以下に、本発明の実施形態に係る制動装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
図1から図9を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、制動装置に関する。図1は、本発明の実施形態に係る制動装置の要部を示す軸方向の断面図、図2は、実施形態に係る制動装置を示す斜視図、図3は、パーキングブレーキ部を示す軸方向と直交する断面図、図4は、実施形態に係る剛性向上機構を示す軸方向と直交する断面図、図5は、実施形態に係る剛性向上機構の作動時を示す軸方向の断面図である。
図1に示すように、実施形態に係る制動装置1−1は、ドラム部1と、ディスクロータ2と、シュー31と、アクチュエータ32とを含んで構成されている。また、制動装置1−1は、パーキングブレーキシュー21と、パーキングブレーキアクチュエータ22と、タッチセンサ36とを含んでいる。
制動装置1−1は、所謂ドラムインディスクブレーキであり、ディスクブレーキ部10と、パーキングブレーキ部20とを有する。ディスクブレーキ部10は、ディスクロータ2と、ブレーキパッド11と、キャリパ12と、ピストン13とを含んで構成されている。ディスクロータ2は、ドラム部1に対して外周側に接続されている。ドラム部1は、円筒形状であり、筒状部3の軸方向の一端に固定部4が設けられている。固定部4は、円盤状をなしており、筒状部3の一端を閉塞している。ディスクロータ2は、筒状部3における固定部4側と反対側の端部に接続されたフランジ状の部分である。
図2に示すように、ドラム部1は、ハブ5に固定される。ハブ5は、複数の雄ねじ部6を有する。ドラム部1の固定部4には、雄ねじ部6に対応する複数の貫通孔4aが形成されている。貫通孔4aに挿入された雄ねじ部6に対して図示しないナットを締結することにより、ドラム部1がハブ5に対して固定される。なお、ドラム部1の貫通孔4aに加えて、図示しない車輪のホイール(ディスクホイール)に形成された貫通孔に雄ねじ部6を挿入してからナットを締結することにより、ドラム部1とホイールとをハブ5に対して一体に固定することができる。従って、ドラム部1の固定部4は、車輪に対して固定され、車輪と一体回転する。
図1に戻り、ブレーキパッド11は、ディスクロータ2に対して摩擦接触することにより、ディスクロータ2の回転を規制する。一対のブレーキパッド11,11は、ディスクロータ2を挟んで軸方向において対向しており、キャリパ12によって支持されている。一方のブレーキパッド11は、ピストン13によって押圧駆動される。ピストン13は、キャリパ12に形成されたシリンダ12a内に配置されており、マスタシリンダから供給される油圧により軸方向に移動してブレーキパッド11をディスクロータ2に向けて押圧する。運転者によるブレーキ踏力は、マスタシリンダにおいて油圧に変換されて、シリンダ12aに供給される。なお、マスタシリンダとシリンダ12aとの間には、油圧制御装置が介在していてもよい。制動時に油圧によって一対のブレーキパッド11,11がディスクロータ2を挟み込んで押圧すると、摩擦力によってディスクロータ2の回転が規制され、制動力が発生する。
図1に示すように、パーキングブレーキ部20は、ドラム部1の内部に配置されている。図3には、図1のA−A断面が示されている。パーキングブレーキ部20は、パーキングブレーキシュー21と、パーキングブレーキアクチュエータ22と、保持部23とを含んで構成されている。一対のパーキングブレーキシュー21,21は、一端が保持部23によって保持され、他端がパーキングブレーキアクチュエータ22に接続されている。パーキングブレーキアクチュエータ22および保持部23は、図2に示すバックプレート7に設けられている。バックプレート7は、車体側に固定されており、回転不能である。
図3に戻り、パーキングブレーキアクチュエータ22は、矢印Y1で示すようにパーキングブレーキシュー21,21を径方向の外側に向けて移動させ、パーキングブレーキシュー21,21をドラム部1の内周面、すなわち図1に示す筒状部3の内周面3aに接触させ、内周面3aに向けて押圧する。これにより、ドラム部1の回転が規制され、車輪の回転を規制するブレーキ力が発生する。パーキングブレーキ部20は、駐車用のパーキングブレーキとして機能する。
パーキングブレーキアクチュエータ22は、パーキングブレーキを作動させる操作入力がなされることにより、パーキングブレーキシュー21,21を内周面3aに向けて押圧する。パーキングブレーキアクチュエータ22は、例えば、ホイールシリンダとすることができる。この場合、パーキングブレーキを作動させる操作入力がなされると、パーキングブレーキアクチュエータ22に油圧が供給され、その油圧によってパーキングブレーキシュー21,21が径方向の外側に向けて駆動される。
また、パーキングブレーキを解除する操作入力がなされると、パーキングブレーキアクチュエータ22に対する油圧の供給が停止される。これにより、パーキングブレーキシュー21,21は、図示しないリターンスプリングによって径方向の内側に引き戻されてドラム部1の内周面3aから離間する。
ここで、ディスクブレーキ部10による制動がなされるときに、ブレーキの鳴きを抑制できることが望まれている。ブレーキの鳴きは、制動時の摩擦による振動の周波数が、ディスクロータ2の面内固有値に一致することで生じる。なお、面内固有値は、ディスクロータ2の軸方向と直交する方向の振動である面内振動の固有振動数や固有周波数である。制動時の振動を抑制できるように、ディスクロータ2の面内固有値を所望の値とするようにディスクロータ2を製造することが考えられる。
しかしながら、ディスクロータ2の実際の面内固有値は、車両に搭載されるときのハブ5やディスクホイールの材質や形状の影響により、単体の固有値に対して変化する。これにより、想定していなかった周波数で鳴きが発生してしまう可能性がある。市場には様々な種類のディスクホイールやハブ5が存在しており、全ての組み合わせに対して鳴きを抑制できるようにディスクロータ2を造り込むことは困難である。
本実施形態に係る制動装置1−1は、図1および図4に示すように、ドラム部1の剛性を向上させる剛性向上機構30を有する。剛性向上機構30は、ドラム部1の剛性を向上させ、ハブ5やディスクホイールの取り付け面の剛性変化によるディスクロータ2の固有値のばらつきを抑制する。つまり、剛性向上機構30は、車両に搭載されて使用されるときのディスクロータ2の固有振動数のばらつきを抑制することができる。よって、本実施形態に係る制動装置1−1によれば、ブレーキの鳴きを抑制・低減することができる。
図1に示すように、剛性向上機構30は、ドラム部1の内部に配置されている。剛性向上機構30は、パーキングブレーキ部20に対して軸方向の車両外側に配置されている。すなわち、剛性向上機構30は、パーキングブレーキ部20よりも固定部4側に位置している。剛性向上機構30は、パーキングブレーキ部20と同様に、図2に示すバックプレート7に設けられている。
図4には、図1のB−B断面図が示されている。剛性向上機構30は、シュー31(31A,31B,31C,31D)と、アクチュエータ32と、保持部33と、ベース部材34,35と、タッチセンサ36(36A,36B,36C,36D)とを含んで構成されている。
剛性向上機構30は、シュー31として、第一シュー31A、第二シュー31B、第三シュー31Cおよび第四シュー31Dを有する。各シュー31A,31B,31C,31Dは、円弧状に湾曲した板状の部材であり、ドラム部1の筒状部3に対して内周側に配置されている。各シュー31A,31B,31C,31Dの外周面の曲率は、筒状部3の内周面3aの曲率と同様である。第一シュー31Aおよび第二シュー31Bは、第一ベース部材34に取り付けられており、内周面3aと径方向において対向している。第三シュー31Cおよび第四シュー31Dは、第二ベース部材35に取り付けられており、内周面3aと径方向において互いに対向している。第一ベース部材34および第二ベース部材35は、それぞれ一端が保持部33によって保持され、他端がアクチュエータ32と接続されている。
アクチュエータ32は、制動時にシュー31をドラム部1の内周面3aに向けて押圧する。アクチュエータ32は、リニアアクチュエータであり、発生させる駆動力により、伸張する。アクチュエータ32は、例えば、電磁力によって発生させる駆動力により、図4に矢印Y2で示すように伸張し、ベース部材34,35を径方向の外側に向けて駆動する。アクチュエータ32の駆動力は、リターンスプリングの付勢力に抗してベース部材34,35を径方向の外側に向けて移動させる。これにより、各シュー31A,31B,31C,31Dが内周面3aに接触し、内周面3aに向けて押圧される。第一シュー31Aは、第一ベース部材34が径方向の外側に向けて駆動される際に、周方向の中心37が内周面3aとの接触領域の中心となる。同様にして、第二シュー31Bは、第一ベース部材34が径方向の外側に向けて駆動される際に、周方向の中心38が内周面3aとの接触領域の中心となる。同様にして、第三シュー31Cおよび第四シュー31Dは、第二ベース部材35が径方向の外側に向けて駆動される際に、それぞれ周方向の中心39,40が内周面3aとの接触領域の中心となる。
本実施形態に係る制動装置1−1は、それぞれのシュー31と内周面3aとの接触を検出する検出装置として、タッチセンサ36(36A,36B,36C,36D)を備えている。タッチセンサ36は、シュー31と内周面3aとの接触面の中心に配置されている。具体的には、第一タッチセンサ36Aは、第一シュー31Aと内周面3aとの接触を検出する。第一シュー31Aは、アクチュエータ32によって内周面3aに向けて押圧駆動されると、その外周面全体が内周面3aと接触するように構成されている。第一タッチセンサ36Aは、第一シュー31Aの周方向の中心に配置されている。すなわち、第一タッチセンサ36Aは、第一シュー31Aと内周面3aとの接触面の中心に配置されている。
同様にして、第二タッチセンサ36Bは、第二シュー31Bと内周面3aとの接触面の中心に配置され、第三タッチセンサ36Cは、第三シュー31Cと内周面3aとの接触面の中心に配置され、第四タッチセンサ36Dは、第四シュー31Dと内周面3aとの接触面の中心に配置されている。このように、タッチセンサ36がシュー31と内周面3aとの接触面の中心に配置されていることで、タッチセンサ36は精度よくシュー31が内周面3aと接触しているか否かを検出することができる。各タッチセンサ36A,36B,36C,36Dの検出結果を示す信号は、ブレーキECU50に出力される。
アクチュエータ32によって各シュー31A,31B,31C,31Dが内周面3aに押し当てられることにより、ドラム部1の剛性、例えば筒状部3の剛性が向上する。これにより、ディスクロータ2の固有値に対するハブ5やディスクホイールの材質・形状等の影響が抑制・低減される。ハブ5やディスクホイールとの取り付け面を有する固定部4と、ディスクロータ2とを接続する筒状部3の剛性が向上することにより、取り付け面の剛性変化による固有値のバラツキが抑制される。よって、本実施形態に係る制動装置1−1によれば、ブレーキの鳴きが抑制される。
本実施形態の制動装置1−1では、図1に示すブレーキECU50によってアクチュエータ32が制御される。ブレーキECU50は、コンピュータを有する電子制御ユニットであり、制動装置1−1を統合制御する機能を有している。ブレーキECU50は、ブレーキ操作量センサ51と接続されており、ブレーキ操作量センサ51の検出結果を示す信号を取得する。ブレーキ操作量センサ51は、運転者によるブレーキ操作子に対する操作量を検出するものであり、例えば、ブレーキペダルのストローク量やマスタシリンダの油圧を検出する。また、ブレーキECU50は、車速を検出する車速センサの検出結果を示す信号を取得することができる。
ブレーキECU50は、ディスクブレーキ部10による制動がなされるとき、例えばブレーキ操作量センサ51によって検出されたブレーキ操作量が所定値以上である場合にアクチュエータ32を作動させて、シュー31をドラム部1の内周面3aに押し付ける。従って、ブレーキパッド11,11がディスクロータ2と接触してディスクロータ2の回転を規制する制動時に、シュー31がドラム部1に押し当てられてドラム部1の剛性を向上させる。これにより、本実施形態に係る制動装置1−1によれば、ディスクブレーキ部10による制動時にドラム部1の剛性を向上させることができる。
図6は、本実施形態に係る制動装置1−1において制動時に剛性向上機構30を作動させない場合のディスクロータ2の振動検出結果の一例を示す図、図7は、本実施形態に係る制動装置1−1において制動時に剛性向上機構30を作動させた場合のディスクロータ2の振動検出結果の一例を示す図である。
剛性向上機構30を作動させない場合、すなわちシュー31をドラム部1の内周面3aに接触させない場合、図6に符号C1で示すように、12,000Hzの近傍に2つのピークがあらわれる。これに対して、剛性向上機構30を作動させた場合、すなわちシュー31をドラム部1の内周面3aに接触させた場合、図7に符号C2で示すように、12,000Hzの近傍のピークが1つとなる。つまり、剛性向上機構30により、ディスクロータ2の面内固有値のばらつきが抑制され、ブレーキの鳴きが抑制される。
図8および図9を参照して、本実施形態の制御について説明する。図8は、実施形態の制御に係るフローチャート、図9は、実施形態の制御に係るタイムチャートである。図9において、(a)は車速、(b)はタッチセンサ36の状態を示す接触検知フラグである。接触検知フラグは、全てのタッチセンサ36A,36B,36C,36Dが接触を検出している場合にONとなり、いずれか一つでもタッチセンサ36が接触を検出していない場合にOFFとなる。(c)はアクチュエータ32の印加電圧、(d)はブレーキ操作量(例えば、ブレーキ油圧やペダルストローク)を示す。図8に示す制御フローは、例えば、所定の間隔で繰り返し実行される。
ステップS10では、ブレーキECU50により、車速が0[km/h]よりも大で、かつ制動判定がなされているか否かが判定される。ステップS10では、走行中の制動操作がなされているか否かが判定される。ブレーキECU50は、車速センサによって検出された車速が0よりも大であり、かつブレーキ操作量センサ51によって検出されたブレーキ操作量が所定値以上(例えば、0よりも大)である場合にステップS10で肯定判定を行うことができる。ステップS10の判定の結果、車速が0[km/h]よりも大で、かつ制動判定がなされていると判定された場合(ステップS10−Y)にはステップS20に進み、そうでない場合(ステップS10−N)にはステップS130に進む。図9では、時刻t1以降にブレーキ油圧がBB[P]となる。この油圧BBは、所定値以上であり、ステップS10で肯定判定がなされる。
ステップS20では、ブレーキECU50により、アクチュエータ32がONとされる。ブレーキECU50は、アクチュエータ32に対する電力供給を開始する指令を出力する。これにより、アクチュエータ32は駆動力を発生させて各ベース部材34,35を径方向の外側に向けて駆動する。その結果、図5に示すように、シュー31は径方向の外側に向けて駆動される。ステップS20が実行されると、ステップS30に進む。図9では、時刻t1にアクチュエータ32がONとされ、アクチュエータ32に電圧が印加される。
ステップS30では、ブレーキECU50により、タッチセンサ36の検出結果が取得される。ブレーキECU50は、各タッチセンサ36A,36B,36C,36Dの検出結果を取得する。ステップS30が実行されると、ステップS40に進む。
ステップS40では、ブレーキECU50により、接触判定がなされる。ブレーキECU50は、ステップS30で取得した検出結果を参照し、全てのタッチセンサ36の検出結果がシュー31と内周面3aとの接触を示す値であるかを判定する。全てのタッチセンサ36A,36B,36C,36Dがシュー31と内周面3aとの接触を示す信号を出力している場合、ステップS40で肯定判定がなされる。ステップS40の判定の結果、接触判定がなされた場合(ステップS40−Y)にはステップS70に進み、そうでない場合(ステップS40−N)にはステップS50に進む。
ステップS50では、ブレーキECU50により、制動判定がなされているか否かが判定される。ブレーキECU50は、ブレーキ操作量センサ51によって検出されたブレーキ操作量が所定値以上である場合にステップS50で肯定判定を行うことができる。ステップS50の判定の結果、制動判定がなされている場合(ステップS50−Y)にはステップS60に進み、そうでない場合(ステップS50−N)にはステップS130に進む。
ステップS60では、ブレーキECU50により、アクチュエータ32の出力がアップされる。ブレーキECU50はアクチュエータ32の印加電圧を増加させ、アクチュエータ32が発生する駆動力を増大させる。ステップS60が実行されると、ステップS30に進む。図9では、時刻t1から時刻t2までの間は少なくとも1つのタッチセンサ36がシュー31と内周面3aとの接触を検出していないため、タッチセンサ36の接触検知フラグ(図9の(b)参照)がOFFである。従って、アクチュエータ32に対する印加電圧が漸次増加される。時刻t2に接触検知フラグがONとなり、アクチュエータ32の印加電圧がYY[V]に保持される。
ステップS70では、ブレーキECU50により、アクチュエータ32の出力が保持される。アクチュエータ32の出力が保持されることにより、全てのシュー31が内周面3aに接触した状態が保持される。ステップS70が実行されると、ステップS80に進む。
ステップS80では、ブレーキECU50により、車速Vpが検出される。例えば、保持カウンタpが1である場合、車速V1が検出される。ステップS80が実行されると、ステップS90に進む。
ステップS90では、ブレーキECU50により、制動判定がなされているか否かが判定される。ブレーキECU50は、ブレーキ操作量センサ51によって検出されたブレーキ操作量が所定値以上である場合にステップS90で肯定判定を行うことができる。ステップS90の判定の結果、制動判定がなされている場合(ステップS90−Y)にはステップS100に進み、そうでない場合(ステップS90−N)にはステップS130に進む。
ステップS100では、ブレーキECU50により、アクチュエータ32の出力が保持される。ステップS100が実行されると、ステップS110に進む。
ステップS110では、ブレーキECU50により、車速判定がなされる。ステップS110では、車両が停止しているか否かが判定される。ブレーキECU50はステップS80で検出した車速Vpが0[km/h]であるか否かを判定する。ステップS110の判定の結果、車速Vpが0であると判定された場合(ステップS110−Y)にはステップS130に進み、そうでない場合(ステップS110−N)にはステップS120に進む。図9では、時刻t3に車速が0となり、ステップS110で肯定判定がなされる。
ステップS120では、ブレーキECU50により、アクチュエータ32の出力が保持される。ステップS120が実行されると、ステップS30に移行する。
ステップS130では、ブレーキECU50により、アクチュエータ32がOFFとされる。ブレーキECU50は、アクチュエータ32に対する電力供給を停止する指令を出力する。これにより、アクチュエータ32は駆動力の発生を停止する。各ベース部材34,35は、リターンスプリングの付勢力によって径方向の内側に向けて移動し、シュー31が内周面3aから離間する。ステップS130が実行されると、本制御フローは終了する。
以上説明したように、本実施形態の制御装置1−1のアクチュエータ32は、制動時にシュー31を内周面3aと接触した状態に保持する。これにより、制動時にドラム部1の剛性を確実に向上させ、ディスクロータ2の固有振動数のばらつきを抑制することが可能となる。
また、本実施形態に係る制動装置1−1は、制動時にいずれかのタッチセンサ36がシュー31と内周面3aとの接触を検出していない場合(ステップS40−N)、全てのタッチセンサ36がシュー31と内周面3aとの接触を検出する(S40−Y)まで、アクチュエータ32の出力を増加させる(ステップS60)。これにより、制動装置1−1は、制動時に全てのシュー31を内周面3aと接触した状態に保持する。よって、本実施形態に係る制動装置1−1によれば、制動時におけるドラム部1の剛性向上をより確実なものとすることができる。また、制動時におけるドラム部1の剛性をバランスよく向上させることが可能である。
また、本実施形態に係る制動装置1−1では、タッチセンサ36は、ドラム部1の内周面3aの周方向に90度毎に配置されている。90度毎の位置でシュー31と内周面3aとの接触状況を検出することができるため、制動時にシュー31と内周面3aとを接触させた状態に保持する上で有利である。また、本実施形態では、各シュー31A,31B,31C,31Dに対してそれぞれ内周面3aとの接触を検出するタッチセンサ36A,36B,36C,36Dが配置されている。よって、制動時に全てのシュー31を内周面3aと接触した状態に保持する上で利点を有する。
以上説明したように、本実施形態に係る制動装置1−1によれば、ディスクブレーキ部10による制動時にドラム部1の剛性を向上させることができるため、ドラム部1そのものの剛性を小さなものとすることができ、ドラム部1の軽量化や小型化が可能となる。
本実施形態に係る剛性向上機構30は、ドラム部1の回転を規制することにより、制動力を発生させることができる。本実施形態では、シュー31の外周面あるいはドラム部1の内周面3aの少なくともいずれか一方に摩擦部材が配置されている。従って、シュー31が内周面3aに接触することにより、ドラム部1の回転が規制される。ブレーキECU50は、ディスクブレーキ部10によって発生させる制動力(制動トルク)と、剛性向上機構30によって発生させる制動力(制動トルク)との合計が、車両に対して要求される制動力(制動トルク)となるように、ディスクブレーキ部10および剛性向上機構30を協調制御することが好ましい。
また、本実施形態に係る制動装置1−1では、シュー31の個数が4の倍数であり、かつシュー31は、内周面3aに対して周方向に等間隔に配置されている。これにより、ドラム部1の剛性の偏りが抑制される。図4に示すように、第一シュー31Aの周方向の中心37と、第三シュー31Cの周方向の中心39とは、中心軸線Xと直交する直線L1上に位置している。中心軸線Xは、内周面3aの中心軸線であり、ハブ5の回転中心でもある。第一シュー31Aと第三シュー31Cとは、中心軸線Xから等距離の位置にあり、かつ中心軸線Xを挟んで径方向において対向している。
第二シュー31Bの周方向の中心38と、第四シュー31Dの周方向の中心40とは、中心軸線Xと直交する直線L2上に位置している。第二シュー31Bと第四シュー31Dとは、中心軸線Xから等距離の位置にあり、かつ中心軸線Xを挟んで径方向において対向している。直線L1と直線L2とは直交している。また、各シュー31A,31B,31C,31Dの周方向の長さは等しい。このように、剛性向上機構30は、4つのシュー31A,31B,31C,31Dが周方向において等間隔に配置されていることにより、ドラム部1の剛性をバランスよく向上させることができる。
また、本実施形態の制動装置1−1では、シュー31と内周面3aとの接触範囲の合計が、180度以上である。ここで、シュー31と内周面3aとの接触範囲は、中心軸線Xを中心とする各シュー31A,31B,31C,31Dの円弧の中心角の合計である。例えば、第一シュー31Aと内周面3aとの接触範囲とは、中心軸線Xを中心とする第一シュー31Aの円弧の中心角θ1である。言い換えると、第一シュー31Aと内周面3aとの接触範囲とは、第一シュー31Aの周方向の一端と中心軸線Xとを結ぶ仮想線L3と、第一シュー31Aの周方向の他端と中心軸線Xとを結ぶ仮想線L4とがなす角度θ1である。なお、接触範囲は、各シュー31A,31B,31C,31Dが内周面3aと接触しているときの値であることが好ましい。
本実施形態では、各シュー31A,31B,31C,31Dと内周面3aとの接触範囲は、互いに等しく、かつそれぞれ45度以上である。従って、シュー31と内周面3aとの接触範囲の合計は、180度以上である。このように、剛性向上機構30は、シュー31と内周面3aとの接触範囲が大きなものとされることで、ドラム部1の剛性を適切に向上させることや、ドラム部1の剛性をバランスよく向上させることができる。なお、ドラム部1の剛性を向上する観点からは、シュー31と内周面3aとの接触範囲の合計は大きいことが好ましい。接触範囲の合計は、例えば全周(360度)や360度の近傍の値とされてもよい。
また、本実施形態では、それぞれのシュー31と内周面3aとの接触面積が等しい。上記のように、各シュー31A,31B,31C,31Dと内周面3aとの接触範囲は、互いに等しい。また、各シュー31A,31B,31C,31Dの幅、すなわち軸方向の長さは、互いに等しい。従って、第一シュー31Aと内周面3aとの接触面積と、第二シュー31Bと内周面3aとの接触面積と、第三シュー31Cと内周面3aとの接触面積と、第四シュー31Dと内周面3aとの接触面積と、は互いに等しい。これにより、剛性向上機構30は、ドラム部1の剛性をバランスよく向上させることができる。
[実施形態の変形例]
実施形態の変形例について説明する。上記実施形態では、剛性向上機構30は4つのシュー31を有していたが、これに限定されるものではない。剛性向上機構30が有するシュー31の個数は、適宜定めることができる。シュー31の個数を4の倍数とすれば、ドラム部1の剛性をバランスよく向上させることができる点で有利である。
上記実施形態では、アクチュエータ32の個数が1であったが、これに代えて、剛性向上機構30が複数のアクチュエータを有していてもよい。本実施形態では、パーキングブレーキ部20とは別に剛性向上機構30が設けられたが、これに代えて、剛性向上機構30がパーキングブレーキ部20の機能を兼ねるようにしてもよい。
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。