JP5897342B2 - 装飾された染色プラスチックレンズ - Google Patents
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Description
本発明は、上記従来の状況に鑑みなされたもので、デザイン性に富んだ装飾した染色プラスチックを提供することを目的とするものである。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[2]前記着色されていない部分が、研磨加工によって形成された光学面の一部分及び/又はマスキングによって形成された光学面の一部分である、上記[1]に記載の装飾された染色プラスチックレンズ。
前記要件(1)のとおり、本発明の装飾された染色プラスチックレンズは、光学面の裏面側及び表面側がそれぞれ1色以上かつ異なる色となるように染料で着色されていることを要する。
(昇華染色法)
例えば、昇華染色法の場合、ガラスや紙などの基板に昇華性染料含有インクを塗布した該塗布面と、プラスチックレンズの被染色面(裏面及び表面の一方)を離間して対向させ、基板を加熱することにより昇華性染料を昇華させてプラスチックレンズの被染色面に染料を付着させ、続いて同様の方法で他方の被染色面に染料を付着させる。このとき、プラスチックレンズが所望の色となるように、裏面側と表面側とが異なる色の昇華性染料を選択する。
次に、昇華性染料を付着させたプラスチックレンズをオーブンなどの加熱炉に入れ、付着させた昇華性染料をプラスチックレンズ内に加熱浸透させることにより、前記の光学面の裏面側及び表面側がそれぞれ1色以上かつ裏面側と表面側とが異なる色となるように昇華性染料で着色された染色プラスチックレンズを得ることができる。
また、本発明においてプラスチックレンズは、昇華染色法により染色することができるので、高屈折率(屈折率1.7以上)のプラスチックレンズであっても所望の色及び色調に染色することができる。
プラスチックレンズの形状に特に制限はなく、例えば、球面、回転対称非球面、非球面、凸面及び凹面などの多様な曲面を有するプラスチックレンズを利用可能である。
また、昇華性染料含有インクには、プラスチックレンズを高濃度で均一に染色する観点から、界面活性剤、保湿剤、有機溶媒、粘度調整剤、pH調整剤、バインダーなどを含有させてもよい。
例えば、浸漬染色法の場合、プラスチックレンズの被染色面のうち、裏面及び表面の一方の被染色面を、浸漬染料液に浸漬させ染料を付着させる。この時、他方の面を前記浸漬染料液に浸漬させない状態に保持しながら染色する。次いで、他方の被染色面を前記染料とは異なる染料を用いた浸漬染料液に浸漬させ染料を付着させる。この時、前記染色した一方の面を前記浸漬染料液に浸漬させない状態に保持しながら染色する。さらに、両面に付着させた染料をプラスチックレンズ内に浸透させる。
このようにプラスチックレンズを片面ずつ浸漬染色法で染色して、裏面側と表面側とが異なる色のプラスチックレンズを得ることができる。
レンズ保持具は、全体にカップ型に形成されたレンズ保持部材20を用いて構成され、開口部21を有している。レンズ保持部材20は、ゴム状弾性を有する弾性材料を用いて構成され、図1(A)断面図,(B)レンズ方向から見た図に示すように、レンズ保持部材20にプラスチックレンズ10が装着され、プラスチックレンズ10のコバ面11はレンズ保持部材20に密着した状態となることで、レンズ保持部材20の中空部22に、プラスチックレンズ10を蓋体とした密閉空間23が形成される。
レンズ保持部材20にプラスチックレンズ10を装着した後、図2に示すように、プラスチックレンズ10を浸漬染料液30に浸漬させる。このとき、プラスチックレンズ10が有する2つの被染色面12,13のうち、一方の被染色面12は浸漬染料液30に浸漬し、かつ他方の被染色面13は、密閉空間23を形成しているため、浸漬染料液30に浸漬しない状態となる。これにより、プラスチックレンズ10の被染色面13が染色されずに被染色面12だけを染色することができる。
同様に他方の被染色面13についても、該面が浸漬染料液30に浸漬するようにレンズ保持具を用いて染色すればよい。
また、効率よくプラスチックレンズを染色する観点から、オートクレーブなどを用いて加圧条件下で染色してもよく、通常0.5〜5.0MPa程度の加圧条件下でおこなうことができる。
浸漬染料液から引き揚げたプラスチックレンズは、必要に応じて水洗や乾燥処理を行ってもよく、乾燥温度、乾燥時間等の条件は適宜選択することができる。
プラスチックレンズの屈折率及び素材としては、昇華染色法で上述したものと同様であり、特に制限はないが、浸漬法の場合、例えば屈折率が1.5〜1.67程度のプラスチックレンズであれば、上記染料液の温度、浸漬時間、圧力条件などの浸漬条件を適宜調整することにより、高濃度まで染色することが可能であるため、工程の煩雑さを考慮した時には浸漬法を用いた方が好ましい。また、フィニッシュレンズ及びセミフィニッシュレンズであることが好ましい。
浸漬染色法において使用する染料としては、昇華染色法で上述したものと同様であり、特に制限はなく、分散染料を好適に使用することが出来る。
前記要件(2)のとおり、本発明の装飾された染色プラスチックレンズは、着色されていない部分の一部又は全部が光軸方向において対向していないことを要する。
前述の光学面の裏面側及び表面側がそれぞれ1色以上かつ異なる色となるように着色した染色プラスチックレンズにおいて、着色されていない部分を形成することにより、該着色されていない部分が光軸方向において対向していない場合、該着色されていない部分に反対側の面の色を移りこますことができる。一方、該着色されていない部分が光軸方向において対向している場合、該着色されていない部分に対向する部分は着色されていないので、該着色されていない部分は無色透明となる。
また、研磨加工及びマスキングは、所望するデザインとなるように光学面のいずれの部分で行ってもよいが、例えば、眼鏡レンズの場合、研磨加工する場合は光学面の外周端部分を研磨加工することが好ましく、またマスキングする場合は光学面の内部分をマスキングすることが好ましい。
図3は、外周端部分を研磨加工した本発明の装飾された染色プラスチックレンズの正面図である。また、図4は、図3のレンズをAの方向から見た側面図である。
図2が示すように、図3のレンズは、表面側Bの外周端部分を研磨加工した部分4と、裏面側Cの外周端部分を研磨加工した部分5を有することにより、図3における表面側研磨加工部分(網目部分)1において裏面側Cの着色が移りこみ、裏面側研磨加工部分(斜線部分)2において表面側Bの着色が移りこみ、研磨加工されていない部分3は、裏面側と表面側の色が組み合わせされて表れた色となる。すなわち、図3のレンズは、3色の色で装飾された染色プラスチックレンズとなり、研磨加工を施しても加工部分に無色透明部分を発現させない染色プラスチックレンズとすることができる。
図5が示すように、模様6となるように表面側をマスキングして染色を行った場合、染色後の模様6には裏面側の色が移りこみ、模様7となるように裏面側をマスキングして染色を行った場合、染色後の模様7には表面側の色が移りこみ、マスキングしなかった部分8は、裏面側と表面側の色が組み合わせされて表れた色となる。すなわち、図5のレンズは、異なる2色の模様で装飾された染色プラスチックレンズとなる。
(プラスチックレンズ)
各例で使用するプラスチックレンズは以下のとおりである。
・「EYRY(アイリー)」(商品名、HOYA(株)製);屈折率1.71、中心厚1.0mm、レンズ度数0.00、直径80mm、ポリスルフィド結合を有するプラスチックレンズ、光学面の一方が凸面、他方が凹面である。
・「HL」(商品名、HOYA(株)製);屈折率1.50、中心肉厚2.0mm、レンズ度数0.00、素材:ジエチレングリコ−ルビスアリルカ−ボネ−ト、光学面の一方が凸面、他方が凹面である。
各例で使用する昇華性染料含有インキの調製は以下のとおりである。
<調製例1>
昇華性染料として「Kayalon Microester Blue DX-LS(日本化薬(株)製)」(青色)を水に分散させ、さらに分散剤、保湿剤を混合して昇華性染料含有インクとした。各成分の組成比は以下の通りである。
昇華性染料/水/分散剤/保湿剤/=5/74.55/0.45/20(質量比)
<調製例2>
昇華性染料として「Kayalon Microester Red DX-LS(日本化薬(株)製)」(赤色)を水に分散させ、さらに分散剤及び保湿剤を混合して昇華性染料含有インクとした。各成分の組成比は調整例1と同様である。
<調製例3>
昇華性染料として「Kayalon Microester Yellow DX-LS(日本化薬(株)製)」(黄色)を水に分散させ、さらに分散剤及び保湿剤を混合して昇華性染料含有インクとした。各成分の組成比は調整例1と同様である。
<調製例4>
調製例1のインクと調整例2のインクを半々に混合して、紫色の昇華性染色含有インクとした。
<調製例5>
分散染料としてKayalon Microester Blue DX-LS(日本化薬(株)製)(青色)を水に分散させ、さらに分散剤としてニッカサンソルト7000(商品名、日華化学(株)製)を混合して分散染料液とした。各成分の組成比は以下の通りである。
分散染料/水/分散剤=5/94.8/0.2(質量比)
<調製例6>
分散染料としてKayalon Microester Red DX-LS(日本化薬(株)製)(赤色)を水に分散させ、さらに分散剤としてニッカサンソルト7000(商品名、日華化学(株)製)を混合して分散染料液とした。各成分の組成比は調整例5と同様である。
実施例1
昇華染色法により、プラスチックレンズ(商品名「EYRY」、HOYA(株)製)の凸面側を調製例1のインク(青色)で染色し、凹面側を調製例2のインク(赤色)で染色し、染色プラスチックレンズとした。
上記染色プラスチックレンズについて、レンズ正面から凸面側と凹面側とを通じ該染色プラスチックレンズを目視したところ、色が均一に紫色であった。
さらに、得られた染色プラスチックレンズを、眼鏡レンズの枠形状に加工した後、加工したレンズのコバ(縁)の凸面側、凹面側を対向しないようにそれぞれ研磨加工し、装飾した染色プラスチックレンズとした。
得られた装飾した染色プラスチックレンズについてレンズ正面から凸面側と凹面側とを通じ目視したところ、凸面側の研磨加工した部分が凹面側を染色した調整例2のインクの赤色に見え、凹面側の研磨加工した部分が凸面側を染色した調整例1のインクの青色に見え、また凸面及び凹面において研磨加工されていないレンズの中央部分は紫色に見えた。すなわち、実施例1で得られた染色した装飾プラスチックレンズは、紫色、赤色及び青色の3色を有するレンズに見えた。
実施例1で用いた調製例2のインクの代わりに、調製例3のインクを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、装飾した染色プラスチックレンズを得た。
得られた染色プラスチックレンズについて、レンズ正面から凸面側と凹面側とを通じ該染色プラスチックレンズを目視したところ、色が均一にオレンジ色であった。
また、得られた装飾した染色プラスチックレンズについてレンズ正面から凸面側と凹面側とを通じ目視したところ、凸面側の研磨加工した部分が凹面側を染色した調整例3のインクの黄色に見え、凹面側の研磨加工した部分が凸面側を染色した調整例1のインクの青色に見え、また凸面及び凹面において研磨加工されていないレンズの中央部分はオレンジ色に見えた。すなわち、実施例2で得られた染色した装飾プラスチックレンズは、オレンジ色、赤色及び黄色の3色を有するレンズに見えた。
実施例1において、凹面側への昇華染色を行わず、凸面のみの染色を行い、その他は実施例1と同様にして、装飾した染色プラスチックレンズを得た。
得られた染色プラスチックレンズについて、レンズ正面から凸面側と凹面側とを通じ該染色プラスチックレンズを目視したところ、色が均一に青色であった。
また、得られた装飾した染色プラスチックレンズについてレンズ正面から凸面側と凹面側とを通じ目視したところ、凸面側の研磨加工した部分が無色透明に見え、凹面側の研磨加工した部分が凸面側を染色した調整例1のインクの青色に見えた。すなわち、比較例1で得られた染色した装飾プラスチックレンズは、研磨加工した部分が無色透明に見える青色に染色されたレンズにしか見えなかった。
実施例1において、凹面側への昇華染色を行わず、凸面のみ調整例4を用いて染色を行い、その他は実施例1と同様にして、装飾した染色プラスチックレンズを得た。
得られた染色プラスチックレンズについて、レンズ正面から凸面側と凹面側とを通じ該染色プラスチックレンズを目視したところ、色が均一に紫色であった。
また、得られた装飾した染色プラスチックレンズについてレンズ正面から凸面側と凹面側とを通じ目視したところ、凸面側の研磨加工した部分が無色透明に見え、凹面側の研磨加工した部分が凸面側を染色した調整例4のインクの紫色に見えた。すなわち、比較例2で得られた染色した装飾プラスチックレンズは、研磨加工した部分が無色透明に見える紫色に染色されたレンズにしか見えなかった。
実施例1において、凹面及び凸面を調製例1のインクで昇華染色を行い、その他は実施例1と同様にして、装飾した染色プラスチックレンズを得た。
得られた染色プラスチックレンズについて、レンズ正面から凸面側と凹面側とを通じ該染色プラスチックレンズを目視したところ、色が均一に青色であった。
また、研磨加工した部分は凸面側及び凹面側が共に調整例1のインクの青色に見えた。すなわち、比較例3で得られた染色した装飾プラスチックレンズは、研磨加工した部分についても青色に見える、均一に青色に染色されたレンズにしか見えなかった。
実施例1において、凹面及び凸面を調製例4のインクで昇華染色を行い、その他は実施例1と同様にして、装飾した染色プラスチックレンズを得た。
得られた染色プラスチックレンズについて、レンズ正面から凸面側と凹面側とを通じ該染色プラスチックレンズを目視したところ、色が均一に紫色であった。
また、研磨加工した部分は凸面側及び凹面側が共に調整例4のインクの紫色に見えた。すなわち、比較例4で得られた染色した装飾プラスチックレンズは、研磨加工した部分についても紫色に見える、均一に紫色に染色されたレンズにしか見えなかった。
図1に示したレンズ保持具を用いて浸漬染色法により、プラスチックレンズ(商品名「HL」、HOYA(株)製)の凸面側を調製例5の染料液(青色)で染色し、凹面側を調製例6の染料液(赤色)で染色し、染色プラスチックレンズとした。
上記染色プラスチックレンズについて、レンズ正面から凸面側と凹面側とを通じ該染色プラスチックレンズを目視したところ、色が均一に紫色であった。
さらに、得られた染色プラスチックレンズを、眼鏡レンズの枠形状に加工した後、加工したレンズのコバ(縁)の凸面側、凹面側を対向しないようにそれぞれ研磨加工し、装飾した染色プラスチックレンズとした。
得られた装飾した染色プラスチックレンズについてレンズ正面から凸面側と凹面側とを通じ目視したところ、凸面側の研磨加工した部分が凹面側を染色した調整例6の染料液の赤色に見え、凹面側の研磨加工した部分が凸面側を染色した調整例5の染料液の青色に見え、また凸面及び凹面において研磨加工されていないレンズの中央部分は紫色に見えた。すなわち、実施例3で得られた染色した装飾プラスチックレンズは、紫色、赤色及び青色の3色を有するレンズに見えた。
2 レンズ正面から見た裏面側研磨加工部分
3 レンズ正面から見た研磨加工しなかった部分
4、5 レンズ側面から見た研磨加工部分
6 レンズ正面から見た表面側をマスキングした模様部分
7 レンズ正面から見た裏面側をマスキングした模様部分
8 レンズ正面から見たマスキングしなかった部分
10 プラスチックレンズ
20 レンズ保持部材
21 開口部
22 中空部
23 密閉空間
30 浸漬染料液
A 研磨加工したレンズの側面側
B レンズの表面側
C レンズの裏面側
Claims (2)
- それぞれ1色以上かつ異なる色となるように染料で光学面の裏面側及び表面側の一部が着色されたプラスチックレンズであって、着色されていない部分の一部又は全部が光軸方向において対向していないことを特徴とする装飾された染色プラスチックレンズ。
- それぞれ1色以上かつ異なる色となるように染料で光学面の裏面側及び表面側の一部を着色するプラスチックレンズの製造方法であって、着色されていない部分が、研磨加工によって形成された光学面の一部分及び/又はマスキングによって形成された光学面の一部分であることを特徴とする装飾された染色プラスチックレンズの製造方法。
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