JP2020056687A - フェーズドアレイ超音波法による横波斜角探傷法及び横波・縦波同時斜角探傷法 - Google Patents

フェーズドアレイ超音波法による横波斜角探傷法及び横波・縦波同時斜角探傷法 Download PDF

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広幸 福冨
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Abstract

【課題】フェーズドアレイ超音波法によってくさびを用いない横波斜角探傷法を可能とする。また、横波・縦波同時探傷を可能とする。【解決手段】被検査体に対しフェーズドアレイ探触子をくさびを使わずに直に接触させ、フェーズドアレイ探触子の振動子から被検査体内へ直接発信される横波を遅延時間制御し、被検査体内に縦波臨界角以上の屈折角で横波を伝搬させ、かつ被検査体内の任意の位置で横波の波面を合成して斜角探傷を行うようにしている。さらには、被検査体内へ直接発信される縦波の位相が合うように遅延時間を制御して縦波を合成して送受信し、1つのフェーズドアレイ探触子によって同じ位置で、横波斜角探傷と縦波探傷とが交互に連続的に実施されるようにしている。【選択図】図7

Description

本発明は、フェーズドアレイ超音波法に関する。さらに詳述すると、本発明は、くさび(ウェッジとも呼ばれる)を用いずに横波斜角探傷並びに縦波・横波同時探傷を可能とするフェーズドアレイ超音波法に関するものである。
従来のフェーズドアレイ超音波探傷法は、フェーズドアレイ探触子の振動子から発信される縦波だけを使って、縦波探傷と横波斜角探傷とを実施している。
即ち、従来のフェーズドアレイ超音波探傷法では、探触子に内蔵された各振動子に印加するパルス電圧に超音波縦波音速を基にした時間遅延を設け、それに基づき各振動子から放射される縦波を合成し(つまり、振動子からは縦波と横波とが発生するが、縦波だけを使った制御しか為されていない)、被検査体とくさびとの境界で起こる回折現象を利用して被検査体の探傷面に対して縦波あるいは横波として被検査体中に伝搬させ、縦波探傷および横波斜角探傷が実施される。
ここで、横波斜角探傷においては、縦波と横波とが混在すると、処理が煩雑となり解析が難しくなるので、くさびで縦波臨界角以上の入射角を作り出して、被検査体中には横波しか伝搬しないようにして縦波と横波とを混在させないようにするため、一般的にフェーズドアレイ探触子にくさび(樹脂製ブロック)が取り付けられる。即ち、横波斜角探傷において、くさびの介在は必須である。他方、縦波探傷においては、横波斜角探傷用くさびよりも角度が小さな縦波用くさびを用いるか、あるいはくさびを用いずに実施される。
また、き裂状欠陥に対する斜角探傷においては、開口部の検出には横波の方が縦波よりも優位であり、深さ測定(き裂先端部の検出)では縦波の方が横波よりも優位である。このことから、従来のき裂状欠陥に対する斜角探傷においては、探触子を2回動かして横波斜角探傷と縦波探傷とを併用するようにしている。即ち、まず横波斜角探傷法(1回目の走査)で傷を見つけ出し、その後縦波用の探触子あるいはくさびに交換して、縦波探傷(2回目の走査)で傷の高さ・深さ測定を実施している。
特開2004−340809号公報
しかしながら、これまでのフェーズドアレイ探触子を用いた横波斜角探傷では、縦波臨界角以上の入射角を作り出すためのくさびの介在が必須であるため、くさびのために余分な広めの探傷面(即ち、探触子よりも広めの探傷面)を必要とし、超音波探傷試験が困難な部位例えば、ボイラーチューブなどの管状構造物の狭隘部の溶接部やタービン翼などの複雑な形状部などにおける超音波探傷を困難なものとしている。
しかも、くさびの存在が余分な広さの探傷面を必要とするため、その分だけ超音波探傷の前処理としての被検査体の表面の磨きの手間が多くなる。
さらに、くさびの介在が被検査体の探傷したい位置例えば溶接箇所に超音波ビームの入射点を接近させることを難しくし、最も感度の良い屈折角での探傷ができずに精度が低下するという問題を有している。例えば、屈折角45°で横波斜角探傷しようとしても、くさびによって入射点が余盛り(溶接ビード)境界から離れてしまうことから、裏波ビード付近に超音波ビームの中心が当てられず目的とする感度が得られないことがある。
また、き裂状欠陥に対する斜角探傷においては、横波斜角探傷と縦波探傷とを実施するため、探触子あるいはくさびを取り替えた上で機械走査を2度繰り返す必要があり、測定時間も手間も2倍以上かかるという問題がある。
しかも、縦波探傷と横波斜角探傷とでは、全く異なる探触子を使う場合と、探触子は共通でくさびだけを縦波用くさびと横波用くさび(縦波臨界角以上の入射角が効率的にできるくさび)とで使い分ける場合とがあるが、いずれにしても探触子あるいはくさびを交換することで被検査体への超音波の入射点が変動するため、分析が難しくなるという問題がある。つまり、入射点が同じにできないので(即ち、同じ位置で測定できないので)、分析精度が落ちるという問題を有している。
本発明は、くさびを用いない横波斜角探傷法を提供することを目的とする。また、本発明は、横波・縦波同時探傷を可能とするフェーズドアレイ超音波法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために請求項1記載のフェーズドアレイ超音波法による横波斜角探傷法は、被検査体に対しフェーズドアレイ探触子をくさびを使わずに直に接触させ、フェーズドアレイ探触子の振動子から被検査体内へ直接発信される横波を遅延時間制御し、被検査体内に縦波臨界角以上の屈折角で横波を伝搬させ、かつ被検査体内の任意の位置で横波の波面を合成して斜角探傷を行うようにしている。
また、請求項3記載のフェーズドアレイ超音波法による横波・縦波同時斜角探傷法は、被検査体に対しフェーズドアレイ探触子をくさびを使わずに直に接触させ、フェーズドアレイ探触子の振動子から被検査体内へ直接発信される横波を遅延時間制御し、被検査体内に縦波臨界角以上の屈折角で横波を伝搬させ、かつ被検査体内の任意の位置で横波の波面を合成して送受信する一方、被検査体内へ直接発信される縦波の位相が合うように遅延時間を制御して縦波を合成して送受信し、1つのフェーズドアレイ探触子によって同じ位置で、横波斜角探傷と縦波探傷とが交互に連続的に実施されるようにしている。
ここで、上述のフェーズドアレイ超音波法による横波斜角探傷法あるいは横波・縦波同時斜角探傷法において用いられるフェーズドアレイ振動子は、探傷面と接触する面に曲率を与え、あるいは可撓性を持たせ、面接触とすることが好ましい。
請求項1記載のフェーズドアレイを用いた横波斜角探傷法では、くさびを用いずに被検査体に直接探触子を接触させて直に被検査体内に横波を伝搬させるので、探傷面を小さくすることができ、狭隘部でも探傷できる。しかも、探傷面が狭くて済むのでその分だけ前処理としての被検査体の表面の磨きを少なくできる。
また、くさびを必要とする従来の横波斜角探傷の場合よりも、入射点を探傷部位例えば溶接部に近づけられるため、検出感度の向上が望める。例えば溶接箇所の横波斜角探傷を例に挙げると、入射点が約4mm程度余盛境界に近づけることができる。依って、1番良い角度(つまり、横波の超音波エネルギーが最も強い角度)で当てられるので、検出感度の向上が望める。また、これにより、超音波探傷法を適用するには肉厚が薄過ぎるような被検査体に対しても(つまり、肉厚が薄い場合でも)、亀裂発生部位に0.5スキップ(直射)で超音波を入射できる可能性が高くなる。
そして、検出感度の向上が望めることで、今までは適用されていなかった分野まで超音波探傷試験法を広げることが可能となる。例えば、ボイラ内の吊り下げ管の溶接検査について適用することが可能となる。ボイラ内の吊り下げ管の取り換え工事の際には、吊り下げ管の検査には放射線透過試験が用いられており、長期の検査期間を必要とすることが問題となっている。しかし、超音波探傷試験で代替することができれば、溶接検査の期間を短縮できることが期待できる。吊り下げ管の肉厚は、超音波探傷試験を適用するには肉厚が薄過ぎる(薄肉(5mm程度)である)ことと余盛の影響により、入射点を溶接部に十分近づけることができず、感度が良い条件で溶接部を探傷できない。
さらに、くさびを使わずに同じ探触子から縦波と横波とが同一ポイントから発信されるので、縦波が合成されるように遅延時間制御をかけて送受信すれば斜角探傷が、横波が合成されるように遅延時間制御をかけて送受信すれば横波斜角探傷が行うことができる。即ち、くさびあるいは探触子の交換無しで、1回の探触子の機械走査作業で縦波探傷と横波斜角探傷とが実施でき、作業時間・手間が半減する。つまり、同じ探触子位置で1つの探触子によって横波と縦波とが高速で交互に送受信されるので、恰もリアルタイムで横波斜角と探傷縦波探傷とが同時に実施されるようにできる。同時に、同じ探触子で同じ位置から横波斜角探傷と縦波斜角探傷とを実施できるので、横波と縦波との被検査体への入射点が同じになり分析し易い。また、縦波と横波の同時探傷、並びに両探傷結果の合成が容易となる。これにより欠陥形態の識別能力が向上すると共に検査精度が上がる。
振動子から放射される縦波および横波の波面を示す説明図である。 縦波および横波の指向性(変位の絶対値と方位との関係)を示すグラフである。 試験体と探触子の配置の関係を示す説明図であり、(A)はA−1試験片、(B)はR100試験片である。 A−1試験片のセクター画像であり、(A)はくさび有り(くさび方式)、(B)はくさび無し(直接接触方式)の場合である。 振幅80%(45°)における直接接触方式による横波探傷時の試験片の違いが与える影響を比較するセクター画像であり、(A)はA−1試験片、(B)はR100試験片である。 直接接触方式で横波屈折角20度と45度との超音波解析ソフトウェアによる超音波ビームの可視化結果であり、(A)は横波屈折角20度、(B)は横波屈折角45度である。 エコー高さを屈折角度で整理したグラフである。実験により得られた横波斜角探傷の最大エコー強度およびシミュレーションの予測結果を正規化して示すグラフであり、実験結果は直接接触方式とくさび方式の場合、シミュレーションは直接接触方式の結果である。 実施例1に示す実験機器の条件で、くさびがある場合とない場合との探傷範囲の違いを説明する図であり、(A)はくさびがある場合、(B)はくさびが無い場合である。 R100試験片に対して実施したくさびを用いない横波・縦波同時探傷のセクター画像であり、(A)は縦波、(B)は横波の場合を示す。 くさびを用いない横波・縦波同時探傷の屈折角と振幅との関係を示すグラフである。
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。尚、本明細書において、フェーズドアレイ探触子の振動子から被検査体内に直に発信される超音波の発信角度を、説明の便宜上、屈折角度と呼ぶ。この屈折角度は、振動子から被検査体に超音波ビームが伝搬する方向と入射点を通る鉛直線(被検査体の表面と直交する線)との成す角度である。
本実施形態にかかるフェーズドアレイ超音波法による横波斜角探傷法は、被検査体に対してくさびを使わずにフェーズドアレイ探触子を直に接触させ、フェーズドアレイ探触子の振動子から発信される横波を電子制御(遅延時間設定)することにより、被検査体内に縦波臨界角相当以上の屈折角で伝搬させ、かつ被検査体内の任意の位置で横波の波面を合成して、斜角探傷を行うものである。
即ち、くさびを使わずに、しかも従来は使用していなかった振動子からの横波を使って(つまり、振動子から発信される縦波を使わずに)、電子的制御による直接制御だけで横波を合成するようにしている。つまり、横波斜角探傷でありながら、ビーム生成プロセスの一部として、くさびを使った屈折作用を含んでいないことを特徴としている。
本実施形態では、被検査体に対してくさびを使わずにフェーズドアレイ探触子を直に接触させているので、超音波ビームのくさびによる屈折に依存せずに、境界条件即ち遅延時間だけで決まる。つまり、個々の振動子に加えるパルスのタイミングを電子的に制御して、超音波ビームを任意の方向に偏向させ、収束させることができる。そこで、振動子から発信される横波を合成すること、即ち横波音速に基づいた遅延時間を設定することで、横波の伝搬方向を縦波臨界角以上の屈折角の使用領域内で任意の方向に偏向させて、任意の位置で横波の位相が合うように送受信することができる。振動子からは横波だけでなく縦波も発信されるが、位相が合わないと干渉しないので、縦波が合成されることはない。しかし、被検査体内に縦波が伝搬されると、合成されずともノイズとして出現して処理が煩雑となるので、原則として縦波臨界角以上〜70°程度の屈折角となるように遅延時間が設定される。
パルス発生のタイミング(遅延)は例えばソフトウェア(フォーカルロウ(プログラム化された時間遅延パターン)カリキュレーター)で計算する。本実施形態の場合、振動子から発信される縦波と横波のうちの、従来使われることのなかった横波に対して遅延時間を設定し、被検査体内を任意の方向に伝搬させて、目的とする位置に合焦される波面を合成する。つまり、ある角度(縦波臨界角以上に相当する境界条件:遅延時間だけで制御する)で被検査体内を伝搬されように発信させてかつ横波が合成される遅延時間を設ける。
フェーズドアレイシステムは、多素子例えば16から多い場合は256もの個別にパルス発信できる素子から成る探触子と、それに付随するハードウェアと、ソフトウェアの組み合わせで構成されている。素子は帯状(リニアアレイ)、リング状(環状アレイ)、円盤マトリックス(円盤アレイ)として配置され、場合によっては更に複雑な形状を持つこともある。本実施形態のフェーズドアレイ方式の探触子は、例えばボイラーチューブなどの管状物を被検査体とし、その溶接部などを探傷するため、被検査体の外周面と同じ曲率で曲げた状態でエポキシ樹脂などで固めて探触子として構成されている。したがって、被検査体に対して面接触となり、より多くの超音波エネルギーを入射できる。勿論、上述の探触子の形態に限られず、アレイを固める樹脂を可撓性のある樹脂としたフレキシブルアレイ探触子を用いても良いし、被検査体の形態に応じて適宜形態の探触を用いることが好ましい。このように探触子の探傷面と接触する面に曲率を与え、あるいは可撓性を持たせることにより、面接触とする場合には、感度の向上が期待できる。探触子は、例えばジェルなどの介在物が塗布されるが、くさび(エッジ)を介在させずに被検査体に直接装着される。
因みに、フェーズドアレイシステムにはコンピューターを内蔵した装置が含まれており、この装置が多素子探触子の駆動、反射エコーの受信とデジタル化を行い、必要に応じてエコー情報を標準化された何通りもの形式でプロットされる。斜角探触子は、被測定物の探傷面に対して斜めに超音波を送受信するタイプの探触子であり、送受兼用の一探触子型と、送信、受信が独立した二探触子型があるが、いずれの方式を用いても良い。
また、本実施形態にかかるフェーズドアレイ超音波法による横波斜角探傷法によれば、くさびを使わずに同じ探触子から縦波と横波とが同一ポイントから発信されるので、縦波が合成されるように遅延時間制御をかけて送受信すれば斜角探傷が、横波が合成されるように遅延時間制御をかけて送受信すれば横波斜角探傷が行うことができる。位相が合わないと干渉しないので、縦波と横波のいずれか一方しか合成されない。また、高速(例えば2kHz)で切り替えられるので、機械走査上は恰も同時に測定しているのと同じである。つまり、本発明は、同一振動子から発信される横波を用いて横波斜角探傷を、縦波を用いて斜角探傷を同時に行うことができる。このため、本実施形態によれば、例えば、1回の機械走査の間に、横波斜角探傷で傷を見つけ、その傷の高さなどを縦波探傷で測定することができる。
つまり、本実施形態の超音波斜角探傷法によれば、縦波臨界角以上の屈折角となるように横波を合成し、縦波臨界角未満の屈折角あるいは全屈折角では縦波を合成し、1つのフェーズドアレイ探触子、同じ位置で、横波斜角探傷と縦波探傷とが選択的にあるいは交互に連続的に実施できる。これにより、横波と縦波による探傷のためのフォーカルロウを設定して、両探傷を同時に実施すること、即ち横波・縦波による同時斜角探傷法が実現できる。
ここで、エコー強度は屈折角によって感度が異なる(図10参照)。縦波の場合は、0°が一番強く、屈折角が大きくなると、信号が小さくなる。横波の場合には、縦波臨界角に相当する屈折角33°で最も落ち込み、それを超えた40°付近でピークを示し、その後屈折角が大きくなると信号が小さくなる傾向にある。このため、横波の場合には、屈折角は縦波臨界角以上〜70°の範囲内で、好ましくは45°〜70°の範囲内で、主には45°、60°、70°が、中でも検出性、寸法計測の面で優位である45°程度に設定することが好ましいと考えられている。他方、縦波を使うときには0〜90°の屈折角で使用することができる。尚、横波は、使用領域(45°〜70°の範囲)では、くさびがあっても、くさびがなくとも同じようなプロファイルが得られるので、くさびが無くとも解析に使えることが判明した。他方、縦波は縦波臨界角未満の領域では、縦波探傷で補完することが可能である。
振動子から直接被検査体内に発信される縦波と横波とは、屈折角を調整することで、縦波が全反射となり、被検査体中に横波だけを伝搬させることができる。例えば、超音波ビームの発信角度即ち屈折角が、縦波臨界角を超えた領域では、横波しか被検査体内を伝搬しない(図4(B)、図5(B)参照)。逆に、縦波臨界角以下であると、横波が被検査体内を伝搬する場合には、必ず縦波も被検査体中を伝搬することとなる(図4(A)、図5(A)参照)。
尚、探傷装置は、フォーカルロウにより、横波斜角探傷と縦波探傷との2パターンを高速で切り替えることができる。したがって、恰もリアルタイムで縦波と横波とを利用して斜角探傷と横波斜角探傷とを同時に実施するかの如き結果が得られる。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
本実施形態にかかるくさびを用いない横波斜角探傷に関して、くさびを用いる従来の横波斜角探傷との検出感度差を明らかにし、探傷で得られるエコー強度を超音波シミュレーション結果と比較することにより、実施可能であることを確認した。なお、以下、くさびを用いず、探触子を直接検査対象物に接触させて、振動子から発信される横波を遅延時間制御して横波を合成する方法を直接接触方式と呼ぶ。また、振動子から放射される縦波を合成し、くさびを利用して横波を被検査体中に伝搬させる従来の横波斜角探傷方式をくさび方式と呼ぶ。
2 直接接触方式の横波斜角試験
2.1 振動子から放射される超音波
従来のフェーズドアレイ超音波探傷法においては、各振動子から放射される縦波を合成し、横波斜角探傷および縦波探傷が実施される。図1は一つの振動子から放射され、鋼中を伝搬する縦波および横波による変位の絶対値を市販の超音波解析ソフトウェア(伊藤忠テクノソリューションズ株式会社製,商品名ComWAVE(登録商標))により可視化した一例である。振動子幅は0.3mm、中心周波数は5MHzである。同図から、縦波および横波が発生する様子を確認できる。この結果から得られた縦波および横波の指向性を図2に示す。方位は振動子直下を0°とし、両側の鋼の表面を±90°として縦波および横波の変位の絶対値を表示している。縦波は0°方向にエネルギーが集中しているのに対し、横波は±51°近辺に集中し、絶対値は縦波より横波の方が大きい結果となっている。
2.2 屈折角と最大エコー強度の関係
くさび方式と直接接触方式の横波斜角探傷において、異なる屈折角と最大エコー強度を調査した。実験に用いた機材は、市販のフェーズドアレイ超音波探傷装置(商品名Dynaray)、一般的な仕様のリニアアレイ探触子(5K0.35(0.3/0.05)×10−32ch)、横波斜角探傷用くさび(材質:ポリスチレン、寸法:L26×W30×h12.5mm)であり、試験片はSTB−A1試験片と図3に示すR100試験片(材質:SS材)である。STB−A1試験片では屈折角約20度以下ではその形状からエコーが得られない。横波斜角探傷の場合、縦波臨界角以下では用いないので実用上問題はないが、縦波探傷と比較するために約20度以下からのエコーも観察するためにR100試験片を製作した。32個の振動子による同時送信で、ビームの焦点はビーム路程が100mmの位置に設定した。なお、焦点位置は近距離音場外となる。接触媒質には機械油を使用した。
STB−A1試験片に対する横波斜角探傷のセクター画像に関して、くさび方式と直接接触方式とを比較して図4に示す。直接接触方式(図4(B)参照)においては、横波によるエコーに加え、縦波臨界角(鋼では33度)未満の屈折角では縦波によるエコーが観測された。つまり、縦波臨界角未満でも横波を合成できるが、縦波も観測されるので分析に使い難いため、通常では縦波臨界角未満での横波斜角探傷は使われない。さらに、その後に観測されるエコーは超音波の入射点の面と直交した面(試験片側面)で反射した縦波によるエコーである。これは、STB−A1試験片の厚さが25mmと薄いために生じるものである。くさび方式の場合(図4(A)参照)に比べ、横波屈折角45度における最大エコー強度は8.3dB低いことから、直接接触方式ではくさび方式よりも感度が低下することが確認された。しかし、この程度の感度低下は、横波斜角探傷で十分使える範疇のものであり、特に問題とはならない。
図5はR100試験片を用いた場合の結果である。試験片の厚さが70mmであるため、試験片側面による縦波のエコーは観測されないが、屈折角がマイナスの方向へのグレーティングローブによるエコーが観測された。以下のエコー強度に関する検討では、横波斜角探傷では縦波のエコーを取り扱うことがなく、さらに、縦波探傷の場合は屈折角0度から20度のエコー強度が必要であることから、実験およびシミュレーションはR100試験片を用いた。
図6は直接接触方式で横波屈折角20度と45度との超音波解析ソフトウェアによる超音波ビームの可視化結果である。直接接触方式においても、横波屈折角20度では20度方向に横波が、また、39度方向に縦波が伝搬する。その結果、39度方向の縦波が横波屈折角20度の縦波にエコーとしてセクター画像に表示される。一方、横波屈折角45度では、縦波臨界角以上となるため、縦波が発生しない。
以上のことから、直接接触方式による横波斜角探傷でも、従前のくさび方式の場合より感度は若干低下するものの同様に探傷ができることが明らかとなった。
(メインローブやグレーティングローブ)
2.3 実験およびシミュレーション結果との比較
実験により得られた横波斜角探傷の最大エコー強度およびシミュレーションの予測結果を正規化して図7に示す。実験結果は直接接触方式とくさび方式の場合であり、シミュレーションは直接接触方式の結果である。なお、参考にポリスチレンと鋼の往復透過率も表示している。
直接接触方式とくさび方式との場合、縦波臨界角以下や屈折角40度から70度において差異はあるものの、概ね同様の傾向となっている。つまり、くさびは有っても無くても使用領域(屈折角40度から70度)では殆ど変わらないプロファイルを示すことから、くさびが無くとも横波斜角探傷に使えることが分かる。
他方、シミュレーション結果は縦波臨界角での最大エコー強度の低下が見られず、全体的に実験結果と乖離が見られる。実験との差異の原因は探触子のモデル化にあると推測する。例えば、超音波ビームの拡散や往復透過率を考慮して解析的に求めた振動子の音場を用い、反射源とその周辺のみを有限要素解析する方法を採用することにより、縦波臨界角付近の挙動の予測精度が向上する可能性がある。つまり、解析上の問題があって合わなかったが、実験的には合っているので特に問題とはならないと考えられる。
2.4 期待される効果
配管の溶接継手の検査において、直接接触方式の横波斜角探傷では、くさびを使用しないため、入射点を溶接部により近づけることができる。直接接触方式では、くさび方式より、図8に示すように約4mm近づけることができる。また、探傷面との接触面積はくさびを用いた場合は780mm(=26mm×30mm)に対して240mm(=16mm×15mm)と約1/3となり、酸化膜や塗膜の除去作業の省力化が見込める。さらに、探傷面に応じた曲率の振動子の探触子を用いることにより入射される超音波のエネルギーが増え、検出感度の向上が期待できる。
フェーズドアレイ超音波法における新たな探傷および画像構築技術として、FMC(Full matrix capture)/TFM(Total focusing matrix)が注目を集めている。同手法では、探触子内の振動子が一つずつ超音波を送信し、それぞれを全振動子で受信する。その後、合成された受信波形が全探傷領域で集束するように各振動子に応じた受信波形に対し時間シフトを行う。さらに、全受信波形を保存するため、音速変更および入射面の幾何形状を考慮した探傷画像の再構成をホスト処理で行うことができる。同手法は、直接接触方式の横波斜角探傷においても有効と考えらえる。
(縦波・横波同時探傷)
横波と縦波の探傷では様々な特性が異なり、例えば、き裂状欠陥に対する斜角探傷において、欠陥の開口部の検出には横波が、先端部の検出には縦波が優れている。また、検査対象物の内部では総じて縦波の方がモード変換は起きやすいが、溶接金属の組織の影響を受けにくい。さらに、図9および図10に示すR100試験片に対するセクター画像とそれから得られる屈折角と最大エコー強度の関係から判るように、屈折角による感度が異なる。使用した探傷器では横波と縦波による探傷のためのフォーカルロウを設定して、両探傷を同時に実施することが可能であるため、両方の振動モードで探傷することにより取得される情報量が増える。例えば、0度から縦波臨界角までは縦波探傷で、それ以降は横波および縦波斜角探傷とし、上記の横波と縦波の特徴を念頭に置いて探傷データを分析することで、より正確な判定ができる可能性がある。

Claims (4)

  1. 被検査体に対しフェーズドアレイ探触子をくさびを使わずに直に接触させ、前記フェーズドアレイ探触子の振動子から前記被検査体内へ直接発信される横波を遅延時間制御し、前記被検査体内に縦波臨界角以上の屈折角で前記横波を伝搬させ、かつ前記被検査体内の任意の位置で前記横波の波面を合成して斜角探傷を行うことを特徴とするフェーズドアレイ超音波法による横波斜角探傷法。
  2. 前記フェーズドアレイ振動子は探傷面と接触する面に曲率を与え、あるいは可撓性を持たせ、面接触としたことを特徴とする請求項1記載のフェーズドアレイ超音波法による横波斜角探傷法。
  3. 被検査体に対しフェーズドアレイ探触子をくさびを使わずに直に接触させ、
    前記フェーズドアレイ探触子の振動子から前記被検査体内へ直接発信される横波を遅延時間制御し、前記被検査体内に縦波臨界角以上の屈折角で前記横波を伝搬させ、かつ前記被検査体内の任意の位置で前記横波の波面を合成して送受信する一方、
    前記被検査体内へ直接発信される縦波の位相が合うように遅延時間を制御して縦波を合成して送受信し、
    1つのフェーズドアレイ探触子によって同じ位置で、横波斜角探傷と縦波探傷とが交互に連続的に実施されることを特徴とするフェーズドアレイ超音波法による横波・縦波同時斜角探傷法。
  4. 前記フェーズドアレイ振動子は探傷面と接触する面に曲率を与え、あるいは可撓性を持たせ、面接触としたことを特徴とする請求項3記載のフェーズドアレイ超音波法による横波・縦波同時斜角探傷法。
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