JP5901235B2 - ドライフィルムレジスト工程用感光性樹脂積層体 - Google Patents

ドライフィルムレジスト工程用感光性樹脂積層体 Download PDF

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Description

本発明は、半導体プリント基板などを作製するドライフィルムレジスト工程において用いられる感光性樹脂積層体を構成するベースフィルムおよびそれを用いた積層体に関する。
ドライフィルムレジスト(DFR)工程で用いられる感光性樹脂積層体は、一般的に、ベースフィルム、感光性樹脂組成物層、保護フィルムの順に積層された構造を有している。DFR工程においては、この積層体の保護フィルムを剥がして、感光性樹脂組成物層を銅箔基板に圧着し、ベースフィルム上にパターンマスクをおいて感光性樹脂を感光させ、ベースフィルムを剥がして現像することにより基板上に回路が描画される。
このように、ベースフィルムの上にパターンマスクをおいて、紫外線などによる露光によって回路画像を描画するために、ベースフィルムには適度な光透過性と平滑性が必要である。そこで、ベースフィルムには、UV透過性に優れ、高透明であり、表面の平坦な二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが多用されている。
一方、保護フィルムには中密度ポリエチレンフィルムが一般に用いられている。この保護フィルムは、感光性樹脂組成物層を保護すると同時に、ベースフィルム/感光性樹脂組成物層/保護フィルムからなる積層体をロール状に巻き取った際に、ベースフィルムの裏面と感光性樹脂組成物層の間に存在することにより、ベースフィルムと感光性樹脂組成物層とが粘着(または接着)する、いわゆるブロッキング現象を防止する機能も有している。したがって、この保護フィルムには適度な粘着力が求められる。保護フィルムの粘着力が弱すぎれば、積層体をロール状に巻取る際に巻ズレなどを生じ、感光性樹脂組成物層に損傷を与えてしまう。また、粘着力が強すぎると、保護フィルムまたは感光性樹脂組成物層の一部が剥がれてしまい欠点を生じる場合がある。
また、保護フィルムは、剥離後に再使用することができず、廃棄処理しなければならないため、特許文献1〜3には、ベースフィルムに保護フィルムの機能を付与させて、保護フィルムを使用しない積層体が開示されている。
すなわち、特許文献1、2には、ベースフィルムを構成する基材フィルムの一方の面に、中密度ポリエチレンを押し出しラミネート法によって15μmの厚みで積層して、離型層を設け、基材フィルムの他の面に感光性樹脂組成物層を設ける方法が開示されている。しかし、中密度ポリエチレンからなる離型層は厚く、消費するポリエチレンの量が多くてコスト高であり、積層体ロールも大きく、重くなりハンドリング性が低下し、その後の作業性も低下する。さらには、廃棄物の量も多くなり、廃棄に関するコストも増大する。
また、特許文献1〜3には、ベースフィルムを構成する基材フィルムの一方の面に、有機溶剤に溶解したポリエチレンイミンアルキル変性体を0.1μmの厚みで塗布して、離型層を設け、基材フィルムの他の面に感光性樹脂組成物層を設ける方法が開示されている。しかし、ポリエチレンイミンアルキル変性体からなる離型層は、剥離強度が高すぎる上、温度変化に対する剥離強度の安定性も十分ではないなどの問題があった。
特許第2882953号公報 特許第3920094号公報 特開2003―191424号公報
本発明は、ドライフィルムレジスト工程で用いられる感光性樹脂積層体を構成するベースフィルムであって、保護フィルムの機能を有し、その機能が長期間安定して保たれ、また、生産時の環境汚染がなく、安価なベースフィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のポリオレフィン樹脂と架橋剤とを含有する離型層を有するベースフィルムが、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は、下記のとおりである。
(1)基材フィルムの一方の表面に感光性樹脂組成物層が積層された構造を有する、ドライフィルムレジスト工程で用いられる感光性樹脂積層体であって
材フィルムの方の表面に離型層が積層され
離型層が酸変性ポリオレフィン樹脂と架橋剤とを含有し、
酸変性ポリオレフィン樹脂が、酸変性成分1〜10質量%と(メタ)アクリル酸エステル成分0.5〜40質量%とを含有し、
架橋剤が、カルボジイミド化合物および/またはオキサゾリン化合物を含有し、カルボジイミド化合物および/またはオキサゾリン化合物の含有量が、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1〜30質量部であることを特徴とする感光性樹脂積層体
(2)基材フィルムがポリエステルフィルムであることを特徴とする(1)に記載の感光性樹脂積層体
(3)離型層におけるシリコーン化合物、フッ素化合物、ワックス類および界面活性剤の合計含有量が、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1質量部以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の感光性樹脂積層体
(4)離型層面に、アクリル系粘着剤を用いた粘着材料を、室温で貼り合わせて測定したときの離型層と粘着材料との間の剥離強度(熱圧着処理無し)と、室温で貼り合わせた後、70℃、20時間、2kPa荷重で圧着処理してから測定したときの剥離強度(熱圧着
処理後)との比(離型層剥離強度比=剥離強度(熱圧着処理後)/剥離強度(熱圧着処理無し))が1.2以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の感光性樹脂積層体。
本発明のベースフィルムは、片面に離型層を有しているので、その反対面に感光性樹脂組成物層を積層してなる積層体は、感光性樹脂組成物層の上に保護フィルムを重ねることなくロール状に巻取ることができる。したがって、保護フィルムを省略することで生産に使用する資源、廃棄物の量を大幅に削減することができる。また、加工工程において保護フィルムを廃棄する作業も省略できるため生産効率をあげることができ、コスト削減に寄与する。
また、本発明のベースフィルムの離型層は、感光性樹脂組成物層との剥離特性、特に熱安定性が向上しており、輸送時や保管時および加工時に熱にさらされても、ブロッキングなどの不具合を生じて使用不能となることがなく、生産性向上、コスト削減に寄与する。
また離型層は、有機溶剤を使用せずに形成することができるので、ベースフィルム生産時の環境汚染がない。
(ベースフィルム)
本発明のベースフィルムは、感光性樹脂積層体を構成するフィルムであり、基材フィルムと離型層とを有し、基材フィルムの一方の表面に離型層が積層されてなるものである。また、本発明の感光性樹脂積層体は、基材フィルムのもう一方の表面(離型層が積層された面の反対面)に、感光性樹脂組成物層が積層された構造を有している。
ベースフィルムを構成する基材フィルムに用いることができる樹脂材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、6−ナイロン、ポリ−m−キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)等のポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、これらの樹脂の複層体(例えば、6−ナイロン/MXD6ナイロン/6−ナイロン、6−ナイロン/エチレン−ビニルアルコール共重合体/6−ナイロン)や混合体等が挙げられる。
中でも、寸法安定性、耐熱性、機械的性能に優れ、かつ、離型層との接着性に優れたポリステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムの具体例として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリ乳酸やこれらの共重合体からなるフィルムが挙げられる。中でも、コストと性能からポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
基材フィルムは、寸法安定性の点から、少なくとも一方向に延伸したフィルムであることが好ましく、二軸延伸フィルムであることがさらに好ましい。
基材フィルムは、公知の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含んでいてもよい。
基材フィルムは、離型層との接着性を良くするために、離型層を積層する表面に前処理としてコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理等を施したものでもよい。
基材フィルムの厚みは、通常、5〜50μmであり、さらに好ましくは10〜40μm、最も好ましくは15〜30μmである。
本発明において、上記基材フィルム表面に積層される離型層は、酸変性ポリオレフィン樹脂と架橋剤とを含有し、酸変性ポリオレフィン樹脂は、酸変性成分と(メタ)アクリル酸エステル成分とを含有することが必要である。
酸変性ポリオレフィン樹脂において、酸変性成分の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂の1〜10質量%であることが必要であり、1〜7質量%であることが好ましく、2〜5質量%であることがより好ましく、2〜3質量%であることが特に好ましい。
酸変性成分の量が少なすぎる場合は、基材フィルムとの十分な接着性が得られないことがあり、感光性樹脂組成物層を汚染する可能性がある。さらに、この酸変性ポリオレフィン樹脂を、後述する水性分散化するのが困難になる傾向がある。一方、酸変性成分の量が多すぎる場合は、感光性樹脂組成物層との剥離性が低下する。
酸変性成分としては、不飽和カルボン酸成分が挙げられる。不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でも、樹脂の分散安定性の面から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が特に好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂において、主成分であるオレフィン成分は、特に限定されないが、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のアルケンであることが好ましい。これらの混合物であってもよい。この中で、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のアルケンがより好ましく、エチレン、プロピレンがさらに好ましく、エチレンが最も好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、ポリエステルフィルムなどの基材フィルムとの接着性や、感光性樹脂組成物層との耐ブロッキング性を向上させる理由から、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有することが必要である。
(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂の0.5〜40質量%であることが必要であり、基材フィルムとの良好な接着性を持たせるために、1〜20質量%であることがより好ましく、3〜10質量%であることがさらに好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル成分としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜30のアルコールとのエステル化物が挙げられ、中でも入手のし易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステル化物が好ましい。そのような化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。この中で、ベースフィルムとの接着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがさらに好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を意味する。
酸変性ポリオレフィンを構成する各成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されない。共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。
酸変性ポリオレフィン樹脂の組成および各成分の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂の合成時において仕込量を調整することによって制御でき、また酸変性ポリオレフィン樹脂をH−NMR分析に供して、各成分特有のピークを観察することによって知見できる。各成分の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂を構成する全成分に対する当該成分の割合である。
酸変性ポリオレフィン樹脂の融点は、60〜150℃であることが好ましく、80〜150℃であることがより好ましく、85〜130℃であることがさらに好ましく、90〜115℃が特に好ましい。融点が150℃を超えると離型層の形成に高温での処理が必要となり、60℃未満では剥離性が著しく低下することがある。
酸変性ポリオレフィン樹脂のビカット軟化点は、30〜130℃であることが好ましく、50〜130℃であることがより好ましく、53〜110℃であることがさらに好ましく、55〜90℃であることが特に好ましい。ビカット軟化点が30℃未満の場合は剥離性が低下し、130℃を超える場合は離型層の形成に高温での処理が必要となることがある。
酸変性ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートは、190℃、2160g荷重において、1〜1000g/10分であることが好ましく、1〜500g/10分であることがより好ましく、2〜300g/10分であることがさらに好ましく、2〜200g/10分であることが特に好ましい。メルトフローレートが1g/10分未満のものは、樹脂の製造が困難なうえ、後述する水性分散体とするのが困難である。メルトフローレートが1000g/10分を超えるものは、基材フィルムとの接着性が低下して、離型層成分による感光性樹脂組成物層の汚染が起こりやすくなる。
本発明に用いることができる酸変性ポリオレフィン樹脂の商品名としては、アルケマ社製の無水マレイン酸ポリオレフィン樹脂であるボンダインシリーズが挙げられる。具体的な商品名として、「LX−4110」、「HX−8210」、「HX−8290」、「AX−8390」などがある。
本発明において、離型層は、上記酸変性ポリオレフィン樹脂とともに、架橋剤を含有することが必要である。酸変性ポリオレフィン樹脂と架橋剤を組み合わせることにより、離型層が奏する高温での易接着性を適度に軽減して、温度依存性の少ない安定した剥離性を発揮させ、経時でも安定した適度な剥離性と熱安定性とを発現することができる。また、感光性樹脂組成物層の種類や、用途によって、剥離性のレベルを変えたい場合も対応することができる。架橋剤が含有されない場合は、安定した良好な剥離性と熱安定性とを兼ね備えることはできない。
架橋剤は、カルボジイミド化合物および/またはオキサゾリン化合物を含むことが必要である。架橋剤として、カルボジイミド化合物およびオキサゾリン化合物のうち一方が含有されてもよいし、または両方が含有されてもよい。混合安定性および保存安定性の点で、オキサゾリン化合物を含有することが好ましい。上述のように、架橋剤は、離型層中、酸変性ポリオレフィン樹脂を架橋することによって、酸変性ポリオレフィン樹脂が有する接着性を十分に低下させて剥離性を奏するだけでなく、高温下や長期保存された場合にも安定した剥離性を発揮することができる。カルボジイミド化合物および/またはオキサゾリン化合物が含有されない場合、たとえ他の架橋剤が含有されても、適度な剥離性と熱安定性を兼備させることはできない。
カルボジイミド化合物は、分子中に2つ以上のカルボジイミド基を有しているものであれば特に限定されるものではない。カルボジイミド化合物は、1つのカルボジイミド部分において、酸変性ポリオレフィン樹脂の酸変性部分における2つのカルボキシル基とエステルを形成し、架橋を達成する。カルボジイミド化合物の具体例として、例えば、p−フェニレン−ビス(2,6−キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチレン−t−ブチルカルボジイミド)などのカルボジイミド基を有する化合物や、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミドが挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いやすさから、ポリカルボジイミドが好ましい。
ポリカルボジイミドの市販品としては、日清紡社製のカルボジライトシリーズが挙げられる。商品名を用いて説明すると、より具体的には、水溶性タイプの「SV−02」、「V−02」、「V−02−L2」、「V−04」;エマルションタイプの「E−01」、「E−02」;有機溶液タイプの「V−01」、「V−03」、「V−07」、「V−09」;無溶剤タイプの「V−05」が挙げられる。
オキサゾリン化合物は、分子中にオキサゾリン基を2つ以上有しているものであれば、特に限定されるものではない。オキサゾリン化合物は、2つのオキサゾリン部分のそれぞれにおいて、酸変性ポリオレフィン樹脂の酸変性部分における1つのカルボキシル基とアミドエステルを形成し、架橋を達成する。オキサゾリン化合物の具体例として、例えば、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィドなどのオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマーが挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いやすさからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
オキサゾリン基含有ポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロスシリーズが挙げられる。商品名を用いて説明すると、より具体的には、水溶性タイプの「WS−500」、「WS−700」;エマルションタイプの「K−1010E」、「K−1020E」、「K−1030E」、「K−2010E」、「K−2020E」、「K−2030E」などが挙げられる。
カルボジイミド化合物および/またはオキサゾリン化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1〜30質量部であることが必要であり、3〜20質量部であることがより好ましく、5〜10質量部であることがさらに好ましい。架橋剤の含有量が1質量部未満では、感光性樹脂組成物層との剥離性が経時によって変化したり、高温処理によって変化しやすい傾向がある。架橋剤の含有量が30質量部を超えると、感光性樹脂組成物層に対する剥離性、熱安定性が低下する傾向がある。カルボジイミド化合物とオキサゾリン化合物とを併用する場合には、カルボジイミド化合物とオキサゾリン化合物の合計量が上記した架橋剤の含有量の範囲を満たしていればよい。
また、本発明の離型層にはポリビニルアルコールが含まれてもよい。ポリビニルアルコールは、離型層中、酸変性ポリオレフィン樹脂中に分散されることによって、安定的な剥離性を奏するだけでなく、感光性樹脂層を積層する際に溶剤を使用した場合にでも、離型層が耐溶剤性を有するために、剥離性が悪化しにくく好ましいだけでなく、添加量によって剥離性を制御することも可能である。また後述する離型層形成用塗工液にポリビニルアルコールを添加すると、塗工液の安定性や、基材フィルムへの塗工性を向上することができる。
ポリビニルアルコールは、特に限定されないが、ビニルエステルの重合体を完全または部分ケン化したものなどが挙げられる。ポリビニルアルコールは、離型層形成用塗工液に含有させるために、水溶性を有していることが好ましい。
ポリビニルアルコールの平均重合度は、特に限定されるものではなく、例えば、300〜5,000であってよく、離型層形成用塗工液の安定性向上の観点からは300〜2,000が好ましい。
市販のポリビニルアルコールとしては、商品名を用いて説明すると、日本酢ビ・ポバール社の「J−ポバール」の具体的な商品名「JC−05」、「VC−10」、「ASC−05X」、「UMR−10HH」;クラレ社の「クラレポバール」の具体的な商品名「PVA−103」、「PVA−105」や、「エクセバール」の具体的な商品名「AQ4104」、「HR3010」;電気化学工業社の「デンカ ポバール」の具体的な商品名「PC−1000」、「PC−2000」などが挙げられる。
ポリビニルアルコールの含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して500質量部以下であることが好ましい。ポリビニルアルコールの含有量が500質量部を超えると、離型層形成用塗工液の安定性が低下するために、塗工液の塗布斑が生じやすくなり、結果として、均一に塗布できなくなる場合があるだけでなく、感光性樹脂層との剥離性が悪化する場合がある。
離型層は、シリコーン化合物、フッ素化合物、ワックス類、界面活性剤の合計の含有量が、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1質量部以下であることが好ましい。この量が少ないほど、離型層と基材フィルムとの接着性が向上するとともに、感光性樹脂組成物層の汚染が抑制される。当該含有量は0.5質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることがさらに好ましく、含んでいないことが最も好ましい。
シリコーン化合物としては、アミノ官能基、および/または、エポキシ基を有するオルガノポリシロキサンのエマルションや、アミノ官能基とエポキシ基を有するオルガノポリシロキサンのエマルションにエポキシ基またはアミノ基を有するシラン、必要により更に水酸基または加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンのエマルションを添加したものなどが例示される。
フッ素化合物としては、含フッ素ポリメタクリレートあるいは含フッ素ポリアクリレート、フッ素系ブロック共重合体などが例示される。
ワックス類としては、数平均分子量が10,000以下の、植物ワックス、動物ワックス、鉱物ワックス、石油化学ワックス等が挙げられる。具体的には、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、ベリーワックス、ホホバワックス、シアバター、蜜蝋、セラックワックス、ラノリンワックス、鯨蝋、モンタンワックス、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、合成ポリエチレンワックス、合成ポリプロピレンワックス、合成エチレン−酢酸ビニル共重合体ワックス等が挙げられる。
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性(非イオン性)界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、反応性界面活性剤等が挙げられる。一般に乳化重合に用いられるもののほか、乳化剤類も含まれる。
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸およびその塩、アルキルベンゼンスルホン酸およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体等のポリオキシエチレン構造を有する化合物や、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のソルビタン誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
反応性界面活性剤としては、アルキルプロペニルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルジアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩等の、反応性2重結合を有する化合物が挙げられる。
離型層の厚みは、感光性樹脂組成物層に対する剥離性の観点から、0.01〜5μmであることが好ましく、0.1〜4μmであることがより好ましく、0.2〜1μmであることがさらに好ましく、0.3〜0.7μmであることが特に好ましい。
離型層の感光性樹脂組成物層に対する剥離性の観点から、基材フィルム上に積層された離型層面に、アクリル系粘着剤を用いた粘着材料を、室温で貼り合わせて測定したときの離型層と粘着剤との間の剥離強度(熱圧着処理無し)と、室温で貼り合わせた後、70℃、20時間、2kPa荷重で圧着処理してから測定したときの剥離強度(熱圧着処理後)との比(離型層剥離強度比=剥離強度(熱圧着処理後)/剥離強度(熱圧着処理無し))が1.2以下であることが好ましい。この離型層剥離強度比が1.2を超えると、感光性樹脂積層体の輸送や保管時に、離型層の剥離性能および密着性能の変動が大きく、感光性樹脂積層体をロール状製品とした後の製品保管時、輸送時およびDFR工程で使用した際に、ブロッキングなどの不具合を生じる場合がある。
(ベースフィルムの製造方法)
ベースフィルムは、酸変性ポリオレフィン樹脂および架橋剤を含有する離型層形成用塗工液を、基材フィルム上に塗工したのち乾燥して離型層を形成する方法によって、工業的に簡便に製造することができる。
前記離型層形成用塗工液を製造する方法は、各成分が液状媒体中に均一に混合される方法であれば、特に限定されない。たとえば、酸変性ポリオレフィン樹脂の分散液または溶液に、架橋剤の分散液または溶液を添加して混合するなどして、各成分の分散液または溶液を適宜混合すればよい。
またポリビニルアルコールを含有させる場合には、酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールとの混合物の分散液又は溶液に、架橋剤の分散液または溶液を添加して混合する方法が挙げられる。ポリビニルアルコールの分散液または溶液を用いる場合、その溶質濃度は特に制限されるものではない。しかし、取り扱いやすさの点から、5〜10質量%が好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールを一緒に液状媒体中に添加した後、架橋剤の分散液または溶液を添加すればよい。
他の成分を添加する場合は、上記製造方法における任意の段階で添加を行うことができる。
離型層形成用塗工液における溶媒は、基材フィルム上への塗工液の塗布が可能であれば、特に限定されないが、環境汚染への配慮と、ポリビニルアルコールを使用する場合その溶解性の観点から、水、または水と両親媒性有機溶剤とを含む水性媒体を使用することが好ましい。
水性媒体とは、水と両親媒性有機溶剤とを含み、水の含有量が2質量%以上である溶媒を意味する。両親媒性有機溶剤とは、20℃における有機溶剤に対する水の溶解性が5質量%以上である有機溶剤をいう〔20℃における有機溶剤に対する水の溶解性については、例えば「溶剤ハンドブック」(講談社サイエンティフィク、1990年第10版)等の文献に記載されている〕。両親媒性有機溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール(以下「EA」と略称する)、n−プロパノール(以下「NPA」と略称する)、イソプロパノール(以下「IPA」と略称する)等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチル等のエステル類;そのほか、アンモニアを含む、ジエチルアミン、トリエチルアミン(以下「TEA」と略称する)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン(以下「DMEA」と略称する)、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−ジエタノールアミン等の有機アミン化合物;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンなどのラクタム類等を挙げることができる。
酸変性ポリオレフィン樹脂を上記のような水性媒体に分散化する方法は、特に限定されないが、例えば、国際公開WO02/055598号に記載されたものが挙げられる。
水性媒体中の酸変性ポリオレフィン樹脂の分散粒子径は、他の成分との混合時の安定性および混合後の保存安定性の点から、数平均粒子径が1μm以下であることが好ましく、0.8μm以下であることがより好ましい。このような粒径は国際公開WO02/055598号に記載の製法により達成可能である。
本発明においては、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体の有機溶剤含有率は、これより得られる塗工液をインラインコートする際の環境汚染、溶剤回収などの観点から3質量%未満であることが望ましい。より好ましくは1質量%以下である。
離型層形成用塗工液における固形分含有率は、積層条件、目的とする厚さや性能等により適宜選択でき、特に限定されるものではない。しかし、塗工液の粘性を適度に保ち、かつ良好な離型層を形成させるためには、1〜60質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
離型層形成用塗工液を基材フィルムに塗布する方法としては、公知の方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等を挙げることができる。
これらの方法により離型層形成用塗工液を基材フィルムの表面に均一に塗布し、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理又は乾燥のための加熱処理に供することにより、均一な離型層を基材フィルムに密着させて形成することができる。本発明においては、乾燥と同時に架橋を行うために、乾燥のための加熱処理を行うことが好ましい。
基材フィルムに塗工液を塗布し、乾燥して得られるベースフィルムは、ロール状に一旦巻き取られる。ベースフィルムロールは、離型層の剥離性が経時変化しないように、エージングすることが好ましい。
乾燥のための加熱時間および加熱温度、ならびにエージング温度およびエージング時間は、剥離性および密着性に影響を与える。乾燥温度、乾燥時間、エージング温度、エージング時間が不十分であると、離型層の架橋反応が不十分となり、経時によって剥離性や密着性が変化するため好ましくない。
乾燥温度は酸変性ポリオレフィン樹脂と架橋剤の反応を進行させるために、高温で行うことが好ましい。乾燥温度は、80〜160℃であることが好ましく、100〜140℃であることがより好ましく、110〜130℃であることが最も好ましい。乾燥温度が80℃未満では、離型層の架橋反応が十分に進行しないため、感光性樹脂組成物層との密着性が高くなり、離型層が剥がれて感光性樹脂組成物層に付着したり、感光性樹脂組成物が剥がれて離型層に付着したり(ブロッキング現象)して好ましくない。乾燥温度が160℃を超えるとベースフィルムを構成する基材フィルムが収縮したりするため、好ましくない。
乾燥時間は5秒〜5分であることが好ましく、10秒〜1分であることがより好ましい。乾燥時間が5秒未満では、離型層の架橋反応が十分に進行しないため、感光性樹脂組成物層との密着性が高くなり、ベースフィルムに感光性樹脂組成物層が付着したりして好ましくない。乾燥時間が5分を超えるようにするためには、乾燥工程におけるフィルムの送り速度を極端に遅くする必要があり、経済的ではない。
また、これらの塗布工程は、基材フィルムとして延伸フィルムを用いる場合、基材フィルムの延伸と同時に行われることが好ましい。この塗布方法は、一旦、延伸したフィルムに後から塗布する方法に比べ、作業を大幅に省略でき生産性が高い。さらに、延伸、熱セットの際に、高温で処理されることにより、酸変性ポリオレフィンと架橋剤との反応を効率的に行うという点からも好ましい。
例えば、逐次二軸延伸によって基材フィルムを作成する場合には、キャストフィルムを作成した後、すぐに、または1次延伸が施された後に、離型層形成用塗工液をフィルム表面に塗布し、さらに乾燥、延伸、熱セットなどを行えばよい。
この際、塗工液中の揮発性有機溶媒の含有量が高いと作業環境の汚染、出火などの危険性、有機溶剤回収のコストなどの観点から、基材フィルムの延伸と離型層の塗工工程を同一工程で行うことは困難である。
塗布の完了したベースフィルムは、酸変性ポリオレフィン樹脂と架橋剤の反応を十分に進行させるために、エージングを行うことが好ましい。ベースフィルムのエージング温度は30〜80℃、好ましくは35〜70℃であり、エージング期間は半日〜7日、好ましくは1〜3日である。エージング温度が30℃未満の場合、もしくはエージング期間が半日未満の場合、エージングの効果が十分に得られない場合や、反応を十分に進行させるために長期間のエージングを必要とする場合がある。エージングの効果に乏しく、80℃を超える場合、もしくは7日を超える場合は経済的ではない。
(感光性樹脂組成物層)
本発明の感光性樹脂積層体を構成する感光性樹脂組成物層としては、従来からのフォトレジスト層を用いることができる。通常、DFR用のフォトレジスト層としてはネガ型レジストが用いられ、主として現像液に溶解または膨潤する熱可塑性樹脂と感光性材料からなる。このような感光性樹脂組成物層は一般にアルカリ水溶性を有するものであり、DFR工程において露光された部分が現像によって回路(画像)を形成し、かつ未露光部が現像液によって溶解除去される。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。また、スチレン−ブタジエンブロック共重合樹脂、スチレン−イソプレン共重合樹脂、スチレン−ブタジエンランダム共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンランダム共重合樹脂、スチレン−イソプレンランダム共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエンランダム共重合樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴムなどを含有していてもよい。さらには親水性の樹脂としては例えば、特許第2872783号公報に開示のスルホン基含有ポリウレタンやカルボキシル基、リン酸エステル基、スルホン酸基を導入したポリウレタンやポリエステルジオール、特開平9−216918号公報に開示のリン酸エステル基含有モノエチレン性不飽和単量体及びリン酸エステル基含有ジエチレン性不飽和単量体を必須成分とするリン酸エステル基含有共重合体、特開平5−204139号公報に開示のコア/シェル構造を有する架橋樹脂微粒子を含有する樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としてはこれらを単体でまたは2種類以上の混合物を用いてもよい。
感光性材料は、光重合性基あるいは光反応性基を有する化合物が使用され、例えば、エチレン性不飽和モノマーやエチレン性不飽和プレポリマーが用いられる。
エチレン性不飽和モノマーの具体的としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、クロロスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンなどの芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル、エチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールメタクリレート、メトキシエチレングリコールメタクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、ジオクチルフマレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;アリルグリシジルエーテルなどのエチレン性不飽和グリシジルエーテル;アクリル酸、メタクリル酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和多価カルボン酸;マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノメチルなどのエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル化物;燐酸エチレンアクリレート、燐酸トリメチレンアクリレート、燐酸プロピレンアクリレート、燐酸テトラメチレンアクリレート、燐酸ビスエチレンアクリレート、燐酸ビストリメチレンアクリレート、燐酸ビステトラメチレンアクリレート、燐酸ジエチレングリコールアクリレート、燐酸トリエチレングリコールアクリレート、燐酸ポリエチレングリコールアクリレート、燐酸ビスジエチレングリコールアクリレート、燐酸ビストリエチレングリコールアクリレート、燐酸ビスポリエチレングリコールアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートなどの燐酸エステル基含有エチレン性不飽和単量体などが挙げられる。
エチレン性不飽和プレポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などに、カルボキシル基、水酸基、イソシアネート基などの反応性基を有するエチレン性不飽和化合物を用いて、エチレン性不飽和基を導入したものが用いられる。そのようなエチレン性不飽和プレポリマーとして、不飽和ポリエステル類、不飽和ポリウレタン類、不飽和ポリエーテル類、不飽和エポキシ樹脂、不飽和アクリル樹脂が挙げられる。
不飽和ポリエステル類の具体例としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸のような不飽和二塩基酸又はその酸無水物とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールなどの多価アルコールとのポリエステルや前記の酸成分の一部をコハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸などの飽和多塩基酸に置き換えたポリエステルあるいは乾性油脂肪酸又は半乾性油脂肪酸で変性したポリエステルなどが挙げられる。さらに前記したような多塩基酸と多価アルコールのエステル反応系にアクリル酸又はメタクリル酸を共存させて、共縮合させそれぞれのモル比を調整して分子量500以上としたオリゴエステルアクリレート又はメタクリレートを挙げることができる。
不飽和ポリウレタン類の具体例としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、o−トルイレンジイソシアネート(TODI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどのポリイソシアネートと水酸基を有するエチレン性不飽和化合物、例えばアルキレングリコールモノアクリレート又はメタクリレート、ポリオキシアルキレングリコールモノアクリレート又はメタクリレート、アリルアルコールなどとを反応させたものや、ポリオールとポリイソシアネートとから誘導されたポリウレタン化合物の末端イソシアネート基あるいは水酸基を利用してエチレン性不飽和基を導入したもの、例えば前記した多価アルコールやポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール、ポリエチレンアジペートジオール、ポリプロピレンアジペートジオールなどのポリエステルポリオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、末端水酸基を有する1,4−ポリブタジエン、水添又は非水添1,2−ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体などのポリマーポリオールなどとポリイソシアネートをイソシアネート基過剰で反応せしめた末端イソシアネート基を有するポリウレタン化合物に、水酸基、アミノ基などの活性水素を有するエチレン性不飽和化合物、例えばアルキレングリコールモノアクリレート又はメタクリレート、ポリオキシアルキレングリコールモノアクリレート又はメタクリレート、アリルアルコール、アミノアルキルアクリレート又はメタクリレートなどを反応せしめたものや、あるいは水酸基過剰で反応せしめた末端水酸基を有するポリウレタン化合物に、イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物、例えばアリルイソシアネート、イソシアナトエチルメタクリレートなどを反応せしめたものなどを挙げることができるし、さらに前記の不飽和ポリエステルなどをポリイソシアネートで連結した化合物などが挙げられる。
不飽和ポリエーテル類の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリエーテルグリコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのエステルが挙げられる。
不飽和エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ化合物、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ化合物、ハロゲン化ビスフェノール型エポキシ化合物、レゾルシン型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物などにカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物、例えばアクリル酸又はメタクリル酸を反応せしめたものが挙げられる。
不飽和アクリル樹脂の具体例としては、例えば、カルボキシル基や水酸基又はグリシジル基をもつモノマーを共重合せしめたアクリル樹脂にそれらの官能基と反応しうる官能基をもつエチレン性不飽和化合物を反応せしめて不飽和基を導入したものがあり、例えばアクリル酸又はメタクリル酸と各種のアクリレート類、メタクリレート類、スチレン、酢酸ビニルなどを共重合させたものにグリシジルアクリレート又はメタクリレートを付加させたものやその逆にグリシジルアクリレートなどを含む共重合体にアクリル酸などを付加させたものを挙げることができる。
感光性材料の含有量は通常、熱可塑性樹脂100質量部に対して5〜100質量部である。
感光性樹脂組成物層には、さらに必要に応じて、光重合開始剤、エラストマー、可塑剤、保存安定剤、界面活性剤、耐オゾン性剤などを含有していてもよい。
光重合開始剤としては、例えば、ジアセチル、ベンジルなどのα−ジケトン;ベンゾイン、ピバロインなどのアシロイン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのアシロインエーテル;アントラキノン、1,4−ナフトキノンなどの多核キノン;メチル−o−ベンゾイルベンゾエートなどのベンゾフェノン;2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどのフェニルケトンなどが挙げられる。
光重合開始剤の含有量は通常、熱可塑性樹脂と感光性材料の合計量100質量部に対して0.1〜10質量部である。
得られる感光性樹脂組成物層の柔軟性を良好にするために、適当な可塑剤を配合することもできる。この可塑剤については、前記した親水性ポリマー、感光性材料、エラストマー成分と均一に相溶し、かつ可塑化効果を示すものであればよく、特に制限はない。このような可塑剤としては、例えばグリセリン、ポリエチレングリコール、ベンゼンスルホンアミド、トルエンスルホンアミド、N−エチルトルエンスルホンアミド、N−メチルトルエンスルホンアミド、p−ヒドロキシル安息香酸エステル、各種オレフィン系オリゴマー、ビニル系オリゴマー、ジエン系オリゴマー、ナフチン油、パラフィン油などの炭化水素油、分子量3000以下のポリスチレン、石油樹脂、ポリアクリレート、液状1,2−ポリブタジエン、液状1,4−ポリブタジエンおよびこれらポリブタジエンの末端変性物、液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、液状スチレン−ブタジエン共重合体およびこれらのカルボキシル化物などを挙げることができる。
可塑剤は、当該技術分野で一般に使われる量であって感光性樹脂組成物の望ましい性能を阻害しない量で用いることができる。
保存安定剤としては、例えば、ヒドロキノン、ピロガロール、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなどのフェノール類;ベンゾキノン、p−トルキノン、p−キシロキノンなどのキノン類;フェニル−α−ナフチルアミンなどのアミン類などが挙げられる。
保存安定剤は、当該技術分野で一般に使われる量であって感光性樹脂組成物の望ましい性能を阻害しない量で用いることができる。
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。これらの中で相溶性、水現像効果の観点から、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤が好ましく、アニオン界面活性剤が特に好ましい。
これらの界面活性剤の添加量は、水現像性、相溶性、インキ溶剤の膨潤性等で適宜決められる。この添加量が少なすぎると、現像性が悪くなり、多すぎると、相溶性、溶剤膨潤性の面で性能が悪くなる。一般的に、熱可塑性樹脂と感光性材料との合計量100質量部に対して0.1〜10質量部である。
(感光性樹脂積層体の製造方法)
感光性樹脂組成物層を作成するには、例えば、前記の感光性樹脂組成物を構成する各成分を、水または有機溶剤に溶解し、十分に混合して均質な溶液とした後、ベースフィルムの離型層積層面の反対面である基材フィルム表面上に、従来の方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、キスコート法、キスリバースコート法、エアナイフコート法、カーテンコート法、含浸法などによって塗布した後、溶剤を蒸発除去して、該ベースフィルム上に厚さ1〜1000μmの感光性樹脂組成物層を形成する方法を用いることができる。
あるいは感光性樹脂組成物の溶剤を留去したものをベースフィルム上にニップロール等により加熱圧着してベースフィルム上に感光性樹脂組成物層を形成する方法も用いることができる。
さらに、感光性樹脂組成物を構成する各成分をニーダー、バンバリミキサー等で十分に混合したものをベースフィルム上にプレス成形して感光性樹脂組成物層を形成する方法や、その他キャスト成形、押出し成形等により感光性樹脂組成物層を形成する方法等も用いることができる。
感光性樹脂組成物層はベースフィルム上でさらに直接成形して成形と同時に接着することもできるし、接着剤を用いてベースフィルム上に接着してもよい。
ベースフィルムと感光性樹脂組成物層との間には接着層以外にアンチハレーション層を設けることも有利である。
感光性樹脂積層体における感光性樹脂組成物層の厚みは特に制限されず、通常は例えば、1〜1000μmである。
(プリント回路基板作製方法)
以下、本発明の感光性樹脂積層体を用いて回路基板を作製する方法について説明する。
まず、ロールから巻き出した感光性樹脂積層体の感光性樹脂組成物層表面に、銅箔基板を貼り合わせ、次いで積層体のベースフィルム表面にフォトマスクを密着させ、露光を行い、感光性樹脂組成物層における露光部を硬化させる。
感光性樹脂組成物層を露光硬化させる紫外線光源としては、例えば、高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、太陽光などが使用可能である。フォトマスクを介して感光性樹脂組成物層に紫外線を露光することにより所望の回路画像を得ることができる。
露光により露光部の十分な硬化を行った後は、ベースフィルムを剥がしたうえで、現像液により未露光部を溶解除去する。
現像液はアルカリ水溶液および/または水溶性有機溶剤の水溶液が使用される。
アルカリ水溶液を構成するアルカリ物質としては、例えば、ホウ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム等が使用できる。
水溶性有機溶剤は後述の含有量で水と均一系を形成できる程度の水溶性を有していればよい。そのような水溶性有機溶剤として、例えば、エーテル類、およびアルコール類が使用できる。エーテル類の具体例として、例えば、オクチルフェノキシポリオキシエーテル等が挙げられる。アルコール類の具体例として、例えば、メタノール、エタノール等が挙げられる。
水溶液中のアルカリ物質または/および水溶性有機溶剤の含有量は、保護層および感光性樹脂組成物層未露光部が溶解・除去されれば特に制限されず、通常は水100質量部に対して0.1〜50質量部が適当である。
現像液には界面活性剤、消泡剤、分散剤、乳化剤、腐食抑制剤、腐敗防止剤、pH調整剤等が添加されてもよい。
以下に実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂の組成
H−NMR分析装置(バリアン社製 GEMINI2000/300、300MHz)により求めた。オルトジクロロベンゼン(d)を溶媒とし、120℃で測定した。
(2)酸変性ポリオレフィン樹脂の融点
樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製 DSC7)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られた昇温曲線から融点を求めた。
(3)酸変性ポリオレフィン樹脂のビカット軟化点
JIS K7206に記載の方法で測定した。
(4)酸変性ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)
JIS K6730記載(190℃、2160g荷重)の方法で測定した。
(5)酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体の有機溶剤含有率
島津製作所社製、ガスクロマトグラフGC−8A[FID検出器使用、キャリアーガス:窒素、カラム充填物質(ジーエルサイエンス社製):PEG−HT(5%)−Uniport HP(60/80メッシュ)、カラムサイズ:直径3mm×3m、試料投入温度(インジェクション温度):150℃、カラム温度:60℃、内部標準物質:n−ブタノール]を用い、水性分散体または水性分散体を水で希釈したものを直接装置内に投入して、有機溶剤の含有率を求めた。検出限界は0.01質量%であった。
(6)酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体の固形分濃度
酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱することで、固形分濃度を求めた。
(7)酸変性ポリオレフィン樹脂粒子の数平均粒子径
日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340、動的光散乱法)を用い、数平均粒子径を求めた。粒子径算出に用いた樹脂の屈折率は1.57とした。
(8)離型層形成用塗工液の液安定性
離型層形成用塗工液の貯蔵安定性を下記のように評価した。○が好ましいが、△でも使用は可能である。×は操業上問題がある。
×;23℃で一週間以内にゲル化または増粘する。
△;23℃で一ヶ月以内にゲル化または増粘する。
○;23℃で一ヶ月以上変化なし。
(9)離型層の厚み
離型層を形成したベースフィルムの全体の厚さを接触式膜厚計により測定し、その測定値から基材フィルムの厚さを減じて、求めた。
(10)離型層剥離強度比
粘着材料として、巾50mm、長さ150mmのポリエステル粘着テープ(日東電工社製、No.31B/アクリル系粘着剤)を用いて、これを得られたベースフィルムの離型層面に、ゴムロールで圧着(200g/cm)して、試料1とした。
また、試料1を、金属板/ゴム板/試料/ゴム板/金属板の形で挟み、2kPa荷重、70℃の雰囲気で20時間放置し、その後30分以上冷却して常温に戻して、試料2を得た。
これら試料1および2について、粘着テープとベースフィルム離型層との剥離強度を、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機、2020型)にて測定した。剥離角度は180℃、剥離速度は300mm/分とした。試料1の剥離強度(熱圧着処理無し)と、試料2の剥離強度(熱圧着処理後)との比、剥離強度(熱圧着処理後)/剥離強度(熱圧着処理無し)を離型層剥離強度比として求めた。
(11)離型層と感光性樹脂組成物層との剥離性
得られた感光性樹脂積層体のベースフィルムの離型層面と、感光性樹脂組成物層面とを重ね合わせ、上記(10)における試料2と同様の条件で熱圧着処理した後に、重ね合わせたベースフィルムの離型層面と感光性樹脂組成物層面とを剥がしたときの剥離の状態を評価した。○が望ましいが、△でも一応は実用上使用できる。
○;簡便に剥離できる。このとき、ベースフィルムの離型層面には感光性樹脂組成物層の付着がなく、また感光性樹脂組成物層面にもベースフィルムの離型層の付着がない。
△;剥離する速度と力に注意すれば、剥離の際に音を生じることなく剥離できる。このとき、剥離する速度と力に注意して剥離すれば、ベースフィルムの離型層面には感光性樹脂組成物層の付着がない。なお、感光性樹脂組成物層面にはわずかにベースフィルムの離型層の付着があってもよい。
×;剥離する速度と力に注意しても、剥離する際に音が生じ、きれいに剥離できない。このとき、ベースフィルムの離型層面に感光性樹脂組成物層の付着が認められるか、または、感光性樹脂組成物層面にベースフィルムの離型層の付着が認められる。
(12)ブロッキング
得られた感光性樹脂積層体をロール状に巻取り、40℃で3ヶ月、60℃で12時間それぞれ保管した後、巻き出してブロッキングの有無を確認した。
<酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体の製造>
〔水性分散体E−1〕
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの「ボンダイン LX−4110」(アルケマ社製、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂)、90.0gのIPA(和光純薬社製)、3.0gのDMEA(和光純薬社製)および147.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込んだ。そして、撹拌翼の回転速度を300rpmとし、系内温度を140〜145℃に保って、30分間撹拌した。その後、水性分散体から、DMEAおよびIPAを除去するために、ロータリーエバポレーターを用い、水を添加しながら、浴温80℃で溶媒留去した。その後、空冷にて回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧ろ過(空気圧0.2MPa)した。これによって、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を得た。
〔水性分散体E−2〕
酸変性ポリオレフィン樹脂として「ボンダイン HX−8210」(アルケマ社製、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂)を用い、水性分散体E−1の製造の際と同様の操作を行って、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−2を得た。
〔水性分散体E−3〕
酸変性ポリオレフィン樹脂として「ボンダイン HX−8290」(アルケマ社製、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂)を用い、水性分散体E−1の製造の際と同様の操作を行って、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−3を得た。
〔水性分散体E−4〕
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの「ボンダイン AX−8390」(アルケマ社製、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂)、100.0gのNPA(和光純薬社製)、2.5gのDMEA(和光純薬社製)および137.5gの蒸留水をガラス容器内に仕込んだ。そして、撹拌翼の回転速度を300rpmとし、系内温度を120℃に保って、20分間撹拌した。その後、水性分散体から、DMEAおよびNPAを除去するために、ロータリーエバポレーターを用い、水を添加しながら、浴温85℃で溶媒留去した。その後、空冷にて回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧ろ過(空気圧0.2MPa)した。これによって、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E−4を得た。
〔水性分散体E−5〕
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの「プリマコール5980I」(ダウケミカル社製、アクリル酸変性ポリオレフィン樹脂)、16.8gのDMEA(和光純薬社製)、および223.2gの蒸留水をガラス容器内に仕込んだ。そして、撹拌翼の回転速度を300rpmとし、系内温度を140〜145℃に保って、30分間撹拌した。その後、水性分散体から、DMEAを除去するために、ロータリーエバポレーターを用い、水を添加しながら、浴温80℃で溶媒留去した。その後、空冷にて回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧ろ過(空気圧0.2MPa)した。これによって、微白濁の水性分散体E−5を得た。この際、フィルター上に樹脂は殆ど残っていなかった。
〔水性分散体E−6〕
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、30.0gのレクスパールEAA「A210K」(日本ポリエチレン社製、アクリル酸変性ポリエチレン樹脂)、105.0gのNPA(和光純薬社製)、7.8gのDMEA(和光純薬社製)、および157.2gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとした。そして系内温度を170℃に保って30分間撹拌した。その後、水性分散体から、DMEAおよびNPAを除去するために、ロータリーエバポレーターを用い、水を添加しながら、浴温80℃で溶媒留去した。その後、空冷にて回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧ろ過(空気圧0.2MPa)した。これによって、微白濁の水性分散体E−6を得た。この際、フィルター上に樹脂は殆ど残っていなかった。
得られた酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体の特性を表1に示す。
Figure 0005901235
表1に示すように、水性分散体E−1に用いた酸変性ポリオレフィン樹脂「ボンダインLX−4110」と、水性分散体E−2に用いた酸変性ポリオレフィン樹脂「ボンダインHX−8210」と、水性分散体E−3に用いた酸変性ポリオレフィン樹脂「ボンダインHX−8290」と、水性分散体E−4に用いた酸変性ポリオレフィン樹脂「ボンダインAX−8390」とは、いずれも酸変性成分が1〜10質量%の範囲で、本発明に適合するものであった。
これに対し、水性分散体E−5に用いた酸変性ポリオレフィン樹脂「プリマコール5980I」は、酸変性成分が10質量%を超えており、本発明に適合しないものであった。また、水性分散体E−6に用いた酸変性ポリオレフィン樹脂「レクスパールEAA A210K」は、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有しておらず、本発明に適合しないものであった。
実施例1
<離型層形成用塗工液の調製>
酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1に、酸変性ポリオレフィン樹脂固形分100質量部に対して、固形分が50質量部となる量のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製「VC−10」、重合度1,000)を10質量%の水溶液として添加したものと、酸変性ポリオレフィン樹脂固形分100質量部に対して、オキサゾリン化合物固形分が5質量部となる量のオキサゾリン化合物の水性溶液(日本触媒社製、「エポクロス WS−700」、固形分濃度25質量%)とを混合して、塗工液を得た。
<ベースフィルムの製造>
ポリエステルチップ(相対粘度1.38(20℃、フェノール/テトラクロロエタン=50/50、0.5g/dl))を280℃で溶融押出しし、Tダイ法−静電ピニング方式でキャスティングドラムに密着急冷し、厚さ210μmの未延伸フィルムを成形した。続いてこの未延伸フィルムを90℃に加熱した縦延伸ロールで3.8倍に延伸した。この縦延伸したフィルムの片面に、リバースクラビアコーターを用いて、上記にて調製した塗工液を塗布し、58℃オーブンで乾燥した後、横延伸テンターで120℃で4.8倍延伸した。次いで230℃で10秒間熱処理したのち、冷却し巻き取った。得られたベースフィルムの厚さは20μmであり、離型層の厚さはおよそ0.3μmであった。
<感光性樹脂積層体の製造>
上記にて調製したベースフィルムの離型層が形成された面の反対面に、熱可塑性樹脂としてのメタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレートからなる共重合ポリマーと、感光性材料としてのトリメチロールプロパントリアクリレートおよびポリエチレングリコール(数平均分子量600)ジメタクリレートと、光重合開始剤としてのベンゾフェノンおよびジメチルアミノベンゾフェノンと、安定剤としてのハイドロキノンと、着色剤としてのメチルバイオレットとからなる感光性樹脂組成物(フォトレジスト)を暗室にて20μmの厚みになるように塗布した。
実施例2〜4、比較例1〜2
実施例1における、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1の代わりに、E−2〜E−6を用いた。それ以外は実施例1と同様の操作を行って、ベースフィルムおよび感光性樹脂積層体を得た。
実施例5〜10、比較例3〜5
架橋剤とポリビニルアルコールの添加量を、表2に記載の量に変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、ベースフィルムおよび感光性樹脂積層体を得た。
実施例11〜15
離型層形成用塗工液の塗布条件、ポリビニルアルコールの添加量を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、ベースフィルムおよび感光性樹脂積層体を得た。
実施例16
実施例1におけるオキサゾリン化合物水性溶液に代えて、カルボジイミド化合物の水分散体(日清紡社製、「カルボジライト E−02」、固形分濃度40質量%)を用いて、酸変性ポリオレフィン樹脂固形分100質量部に対してカルボジイミド化合物固形分が5質量部となるように混合した以外は実施例1と同様の操作を行って、ベースフィルムおよび感光性樹脂積層体を得た。
実施例17
実施例1におけるオキサゾリン化合物水性溶液に代えて、カルボジイミド化合物の水性溶液(日清紡社製、「カルボジライト V−04」、固形分濃度40質量%)を用いて、酸変性ポリオレフィン樹脂固形分100質量部に対してカルボジイミド化合物固形分が30質量部となるように混合した以外は実施例1と同様の操作を行って、ベースフィルムおよび感光性樹脂積層体を得た。
実施例18
実施例1において、架橋剤として、オキサゾリン系化合物の水性溶液(日本触媒社製、「エポクロス WS−700」、固形分濃度25質量%)とカルボジイミド化合物の水分散体(日清紡社製、「カルボジライト E−02」、固形分濃度40質量%)とを併用して、酸変性ポリオレフィン樹脂固形分100質量部に対して、オキサゾリン系化合物固形分が5質量部、カルボジイミド系化合物固形分が5質量部となるように混合した。さらに、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、ポリビニルアルコール固形分が0質量部となるように変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、ベースフィルムおよび感光性樹脂積層体を得た。
実施例19
実施例1において、架橋剤として、オキサゾリン系化合物の水性溶液(日本触媒社製、「エポクロス WS−700」、固形分濃度25質量%)とカルボジイミド化合物の水性溶液(日清紡社製、「カルボジライト V−04」、固形分濃度40質量%)とを併用して、酸変性ポリオレフィン樹脂固形分100質量部に対して、オキサゾリン系化合物固形分が5質量部、カルボジイミド系化合物固形分が5質量部となるように混合した。さらに、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、ポリビニルアルコール固形分が30質量部となるように変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、ベースフィルムおよび感光性樹脂積層体を得た。
実施例20
ポリビニルアルコールを日本酢ビ・ポバール社製「JC−40」(重合度4,000)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、ベースフィルムおよび感光性樹脂積層体を得た。
比較例6
実施例1における、架橋剤(オキサゾリン化合物の水性溶液「WS−700」)の代わりに、イソシアネート化合物の水性溶液(第一工業製薬製、「E−37」、固形分濃度40質量%)を用いた。それ以外は実施例1と同様の操作を行って、ベースフィルムおよび感光性樹脂積層体を得た。
比較例7
離型層形成用塗工液を塗布しない以外は実施例1と同様の操作を行って、ベースフィルムおよび感光性樹脂積層体を得た。
実施例、比較例における離型層形成用塗工液の組成・安定性、塗布条件、ベースフィルムの評価結果を表2に示す。
Figure 0005901235
実施例1〜20で得られたベースフィルムは離型層の熱安定性が高く、また得られた積層体は、ベースフィルムの離型層と感光性樹脂組成物層間の剥離強度が低く、ブロッキングが生じることはなかった。
比較例1で得られた積層体は、離型層において本発明で規定する変性ポリオレフィン以外の樹脂を用いたために、ベースフィルムの離型層と感光性樹脂組成物層間の剥離性が劣る傾向にあるだけでなく、長期経過後ブロッキングが生じた。
比較例2で得られた積層体は、離型層において本発明で規定する変性ポリオレフィン以外の樹脂を用いたために、ベースフィルムの離型層と感光性樹脂組成物層との剥離強度の熱安定性が低く、ブロッキングが生じた。
比較例3で得られた積層体は、離型層に架橋剤を配合しなかったために、感光性樹脂組成物層との剥離性が経時によって変化し、また高温処理によって変化しやすく、ブロッキングが生じた。
比較例4で得られた積層体は、離型層に配合した架橋剤の量が多すぎたために感光性樹脂積層体をロール状にした際にブロッキングが生じた。
比較例5では、酸変性ポリオレフィン樹脂に対する架橋剤やポリビニルアルコールの量が多いために、離型層形成用塗工液の安定性が悪く、増粘する傾向が見られた。また、得られた積層体は、ベースフィルムの離型層と感光性樹脂組成物層間の剥離性が劣る傾向にあるだけでなく、長期経過後ブロッキングが生じた。
比較例6で得られた積層体は、離型層において本発明で規定する架橋剤以外の架橋剤を用いたために、ベースフィルムの離型層と感光性樹脂組成物層との剥離強度の熱安定性が低く、ブロッキングが生じた。
比較例7で得られた積層体は、ベースフィルムに離型層を積層しなかったために、ブロッキングが生じた。

Claims (4)

  1. 基材フィルムの一方の表面に感光性樹脂組成物層が積層された構造を有する、ドライフィルムレジスト工程で用いられる感光性樹脂積層体であって
    材フィルムの方の表面に離型層が積層され
    離型層が酸変性ポリオレフィン樹脂と架橋剤とを含有し、
    酸変性ポリオレフィン樹脂が、酸変性成分1〜10質量%と(メタ)アクリル酸エステル成分0.5〜40質量%とを含有し、
    架橋剤が、カルボジイミド化合物および/またはオキサゾリン化合物を含有し、カルボジイミド化合物および/またはオキサゾリン化合物の含有量が、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1〜30質量部であることを特徴とする感光性樹脂積層体
  2. 基材フィルムがポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂積層体
  3. 離型層におけるシリコーン化合物、フッ素化合物、ワックス類および界面活性剤の合計含有量が、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1質量部以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性樹脂積層体
  4. 離型層面に、アクリル系粘着剤を用いた粘着材料を、室温で貼り合わせて測定したときの離型層と粘着材料との間の剥離強度(熱圧着処理無し)と、室温で貼り合わせた後、70℃、20時間、2kPa荷重で圧着処理してから測定したときの剥離強度(熱圧着処理後)との比(離型層剥離強度比=剥離強度(熱圧着処理後)/剥離強度(熱圧着処理無し))が1.2以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂積層体
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