以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の光走査装置を適用した画像形成装置1の内部構造の概略を示す図である。画像形成装置1は例えば、コピー、プリンター、スキャナー及びファクシミリーの機能を有するデジタル複合機に適用することができる。画像形成装置1は装置本体100、装置本体100の上に配置された原稿読取部200、原稿読取部200の上に配置された原稿給送部300及び装置本体100の上部前面に配置された操作部400を備える。
原稿給送部300は自動原稿送り装置として機能し、原稿載置部301に置かれた複数枚の原稿を連続的に原稿読取部200に送ることができる。
原稿読取部200は露光ランプ等を搭載したキャリッジ201、ガラス等の透明部材により構成された原稿台203、不図示のCCD(Charge Coupled Device)センサー及び原稿読取スリット205を備える。原稿台203に載置された原稿を読み取る場合、キャリッジ201を原稿台203の長手方向に移動させながらCCDセンサーにより原稿を読み取る。これに対して、原稿給送部300から給送された原稿を読み取る場合、キャリッジ201を原稿読取スリット205と対向する位置に移動させて、原稿給送部300から送られてきた原稿を、原稿読取スリット205を通してCCDセンサーにより読み取る。CCDセンサーは読み取った原稿を画像データとして出力する。
装置本体100は用紙貯留部101、画像形成部103及び定着部105を備える。用紙貯留部101は装置本体100の最下部に配置されており、用紙の束を貯留することができる用紙トレイ107を備える。用紙トレイ107に貯留された用紙の束において、最上位の用紙がピックアップローラー109の駆動により、用紙搬送路111へ向けて送出される。用紙は用紙搬送路111を通って、画像形成部103へ搬送される。
画像形成部103は搬送されてきた用紙にトナー画像を形成する。画像形成部103は感光体ドラム113、露光部115、現像部117及び転写部119を備える。露光部115は画像データ(原稿読取部200から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリー受信の画像データ等)に対応して変調された光を生成し、一様に帯電された感光体ドラム113の周面に照射する。これにより、感光体ドラム113の周面には画像データに対応する静電潜像が形成される。この状態で感光体ドラム113の周面に現像部117からトナーを供給することにより、周面には画像データに対応するトナー画像が形成される。このトナー画像は転写部119によって先ほど説明した用紙貯留部101から搬送されてきた用紙に転写される。
トナー画像が転写された用紙は定着部105に送られる。定着部105において、トナー画像と用紙に熱と圧力が加えられて、トナー画像は用紙に定着される。用紙はスタックトレイ121又は排紙トレイ123に排紙される。
操作部400は操作キー部401と表示部403を備える。表示部403はタッチパネル機能を有しており、ソフトキーを含む画面が表示される。ユーザーは画面を見ながらソフトキーを操作することによって、コピー等の機能の実行に必要な設定等をする。
操作キー部401にはハードキーからなる操作キーが設けられている。具体的にはスタートキー405、テンキー407、ストップキー409、リセットキー411、コピー、プリンター、スキャナー及びファクシミリーを切り換えるための機能切換キー413等が設けられている。
スタートキー405はコピー、ファクシミリー送信等の動作を開始させるキーである。テンキー407はコピー部数、ファクシミリー番号等の数字を入力するキーである。ストップキー409はコピー動作等を途中で中止させるキーである。リセットキー411は設定された内容を初期設定状態に戻すキーである。
機能切換キー413はコピーキー及び送信キー等を備えており、コピー機能、送信機能等を相互に切り替えるキーである。コピーキーを操作すれば、コピーの初期画面が表示部403に表示される。送信キーを操作すれば、ファクシミリー送信及びメール送信の初期画面が表示部403に表示される。
図2は、図1に示す画像形成装置1の構成を示すブロック図である。画像形成装置1は装置本体100、原稿読取部200、原稿給送部300、操作部400、制御部500及び通信部600がバスによって相互に接続された構成を有する。装置本体100、原稿読取部200、原稿給送部300及び操作部400に関しては既に説明したので、説明を省略する。
制御部500はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び画像メモリー等を備える。CPUは画像形成装置1を動作させるために必要な制御を、装置本体100等の画像形成装置1の上記構成要素に対して実行する。ROMは画像形成装置1の動作の制御に必要なソフトウェアを記憶している。RAMはソフトウェアの実行時に発生するデータの一時的な記憶及びアプリケーションソフトの記憶等に利用される。画像メモリーは画像データ(原稿読取部200から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリー受信の画像データ等)を一時的に記憶する。
通信部600はファクシミリー通信部601及びネットワークI/F部603を備える。ファクシミリー通信部601は相手先ファクシミリーとの電話回線の接続を制御するNCU(Network Control Unit)及びファクシミリー通信用の信号を変復調する変復調回路を備える。ファクシミリー通信部601は電話回線605に接続される。
ネットワークI/F部603はLAN(Local Area Network)607に接続される。ネットワークI/F部603はLAN607に接続されたパソコン等の端末装置との間で通信を実行するための通信インターフェイス回路である。
本実施形態に係る光走査装置3は、露光部115、回路(電気回路、電子回路)及びマイクロコンピューター等で構成される。図3は、露光部115を構成する光学部品の配置関係を示す図である。
露光部115は光源31、光偏向部10及び二つの走査レンズ33,35等を備える。光源31は例えば、レーザーダイオードであり、画像データに対応して変調された光ビームLBを射出する。
光源31と光偏向部10との光路上には、コリメーターレンズ37及びシリンドリカルレンズ39が配置されている。コリメーターレンズ37は光源31から射出された光ビームLBを平行光にする。シリンドリカルレンズ39は平行光にされた光ビームLBを線状に集光する。線状に集光された光ビームLBは光偏向部10に入射される。
光偏向部10と感光体ドラム113との光路上には、走査レンズ33と走査レンズ35が配置されている。光偏向部10のミラー部11に入射された光ビームLBは、ミラー部11で反射、偏向されて、走査レンズ33,35により感光体ドラム113に結像される。すなわち、光ビームLBを感光体ドラム113に走査することにより、感光体ドラム113に静電潜像が形成される。
露光部115はさらに、BDレンズ41及びBDセンサー43を備える。感光体ドラム113の一方の側部113aから他方の側部113bへ向けて、光ビームLBが感光体ドラム113を走査し、有効走査範囲Rを超えた光ビームLBは、BDレンズ41で集光されてBDセンサー43で受光される。BD(Beam Detect)センサー43は感光体ドラム113に走査(主走査)を開始する基準となるBD信号を生成する。
光偏向部10は圧電駆動型のMEMSミラーである。但し、光偏向部10に用いることができるMEMSミラーは、圧電駆動型に限定されない。図4は光偏向部10の原理を示す図であり、図5は図4に示す光偏向部10をA−A線に沿って切断した断面図である。光偏向部10はミラー部11、フレーム13、トーションバー15及びミラー駆動部17a,17b,17c,17dを備える。
フレーム13の形状は矩形である。フレーム13は長手方向に延びる一対の辺部13a,13bと、長手方向と直交する方向に延びる一対の辺部13c,13dとにより構成される。フレーム13の中心部にはミラー部11が配置されている。ミラー部11は、長軸方向がフレーム13の長手方向と合致した楕円形状を有する。光ビームはミラー部11に入射され、ミラー部11で反射、偏向される。
トーションバー15はミラー部11の楕円の短軸方向に延びており、その一端が梁19により支持され、その他端が梁21により支持されている。トーションバー15は、ミラー部11と一体形成されている。梁19,21はそれぞれ一対の辺部13c,13dにより支持されている。
梁19上には、トーションバー15より辺部13c側にミラー駆動部17aが形成され、トーションバー15より辺部13d側にミラー駆動部17bが形成されている。梁21上には、トーションバー15より辺部13c側にミラー駆動部17cが形成され、トーションバー15より辺部13d側にミラー駆動部17dが形成されている。ミラー駆動部17aは図5に示すように、下部電極23、PZT薄膜25及び上部電極27により構成される。ミラー駆動部17b,17c,17dはミラー駆動部17aと同じ構成を有する。以下、ミラー駆動部17a,17b,17c,17dを区別する必要がなければ、ミラー駆動部17と記載する。本偏向部10では、ミラー駆動部17に後述する第1の駆動信号又は第2の駆動信号が入力されることにより、第1の駆動信号及び第2の駆動信号に応じた駆動力でミラー部11が駆動振動する。
図6は図5と同じ断面において、ミラー駆動部17a,17cのPZT薄膜25が伸び、かつミラー駆動部17b,17dのPZT薄膜25が縮むように、ミラー駆動部17に駆動電圧を印加した状態を示す図である。図6では梁19,21が撓んでおり、これによりトーションバー15と一緒にミラー部11が傾いている。
以下、ミラー駆動部17a,17cのPZT薄膜25が伸び、かつミラー駆動部17b,17dのPZT薄膜25が縮む動作を第1の動作とし、ミラー駆動部17a,17cのPZT薄膜25が縮み、かつミラー駆動部17b,17dのPZT薄膜25が伸びる動作を第2の動作として説明する。第1の動作と第2の動作とが交互に繰り返されるように、ミラー駆動部17に対し駆動電圧を印加して梁19,21を撓ませることにより、ミラー部11がトーションバー15を軸にして振動し、偏向角θが変動する。尚、図4に示す符号NLはミラー部11が振動していないときのミラー部11の法線を示している。
駆動電圧の周波数をミラー部11の共振周波数と一致させると、ミラー部11が共振し、偏向角θの最大値を大きくすることができる。ミラー部11を共振させた状態で、ミラー部11で光ビームを反射、偏向させることにより、光ビームを感光体ドラム113に走査する。
図7は、本実施形態に係る光走査装置3の構成を示すブロック図である。光走査装置3は光源31、光偏向部10、判定部51、第1の駆動信号生成部53及び第2の駆動信号生成部55を備える。ミラー駆動部17はミラー部11を振動させて光ビームLBを走査する。
判定部51はBDセンサー43(図3)が光ビームLBを受光して出力した信号を利用して、ミラー駆動部17により振動させられているミラー部11の偏向角を測定し、ミラー部11の偏向角の変動範囲が予め定められた目標変動範囲と異なるかを判定する。そして、判定部51はミラー部11の偏向角の変動範囲が目標変動範囲と異なると判定した場合に、変動範囲のずれ量を演算する。
具体的には、光ビームLBを感光体ドラム113に走査する動作をしているときに、BDセンサー43で光ビームLBが受光される時間間隔を利用して、ミラー部11の偏向角の最大値が予め定められた目標偏向角と一致しているか否かを判定し、一致していないと判定した場合に偏向角の最大値と目標偏向角との差を演算する。BDセンサー43で光ビームLBが受光される時間間隔が長ければ、ミラー部11の偏向角の最大値が大きく、その時間間隔が短ければ、ミラー部11の偏向角の最大値が小さい。こうして、判定部51は、ミラー部11の偏向角の変動範囲と目標変動範囲との大小を判定している。なお、偏向角の最大値を用いないで、最大値とは別の予め定められた値の偏向角に到達する時間間隔に基づいて、ミラー部11の偏向角の変動範囲が目標変動範囲と異なるかを判定してもよい。
第1の駆動信号生成部53は、矩形波信号である第1の駆動信号を予め定められた周期で連続生成すると共にミラー駆動部17へ出力する。この第1の駆動信号生成部53は、判定部51によりミラー部11の偏向角の変動範囲が、目標変動範囲と異なると判定された場合、ミラー部11の偏向角の変動範囲を目標変動範囲にするために、第1の駆動信号を補正する。より詳しくは、第1の駆動信号生成部53は、ミラー部11の偏向角の変動範囲が目標変動範囲になるような駆動力をミラー部11に付与する信号に第1の駆動信号を補正する。すなわち、判定部51によりミラー部11の偏向角の変動範囲が目標変動範囲よりも小さいと判定された場合には、ミラー部11の偏向角の変動範囲を大きくするために、第1の駆動信号を駆動力が大きくなるように補正する一方、判定部51によりミラー部11の偏向角の変動範囲が目標変動範囲よりも大きいと判定された場合には、ミラー部11の偏向角の変動範囲を小さくするために、第1の駆動信号を駆動力が小さくなるように補正する。
第2の駆動信号生成部55は第1の駆動信号が補正される場合、矩形波信号である第2の駆動信号を一時的に(例えば半周期だけ(換言すれば1パルスだけ))生成すると共にミラー駆動部17へ出力する。詳しくは後述するが、第2の駆動信号は、ミラー部11の偏向角を大きくするか又は小さくするか、及び、補正する前の第1の駆動信号のデューティー比が50%より大きいか又は小さいかに応じて、パルス幅が調整される。
第2の駆動信号生成部55が第2の駆動信号を出力するタイミングは、第1の駆動信号生成部53が補正した第1の駆動信号の出力を開始する前であってもよいし、第1の駆動信号生成部53が補正した第1の駆動信号の出力を開始した後であってもよい。
尚、ミラー駆動部17が電圧で動作する場合、第1の駆動信号及び第2の駆動信号は電圧信号であり、ミラー駆動部17が電流で動作する場合、第1の駆動信号及び第2の駆動信号は電流信号となる。
本実施形態に係る光走査装置3よれば、前述したように第1の駆動信号を補正する場合に、第2の駆動信号を生成し、ミラー駆動部17に入力させている。これにより、ミラー部11の偏向角の変動範囲が目標変動範囲に到達する時間を短くできる効果が生じる。この効果を、第2の駆動信号を用いない比較例と比較して説明する。以下、ミラー部11の偏向角が大きくなるように第1の駆動信号を補正する際に、補正前の第1の駆動信号のデューティー比が50%より小さい場合について説明する。
比較例では、第1の駆動信号をミラー駆動部17に入力させるだけであり、第2の駆動信号は用いられない。ミラー駆動部17に入力される第1の駆動信号は、予め設定された周期で生成される矩形波である。図8は、比較例において、ミラー部11に作用するトルクと時間との関係を示すグラフである。横軸は時間(秒)を示し、縦軸はトルク(相対値)を示している。図9は、比較例において、ミラー部11の偏向角と時間との関係を示すグラフである。横軸は時間(秒)を示し、縦軸はミラー部11の偏向角(rad)を示している。ミラー部11に作用するトルクとミラー部11の偏向角との対応関係が分かるように、図8と図9は時間の範囲(0.007から0.01)を同じにしている。ミラー部11に作用するトルクは、ミラー部11に付与される駆動力を意味する。図10は、図9において、横軸の時間の範囲を長くし(0〜0.4)、縦軸の偏向角の範囲を限定(0.748〜0.758)したグラフである。比較例では、目標変動範囲における偏向角の最大値(以下、目標偏向角ともいう)を0.756radに設定している。
比較例では、図9、10に示すように、時間が0.00725のときに、偏向角の最大値が0.75radであり、目標偏向角である0.756radよりも小さいため、時間が0.0075のときに、第1の駆動信号のパルス幅を大きくする補正を開始して、ミラー部11の偏向角の変動範囲を大きくしている。第1の駆動信号のパルス幅は、ミラー部11に作用するトルクの変動を示す波形のパルス幅と対応する。第1の駆動信号のパルス幅(デューティー比)が大きくなると、後述するように基本波の振動係数が大きくなり、その結果、ミラー部11の偏向角が大きくなる。
図8中のL1で示す二点鎖線は、第1の駆動信号を補正しない場合において、ミラー部11に作用するトルクの変動を示す波形を表している。補正する前の第1の駆動信号によりミラー部11に作用するトルクの変動を示す波形のパルス幅W1は、補正する前の第1の駆動信号のパルス幅と見なすことができる。補正した第1の駆動信号によりミラー部11に作用するトルクの変動を示す波形のパルス幅W2は、補正した第1の駆動信号のパルス幅と見なすことができる。第1の駆動信号のパルス幅を大きくする補正をしたので、パルス幅W2はパルス幅W1より大きい。
図9はミラー部11の偏向角を示しているが、時間0.0075(第1の駆動信号を補正を開始した時間)の前後で、ミラー部11の偏向角の変動範囲の変化が明確に現れていない。そこで、図10を参照すると、比較例では、約0.2秒経過後、偏向角の最大値が目標偏向角である0.756radに到達していることが分かる。つまり、補正後の第1の駆動信号をミラー駆動部17に入力しても、ミラー部11の偏向角の最大値が早期に目標偏向角に達していない。これは、補正後の第1の駆動信号をミラー駆動部17に入力しても、ミラー部11は即座に応答せず、遅れて応答するためである。
次に、第2の駆動信号を用いる本実施形態について説明する。図11は、本実施形態において、ミラー部11に作用するトルクと時間との関係を示すグラフである。図11は図8と同様に、横軸が時間(秒)を示し、縦軸がトルク(相対値)を示している。図12は、本実施形態において、ミラー部11の偏向角と時間との関係を示すグラフである。図12は図9と同様に、横軸が時間(秒)を示し、縦軸がミラー部11の偏向角(rad)を示している。図13は、図12の点線で示す領域を拡大した図である。ミラー駆動部17に入力される第1の駆動信号は、比較例と同様の矩形波である。ミラー駆動部17に入力される第2の駆動信号は、半周期(1パルス)の矩形波である。本実施形態では、比較例と同様に、目標変動範囲における偏向角の最大値を0.756radに設定している。
本実施形態では、時間0.00725のときに偏向角の最大値が0.75radで目標偏向角である0.756radよりも小さいため、比較例と同様に、時間が0.0075のときに、ミラー部11の偏向角の変動範囲を大きくする調整をする。具体的には、最初に、半周期の矩形波である第2の駆動信号を生成して、ミラー駆動部17に入力させ、次に、補正した第1の駆動信号を生成して、ミラー駆動部17に入力させている。
図11中のL1で示す二点鎖線は、第2の駆動信号を生成せず、かつ第1の駆動信号を補正しない場合において、第1の駆動信号によりミラー部11に作用するトルクの変動を示す波形を表している。L2で示す点線は、第2の駆動信号を生成せず、かつ第1の駆動信号を補正した場合において、ミラー部11に作用するトルクの変動を示す波形を表している。
補正する前の第1の駆動信号によりミラー部11に作用するトルクの変動を示す波形のパルス幅W1は、補正する前の第1の駆動信号のパルス幅と見なすことができる。補正した第1の駆動信号によりミラー部11に作用するトルクの変動を示す波形のパルス幅W2は、補正した第1の駆動信号のパルス幅と見なすことができる。第2の駆動信号によりミラー部11に作用するトルクの変動を示す波形のパルス幅W3は、第2の駆動信号のパルス幅と見なすことができる。
補正した第1の駆動信号のパルス幅は、補正する前の第1の駆動信号のパルス幅より大きいので、パルス幅W2はパルス幅W1より大きい。第2の駆動信号のパルス幅は、補正した第1の駆動信号のパルス幅より大きいので、パルス幅W3はパルス幅W2より大きい。
本実施形態において、第1の駆動信号の補正前の波高値及び補正後の波高値は、比較例での第1の駆動信号の補正前の波高値及び補正後の波高値と同じにされている。第2の駆動信号の波高値は、補正した第1の駆動信号の波高値と同じにされている。第2の駆動信号のパルス幅は、補正した第1の駆動信号のパルス幅より大きくにされている。
図12はミラー部11の偏向角を示しているが、ミラー部11の偏向角の変動範囲の変化が明確に現れていない。そこで、図13を参照すると、時間が0.0085を経過する前に、偏向角の最大値が、目標偏向角である0.756radに到達している。つまり、第2の駆動信号をミラー駆動部17に入力することで、ミラー部11の偏向角の最大値が早期に目標偏向角に達している。
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置3によれば、第1の駆動信号が補正される場合に第2の駆動信号がミラー駆動部17へ出力される。補正前の第1の駆動信号のデューティー比が50%より小さいときにミラー部11の偏向角を大きくする場合、第2の駆動信号は、補正した第1の駆動信号よりも基本波の振動係数が大きい。よって、第2の駆動信号によりミラー部11に付与される駆動力は、補正した第1の駆動信号によりミラー部11に付与される駆動力よりも大きい。
このように、ミラー部11の偏向角を大きくするために第1の駆動信号が補正される場合に、ミラー駆動部17には補正した第1の駆動信号に加えて上述した補正した第1の駆動信号に対するミラー部11の応答の遅れを抑制するための第2の駆動信号が入力される。従って、補正した第1の駆動信号のみがミラー駆動部17に入力される方式よりも、ミラー駆動部17がミラー部11を駆動する駆動力を大きくできるので、ミラー部11の偏向角を大きくする場合にミラー部11の偏向角の変動範囲が目標変動範囲に到達する時間を短くすることが可能となる。
さらに、本実施形態によれば、図11に示すように、第2の駆動信号生成部55が第2の駆動信号をミラー駆動部17へ出力するタイミングは、第1の駆動信号生成部53が補正した第1の駆動信号をミラー駆動部17へ出力するタイミングと異なる。このように、第2の駆動信号をミラー駆動部17へ出力するタイミングが、補正した第1の駆動信号をミラー駆動部17へ出力するタイミングと異なっている(言い換えれば、重なっていない)ため、第1の駆動信号を生成する回路と第2の駆動信号を生成する回路とを共通化することも可能である。
また、本実施形態によれば、第2の駆動信号生成部55は、図11に示すように、第1の駆動信号生成部53が補正した第1の駆動信号をミラー駆動部17へ出力を開始する前に、第2の駆動信号をミラー駆動部17へ出力する。補正した第1の駆動信号の出力開始後に第2の駆動信号を出力すると、第2の駆動信号の出力時に、ミラー部11の偏向角の変動範囲が既に目標変動範囲に到達している場合がある。この場合、第2の駆動信号の出力が無駄になる。本実施形態によれば、補正した第1の駆動信号の出力が開始される前に第2の駆動信号を出力するので、第2の駆動信号の出力時に、ミラー部11の偏向角の変動範囲が目標変動範囲に到達していない。従って、第2の駆動信号の出力が無駄になることを防止できる。
以上は、(a)補正前の第1の駆動信号のデューティー比が50%より小さいときにミラー部11の偏向角を大きくする場合の説明である。本実施形態では、前述したように、ミラー部11の偏向角を大きくするか又は小さくするか、及び、補正する前の第1の駆動信号のデューティー比が50%より大きいか又は小さいかに応じて、第2の駆動信号が生成される。
MEMSミラーのような共振周波数で動作するデバイスについて、MEMSミラーを駆動するパルス信号のデューティー比と、そのパルス信号の基本波の振幅係数との関係を図14のグラフに示す。グラフの横軸はパルス信号のデューティー比であり、縦軸がパルス信号の基本波の振幅係数である。
振幅係数はMEMSミラーの振れの大きさと関係する。振幅係数が大きければ、MEMSミラーの振れが大きくなり、逆に、振幅係数が小さければ、MEMSミラーの振れが小さくなる。
パルス信号のデューティー比が0%から大きくなるにしたがって(言い換えれば、パルス信号のパルス幅が0から大きくなるにしたがって)、振幅係数が大きくなり(言い換えれば、MEMSミラーの振れが大きくなり)、デューティー比が50%で振幅係数が最大となる。パルス信号のデューティー比が50%を超えると、デューティー比が大きくなるにしたがって(言い換えればパルス幅が大きくなるにしたがって)、振幅係数が小さくなる(MEMSミラーの振れが小さくなる)。従って、ミラー部11の偏向角を大きくしたり、小さくしたりする場合、補正する前の第1の駆動信号のデューティー比が50%より小さいか、又は大きいかにより処理が異なる。
即ち、上記(a)では、補正する前の第1の駆動信号のデューティー比が50%より小さいので、ミラー部11の偏向角を大きくする場合、第1の駆動信号生成部53は、基本波の振幅係数が大きくなるように第1の駆動信号のデューティー比を調整(パルス幅を調整)するために、補正後の第1の駆動信号のデューティー比(パルス幅)を補正前の第1の駆動信号のデューティー比(パルス幅)よりも大きくする。第2の駆動信号生成部55は補正した第1の駆動信号の波高値と同じ波高値を有し、かつ補正した第1の駆動信号のデューティー比に対応する基本波の振幅係数よりも大きい振幅係数が得られるようにデューティー比を調整(パルス幅を調整)した第2の駆動信号を生成すると共に、該第2の駆動信号をミラー駆動部17へ出力する。従って、第2の駆動信号のパルス幅は、補正後の第1の駆動信号より大きくなる。
上記(a)以外の場合である(b)補正前の第1の駆動信号のデューティー比が50%より大きいときに、ミラー部11の偏向角を大きくする場合、(c)補正前の第1の駆動信号のデューティー比が50%より小さいときに、ミラー部11の偏向角を小さくする場合及び(d)補正前の第1の駆動信号のデューティー比が50%より大きいときに、ミラー部11の偏向角を小さくする場合について簡単に説明する。
(b)では、補正する前の第1の駆動信号のデューティー比が50%より大きいので、ミラー部11の偏向角を大きくする場合、第1の駆動信号生成部53は、基本波の振幅係数が大きくなるように第1の駆動信号のデューティー比を調整(パルス幅を調整)するために、補正後の第1の駆動信号のデューティー比(パルス幅)を補正前の第1の駆動信号のデューティー比(パルス幅)よりも小さくする。
第2の駆動信号生成部55は補正した第1の駆動信号の波高値と同じ波高値を有し、かつ補正した第1の駆動信号のデューティー比に対応する基本波の振幅係数よりも大きい振幅係数が得られるようにデューティー比を調整(パルス幅を調整)した第2の駆動信号を生成すると共に、該第2の駆動信号をミラー駆動部17へ出力する。従って、第2の駆動信号のパルス幅は、補正後の第1の駆動信号よりも小さくなる。
(b)において、ミラー駆動部17には補正した第1の駆動信号に加えて上述したような補正後の第1の駆動信号に対するミラー部11の応答の遅れを抑制するための第2の駆動信号が入力される。従って、補正した第1の駆動信号のみがミラー駆動部17に入力される方式よりも、ミラー駆動部17がミラー部11を駆動する駆動力を大きくできるので、ミラー部11の偏向角を大きくする場合にミラー部11の偏向角の変動範囲が目標変動範囲に到達する時間を短くすることが可能となる。
(c)では、補正する前の第1の駆動信号のデューティー比が50%より小さいので、ミラー部11の偏向角を小さくする場合、第1の駆動信号生成部53は、基本波の振幅係数が小さくなるように第1の駆動信号のデューティー比を調整(パルス幅を調整)するために、補正した第1の駆動信号のデューティー比(パルス幅)を、補正する前の第1の駆動信号のデューティー比(パルス幅)より小さくする。第2の駆動信号生成部55は補正した第1の駆動信号の波高値と同じ波高値を有し、かつ補正した第1の駆動信号のデューティー比に対応する基本波の振幅係数よりも小さい振幅係数が得られるようにデューティー比を調整(パルス幅を調整)した第2の駆動信号を生成すると共に、該第2の駆動信号をミラー駆動部17へ出力する。従って、第2の駆動信号のパルス幅は、補正後の第1の駆動信号よりも小さくなる。
(d)では、補正する前の第1の駆動信号のデューティー比が50%より大きいので、ミラー部11の偏向角を小さくする場合、第1の駆動信号生成部53は、基本波の振幅係数が小さくなるように第1の駆動信号のデューティー比を調整(パルス幅を調整)するために、補正した第1の駆動信号のデューティー比(パルス幅)を、補正する前の第1の駆動信号のデューティー比(パルス幅)より大きくする。第2の駆動信号生成部55は補正した第1の駆動信号の波高値と同じ波高値を有し、かつ補正した第1の駆動信号のデューティー比に対応する基本波の振幅係数よりも小さい振幅係数が得られるようにデューティー比を調整(パルス幅を調整)した第2の駆動信号を生成すると共に、該第2の駆動信号をミラー駆動部17へ出力する。従って、第2の駆動信号のパルス幅は、補正後の第1の駆動信号よりも大きくなる。
(c)及び(d)において、ミラー駆動部17には補正した第1の駆動信号に加えて上述したような補正後の第1の駆動信号に対するミラー部11の応答の遅れを抑制するための第2の駆動信号が入力される。従って、補正した第1の駆動信号のみがミラー駆動部17に入力される方式よりも、ミラー駆動部17がミラー部11を駆動する駆動力を小さくできるので、ミラー部11の偏向角を小さくする場合にミラー部11の偏向角の変動範囲が目標変動範囲に到達する時間を短くすることが可能となる。
尚、本実施形態において、ミラー部11の偏向角を大きくする場合、第2の駆動信号生成部55を以下のように表現することもできる。第2の駆動信号生成部55は、ミラー部11の偏向角を大きくするために第1の駆動信号が補正される場合、(1)補正する前の第1の駆動信号のデューティー比が50%より小さければ、補正した第1の駆動信号の波高値と同じ波高値を有し、かつ補正した第1の駆動信号のパルス幅より大きいパルス幅を有する第2の駆動信号をミラー駆動部17へ出力し、(2)補正する前の第1の駆動信号のデューティー比が50%より大きければ、補正した第1の駆動信号の波高値と同じ波高値を有し、かつ補正した第1の駆動信号のパルス幅より小さいパルス幅を有する第2の駆動信号をミラー駆動部17へ出力する。
ミラー部11の偏向角を小さくする場合、第2の駆動信号生成部55を以下のように表現することもできる。第2の駆動信号生成部55は、ミラー部11の偏向角を小さくするために第1の駆動信号が補正される場合、(3)補正する前の第1の駆動信号のデューティー比が50%より小さければ、補正した第1の駆動信号の波高値と同じ波高値を有し、かつ補正した第1の駆動信号のパルス幅より小さいパルス幅を有する第2の駆動信号をミラー駆動部17へ出力し、(4)補正する前の第1の駆動信号のデューティー比が50%より大きければ、補正した第1の駆動信号の波高値と同じ波高値を有し、かつ補正した第1の駆動信号のパルス幅より大きいパルス幅を有する第2の駆動信号をミラー駆動部17へ出力する。
次に、本実施形態に係る光走査装置3を適用した画像形成装置1について説明する。図3を参照して、光源31から射出された光ビームLBを感光体ドラム113(像担持体の一例)に走査して静電潜像を形成する。本実施形態に係る光走査装置3(図7)は片側主走査を実行して静電潜像を形成する。片側主走査とは、一方の側部113aから他方の側部113bへ向けて感光体ドラム113を主走査し、他方の側部113bから一方の側部113aへ向けて感光体ドラム113を走査しない主走査をいう。片側主走査によれば、両側主走査に比べて、画像の形成速度は劣るが、画像の再現性を向上させることができる。
第1の駆動信号が補正される場合、主走査終了後、次の主走査を開始する前に(言い換えれば、主走査終了後、次の主走査をするために、ミラー部11の偏向角が変動している期間に)、第2の駆動信号生成部55は、第2の駆動信号をミラー駆動部17へ出力することを開始し、かつ第1の駆動信号生成部53は、補正した第1の駆動信号をミラー駆動部17へ出力することを開始する。
本実施形態に係る光走査装置3を適用した画像形成装置1の動作を主に、図3、図7及び図15を用いて説明する。図15はその動作を説明するフローチャートである。画像形成装置1が画像形成動作を開始する(ステップS1)。画像形成動作とはコピージョブやプリンタージョブ等を実行する動作をいう。この動作には、光ビームLBを感光体ドラム113に走査する以下の動作が含まれる。第1の駆動信号生成部53は第1の駆動信号を生成し、第1の駆動信号がミラー駆動部17に入力される。これにより、ミラー駆動部17がミラー部11を駆動して、ミラー部11を共振させる。ミラー部11が共振した状態で、光源31は画像データに対応して変調された光ビームLBを照射する。光ビームLBはミラー部11で反射、偏向されて、回転する感光体ドラム113を走査する。
判定部51は、ミラー駆動部17により振動させられているミラー部11の偏向角を測定し、ミラー部11の偏向角の変動範囲が目標変動範囲と異なるかを判定する(ステップS2)。判定部51が、ミラー部11の偏向角の変動範囲が目標変動範囲と異なると判定した場合(ステップS2でYes)、制御部500は主走査終了後(すなわち、画像データに応じた光ビームLBの出力終了後)、次の主走査を開始する前(すなわち、次の画像データに応じた光ビームLBの出力を開始する前)の期間か否か判断する(ステップS3)。
制御部500が主走査終了後、次の主走査を開始する前の期間と判断しない場合(ステップS3でNo)、言い換えれば、主走査の期間中と判断した場合、ステップS3を繰り返す。
制御部500が主走査終了後、次の主走査を開始する前の期間と判断した場合(ステップS3でYes)、第2の駆動信号生成部55は1パルスの第2の駆動信号の出力を開始し、続けて第1の駆動信号生成部53は補正した第1の駆動信号の出力を開始する(ステップS4)。これにより、偏向角の変動範囲が目標変動範囲に調整される。
制御部500は最後の画像の印刷を終了したか判断する(ステップS5)。制御部500は最後の画像の印刷を終了したと判断した場合(ステップS5でYes)、制御部500は画像形成動作を終了させる。制御部500が最後の画像の印刷を終了したと判断しない場合(ステップS5でNo)、ステップS2に戻る。
判定部51が、ミラー部11の偏向角の変動範囲が目標変動範囲と異なると判定しない場合(ステップS2でNo)、言い換えれば、ミラー部11の偏向角の変動範囲が目標変動範囲と一致している場合、ステップS5へ進む。
本実施形態に係る光走査装置3を適用した画像形成装置1は、以下の効果を有する。一方の側部113aから他方の側部113bへ向けて感光体ドラム113を主走査する期間(すなわち、画像データに応じた光ビームLBの出力する期間)に、第2の駆動信号及び補正した第1の駆動信号の出力を開始すると、その主走査する期間にミラー部11の偏向角の変動範囲が変わることにより、画像の再現性が低下するおそれがある。この画像形成装置1によれば、第1の駆動信号が補正される場合、主走査終了後、次の主走査を開始する前に(言い換えれば、主走査終了後、次の主走査をするために、ミラー部11の偏向角が変動している期間に)、第2の駆動信号及び補正した第1の駆動信号の出力を開始する。従って、次に、一方の側部113aから他方の側部113bへ向けて感光体ドラム113を主走査するときには、ミラー部11の偏向角の変動範囲を目標変動範囲に調整することが可能となるので、画像の再現性が低下するのを防止できる。
尚、上記実施形態では、本発明を画像形成装置に適用した場合について説明したが、本発明は、画像形成装置に限られず、プロジェクターやバーコードリーダー等の光走査装置に適用することもできる。