JP5892552B2 - 弾性表面波素子用タンタル酸リチウム単結晶基板の製造方法及びその弾性表面波素子用タンタル酸リチウム単結晶基板 - Google Patents
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Description
ここで、焦電性除去処理された弾性表面波素子用タンタル酸リチウム単結晶基板とは、導電率が1×10−13Ω−1・cm−1以上、1×10−11Ω−1・cm−1以下の値を持ち、焦電性が抑制されたものをいう。
ここで、本発明でいう「疑似ストイキオメトリー組成」とは、弾性表面波素子用タンタル酸リチウム単結晶基板の表面のLi/(Li+Ta)組成が0.49〜0.51の組成をいう。
そして、この気相法で処理されたタンタル酸リチウム単結晶基板では、Liイオンが基板表面から内部にかけて拡散されるために、基板表面ほどLiイオン濃度が高く、中心部へ行くに従ってLi濃度が減少する傾向がある。
すなわち、本発明の第3の工程では、一度還元雰囲気下でかつキュリー温度以下で焦電性除去処理を施すが、この焦電性除去処理は、特許文献3に記載されている方法で実施する。具体的には、本発明の基板を還元処理したセラミックス、金属などの還元物質に還元雰囲気下で、600℃以下、好ましくは400℃〜600℃の温度で、1〜50時間の間接触させて焦電性除去処理を実施する。そして、その後に400度以上600度未満でかつ大気中で熱処理した後に、再度還元雰囲気下で焦電性除去処理を施すことが好ましい。
しかし、実際には、基板表面に若干の表面粗さがあった方がLiイオンが拡散して入りやすいために、本発明では、処理される基板表面の面粗さは、1nm以上30nm以下に粗れていることが好ましい。
次に、本発明の実施例1について説明する。実施例1では、先ず、引き上げ法により、コングルーエント組成の4インチ(10cm)径36°回転Yカットタンタル酸リチウム単結晶を作製した。この単結晶を単一分極化せずにスライスし、その両面にラップ加工を施して、面粗さRaが120nmになるように仕上げた。その後、気相処理される基板表面側をプレ研磨して面粗さRaを15nmとし、厚さ0.35mmの基板形状に仕上げた。
実施例2では、基板表面側ほどLiイオン濃度が高く、中心部へ行くに従ってLi濃度が減少する傾向があるために、1回の焦電性除去処理では還元処理が均一になされない場合があることから、焦電性除去処理を2回施し、それ以外は、実施例1と同じ条件で処理を実施した。すなわち、還元雰囲気下で、かつキュリー温度以下で一度焦電性除去処理を施した基板を500度の温度で、かつ大気中で熱処理した後に、還元雰囲気下で再度焦電性除去処理を実施したところ、均一な組成でかつ焦電性除去処理がなされていることが確認された。
比較例1では、第2の工程の印加電圧を特開昭54−10998号公報に記載されている印加電圧と同じ5V/cmで実施し、それ以外の工程では、実施例1と同じ条件で処理を実施した。
その結果、研磨時に研磨速度の相違が原因の研磨ムラの発生が確認された。この原因としては、印加電圧が5V/cmという本発明の範囲外であったために、面内を均一に単一分極処理ができなかったためではないかと考えられる。
比較例2では、第2の工程の印加電圧を30V/cmで実施し、それ以外の工程では、実施例1と同じ条件で処理を実施した。
その結果、単一分極処理後に基板にクラックが発生していることが確認された。この原因としては、印加電圧が30V/cmという本発明の範囲外であったために、大きな電圧がかかったことによりクラックが発生したものと考えられる。
比較例3では、プレ研磨されず、両面にラップ加工で面粗さが120nmに仕上げられた基板を用い、それ以外の工程では、実施例1と同じ条件で処理を実施した。
その結果、第4の研磨加工の工程で面粗さが120nmの面を研磨加工して加工歪を除去しようとすると、15μmまで研磨しないと加工歪が除去できないことが確認された。処理面が研磨代の10μm以下より大きい15μm以上研磨すると、第1の工程で組成変化して改質した擬似ストイキオメトリー層が多めに除去されてしまうために、擬似ストイキオメトリー層の厚さが不十分となり、改質前の基板組成とあまり変わらないことが確認された。
比較例4では、準備された基板の一方の基板面をプレ研磨加工により完全に鏡面加工(面粗さ0.2nm)に仕上げ、それ以外の工程では、実施例1と同じ条件で処理を実施した。
その結果、基板の面粗さが完全に鏡面化された状態であるためにLiイオンが均一に拡散されていないことが確認された。その理由は定かでないが、処理される表面の状態が多少粗くなっている方が表面状態が活性化され、Liイオンが拡散されやすいのに対し、鏡面化された表面状態ではLiイオンが拡散されにくいためではないかと考えられる。
Claims (5)
- Li2O蒸気にコングルーエント組成の基板であって研磨前の研磨面側の面粗さが1nm以上30nm以下であり、もう一方の面粗さが100nm以上500nm以下である前記基板を晒してLiを該基板の表面から中心部へ拡散させて、コングルーエント組成から疑似ストイキオメトリー組成に組成変化させる第1の工程と、該基板のZ軸方向に電圧を印加する第2の工程と、該基板を還元雰囲気下に晒して焦電性除去処理を施す第3の工程と、該基板を研磨加工する第4の工程と、を含むことを特徴とする弾性表面波素子用タンタル酸リチウム単結晶基板の製造方法。
- 前記第2の工程において、印加電圧を15V/cm以上25V/cm以下にすることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波素子用タンタル酸リチウム単結晶基板の製造方法。
- 前記第3の工程において、一度焦電性除去処理したものを400度以上600度未満の温度で大気中で熱処理した後に、再度焦電性除去処理を施したことを特徴とする請求項1又は2に記載の弾性表面波素子用タンタル酸リチウム単結晶基板の製造方法。
- 前記第4の工程において、研磨代が10μm以下、より好ましくは、5μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の弾性表面波素子用タンタル酸リチウム単結晶基板の製造方法。
- 前記請求項1乃至4の何れか一つに記載の製造方法によって作製され、疑似ストイキオメトリー組成を有することを特徴とする弾性表面波素子用タンタル酸リチウム単結晶基板。
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