JP5892432B2 - シリンダヘッドの焼入れ方法とこれに用いる流接防止部材 - Google Patents
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Description
本発明は、レシプロエンジン等のシリンダヘッドの焼入れ方法とこれに用いる流接防止部材に関する。
この種の従来技術として、「金属鋳物の製造方法」とした名称において特許文献1に開示されたものがある。
上記特許文献1に開示された金属鋳物の製造方法は、熱処理可能な液体アルミニウム銅合金から形成され、溶体熱処理の利点を享受し得るものであり、前記液体合金で型を充填し該合金固化金属鋳物を形成する段階と、前記型から取り出す段階とを350℃ 以上から直接焼入れし、前記型からの鋳物の取り出しと前記焼き入れとの間に熱処理を一切しない段階と、前記焼入れ金属鋳物を時効硬化させる段階とを有する内容のものである。
上記特許文献1に開示された金属鋳物の製造方法は、熱処理可能な液体アルミニウム銅合金から形成され、溶体熱処理の利点を享受し得るものであり、前記液体合金で型を充填し該合金固化金属鋳物を形成する段階と、前記型から取り出す段階とを350℃ 以上から直接焼入れし、前記型からの鋳物の取り出しと前記焼き入れとの間に熱処理を一切しない段階と、前記焼入れ金属鋳物を時効硬化させる段階とを有する内容のものである。
上記特許文献1に記載のものは、型内に溶湯を充填して350℃以上まで冷却し、型から取り出した後、350℃以上から焼入れして人工時効を行うものであるが、シリンダヘッドは複雑な形状をしているために、焼入れ時の冷却の仕方により残留応力が発生する。
上記の残留応力を小さくするには、均一に冷却すること若しくはゆっくりと冷却することが必要であり、従ってまた、水による焼入れよりも空気焼入れの方が効果的であることが知られている。
しかしながら、冷却速度が小さいと材料特性が向上せず、さらに実体部品では、湯口部分と湯口につながる部分(シリンダヘッド下面)は大きな熱ボリュームを有しており、また、肉厚分布の違い等により均一に冷やすことが困難である。
しかしながら、冷却速度が小さいと材料特性が向上せず、さらに実体部品では、湯口部分と湯口につながる部分(シリンダヘッド下面)は大きな熱ボリュームを有しており、また、肉厚分布の違い等により均一に冷やすことが困難である。
そこで本発明は、肉厚分布の違い等があっても、それら各部位の冷却速度差を小さくするとともに、残留応力を減少させることができるシリンダヘッドの焼入れ方法とこれに用いる流接防止部材の提供を目的としている。
上記課題を解決するための本発明に係るシリンダヘッドの焼入れ方法は、冷却用気体をシリンダヘッドに流接させることにより焼き入れを行うものであり、上記シリンダヘッドの熱容量の大きさに応じて区分けをし、熱容量が相対的に小さい部分の全部又は一部を、冷却用気体の流接を防ぐための流接防止部材によって被覆しておき、熱容量が相対的に大きい部分に冷却用気体を流接させることを特徴としている。
この構成によれば、熱容量が比較的小さい部分の全部又は一部を、冷却用気体の流接を防ぐための流接防止部材によって被覆しておき、熱容量が相対的に大きい部分に冷却用気体を流接させているので、肉厚分布の違い等があっても、それら各部位の冷却速度差を小さくするとともに、残留応力を減少させられる。
同上の課題を解決するための本発明に係るシリンダヘッドの焼入れ方法に用いる流接防止部材は、上記した熱容量が相対的に小さい部分の全部又は一部を被覆するための被覆部材を有している。
この構成によれば、熱容量が相対的に小さい部分の全部又は一部に冷却用気体が流接することを防ぐことができるので、熱容量が相対的に大きい部分の違い等があっても、それら各部位の冷却速度差を小さくするとともに、残留応力を減少させられる。
この構成によれば、熱容量が相対的に小さい部分の全部又は一部に冷却用気体が流接することを防ぐことができるので、熱容量が相対的に大きい部分の違い等があっても、それら各部位の冷却速度差を小さくするとともに、残留応力を減少させられる。
本発明によれば、肉厚分布の違い等があっても、それら各部位の冷却速度差を小さくするとともに、残留応力を減少させることができる。
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1は、一例に係るシリンダヘッドの斜視図、図2は、図1に示すI‐I線に沿う断面図である。また、図3は、そのシリンダヘッドの鋳造に用いる中子を示す斜視図、図4は、鋳造装置の概略断面図である。
本発明の一例に係るシリンダヘッドAは、シリンダヘッド形状部(ヘッドボルト)10内にアッパーデッキ11を形成しているとともに、下部に湯口12,12を配設したものであり、例えばアルミ合金を材質として低圧鋳造法により平面視において略直方体形にして一体に鋳造されている。
シリンダヘッド形状部10は、両側壁13,14、前壁15及び後壁16により形成されており、そのうちの両側壁13,14には、気筒数に応じた吸気ポート(図示しない)と、これと同数の排気ポート18とが互いに対向して形成されている。なお、19はキャビティである。
上記アッパーデッキ11、前壁15、及び後壁16は比較的薄肉であり、熱容量が相対的に小さい部分である一方、湯口12、12、両側壁13,14を厚肉にして形成しているため熱容量が相対的に大きい。
また、燃焼室を有する下面もまた、肉厚ではないが、保持炉に近い下型で形成され、かつ、常に湯口からの熱供給を受けるため、熱容量が相対的に大きい部分である。
本実施形態においては、比較的容量の小さい部分を「a」、比較的容量の大きい部分を「b」とする。
また、燃焼室を有する下面もまた、肉厚ではないが、保持炉に近い下型で形成され、かつ、常に湯口からの熱供給を受けるため、熱容量が相対的に大きい部分である。
本実施形態においては、比較的容量の小さい部分を「a」、比較的容量の大きい部分を「b」とする。
上記の構成からなるシリンダヘッドAの鋳造に用いる中子20は、図3に示すように、ウォータージャケット中子21の両側辺縁にポート中子22,23を一体に列設したものである。
鋳造装置30は、図4に示すように、アルミ溶湯mを貯留する保持炉31の上部開口に、金型32を配設したものである。
金型32は、上記した二つのシリンダヘッドA,Aを同時に成形するためのものであり、下側金型33、上側金型34及びセンター型35とからなる。
下側金型33には、二つのシリンダヘッドA,Aに対する位置に湯口33a,33aが形成されている。
金型32は、上記した二つのシリンダヘッドA,Aを同時に成形するためのものであり、下側金型33、上側金型34及びセンター型35とからなる。
下側金型33には、二つのシリンダヘッドA,Aに対する位置に湯口33a,33aが形成されている。
図5は、シリンダヘッドに流接防止部材を装着した様子を示す斜視図である。
本発明に係るシリンダヘッドAの焼入れ方法は、上記したシリンダヘッドAに冷却用気体を流接させることにより焼き入れを行う内容のものであり、熱容量の小さい部分aの全部又は一部を、冷却用気体の流接を防ぐための流接防止部材40によって被覆しておき、熱容量の大きい部分bのみに冷却用気体を流接させることを特徴としたものである。
本発明に係るシリンダヘッドAの焼入れ方法は、上記したシリンダヘッドAに冷却用気体を流接させることにより焼き入れを行う内容のものであり、熱容量の小さい部分aの全部又は一部を、冷却用気体の流接を防ぐための流接防止部材40によって被覆しておき、熱容量の大きい部分bのみに冷却用気体を流接させることを特徴としたものである。
本実施形態において示す「冷却用気体」は空気であるが、その他アルゴン等を採用することができる。以下、「冷却用気体」として空気を例として説明する。
また、本実施形態における「流接」は、後述する冷却ノズル60〜62によって空気を各部分に吹き付けるものの他、例えば単一のファンによってシリンダヘッドA全体に空気を吹き付ける態様のものを含む。
また、本実施形態における「流接」は、後述する冷却ノズル60〜62によって空気を各部分に吹き付けるものの他、例えば単一のファンによってシリンダヘッドA全体に空気を吹き付ける態様のものを含む。
本実施形態において示す流接防止部材40は、上記熱容量の小さい部分aの全部又は一部に空気が流接することを防ぐためのものであり、中子材により形成している。
図5に示すように、互いに独立して形成したフロント被覆部材41、サイド被覆部材42,43、リア被覆部材44及び上記したアッパー被覆部材45からなり、そのうち、フロント被覆部材41とリア被覆部材44とは、上記した中子20と一体に形成されている。
図5に示すように、互いに独立して形成したフロント被覆部材41、サイド被覆部材42,43、リア被覆部材44及び上記したアッパー被覆部材45からなり、そのうち、フロント被覆部材41とリア被覆部材44とは、上記した中子20と一体に形成されている。
フロント被覆部材41は、上記した前壁15全面を被覆する形状,大きさに形成した中子である。
サイド被覆部材42,43は、前壁15,後壁16間に細長く延出した横長の中空体として形成したものであり、並列して突出形成されているポート中子22,23間に連成させたものである。
サイド被覆部材42,43は、前壁15,後壁16間に細長く延出した横長の中空体として形成したものであり、並列して突出形成されているポート中子22,23間に連成させたものである。
リア被覆部材44は、後壁16全面を被覆する形状,大きさに形成したものである。
アッパー被覆部材45は、アッパーデッキ11を被覆する大きさ,形状にした板状体である。
アッパー被覆部材45は、アッパーデッキ11を被覆する大きさ,形状にした板状体である。
次に、一例に係る焼入れ装置Bについて、上記した図5とともに図6を参照して説明する。図6は、一例に係る焼入れ装置の断面図である。
一例に係る焼入れ装置Bは、図6に示すように、冷却ブース本体50内に、複数の冷却ノズル60〜62と排気ファン65とを適宜配設したものである。
一例に係る焼入れ装置Bは、図6に示すように、冷却ブース本体50内に、複数の冷却ノズル60〜62と排気ファン65とを適宜配設したものである。
冷却ブース本体50は、上記した図5に示す流接防止部材40(41〜45)を装着したシリンダヘッドAを収容する容積に形成されており、平面視正方形にした底壁51の辺縁に側璧52〜55を立設するとともに、それら側璧52〜55(55は図示していない)上に上壁56を配設したものである。
上壁56の中央部分には、円筒形の排気筒57が突設されており、その排気筒57内に上記した排気ファン65が配設されている。
底壁51上には、流接防止部材40を装着した上記シリンダヘッドAを底壁51から離間させて載置するための載置台58が配設されている。
底壁51上には、流接防止部材40を装着した上記シリンダヘッドAを底壁51から離間させて載置するための載置台58が配設されている。
載置台58の下部には、これに載置されたシリンダヘッドAの湯口12,12に向けて空気を吹き付けるための冷却ノズル62が配置されている。
載置台58の側方には、これに載置されたシリンダヘッドAの側面に向けて空気を吹き付けるための冷却ノズル60,61が配置されている。
載置台58の側方には、これに載置されたシリンダヘッドAの側面に向けて空気を吹き付けるための冷却ノズル60,61が配置されている。
上記冷却ノズル60〜62には、それぞれ空気を送給するための空気送給装置70が送給パイプ70a〜70cを介して接続され、また、排気ファン65には、給電装置(図示しない)が接続されて適宜回転駆動されるようになっている。
また、空気送給装置70や排気ファン65は、図示しないコントローラの出力側に接続されて、適宜制御されるようになっている。
また、空気送給装置70や排気ファン65は、図示しないコントローラの出力側に接続されて、適宜制御されるようになっている。
上記の構成からなる焼入れ装置Bによれば、冷却ノズル60〜62から吹き出された空気は、熱容量の大きい部分bのみに吹き付けることができる一方、熱容量の小さい部分aは流接防止部材40によって被覆されているので、空気の流接を防ぐことができる。
また、シリンダヘッドAに流接した昇温した空気は、排気ファン65によって外部に排出され、冷却ブース本体B内の空気の温度上昇を防いでいる。
また、シリンダヘッドAに流接した昇温した空気は、排気ファン65によって外部に排出され、冷却ブース本体B内の空気の温度上昇を防いでいる。
図7(A)は、従来の焼入れ方法における代表部位の冷却速度を示すグラフ、(B)は、本発明に係る焼入れ方法における代表部位の冷却速度を示すグラフ、図8は、従来の焼入れ方法における残留応力と、本発明に係る焼入れ方法における残留応力とを比較して示すグラフである。
図7(A),(B)から明らかなように、(A)に示す従来の焼入れ方法における代表部位の冷却速度の差に比較して、本発明に係る焼入れ方法によれば、シリンダヘッドA各部の冷却速度差が小さくなっている。
また、図8から明らかなように、従来の焼入れ方法における残留応力に比較して、本発明に係る焼入れ方法によれば、残留応力が小さくなっていることを確認できた。
図7(A),(B)から明らかなように、(A)に示す従来の焼入れ方法における代表部位の冷却速度の差に比較して、本発明に係る焼入れ方法によれば、シリンダヘッドA各部の冷却速度差が小さくなっている。
また、図8から明らかなように、従来の焼入れ方法における残留応力に比較して、本発明に係る焼入れ方法によれば、残留応力が小さくなっていることを確認できた。
以上の構成からなるシリンダヘッドの焼入れ方法によれば、アッパーデッキ上面と、フロント面、リア面を砂型で成型することにより、空気が、肉薄部分に直接流接することがないようにしつつ、肉厚部分に空気を流接させることにより、肉厚分布の違い等があっても、それら各部分の冷却速度差を小さくするとともに、材料特性を維持しつつ残留応力を減少させることができる。
中子をカバー材として使用しない場合には、離型直後に、図9に示すカバー材を付けて焼き入れを行うことにより、中子をカバー材として使用するときに比較して、中子砂の使用量を減少させつつ、同様の残留応力低減効果を得ることができる。
次に、図9(A),(B)を参照して他例に係る流接防止部材について説明する。図9(A)は、他例に係る流接防止部材の外観斜視図、(B)は、その他例に係る流接防止部材をシリンダヘッドに装着した様子を示す外観斜視図である。
他例に係る流接防止部材80は、肉薄部分の全部又は一部に空気が流接することを防ぐためのものであり、それは、アッパー被覆部材81、サイド被覆部材83(一方は図示していない)、フロント被覆部材84及びリア被覆部材85を一体的に形成したものである。
アッパー被覆部材81は、上記したシリンダヘッドAのアッパーデッキ11全面を覆う面積にした平面視長方形のものである。
フロント被覆部材84は、上記したシリンダヘッドAの前壁15の全面に対向する面積にした正面視横長方形のものであり、これの上辺縁84aをアッパー板81の前辺縁81aに連結している。
フロント被覆部材84は、上記したシリンダヘッドAの前壁15の全面に対向する面積にした正面視横長方形のものであり、これの上辺縁84aをアッパー板81の前辺縁81aに連結している。
リア被覆部材85は、上記したシリンダヘッドAの後壁16の全面に対向する面積にした正面視横長方形のものであり、これの上辺縁85aをアッパー板81の後辺縁81bに連結している。
サイド被覆部材83は、上記したシリンダヘッドAのポートに対向被覆する面積にした側面視横長方形のものであり、これの前後辺縁83a,83bをフロント板84の側辺縁84bと、リア板85の側辺縁85bに架設している。なお、図示しないサイド板も同様に構成されている。
上記した他例に係る流接防止部材80によれば、上記した一例に係る流接防止部材40によって得られる効果に加え、砂落としの後に部品の溶接手直しを行った後や、上記した焼入れ装置Bのトラブルにより、再熱処理するときの焼入れ時に使用することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限るものではなく、次のような変形実施が可能である。
・上述した実施形態においては、熱容量の小さい部分の全部を、冷却用気体の流接を防ぐための流接防止部材によって被覆している例について説明したが、必要に応じてその一部だけを被覆する構成にしてもよいことは勿論である。
・上述した実施形態においては、熱容量の小さい部分の全部を、冷却用気体の流接を防ぐための流接防止部材によって被覆している例について説明したが、必要に応じてその一部だけを被覆する構成にしてもよいことは勿論である。
40,80 流接防止部材
A シリンダヘッド
a 熱容量の小さい部分
b 熱容量の大きい部分
A シリンダヘッド
a 熱容量の小さい部分
b 熱容量の大きい部分
Claims (5)
- 冷却用気体をシリンダヘッドに流接させることにより焼き入れを行うシリンダヘッドの焼入れ方法において、
上記シリンダヘッドの熱容量の大きさに応じて区分けをし、熱容量が相対的に小さい部分の全部又は一部を、冷却用気体の流接を防ぐための流接防止部材によって被覆しておき、熱容量が相対的に大きい部分に冷却用気体を流接させることを特徴とするシリンダヘッドの焼入れ方法。 - 熱容量が相対的に小さい部分は、アッパーデッキ、前壁及び後壁である請求項1に記載のシリンダヘッドの焼入れ方法。
- 熱容量が相対的に大きい部分は、湯口、燃焼室及び側壁である請求項1又は2に記載のシリンダヘッドの焼入れ方法。
- 上記冷却用気体による焼き入れを、金型から離型させた直後に行う請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリンダヘッドの焼入れ方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリンダヘッドの焼入れ方法に用いる流接防止部材であって、上記シリンダヘッドの熱容量が相対的に小さい部分の全部又は一部を被覆するための被覆部材を有することを特徴とするシリンダヘッドの焼入れ方法に用いる流接防止部材。
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2013
- 2013-08-08 WO PCT/JP2013/071470 patent/WO2014027599A1/ja active Application Filing
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