反射されたSH波は、アレイ探触子6の方向へ伝搬してくる。
伝搬してきたSH板波は、アレイ探触子6の各素子で受信され電気信号に変換され、A/D変換器11に伝達される。この際、必要があれば増幅器で信号を増幅する。図23では、受信用増幅器RAを含んだ構成図を示している。A/D変換器11でディジタル化された受信信号は、メモリ13に保存される。メモリ13には各素子からの受信信号と、この受信信号を得たときの受信素子の位置情報および送信素子の位置情報が保存される。
具体的な一例として、例えば送受信器7に入力部(図示省略)を設けて、オペレータによりアレイ探触子6の各素子の位置情報が予め入力されメモリ13に格納される。また、その他の探傷に必要な素子ピッチと音速等は予めメモリ13に格納されている、または入力部から入力してメモリ13に設定しておく(他の実施の形態でも同様)。制御部70は送信素子の切り替え制御を行うため、選択した送信素子を示す情報をその時の各素子での受信信号と組み合わせて逐次、メモリ13に格納する。
信号処理部20では、受信信号を得たときの送信素子の位置情報は制御部70からの選択した送信素子を示す情報と各素子の位置情報から求めることができ、受信素子の位置情報は受信信号を受信した順番に基づく各素子の並び順に従った素子の位置情報から求めることができる。なお各素子の位置情報は1つの素子の位置情報とし他の素子の位置情報は素子ピッチから求めてもよい。そして受信信号と、求めた受信素子の位置情報および送信素子の位置情報をメモリに保存する。
なお上記処理は制御部70で行ってもよい。
さらにメモリ13を上記信号処理部20での処理を行う編集機能を含む記憶部とし、各素子からの受信信号とこの受信信号を得たときの受信素子の位置情報および送信素子の位置情報を組み合わせて保存するようにしてもよい。
ここまでの動作で、メモリ13には送信素子および受信素子の位置情報と、各素子での受信信号が保存される。この動作を、送信切り替えスイッチ16で送信素子を切り替えて行う。なお、送信素子の切り替える順番は、この発明では限定しない。試験状況に応じて送信を切れ変えればよい。
信号処理部20では、角度θと、送信素子および受信素子の位置情報から遅延量を算出し、受信信号に遅延を与える。遅延を与えられた受信信号を加算して合成波を求め、角度θに対する合成波の振幅の角度特性を求める。角度特性を求めた後は実施の形態1と同様であり、カットオフ角θを求め、式(11)にθを代入してt’を求める計算を行い、t−t’という計算を行うことにより、腐食量が求まる。
なお、角度θを変化させた場合について説明しているが、位相速度を用いても同様である。すなわち位相速度Vpを変化させ、合成波の振幅が相対的に大きく変化する位相速度から腐食量を求めることも可能である。
以上動作を説明したが、探傷方法の要旨をまとめて説明する。図24は探傷方法説用のフローチャートである。まずstep1として、アレイ探触子6の内の1素子だけで送信が行われる。次にstep2で、アレイ探触子6の各素子6aで反射波が受信される。step3では送信素子および受信素子の位置情報と、各素子の受信信号がメモリ13に保存される。その具体的形態は上述の通りである。
step4では、アレイ探触子6の各素子で送信したかどうか判断する。この際、必ずしも全ての素子で送信しなくても良く、必要な素子数で励振すればよい。step4での判断の結果(設定値との比較)、送信していない場合にはstep5として送信素子を変えてstep1に戻る。送信していた場合にはstep6に進む。step6では、アレイ探触子6での送信および受信を終了する。
step7では、送信素子および受信素子の位置情報と、角度θから遅延量を算出し、受信信号に対して遅延量を与えて合成波を求める。そして角度θに対する合成波の振幅の角度特性を求める(合成波の振幅を求め、角度θに対する合成波の振幅の角度特性を求める)。
step8では、角度特性からカットオフ角θを求める(角度特性において、振幅が大きく変化する角度を見出しカットオフ角θとする)。そしてstep9では、腐食量を求める(式(11)にθを代入してt’を求め、さらにt−t’を計算して腐食量を求める)。step7からstep9の処理は、信号処理部20において行う。また信号処理部20で、メモリ13に蓄積された情報からstep3の送信素子および受信素子の位置情報と各素子の受信信号を求める処理を行ってからstep7からstep9の処理を行うようにしてもよい。
(シミュレーション結果)
以上、アレイ探傷装置の構成および動作について説明した。この原理を確認するため、実施の形態1と同様のシミュレーションを行った。試験体1の厚さ、腐食部3の腐食量、アレイ探触子6の構造、およびアレイ探触子6の応答特性は、実施の形態1と同じとした。以下、図25〜図31を参照しながらシミュレーション結果について説明する。図25は、アレイ探触子6の一番左端を送信素子とした場合の音場シミュレーション結果である。図26は、アレイ探触子6の一番左端を送信素子として場合の、各素子(32個)における受信信号である。図27は、アレイ探触子6の一番左端を送信素子とした場合の受信信号を、角度θを38°として合成した波形である。図28は、角度θを38°とした場合の合成波である。図29は、角度θに対する合成波の振幅の角度特性である。図30は、透過法で求めた基準の角度特性である。図31は、正規化された角度特性である。
図25では、アレイ探触子6の一番左端の素子を励振してから10μs−100μsの音場を示している。実施の形態1とは異なり、SH板波の伝搬を明確には確認できない。また腐食部3からの反射波も、SH板波として確認はできない。なお合成波の振幅の角度特性を正規化するため、図25では受信用アレイ探触子15を設置した様子を示している。
アレイ探触子6の各素子を左側から#1,#2,#3,…,#32とし、各素子で受信された信号を図26に示す。図26に示すように、受信信号は確認できるが、腐食部3からの反射波を特定できない。これらを、角度θを38°として合成した結果を、図27に示す。アレイ探触子6の素子数が32なので、図27は32個の受信信号に対して遅延を与えて合成したものとなる。図27に示すように、合成して得られた波形は腐食部3からの反射波を明確に特定できる。
アレイ探触子6の各素子#1〜#32を送信素子として受信信号を求め、角度θを38°として各受信信号に遅延を与え、最終的に得られた合成波を図28に示す。ここでは、32個の素子全てを送信素子としたので、受信信号は32×32=1024個となる。図28の合成波は、これら全ての受信信号に遅延を与えて合成したものである。図28の合成波と、実施の形態1で示した図11の合成波を比較すると、殆ど同じとなっている。これは、SH板波が重ね合わせで成り立つという考えが正しいことを意味している。
図28は、角度θを38°とした場合の合成波であるが、θを1°から90°まで1°間隔で変化させて受信信号を計算し、角度に対する合成波の振幅の角度特性を求めた結果を図29に示す。図29と、実施の形態1で示した図13の角度特性を比較すると、やはり殆ど同じになっている。
受信用アレイ探触子15を用いて、透過法により基準となる角度特性を求めた結果を、図30に示す。また、図29に示した角度特性を、図30に示した基準となる角度特性で正規化した結果を、図31に示す。図31に示すように、相対振幅が半減した角度をカットオフ角θとすると、θ=42.3°であった。鋼板の厚さが19mmであるので、上記式(11)から腐食部3の厚さを求めると、t’=14mmである。すなわち腐食量測定結果としては、t−t’=5mmである。一方シミュレーションで与えた腐食部3の腐食量は5mmであるので、この発明で示した腐食量測定方法が妥当であることが示された。なお、正規化された角度特性を用いてカットオフ角θを求めたが、正規化しなくてもθが求まるのであれば、正規化しなくてもよい。さらに、受信用アレイ探触子15で透過波による角度特性を求めず、試験片14の端面反射を用いて基準となる角度特性を求めても構わない。
また実施の形態2においても、アレイ探触子6の構成は実施の形態1と同様のものとする。さらに、ラム波も重ね合わせで考えることができるので、対象とする超音波のモードは実施の形態1と同様にラム波でも構わないものとする。
以上説明したように、アレイ探触子を用いて試験体中に超音波を伝搬させ、腐食部からの反射波を合成し、角度θに対する合成波の振幅の角度特性を求め、カットオフ角θから腐食量を測定することにより、探触子と試験体との接触状態の影響を少なくすることができるので、実施の形態1と同様に腐食量を精度良く測定できるという効果がある。さらに送受信器に遅延回路を含まず、送信用増幅器が1個で済むので装置構成が簡単になるという効果もある。
実施の形態3.
実施の形態2は、送信時および受信時において遅延を与える代わりに、1素子毎に送信して受信信号をメモリに保存し、送信素子を切り替えて同様の処理を行い、メモリに保存した受信信号に遅延を与えて合成し、角度θに対する合成波の振幅の角度特性を求めるという装置および方法である。このような装置構成にすると実施の形態1よりも簡単になるという効果があるが、受信素子も切り替える方式にすれば、さらに装置構成が簡単になる。実施の形態3は、このような装置および方法に関するものである。
(アレイ探傷装置の構成および動作)
この発明に係わる実施の形態3に関し、図32および図33を参照しながら説明する。図32はこの発明の実施の形態3におけるアレイ探傷装置の構成図である。図32において、17は受信切り替えスイッチである。制御部70は受信切り替えスイッチ17での切り替えタイミングの制御も行う。なお図32ではアレイ探触子6は8素子の構成となっているが、実施の形態1,2と同様に8素子でなくても構わない。また図33は探傷方法説明用のフローチャートである。
まず、アレイ探傷装置の構成について説明する。信号源8からの信号線は、送信切り替えスイッチ16に接続される。送信切り替えスイッチ16からの信号線は、アレイ探触子6の各素子6aへ接続される。アレイ探触子6の各素子は、受信切り替えスイッチ17に接続される。受信切り替えスイッチ17からの信号線は、A/D変換器11に接続される。またA/D変換器11はメモリ13に接続される。メモリ13は、信号処理部20に接続される。実施の形態2と異なる点は、受信切り替えスイッチ17があること、さらにA/D変換器11が1個であるということである。
次に、アレイ探傷装置の動作について説明する。信号源8からはアレイ探触子6の各素子を励振するための信号が発せられ、送信切り替えスイッチ16に伝達される。この際、必要があれば増幅器で信号を増幅する。図32では、送信用増幅器TAを含んだ構成図を示している。送信切り替えスイッチ16では、アレイ探触子6の内の1つの素子だけからSH波が送信するように信号が出力される。そして、アレイ探触子6の1個の送信素子から試験体1中へSH波が送信される。図32では、アレイ探触子6の一番左側の素子を送信素子とした場合の様子を示している。
アレイ探触子6の内の1素子から送信されたSH波は、試験体1中を伝搬し、腐食部3の場所に到達する。腐食部3で反射される成分もあれば、透過する成分もある。SH波の重ね合わせによりSH板波としての性質を有することになるので、反射および透過の条件は、実施の形態1で示したSH板波の伝搬の時と同様である。反射されたSH波は、アレイ探触子6の方向へ伝搬してくる。
伝搬してきたSH板波は、受信切り替えスイッチ17で指定されたアレイ探触子6の内の1個の受信素子で受信され電気信号に変換され、A/D変換器11に伝達される。この際、必要があれば増幅器で信号を増幅する。図32では、受信用増幅器RAを含んだ構成図を示している。A/D変換器11でディジタル化された受信信号は、メモリ13に保存される。メモリ13には実施の形態2と同様にして(但し受信素子毎に受信信号を保存)、送信素子および受信素子の位置情報と、受信信号が保存される。
ここまでの動作で、メモリ13には送信素子および受信素子の位置情報と、受信信号が保存される。この動作を、送信切り替えスイッチ16を用いて送信素子を切り替え、さらに受信切り替えスイッチ17を用いて受信素子を替えながら繰り返し行う。送信素子および受信素子の切り替えは、必要な送信素子数および必要な受信素子数だけ行う。なお、送信素子および受信素子の切り替える順番は、この発明では限定しない。試験状況に応じて送信および受信を切り替えればよい。送信および受信の繰り返しが終了すると、メモリ13には、送信素子および受信素子の位置情報と、各素子からの受信信号が保存される。
信号処理部20では、角度θと送信素子および受信素子の位置情報から遅延量を算出し、各素子での受信信号に遅延を与え、信号処理部20において合成波を作成する。そして、角度θに対する合成波の振幅の角度特性を求める。角度特性を求めた後は実施の形態1と同様であり、カットオフ角θを求め、上記式(11)にθを代入してt’を求める計算を行い、t−t’という計算を行うことにより、腐食量が求まる。
なお、角度θを変化させた場合について説明しているが、位相速度を用いても同様である。すなわち位相速度Vpを変化させ、合成波の振幅が相対的に大きく変化する位相速度から腐食量を求めることも可能である。
実施の形態2との差異は、受信素子も切り替えて行うという点である。受信素子も切り替えるということは、1回の送信で1回の受信しかできないので、測定に要する時間は長くなる。例えばアレイ探触子6の素子数が8とし、全ての素子で送受信する場合には、実施の形態2では8回の送信で済むが、実施の形態3では8×8=64回の送信が必要となる。しかし、実施の形態2よりも装置構成がさらに簡単になるという利点がある。
以上動作を説明したが、探傷方法の要旨をまとめて図33に示したフローチャートを参照しながら説明する。まずstep1として、アレイ探触子6の内の1素子だけで送信する。次にstep2として、アレイ探触子6の内の1素子だけで反射波を受信する。step3では、送信素子および受信素子の位置情報と、受信信号をメモリ13に保存する。
step4では、必要な素子数で受信したかどうか、判断する(設定値との比較)。判断の結果、受信していない場合にはstep5として受信素子を変えてstep2に戻る。受信していた場合にはstep6に進む。
step6では、必要な素子数で送信したかどうか、判断する(設定値との比較)。判断の結果、送信していない場合にはstep7として送信素子を変えてstep1に戻る。送信していた場合にはstep8に進む。step8では、アレイ探触子6の送信および受信を終了する。
step9では、角度θと送信素子および受信素子の位置情報から遅延量を算出し、各受信信号に遅延量を与えて合成波を求める。そして角度θに対する合成波の振幅の角度特性を求める。
step10では、角度特性からカットオフ角θを求める。そしてstep11では、腐食量を求める。step9からstep11の処理は、信号処理部20において行う。なお図33に示したフローチャートでは、受信を切り替えるループを内側にし、送信を切り替えるループを外側にして説明したが、これらのループが逆になっても構わない。すなわち、送信の切り替えを先に行い、受信の切り替えを後にしても同様の結果が得られる。
また実施の形態3においても、アレイ探触子6の構成は実施の形態1と同様のものとする。さらに、ラム波も重ね合わせで考えることができるので、対象とする超音波のモードは実施の形態1と同様にラム波でも構わないものとする。
以上説明したように、アレイ探触子を用いて試験体中に超音波を伝搬させ、腐食部からの反射波を合成し、角度θに対する合成波の振幅の角度特性を求め、カットオフ角θから腐食量を測定することにより、探触子と試験体との接触状態の影響を少なくすることができるので、実施の形態1と同様に腐食量を精度良く測定できるという効果がある。また送受信器に遅延回路を含まず送信用増幅器も1個で済み、さらにA/D変換器や受信用増幅器が1個で済むので、装置構成がさらに簡単になるという効果もある。
なお上述のようにこの発明は、試験体の腐食量測定のみならず、傷等も含む試験体の凹部の凹み量測定全般に適用可能である。
1 試験体、3 腐食部、6 アレイ探触子、6a 素子、7 送受信器、8 信号源、9 送信用遅延回路、10 受信用遅延回路、11 A/D変換器、12 加算器、13 メモリ、14 試験片、15 受信用アレイ探触子、16 送信切り替えスイッチ、17 受信切り替えスイッチ、20 信号処理部、70 制御部、RA 受信用増幅器、TA 送信用増幅器。

Claims (18)

  1. 電気信号によって駆動され超音波を試験体中に伝搬させ、かつ前記試験体中を伝搬した超音波を電気信号に変換する複数の素子を並べて設けたアレイ探触子と、
    前記アレイ探触子の各素子を駆動しかつ前記各素子からの電気信号を受信してアレイ探傷を行う送受信器と、
    を備え、
    前記送受信器は、前記アレイ探触子の各素子をそれぞれ所望のタイミングで駆動し各素子で得られる電気信号を受けて、送信時に所望の角度で超音波が伝搬された場合に生じる前記電気信号を求めさらに合成波を生成し、角度に対する前記合成波の振幅の角度特性を求めて振幅が相対的に大きく変化する角度から前記試験体内に存在する凹部の凹み量を求めることを特徴とするアレイ探傷装置。
  2. 前記送受信器は、送信時には所望の角度で超音波が伝搬するように前記アレイ探触子の各素子の励振タイミングに遅延量を与え、受信時には送信時に対応した遅延量を各素子からの受信信号に与え、遅延量を与えられた各素子からの受信信号を合成し合成波とし、前記合成波と前記角度を記憶部に保存し、さらに予め設定した範囲内で前記角度を走査して同じ処理を繰り返し、
    前記記憶部に保存された角度と合成波から、角度に対する合成波の振幅の角度特性を求めて振幅が相対的に大きく変化する角度から前記試験体内に存在する凹部の凹み量を求める、
    ことを特徴とする請求項1に記載のアレイ探傷装置。
  3. 前記送受信器は、送信切り替えスイッチにより前記アレイ探触子中の素子を送信素子として指定し、前記アレイ探触子の各素子からの受信信号と、前記送信素子および受信素子の位置情報を記憶部に保存し、さらに前記送信素子を切り替えて所定の素子数だけ同じ処理を繰り返し、
    所望の角度と前記送信素子および受信素子の位置情報から遅延量を算出し、算出された遅延量を前記受信信号に与えて合成し合成波とし、角度に対する前記合成波の振幅の角度特性を求めて振幅が相対的に大きく変化する角度から前記試験体内に存在する凹部の凹み量を求める、
    ことを特徴とする請求項1に記載のアレイ探傷装置。
  4. 前記送受信器は、送信切り替えスイッチにより前記アレイ探触子中の素子を送信素子として指定し、受信切り替えスイッチにより前記アレイ探触子中の素子を受信素子として指定し、前記受信素子からの受信信号と、前記送信素子および受信素子の位置情報を記憶部に保存し、さらに前記送信素子および受信素子を切り替えて所定の素子数だけ同じ処理を繰り返し、
    所望の角度と前記送信素子および受信素子の位置情報から遅延量を算出し、算出された遅延量を前記受信信号に与えて合成し合成波とし、角度に対する前記合成波の振幅の角度特性を求めて振幅が相対的に大きく変化する角度から前記試験体内に存在する凹部の凹み量を求める、
    ことを特徴とする請求項1に記載のアレイ探傷装置。
  5. 前記アレイ探触子で送信および受信される超音波はSH波であり、前記試験体中を伝搬するときにはSH板波としての性質を有しており、前記送受信器は、前記試験体の厚さをt、前記凹部の厚さをt’、前記角度特性で合成波の振幅が相対的に大きく変化する角度をθとすると、
    Figure 0005904331
    の関係式からt’を求め、前記試験体の厚さtおよびt’から、前記試験体内に存在する凹部の凹み量を求めることを特徴とする請求項2から4までのいずれか1項に記載のアレイ探傷装置。
  6. 前記送受信器は、前記合成波の振幅が相対的に大きく変化する角度θの替わりに、前記合成波の振幅が相対的に大きく変化する位相速度を用いて、前記試験体内に存在する凹部の凹み量を求めることを特徴とする請求項5に記載のアレイ探傷装置。
  7. 前記送受信器は、前記試験体のための予め実験で得た基準の角度特性をメモリに格納し、前記試験体で得られた合成波の振幅の角度特性を、前記基準の角度特性で正規化し、この正規化された角度特性において振幅が相対的に大きく変化する角度から前記試験体内に存在する凹部の凹み量を求めることを特徴とする請求項5または6に記載のアレイ探傷装置。
  8. 前記基準の角度特性は、別途用意した試験片の基準反射面を対象とした実験によるものであることを特徴とする請求項7記載のアレイ探傷装置。
  9. 前記試験体上に設置された送信用と受信用の2つのアレイ探触子を設け、前記送受信器が、前記2つのアレイ探触子により透過法で合成波を求め、求めた合成波の振幅の角度特性を前記基準の角度特性としたことを特徴とする請求項7に記載のアレイ探傷装置。
  10. 前記アレイ探触子は、前記試験体の健全部におけるカットオフ周波数より高い周波数帯域で動作し、かつ前記試験体中に存在する凹部のカットオフ周波数を含んだ帯域幅を有することを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載のアレイ探傷装置。
  11. 前記アレイ探触子の素子配列ピッチが、前記試験体中を伝搬するSH板波の波長の4分の1以下であることを特徴とする請求項5または6に記載のアレイ探傷装置。
  12. 前記アレイ探触子の開口面寸法をaとし、前記試験体の厚さをtとし、前記試験体の横波音速をVとし、前記試験体中を伝搬するSH板波の位相速度をVとすると、
    Figure 0005904331
    という関係を満足することを特徴とする請求項5または6に記載のアレイ探傷装置。
  13. アレイ探触子から角度を変えながら試験体中へ超音波を送信し、かつ前記試験体中を伝搬した超音波を送信時の角度に対応して受信し、前記アレイ探触子の各素子で受信した信号を合成して合成波の振幅の角度特性を求め、角度特性において振幅が相対的に大きく変化する角度から前記試験体の凹部の凹み量を求めることを特徴とするアレイ探傷方法。
  14. 前記アレイ探触子で送信および受信される超音波はSH波であり、前記試験体中を伝搬するときにはSH板波としての性質を有しており、前記試験体の厚さをt、前記凹部の厚さをt’、前記角度特性で振幅が大きく変化する角度をθとすると、
    Figure 0005904331
    の関係式からt’を求め、前記試験体の厚さtおよびt’から、前記試験体内に存在する凹部の凹み量を求めることを特徴とする請求項13に記載のアレイ探傷方法。
  15. 前記合成波の振幅が相対的に大きく変化する角度θの替わりに、合成波の振幅が相対的に大きく変化する位相速度を用いて、前記試験体内に存在する凹部の凹み量を求めることを特徴とする請求項14に記載のアレイ探傷方法。
  16. 予め行った実験により基準の角度特性を求めておき、前記試験体で得られた合成波の振幅の角度特性を、前記基準の角度特性で正規化し、この正規化された角度特性において振幅が相対的に大きく変化する角度を求め、求めた角度から前記試験体内に存在する凹部の凹み量を求めることを特徴とする請求項14または15に記載のアレイ探傷方法。
  17. 前記基準の角度特性は、別途用意した試験片の基準反射面を対象とした実験によるものであることを特徴とする請求項16に記載のアレイ探傷方法。
  18. 前記試験体上に送信用と受信用のアレイ探触子を2個設置し、前記2つのアレイ探触子を透過法で用いて合成波を求め、求めた合成波の振幅の角度特性を前記基準の角度特性とすることを特徴とする請求項16に記載のアレイ探傷方法。
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