JP5891154B2 - 加熱調理器 - Google Patents

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Description

本発明は、炊飯工程の初期段階においてお米への吸水を促進し且つ炊きムラを抑えた炊飯ができる炊飯器等の加熱調理器に関する。
ご飯には、糖質、ミネラル、たんぱく質、食物繊維、脂質などが含まれおり、また低カロリーでもあることから、近年健康食として見直されてきている。そうしたなか、従来からおいしいご飯を炊くために様々な炊飯器が開発されている。
一般の炊飯器は、洗米後のお米を炊飯釜に入れ、所定量の水を加水して、炊飯器にセットした後、炊飯をスタートさせると、炊飯釜の温度を検知して加熱制御をしながら、お米に予め水分を吸水させるための吸水加熱工程および吸水工程、沸騰温度まで昇温加熱する沸騰加熱工程、水分を更に吸水させながらお米を充分にα化させる沸騰工程を経て最後に蒸らし工程を実行する。
また、一般の炊飯器は、近年の消費者の嗜好の多様化に伴って上記各工程の時間あるいは温度、または水加減を変えて、消費者の好みにあった炊飯米の硬さや粘りなどを炊き分けるシーケンスを備えている。
特許文献1(特開昭62−144606号公報)、特許文献2(特許第3121270号公報)、特許文献3(特開2011−183085号公報)には、炊飯釜内部にてお米を撹拌できる撹拌機構を設けて、炊飯中の均温化(温度ムラの防止)および炊飯時間の短縮ができる炊飯器が開示されている。
特開昭62−144606号公報 特許第3121270号公報公報 特開2011−183085号公報
ところで、通常の炊飯器では、炊飯釜内部のお米の温度は、釜を横からみた上-下、釜を上からみた中-外で温度差が生じる。
この温度差を抑えるためには、加熱時の昇温を緩やかにするか、昇温加熱と共に内部を直接撹拌する必要がある。
特許文献1、特許文献2、特許文献3では、炊飯釜内部に設けた撹拌機構の駆動により、炊飯中の均温化および炊飯時間の短縮ができるものの、撹拌機構の具体的な運転動作については言及されていない。
また、お米と水の量によって、撹拌用モータに加わる電気的負荷が異なるため、例えば、撹拌用モータをPWM(パルス幅変調)方式で制御する場合、同一の回転速度(同一の分あたりの回転数:rpm)で駆動する際のパルス波のデュティ比も異なる。更に、負荷が判らない状態でスタート時から直ぐに目標回転速度になるようにフィードバック制御すると、目標回転速度に対して回転数が高くなったり低くなったりする所謂ハンチング現象が生じる。その結果、回転速度が高くなりすぎると、お米の表面を傷つけたり、米を割ったりするという問題が発生することが発明者等の調査により判かった。
そこで、本発明の課題は、攪拌によって炊飯釜内のお米の温度ムラを防止できる上に、お米と水の量に関わらず、攪拌機構を駆動するモータのハンチングを防止して、お米への過剰な負荷によるお米の割れ、傷つけ等の損傷を抑制できる加熱調理器を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の加熱調理器は、
米と水を含む被加熱物を収容する炊飯釜と、
上記炊飯釜内の被加熱物を撹拌する撹拌機構と、
上記被加熱物を攪拌するために上記攪拌機構を駆動するモータと、
上記炊飯釜を加熱する加熱部と、
上記被加熱物の温度を検出する温度センサと、
上記温度センサの出力に基づいて、上記被加熱物の温度が所定の温度になるように、加熱部を制御する加熱制御部と、
上記被加熱物を常温から所定温度まで昇温加熱する吸水加熱工程や上記被加熱物を上記所定温度に維持する吸水工程において、上記モータを間欠的な駆動期間において速度制御する速度制御部と
を備え、
上記速度制御部は、
ある駆動期間中の最終段階で上記モータを駆動する電気特性値をメモリに記憶させると共に、次の駆動期間において、上記メモリに記憶された電気特性値でモータを駆動するように電気特性値を設定する駆動期間電気特性値設定手段を
有することを特徴としている。
上記構成の加熱調理器によれば、上記速度制御部によって、米と水を常温から所定温度まで昇温加熱する吸水加熱工程や上記被加熱物を上記所定温度に維持する吸水工程において、上記モータを、間欠的な駆動期間において駆動するから、攪拌によって炊飯釜内のお米の温度ムラを防止できて、炊飯時間の短縮ができる。特に、モータ、ひいては、攪拌機構の駆動期間が間欠的であるから、米の過度な糊化を防止できる。もし、攪拌機構を吸水加熱工程や吸水工程において、連続的に駆動すると、米の過度な糊化の虞が生じるのである。
一方、上記駆動期間電気特性値設定手段は、ある駆動期間中の最終段階で上記モータを駆動する電気特性値をメモリに記憶させると共に、次の駆動期間において、上記メモリに記憶された電気特性値でモータを駆動する。ここで、電気特性値とは、PWM制御のデュティ比、電圧制御の電圧値、電流制御の電流値等である。
このように、ある駆動期間中の最終段階でモータを駆動する電気特性値をメモリに記憶させ、この記憶された電気特性値を、次の駆動期間においてモータを駆動する電気特性値として設定するから、炊飯釜内のお米と水の量に関わらず、つまり、モータの負荷の大小に関わらず、履歴を考慮して、最適な電気特性値を設定でき、したがって、モータの回転速度のオーバーシュートを小さくして、米の割れ、表面の傷つきを防止できる。
1実施形態では、
上記モータの回転速度を検出する回転速度センサと、
上記回転速度センサの出力に基づいて、上記モータの回転速度が予め定められた目標回転速度になるように、電気特性値を制御するフィードバック制御手段と
を備える。
上記実施形態によれば、上記フィードバック制御手段と駆動期間電気特性値設定手段とを併用して、ある駆動期間中にモータの回転速度が予め定められた目標回転速度になるように制御しつつ、ある駆動期間中の最終段階でモータを駆動する電気特性値をメモリに記憶し、次の駆動期間において、ある駆動期間中の最終段階でモータを駆動する電気特性値(フィードバック制御の影響をうけて、より最適な値になっている。)をメモリから読み出して、次の駆動期間の電気特性値として設定するので、次の駆動期間において、炊飯釜内のお米と水の量および状態、つまり、モータの負荷に応じた最適な電気特性値でモータを駆動することができる。
したがって、モータの回転速度のオーバーシュートを小さくして、米の割れ、表面の傷つきを防止できる。
1実施形態では、
上記次の駆動期間中の最初に、上記駆動期間電気特性値設定手段で設定された電気特性値になるまで、電気特性値を漸増させる電気特性値漸増手段を備える。
上記実施形態によれば、上記電気特性値漸増手段によって、上記次の駆動期間中の最初に、上記駆動期間電気特性値設定手段で設定された電気特性値になるまで、電気特性値を徐々に増大させるので、オーバーシュートがより小さくなって、米の割れ、損傷を少なくすることができる。
1実施形態では、
初回の駆動期間において、上記モータの回転速度が目標回転速度になるまで、電気特性値を零から緩やかに増大させる初回電気特性値緩増加手段を備える。
上記実施形態によれば、上記初回電気特性値緩増加手段によって、初回の駆動期間において、モータの回転速度が目標回転速度になるまで、電気特性値を零から緩やかに増大させる。このように、モータの回転速度が目標回転速度になるまで、電気特性値を零から緩やかに増大させるから、初回の駆動期間の立ち上げ運転においてオーバーシュートが生じなくて、米の割れ、損傷を防止できる。
尚、上述の「緩やか」とは、目標回転速度になったときに、回転速度の増大を停止したときに、実質的に、オーバーシュートが生じない程度の小さな増加勾配を意味する。
この初回電気特性値緩増加手段で初回の駆動期間の電気特性値が決定されると、次の駆動期間においても、この電気特性値を設定することが可能である。
より具体的には、最初の1回目、つまり、初回の駆動期間において、上記モータの回転速度に応じて定まる攪拌機構の回転数/分を0rpmよりスタートし、目標回転速度に達するまで回転速度を緩やかに増加し、目標回転速度に達した際のモータの電気特性値をメモリに記憶する。そして、それに続く駆動期間においては、つまり、2回目以降の駆動期間の動作としては、スタート直後より1回目の動作で記憶した電気特性値にてモータを駆動することが可能である。
したがって、フィードバック制御手段を用いないことも可能である。
尤も、この初回電気特性値緩増加手段とフィードバック制御手段を併用すると、より最適に、電気特性値を設定することができる。
1実施形態では、
駆動期間中の最後に、上記モータの回転速度を漸減させる回転速度漸減手段を備える。
上記実施形態によれば、駆動期間中の最後に、上記モータの回転速度が徐々に小さくなるから、米と攪拌機構との相対速度が小さくなって、米の割れ、損傷を少なくすることができる。
上記モータの回転速度が漸減する、つまり、徐々に小さくなるように制御する仕方は、電気特性値を徐々に小さくしてもよく、あるいは、駆動期間の終了前にモータへの電力の供給をオフにして、攪拌機構、モータを慣性で動かして自然に停止させるようにしてもよい。
本発明の加熱調理器によれば、駆動期間電気特性値設定手段によって、ある駆動期間中の最終段階でモータを駆動する電気特性値をメモリに記憶させ、この記憶された電気特性値を、次の駆動期間においてモータを駆動する電気特性値として設定するから、炊飯釜内のお米と水の量に応じた、つまり、モータの負荷に応じた最適な電気特性値でモータを駆動できて、モータの回転速度のオーバーシュートを小さくして、米の割れ、表面の傷付けを防止できる。
本発明の加熱調理器の1実施形態の炊飯器の概略構成図である。 上記実施形態の炊飯器の制御装置のブロック図である。 上記実施形態の炊飯器の各工程と温度履歴を示す図である。 上記実施形態の炊飯器の攪拌機構の回転体と攪拌翼の動作と温度履歴を示す図である。 上記実施形態の吸水加熱工程における攪拌翼の回転速度を示す図である。 上記実施形態の吸水加熱工程におけるモータへの入力電圧のデュティ比を示す図である。 比較例の吸水加熱工程における攪拌翼の回転速度を示す図である。 比較例の吸水加熱工程におけるモータへの入力電圧のデュティ比を示す図である。 他の実施形態の炊飯器の速度制御部のブロック図である。 上記他の実施形態の吸水加熱工程における攪拌翼の回転速度を示す図である。
以下、本発明を図示の実施形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施形態の炊飯器の概略構成図である。
図1に示すように、この炊飯器は、開口を有する本体1と、本体1に収納される炊飯釜2と、図示しない枢軸(ヒンジ軸)およびラッチの機構により開閉できるよう本体1に接続された蓋3とを備える。当該蓋3には、内蓋4が設けられており、更に内蓋4の内部には蓋ヒータ5、蓋温度センサ6が設けられている。当該内蓋4には、その内蓋4および蓋ヒータ5を非接触にて貫通する回転軸7、その回転軸7と同期して回転可能な回転体8が設けられている。上記回転体8には、その回転体8に対して起立(展開)および倒伏する攪拌翼9,9が設けられている。上記回転軸7は蓋3の内部にある図1では示されていなモータと連結されて、回転体8、ひいては、攪拌翼9,9が回転駆動可能に構成されている。
上記攪拌翼9,9は、回転軸7からの回転力を、図示しない傘歯車を含む歯車機構を介して伝えられて、回転軸7の正転および逆転に応じて、起立(展開)および倒伏(収納)するようになっている。上記攪拌翼9,9は、回転体8から起立、つまり、展開した状態で回転体8と連動して回転することにより、攪拌翼9,9によって炊飯釜2に収容された水と米が撹拌されるようになっている。
上記歯車機構の詳細は、本件発明の要旨ではなく、また、特開2012−135605号公報等で周知なので、詳細な説明は省略する。
上記回転体8、歯車機構および攪拌翼9,9は、攪拌機構20の一例を構成する。尤も、攪拌機構は、炊飯釜2内の米および水を攪拌できるものならばどのようなものであってもよく、例えば、特許文献1〜3に記載の攪拌機構であってもよい。
上記蓋3の筐体には、炊飯中に炊飯釜2内に発生する水蒸気を外部に逃すための蒸気口13、炊飯器の動作状態を指す情報の表示およびユーザの命令を受付ける操作部14が設けられており、内蓋4には、蓋3が閉じられたとき、本体1に収納された炊飯釜2と密着するパッキン15が設けられている。
上記本体1の内部には、炊飯釜2の収容部を構成する外鍋10、炊飯釜2に収容された被加熱物、つまり、調理物を加熱および保温するための加熱部の一例としてのヒータ11、炊飯釜2の温度を検出する温度センサ12が配置されている。炊飯器の動作を制御する制御装置30(図2参照)は、蓋3または本体1に配置される。
上記温度センサ12は、図1に示すように、炊飯釜2の底部温度を計測可能に設置され、炊飯釜2に収容された被加熱物(米、水)の温度が温度センサ12によって計測されるようになっている。この実施形態では、炊飯釜2の釜底の壁面温度が、炊飯釜2に収容された被加熱物の温度に略等しいことが確認されている。
操作部14は、蓋3の筐体表面において一体的に設けられている。尚、操作部14の取り付け位置は、ユーザが表示情報を視認可能であり、またボタン操作などの操作が可能な位置であれば、本実施形態に限定されないことは勿論である。
炊飯器は、図示しない電源コードを介して商用電源に接続されるようになっている。そして、商用電源からの供給電力を、図示しない電源部を介して各部に供給するようになっている。
尚、加熱・保温用の熱源としてのヒータ11は、ニクロム線ヒータ等の抵抗体ヒータの他に、IH(Induction Heating:電磁誘導加熱)ヒータで構成してもよく、特にこれらに限定されるものではない。
尚、炊飯釜2に収容された米の重量の判定手段は、たとえば、別途設置した重量センサにより計測しても良く、または、攪拌翼8を回転させるモータ21(図2を参照。)の負荷に基づき検出しても良く、炊飯釜2内の水位を検出するセンサの検出結果に基づき米の重量を検出するようにしてもよく、または、ユーザが操作部14から米の量を入力するとしてもよく、特にこれらに限定されるものではない。
上記操作部14のボタン操作などによって、炊飯コースが選択決定される。上記制御装置30は、選択決定された炊飯コースに対応する制御プログラムに従って、温度センサ12の信号に基づいてヒータ11の制御をし、攪拌翼9の倒伏および起立の制御をし、回転体の回転速度および駆動時間の制御と行う。
図2は、上記制御装置30のブロック図である。
この制御装置30は、例えば、マイクロコンピュータからなり、ヒータ11を制御する加熱制御部31と、モータ21の間欠的な駆動期間を決定する間欠駆動期間決定部32と、メモリ33と、モータの21の速度制御を行う速度制御部40とを有する。上記加熱制御部31、間欠駆動期間決定部32および速度制御部40は、ソフトウェアによって構成されている。
上記加熱制御部31は、操作部14のボタン操作などによって決定された炊飯コースの制御プログラムに従って、温度センサ12の検出温度が目標温度となるように、ヒータ11を制御して、その検出温度が時間経過と共に図3A,3Bに示す温度になるように制御する。
上記間欠駆動期間決定部32は、攪拌機構20を駆動する間欠的な駆動期間、つまり、モータ21を駆動する間欠的な駆動期間を、予め定められたプログラムに従って、タイマーの出力を計数して、図4Aに示すように、定める。すなわち、モータ21を5秒駆動し、10秒休止し、5秒駆動し、10秒休止…を繰り返すように、間欠的な5秒の駆動期間を決定する。
上記速度制御部40は、初回電気特性値緩増加手段の一例としての初回デュティ比緩増加手段41と、駆動期間電気特性値設定手段の一例としての駆動期間デュティ比設定手段42と、フィードバック制御手段43とを有する。上記初回デュティ比緩増加手段41、駆動期間デュティ比設定手段42およびフィードバック制御手段43は、ソフトウェアによって構成されている。
上記初回デュティ比緩増加手段41は、初回の駆動期間において、モータ21、ひいては、回転体8および攪拌翼9の速度が予め定められた目標回転速度になるまで、図4Bに示すように、電気特性値の一例としてのデュティ比を零から緩やかに増大させる。そして、上記初回デュティ比緩増加手段41は、モータ21の回転速度が目標回転速度に到達するとデュティ比の増大を停止し、そのデュティ比を維持する。上記モータ21、ひいては、回転体8および攪拌翼9の回転速度は、回転速度センサ25によって検出されて、この回転速度センサ25で検出された回転速度が目標回転速度に到達したか否か、初回デュティ比緩増加手段41にて判別される。上記初回デュティ比緩増加手段41は、図4Bに示すように緩やかに増加するデュティ比を表す信号をPWM回路22に出力して、モータ21を駆動して、図4Aに示すように、1回目の駆動の立ち上げにおいて、回転体8の回転数(rpm)を緩やかに増大する。
ここで「緩やか」とは、目標回転速度になったとき、回転速度の増大を停止したときに、実質的に、オーバーシュートが生じない程度の増加勾配を意味する。
上記駆動期間デュティ比設定手段42は、ある駆動期間中の最終段階のデュティ比(図4BのDTを参照)をメモリ33に記憶させると共に、次の駆動期間において、上記メモリ33に記憶されたデュティ比DTを、モータ2を駆動するデュティ比として設定する。換言すると、前回の駆動期間の終了直前のモータ21が目標回転速度に実際になっている状態、あるいは、目標回転速度になっていると想定される状態のデュティ比DTをメモリ33に記憶し、次回の駆動期間では、この記憶したデュティ比DTでモータ21の駆動を開始する。こうすることによって、炊飯釜2内のお米と水の量に応じて、つまり、モータ21の負荷の大小に応じて、履歴を考慮した最適なデュティ比が設定されて、次の駆動期間の駆動が開始されることになる。したがって、モータ21の回転速度のオーバーシュートが小さくなる。
上記フィードバック制御手段43は、予め定められたモータ21の目標回転速度と、回転速度センサ25からの検出回転速度との偏差を求め、この偏差に例えばPID(比例微分積分)演算を行って、モータ21の回転速度が目標回転速度になるための操作量としてのデュティ比を求めて、PWM回路22に出力する。
上記構成の炊飯器は次のように動作する。
図3Aおよび3Bは、本実施形態における炊飯の各工程を説明する図である。
図3Aにおいて、縦軸は水温を示し、横軸は炊飯開始からの経過時間を示している。図3Bは、各工程における撹拌翼9の状態および回転体8の動作状態が示されている。炊飯釜2内の米および水は、制御装置30の加熱制御部31によって、温度センサ12の出力を基に、図3Aおよび3Bに示されている温度に制御される。尚、図3Aおよび3Bは、5.5合(米の1合は150グラム)炊きの炊飯器において、炊飯釜2に3合の白米を収容して炊飯した場合を示している。
この実施形態では、炊飯開始と共に回転体8から撹拌翼9,9を展開(起立)して回転させ、炊飯釜2に収容した水および米を攪拌翼9,9で撹拌しながら、ヒータ12により加熱する吸水加熱工程を行い、温度センサ12が54〜66℃の温度範囲内で設定された温度に達すると、同様に炊飯釜2に収容した水および米を撹拌しながら、温度センサ12の温度が設定温度に保持されるようにヒータ12による加熱を制御する吸水工程を行う。その後、撹拌翼9,9を回転体8に収納(倒伏)して温度センサ12が95℃になるまでヒータ12により加熱する沸騰加熱工程を経て、撹拌翼9を収納した状態で回転体8を回転させながらヒータ12による加熱を継続する沸騰工程を行う。最後に、蒸らし工程を行って、炊飯を完結させるようになっている。
上記吸水加熱工程および吸水工程では、炊飯釜2内の米および水を攪拌翼9で撹拌しながら、ヒータ12で加熱することによって、お米のデンプン質を糊化させるために、米の芯にまで充分水を吸わせるようになっている。お米に水と熱を加えることにより、生デンプンの形が変化し、消化されやすいアルファ(α)化デンプンになる。この生デンプンからアルファ化デンプンへの変化を糊化と呼ぶ。また、水と熱に加えて糖化酵素により、デンプンが加水分解され甘味成分であるグルコースが生成される。
上記糖化酵素の至適温度は約60℃であるが、糊化温度はうるち米で約60〜64℃、もち米では約55〜60℃である。
糊化が開始すると、米のデンプンに水と熱を加えると糊状に変化する現象が見られ、米粒表面は徐々に粘りをもったやわらかいデンプンに変化する。そのため擦り合わせを続けると糊のような固形分が多く溶出され、その溶出固形分量が過度に多いと焦げが生じる。また、保温後の黄変はグルコースとアミノ酸のメイラード反応により生じる。
したがって、過剰な固形分の溶出およびグルコースの生成を避けるために、吸水工程の温度は64℃以下が好ましい。
先ず、吸水加熱工程における回転体8つまり攪拌翼9の回転数(rpm)を図4Aに、撹拌用のモータ21へのPWM回路22からの入力電圧のデュティ比を図4Bに示す。図4Aに示すように、炊飯スタート後、1回目の駆動期間(5秒間)の攪拌翼9の回転数が0rpmから緩やかに、つまり速度零から徐々に高くなるように、速度制御部40の初回デュティ緩増加手段41によって、図4Bに示すように、モータ21への入力電圧のデューティ比を0%から徐々に大きくする。そして、回転速度センサ25の出力を参照して、予め定められた目標回転数(150rpm)に達すると、そのときのデュティ比DTを維持してその回転速度を維持する。
このように、攪拌用のモータ21の回転速度が目標回転速度(150rpm)になるまで、デュティ比を零から緩やかに増大させるから、初回の駆動期間(5秒)の立ち上げ運転においてオーバーシュートが生じなくて、米の割れ、損傷を防止できる。
尚、ここで「緩やか」とは、目標回転速度(150rpm)になったとき、回転速度の増大を停止したときに、実質的に、殆どオーバーシュートが生じない程度の増加勾配を意味する。この実施形態では、一例として、図4Bに示すように、デュティ比60%/4秒の増加勾配である。
一方、上記駆動期間デュティ比設定手段42は、図4Aに示す1回目の駆動期間(0〜5秒)中の最終段階のデュティ比(図4BのDT)をメモリ33に記憶させると共に、1回目の駆動期間に続く次の駆動期間(15〜20秒)において、上記メモリ33に記憶されたデュティ比DTを読み出して、このデュティ比DTでモータ2の駆動を開始する。
このように、上記駆動期間デュティ比設定手段42によって、前回の駆動期間の終了直前のモータ21が目標回転速度に実際になっている状態、あるいは、目標回転速度になっていると想定される状態のデュティ比DTをメモリ33に記憶し、次回の駆動期間では、この記憶したデュティ比DTでモータ21の駆動を開始するから、炊飯釜2内のお米と水の量に応じて、つまり、モータ21の負荷の大小に応じて、履歴を考慮して、最適なデュティ比DTが設定されることになって、このデュティ比DTでモータ21の駆動が開始されることになる。したがって、モータ21の回転速度のオーバーシュートが無くなるか、小さくなる。
また、上記フィードバック制御手段43は、上記デュティ比DTでモータ21の駆動が開始された後、攪拌翼9の目標回転速度(150rpm)と、回転速度センサ25で出力に基づく攪拌翼9の検出回転速度との偏差を求め、この偏差に例えばPID(比例微分積分)演算等を行って、攪拌翼9の回転速度が目標回転速度になるための操作量としてのデュティ比を求めて、この求めたデュティ比で、モータ21を駆動する。
このように、2回目に駆動期間において、駆動期間デュティ比設定手段42によって設定されたデュティ比DTでモータ21の駆動を開始した後、フィードバック制御手段43によって、攪拌翼9が目標回転速度で回転するように制御しているので、外乱の影響を軽減して、オーバーシュートが小さい状態で、攪拌翼9をより正確に目標回転速度で回転させることができる。
したがって、モータ21、ひいては、攪拌翼9の回転速度のオーバーシュートを小さくして、米の割れ、表面の傷つきを防止できて、外観の劣化を防止できる。
また、上記フィードバック制御手段43がモータ21の回転速度をフィードバック制御しているから、先行する駆動期間のデュティ比は、攪拌翼9が目標回転速度になるためにより正確な値になっているから、駆動期間デュティ比設定手段42は、先行する駆動期間におけるより適切なデュティ比をメモリ33に記憶して、次の駆動期間において、このより適切なデュティ比で、モータ21の駆動を開始することができる。
したがって、攪拌翼9の回転速度のオーバーシュートを小さくして、米の割れ、表面の傷つきを防止できる。
3回目の駆動期間については、2回目の駆動期間中の最終段階のデュティ比で駆動を開始し、4回目の駆動期間については、3回目の駆動期間中の最終段階のデュティ比で駆動を開始する。以下、同様である。
また、吸水工程以降の攪拌機構20によるお米の撹拌動作において、設定回転数が吸水加熱工程と同じである場合は、吸水加熱工程における2回目以降の動作と同じ制御を行う。一方、設定回転数が異なる場合は、吸水加熱工程の1回目と同様な制御を行い、同様に2回目以降の動作に反映させる制御を行う。
尚、図示していないが、本実施形態では、図4Aに示すように、吸水加熱工程におけるモータ21のON/OFF時間は5/10秒、吸水工程のON/OFF時間は2/120秒、吸水加熱工程および吸水工程におけるモータ21のPWM周波数は20kHzであり、何れも設定回転数は同じ150rpmで行った。各値は撹拌翼や炊飯釜などの形状、撹拌モータの仕様によって異なるものであり限定するものではない。
図5Aおよび5Bは、比較例の動作を説明するグラフであり、攪拌翼が目標回転速度になるように、モータのフィードバック制御のみを行うものである。
この比較例のフィードバック制御によると、目標回転速度と実際の回転速度との偏差に基づいて制御するため、図5Aに示すように、攪拌翼は相当に大きなハンチングを起こし、それに応じて、デュティ比も図5Bに示すように変動することになる。
このため、オーバーシュートにより、モータ21(攪拌翼9)が目標回転速度(設定回転速度)を著しく超過すると、お米に過剰な負荷が加わって、お米が割れたり、米の表面が傷ついたりするという問題が発生する。
これに対して、本実施形態によれば、攪拌翼9が設定回転速度を超過することが殆どないため、お米を適正に撹拌しながら、糖化酵素の至適温度である約60℃前後まで速やかに且つお米の温度ムラを抑えて加熱することが可能である。
上記実施形態では、初回デュティ緩増加手段41および駆動期間デュティ比設定手段42と、フィードバック制御手段43とを併せて用いていたが、外乱が少ない場合には、フィードバック制御手段43を除去して、初回デュティ緩増加手段41と駆動期間デュティ比設定手段42のみを用いても、モータ21の回転速度を正確に制御することが可能である。また、初回デュティ緩増加手段41を除去して、フィードバック制御手段43と駆動期間デュティ比設定手段42とを用いても、相当に正確にモータ21の回転速度を制御することができる。
尤も、初回デュティ緩増加手段41および駆動期間デュティ比設定手段42と、フィードバック制御手段43を併用すると、オーバーシュートがなく、外乱に強く安定にかつ正確に設定速度になるように、デュティ比を設定することができる。
図6は他の実施形態の炊飯器の要部を示すブロック図である。
この図6の実施形態は、速度制御部45以外の構成要素は、図2の実施形態の構成要素と同じであるので、それらについては図2を援用し、その説明は、省略する。
図6の速度制御部45は、電気特性値漸増手段の一例としてのデュティ比漸増手段46と、回転速度漸減手段47とを有する点のみが、図2に示す速度制御部40と異なる。したがって、初回デュティ比緩増加手段41、駆動期間デュティ比設定手段42およびフィードバック制御手段43については、図2の実施形態と同じ参照番号を付して、その説明は省略する。
上記デュティ比漸増手段44は、ソフトウェアによって構成されており、次の駆動期間中の最初、例えば、図7に示す2回目の駆動期間の最初において、駆動期間デュティ比設定手段42で設定されたデュティ比になるまで、直線GUで示されるように、デュティ比を徐々に増大、つまり、漸増させる。上記デュティ比漸増手段44は、メモリ33に予め記憶させていた直線GUを表すデータを読み出してデュティ比を求めてもよく、あるいは、直線GUを表す算式でデュティ比を求めるようにしてもよい。
このように、上記デュティ比漸増手段44によって、デュティ比の立ち上がり時に、図7の直線GUに示すように緩やかになるので、オーバーシュートがより小さくなり、また、攪拌翼9と米との相対速度が小さくなって、米の割れ、損傷を少なくすることができる。
また、上記回転速度漸減手段を47は、図7の直線GDに示すように、5秒間の駆動期間中の最後に、回転速度を漸減するので、攪拌翼9と米との相対速度がより小さくなって、米の割れ、損傷を少なくすることができる。
上記回転速度漸減手段47は、ソフトウェアにより構成して、メモリ33に予め記憶させていた直線GDを表すデータを読み出してデュティ比を求めてもよく、あるいは、直線GDを表す算式でデュティ比を求めるようにしてもよい。また、上記回転速度漸減手段は、駆動期間の最後の少し前の時点で、モータ21への電力を供給を停止して、回転体8および攪拌翼9を慣性で回転させて、徐々に速度を落として、停止させるものであってもよい。
上記実施形態では、電気特性値の一例としてデュティ比を述べたが、電気特性値は、電圧値、電流値であってもよい。
また、上記実施形態では、攪拌機構20に、吸水加熱工程および吸水工程において間欠的に攪拌動作をさせているが、吸水加熱工程および吸水工程のいずれか一方において、攪拌機構20に間欠的に攪拌動作をさせてもよい。
また、上記実施形態では、加熱調理器の一例としての炊飯器を説明したが、加熱調理器は、レンジであっても、オーブンであってよい。加熱調理器は、米を調理できるものならば、どのようなものであってもよい。
1 本体
2 炊飯釜
3 蓋
4 内蓋
8 回転体
9 撹拌翼
10 内鍋
11 ヒータ
12 温度センサ
21 モータ
22 PWM回路
30 制御装置
40、45 速度制御部
33 メモリ
41 初回デュティ比緩増加手段
42 駆動期間デュティ比設定手段
43 フィードバック制御手段
46 デュティ比漸増手段
47 回転速度漸減手段

Claims (5)

  1. 米と水を含む被加熱物を収容する炊飯釜と、
    上記炊飯釜内の被加熱物を撹拌する撹拌機構と、
    上記被加熱物を攪拌するために上記攪拌機構を駆動するモータと、
    上記炊飯釜を加熱する加熱部と、
    上記被加熱物の温度を検出する温度センサと、
    上記温度センサの出力に基づいて、上記被加熱物の温度が所定の温度になるように、加熱部を制御する加熱制御部と、
    上記被加熱物を常温から所定温度まで昇温加熱する吸水加熱工程や上記被加熱物を上記所定温度に維持する吸水工程において、上記モータを間欠的な駆動期間において速度制御する速度制御部と
    を備え、
    上記速度制御部は、
    ある駆動期間中の最終段階で上記モータを駆動する電気特性値をメモリに記憶させると共に、次の駆動期間において、上記メモリに記憶された電気特性値でモータを駆動するように電気特性値を設定する駆動期間電気特性値設定手段を
    有することを特徴とする加熱調理器。
  2. 請求項1に記載の加熱調理器において、
    上記モータの回転速度を検出する回転速度センサと、
    上記回転速度センサの出力に基づいて、上記モータの回転速度が予め定められた目標回転速度になるように電気特性値を制御するフィードバック制御手段と
    を備えることを特徴とする加熱調理器。
  3. 請求項1または2に記載の加熱調理器において、
    上記次の駆動期間中の最初に、上記駆動期間電気特性値設定手段で設定された電気特性値になるまで、電気特性値を漸増させる電気特性値漸増手段を備えることを特徴とする加熱調理器。
  4. 請求項1から3のいずれか1つに記載の加熱調理器において、
    初回の駆動期間において、上記モータの回転速度が目標回転速度になるまで、電気特性値を零から緩やかに増大させる初回電気特性値緩増加手段を備えることを特徴とする加熱調理器。
  5. 請求項1から4のいずれか1つに記載の加熱調理器において、
    駆動期間中の最後に、上記モータの回転速度を漸減させる回転速度漸減手段を備えることを特徴とする加熱調理器。
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