本発明のシリコーン樹脂シートは、熱硬化性シリコーン樹脂と、微粒子とを含有する樹脂組成物から形成されている。
具体的には、シリコーン樹脂シートは、例えば、樹脂組成物から略シート状に形成される封止樹脂層を備えている。
熱硬化性シリコーン樹脂としては、例えば、2つの反応系(硬化反応における反応系)を有する熱硬化性シリコーン樹脂組成物が挙げられる。
2つの反応系を有する熱硬化性シリコーン樹脂組成物としては、例えば、縮合反応と付加反応との2つの反応系を有する縮合・付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物が挙げられる。
縮合・付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物は、具体的には、加熱によって、縮合反応(シラノール縮合)して、半硬化状態(Bステージ状態)となることができ、次いで、さらなる加熱によって、付加反応(ヒドロシリル付加)して、硬化状態(完全硬化状態)となることができる。
縮合・付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物としては、例えば、シラノール基両末端ポリシロキサン、エチレン系不飽和炭化水素基含有ケイ素化合物(以下、エチレン系ケイ素化合物とする。)、エポキシ基含有ケイ素化合物およびオルガノハイドロジェンシロキサンを含有する第1の熱硬化性シリコーン樹脂組成物、例えば、少なくとも2個のアルケニルシリル基を1分子中に有する第1オルガノポリシロキサン、少なくとも2個のヒドロシリル基を1分子中に有する第2オルガノポリシロキサン、ヒドロシリル化触媒、および、硬化遅延剤を含有する第2の熱硬化性シリコーン樹脂組成物、例えば、少なくとも2つのエチレン系不飽和炭化水素基と少なくとも2つのヒドロシリル基とを1分子中に併有する第1オルガノポリシロキサン、エチレン系不飽和炭化水素基を含まず、少なくとも2つのヒドロシリル基を1分子中に有する第2オルガノポリシロキサン、ヒドロシリル化触媒、および、ヒドロシリル化抑制剤を含有する第3の熱硬化性シリコーン樹脂組成物、例えば、少なくとも2つのエチレン系不飽和炭化水素基と少なくとも2つのシラノール基とを1分子中に併有する第1オルガノポリシロキサン、エチレン系不飽和炭化水素基を含まず、少なくとも2つのヒドロシリル基を1分子中に有する第2オルガノポリシロキサン、および、ヒドロシリル化触媒を含有する第4の熱硬化性シリコーン樹脂組成物などが挙げられる。
縮合・付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物として、好ましくは、第1の熱硬化性シリコーン樹脂組成物が挙げられる。
第1の熱硬化性シリコーン樹脂組成物において、シラノール基両末端ポリシロキサン、エチレン系ケイ素化合物およびエポキシ基含有ケイ素化合物は、縮合原料(縮合反応に供される原料)であり、エチレン系ケイ素化合物およびオルガノハイドロジェンシロキサンは、付加原料(付加反応に供される原料)である。
シラノール基両末端ポリシロキサンは、分子の両末端にシラノール基(SiOH基)を含有するオルガノシロキサンであって、具体的には、下記一般式(1)で示される。
一般式(1):
(一般式(1)中、R1は、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示す。また、nは、1以上の整数を示す。)
上記一般式(1)中、R1で示される1価の炭化水素基において、飽和炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基など)、例えば、炭素数3〜6のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基など)などが挙げられる。
また、上記一般式(1)中、R1で示される1価の炭化水素基において、芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素数6〜10のアリール基(フェニル基、ナフチル基)などが挙げられる。
上記一般式(1)において、R1は、同一または互いに異なっていてもよく、好ましくは、同一である。
1価の炭化水素基としては、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基、および炭素数6〜10のアリール基が挙げられ、透明性、熱安定性および耐光性の観点から、さらに好ましくは、メチル基が挙げられる。
上記一般式(1)おいて、nは、好ましくは、安定性および/または取り扱い性の観点から、1〜10,000の整数、さらに好ましくは、1〜1,000の整数である。
なお、上記一般式(1)におけるnは、平均値として算出される。
シラノール基両末端ポリシロキサンとしては、具体的には、シラノール基両末端ポリジメチルシロキサン、シラノール基両末端ポリメチルフェニルシロキサン、シラノール基両末端ポリジフェニルシロキサンなどが挙げられる。
このようなシラノール基両末端ポリシロキサンは、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
また、このようなシラノール基両末端ポリシロキサンのなかでは、好ましくは、シラノール基両末端ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
シラノール基両末端ポリシロキサンは、市販品を用いることができ、また、公知の方法に従って合成したものを用いることもできる。
シラノール基両末端ポリシロキサンの数平均分子量は、安定性および/または取り扱い性の観点から、例えば、100〜1,000,000、好ましくは、200〜100,000である。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレンで換算されて算出される。後述するシラノール基両末端ポリシロキサン以外の原料の数平均分子量についても、上記と同様にして算出される。
このようなシラノール基両末端ポリシロキサンにおける、シラノール基当量は、例えば、0.002〜25mmol/g、好ましくは、0.02〜25mmol/gである。
シラノール基両末端ポリシロキサンの配合割合は、縮合原料100質量部に対して、例えば、1〜99.99質量部、好ましくは、50〜99.9質量部、さらに好ましくは、80〜99.5質量部である。
エチレン系ケイ素化合物は、エチレン系不飽和炭化水素基、および、シラノール縮合反応における脱離基を併有するシラン化合物であって、具体的には、下記一般式(2)で示される。
一般式(2):
R2−Si(X1)3 (2)
(一般式(2)中、R2は、1価のエチレン系不飽和炭化水素基を示し、X1は、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、またはアセトキシ基を示す。但し、X1は、同一または互いに相異なっていてもよい。)
上記一般式(2)において、R2で示されるエチレン系不飽和炭化水素基としては、置換または非置換のエチレン系不飽和炭化水素基が挙げられ、例えば、アルケニル基、シクロアルケニル基などが挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基などの炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。
シクロアルケニル基としては、例えば、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基などの炭素数3〜10のシクロアルケニル基が挙げられる。
エチレン系不飽和炭化水素基としては、ヒドロシリル基との反応性の観点から、好ましくは、アルケニル基、さらに好ましくは、炭素数2〜5のアルケニル基、とりわけ好ましくは、ビニル基が挙げられる。
上記一般式(2)におけるX1は、シラノール縮合反応における脱離基であり、上記一般式(2)におけるSiX1基は、シラノール縮合反応における反応性官能基である。
上記一般式(2)において、X1で示されるハロゲン原子としては、例えば、臭素、塩素、フッ素、ヨウ素などが挙げられる。
上記一般式(2)において、X1で示されるアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基を有するアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基など)、例えば、炭素数3〜6のシクロアルキル基を有するアルコキシ基(シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基など)などが挙げられる。
上記一般式(2)において、X1は、同一または互いに異なっていてもよく、好ましくは、同一である。
このような上記一般式(2)のX1のなかでは、好ましくは、アルコキシ基が挙げられ、さらに好ましくは、メトキシ基が挙げられる。
このようなエチレン系ケイ素化合物としては、例えば、エチレン系不飽和炭化水素基含有トリアルコキシシラン、エチレン系不飽和炭化水素基含有トリハロゲン化シラン、エチレン系不飽和炭化水素基含有トリフェノキシシラン、エチレン系不飽和炭化水素基含有トリアセトキシシランなどが挙げられる。
このようなエチレン系ケイ素化合物は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
このようなエチレン系ケイ素化合物のなかでは、好ましくは、エチレン系不飽和炭化水素基含有トリアルコキシシランが挙げられる。
エチレン系不飽和炭化水素基含有トリアルコキシシランとしては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシランなどのビニルトリアルコキシシラン、例えば、アリルトリメトキシシラン、プロペニルトリメトキシシラン、ブテニルトリメトキシシラン、シクロヘキセニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
また、このようなエチレン系不飽和炭化水素基含有トリアルコキシシランのなかでは、好ましくは、ビニルトリアルコキシシラン、さらに好ましくは、ビニルトリメトキシシランが挙げられる。
エチレン系ケイ素化合物の配合割合は、縮合原料100質量部に対して、例えば、0.01〜90質量部、好ましくは、0.01〜50質量部、さらに好ましくは、0.01〜10質量部である。
エチレン系ケイ素化合物は、市販品を用いることができ、また、公知の方法に従って合成したものを用いることもできる。
エポキシ基含有ケイ素化合物は、エポキシ基および、シラノール縮合反応における脱離基を併有するシラン化合物あって、具体的には、下記一般式(3)で示される。
一般式(3):
R3−Si(X2)3 (3)
(一般式(3)中、R3は、エポキシ構造含有基を示し、X2は、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、またはアセトキシ基を示す。但し、X2は、同一または互いに相異なっていてもよい。)
一般式(3)において、R3で示されるエポキシ構造含有基としては、例えば、エポキシ基、例えば、グリシジルエーテル基、例えば、エポキシシクロヘキシル基などのエポキシシクロアルキル基などが挙げられる。
このようなエポキシ構造含有基のなかでは、好ましくは、グリシジルエーテル基が挙げられる。グリシジルエーテル基は、具体的には、下記一般式(4)で示されるグリシドキシアルキル基である。
一般式(4):
(一般式(4)中、R4は、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される2価の炭化水素基を示す。)
上記一般式(4)中、R4で示される2価の炭化水素基において、飽和炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキレン基(メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基など)、例えば、炭素数3〜8のシクロアルキレン基(シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基など)などが挙げられる。
また、上記一般式(4)中、R4で示される2価の炭化水素基において、芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素数6〜10のアリーレン基(フェニレン基、ナフチレン基など)などが挙げられる。
このような2価の炭化水素基としては、好ましくは、炭素数1〜6のアルキレン基、さらに好ましくは、プロピレン基が挙げられる。
グリシジルエーテル基としては、具体的には、グリシドキシメチル基、グリシドキシエチル基、グリシドキシプロピル基、グリシドキシシクロヘキシル基、グリシドキシフェニル基などが挙げられる。
このようなグリシジルエーテル基のなかでは、好ましくは、グリシドキシプロピル基が挙げられる。
上記一般式(3)におけるX2は、シラノール縮合反応における脱離基であり、上記一般式(3)におけるSiX2基は、シラノール縮合反応における反応性官能基である。
上記一般式(3)において、X2で示されるハロゲン原子としては、上記一般式(2)のX1で示されるハロゲン原子と同様のものが挙げられる。
上記一般式(3)において、X2で示されるアルコキシ基としては、上記一般式(2)のX1で示されるアルコキシ基と同様のものが挙げられる。
上記一般式(3)において、X2は、同一または互いに異なっていてもよく、好ましくは、同一である。
このような上記一般式(3)のX2としては、好ましくは、アルコキシ基が挙げられ、さらに好ましくは、メトキシ基が挙げられる。
このようなエポキシ基含有ケイ素化合物としては、例えば、エポキシ基含有トリアルコキシシラン、エポキシ基含有トリハロゲン化シラン、エポキシ基含有トリフェノキシシラン、エポキシ基含有トリアセトキシシランなどが挙げられる。
このようなエポキシ基含有ケイ素化合物は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
また、このようなエチレン系ケイ素化合物のなかでは、好ましくは、エポキシ基含有トリアルコキシシランが挙げられる。
エポキシ基含有トリアルコキシシランとしては、具体的には、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、(2−グリシドキシエチル)トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシランなどのグリシドキシアルキルトリメトキシシラン、例えば、(3−グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリプロポキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリイソプロポキシシランなどが挙げられる。
また、このようなエポキシ基含有トリアルコキシシランのなかでは、好ましくは、グリシドキシメチルトリアルコキシシラン、さらに好ましくは、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシランが挙げられる。
エポキシ基含有ケイ素化合物の配合割合は、縮合原料100質量部に対して、例えば、0.01〜90質量部、好ましくは、0.01〜50質量部、さらに好ましくは、0.01〜1質量部である。
エポキシ基含有ケイ素化合物は、市販品を用いることができ、また、公知の方法に従って合成したものを用いることもできる。
エチレン系ケイ素化合物およびエポキシ基含有ケイ素化合物の反応性官能基(SiX1基およびSiX2基)に対する、シラノール基両末端ポリシロキサンのシラノール基(SiOH基)のモル比(SiOH/(SiX1+SiX2))は、例えば、20/1〜0.2/1、好ましくは、10/1〜0.5/1、さらに好ましくは、実質的に1/1である。
モル比が上記上限を超える場合には、第1の熱硬化性シリコーン樹脂組成物を半硬化状態とする際に、適度な靭性を有する半硬化状物(半硬化物)を得られない場合があり、一方、モル比が上記下限に満たない場合には、エチレン系ケイ素化合物およびエポキシ基含有ケイ素化合物の配合割合が過度に多く、そのため、得られる封止樹脂層の耐熱性が低下する場合がある。
また、モル比が上記範囲内(好ましくは、実質的に1/1)であれば、シラノール基両末端ポリシロキサンのシラノール基(SiOH基)と、エチレン系ケイ素化合物の反応性官能基(SiX1基)およびエポキシ基含有ケイ素化合物の反応性官能基(SiX2基)とを過不足なく縮合反応させることができる。
エポキシ基含有ケイ素化合物に対する、エチレン系ケイ素化合物のモル比は、例えば、10/90〜99/1、好ましくは、50/50〜97/3、さらに好ましくは、80/20〜95/5である。
モル比が上記範囲内であれば、硬化物の強度を確保しつつ、接着性を向上できる利点がある。
オルガノハイドロジェンシロキサンは、エチレン系不飽和炭化水素基を含まず、少なくとも2つのヒドロシリル基を1分子中に有するオルガノシロキサンである。
オルガノハイドロジェンシロキサンは、具体的には、水素側鎖含有オルガノポリシロキサン、水素両末端オルガノポリシロキサンなどが挙げられる。
水素側鎖含有オルガノポリシロキサンは、主鎖から分岐する側鎖として水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサンであって、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン−co−メチルハイドロジェンポリシロキサン、エチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン−co−メチルフェニルポリシロキサンなどが挙げられる。
水素側鎖含有オルガノポリシロキサンの数平均分子量は、例えば、100〜1,000,000である。
また、水素両末端オルガノポリシロキサンは、主鎖の両末端に水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサンであって、例えば、ヒドロシリル基両末端ポリジメチルシロキサン、ヒドロシリル基両末端ポリメチルフェニルシロキサン、ヒドロシリル基両末端ポリジフェニルシロキサンなどが挙げられる。
水素両末端オルガノポリシロキサンの数平均分子量は、安定性および/または取り扱い性の観点から、例えば100〜1,000,000、さらに好ましくは、100〜100,000である。
このようなオルガノハイドロジェンシロキサンは、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
また、このようなオルガノハイドロジェンシロキサンのなかでは、好ましくは、水素側鎖含有オルガノポリシロキサンが挙げられ、さらに好ましくは、ジメチルポリシロキサン−co−メチルハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
オルガノハイドロジェンシロキサンの25℃における粘度は、例えば、10〜100,000mPa・s、好ましくは、20〜50,000mPa・sである。なお、粘度は、B型粘度計により測定される。
オルガノハイドロジェンシロキサンにおける、ヒドロシリル基当量は、例えば、0.1〜30mmol/g、好ましくは、1〜20mmol/gである。
オルガノハイドロジェンシロキサンは、市販品を用いることができ、また、公知の方法に従って合成したものを用いることもできる。
オルガノハイドロジェンシロキサンの配合割合は、エチレン系ケイ素化合物のエチレン系不飽和炭化水素基(上記一般式(2)のR2)とオルガノハイドロジェンシロキサンのヒドロシリル基(SiH基)とのモル比にもよるが、例えば、エチレン系ケイ素化合物100質量部に対して、例えば、10〜10,000質量部、好ましくは、100〜1,000質量部である。
また、オルガノハイドロジェンシロキサンのヒドロシリル基(SiH基)に対する、エチレン系ケイ素化合物のエチレン系不飽和炭化水素基(上記一般式(2)のR2)のモル比(R2/SiH)は、例えば、20/1〜0.05/1、好ましくは、20/1〜0.1/1、さらに好ましくは、10/1〜0.1/1、とりわけ好ましくは、10/1〜0.2/1、もっとも好ましくは、5/1〜0.2/1である。また、例えば、1/1未満、0.05/1以上に設定することもできる。
モル比が20/1を超える場合には、第1の熱硬化性シリコーン樹脂組成物を半硬化状態とする際に、適度な靭性を有する半硬化物を得られない場合があり、モル比が0.05/1に満たない場合には、オルガノハイドロジェンシロキサンの配合割合が過度に多く、そのため、得られる封止樹脂層の耐熱性および靭性が不十分となる場合がある。
また、モル比が1/1未満、0.05/1以上であれば、第1の熱硬化性シリコーン樹脂組成物を半硬化状態とする際に、モル比が20/1〜1/1である第1の熱硬化性シリコーン樹脂組成物に比べて、半硬化状態へ迅速に移行させることができる。
第1の熱硬化性シリコーン樹脂組成物は、上記したシラノール基両末端ポリシロキサン、エチレン系ケイ素化合物、エポキシ基含有ケイ素化合物およびオルガノハイドロジェンシロキサン)を、触媒とともに、配合して、攪拌混合することにより調製される。
触媒としては、例えば、縮合触媒および付加触媒(ヒドロシリル化触媒)などが挙げられる。
縮合触媒は、シラノール基と反応性官能基(上記一般式(2)のSiX1基および上記一般式(3)のSiX2基)との縮合反応の反応速度を向上させる物質であれば特に限定されず、例えば、塩酸、酢酸、ギ酸、硫酸などの酸、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの塩基、例えば、アルミニウム、チタン、亜鉛、スズなどの金属などが挙げられる。
このような縮合触媒は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
また、このような縮合触媒のなかでは、相溶性および熱分解性の観点から、好ましくは、塩基、さらに好ましくは、水酸化テトラメチルアンモニウムが挙げられる。
このような縮合触媒の配合割合は、シラノール基両末端ポリシロキサン100モルに対して、例えば、0.1〜50モル、好ましくは、0.5〜5モルである。
付加触媒は、付加反応、つまり、エチレン系不飽和炭化水素基とSiHとのヒドロシリル化反応の反応速度を向上させる物質であれば、特に限定されず、例えば、白金黒、塩化白金、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金一カルボニル錯体、白金−アセチルアセテートなどの白金触媒、例えば、パラジウム触媒、ロジウム触媒などの金属触媒が挙げられる。
このような付加触媒は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
また、このような付加触媒のなかでは、相溶性、透明性および触媒活性の観点から、好ましくは、白金触媒、さらに好ましくは、白金−カルボニル錯体が挙げられる。
付加触媒の配合割合は、付加触媒の金属量の質量部数として、オルガノハイドロジェンシロキサン100質量部に対して、例えば、1.0×10−4〜1.0質量部、好ましくは、1.0×10−4〜0.5質量部、さらに好ましく、1.0×10−4〜0.05質量部である。
なお、上記した触媒は、固体状態のものをそのまま用いてもよく、あるいは、取扱性の観点から、溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液として用いることもできる。
溶媒としては、例えば、水、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコールなどが挙げられ、好ましくは、アルコールが挙げられる。
第1の熱硬化性シリコーン樹脂組成物を調製するには、例えば、上記した原料(縮合原料および付加原料)と、触媒とを一度に加えてもよく、あるいは、各原料および各触媒を異なるタイミングでそれぞれ加えることもできる。さらには、一部の成分を一度に加え、残部の各成分を、異なるタイミングでそれぞれ加えることもできる。
このような第1の熱硬化性シリコーン樹脂組成物の調製方法のなかでは、好ましくは、まず、縮合原料および縮合触媒を一度に加え、次いで、付加原料を加え、その後、付加触媒を加える方法が挙げられる。
具体的には、シラノール基両末端ポリシロキサン、エチレン系ケイ素化合物およびエポキシ基含有ケイ素化合物(つまり、縮合原料)と、縮合触媒とを、上記した割合で一度に配合して、それらを、例えば、5分間〜24時間攪拌する。
また、配合および攪拌時には、縮合原料の相溶性および取扱性を向上させるために、例えば、0〜60℃、好ましくは、10〜35℃に温度調整することもできる。
また、原料および縮合触媒の配合時に、それらの相溶性を向上させるための相溶化剤を適宜の割合で加えることもできる。
相溶化剤としては、例えば、メタノールなどのアルコールなどの有機溶媒が挙げられる。なお、相溶化剤は、縮合触媒が有機溶媒の溶液または分散液として調製されている場合には、その有機溶媒を相溶化剤として供することもできる。
その後、系を、必要により減圧することにより、揮発成分(有機溶媒)を除去する。
次いで、得られる縮合原料および縮合触媒の混合物に、オルガノハイドロジェンシロキサンを配合して、例えば、1〜120分間攪拌する。
配合および攪拌時には、混合物およびオルガノハイドロジェンシロキサンの相溶性および取扱性を向上させるために、例えば、0〜60℃に温度調整することもできる。
その後、系に、付加触媒を配合して、例えば、1〜60分間で攪拌する。
これにより、第1の熱硬化性シリコーン樹脂組成物を調製することができる。
調製された第1の熱硬化性シリコーン樹脂組成物は、例えば、液状(オイル状)である。
第1の熱硬化性シリコーン樹脂組成物の25℃における粘度は、例えば、1,000〜20,000mPa・s、好ましくは、4,000〜10,000mPa・sである。なお、粘度は、B型粘度計により測定される。
上記した縮合・付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物は、例えば、液状(オイル状)であって、後述するように離型シート上に塗布した後、加熱することにより、縮合原料が縮合反応することにより調製される。そして縮合・付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物からなる封止樹脂層が、後述するように発光ダイオードを埋設後、さらに加熱することにより、付加原料が付加反応して、硬化後の封止層を形成する。
具体的には、第1の熱硬化性シリコーン樹脂組成物は、例えば、シラノール基両末端ポリジメチルシロキサン、ビニルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシランおよびジメチルポリシロキサン−co−メチルハイドロジェンポリシロキサンを含有し、第2の熱硬化性シリコーン樹脂組成物は、例えば、ジメチルビニリシリル末端ポリジメチルシロキサン、トリメチルシリル末端ジメチルシロキサン−メチルヒドロシロキサン共重合体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、および、水酸化テトラメチルアンモニウムを含有し、第3の熱硬化性シリコーン樹脂組成物は、例えば、水素末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ末端ジメチルシロキサン−メチルヒドロシロキサン共重合体、白金−カルボニル錯体、および、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含有し、第4の熱硬化性シリコーン樹脂組成物は、例えば、ヒドロキシ基末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ末端ジメチルシロキサン−メチルヒドロシロキサン共重合体、白金−カルボニル錯体、および、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含有する。
微粒子としては、例えば、シリコーン微粒子などの有機微粒子、例えば、シリカ微粒子、タルク微粒子、アルミナ微粒子、窒化アルミニウム微粒子、窒化ケイ素微粒子など無機微粒子が挙げられる。また、無機粒子として、蛍光体微粒子を挙げることもできる。
微粒子は、同一種類を単独使用または異なる種類を併用することができる。
微粒子として、耐熱性の観点から、好ましくは、無機微粒子が挙げられる。また、熱硬化性シリコーン樹脂との屈折率が近似する光学特性の観点から、シリカ微粒子、シリコーン微粒子が挙げられ、透明性の観点から、シリコーン微粒子が挙げられる。
シリコーン微粒子は、架橋構造を有するポリシロキサン(硬化後)の微粒子であって、例えば、ポリシルセスキオキサン微粒子が挙げられ、硬度(封止層の補強効果)を考慮すると、好ましくは、ポリメチルシルセスキオキサン微粒子が挙げられる。
シリコーン微粒子の屈折率は、熱硬化型シリコーン樹脂の屈折率と近似し、具体的には、例えば、1.39〜1.44であり、熱硬化型シリコーン樹脂の屈折率との差は、絶対値で、例えば、0.02以内である。
シリカ粒子としては、例えば、溶融シリカ微粒子、結晶シリカ微粒子などが挙げられ、好ましくは、溶融シリカ微粒子(すなわち、石英ガラス微粒子)が挙げられる。
蛍光体微粒子は、波長変換機能を有する微粒子であって、例えば、青色光を黄色光に変換することのできる黄色蛍光体微粒子、青色光を赤色光に変換することのできる赤色蛍光体微粒子などの公知の蛍光体微粒子が挙げられる。
黄色蛍光体微粒子としては、例えば、Y3Al5O12:Ce(YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット):Ce)、Tb3Al3O12:Ce(TAG(テルビウム・アルミニウム・ガーネット):Ce)などのガーネット型結晶構造を有するガーネット型蛍光体微粒子、例えば、Ca−α−SiAlONなどの酸窒化物蛍光体微粒子などが挙げられる。
赤色蛍光体微粒子としては、例えば、CaAlSiN3:Eu、CaSiN2:Euなどの窒化物蛍光体微粒子などが挙げられる。
微粒子の形状としては、例えば、球状、板状、針状などが挙げられる。好ましくは、流動性の観点から、球状が挙げられる。
微粒子の最大長さの平均値(球状である場合には、平均粒子径)は、例えば、0.1〜100μm、好ましくは、光学特性およびハンドリングの観点から、1〜50μm、さらに好ましくは、2〜30μmである。最大長さの平均値は、レーザー回折散乱式粒度分布計を用いて測定される。
微粒子の配合割合は、例えば、熱硬化性シリコーン樹脂に対して、1〜80質量%となるように、調整され、流動性の確保の観点から、好ましくは、10〜50質量%となるように、調整される。
また、微粒子の配合割合は、樹脂組成物に対して、例えば、10〜60質量%、好ましくは、15〜40質量%でもある。
さらに、上記した樹脂組成物には、必要に応じて、シランカップリング剤、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤などの公知の添加物を適宜の割合で添加することができる。
樹脂組成物を調製するには、熱硬化性シリコーン樹脂と、微粒子と、必要により添加剤とを上記した配合割合で配合し、混合する。
混合条件としては、温度が、例えば、10〜40℃、好ましくは、15〜35℃、時間が、例えば、10分以上、好ましくは、30分以上である。
また、樹脂組成物は、必要に応じて、その調製後に脱泡される。
脱泡方法としては、例えば、減圧脱泡(真空脱泡)、遠心脱泡、超音波脱泡などの公知の脱泡方法が挙げられ、好ましくは、減圧脱泡(真空脱泡)が挙げられる。
脱泡方法が減圧脱泡(真空脱泡)である場合、脱泡条件としては、温度が、例えば、10〜40℃、好ましくは、15〜35℃、時間が、例えば、10分以上、好ましくは、30分以上である。
樹脂組成物の粘度は、例えば、25℃において、1000〜100000mPa・s、好ましくは、5000〜50000mPa・sである。
樹脂組成物の粘度が上記下限に満たないと、成形性または加工性が不十分となる場合がある。
そして、封止樹脂層(すなわち、シリコーン樹脂シート)は、好ましくは、後述するように、半硬化状態(Bステージ状態)の樹脂組成物から形成される。
封止樹脂層の屈折率は、例えば、1.38〜1.46、好ましくは、1.39〜1.44である。
半硬化状態の封止樹脂層は、30℃における周波数0.1〜50Hz、周波数増加速度10Hz/分、歪み1%の剪断モードの動的粘弾性測定から得られる周波数10Hzにおける複素粘度が、80〜1000Pa・sであり、好ましくは、100〜500Pa・s、さらに好ましくは、150〜250Pa・sである。
複素粘度が上記範囲を超える場合には、封止性が低下する。一方、複素粘度が上記範囲に満たない場合には、シリコーン樹脂シートの取扱性が低下する。
また、半硬化状態の封止樹脂層が、30℃における周波数0.1〜50Hz、周波数増加速度10Hz/分、歪み1%の剪断モードの動的粘弾性測定から得られる周波数10Hzにおけるtanδが、0.3〜1.6であり、好ましくは、0.3〜1.4である。
tanδが上記範囲を超える場合には、基板にワイヤボンディングにより接続された発光ダイオード素子を埋設する際に、ワイヤが損傷する。
一方、tanδが上記範囲に満たない場合には、取扱性が低下する。
また、封止樹脂層の圧縮弾性率(25℃)は、例えば、封止性および取扱性の観点から、0.01〜1MPa、好ましくは、0.01〜0.5MPaである。
封止樹脂層の圧縮弾性率が上記範囲に満たない場合には、封止樹脂層の保形性が低下する場合がある。一方、封止樹脂層の圧縮弾性率が上記範囲を超える場合には、基板にワイヤボンディングにより接続された発光ダイオード素子を埋設する際に、ワイヤが損傷する。
封止樹脂層の圧縮弾性率は、精密加重測定機を用いる圧縮試験により求められる。
封止樹脂層の厚みは、特に制限されず、後述する発光ダイオードの封止時に、発光ダイオードおよびワイヤを埋設できるように適宜調整される。
封止樹脂層の厚みは、例えば、300〜3,000μm、好ましくは、500〜2,000μmである。
封止樹脂層の厚みが上記範囲に満たないと、発光ダイオードの封止が不十分となる場合がある。
このような封止樹脂層は、1層から形成されていてもよく、あるいは、複数層から形成されていてもよい。
図1は、本発明のシリコーン樹脂シートの一実施形態を製造する工程を示す工程図である。
次に、シリコーン樹脂シート1を製造する方法について、図1を参照して説明する。
この方法では、まず、図1(a)に示すように、離型シート5を用意する。
離型シート5は、封止樹脂層7の表面を被覆保護する保護シートや、封止樹脂層7の塗工基材として用いられる。
離型シート5としては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどのポリエステルフィルム、例えば、ポリカーボネートフィルム、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、例えば、ポリスチレンフィルム、例えば、アクリルフィルム、例えば、シリコーン樹脂フィルム、フッ素樹脂フィルムなどの樹脂フィルムなどが挙げられる。
このような離型シート5のなかでは、好ましくは、ポリエステルフィルムが挙げられる。
なお、離型シート5の表面(封止樹脂層7が形成される側の面)には、封止樹脂層7からの離型性を高めるため、必要により、離型処理が施されている。
離型シート5の厚みは、特に制限されないが、例えば、取扱性、コストの観点から、例えば、20〜100μm、好ましくは、30〜80μmである。
次いで、図1(b)に示すように、封止樹脂層7を、離型シート5の上面に積層する。
封止樹脂層7を離型シート5に積層するには、例えば、樹脂組成物を、離型シート5の上面全面に、例えば、キャスト、スピン、ロールなどの公知の塗布方法によって塗布することにより、封止樹脂層7を形成する。
そして、封止樹脂層7を加熱して、樹脂組成物からなる封止樹脂層7を半硬化させる。
これにより、熱硬化性シリコーン樹脂が半硬化状態となる。詳しくは、加熱条件は、熱硬化性シリコーン樹脂が縮合・付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物である場合には、縮合反応(シラノール縮合反応)が進行する条件である。
半硬化の加熱条件としては、温度が、例えば、80〜200℃、好ましくは、120〜160℃、さらに好ましくは、130〜140℃であり、加熱時間が、例えば、0.5〜100分間、好ましくは、1〜20分間、さらに好ましくは、3〜10分間である。
これにより、離型シート5の上面に、封止樹脂層7が積層される。
以上によって、シリコーン樹脂シート1が調製される。
シリコーン樹脂シート1の大きさは、発光ダイオード(後述)およびワイヤ(後述)を封止することができれば、特に制限されないが、例えば、発光ダイオードおよびワイヤ(後述)の上下方向の投影面の外周線から、1〜20mm大きく、好ましくは、2〜10mm大きい。
図2は、図1に示すシリコーン樹脂シートにより発光ダイオード素子を埋設して、硬化シートによって発光ダイオード素子を封止して発光ダイオード装置を作製する工程を示す工程図である。
次に、図1のシリコーン樹脂シート1を用いて、発光ダイオード素子11を封止して、発光ダイオード装置2を製造する方法について、図2を参照して説明する。
この方法では、まず、図2(a)に示すように、シリコーン樹脂シート1と、基板14とを用意する。
基板14は、例えば、アルミニウムなどからなる金属板や、例えば、ポリイミド樹脂などからなる樹脂板から形成され、シリコーン樹脂シート1の封止樹脂層7より大きい略平板形状に形成されている。
また、基板14には、その上面に形成される端子(図示せず)と、中央部分に実装される発光ダイオード素子11と、発光ダイオード素子11と端子(図示せず)とを電気的に接続するワイヤ12とが設けられる。なお、発光ダイオード素子11は、その上面がワイヤ12を介して基板14の上面にワイヤボンディングされている。
ワイヤ12は、例えば、金、銀、銅などの導体材料から形成されている。
また、ワイヤ12は、側面視において湾曲状をなし、その寸法は、適宜選択され、例えば、線径が、10〜100μmであり、また、例えば、発光ダイオード素子11の上面におけるワイヤ12との素子側接点と、ワイヤ12の最上部分との上下方向長さは、例えば、150〜250μmであり、基板14の上面におけるワイヤ12との基板側接点と、ワイヤ12の最上部分との上下方向長さは、例えば、300〜450μmであり、素子側接点と基板側接点との面方向長さ(図2(a)における左右方向長さ)が、例えば、1400〜1600μmである。
発光ダイオード素子11は、例えば、青色光を発光できる光半導体素子であって、断面略矩形状に形成されている。
発光ダイオード素子11は、平面視略矩形平板状をなし、その1辺の長さは、例えば、0.1〜5mmであり、厚みは、例えば、10〜1,000μmである。
シリコーン樹脂シート1は、図1(b)に示す状態のシリコーン樹脂シート1を上下反転させて、封止樹脂層7が、発光ダイオード素子11と上下方向に間隔を立てて対向するように、配置する。
次いで、図2(b)および図2(c)に示すように、発光ダイオード素子11をシリコーン樹脂シート1によって埋設する。
具体的には、図2(b)に示すように、シリコーン樹脂シート1を降下させて(押し下げて)、封止樹脂層7によって発光ダイオード素子11およびワイヤ12の表面を被覆する。続いて、図2(c)に示すように、シリコーン樹脂シート1を基板14に対して圧着する。
圧着は、封止樹脂層7が基板14側に押し込まれる(圧縮される)量(以下、押込み量とする)を制御することにより実施する。
押込み量は、下記式により示される。
押込み量=圧縮(圧着)前の封止樹脂層7の厚みL1−圧縮(圧着)後の封止樹脂層7の厚みL2
押込み量は、下記式により示される押込み率が、例えば、5〜30%に設定されるように、調節される。
押込み率=押込み量/圧縮(圧着)前の封止樹脂層7の厚みL1×100%
具体的には、シリコーン樹脂シート1を、封止樹脂層7の厚みが、押込み量分圧縮されるように圧着する。
このように押込み量を調節することで、シリコーン樹脂シート1の圧壊を防止して、発光ダイオード11をシリコーン樹脂シート1で確実に封止することができる。
また、圧着では、シリコーン樹脂シート1を押下げた(押込んだ)状態で保持することができ、その保持時間は、例えば、10秒〜10分、好ましくは、10秒〜5分である。
圧着の温度は、例えば、0〜40℃、好ましくは、15〜35℃ある。
次いで、図2(d)に示すように、シリコーン樹脂シート1および基板14を加熱する。
この加熱により、シリコーン樹脂シート1では、封止樹脂層7が硬化する。
より具体的には、半硬化状態(Bステージ状態)の樹脂組成物が、完全硬化状態(Cステージ状態)となる。詳しくは、加熱条件は、熱硬化性シリコーン樹脂が縮合・付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物である場合には、付加反応(ヒドロシリル化付加反応)が進行する条件である。
具体的には、加熱温度が、例えば、80〜200℃、好ましくは、100〜180℃、加熱時間が、例えば、1〜20時間、好ましくは、2〜10時間である。
これにより、封止樹脂層7を備えるシリコーン樹脂シート1は、封止樹脂層7が硬化した封止層10を備える硬化シート20となる。
その後、図2(d)の仮想線で示すように、離型シート5を封止層10から剥離する。
以上によって、硬化シート20の封止層10により、発光ダイオード素子11が封止された発光ダイオード装置2が作製される。
つまり、発光ダイオード素子11と、発光ダイオード素子11を封止する封止層10とを備える発光ダイオード装置2が作製される。
そして、この発光ダイオード装置2の製造方法では、30℃の周波数10Hzにおける複素粘度が、80〜1,000Pa・sであり、かつ、30℃の周波数10Hzにおけるtanδが0.3〜1.6であるシリコーン樹脂シート1を用いるので、室温近傍(具体的には、15〜35℃)における取扱性に優れながら、室温近傍において、発光ダイオード素子11およびワイヤ12を損傷させることを防止しつつ、図2(b)に示すように、発光ダイオード素子11を埋設することができる。
そして、図2(c)に示すように、シリコーン樹脂シート1の封止樹脂層7を硬化させることにより得られる、硬化シート20の封止層10によって、発光ダイオード素子11を封止して、信頼性に優れる本発明の発光ダイオード装置2を得ることができる。
以下に、調製例、実施例、参考例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何らそれらに限定されない。
調製例1
<縮合・付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物の調製>
シラノール基両末端ポリジメチルシロキサン(シラノール基両末端ポリシロキサン、一般式(1)中、R1がすべてメチル、nの平均が155、数平均分子量11,500、シラノール基当量0.174mmol/g)2031g(0.177モル)に対して、ビニルトリメトキシシラン(エチレン系ケイ素化合物)15.71g(0.106モル)、および、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(エポキシ基含有ケイ素化合物)2.80g(0.0118モル)とを配合して、攪拌混合した。
なお、ビニルトリメトキシシランおよび(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシランのSiOCH3基に対する、シラノール基両末端ポリジメチルシロキサンのSiOH基のモル比(SiOH基のモル数/SiOCH3基の総モル数)は、1/1であった。
攪拌混合後、水酸化テトラメチルアンモニウムのメタノール溶液(縮合触媒、濃度10質量%)0.97mL(0.766g、触媒含量:0.88ミリモル、シラノール基両末端ポリジメチルシロキサン100モルに対して0.50モルに相当)を加え、40℃で1時間撹件した。その後、それらを40℃の減圧下(10mmHg)で、1時間撹挫しながら、揮発分(メタノールなど)を除去した。
その後、系を常圧に戻した後、反応物に、オルガノハイドロジェンシロキサン(信越化学工業社製、ジメチルポリシロキサン−co−メチルハイドロジェンポリシロキサン、平均分子量2,000、ヒドロシリル基当量7.14mmol/g)44.5g(0.022モル)を加え、40℃で1時間攪拌した。
なお、オルガノハイドロジェンシロキサンのヒドロシリル基(SiH基)に対する、ビニルトリメトキシシランのビニル基(CH2=CH−)のモル比(CH2=CH−/SiH)は、1/3であった。
その後、系に、白金−カルボニル錯体のシロキサン溶液(付加触媒、白金濃度2質量%)0.13g(0.13mL、白金含量2質量%、白金として、オルガノハイドロジェンシロキサン100質量部に対して5.8×10−3質量部に相当)を加えて、40℃で10分間攪拌して、熱硬化型シリコーン樹脂組成物(縮合・付加反応硬化型)を得た。
実施例1
<樹脂組成物の調製>
熱硬化型シリコーン樹脂組成物に対して、トスパール 2000B(商品名、ポリメチルシルセスキオキサン微粒子、平均粒子径6.0μm、屈折率1.41、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)20質量%を配合し、室温(25℃)において10分間攪拌した。攪拌後、真空乾燥機による減圧下において、室温にて、30分以上脱泡した。
これにより、樹脂組成物を調製した。なお、樹脂組成物の屈折率は、1.42であった。
<シリコーン樹脂シートの作製>
ポリエステルフィルム(商品名:SS4C、ニッパ社製、厚み50μm)製の離型シート(図1(a)参照)の上面に、樹脂組成物を、厚み600μmとなるように塗布し、その後、135℃で9分加熱することにより、離型シートの上面に厚み600μmの半硬化状態の封止樹脂層が積層されたシリコーン樹脂シートを作製した。
<発光ダイオード装置の作製>
1mm×1mmで、厚み100μmの平面視矩形状の発光ダイオード素子が、ワイヤボンディングにより接続された基板を用意した。
なお、ワイヤは、金からなる線径30μmであって、湾曲状をなし、その寸法は、素子側接点とワイヤの最上部分との上下方向長さが300μmであり、基板側接点とワイヤの最上部分との上下方向長さが450μmであり、素子側接点と基板側接点との左右方向長さが1500μmであった。
その後、シリコーン樹脂シートを10mm×10mmの平面視矩形状にカットし、その後、常温(25℃)で、発光ダイオード素子をシリコーン樹脂シートによって埋設した(図2(b)および図2(c)参照)。
具体的には、シリコーン樹脂シートを降下させ、封止樹脂層によって発光ダイオードおよびワイヤの表面を被覆した(図2(b)参照)。続いて、シリコーン樹脂シートの位置を、封止樹脂層の厚みが、押込み量100μm(押込み率16.7%=押込み量100μm/圧縮(圧着)前の封止樹脂層の厚み600μm×100%)圧縮されるように制御した状態で、25℃で、40秒保持し、シリコーン樹脂シートをアルミニウムコア基板に対して圧着した(図2(c)参照)。
その後、シリコーン樹脂シートおよび基板を、150℃に加熱することにより、封止樹脂層を硬化させて封止層とし、それによって発光ダイオード素子を封止した。これによって、発光ダイオード装置を作製した(図2(d)参照)。
実施例2、3、参考例4、5、実施例6および比較例1〜4
配合処方および加熱条件を表1に準拠して変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、続いて、シリコーン樹脂シートおよび発光ダイオード装置を作製した。
<評価>
各実施例、各参考例および各比較例のシリコーン樹脂シート、および、発光ダイオード装置について、下記について評価した。それらの結果を表1に示す。
(1)動的粘弾性測定(複素粘度およびtanδ)
シリコーン樹脂シートについて、動的粘弾性測定を実施した。
具体的には、上下方向に対向配置される2枚の直径25mmの円板を備えるレオメータを用いた。
詳しくは、Bステージ状態の封止樹脂層を備えるシリコーン樹脂シートの封止樹脂層の下面を下側の円板に載置し、その後、離型シートを封止樹脂層から引き剥がし後、上側の円板を、封止樹脂層の上面に接触させた。これによって、2枚の円板によって封止樹脂層を挟み込んだ。
その後、封止樹脂層について、30℃における周波数0.1〜50Hz、周波数増加速度10Hz/分、歪み1%の剪断モードで、動的粘弾性測定を実施することにより、周波数10Hzにおける複素粘度およびtanδを得た。
(2)加工性
上記(1)動的粘弾性測定(複素粘度およびtanδ)から以下の評価基準に従って、加工性を評価した。
×: 複素粘度が80Pa・s未満、あるいは、tanδが1.6を超過した。その状態では、流動性が高くシート形状を保持できなかった。つまり、保形性が不良であった。
○: 複素粘度80Pa・s以上で、かつ、tanδが1.6以下であった。その状態では、シートの加工性およびハンドリング性が良好であった。
(3)封止性
ワイヤの形状について、硬化シートによる封止前後においてX線観察装置にて観察し、以下の基準に従って、評価した。
○:ワイヤに変形が認められなかった。
△:ワイヤに変形がわずかに認められたが、発光ダイオード素子の発光に支障がなかった。
×:ワイヤに変形が認められて、発光ダイオード素子の発光に支障があった。
シリコーン微粒子:商品名「トスパール 2000B」、ポリメチルシルセスキオキサン微粒子、平均粒子径6.0μm、屈折率1.41、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製
シリカ微粒子1:商品名「FB−7SDC」、溶融シリカ微粒子、平均粒子径7μm、電気化学工業社製
シリカ微粒子2:商品名「FB−40S」、溶融シリカ微粒子、平均粒子径40μm、電気化学工業社製