JP2010204641A - 染色プラスチックレンズの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】屈折率1.7以上、特に屈折率1.7〜1.8のプラスチックレンズに対しても高濃度でムラ無く均一に染色することが可能な染色プラスチックレンズの製造方法を提供する。
【解決手段】基板上に昇華性染料を塗布する工程(1)、及び被染色面がプラズマ処理されたプラスチックレンズを、該被染色面と前記基板の昇華性染料が塗布された面とが対向するように設置した後、真空度1×104Pa以下にて、前記工程(1)で得られた基板を加熱することにより基板上に塗布された昇華性染料を昇華させて前記プラスチックレンズを染色する工程(2)、を有する染色プラスチックレンズの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、表面をプラズマ処理したプラスチックレンズを用いた昇華染色法による染色プラスチックレンズの製造方法に関する。
従来、眼鏡用のプラスチックレンズの染色には、浸漬染色法、加圧染色法、染料膜加熱法等が利用されてきた。しかし、これらの染色方法では、高屈折率(屈折率1.7以上)のプラスチックレンズに対して高濃度でムラ無く均一に染色することが困難であった。
そこで、高屈折率(屈折率1.7以上)のプラスチックレンズに対しても、高濃度でムラ無く均一に染色するため、昇華性染料を用いてプラスチックレンズを染色する昇華染色法を始めとする、様々な試みがなされている。該昇華染色法を用いてプラスチックレンズを染色する方法としては、例えば白紙にプリンタにより染料を塗布した印刷基体を加熱して染料を昇華させる方法(特許文献1参照)等が知られている。
一方で、レンズの表面を処理する方法として、化学的処理、物理的処理、洗浄処理、プライマー処理及びコーティング処理が開示されている(特許文献2参照)。
特開2001−59950号公報 特開2000−111701号公報
特許文献1に記載された方法では、染料中の色素がレンズ表面で結晶化してしまい、染色が不均一となることがあり、特に高屈折率のプラスチックレンズを用いた場合にこの現象が顕著となるという問題がある。
また、特許文献2に記載された方法は昇華染色法ではなく、インクジェットプリンタのインク吐出機構を利用してレンズに着色層を設ける方法であり、そもそも染料がレンズ内部に浸透し難い方法である。また、レンズ表面を処理する方法として、種々の処理方法と共にプラズマ処理についても例示されているが、この処理はレンズと着色層との密着性を向上させるためと教示しているのみであり、昇華染色法においてレンズにプラズマ処理をした場合の効果は全く不明である。
そこで、本発明は、屈折率1.7以上、特に屈折率1.7〜1.8のプラスチックレンズに対しても高濃度でムラ無く均一に染色することが可能な染色プラスチックレンズの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者等は、上記課題について鋭意検討を行った結果、昇華染色法において、被染色面がプラズマ処理されたプラスチックレンズを用い、特定条件下にてプラスチックレンズを染色することにより上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[5]に関する。
[1]基板上に昇華性染料を塗布する工程(1)、及び
被染色面がプラズマ処理されたプラスチックレンズを、該被染色面と前記基板の昇華性染料が塗布された面とが対向するように設置した後、真空度1×104Pa以下にて、前記工程(1)で得られた基板を加熱することにより基板上に塗布された昇華性染料を昇華させて前記プラスチックレンズを染色する工程(2)、
を有する染色プラスチックレンズの製造方法。
[2]前記工程(2)で使用するプラスチックレンズが、真空度1×104Pa以下及びプラズマ出力40〜500Wの条件でプラズマ処理されたものである、上記[1]に記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
[3]前記工程(2)において、基板を加熱する温度を基板が50〜250℃になるように設定する、上記[1]又は[2]に記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
[4]前記工程(2)で使用するプラスチックレンズが、スルフィド結合を有するモノマーの単独重合体、又はスルフィド結合を有するモノマーと1種以上の他のモノマーとの共重合体である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
[5]前記工程(2)で使用するプラスチックレンズの屈折率が1.7以上である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
本発明により、屈折率1.7以上、特に屈折率1.7〜1.8のプラスチックレンズに対しても高濃度でムラ無く均一に染色することが可能な染色プラスチックレンズの製造方法を提供することができる。該製造方法により得られた染色プラスチックレンズは、屈折率が1.7以上のものであっても高濃度で均一に染色されている。
プラズマ処理後のプラスチックレンズの表面(処理面)の光学顕微鏡写真(倍率:2000倍)である。
上記の通り、本発明は、下記工程(1)及び(2)を有する染色プラスチックレンズの製造方法である。
工程(1):基板上に昇華性染料を塗布する工程。
工程(2):被染色面がプラズマ処理されたプラスチックレンズを、該被染色面と前記基板の昇華性染料が塗布された面とが対向するように設置した後、真空度1×104Pa以下にて、前記工程(1)で得られた基板を加熱することにより基板上に塗布された昇華性染料を昇華させて前記プラスチックレンズを染色する工程。
以下、上記工程(1)及び(2)について順に説明する。
[工程(1)]
(基板)
工程(1)では、基板上にプラスチックレンズを染色するための昇華性染料を塗布する。該基板としては特に制限は無く、例えば無機材料からなる基板、有機材料からなる基板、金属材料からなる基板のいずれも使用できる。
上記無機材料としては、ガラス、石英、雲母等や、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維等の無機高分子化合物からなる織布又は不織布等が挙げられる。上記有機材料としては、紙等が挙げられる。上記金属材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、これらの合金等が挙げられる。基板は、2種以上の材料を複合化した複合材料で形成されていてもよく、また、複数の材料からなる多層構造体であってもよい。
基板の厚さに特に制限は無いが、通常、昇華性染料を十分に昇華する観点から、0.5mm〜5mmが好ましく、1mm〜3mmがより好ましい。
上記基板は、プラスチックレンズと対向する側の面(塗布面)が、プラスチックレンズの被染色面側の曲面と重ねたときの誤差が少ない曲面を有する形状であってもよい。この場合、基板とプラスチックレンズの間隔がレンズの曲面全体でほぼ一定になり、昇華した染料がレンズ上に均一に拡散し、プラスチックレンズを均一にムラ無く染色し易くなる。
また、基板の昇華性染料を塗布する面は、プラスチックレンズを均一に染色する観点から、平滑であることが好ましい。
(昇華性染料)
工程(1)で使用する昇華性染料は、加熱により昇華する性質を有する染料であれば特に制限は無い。昇華性染料は工業的に容易に入手可能であり、市販品としては、例えばカヤセットブルー906(日本化薬(株)製)、カヤセットブラウン939(日本化薬(株)製)、カヤセットレッド130(日本化薬(株)製)Kayalon Microester Red C-LS conc(日本化薬(株)製)、Kayalon Microester Red AQ-LE(日本化薬(株)製)、Kayalon Microester Red DX-LS(日本化薬(株)製)、Dianix Blue AC-E(ダイスタージャパン(株)製)、Dianix Red AC-E 01、(ダイスタージャパン(株)製)、Dianix Yellow AC-E new(ダイスタージャパン(株)製)、Kayalon Microester Yellow C-LS(日本化薬(株)製)、Kayalon Microester Yellow AQ-LE(日本化薬(株)製)、Kayalon Microester Blue C-LS conc(日本化薬(株)製)、Kayalon Microester Blue AQ-LE(日本化薬(株)製)、Kayalon Microester Blue DX-LS conc(日本化薬(株)製)等がある。
昇華性染料を基板に塗布する際、該昇華性染料は水系媒体に分散させてインクを調製する。該水系媒体としては、水が好ましい。水は、昇華性染料のインク中における濃度が2〜10質量%となるようにすることが好ましく、2.5〜7質量%となるようにすることがより好ましく、4〜7質量%となるようにすることがさらに好ましく、4〜6質量%となるようにすることが特に好ましい。昇華性染料のインク中における濃度が上記範囲内であると、プラスチックレンズを高濃度に染色することができる。
また、該インクには、プラスチックレンズを高濃度で均一に染色する観点から、界面活性剤、保湿剤、有機溶媒、粘度調整剤、pH調整剤、バインダー等を含有させてもよい。
上記界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤をインクに含有させる場合、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤を併用することが好ましい。
アニオン系界面活性剤は公知のものを使用できる。該アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレインスルホン酸ナトリウム、ドデシルフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ノニオン性界面活性剤は公知のものを使用できる。該ノニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のエーテル系ノニオン性界面活性剤;ステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸プロピレングリコール等のエステル系ノニオン性界面活性剤;モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のエーテル・エステル系ノニオン性界面活性剤;ポリビニルアルコール、メチルセルロース等の水溶性ポリマー系ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、水溶性ポリマー系ノニオン性界面活性剤が好ましく、メチルセルロースがより好ましい。
界面活性剤をインクに含有させる場合、アニオン系界面活性剤の含有量は、インク中における濃度が好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜5質量%、さらに好ましくは0.2〜1質量%となるようにする。また、ノニオン性界面活性剤の含有量は、インク中における濃度が好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜5質量%、さらに好ましくは0.2〜1質量%となるようにする。界面活性剤の含有量がそれぞれ上記範囲内であると、プラスチックレンズをより高濃度で均一に染色することができる。
前記保湿剤としては、例えば2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン系保湿剤;ジメチルスルホキシド、イミダゾリジノン等のアミド系保湿剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、D−ソルビトール、グリセリン等の多価アルコール系保湿剤;トリメチロールメタン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも多価アルコール系保湿剤が好ましく、グリセリンがより好ましい。保湿剤をインクに含有させる場合、その含有量は、インク中における濃度が好ましくは5〜30質量%、より好ましくは10〜25質量%となるようにする。保湿剤の含有量が上記範囲内であると、プラスチックレンズを高濃度で均一に染色することができる。
なお、昇華性染料を基板上に塗布する方法としては特に制限は無く、例えばスプレーコーティング法、バーコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、インクドットコーティング法、インクジェット法等が挙げられる。
[工程(2)]
工程(2)では、まず、プラスチックレンズを、該レンズの被染色面が前記基板の昇華性染料が塗布された面と対向するように設置する。かかるプラスチックレンズと基板の設置の仕方は、通常の昇華染色法に従えばよく、例えば特開2005−156630号公報の図1及び図2等を参照できる。基板とプラスチックレンズの中心部との距離は、高濃度でプラスチックレンズを染色する観点から、好ましくは15mm〜120mm、より好ましくは17mm〜80mm、さらに好ましくは17mm〜30mmである。
(プラスチックレンズ)
工程(2)で使用するプラスチックレンズの素材としては特に制限は無く、例えばスルフィド結合を有するモノマーの単独重合体;スルフィド結合を有するモノマーと1種以上の他のモノマーとの共重合体;メチルメタクリレート単独重合体;メチルメタクリレートと1種類以上の他のモノマーとの共重合体;ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独重合体;ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと1種類以上の他のモノマーとの共重合体;アクリロニトリル−スチレン共重合体;ハロゲン含有共重合体;ポリカーボネート;ポリスチレン;ポリ塩化ビニル;不飽和ポリエステル;ポリエチレンテレフタレート;ポリウレタン;ポリチオウレタン;エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、1.7以上の屈折率を得ることができるという観点から、スルフィド結合を有するモノマーの単独重合体、又はスルフィド結合を有するモノマーと1種以上の他のモノマーとの共重合体が好ましい。
プラスチックレンズの形状に特に制限はなく、例えば、球面、回転対称非球面、多焦点レンズ、トーリック面等の非球面、凸面、凹面等の多様な曲面を有するプラスチックレンズを利用可能である。
(プラズマ処理)
プラスチックレンズの被染色面にはプラズマ処理を施し、レンズ表面に付着する昇華性染料中の色素の結晶化を抑制する。この効果が得られるのは、プラズマ処理により、レンズ表面に付着している有機物が取り去られ(図1参照)、レンズ表面と色素の親和性が良くなったためと考えられる。
ところで、従来から使用されているレンズ表面への処理方法として、アルミナ等の研磨剤による研磨処理や苛性ソーダ等によるアルカリ処理等がある。被膜と基材の密着を出すという観点で考えると、これらの処理方法でもプラズマ処理と同様の効果を期待できるはずであるが、現実的には、研磨剤やアルカリ液そのものを完全に除去することができない。そのため、本発明において、レンズの被染色面をプラズマ処理する代わりに上記研磨処理やアルカリ処理等を適用すると、レンズに残留物が付着し、結果的に昇華性染料中の色素の結晶化に起因した染色ムラが発生してしまい、均一に染色することができないことが判明した(本明細書の比較例参照)。さらに、本発明者らは、表面処理後にプラスチックレンズ上に残留物が付着しない方法であれば問題無いものと考え、UVオゾン処理等の別の表面処理方法を試みたが、レンズ表面を均一に処理できず、結果的に染色したときに濃淡ムラが発生してしまうことが判明した(本明細書の比較例4参照)。また、当該処理において出力を上げていくと、UV照射が影響し、プラスチックレンズが黄色くなってしまうといった問題が発生した。
プラズマ処理方法に特に制限は無く、公知のプラズマ処理装置を利用して実施すればよい。プラズマ処理の際のプラズマ出力は、染色ムラの抑制及び透過率の観点から、好ましくは40〜500W、より好ましくは50〜500W、より好ましくは50〜300W、より好ましくは100〜300W、さらに好ましくは200〜300Wであり、真空度は、染色ムラの抑制及び透過率の観点から、1×104Pa以下、好ましくは略真空圧(例えば1×10-3〜1×104Pa)、より好ましくは1×10-3〜1×103Pa、さらに好ましくは1×10-2〜2×102Paである。プラズマ出力及び真空度がこの範囲であれば、十分に表面処理が行なわれるため、昇華性染料を昇華した際にレンズ表面で色素が結晶化するという昇華染色法に特有の現象を効果的に抑制できる。
かかるプラズマ処理による色素の結晶化防止効果は、昇華性染料がレンズ内部に浸透し難い屈折率1.7以上(好ましくは1.7〜1.8、より好ましくは1.70〜1.76)のプラスチックレンズを用いた場合に、より顕著に現れる。
(プラスチックレンズの染色)
上記の通り、プラスチックレンズを該レンズの被染色面が前記基板の昇華性染料が塗布された面と対向するように設置した後、真空度1×104Pa以下にて該基板を加熱することにより、基板上に塗布された昇華性染料を昇華させ、プラスチックレンズへ付着及び浸透させる。
基板を加熱する方法としては、昇華性染料が塗布されていない面側からヒーターにて加熱する方法が好ましく挙げられる。基板の加熱温度は、基板が好ましくは50〜250℃、より好ましくは80〜240℃、さらに好ましくは120〜240℃、特に好ましくは140〜230℃になるように調整する。基板の加熱温度を上記範囲内とすることにより、昇華性染料を十分に昇華させることができ、且つ対向するプラスチックレンズの熱による変形及び変色を抑制できる。
なお、基板の加熱は、真空度1×104Pa以下で実施するが、レンズ表面にて昇華性染料中の色素が結晶化するのを抑制する観点から、好ましくは略真空圧下(真空度1×10-3〜1×104Pa)、より好ましくは1×10-2〜1×103Pa、さらに好ましくは1×10-2〜5×102Paで実施する。但し、圧力を1×10-3Pa未満にする場合、装置の高性能化が必要である。
基板の加熱時間は、プラスチックレンズを高濃度に染色する観点並びにプラスチックレンズの熱による変形及び変色を抑制する観点から、1分〜150分が好ましく、30分〜150分がより好ましく、40分〜100分がさらに好ましい。
なお、工程(2)は、プラスチックレンズの染色をより均一に行なうために、昇華性染料をプラスチックレンズへ付着させる工程(2−1)と、プラスチックレンズ内部へ浸透させる工程(2−2)に分けることも好ましい。この様に工程(2)を2つの工程に分ける場合、基板としてガラス等の熱伝導性の低い非晶質材料からなる基板を用いることが好ましい。この様な非晶質材料からなる基板を用いた場合、必要以上に基板温度を上昇させることがないため、対向するプラスチックレンズへ余計な熱が伝導することを抑制でき、該レンズに付着した昇華性染料がレンズ内部へ浸透するのを抑制でき、上記2つの工程に分けることが可能となる。また、基板を加熱する操作を行なう際に基板全体に温度勾配が生じることがなく、プラスチックレンズを均一に染色し易くなる。
上記の様に2つの工程に分ける場合、上記工程(2−1)においては、基板の加熱温度は、基板が好ましくは120〜250℃、より好ましくは130〜240℃、より好ましくは140〜230℃、より好ましくは140〜200℃、さらに好ましくは140〜170℃になるように調整する。また、工程(2−1)における加熱時の真空度及び好ましい範囲は、前記同様である。
そして、上記工程(2−2)においては、加熱温度は、プラスチックレンズが好ましくは70〜160℃、より好ましくは80〜160℃、より好ましくは100〜160℃、より好ましくは120〜160℃、さらに好ましくは120〜150℃になるように調整する。工程(2−2)における加熱操作は減圧下又は加圧下に実施してもよいが、常圧下に実施することが好ましい。また、プラスチックレンズの加熱時間は、30秒〜150分が好ましく、1分〜150分がより好ましく、20分〜150分がより好ましく、30分〜120分がさらに好ましい。工程(2−2)における加熱操作は、昇華性染料をプラスチックレンズに均一に浸透させていくために、予め上記温度範囲に加熱してある炉(例えばオーブン等)に工程(2−1)で得られた昇華性染料が付着したプラスチックレンズを入れる方法を採ることが好ましい。
(染色プラスチックレンズの特性)
以上の様にして染色された染色プラスチックレンズの透過率は52%以下、製造条件によっては46%以下であり、例え屈折率が1.7以上のプラスチックレンズであっても、昇華性染料を高濃度で含有している。さらに、本発明の製造方法により得られる染色プラスチックレンズは、高濃度で染色されているとともに、ムラ無く均一に染色されている。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、得られた染色プラスチックレンズの外観評価及び透過率測定は以下の通りに行なった。
(i)外観:染色ムラ
目視にて、染色の不均一や昇華性染料中の色素の結晶化に起因する染色ムラがあるか否かを蛍光灯下で確認し、以下の基準に従って評価した。
−評価基準−
○:染色ムラを目視にて見つけるのが困難である。
×:レンズ面内に染色ムラを目視で確認できる。
(ii)透過率
分光光度計「U3410」(日立製作所(株)製)を用いて、波長585nmにおける可視光線透過率を測定した。透過率が小さいほど、高濃度で染色されていることを示す。
また、各例で使用するプラスチックレンズは以下の通りである。
(プラスチックレンズ)
「EYRY(アイリー)」(商品名、HOYA(株)製);屈折率1.70、中心厚1.8mm、レンズ度数0.00、直径80mmの、ポリスルフィド結合を有するプラスチックレンズ
<調製例1>
(昇華性染料含有インクの調製)
昇華性染料として「Dianix Blue AC-E」(ダイスタージャパン(株)製)を水に分散させ、さらにアニオン系界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及び保湿剤を混合して昇華性染料含有インキとした。各成分の組成比は以下の通りである。
昇華性染料/水/アニオン系界面活性剤/ノニオン系界面活性剤/保湿剤=5/74.55/0.25/0.2/20(質量比)
<実施例1>
プラズマ処理:
プラスチックレンズの被染色面を以下の条件にてプラズマ処理した。
−プラズマ処理条件−
プラズマ処理装置:PC101A(ヤマト科学(株)製)
真空度:1×102Pa
プラズマ出力:130W
処理時間:120秒
プラズマ処理後のプラスチックレンズの表面の様子を光学顕微鏡(倍率;2000倍)で確認したところ、図1に示す様に、プラズマ処理した面が微細で均一な模様を呈していることが確認できた。
工程(1):
ガラス基板上に調製例1で得られた昇華性染料含有インクをディスペンサーによって碁盤目状に塗布した。
工程(2−1):
得られたガラス基板を、プラスチックレンズの中心部と20mm離れるように昇華染色機内に対向して設置し、真空度を2×102Paとし、ガラス基板の温度が155℃になるように加熱して昇華性染料を10分かけて昇華させてプラスチックレンズに付着させた。
工程(2−2):
さらに、得られたプラスチックレンズを130℃に加熱したオーブン内に置き、プラスチックレンズを1時間加熱することにより、昇華性染料をプラスチックレンズ内に浸透させた。
得られた染色プラスチックレンズの外観評価及び透過率測定結果を表1に示す。
<実施例2>
実施例1において、プラズマ処理時の真空度を2×102Paに変更したこと以外は実施例1と同様にして実験を行なった。得られた染色プラスチックレンズの外観評価及び透過率測定結果を表1に示す。
<実施例3>
実施例1において、プラズマ処理時のプラズマ出力を50Wに変更したこと以外は実施例1と同様にして実験を行なった。得られた染色プラスチックレンズの外観評価及び透過率測定結果を表1に示す。
<実施例4>
実施例1において、プラズマ処理時のプラズマ出力を260Wに変更したこと以外は実施例1と同様にして実験を行なった。得られた染色プラスチックレンズの外観評価及び透過率測定結果を表1に示す。
<実施例5>
実施例1において、工程(2−1)における真空度を5×102Paに変更したこと以外は実施例1と同様にして実験を行なった。得られた染色プラスチックレンズの外観評価及び透過率測定結果を表1に示す。
<比較例1>研磨処理
実施例1において、プラズマ処理の代わりに、平均粒径1〜3μmの研磨剤「POLIPLA203H」(商品名、株式会社フジミインコーポレーテッド製)による研磨処理に変更したこと以外は実施例1と同様にして実験を行なった。
得られた染色プラスチックレンズは、昇華性染料中の色素の結晶化に起因した染色ムラがあり、均一に染色されていなかった。結果を表1に示す。
<比較例2>アルカリ処理
実施例1において、プラズマ処理の代わりに、10%苛性ソーダ水溶液中に浸漬させ、60℃で5分処理するアルカリ処理に変更したこと以外は実施例1と同様にして実験を行なった。
得られた染色プラスチックレンズは、昇華性染料中の色素の結晶化に起因した染色ムラがあり、均一に染色されていなかった。結果を表1に示す。
<比較例3>有機溶剤処理
実施例1において、プラズマ処理の代わりに、アセトン中に5分間浸漬する有機溶剤処理に変更したこと以外は実施例1と同様にして実験を行なった。
得られた染色プラスチックレンズは、昇華性染料中の色素の結晶化に起因した染色ムラがあり、均一に染色されていなかった。結果を表1に示す。
<比較例4>UVオゾン処理
実施例1において、プラズマ処理の代わりに、以下に示す条件でのUVオゾン処理に変更したこと以外は実施例1と同様にして実験を行なった。
−UVオゾン処理条件−
UVオゾン処理装置:アイUV−オゾン洗浄装置「OC−250315−D+A」(型番、岩崎電気(株)製)
出力:75W
処理時間:60秒
得られた染色プラスチックレンズは、昇華性染料中の色素の結晶化に起因した染色ムラがあり、均一に染色されていなかった。結果を表1に示す。
以上より、本発明に従って製造した屈折率1.70の染色プラスチックレンズは、高濃度で均一に染色されていた(実施例1〜5)。一方、プラスチックレンズの表面を他の手段により処理した場合、プラスチックレンズ表面において昇華性染料中の色素の結晶化が起こる等の原因により、均一な染色ができなかった(比較例1〜4)。
本発明の染色プラスチックレンズは、眼鏡、サングラス、ゴーグル等に広く用いられ、特に、屈折率1.7以上の高屈折率の眼鏡用のプラスチックレンズとして有用である。

Claims (5)

  1. 基板上に昇華性染料を塗布する工程(1)、及び
    被染色面がプラズマ処理されたプラスチックレンズを、該被染色面と前記基板の昇華性染料が塗布された面とが対向するように設置した後、真空度1×104Pa以下にて、前記工程(1)で得られた基板を加熱することにより基板上に塗布された昇華性染料を昇華させて前記プラスチックレンズを染色する工程(2)、
    を有する染色プラスチックレンズの製造方法。
  2. 前記工程(2)で使用するプラスチックレンズが、真空度1×104Pa以下及びプラズマ出力40〜500Wの条件でプラズマ処理されたものである、請求項1に記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
  3. 前記工程(2)において、基板を加熱する温度を基板が50〜250℃になるように設定する、請求項1又は2に記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
  4. 前記工程(2)で使用するプラスチックレンズが、スルフィド結合を有するモノマーの単独重合体、又はスルフィド結合を有するモノマーと1種以上の他のモノマーとの共重合体である、請求項1〜3のいずれかに記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
  5. 前記工程(2)で使用するプラスチックレンズの屈折率が1.7以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
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