JP5887395B2 - 浴室用防カビ燻煙剤組成物および浴室用防カビ燻煙装置 - Google Patents
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Description
燻煙剤としては、従来はゴキブリ等の害虫を防除対象とするものが主であったが、近年、カビ等の微生物を対象としたものも提案されている。たとえば特許文献1には、有効成分としてイソプロピルメチルフェノール(IPMP)および3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート(IPBC)、発熱性基剤としてアゾジカルボンアミドを用いた燻煙剤組成物が提案されている。
しかし本発明者らの検討によれば、このような燻煙剤組成物は、保存時に、特に保存環境が高温(たとえば40℃前後)になる場合に、有効成分の揮散率が低下しやすい問題がある。
本発明は、上記知見に基づくものであり、以下の態様を有する。
前記(C)に対する前記(D)の質量比(D/C)が0.03〜1.0であることを特徴とする浴室用防カビ燻煙剤組成物。
[2]前記(D)がジプロピレングリコールである、[1]記載の浴室用防カビ燻煙剤組成物。
[3][1]または[2]に記載の浴室用防カビ燻煙剤組成物が収容され、前記燻煙剤組成物を加熱する加熱手段を備える浴室用防カビ燻煙装置。
本発明の燻煙剤組成物は、下記(A)〜(D)成分を含有する。
(A)成分:イソプロピルメチルフェノール(IPMP)および3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート(IPBC)のいずれか一方または両方。
(B)成分:アゾジカルボンアミド(ADCA)。
(C)成分:吸油量が20〜60mL/100gである吸油性無機粉体。
(D)成分:沸点180℃以上の溶剤。
(A)成分は、燻煙剤組成物の有効成分であり、抗菌、殺菌等の微生物制御効果を奏する。
燻煙剤組成物に含まれる(A)成分は、IPMPおよびIPBCのいずれか一方でも両方でもよい。微生物の防除効果に優れる点で、IPMPおよびIPBCの両方を含むことが好ましい。
燻煙剤組成物中、(A)成分の含有量は、燻煙剤組成物の総質量に対し、1〜30質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、10〜20質量%がさらに好ましい。(A)成分の含有量が1質量%以上であると、カビ等の微生物に対する防除効果が良好である。(A)成分の含有量が30質量%を超えても防除効果が飽和しコストが増大するほか、相対的に他の成分の含有量が少なくなり、有効成分の揮散率が低下したり、保存による揮散率の低下を充分に抑制できなくなるおそれがある。
(B)成分は、発熱性基剤として機能する成分であり、加熱により分解して多量の熱を発生するとともにガスを発生し、(A)成分を噴出・拡散させる効果を奏する。
燻煙剤組成物中、(B)成分の含有量は、燻煙剤組成物の総質量に対し、50〜80質量%が好ましく、60〜80質量%がより好ましい。(B)成分の含有量が50質量%以上であると、(A)成分が効率よく揮散し、揮散率が向上する。(B)成分の含有量が80質量%を超えると、反応後の残渣による粉の散らかりが多くなり、室内が汚染しやすくなるおそれがある。
(C)成分は、(D)成分とともに、保存による(A)成分の揮散率の低下を抑制する効果(以下、単に「揮散率低下抑制効果」ともいう。)を奏する。
(C)成分の吸油量は、20〜60mL/100gであり、30〜50mL/100gが好ましい。吸油量が前記範囲内であると、燻煙剤組成物の保存による揮散率の低下抑制することができる。
前記吸油量は、JIS K5101−13−2に規定される煮あまに油法に準じて測定される値である。
燻煙剤組成物に含まれる(C)成分は1種でも2種以上でもよい。
(D)成分は、(C)成分とともに、(A)成分の揮散率低下抑制効果を奏する。
(D)成分の沸点は180℃以上であり、180〜300℃が好ましく、200〜280℃がより好ましい。(D)成分の沸点が180℃以上であることにより、(A)成分の揮散率低下抑制効果が得られる。揮散率低下抑制効果の点では沸点の上限に特に限定はないが、300℃以下であると、(A)成分の揮散率が良好である。
燻煙剤組成物に含まれる(D)成分は1種でも2種以上でもよい。
(C)成分と(D)成分とを特定の質量比(D/C=0.03〜1.0)で含有させることにより、保存による(A)成分の揮散率低下を抑制できる。
その理由として、以下のことが考えられる。
燻煙剤組成物は通常、粉状、粒状、錠剤等の固形製剤として使用されるが、(C)成分を配合すると、配合しない場合に比べて、保存時、特に高温条件下での保存(高温保存)時に、固形製剤が崩壊しやすくなる。固形製剤が崩壊すると、燻煙性能が低下し、揮散率の低下を招く結果となる。本発明では、(C)成分とともに(D)成分を配合することで、保存時の固形製剤の崩壊が抑制され、保存後も安定的な燻煙性能が発揮される。
一方、溶剤を配合しても沸点が180℃未満では、保存時に揮発して固形製剤中に残り難く、添加効果が充分に発揮されない。
(D)成分を配合しても、D/Cが0.03未満であると、(C)成分に対して(D)成分が均一に馴染まず、(D)成分の配合効果が充分に発揮されないおそれがある。また、(D)成分を配合しても、D/Cが1.0を超えると、(C)成分に上手く馴染まない(D)成分が必要以上に残り、該(D)成分によって(B)成分に対する熱の伝わりが緩慢になり、(A)成分の揮散率が低下するおそれがある。
本発明の燻煙剤組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)〜(D)成分以外の他の成分をさらに含有してもよい。
該他の成分としては、例えば、安定化剤、結合剤、香料、色素等の添加剤が挙げられる。これらの内、安定化剤および結合剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
安定化剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドキシアニソール、没食子酸プロピル、エポキシ化合物(エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等)等が挙げられる。
結合剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、デキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明の燻煙剤組成物は、粉状、粒状、錠剤等の固形製剤として調製される。
燻煙剤組成物の製造方法としては、目的とする剤形に応じて、公知の製造方法が用いられる。例えば、粒状の製剤とする場合は、押出し造粒法、圧縮造粒法、撹拌造粒法、転動造粒法、流動層造粒法等、公知の造粒物の製造方法が用いられる。
押出し造粒法による製造方法としては、燻煙剤組成物の各成分を、ニーダー等により混合し、必要に応じて適量の水を加えて混合し、得られた混合物を任意の開孔径を有するダイスを用い、前押出しあるいは横押出し造粒機で造粒するものが挙げられる。該造粒物をさらにカッター等で任意の大きさに切断し、水分除去のための乾燥を行ってもよい。
乾燥方法は、例えば、従来公知の乾燥機を用いた加熱乾燥法が挙げられる。
乾燥温度は、特に限定されないが、(D)成分の揮発を抑制する点から、50〜80℃が好ましい。
乾燥時間は、乾燥温度に応じて適宜決定される。
乾燥した後の燻煙剤組成物の水分含量は、特に限定されないが、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、0質量%であってもよい。水分含量が5質量%以下であると(A)成分の揮散率が良好である。
本発明の燻煙剤組成物は、対象空間への燻煙処理に用いられる。
本発明の燻煙剤組成物の使用方法(燻煙方法)としては、従来公知の燻煙方法が適用できる。例えば、金属製容器、セラミック製容器等の任意の容器に燻煙剤組成物を収容し、密閉した対象空間内で、該燻煙剤組成物を直接的又は間接的に加熱する方法が挙げられる。これにより、対象空間に燻煙処理が施される。また、後述する燻煙装置とし、対象空間に燻煙処理を施してもよい。
対象空間としては、特に限定されず、例えば、浴室、居室、押入れ、トイレ等が挙げられる。
燻煙剤組成物を間接的に加熱する方法としては、燻煙剤組成物を燃焼することなく、(B)成分が熱分解を生じ得る熱エネルギーを燻煙剤組成物に供給できるものであればよく、例えば、金属製の容器に燻煙剤組成物を収容し、この金属製の容器を介して燻煙剤組成物を加熱する方法が挙げられる。
加熱方法としては、従来のものを用いることができ、例えば、水と接触して発熱する物質を水と接触させ、その反応熱を利用する方法;鉄粉と酸化剤(塩素酸アンモニウム等)とを混合し、又は金属と該金属よりイオン化傾向の小さい金属酸化物もしくは酸化剤とを混合し、その酸化反応熱を利用する方法等が挙げられる。水と接触して発熱する物質としては、酸化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化鉄等が挙げられる。中でも、実用性の観点から、水と接触して発熱する物質を水と接触させ、その反応熱を利用する方法が好ましく、酸化カルシウムと水との反応熱を利用する方法がより好ましい。なお、本発明において、上記加熱方法を開始する操作(例えば、水と接触して発熱する物質と、水とを接触させる操作)を加熱操作という。
燻煙処理時間(燻煙開始後、対象空間の密閉を解除するまでの時間)は、特に限定されず、1時間以上が好ましく、1.5時間以上がより好ましい。
本発明の燻煙装置は、前述した本発明の燻煙剤組成物が収容され、収容された燻煙剤組成物を加熱する加熱手段を備えるものである。
図1の燻煙装置10は、間接加熱式の燻煙装置であり、筐体12と、筐体12の内側に配置された燻煙剤容器30とから概略構成される加熱用容器と、筐体12と燻煙剤充填部30との間に形成された加熱部(加熱手段)20と、から概略構成される。燻煙剤充填部30内に本発明の燻煙剤組成物が収容され、燻煙剤部32が形成されている。
本体14の材質は、例えば、金属、セラミック等が挙げられる。
底部16は、加熱部20の機構に応じて決定することができ、例えば、加熱部20が水と接触して発熱する物質(酸化カルシウム等)により構成されている場合、底部16には不織布や金属製のメッシュ等が用いられる。底部16を不織布やメッシュとすることで、底部16から水を加熱部20内に浸入させ加熱することができる。
蓋部18は、貫通孔を有するものであり、メッシュ、パンチングメタル、格子状の枠体等が挙げられる。蓋部18の材質は、例えば、金属、セラミック等が挙げられる。
燻煙剤容器30としては、例えば、金属製の容器等が挙げられる。
中でも、水と接触して発熱する物質が収容されたものが好ましく、酸化カルシウムが収容されたものがより好ましい。
対象空間に拡散した(A)成分は、カビ等の微生物に作用し、微生物抑制効果を発揮する。
ただし、燻煙剤自体を燃焼させる炎の発生がないため、間接加熱式の燻煙装置が好ましい。
以下の各例で使用した原料を以下に示す。
A−1:2−イソプロピル−5−メチルフェノール(IPMP)、商品名「ビオゾール」、大阪化成株式会社製。
A−2:3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメイト(IPBC)、商品名「GLYCACIL(グライカシル)」、ロンザジャパン株式会社製。
B−1:アゾジカルボンアミド、商品名「ダイブローAC.2040(C)」、大日精化工業株式会社製。
C−1:ゼオライト、商品名「シルトンB」、水澤化学株式会社製。
C−2:タルク、商品名「JA−24R」、浅田製粉株式会社製。
C−3:パーライト、商品名「ハードライトB−04」、昭和化学工業株式会社製。
D−1:ジプロピレングリコール(DPG)、東京化成工業株式会社製(沸点:約230℃)。
D−2:クエン酸トリエチル(Trietyl Citrate)、純正化学株式会社製(沸点:294℃)。
D−3:ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、昭和化学株式会社製(沸点:193℃)。
D−4:ジエチレングリコールジメチルエーテル(diglyme)、商品名「ハイソルブMDM」、東邦化学工業製(沸点:162℃)。
D−5:エタノール、東京化成工業株式会社製(沸点:73℃)。
任意成分として以下の化合物を用いた。
HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース、商品名「メトローズ60SH−50」、信越化学工業(株)製。
クレー:商品名「MK−300」、昭和KDE株式会社。
[燻煙剤組成物の製造]
表1〜3に示す組成の燻煙剤組成物を以下の手順で製造した。表1〜3中の各成分の配合量の単位は質量%である。クレーの「バランス」は、燻煙剤組成物全量が100質量%となる量である。
表に示す各成分を所定量計り取り、ニーダー(モリヤマ社製、S5−2G型)によって充分混合撹拌した後に水を加えて練合し、ダイス径2mmの造粒機(不二パウダル社製、EXK−1)を用いて造粒後、乾燥機(アルプ社製、RT−120HL)を用い、70℃で2時間乾燥させることにより、顆粒状の燻煙剤組成物を得た。
得られた燻煙剤組成物を用いて以下の評価を行った。
なお、実施例18および19は参考例である。
図1に示したのと同様の構成の燻煙装置を作製した。具体的には、底部16が不織布で構成された略円筒状の筐体12と、該筐体12の内側に配置された燻煙剤容器30とを備えた加熱用容器を用意し、該加熱用容器の燻煙剤容器30内に、製造した燻煙剤組成物12.5gを充填し、同加熱用容器の筐体12と燻煙剤容器30との間の隙間に酸化カルシウム37gを充填して加熱部20を形成し、燻煙装置とした。
製造直後における有効成分(IPBCおよびIPMP)の揮散率を以下の手順で測定した。
体積6.38m3の密閉可能な評価室内の床面の略中央部に、23mLの水を入れた給水用プラスチック容器を設置し、該プラスチック容器内に、作製直後の燻煙装置を入れ、燻煙を開始した。燻煙は前記評価室を密閉した状態で行った。
燻煙開始5分後に室内空気をファン(ORIX社製、MU1238A−11B)により1分間攪拌し、評価室内空気約20Lを、真空ポンプを用いて、クロマト用シリカゲルを充填したガラス管内を通過させ、有効成分をシリカゲルに吸着させた。
次に、シリカゲルに吸着した有効成分をアセトン100mLで溶出、回収し、得られた抽出溶液を200mL容量のナス型フラスコに採り、エヴァポレーター(ヤマト科学製ロータリーエヴァポレーター RE−46)で完全に蒸散乾固させた。そこへ、内標準溶液として、0.1質量%となるようにアセトンで調製したフタル酸ジ−n−ブチル溶液5mLを加え溶解し、試料溶液とした。この試料溶液、標準溶液2μLを用いて、下記の条件によるガスクロマトグラフ法により定量し、捕集した室内空気中の有効成分量(a)を求めた。
また、同様にして、燻煙前の燻煙剤組成物中の有効成分量(b)をガスクロマトグラフ法により求め、下記数式(1)により揮散率(%)を求めた。
揮散率(%)=捕集した室内空気中の有効成分量(a)/燻煙前の燻煙剤組成物中の有効成分量(b)×100 …(1)
(評価基準)
◎◎:揮散率80%以上。
◎:揮散率65%以上80%未満。
○:揮散率50%以上65%未満。
×:揮散率50%未満。
高温保存後における有効成分(IPBCおよびIPMP)の揮散率を以下の手順で測定した。
作製した燻煙装置を45℃で1ヶ月間高温保存した。
高温保存後の燻煙装置を用いた以外は前記評価1と同様にして燻煙を行い、捕集した室内空気中の有効成分量(a)、燻煙前の燻煙剤組成物中の有効成分量(b)をそれぞれ測定し、揮散率を算出し、揮散性を評価した。結果を表1〜3に示す。
前記評価1、2でそれぞれ求めた揮散率(製造直後の揮散率、高温保存後の揮散率)から、下記数式(2)により揮散率低下抑制率(%)を算出した。
揮散率低下抑制率=高温保存後の揮散率/製造直後の揮散率×100
(評価基準)
◎:揮散率低下抑制率90%以上。
○:揮散率低下抑制率75%以上90%未満。
△:揮散率低下抑制率60%以上75%未満。
×:揮散率低下抑制率60%未満。
一方、(C)成分を含まない比較例1、(D)成分を含まない比較例2、D/Cが0.01の比較例3、D/Cが1.6の比較例4、(D)成分の代わりに沸点162℃または73℃の溶剤を用いた比較例5、6は、揮散率低下抑制率が70%以下で、高温保存により有効成分の揮散率が大きく低下した。
20 加熱部
30 燻煙剤容器
32 燻煙剤部
Claims (3)
- (A)イソプロピルメチルフェノールおよび3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメートのいずれか一方または両方と、(B)アゾジカルボンアミドと、(C)ゼオライト、タルク及びパーライトから選ばれる1種以上の吸油性無機粉体と、(D)ジプロピレングリコールと、を含有し、
前記(C)に対する前記(D)の質量比(D/C)が0.03〜1.0であることを特徴とする浴室用防カビ燻煙剤組成物。 - 前記(D)を0.4〜6.5質量%含有する、請求項1に記載の浴室用防カビ燻煙剤組成物。
- 請求項1又は2に記載の浴室用防カビ燻煙剤組成物が収容され、前記燻煙剤組成物を加熱する加熱手段を備える浴室用防カビ燻煙装置。
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