以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔第1実施形態〕
(概要)
以下に説明する画像処理方法は、インクジェット記録装置に具備されるインクジェットヘッドのノズルごとの吐出特性に起因する濃度むらを補正するむら補正処理であり、記録媒体に定着する前のテストパターンの読取データ(濃度測定値)が、記録媒体に着弾したインクの経時による濃度変化(濃度低下)を見越した濃度測定値変換データに変換され、この濃度測定値変換データを用いて、ノズルごとに入力階調値ごとの濃度補正値(濃度補正係数)が導出され、この濃度補正値を用いて、ノズルごとにむら補正処理が施される。
(フローの説明)
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像処理(むら補正処理)方法の流れを示すフローチャートである。同図に示すように、むら補正処理が開始されると(ステップS10)、濃度むら補正パターンが出力される(ステップS12、テストパターン出力工程)。ステップS12において出力される濃度むら補正パターンは、同一の入力階調値(濃度値)において、すべてのノズルから吐出されたインク(ドット)によって構成される。
濃度むら補正パターンの出力は、画像記録前に適宜実行される。例えば、1つ前の画像記録において、記録媒体の余白領域に濃度むら補正パターンを出力させてもよいし、ある画像記録と次の画像記録との間に濃度むら補正パターンの出力を行ってもよい。
次に、スキャナ(図2に符号22を付して図示)を用いて濃度むら補正パターンが読み取られる(ステップS14)。ステップS14における濃度むら補正パターンの読み取りは、読取時間条件1で行われる。
「読取時間条件1」は、記録媒体に着弾したインクが未定着の状態の期間中に濃度むら補正パターンの読み取りを行う条件であり、例えば、図4に図示したTQにおいて、濃度むら補正パターンの読み取りが行われる。すなわち、ステップS14における濃度むら補正パターンの読み取りは、記録媒体に着弾したインクが記録媒体へ定着するまでの期間中に行われる。
ここで、「定着」とは、例えば、加熱及び冷却、加圧及び減圧、電磁波(光など)照射、乾燥、薬剤処理などによって発現させた、記録媒体上でインク液滴(ドット)の位置が固定されて移動しない状態、又は濃度むらとして視認されない移動量の範囲でわずかに移動する状態をいう。
ステップS14の読取データから、ノズルごとの濃度値が測定され、ノズルごとの濃度測定値が取得される(ステップS16、濃度測定値取得工程)。ステップS16で取得されたノズルごとの濃度測定値は、経時変化補正データを使用して濃度測定値変換データに変換される(ステップS18、濃度測定値変換工程)。
「経時変化補正データ」とは、記録媒体上に着弾したインクの濃度が経時によって変化することを見越して、濃度値が変化する前の濃度測定値を、変化後の濃度測定値を示す濃度測定値変換データへ変換する処理に使用するものであり、ノズル番号及び濃度測定値を変数とするルックアップテーブル(LUT)形式で記憶される(図3参照)。なお、記録媒体上に着弾したインクの濃度の経時変化の詳細な説明は後述する。
次に、ステップS18において導出された濃度測定値変換データから、ノズルごとの濃度補正値(濃度補正係数)が演算され(ステップS20、濃度補正値演算工程)、色変換処理、分版処理、ガンマ補正処理等の処理が施された入力画像データに対して、ノズルごとの濃度補正値を使用してむら補正処理が施される(ステップS22、濃度補正工程)。
むら補正処理後の画像データが出力されると(ステップS24)、当該濃度むら補正処理は終了される(ステップS26)。出力されたむら補正後の画像データは、ハーフトーン処理が施されてドットデータに変換され、このドットデータに基づいてインクジェットヘッドの駆動信号が生成される。
(装置(ハードウエア)構成の説明)
図2は、図1に示す画像処理方法が適用される画像記録装置の概略構成を示すブロック図である。なお、図2に図示する構成の一部を画像処理装置とすることも可能である。
図2に示す画像記録装置10は、インクジェットヘッド(記録ヘッド)が具備されたインクジェット記録装置である。以下の説明では、記録媒体の全幅にわたってノズル(記録素子)が一列に配置されたノズル配置を有するインクジェットヘッドが使用されることとする。つまり、記録媒体の幅方向の画素位置とノズル番号が一致しているものとする。
画像記録装置10は、画像データが入力される画像データ入力部12と、入力され、色変換処理等の処理が施された画像データに対してむら補正処理を施すむら補正処理部14(濃度補正手段)と、むら補正処理後の画像データに対してハーフトーン処理を施すハーフトーン処理部16と、備えている。
また、画像記録装置10は、記録媒体へインクを吐出させるインクジェットヘッドを具備する描画ユニット20と、濃度むら補正パターンを含むテストパターンを読み取るスキャナ22と、画像が記録された記録媒体に定着処理を施す定着ユニット24と、画像が記録された記録媒体を出力する記録媒体出力部26と、を備えている。
描画ユニット20は、インクジェットヘッドと、インクジェットヘッドの制御回路が搭載された制御基板と、を具備し、ハーフトーン処理後の画像データに基づいてインクジェットヘッドを動作させて、記録媒体へインクを吐出させる。
定着ユニット24は、記録媒体上に形成された画像(記録媒体上に着弾したインク)を記録媒体へ固定させる処理を施す手段である。例えば、加熱定着、加熱加圧定着、活性化エネルギー(例えば、紫外線)付与などの態様が挙げられ、インクの種類に対応した定着処理が適用される。なお、定着ユニット24を省略することも可能である。
スキャナ22は、記録媒体(記録媒体の余白領域)に形成されたテストパターンを読み取る手段であり、CCDイメージセンサ(charge-coupled device Image Sensor)、CMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)等の撮像装置が適用される。
スキャナ22の読取データから、ある入力階調(濃度)値における濃度測定値がノズルごと(及び入力階調値ごと)に導出され、濃度測定値記憶部30(濃度測定値取得手段)に記憶される。ノズルごとの濃度測定値は、濃度測定値変換処理部32(濃度測定値変換手段)において、予め経時変化補正データ記憶部34に記憶されている経時変化補正データを用いて、濃度測定値変換データに変換される。
濃度補正値演算部36(濃度補正値演算手段)は、濃度測定値変換データからノズルごとの濃度補正値を演算し、演算によって導出された濃度補正値は、むら補正処理部14へ提供される。濃度補正値への演算処理には、ノズル及び階調値を変数として、濃度補正値(補正係数)が格納されたルックアップテーブル(LUT)が用いられる。
むら補正処理部14は、濃度補正値演算部36から提供された濃度補正値を用いて、入力画像データに対してむら補正処理を施す。
(経時変化補正データ(LUT)の説明)
図3は、経時変化補正データ(LUT)50の模式図である。経時変化補正データLUT50は、ノズル番号(ノズルの配列方向における画素番号)、濃度測定値(図1の読取時間条件1の読取データから導出される濃度補正値)を変数とするLUTであり、ノズルごとに濃度測定値に対応する変換データが格納されている。
すなわち、描画ユニット20の記録媒体搬送方向の下流側直近など、定着ユニット24よりも描画ユニット20側にスキャナ22が配置されるといった、描画直後の記録媒体へテストパターンが定着する前にテストパターンの読み取りが実行される構成において、定着前に測定された濃度測定値が、定着後の濃度測定値を示す濃度測定値変換データへ変換される。
図4は、ドット(インク)の経時による濃度変化を示す説明図であり、図5は、ドット(インク)の経時による濃度変化のメカニズムを説明する説明図である。
図4における横軸は時間であり、縦軸は濃度値である。T=0が記録媒体上にインクが着弾したタイミングであり、T=TQは、スキャナ22の読取タイミングであり、このときの濃度測定値はDQである。
T=TLは、インクが記録媒体へ定着した後の任意のタイミングを表しており、このときの濃度値はDL(<DQ)である。また、図4に破線で図示した曲線は、定着ユニット24が具備される場合の特性であり、定着時の濃度はDL’(<DL)である。
図4に示すように、記録媒体に着弾したインクの濃度は、時間経過とともに上昇してTQに達する。この状態は定着前である。さらに時間が経過すると、記録媒体へのインクの定着の進行とともにインクの濃度は低下して、記録媒体へのインクが定着すると、濃度値DLで安定する。
図5(a)は、タイミングTQにおけるドットの状態と濃度が模式的に図示されている。先に記録媒体に着弾したインク液滴(ドット)60の隣接打滴位置にインク液滴(ドット)62が着弾すると、時間の経過に従って、ドット60とドット62との相互作用、記録媒体とドット60,62との相互作用によって、後に着弾したドット62の位置が変化し、この状態で安定する。
図5(b)は、ドット62の位置が変化した状態と、その濃度が図示されている。図5(b)に示すように、ドット62は、符号62’を付して破線による図示したタイミングTQにおける位置から、ドット60の方へ移動している。
このようにして、ドット間の相互作用の影響で着弾時の位置からドットが移動する(近づく)ことで、記録媒体へインクが定着した後の濃度(図4のDL、DL’)は、記録媒体へインクが定着する前の濃度(TQ)よりも低下する。
図3に図示した経時変化補正データLUT50は、定着前の濃度測定値から経時による濃度変化を見越し、ノズルごと、階調値ごとに、定着前の濃度測定値を定着後の濃度測定値に変換するものである。
スキャナ22の読取タイミングTQは、描画ユニット20とスキャナ22との配置間隔、記録媒体の搬送速度によって決められる。スキャナ22は少なくとも定着ユニット24に対して記録媒体の搬送方向上流側に配置される。
インクが記録媒体へ定着した後の任意のタイミングTLは、記録媒体とインクとの組み合わせによって決められる。また、環境条件に影響されるので、環境条件を加味してインクが記録媒体へ定着した後の任意のタイミングTLが決められる。
(経時変化補正データ(LUT)生成の説明)
図6は、図3に図示した経時変化補正データ(LUT)生成の流れを示すフローチャートである。
経時変化補正データの生成が開始されると(ステップS50)、記録媒体に濃度むら補正パターンが出力され、(ステップS52)、濃度むら補正パターンが読取時間条件1で読み取られ(ステップS54)、読取データから濃度測定値1(定着前の濃度測定値、第1濃度測定値)が取得される(ステップS56)。
ここまでの工程は、図1のステップS12からステップS16と同様の工程であり、ここでは説明を省略する。「読取時間条件1」は、濃度むら補正パターンが記録媒体へ定着する前を意味しており、例えば、図4に図示したTQである。
次に、ステップS50において出力された濃度むら補正パターンに定着処理を施し(ステップS58)、ステップS54における濃度むら補正パターンの読み取りを行った読取装置を用いて、定着処理後の濃度むら補正パターンが読み取られ(ステップS60)、濃度測定値2が取得される(ステップS62)。
ステップS60に適用される読取時間条件2は、記録媒体へ濃度むら補正パターンが定着した後を意味しており、例えば、図4に図示したTLが挙げられる。
ステップS56において取得された濃度測定値1と、ステップS62において取得された濃度測定値2(定着後の濃度測定値、第2濃度測定値)と、を用いて、経時変化補正データが算出され(ステップS64)、当該経時変化補正データ生成は終了される(ステップS66)。
図7は、図6に図示した経時変化補正データ(LUT)生成の他の態様のフローチャートである。図7における経時変化補正データ生成では、図6のステップS58(定着処理)が省略されている。
すなわち、図7には、定着ユニット24(図2参照)を備えていない構成における経時変化補正データ生成のフローチャートが図示されている。
図8は、経時変化補正データ生成の装置(ハードウエア)構成を示すブロック図である。図8中、図2と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
濃度むら補正パターン出力工程(図6のステップS52)は、図8の描画ユニット20が用いられ、読取時間条件1が適用される濃度むら補正パターン読取工程(図6のステップS54)、及び読取時間条件2が適用される濃度むら補正パターン読取工程(図6のステップS60)は、図8のスキャナ22が用いられる。
濃度測定値1の取得工程(図6のステップS56)、及び濃度測定値2の取得工程(図6のステップS62)は、図8の濃度測定値取得部40が用いられ、定着工程(図6のステップS58)は、定着ユニット24が用いられる。
経時変化補正データ算出工程(図6のステップS64)は、図8の経時変化補正データ演算部42が用いられる。
図8に図示した構成の中で、濃度測定値取得部40及び経時変化補正データ演算部42以外の構成として、既存の装置を使用してもよい。例えば、画像データ入力部12、むら補正処理部14、ハーフトーン処理部16、描画ユニット20として、既存のインクジェット記録装置を用い、スキャナ22として既存のスキャナ装置を用いることができる。
図9は、経時変化補正データ(LUT)の生成の模式図である。同図に示すように、定着前のテストパターン46から、すべてのノズルについて、離散的に決められた階調値(図9に示す例では6種類の階調値)の濃度測定値1(第1濃度測定値)が測定され、この濃度測定値1は経時変化補正データLUT50のインデックス(変数)とされる。
定着後のテストパターン48から、すべてのノズルについて、離散的に決められた階調値(図9に示す例では6種類の階調値)の濃度測定値2(第2濃度測定値)が測定され、濃度測定値2は、ノズル番号、濃度測定値1を変数とする各セルに格納される。
このようにして、一部のセルに濃度測定値2が格納されると、濃度測定値1が取りうる値のそれぞれについて、周辺のセルに格納されている値から演算によって濃度測定値2が導出され、経時変化補正データLUT50を構成するすべてのセルに値が格納される。
また、経時変化補正データLUT50を構成するセルに格納される値として、濃度測定値2に代わり、濃度測定値1から濃度測定値2を減算した値や、濃度測定値1に対する濃度測定値2の比率などを適用してもよい。
記録媒体の種類及びインクの種類の組み合わせによって、インクの定着状態が変動することがありうるので、使用される記録媒体の種類及び使用されるインクの種類の組み合わせに対応して、複数の経時変化補正データLUT50が生成される。
また、環境条件(温度、湿度等)によってもインクの定着状態が変動することがありうるので、環境条件を考慮して、環境条件ごとに複数の経時変化補正データLUT50が生成される。
以上説明した画像処理方法、装置における各機能を、コンピュータに実行させるプログラムを生成することが可能である。また、当該プログラムを記憶媒体に記憶し、記憶媒体からプログラムを読み出して、実行することも可能である。次に説明する第2実施形態に係る画像処理方法についても同様である。
ここでいうコンピュータとは、図2及び図10に図示した各処理部の機能を実現させるプロセッサ(演算ユニット)、周辺回路(装置)、記憶装置等を具備し、モニタ、ユーザインターフェース(キーボード、マウス等)が具備されていてもよい。
上記の如く構成された画像処理方法、装置、及びプログラムによれば、ノズルごと、入力階調値(濃度値)ごとに、記録媒体に着弾したインクの定着前の濃度測定値を、定着後の濃度測定値を示す濃度測定値変換データに変換する経時変化補正データ(LUT)が生成され、記録媒体にインクが定着する前の濃度測定値が経時変化補正データによって定着後の濃度測定値と等価の濃度測定値変換データに変換されるので、ノズルごとの吐出特性に起因する濃度むらを補正するむら補正処理において、インク濃度の経時による変化に対応することができる。
〔第2実施形態〕
(概要)
次に、本発明の第2実施形態に係る画像処理方法について説明する。なお、以下の説明では、主として、先に説明した第1実施形態に係る画像処理方法(装置、プログラム)と相違する部分について説明する。
(装置(ハードウエア)構成)
図10は、本発明の第2実施形態に係る画像処理方法が適用される画像記録装置の概略構成を示すブロック図である。同図に示す画像記録装置100は、図2の濃度測定値変換処理部32、経時変化補正データ記憶部34及び濃度補正値演算部36に代わり、濃度補正値変換処理部132(濃度補正値変換手段)、経時変化階調値LUT記憶部134及び濃度補正値演算部136(濃度補正値演算手段)が具備されている。
すなわち、濃度測定値記憶部30に記憶された濃度測定値から、濃度補正値演算部136において濃度補正値(濃度補正係数)が求められ、経時変化階調値LUT記憶部134に記憶されている経時変化階調値データ(LUT)を用いて、濃度補正値変換処理部132において濃度補正値が変換データに変換される。
また、濃度補正値の導出には、階調値及びノズル番号を変数とする濃度補正LUTが用いられる。
(経時変化階調値データ(LUT)の説明)
図11は、経時変化階調値データ(LUT)の模式図である。経時変化階調値LUT150は、ノズル番号、濃度補正値(濃度補正係数)を変数(インデックス)とするLUTであり、各セルには変換データが格納されている。
すなわち、図11に示す経時変化階調値LUT150は、定着前の濃度測定値の経時による変化(濃度低下)を見越して、定着前の濃度測定値から導出される濃度補正値を、ノズルごと、入力階調値(濃度値)ごとに定着後の濃度測定値から導出される濃度補正値(変換データ)に変換するものである。
(経時変化階調値データ(LUT)の生成の説明)
図12は、経時変化階調値LUT生成の流れを示すフローチャートであり、図13は、経時変化階調値LUT生成の装置構成を示すブロック図である。
図12に示す濃度むら補正パターン出力工程(ステップS152)、濃度むら補正パターン読取工程(ステップS154)、濃度測定値1取得工程(ステップS156)は、図6の濃度むら補正パターン出力工程(ステップS52)、濃度むら補正パターンが読取工程(ステップS54)、濃度測定値1取得工程(ステップS56)と共通しているので、ここでは説明を省略する。
濃度測定値1が取得されると、すべてのノズルについて、離散的に決められた階調値の濃度測定値1から濃度補正LUT1が演算される(図12のステップS157)。この工程は、図13の濃度補正LUT演算部143(濃度補正値演算手段)によって実行される。
次に、定着工程(図12のステップS158)、濃度むら補正パターン読取工程(ステップS160)、濃度測定値2取得工程(ステップS162)は、図6の定着工程(図12のステップS58)、濃度むら補正パターン読取工程(ステップS60)、濃度測定値2取得工程(ステップS62)と同じであり、ここでは説明を省略する。
濃度測定値2が取得されると、すべてのノズルについて離散的に決められた階調値の濃度測定値2から濃度補正LUT2が演算される(図12のステップS157)。この工程は、図13の濃度補正LUT演算部143によって実行される。
ステップS157において導出された濃度補正LUT1(定着前の濃度測定値に対応する濃度補正LUT)、及びステップS163において導出された濃度補正LUT2(定着後の濃度測定値に対応する濃度補正LUT)から、経時変化階調値LUTデータが算出され(ステップS164)、当該経時変化階調値LUT生成は終了される(ステップS166)。
図12に図示した経時変化階調値LUT算出工程(ステップS164)は、図12の経時変化階調値データ演算部145によって実行される。
図14は、経時変化階調値LUTの生成の模式図である。濃度補正LUT1は、経時変化階調値LUT150のインデックスとなる。また、濃度補正LUT2は、経時変化階調値LUTの各セルに格納される経時変化階調値データとなる。
すなわち、経時変化階調値LUTは、ノズル番号ごとに濃度補正LUT146に格納される濃度補正値を、濃度補正LUT148に格納される濃度補正値に変換するLUTとなっている。
上記の如く構成された画像処理方法、装置(プログラム)によれば、第1実施形態に係る画像処理方法、装置(プログラム)と同様の効果を得ることができる。
上記第1、第2実施形態では、各種ルックアップテーブルの変数としてノズル番号を例示したが、ノズルの配列方向における画素番号としてもよい。また、後述するマトリクスヘッド(図17参照)におけるノズル列を変数としてもよいし、複数のヘッドモジュールをつなぎ合わせて構成されるライン型ヘッド(図16参照)のモジュール番号を変数としてもよい。
すなわち、記録画像に生じる記録媒体の搬送方向と直交する方向における濃度むらの発生原因(ノズル間の吐出特性のばらつき、ノズル列間のピッチ誤差、ヘッドモジュール間のピッチ誤差)に対応して各種ルックアップテーブルを作成することが可能である。
ここでいう「搬送方向と直交する方向」とは、搬送方向に対して90°から誤差の範囲内でずれた角度をなす方向が含まれる。なお、以下の説明においても同様とする。
〔インクジェット記録装置への適用例〕
上述した画像処理方法、装置、プログラムをインクジェット記録装置に適用した例について、以下に説明する。
(インクジェット記録装置の全体構成)
図15は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示した構成図である。同図に示すインクジェット記録装置200は、色材を含有するインクと該インクを凝集させる機能を有する凝集処理液を用いて、所定の画像データに基づいて記録媒体201の記録面に画像を形成する2液凝集方式の記録装置である。
インクジェット記録装置200は、主として、描画部202、定着処理部220を具備している。また、図示は省略するが、給紙部、処理液付与部、乾燥処理部及び排出部を備えて構成される。
記録媒体201の受け渡しを行う手段として渡し胴230,232,234が設けられるとともに、描画部202、定着処理部220のそれぞれに記録媒体201を保持しながら搬送する手段として、ドラム形状を有する圧胴204,222が設けられている。
渡し胴230,232,234及び圧胴204,222は、外周面の所定位置に記録媒体201の先端部(又は後端部)を挟んで保持するグリッパー(不図示)が設けられている。
グリッパーとグリッパーにおける記録媒体201の先端部を挟んで保持する構造、及び他の圧胴又は渡し胴に備えられるグリッパーとの間で記録媒体201の受け渡しを行う構造を同一であり、かつ、グリッパーとグリッパーは、圧胴204,222の外周面の圧胴204,222の回転方向について180°移動させた対称位置に配置されている。
グリッパーにより記録媒体201の先端部を狭持した状態で渡し胴230,232,234、及び圧胴204,222を所定の方向に回転させると、渡し胴230,232,234、及び圧胴204,222の外周面に沿って記録媒体201が回転搬送される。
給紙部から供給された記録媒体は、処理液付与工程、描画工程を経て所望の画像が形成される。その後、定着処理が施された後に(定着工程後に)排出部(不図示)から排出される。
なお、給紙部、処理液塗布部、乾燥処理部、排出部には、公知の給紙構造、液体塗布技術、乾燥処理技術、排紙構造が適用されるので、ここでの説明は省略する。
(描画部)
描画部202は、記録媒体201を吸着保持して搬送する圧胴(描画ドラム)204と、記録媒体201にインクを付与するインクジェットヘッド206M,206K,206C,206Yを備えている。
渡し胴230から描画ドラム204に受け渡された記録媒体201は、グリッパー(符号省略)によって先端が保持され、描画ドラム204の外周面に密着する。
このようにして、記録媒体201を描画ドラム204の外周面に密着させた後に、描画ドラム204の外周面から浮き上がりのない状態で、インクジェットヘッド206M,206K,206C,206Yの直下の印字領域に送られる。
インクジェットヘッド206M,206K,206C,206Yはそれぞれ、マゼンダ(M)、黒(K)、シアン(C)、イエロー(Y)の4色のインクに対応しており、描画ドラム204の回転方向(図15における反時計回り方向)に上流側から順に配置されるとともに、インクジェットヘッド206M,206K,206C,206Yのインク吐出面(ノズル面、図18に符号254Aを付して図示する。)が描画ドラム204に保持された記録媒体201の記録面と対向するように配置される。
また、図15に示すインクジェットヘッド206M,206K,206C,206Yは、描画ドラム204の外周面に保持された記録媒体201の記録面とインクジェットヘッド206M,206K,206C,206Yのノズル面が平行となるように、水平面に対して傾けられて配置されている。なお、ここでいう「平行」には、5°以内の誤差が含まれてもよい。なお、以下の説明においても同様とする。
インクジェットヘッド206M,206K,206C,206Yは、記録媒体201における画像形成領域の最大幅(記録媒体201の搬送方向と直交する方向の長さ)に対応する長さを有するフルライン型のヘッドであり、記録媒体201の搬送方向と直交する方向に延在するように固定設置される。
インクジェットヘッド206M,206K,206C,206Yのノズル面には、記録媒体201の画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルがマトリクス配置(図17参照)されて形成されている。
記録媒体201がインクジェットヘッド206M,206K,206C,206Yの直下の印字領域に搬送されると、インクジェットヘッド206M,206K,206C,206Yから記録媒体201の凝集処理液が付与された領域に画像データに基づいて各色のインクが吐出(打滴)される。
インクジェットヘッド206M,206K,206C,206Yから、対応する色インクの液滴が、描画ドラム204の外周面に保持された記録媒体201の記録面に向かって吐出されると、記録媒体201上で処理液とインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料系色材)又は不溶化する色材(染料系色材)の凝集反応が発現し、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体201上に形成された画像における色材の移動(ドットの位置ズレ、ドットの色むら)が防止される。
本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。なお、描画部202は、図2,10の描画ユニット20に対応している。
(定着処理部)
定着処理部220は、記録媒体201を保持して搬送する圧胴(定着ドラム)222と、画像形成がされ、さらに、液体が除去された記録媒体201に加熱処理及び加圧処理を施す定着ユニット224と、を備えて構成される。なお、定着ドラム222の基本構造は処理液ドラム334、描画ドラム204、及び乾燥ドラム354と共通しているので、ここでの説明は省略する。
定着ユニット224は、定着ドラム222の外周面に対向する位置に配置される。定着処理部220では、記録媒体201の記録面に対して加熱処理が施されるとともに、定着ローラ等の加圧部材による加圧処理が施される。
加熱処理温度は、記録媒体の種類、インクの種類(インクに含有するポリマー微粒子の種類)などに応じて適宜設定される。例えば、インクに含有するポリマー微粒子のガラス転移点温度や最低造膜温度とする態様が考えられる。
加圧部材は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材が適用される。これにより、記録媒体201は、加圧(ローラ)部材と定着ドラム222との間に挟まれ、所定のニップ圧でニップされ、定着処理が行われる。
記録媒体201を加熱することによって、インクに含まれるポリマー微粒子のガラス転移点温度以上の熱エネルギーが付与されると、該ポリマー微粒子が溶融して画像の表面に透明の被膜が形成される。
この状態で記録媒体201の記録面に加圧を施すと、記録媒体201の凹凸に溶融したポリマー微粒子が押し込み定着されるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、好ましい光沢性を得ることができる。
なお、図15に図示した定着ユニット224は、図2,10の定着ユニット24に対応している。
図15に示すインクジェット記録装置200は、インクジェットヘッド206M,206K,206C,206Yの後段(記録媒体搬送方向の下流側)に、インライン検出部208が設けられている。
インライン検出部208は、記録媒体201に形成された画像(又は記録媒体201の余白領域に形成されたテストパターン)を読み取るためのセンサであり、CCDラインセンサが好適に用いられる。
本例に示すインクジェット記録装置200は、インライン検出部208の読取結果に基づいてインクジェットヘッド206M,206K,206C,206Yの吐出特性の経時による変化が検出される。
すなわち、画像が記録される記録媒体201の余白領域にテストパターンが形成され、テストパターンはインライン検出部208によって読み取られ、読取データから各ノズルの着弾位置誤差の情報が取得される。
また、インライン検出部208は、図2,10のスキャナ22に対応しており、インライン検出部208の読取データから、すべてのノズルにおける階調値ごとの濃度測定値が得られる。
(インクジェットヘッドの構造の説明)
図16は、図15に示すインクジェットヘッドの概略構成図であり、図16はインクジェットヘッドから記録媒体の記録面を見た図(ヘッドの平面透視図)となっている。
なお、図15に図示したインクジェットヘッド206M,206K,206C,206Yは同一構造を有しているので、以下の説明ではインクジェットヘッド206M,206K,206C,206Yを区別する必要がない場合は、これらを総称して「インクジェットヘッド206」と記載する。
同図に示すインクジェットヘッド206は、n個のサブヘッド210−i(iは1からnの整数)を一列につなぎ合わせてマルチヘッドを構成している。また、各サブヘッド210−iは、インクジェットヘッド206の短手方向の両側からヘッドカバー212A,212Bによって支持されている。なお、サブヘッド210−iを千鳥状に配置してマルチヘッドを構成することも可能である。
複数のサブヘッドにより構成されるマルチヘッドの適用例として、記録媒体の全幅に対応したフルライン型ヘッドが挙げられる。フルライン型ヘッドは、記録媒体の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に沿って、記録媒体の主走査方向における長さ(幅)に対応して、複数のノズル(図17に符号250を付して図示する。)が並べられた構造を有している。かかる構造を有するインクジェットヘッド206と記録媒体とを相対的に一回だけ走査させて画像記録を行う、いわゆるシングルパス画像記録方式により、記録媒体の全面にわたって画像を形成し得る。
図17は、サブヘッド210−iのノズル配列を示す平面図である。同図に示すように、各サブヘッド210−iは、ノズル250が二次元状に並べられた構造を有し、かかるサブヘッド210−iを備えたヘッドは、いわゆるマトリクスヘッドと呼ばれるものである。
図17に示したサブヘッド210−iは、副走査方向Yに対して角度αをなす列方向W、及び主走査方向Xに対して角度βをなす行方向Vに沿って多数のノズル250が並べられた構造を有し、主走査方向Xの実質的なノズル配置密度が高密度化されている。
図17では、行方向Vに沿って並べられたノズル群(ノズル行)は符号252Vを付し、列方向Wに沿って並べられたノズル群(ノズル列)は符号252Wを付して図示されている。
かかるマトリクス配列において、副走査方向の隣接ノズル間隔をLsとするとき、主走査方向については実質的に各ノズル250が一定のピッチ(Ls/tanθ)で直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
図17に示す構造を有するインクジェットヘッド206は、主走査方向Xと角度βをなす行方向V及び副走査方向Yに対して角度αをなす列方向Wに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
マトリクスヘッドにおけるノズル番号は、すべてのノズルを主走査方向に沿って並ぶように投影させた投影ノズ列において、一方の端のノズルのノズル番号を1とし、他方の端のノズルまで順に付与した番号とする。
図18は、インクジェットヘッド206の立体構造の一例を示す断面図であり、記録素子単位となる1チャンネル分の液滴噴射素子が図示されている。同図に示すインクジェットヘッド206は、圧力室256の天井面に設けられた圧電素子272を動作させて圧力室256内の液体を加圧して、圧力室256と連通するノズル250から液滴を噴射させるように構成されている。
ノズル250から液滴が噴射されると、圧力室256と連通される供給口262を介して、液体の供給源たるタンク(不図示)から共通流路258を経由して圧力室256へ液体が充填される。
図18に示すインクジェットヘッド206は、ノズル面254Aにノズル250が形成されたノズルプレート254と、圧力室256、供給口262、共通流路258等の流路が形成された流路板260等を積層接合した構造から成る。
ノズルプレート254は、インクジェットヘッド206のノズル面254Aを構成し、各圧力室256にそれぞれ連通する複数のノズル250が所定の配置パターンで配置されている。
流路板260は、圧力室256の側壁部を構成するとともに、共通流路258から圧力室256にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口262が形成される流路形成部材である。
なお、説明の便宜上、図18では簡略的に図示しているが、流路板260は一枚又は複数の基板を積層した構造である。ノズルプレート254及び流路板260は、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
圧力室256の一部の面(図18において天井面)を構成する振動板264には、上部電極(個別電極)266及び下部電極268を備え、上部電極266と下部電極268との間に圧電体270がはさまれた構造を有する圧電素子(ピエゾ素子)272が接合されている。
振動板264を金属薄膜や金属酸化膜により構成すると、圧電素子272の下部電極268に相当する共通電極として機能する。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様では、振動板部材の表面に金属などの導電材料による下部電極層が形成される。
上部電極266に駆動電圧を印加することによって圧電素子272が変形するとともに振動板264が変形して圧力室256の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル250から液滴が噴射される。
なお、圧電素子のたわみ変形を利用してインクを吐出させる圧電方式に代わり、インクの膜沸騰現象を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用してもよい。
本発明に係る画像処理方法は、特に、フルライン型のインクジェットヘッドを用いたシングルパス方式による画像記録に効果を発揮する。かかる画像記録では、ノズルの吐出特性のばらつきによって、記録媒体の搬送方向に沿うすじ状の濃度むらが発生すると、画像品質を著しく低下させてしまう。
もちろん、本発明に係る画像記録方法は、シリアル方式におけるシングルパス画像記録についても、ヘッドの走査方向に沿うすじ状のむらの視認性の低減化に一定の効果を発揮する。
(制御系の説明)
図19は、インクジェット記録装置200のシステム構成を示すブロック図である。図19に示すように、インクジェット記録装置200は、通信インターフェース300、システム制御部302を備え、システム制御部302により装置各部の統括的な制御が行われる。
通信インターフェース300は、ホストコンピュータ303から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース300にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
システム制御部302は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置200の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。
また、搬送制御部304、画像処理部306、ヘッド駆動部308などを制御する制御信号を生成し、画像メモリ310、ROM312のメモリコントローラとしての機能を有している。
画像処理部306は、画像データに所定の処理を施す処理ブロックであり、画像処理機能を有するプロセッサが含まれる。ホストコンピュータ303から送出された画像データは通信インターフェース300を介してインクジェット記録装置200に取り込まれ、一旦画像メモリ310に記憶される。
画像処理部306は、システム制御部302の制御に従い、画像メモリ内の画像データ(多値の入力画像のデータ)から打滴制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能する。画像処理部306により生成された打滴制御用の信号(インク吐出データ)はヘッド駆動部308へ供給される。
画像処理部306はシステム制御部302と統合されて、1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像処理部306(インク吐出データ生成部)で生成されたインク吐出データはヘッド駆動部308に与えられ、インクジェットヘッド206のインク吐出動作が制御される。
ヘッド駆動部308は、インクジェットヘッド206の吐出駆動を制御する手段として機能し、インクジェットヘッド206の各ノズル250に対応した圧電素子272(図18参照)を駆動するための駆動信号波形を生成する。
画像メモリ310は、通信インターフェース300を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システム制御部302を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ310は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
すなわち、画像メモリ310は、画像データや各種データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
ROM312には、システム制御部302のCPUが実行するプログラム、及び各種制御パラメータが格納されている。
表示部314は、インクジェット記録装置200の各種情報が表示される表示手段として機能する。表示部314には、各種モニタ装置を適用することができる。
入力装置316は、いわゆる、ユーザインターフェースであり、キーボード、マウス、ジョイスティックなどが適用される。タッチパネル方式のモニタ装置を適用して、表示部314と入力装置316を一体構成とすることも可能である。
定着処理制御部318は、システム制御部302の指令に従い定着処理部220の動作を制御する。
本例に示すインクジェット記録装置200は、先に説明した画像処理機能が具備されている。むら補正処理部320、濃度測定値変換処理部322、経時変化補正LUT記憶部324、濃度補正値演算部326は、図2のむら補正処理部14、濃度測定値変換処理部32、経時変化補正データ記憶部34、濃度補正値演算部36と同一の機能を有している。
すなわち、インライン検出部208の検出結果(検出デデータ)から、ノズルごとに入力階調値(濃度値)ごとのむら補正係数が決められ、入力画像データの各画素の階調値に対して補正処理が施される。
図19に図示した濃度測定値変換処理部322、経時変化補正LUT記憶部324、濃度補正値演算部326に代わり、図10に図示した画像記録装置100の構成を具備することも可能である。
図19に図示した、むら補正処理の各工程が実行される処理部を画像処理部306と一体に構成してもよい。すなわち、むら補正処理部320、濃度測定値変換処理部322、経時変化補正LUT記憶部324、濃度補正値演算部326を画像処理部306の一部として構成してもよい。
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース300を介して外部から入力され、画像メモリ310に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の画像データが画像メモリ310に記憶される。
画像メモリに蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システム制御部302を介して画像処理部306に送られ、色変換処理、分版処理、ガンマ補正処理が施され、さらに、むら補正処理が施される。その後、2値又は多値のハーフトーンデータを生成するハーフトーン処理が施され、ドットデータに変換される。
すなわち、画像処理部306等は、入力されたRGB画像データをM,K,C,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして画像処理部306で生成されたドットデータは、インクジェットヘッド206のノズルからインクを吐出するためのMKCY打滴データに変換され、印字されるインク吐出データ(各ノズルの駆動タイミングと各ノズルにおける駆動タイミングごとのドットサイズ(吐出量))が確定する。
なお、図15から図19を用いて説明したインクジェット記録装置200の構成は、あくまでも一例であり、適宜、構成の追加、削除、変更等が可能である。
〔他の装置への応用例〕
他の装置構成例として、例えば、電子回路の配線パターンを描画する配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、カラーフィルタ製造装置、マテリアルデポジション用の材料を用いて微細構造物を形成する微細構造物形成装置など、液状機能性材料を用いて様々な形状やパターンを得るインクジェットシステムにも広く適用できる。
以上説明した画像処理方法、装置、プログラムは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更、追加、削除をすることが可能である。
〔本明細書が開示する発明〕
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(第1態様):複数の記録素子を具備する記録ヘッドから記録媒体上に濃度測定用のテストパターンを出力させるテストパターン出力工程と、テストパターンが記録媒体へ定着する前にテストパターンを読み取るテストパターン読取工程と、テストパターン読取工程の読取結果から、記録素子の配列方向における画素位置ごとの濃度測定値を取得する濃度測定値取得工程と、取得された濃度測定値をテストパターンが記録媒体へ定着した後の濃度測定値を示す濃度測定値変換データに変換する濃度測定値変換工程と、変換された濃度測定値変換データに基づいて、入力画像データの画素位置ごとの階調値を補正する濃度補正値を演算する濃度補正値演算工程と、演算された濃度補正値を用いて、入力画像データの画素位置ごとの階調値を補正する濃度補正工程と、を含む画像処理方法。
第1態様によれば、記録素子の配列方向における画素位置ごとに、記録媒体に出力されたテストパターンの定着前の濃度測定値が、定着後の濃度測定値を示す濃度測定値変換データに変換されるので、記録素子ごとの記録特性に起因する濃度むらを補正する濃度補正処理において、画像濃度の経時による変化に対応することができる。
(第2態様):第1態様に記載の画像処理方法において、濃度測定値を濃度測定値変換データへ変換する変換関係を示す経時変化補正データを記憶する経時変化補正データ記憶工程を含み、濃度測定値変換工程は、記憶された経時変化補正データを用いて濃度測定値を濃度測定値変換データへ変換する。
第2態様によれば、予め、濃度測定値を濃度測定値変換データへ変換する変換関係を示す経時変化補正データが生成され、記憶されることで、濃度測定値変換工程の処理効率を向上させことができる。
(第3態様):第2態様に記載の画像処理方法において、経時変化補正データ記憶工程は、テストパターンが記録媒体へ定着する前に読み取られた読取結果から取得された第1濃度測定値を変数として、テストパターンが記録媒体へ定着した後に読み取られた読取結果から取得された第2濃度測定値が濃度測定値変換データとして格納されたルックアップテーブルを経時変化補正データとして記憶する。
第3態様によれば、第1濃度値(定着前の濃度値)及び第2濃度値(定着後の濃度値)の実測結果から濃度測定値変換データが生成されるので、定着前の濃度測定値はより正確な定着後の濃度測定値を表す濃度測定値変換データへ変換される。
(第4態様):第3態様に記載の画像処理方法において、第2濃度測定値は、テストパターンが出力された記録媒体に対して定着処理を施した後にテストパターンが読み取られた読取結果から取得される。
第4態様によれば、定着工程を含む場合にも、定着前の濃度測定値から定着後の濃度測定値を表す濃度測定値変換データへ変換することが可能となる。
(第5態様):複数の記録素子を具備する記録ヘッドから記録媒体上に出力させた濃度測定用のテストパターンが記録媒体へ定着する前に読み取られた読取結果から、記録素子の配列方向における画素位置ごとの濃度測定値を取得する濃度測定値取得手段と、取得された濃度測定値をテストパターンが記録媒体へ定着した後の濃度測定値を示す濃度測定値変換データに変換する濃度測定値変換手段と、変換された濃度測定値変換データに基づいて、入力画像データの画素位置ごとの階調値を補正する濃度補正値を演算する濃度補正値演算手段と、演算された濃度補正値を用いて、入力画像データの画素位置ごとの階調値を補正する濃度補正手段と、を備えた画像処理装置。
第5態様において、濃度測定値を濃度測定値変換データへ変換する変換関係を示す経時変化補正データを記憶する経時変化補正データ記憶手段を備え、濃度測定値変換手段は、記憶された経時変化補正データを用いて濃度測定値を濃度測定値変換データへ変換する態様が好ましい。
また、経時変化補正データ記憶手段は、テストパターンが記録媒体へ定着する前に読み取られた読取結果から取得された第1濃度測定値を変数として、テストパターンが記録媒体へ定着した後に読み取られた読取結果から取得された第2濃度測定値が濃度測定値変換データとして格納されたルックアップテーブルを経時変化補正データとして記憶する態様が好ましい。
さらに、第2濃度測定値は、テストパターンが出力された記録媒体に対して定着処理を施した後にテストパターンが読み取られた読取結果から取得される態様が好ましい。
(第6態様):コンピュータに、複数の記録素子を具備する記録ヘッドから記録媒体上に出力させた濃度測定用のテストパターンが記録媒体へ定着する前に読み取られた読取結果から、記録素子の配列方向における画素位置ごとの濃度測定値を取得する濃度測定値取得機能と、取得された濃度測定値をテストパターンが記録媒体へ定着した後の濃度測定値を示す濃度測定値変換データに変換する濃度測定値変換機能と、変換された濃度測定値変換データに基づいて、入力画像データの画素位置ごとの階調値を補正する濃度補正値を演算する濃度補正値演算機能と、演算された濃度補正値を用いて、入力画像データの画素位置ごとの階調値を補正する濃度補正機能と、を実現させる画像処理プログラム。
第6態様において、濃度測定値を濃度測定値変換データへ変換する変換関係を示す経時変化補正データを記憶する経時変化補正データ記憶機能を含み、濃度測定値変換機能は、記憶された経時変化補正データを用いて濃度測定値を濃度測定値変換データへ変換する態様が好ましい。
また、経時変化補正データ記憶機能は、テストパターンが記録媒体へ定着する前に読み取られた読取結果から取得された第1濃度測定値を変数として、テストパターンが記録媒体へ定着した後に読み取られた読取結果から取得された第2濃度測定値が濃度測定値変換データとして格納されたルックアップテーブルを経時変化補正データとして記憶する態様が好ましい。
さらに、第2濃度測定値は、テストパターンが出力された記録媒体に対して定着処理を施した後にテストパターンが読み取られた読取結果から取得される態様が好ましい。
(第7態様):複数の記録素子を具備する記録ヘッドと、入力画像データからハーフトーンデータを生成する画像処理手段と、生成されたハーフトーンデータから記録ヘッドを駆動させる駆動信号を生成して、記録ヘッドの駆動を制御する駆動制御手段と、記録ヘッドから記録媒体上に出力させた濃度測定用のテストパターンが記録媒体へ定着する前にテストパターンを読み取るテストパターン読取手段と、を備え、画像処理手段は、テストパターン読取手段の読取結果から、記録素子の配列方向における画素位置ごとの濃度測定値を取得する濃度測定値取得手段と、取得された濃度測定値をテストパターンが記録媒体へ定着した後の濃度測定値を示す濃度測定値変換データに変換する濃度測定値変換手段と、変換された濃度測定値変換データに基づいて、入力画像データの画素位置ごとの階調値を補正する濃度補正値を演算する濃度補正値演算手段と、演算された濃度補正値を用いて、入力画像データの画素位置ごとの階調値を補正する濃度補正手段と、補正された入力画像データにハーフトーン処理を施すハーフトーン処理手段と、を具備することを特徴とする画像記録装置。
第7態様における画像記録装置の一態様として、記録素子としてノズルが具備されるインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置が挙げられる。
(第8態様):複数の記録素子を具備する記録ヘッドから記録媒体上に濃度測定用のテストパターンを出力させるテストパターン出力工程と、テストパターンが記録媒体へ定着する前にテストパターンを読み取るテストパターン読取工程と、テストパターン読取工程の読取結果から、記録素子の配列方向における画素位置ごとの濃度測定値を取得する濃度測定値取得工程と、取得された濃度測定値に基づいて、入力画像データの画素位置ごとの階調値を補正する濃度補正値を演算する濃度補正値演算工程と、演算された濃度補正値を、テストパターンが記録媒体へ定着した後の濃度測定値を示す値から演算される濃度補正値変換データに変換する濃度補正値変換工程と、変換された濃度補正値変換データを用いて、入力画像データの画素位置ごとの階調値を補正する濃度補正工程と、を含む画像処理方法。
第8態様によれば、記録素子の配列方向における画素位置ごとに、記録媒体に出力されたテストパターンの定着前の濃度測定値が測定され、濃度測定値から濃度補正値が演算され、定着後の濃度測定値を示す値から演算される濃度補正値に対応する濃度測定値変換データに変換されるので、記録素子ごとの記録特性に起因する濃度むらを補正する濃度補正処理において、画像濃度の経時による変化に対応することができる。
(第9態様):第8態様に記載の画像処理方法において、濃度補正値を濃度補正値変換データへ変換する変換関係を示す経時変化階調値データを記憶する経時変化階調値データ記憶工程を含み、濃度補正値変換工程は、記憶された経時変化階調値データを用いて濃度補正値を濃度補正値変換データへ変換する。
第9態様によれば、予め、濃度補正値を濃度補正値変換データへ変換する変換関係を示す経時変化階調値データが生成され、記憶されることで、濃度補正値変換工程の処理効率を向上させことができる。
(第10態様):第9態様に記載の画像処理方法において、経時変化階調値データ記憶工程は、テストパターンが記録媒体へ定着する前に読み取られた読取結果から取得された濃度測定値から演算された第1濃度補正値を変数として、テストパターンが記録媒体へ定着した後に読み取られた読取結果から取得された濃度測定値から演算される第2濃度補正値が濃度補正値変換データとして格納されたルックアップテーブルを経時変化階調値データとして記憶する。
第10態様によれば、定着前の濃度測定値及び定着後の濃度測定値の実測結果から濃度補正値が生成され、この濃度補正値に基づき経時変化階調値データが生成されるので、定着前の濃度測定値から演算される濃度補正値は、より正確な定着後の濃度測定値を表す値から演算される濃度測定値変換データへ変換される。
(第11態様):第10態様に記載の画像処理方法において、第2濃度補正値は、テストパターンが出力された記録媒体に対して定着処理を施した後にテストパターンが読み取られた読取結果から取得される濃度測定値から演算される。
第11態様によれば、定着工程を含む場合にも、定着前の濃度測定値から演算される濃度補正値を、定着後の濃度測定値を表す値から演算される濃度補正値変換データへ変換することが可能となる。
(第12態様):複数の記録素子を具備する記録ヘッドから記録媒体上に出力させた濃度測定用のテストパターンが記録媒体へ定着する前に読み取られた読取結果から、記録素子の配列方向における画素位置ごとの濃度測定値を取得する濃度測定値取得手段と、取得された濃度測定値に基づいて、入力画像データの画素位置ごとの階調値を補正する濃度補正値を演算する濃度補正値演算手段と、演算された濃度補正値をテストパターンが記録媒体へ定着した後の濃度測定値を示す値から演算される濃度補正値変換データに変換する濃度補正値変換手段と、変換された濃度補正値変換データを用いて、入力画像データの画素位置ごとの階調値を補正する濃度補正手段と、を備えた画像処理装置。
第12態様において、濃度補正値を濃度補正値変換データへ変換する変換関係を示す経時変化階調値データを記憶する経時変化階調値データ記憶手段を含み、濃度補正値変換手段は、記憶された経時変化階調値データを用いて濃度補正値を濃度補正値変換データへ変換する態様が好ましい。
また、経時変化階調値データ記憶手段は、テストパターンが記録媒体へ定着する前に読み取られた読取結果から取得された濃度測定値から演算された第1濃度補正値を変数として、テストパターンが記録媒体へ定着した後に読み取られた読取結果から取得された濃度測定値から演算される第2濃度補正値が濃度補正値変換データとして格納されたルックアップテーブルを経時変化階調値データとして記憶する態様が好ましい。
さらに、第2濃度補正値は、テストパターンが出力された記録媒体に対して定着処理を施した後にテストパターンが読み取られた読取結果から取得される濃度測定値から演算され態様が好ましい。
(第13態様):コンピュータに、複数の記録素子を具備する記録ヘッドから記録媒体上に出力させた濃度測定用のテストパターンが記録媒体へ定着する前に読み取られた読取結果から、記録素子の配列方向における画素位置ごとの濃度測定値を取得する濃度測定値取得機能と、取得された濃度測定値に基づいて、入力画像データの画素位置ごとの階調値を補正する濃度補正値を演算する濃度補正値演算機能と、演算された濃度補正値をテストパターンが記録媒体へ定着した後の濃度測定値を示す値から演算される濃度補正値変換データに変換する濃度補正値変換機能と、変換された濃度補正値変換データを用いて、入力画像データの画素位置ごとの階調値を補正する濃度補正機能と、を実現させる画像処理プログラム。
第13態様において、濃度補正値を濃度補正値変換データへ変換する変換関係を示す経時変化階調値データを記憶する経時変化階調値データ記憶機能を含み、濃度補正値変換機能は、記憶された経時変化階調値データを用いて濃度補正値を濃度補正値変換データへ変換する態様が好ましい。
また、経時変化階調値データ記憶機能は、テストパターンが記録媒体へ定着する前に読み取られた読取結果から取得された濃度測定値から演算された第1濃度補正値を変数として、テストパターンが記録媒体へ定着した後に読み取られた読取結果から取得された濃度測定値から演算される第2濃度補正値が濃度補正値変換データとして格納されたルックアップテーブルを経時変化階調値データとして記憶する態様が好ましい。
さらに、第2濃度補正値は、テストパターンが出力された記録媒体に対して定着処理を施した後にテストパターンが読み取られた読取結果から取得される濃度測定値から演算され態様が好ましい。
(第14態様):複数の記録素子を具備する記録ヘッドと、入力画像データからハーフトーンデータを生成する画像処理手段と、生成されたハーフトーンデータから記録ヘッドを駆動させる駆動信号を生成して、記録ヘッドの駆動を制御する駆動制御手段と、記録ヘッドから記録媒体上に出力させた濃度測定用のテストパターンが記録媒体へ定着する前にテストパターンを読み取るテストパターン読取手段と、を備え、画像処理手段は、テストパターンの読取結果から、記録素子の配列方向における画素位置ごとの濃度測定値を取得する濃度測定値取得手段と、取得された濃度測定値に基づいて、入力画像データの画素位置ごとの階調値を補正する濃度補正値を演算する濃度補正値演算手段と、演算された濃度補正値をテストパターンが記録媒体へ定着した後の濃度測定値を示す値から演算される濃度補正値変換データに変換する濃度補正値変換手段と、変換された濃度補正値変換データを用いて、入力画像データの画素位置ごとの階調値を補正する濃度補正手段と、補正された入力画像データにハーフトーン処理を施すハーフトーン処理手段と、を具備することを特徴とする画像記録装置。
第14態様における画像記録装置の一態様として、記録素子としてノズルが具備されるインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置が挙げられる。