以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る画像形成装置としてのカラープリンターについて説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るカラープリンター1の内部構造を模式的に示す断面図である。図2は、第1実施形態に係るカラープリンター1の画像形成部7の一部を模式的に示す側面図である。図3は、第1実施形態に係るカラープリンター1の画像形成部7および制御装置13を示すブロック図である。
図1に示すように、カラープリンター1は、プリンター本体2の内部に、記録媒体(図示せず)を収納した給紙カセット3と、給紙カセット3にセットされた記録媒体を搬送経路4に供給する給紙部5と、中間転写ベルト6にトナー像を一次転写する画像形成部7と、一次転写されたトナー像のトナー濃度を検知する単一の濃度検知器8と、一次転写されたトナー像を搬送経路4の中途部において記録媒体に二次転写する二次転写ニップ部9と、記録媒体に二次転写したトナー像を搬送経路4の下流側において定着させる定着装置10と、トナー像を定着させた記録媒体をプリンター本体2から排出させる排出口11と、二次転写後の中間転写ベルト6の表面に残留したトナーを除去させるクリーニング装置12と、カラープリンター1を統括制御する制御装置13と、を備えている。
中間転写ベルト6は、二次転写ニップ部9側に配置された駆動ローラー20およびクリーニング装置12側に配置されたテンションローラー21に巻き掛けられて水平方向に支持されている。中間転写ベルト6は、図示しない駆動装置により駆動ローラー20を回転駆動することで所定方向(図1の矢印参照)に回動する。
画像形成部7は、例えば、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナーを用いて画像形成処理を行うタンデム方式が採用されている。なお、以下の説明では、特に色指定に関する場合にのみ、各算用数字の符号に括弧書きで(Y,M,C,K)の色を付し、共通の場合には算用数字のみの符号を付して説明する。
画像形成部7は、色(Y,M,C,K)毎に対応して、補給用トナーを収納した複数のトナーコンテナ31と、パーソナルコンピューター(図示せず)から送信された印刷データに含まれる画像データに基づいてトナー像を担持する像担持体としての複数の感光体ドラム32と、各感光体ドラム32の表面にビーム光束(図1に示す矢印P参照)を出射して所定の静電潜像を形成する露光器33と、を有している。
各トナーコンテナ31は、プリンター本体2に対して着脱自在に装着されるようになっている。画像形成動作により各トナーコンテナ31に収容されたトナーが消費され、残り少なくなった(または無くなった)場合には、各トナーコンテナ31は、それぞれ交換することができるようになっている。
図1および図2に示すように、各感光体ドラム32は、中間転写ベルト6の下方に配置されている。各感光体ドラム32は、アルミニウム等の導電性材料で円筒状に形成されるドラム素管41と、ドラム素管41の外側(外周面)に積層形成された感光層42と、を含んで構成されている。感光層42は、有害性が低く量産性に優れる正帯電単層有機感光体を、ドラム素管41の外周面上に塗工して形成されている。なお、感光層42の層厚は、20〜30μm程度である。
また、各感光体ドラム32は、固定バイアス電源43に接続されている。固定バイアス電源43は、直流(DC)電源であり、固定バイアスを各感光体ドラム32に印加することにより、各感光体ドラム32の表面(感光層42)を帯電させる。また、固定バイアス電源43には、電圧を出力する電源部43aと、接地した状態とする接地部43bとを切り替えるための切替器43cが設けられている。
各感光体ドラム32の周囲には、感光体ドラム32の表面を目標とする表面電位に帯電させる帯電器としての帯電ローラー34と、露光器33が形成した静電潜像をトナーによりトナー像に現像する現像器35と、そのトナー像を感光体ドラム32と協働して中間転写ベルト6に一次転写する一次転写ローラー36と、感光体ドラム32の表面に残留したトナーを除去するクリーニングデバイス37と、感光体ドラム32の電荷を除去する除電デバイス(図示せず)とが、一次転写のプロセス順に配置されている。
図1に示すように、露光器33は、各感光体ドラム32(Y,M,C,K)に対応した複数の光源44(Y,M,C,K)から放射された各ビーム光束を、光源44(Y),(M)および光源44(C),(K)を対としてそれぞれ共用するポリゴンミラー等の偏光器45(YM),29(CK)で偏光走査しつつ、感光体ドラム32(Y,M,C,K)にビーム光束を結像する。
図1および図2に示すように、各帯電ローラー34は、その表面を感光体ドラム32の表面に接触させて、感光体ドラム32の感光層42を所定の極性および電位で一様に帯電させるものである(所謂、接触帯電方式)。各帯電ローラー34は、ニッケルメッキを施した快削鋼材(SUM材)やステンレス鋼(SUS材)等で形成される中実の導電性シャフト46と、導電性シャフト46の外側(外周面)に形成された導電性ゴム層47と、を含んで構成されている。導電性ゴム層47は、エピクロルヒドリンゴム等の導電性を有するゴムに、例えば、リチウムイオン等のイオン導電剤が配合されて形成されている。なお、導電性ゴム層47の層厚は、1〜3μm程度である。
また、各帯電ローラー34は、帯電バイアス電源48に接続されている。帯電バイアス電源48は、直流(DC)電源であり、帯電バイアスを各帯電ローラー34に印加することにより、感光体ドラム32の表面(感光層42)を帯電させる。
各現像器35は、感光体ドラム32の表面に対し所定の間隙を有して対向する現像ローラー51と、現像ローラー51の下方に配置され、その表面に対し所定の間隙を有して対向する磁気ローラー52と、を含んで構成されている。現像ローラー51および磁気ローラー52は、それぞれ非磁性の円筒状の現像スリーブ内にマグネットを固定して構成されている。なお、現像ローラー51のマグネットは、磁気ローラー52のマグネットとは異極性である。
また、各現像器35の現像ローラー51は、現像バイアス電源53に接続されている。現像バイアス電源53は、交流(AC)電源と直流(DC)電源とを含み、現像バイアスを現像ローラー51に印加する。各現像器35(現像ローラー51)は、印加された現像バイアスにより、トナーコンテナ31に収容されているトナーを用いて各感光体ドラム32の表面にトナー像を現像する。なお、各磁気ローラー52には図示しない電源が接続され、各磁気ローラー52に所定の電圧を印加する。
各一次転写ローラー36は、中間転写ベルト6を挟んで各感光体ドラム32に対向配置されている。また、各一次転写ローラー36は、転写バイアス電源54に接続されている(図3参照)。各一次転写ローラー36は、転写バイアス電源54から印加された一次転写バイアスにより、各感光体ドラム32の表面に現像されたトナー像を中間転写ベルト6に一次転写する。
各クリーニングデバイス37は、各感光体ドラム32の表面(感光層42の外周面)に摺接するクリーニングブレード55を含んで構成されている。各クリーニングブレード55は、図示しない付勢手段により感光体ドラム32に対して所定の圧力で押圧されており、感光体ドラム32の表面に残留したトナー等の付着物を掻き取るようにして除去する。なお、付勢手段を省略し、クリーニングブレード55自身(ウレタンゴム製)の弾性力により、感光体ドラム32に対して押圧されていてもよい。
濃度検知器8は、最も下流側の感光体ドラム32と二次転写ニップ部9(二次転写ローラー39)との間に配置されている。濃度検知器8は、所謂反射型光センサーであり、中間転写ベルト6に一次転写されたトナー像のトナー濃度を測定し、主に画像濃度補正を実施する用途等に用いられる。
二次転写ニップ部9は、搬送経路4の給紙部5より下流側で定着装置10よりも上流側に配置されている。二次転写ニップ部9は、中間転写ベルト6を挟んで駆動ローラー20と二次転写ローラー39とを対向配置させ、二次転写ローラー39を中間転写ベルト6に圧接することで構成されている。
二次転写ローラー39は、転写バイアス電源54に接続されている(図3参照)。二次転写ローラー39は、転写バイアス電源54から印加された二次転写バイアスにより、中間転写ベルト6上のトナー像を記録媒体に二次転写する。
図1に示すように、定着装置10は、記録媒体のトナー像が形成された側に配設される加熱ローラー56と、加熱ローラー56に対向する位置に配設され、図示しない付勢装置により加熱ローラー56側に付勢される加圧ローラー57と、を有している。記録媒体の表面に形成されたトナー像は、図示しないモーターにより回転駆動される加熱ローラー56に接触することにより溶融し、記録媒体の裏面側から従動回転する加圧ローラー57により加圧することにより、記録媒体に定着する。
図3に示すように、制御装置13は、CPU61(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリー等のメモリー62と、CPU61およびメモリー62を接続するバス63と、カラープリンター1の各構成が接続されるインターフェース64と、を有している。
CPU61は、メモリー62に記憶された各プロクラム等に従って演算処理を実行する。メモリー62には、画像形成処理制御に必要なプログラムや、その他カラープリンター1を統括制御するためのプログラムが記憶されている。また、メモリー62には、感光体ドラム32の表面電位の目標値や、帯電バイアス、現像バイアス、一次転写バイアスおよび二次転写バイアスの初期値等が予め設定(記憶)されている。なお、メモリー62は、濃度検知器8による測定結果(検知結果)を一次記憶する。
インターフェース64には、露光器33、固定バイアス電源43、帯電バイアス電源48、現像バイアス電源53および転写バイアス電源54等が接続されており、各機器に制御装置13からの各制御信号が送出されるようになっている。なお、図示は省略するが、インターフェース64には、カラープリンター1を構成する各部が接続され、メモリー62に記憶された各プログラムをCPU61が実行することにより、各部が適宜制御される。
次に、本実施形態のカラープリンター1による一般的な画像形成動作について説明する。上記の構成において、カラープリンター1に電源が投入されると、各種パラメータが初期化され、定着装置10の温度設定を行うなどの初期設定が実行される。そして、カラープリンター1に接続されたパーソナルコンピューター等から画像データが入力され、印刷開始の指示がなされると、以下のようにして画像形成動作が実行される。
まず、帯電ローラー34によって感光体ドラム32の表面(感光層42)が帯電された後、露光器33により感光体ドラム32に対して画像データに対応した露光が行われ、感光体ドラム32に静電潜像が形成される。次に、各現像器35は、この静電潜像を、対応する色のトナーによりトナー像に現像する。詳細には、磁気ローラー52に搬送されたトナーは、磁気ローラー52に印加される電圧と現像ローラー51に印加される現像バイアスとの電位差および磁界によって現像ローラー51の表面にトナー薄層を形成する(図2参照)。このトナー薄層は、現像ローラー51の回転によって感光体ドラム32との対向部分に搬送される。そして、現像ローラー51と感光体ドラム32との電位差によって、トナー薄層のトナーが、感光体ドラム32側に移動し、感光体ドラム32上の静電潜像が現像される。
各現像器35によって感光体ドラム32に現像されたトナー像は、トナー像を形成するトナーの極性と逆極性の電圧(一次転写バイアス)を一次転写ローラー36に印加することにより、中間転写ベルト6に一次転写される。この動作を色ごとに繰り返し実行することによって、中間転写ベルト6上にフルカラーのトナー像が形成される。濃度検知器8は、このフルカラーのトナー像のトナー濃度を測定し、この測定結果(検知結果)を制御装置13に送信する。制御装置13は、濃度検知器8の検知結果に基づき必要に応じて画像形成部7を制御することで画像濃度補正を実施する。
そして、このフルカラーのトナー像は、二次転写ローラー39にトナーと逆極性の電圧(二次転写バイアス)を印加することにより、搬送経路4を通って二次転写ニップ部9にニップ搬送されてきた記録媒体に二次転写される。この記録媒体に二次転写されたフルカラーのトナー像は、定着装置10で記録媒体に定着される。トナー像が定着した記録媒体は、排出口11から外部に排出される。なお、二次転写の完了後、画像形成部7の中間転写ベルト6の表面に残留したトナーは、クリーニング装置12によって除去される。
ところで、イオン導電タイプの帯電ローラー34は、その抵抗値が温度や湿度、劣化状況(経年変化)等の環境条件によって変化するという特性を有している。このため、感光体ドラム32の表面電位を一定に保つには、帯電ローラー34に印加する帯電バイアスを環境条件に応じて変化させる必要がある。
そこで、第1実施形態に係るカラープリンター1では、以下のようにして帯電ローラー34に印加する帯電バイアスの調整処理を行うことで、感光体ドラム32の表面電位を目標値に維持することができるようになっている。
以下、図4および図5を参照して、各感光体ドラム32の表面を目標の表面電位に維持するための帯電バイアスの調整処理について説明する。図4は、第1実施形態に係るカラープリンター1の制御装置13による帯電バイアスの調整処理を示すフローチャートである。図5は、第1実施形態に係るカラープリンター1の中間転写ベルト6上の第1トナー像のトナー濃度と固定バイアスとの関係、および中間転写ベルト6上の第2トナー像のトナー濃度と帯電バイアスとの関係を示す説明図である。なお、以下の説明では1つの感光体ドラム32について説明するが、他の感光体ドラム32についても同様の手順により制御される。
制御装置13は、CPU61によりメモリー62に記憶された帯電バイアスの調整処理用のプロクラムを実行する。なお、この帯電バイアスの調整処理は、ユーザーからの指示があった時、または、ユーザーの意思とは無関係に予め設定されたタイミングで制御装置13により自動的に行われる。
まず、帯電バイアスの調整処理のステップS1として、制御装置13は、固定バイアス電源43の切替器43cを電源部43aに切り替え接続させ(図2の破線参照)、感光体ドラム32を所定の速度で回転させ、感光体ドラム32の表面電位の目標値(以下、単に「目標値」という。)と同一値の固定バイアスを出力するように電源部43aを制御する。これにより、固定バイアス電源43から感光体ドラム32に固定バイアスが印加され、感光体ドラム32の感光層42は目標値で帯電した状態となる。
次に、ステップS2として、制御装置13は、現像バイアスを一定時間出力するように現像バイアス電源53を制御する。ここでは、固定バイアスとの間に電位差を生じさせトナー像を現像するために、現像バイアスは、固定バイアス(目標値)よりも高い一定の値となっている。現像バイアス電源53から現像ローラー51に現像バイアスが印加されることで、感光体ドラム32との間に電位差が生じ、感光体ドラム32上にトナー像(以下、「第1トナー像」という。)が現像される。そして、一般的な画像形成動作と同様に、転写バイアス電源54から一次転写ローラー36に一次転写バイアスが印加され、中間転写ベルト6に第1トナー像が一次転写される。
続いて、ステップS3では、この第1トナー像が中間転写ベルト6の回動により下流側に搬送され、濃度検知器8が第1トナー像のトナー濃度を測定(検知)する。制御装置13は、この第1トナー像のトナー濃度の検知結果をメモリー62に記憶する。これにより、制御装置13は、目標値で帯電した状態の感光体ドラム32に対応したトナー像のトナー濃度を認識することができる(図5に示す「A」参照)。
次に、ステップS4として、制御装置13は、固定バイアス電源43の電源部43aをOFFとすると共に切替器43cを接地部43bに切り替え接続させる(図2の実線参照)。
そして、ステップS5として、制御装置13は、帯電バイアス電源48を制御して、帯電ローラー34に帯電バイアスを印加する。この印加する帯電バイアスの初期値は、温度や湿度等の環境条件により異なるものとなっている。つまり、帯電バイアスの初期値は、環境条件に応じて複数設定されている。例えば、高温高湿の場合には、低温低湿の場合に比べて、帯電ローラー34(導電性ゴム層47)の抵抗値は低下するため、高温高湿の場合には、低温低湿の場合よりも、低い帯電バイアスを初期値として設定する。なお、これらの環境条件による各初期値は予め実験等により求めておく。帯電バイアス電源48から帯電バイアス(初期値)が印加されると、帯電ローラー34は、感光体ドラム32の感光層42を一様に帯電される。
続いて、ステップS6では、ステップS2と同様に、制御装置13は、現像バイアス電源53を制御して感光体ドラム32上にトナー像(以下、「第2トナー像」という。)を現像する。また、制御装置13は、転写バイアス電源54を制御して中間転写ベルト6に第2トナー像を一次転写する。
続いて、ステップS7では、この第2トナー像が中間転写ベルト6の回動により下流側に搬送され、制御装置13は、濃度検知器8により第2トナー像のトナー濃度を測定(検知)し、この検知結果をメモリー62に一時記憶する。
そして、ステップS8として、制御装置13は、濃度検知器8により検知され一時記憶された第2トナー像のトナー濃度と、ステップS3でメモリー62に記憶した検知結果とを比較する。すなわち、制御装置13は、第1トナー像のトナー濃度と、第2トナー像のトナー濃度とが同一であるか否かを比較判断する。
例えば、帯電バイアスおよびトナー濃度が、図5の「B」で示される場合、制御装置13は、第1トナー像と第2トナー像との各トナー濃度が同一でないと判断する。この場合、ステップS8において「NO」となりステップS9に進み、制御装置13は、帯電バイアス電源48を制御して、初期値(V0)から所定値(ΔV)を減算した帯電バイアス(V1=V0−ΔV)を算出する。なお、帯電バイアスを減少させる所定値(ΔV)は、メモリー62に予め記憶されている。
その後、再びステップS5に戻り、制御装置13は、減算された帯電バイアス(V1)を帯電ローラー34に印加する。そして、感光体ドラム32上に現像された第2トナー像を中間転写ベルト6上に一次転写する(ステップS6)。続くステップS7で、濃度検知器8による第2トナー像のトナー濃度の測定(検知)がなされ、再びステップS8で、上記したトナー濃度の比較判断がなされる。
例えば、帯電バイアスおよびトナー濃度が、図5の「C」で示される場合、制御装置13は、再び各トナー濃度が一致しないと判断され(ステップS8で「NO」)、ステップS9で、現在の帯電バイアスの値(V1)から、更に所定値(ΔV)を減算した帯電バイアス(V2=V1−ΔV)を帯電ローラー34に印加する。以降、制御装置13は、第2トナー像のトナー濃度が、メモリー62に記憶された検知結果(第1トナー像のトナー濃度)と同一になるまで繰り返し実行される。すなわち、帯電バイアスは、第2トナー像のトナー濃度がメモリー62に記憶された検知結果と同一となるように、一定割合で下降するように制御装置13(CPU61)により算出される。
一方、例えば、帯電バイアスおよびトナー濃度が、図5の「D」で示される場合、制御装置13は、第1トナー像と第2トナー像との各トナー濃度が同一(一致)であると判断する。この場合、ステップS8で「YES」となりステップS10に移行し、制御装置13は、その時の帯電バイアスの値をメモリー62に記憶する。このように、第1トナー像と第2トナー像との各トナー濃度が一致した状態における帯電バイアスを帯電バイアス電源48から帯電ローラー34に印加することにより、感光体ドラム32(感光層42)の表面電位は目標値と略同一となる。
以上のように、帯電バイアスが調整され、感光体ドラム32の表面が目標の表面電位に維持される。制御装置13は、メモリー62に記憶された調整後の帯電バイアスを帯電バイアス電源48から印加して、記録媒体に対する通常の画像形成を実行する。
次に、第1実施形態に係るカラープリンター1における帯電バイアスの調整処理の効果を確認するために行った検証実験について説明する。本検証実験は、京セラドキュメントソリューションズ株式会社製のカラープリンター(TASKalfa205C)を用いて行った。
なお、本検証実験に用いたカラープリンター1は、所謂タッチダウン現像方式の現像器35と、直径30mmのドラム素管41上に感光層42として正帯電単層有機感光体を積層(膜厚30μm)した感光体ドラム32とを採用し、感光体ドラム32の回転速度を160mm/sに設定している。また、帯電ローラー34は、直径8mmの導電性シャフト46上に導電性ゴム層47としてエピクロルヒドリンゴムを設けている。
また、感光体ドラム32の表面電位の目標値は520Vに設定されている。さらに、現像バイアスは、矩形波のAC電圧1.5kV(デューティー比30%)およびDC電圧+450Vに設定され、現像バイアスの印加時間は、トナー像の現像長さ10mm相当である約0.06sに設定されている。
まず、比較例として、帯電バイアス電源48から印加する帯電バイアスを1400V一定とし、環境条件(温度および湿度)を変化させた場合における感光体ドラム32の表面電位を計測した結果を表1に示す。なお、ここでは、温度23℃、湿度50%の環境条件を標準的な環境条件として設定している。
表1が示すように、標準的な環境条件では、感光体ドラム32の表面電位は略目標値に帯電しているが、標準的な環境条件よりも低温低湿または高温高湿の環境条件では、いずれも、目標値から大きくずれた結果となっている。これは、温度や湿度等によって各帯電ローラー34の抵抗値が変化することに起因するものと考えられる。
次に、上記した帯電バイアスの調整処理を実施した場合の感光体ドラム32の表面電位を計測した結果を表2に示す。なお、帯電バイアスを減少させる所定値(ΔV)は10Vに設定している。
表2が示すように、実験を行った全ての環境条件において、感光体ドラム32の表面電位が略目標値に帯電しているという結果となった。具体的には、感光体ドラム32の表面電位は、表面電位の目標値520Vに対して−3V(10℃/15%)〜+5V(32℃/80%)の範囲に調整されている。すなわち、帯電バイアスが、それぞれの環境条件に対応するように適切に調整されていることが確認された。
以上の第1実施形態に係るカラープリンター1によれば、標準的に設けられている画像濃度補正用の濃度検知器8を利用して検知したトナー濃度に基づいて帯電バイアスを調整することができる。また、1次転写された第1トナー像および第2トナー像の各トナー濃度を、単一の濃度検知器8により検知することができる。これにより、例えば、複数の感光体ドラム32の表面電位を検出するために、感光体ドラム32ごとに高価な電位センサー等を別途配設する必要が無く、プリンター本体2の内部構成を簡易なものとし省スペース化を図ることができると共にコストアップを抑制することができる。また、感光体ドラム32に対し、固定バイアス電源43から固定バイアスを直接的に印加することができるため、感光体ドラム32の表面電位を、確実に固定バイアスと同一の値とすることができる。これにより、感光体ドラム32の表面電位を目標値にすることができ、その表面電位(目標値)でのトナー濃度の検知結果を基準とすることができる。そして、この基準を目標として精度良く帯電バイアスの調整を行うことができる。
また、第1実施形態に係るカラープリンター1によれば、帯電バイアスと現像バイアスとの電位差が小さい程、トナー濃度は低くなるため、帯電バイアスを下降させる(図5において左から右へ移動させる)に従って、電位差が大きくなり、トナー濃度は高くなる(図5において下から上に移動する)。すなわち、帯電バイアスの調整を行う場合、トナーの消費量が少ない状態から、帯電バイアスの調整が進む(下降)に従ってトナーの消費量が多くなる。これにより、始めに多くのトナーを消費することが防止され、帯電バイアスの調整動作に係る無駄に消費されるトナーの量を最小限に抑制することができる。なお、トナー消費量抑制の観点から、上記したように帯電バイアスを下降させる方向に調整した方が好ましいが、帯電バイアスを上昇させながら調整しても構わない。
さらに、第1実施形態に係るカラープリンター1によれば、帯電バイアスの初期値は、環境条件に応じて複数設定されているため、温度や湿度によって変化する帯電ローラー34の抵抗値に合わせて帯電バイアスの初期値を設定することができる。上記した検証実験の結果を参照して考えると、例えば、標準的な環境条件(温度23℃/湿度50%)では帯電バイアスの初期値を1500V程度に設定し、これより低温低湿(温度10℃/湿度15%程度)である場合には帯電バイアスの初期値を1600V程度に設定することが考えられる。これにより、環境に応じた初期値から帯電バイアスの調整を開始することができるため、短時間で効率良く所望の帯電バイアス値に調整することができ、トナーの無駄な消費を抑制することができる。
なお、帯電バイアスの減算に用いる所定値(ΔV)は、任意の値に設定することができる。
(第1実施形態の変形例)
次に、図6を参照して、第1実施形態に係るカラープリンター1の変形例について説明する。図6は、第1実施形態の変形例に係るカラープリンター1の制御装置13による帯電バイアスの調整処理を示すフローチャートである。なお、第1実施形態に係るものと同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
上記した第1実施形態に係るカラープリンター1の帯電バイアスの調整処理では、第1トナー像と第2トナー像との各トナー濃度の比較判断(ステップS8)が行われた後に帯電バイアスの減算処理(ステップS9)が行われていた。すなわち、トナー像の現像と、検知・比較判断と、帯電バイアスの減算とが1つのサイクルとして行われていた。これに対し、本変形例に係るカラープリンター1の帯電バイアスの調整処理では、当該各トナー濃度が一致するまで帯電バイアスの減算処理を連続的に行われる。なお、ステップS1からステップS4までは、第1実施形態に係るものと同様であるため説明は省略する。
具体的には、図6に示すように、制御装置13は、ステップS4の後、ステップS100として、現像停止フラグをOFFにする(初期化)。なお、現像停止フラグの初期化は、ステップS1(またはその前)で実行されてもよい。
その後、制御装置13は、帯電バイアスおよび現像バイアスを印加(ステップS5,S6)し、第2トナー像の現像および一次転写が行われた後、ステップS9で帯電バイアスの減算を実行する。ステップS9は現像停止フラグがOFFの間(ステップS101で「NO」)、繰り返し実行される。また、制御装置13は、一次転写された第2トナー像のトナー濃度検知(ステップS7)を開始し、第1トナー像と第2トナー像との各トナー濃度が一致するまで繰り返し実行される(ステップS8で「NO」)。
制御装置13は、ステップS8で第1トナー像と第2トナー像との各トナー濃度が一致したと判断した場合(ステップS8で「YES」)、ステップS102で現像停止フラグをONにする。現像停止フラグがONになると、制御装置13は、帯電バイアスの減算を中止し(ステップS101で「YES」)、ステップS10に進み、ステップS8で各トナー濃度が一致した時の帯電バイアスをメモリー62に記憶する。制御装置13は、この記憶された帯電バイアスを帯電バイアス電源48から印加して通常の画像形成を実行する。なお、制御装置13は、帯電バイアスの初期値からの減算回数と、トナー濃度を検知したトナー像数とをメモリー62に一次記憶しており、ステップS8で各トナー濃度が一致した時の帯電バイアスの値を算出することができる。
以上の第1実施形態の変形例に係るカラープリンター1によれば、連続的に帯電バイアスを下降させながらトナー像を現像して、濃度検知器8により順次検知しているため、第1実施形態に係る帯電バイアスの調整処理に比べ、短時間で帯電バイアスの調整を完了することができる。
(第2実施形態)
次に、図7および図8を参照して、第2実施形態に係るカラープリンター1について説明する。図7は、第2実施形態に係るカラープリンター1の制御装置13による帯電バイアスの調整処理を示すフローチャートである。図8は、第2実施形態に係るカラープリンター1の感光体ドラム32の表面電位と帯電バイアスとの関係を示す説明図である。なお、第1実施形態に係るものと同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
上記した第1実施形態に係るカラープリンター1では、帯電バイアスの調整処理において、固定バイアスを、感光体ドラム32の表面電位の目標値と同一値としていた。このため、感光体ドラム32にトナー像を現像するための現像バイアスは、固定バイアスより高い値に設定しなければならなかった。この現像バイアスは、記録媒体に対する通常の画像形成を行う時よりも高い値であるため、現像バイアス電源53に負荷をかけ、破損や故障の原因となる虞があった。この場合、現像バイアス電源53に高電圧に対応した高圧トランスを備えることが望ましいが、現像バイアス電源53の大型化やコストアップ等の問題が生じる。
そこで、第2実施形態に係るカラープリンター1の帯電バイアスの調整処理では、固定バイアスを、目標値よりも低い値(例えば通常の画像形成を行う時の値)としている。すなわち、図7に示すように、制御装置13は、帯電バイアスの調整処理のステップS11において、固定バイアス(T0=目標値)から、予めメモリー62に記憶された所定値(ΔT)を引いた値(T1=T0−ΔT)を、低固定バイアス(T1)として出力するように固定バイアス電源43を制御する。なお、ステップS2からステップS9までは、第1実施形態に係るものと同様であるため説明は省略する。
そして、制御装置13は、ステップS103において、調整された低帯電バイアス(V11)に所定値(ΔT)を加えた値(V12=V11+ΔT)を、帯電バイアス(V12)としてメモリー62に記憶する。そして、制御装置13は、この帯電バイアス(V12)を出力するように帯電バイアス電源48を制御する。これは、図8に示すように、感光体ドラム32の表面電位と帯電バイアスとは、略1対1の線形の関係を有しているため、低固定バイアス(T1)と表面電位(目標値(T0))との差(ΔT=T0−T1)を、調整後の低帯電バイアス(V11)に後から加えることで適切な調整処理を行うことができるようになっている。
以上の第2実施形態に係るカラープリンター1によれば、感光体ドラム32を目標値より低い電位で帯電させることにより、現像器35の現像バイアスを低くすることができる。これにより、現像バイアス電源53に負荷をかけることなくトナー像を現像することができるため、現像バイアス電源53の破損や故障のリスクを低減させ、高寿命化を図ることができる。また、大型で高価な高耐圧型の現像バイアス電源53を設ける必要がないため、カラープリンター1の小型化および低コスト化を図ることができる。
(第3実施形態)
次に、図9を参照して、第3実施形態に係るカラープリンター1について説明する。図9は、第3実施形態に係るカラープリンター1の制御装置13による帯電バイアスの調整処理を示すフローチャートである。なお、第1実施形態に係るものと同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
ところで、濃度検知器8は最も下流側の感光体ドラム32と二次転写ローラー39との間に設けられているため、トナー像が濃度検知器8により検知されるまでには所定の時間がかかる。このため、例えば、第1実施形態の変形例において、ステップS8で「YES」と判断される第2トナー像が感光体ドラム32に現像されたとしても、これが中間転写ベルト6に一次転写され、濃度検知器8の検知可能範囲に搬送されるまでの間にも、現像器35により無駄なトナー像の現像が続けられることとなる。つまり、無駄にトナーが消費されることとなる。
そこで、第3実施形態に係るカラープリンター1の帯電バイアスの調整処理では、制御装置13は、メモリー62に予め記憶された所定範囲内で帯電バイアスを変化させるようになっている。例えば、帯電バイアスの初期値を1400Vとし、帯電バイアスを減少させる所定値(ΔV)を10Vとし、帯電バイアスを変化させる所定範囲を90Vとして設定している場合について以下説明する。この例では、帯電バイアスを1400Vから10Vずつ下降させるため、1つの所定範囲内では帯電バイアスが10段階に変化する。なお、ステップS1からステップS4までは、第1実施形態に係るものと同様であるため説明は省略する。
まず、図9に示すように、制御装置13は、ステップS104でカウンターを0(ゼロ)に初期化する。なお、カウンターの初期化は、ステップS1(またはその前)で実行されてもよい。
次に、制御装置13は、ステップS5,S6で第2トナー像を現像および一次転写させ、ステップS9で帯電バイアスの減算処理を行う。制御装置13は、ステップS9で帯電バイアスを1段階変化させるごとにカウンターを1つカウントアップする。すなわち、カウンターは、0から9まで10段階に変化する。そして、制御装置13は、ステップS105で、帯電バイアスの変化が所定範囲内での変化か否か、すなわちカウンターが「10」未満か否かを判断する。この例では、まず、帯電バイアスを1400Vから1310Vまで10段階に変化させながら(ステップS105で「YES」)、各帯電バイアスで第2トナー像を現像および一次転写させる。また、制御装置13は、各第2トナー像のトナー濃度を濃度検知器8により検知し、各検知結果をメモリー62に一次記憶させる(ステップS7)。
カウンターが「10」になると(ステップS105で「NO」)、制御装置13は、第1トナー像の検知結果と、メモリー62に一次記憶された各第2トナー像のトナー濃度とが一致するか否かを判断する(ステップS8)。
トナー濃度が一致しないと判断された場合(ステップS8で「NO」)、制御装置13は、ステップS106においてカウンターを0にリセットして、ステップS5に移行し、続けて帯電バイアスを10段階に変化(1300V〜1210V)させながら現像した各第2トナー像のトナー濃度を検知・一次記憶させる。すなわち、各所定範囲は連続しており、第1トナー像のトナー濃度の検知結果と同一となるまで、順次、所定範囲ごとに帯電バイアスを変化させる。
一方、メモリー62に一次記憶された10通りの第2トナー像のトナー濃度の中に、第1トナー像の検知結果と一致するものが存在した場合(ステップS8で「YES」)、ステップS10に移行し、制御装置13は、その一致した帯電バイアスの値をメモリー62に記憶する。
以上の第3実施形態に係るカラープリンター1によれば、各所定範囲内で帯電バイアスを変化させることができるため、例えば、1つの所定範囲内に、第1トナー像の検知結果と同一のトナー濃度となる帯電バイアスが存在した場合、無駄に消費されるトナーは、この1つの所定範囲内での調整処理(変化処理)で消費されるトナーに限定される。これにより、トナーの無駄な消費を有効に抑制することができる。なお、このような構成は、現像器35と濃度検知器8との離間距離が長い程、有効である。
なお、所定範囲は任意に設定することができ、また、帯電バイアスを減算させる所定値(ΔT)に応じてカウンターの大きさを設定することができる。なお、第3実施形態に係るカラープリンター1の帯電バイアスの調整処理は、第2実施形態に係るものと相互に組み合わせて実行してもよい。
なお、上記した各実施形態および変形例に係るカラープリンター1の帯電バイアスの調整処理は、1つの感光体ドラム32ごとに実行してもよいし、複数(第1実施形態では最大4つ)の感光体ドラム32について同時に実行してもよい。1つの感光体ドラム32ごとに実行する場合には、例えば、上流側から下流側へと順番に現像や転写等を行う。つまり、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の各トナー像が順次現像され、色ごとに当該調整処理が実行される。なお、下流側の感光体ドラム32から上流側の感光体ドラム32に向かって順番に現像や転写等を行ってもよい。
一方、例えば、4つの感光体ドラム32について同時に実行する場合には、中間転写ベルト6上に4色のトナー像が並んで転写される。なお、各色のトナー像同士の間ではトナー濃度が大きく変化するため、制御装置13は、トナー濃度が大きく変化する部分を検出することで各色を認識することができる。そして、4色のトナー像について、それぞれトナー濃度を連続的に検知し、色ごとに当該調整処理を実行する。これにより、例えば、個別に転写したトナー像のトナー濃度を検知する場合に比べて、短時間でトナー濃度の検知を終了することができる。
なお、上記した各実施形態および変形例に係るカラープリンター1では、各感光体ドラム32の表面(感光層42)に対し、各帯電ローラー34が回転自在に接触していたが、必ずしも接触している必要はない。すなわち、各帯電ローラー34と各感光体ドラム32との間に放電可能領域が保証されれば、非接触(近接)でも構わない。ここで、近接とは、各感光体ドラム32の表面(感光層42の外周面)と帯電ローラー34の表面(導電性ゴム層47の外周面)とが、5〜100μm程度、離間した状態をいう。
なお、上記した各実施形態および変形例では、カラープリンター1について説明したが、これに限定されるものではなく、モノクロプリンターに本発明を適用してもよい。この場合、中間転写ベルト6および二次転写ニップ部9を省略し、濃度検知器8は、単一の感光体ドラム32上に現像されたトナー像のトナー濃度を検知するように構成する。
なお、上記した本発明の各実施形態および変形例の説明は、本発明に係るカラープリンター1における好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。さらに、上記した本発明の各実施形態等における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、且つ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の各実施形態等の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。