JP5878619B2 - 汚泥の凝集方法及び装置 - Google Patents

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Description

本発明は、汚泥の凝集方法及び凝集装置に関する。例えば、廃水処理施設や浄水処理施設などから排出される汚泥を減容化するための脱水処理において、汚泥を凝集させるための凝集方法及びそれに用いる凝集装置に関する。
廃棄物量を削減し、環境負荷を低減することが求められる中、廃水処理施設や浄水処理施設などから排出される汚泥を減容化するための脱水処理技術は極めて重要であり、より効率的な汚泥の脱水処理技術が望まれている。
汚泥の脱水処理は、凝集剤を用いて汚泥を凝集させる凝集工程と、脱水機により凝集汚泥を脱水する脱水工程とから構成されるのが一般的である。汚泥の脱水処理における成功の可否は、凝集剤によって如何に効果的に凝集させることができるかに依るところが大きい。
凝集剤による汚泥の凝集方法のうち、撹拌する際の回転速度が異なる2段階の撹拌工程により汚泥を凝集させる方法に関連する技術として、下記のような先行技術が知られている。
特開2006-263514号公報(特許文献1)には、濁水に無機系凝集剤Aを添加して撹拌混合した後、これに有機系凝集剤Bを添加し、緩速撹拌してフロックLを生成し、該フロックLに無機系凝集剤Cを添加して撹拌混合し、前記フロックLを分解又は破壊した後、これを脱水処理することを特徴とする濁水の凝集脱水処理方法が開示されている。
特開平11−57800号公報(特許文献2)には、有機性汚泥に無機凝集剤および第1のポリマーとして両性ポリマーを添加して強撹拌し、さらに第2のポリマーとして両性ポリマーを添加して緩速撹拌した後、加圧脱水することを特徴とする汚泥脱水方法が開示されている。
特開昭62−277200号公報(特許文献3)には、両性の高分子凝集剤を用いて有機質汚泥を凝集するに当って、第1段処理において該汚泥と該両性の高分子凝集剤の一部とを比較的強撹拌の下で接触させ、第2段処理において前記の第1段処理汚泥と該両性の高分子凝集剤の残部とを比較的弱撹拌の下で接触させることを特徴とする、汚泥の凝集処理方法が開示されている。
特開昭57−130599号公報(特許文献4)には、汚泥に対し、汚泥の電荷と反対の電荷を有する第1の高分子凝集剤を添加して第1の撹拌を行い、次いで第1の高分子凝集剤と反対の電荷を有する第2の高分子凝集剤を添加して第2の撹拌を行い、生成したフロックを脱水する方法において、第1の撹拌はフロックを生成しないか、または生成したフロック径が2mm以下となるような強い撹拌であることを特徴とする汚泥脱水法が開示されている。
特開2006-263514号公報 特開平11−57800号公報 特開昭62−277200号公報 特開昭57−130599号公報
本発明の目的は、撹拌する際の回転速度が異なる2段階の撹拌工程により汚泥を凝集させる方法において、汚泥の凝集に必要な凝集剤の注入量を削減することができ、しかも、脱水後に得られる脱水ケーキの含水率を低減して廃棄物量を削減することができる、新たな汚泥の凝集方法及び凝集装置を提供することにある。
本発明は、DAM系高分子凝集剤、DAA系高分子凝集剤、アミジン系高分子凝集剤から選ばれる少なくとも1つの第1の高分子凝集剤の溶液を、被処理物としての嫌気性消化汚泥に注入し、撹拌機の回転速度を1000rpm以上に設定した高速撹拌により、前記汚泥と前記第1の高分子凝集剤の溶液とを混合して混合汚泥を調製する第1撹拌工程と、DAM系高分子凝集剤、DAA系高分子凝集剤、アミジン系高分子凝集剤から選ばれる少なくとも1つの第2の高分子凝集剤の溶液を前記混合汚泥に注入し、撹拌槽で前記混合汚泥と前記第2の高分子凝集剤の溶液とを混合して凝集フロックを成長させる第2撹拌工程と、を有する汚泥の凝集方法を提案する。
本発明はまた、第1撹拌槽と第2撹拌槽とを備え、前記第1撹拌槽は、DAM系高分子凝集剤、DAA系高分子凝集剤、アミジン系高分子凝集剤から選ばれる少なくとも1つの第1の高分子凝集剤の溶液を、被処理物としての嫌気性消化汚泥に注入し、撹拌機の回転速度を1000rpm以上に設定した高速撹拌により、前記汚泥と第1の高分子凝集剤の溶液を混合して混合汚泥を調製する手段を備え、前記第2撹拌槽は、DAM系高分子凝集剤、DAA系高分子凝集剤、アミジン系高分子凝集剤から選ばれる少なくとも1つの第2の高分子凝集剤の溶液を前記混合汚泥に注入し、撹拌槽で前記混合汚泥と第2の高分子凝集剤の溶液とを混合して凝集フロックを成長させる手段を備えた汚泥の凝集装置を提案する。
本発明が提案する汚泥の凝集方法又は汚泥の凝集装置によれば、被処理物である汚泥を凝集させるのに使用する高分子凝集剤の注入量を削減できる。さらに、脱水後に得られる脱水ケーキの含水率を低減できるから、廃棄物量を削減できる。この際、第1の高分子凝集剤及び第2の高分子凝集剤のそれぞれの特性に応じて、第1の高分子凝集剤と第2の高分子凝集剤との注入量の割合を適切に制御することにより、前記汚泥を凝集させるのに使用する前記高分子凝集剤の合計注入量をより一層削減できるうえ、脱水後に得られる脱水ケーキの含水率をさらに低減できるから、廃棄物量をさらに削減することができる。
また、高速回転での高速撹拌によって、高濃度の高分子凝集剤を含む高分子凝集剤溶液を使用できるようになるため、高分子凝集剤の溶解水量をより一層削減することができる。これにより、高分子凝集剤の溶解槽や高分子凝集剤溶液の送液ポンプなどの周辺設備を小型化、省エネルギー化することができる。さらには、脱水ろ液を水処理系に返流する場合、返流水量を削減できるため、水処理系全体の省エネルギー化、省スペース化が可能となる。
本発明の凝集装置の一例を示した概略図である。 本発明の凝集装置の上記とは異なる一例を示した概略図である。 本発明の凝集装置の上記とは異なる一例を示した概略図である。 本発明の凝集装置の上記とは異なる一例を示した概略図である。 本発明の凝集装置の上記とは異なる一例を示した概略図である。 実施例5の試験結果として、第一の高分子凝集剤の注入量とSS回収率の比との関係を示したグラフである。 実施例6の試験結果として、高分子凝集剤の注入率と脱水ケーキ含水率との関係を示したグラフである。
次に、本発明を実施するための形態の例に基づいて本発明を説明するが、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
<本凝集方法>
本実施形態に係る汚泥の凝集方法(以下「本凝集方法」と称する)は、第1の高分子凝集剤の溶液を汚泥に注入し、高速撹拌により汚泥と第1の高分子凝集剤の溶液を混合して混合汚泥を調製する第1撹拌工程と、第2の高分子凝集剤の溶液を前記混合汚泥に注入し、前記より低速の撹拌(「通常撹拌」とも称する)により混合汚泥と第2の高分子凝集剤の溶液を混合して凝集フロックを形成させる第2撹拌工程と、を有する汚泥の凝集方法である。
<汚泥>
本凝集方法において被処理物とし得る汚泥は、有機性汚泥、無機性汚泥のいずれでもよい。
有機性汚泥としては、例えば下水処理、し尿処理、各種産業廃水処理において発生する有機性汚泥などを挙げることができる。より具体的には、最初沈殿池汚泥、余剰汚泥、嫌気性消化汚泥、好気性消化汚泥、浄化槽汚泥、消化脱離液などを挙げることができる。
有機性汚泥は無機物を含んでもよい。
無機性汚泥としては、例えば浄水処理、建設工事廃水処理、各種産業廃水処理において発生する無機性汚泥などを挙げることができる。
ここで、浄水処理で発生する汚泥とは、浄水処理施設における沈殿池、排泥池、濃縮槽などから排出される汚泥などである。
無機性汚泥は有機物を含んでもよい。
以上のように、本発明は、有機性汚泥、無機性汚泥のいずれも被処理物とすることができるが、本発明の効果をより享受できるという観点からすると、有機性汚泥が好ましく、その中でも、難脱水性の嫌気性消化汚泥が特に好ましい。
<第1撹拌工程>
第1撹拌工程では、高速撹拌によって、高分子凝集剤を汚泥中に均一に分散させ、高分子凝集剤を汚泥の細部まで行き渡らせることにより、汚泥の表面電荷の中和と、高分子の吸着又は架橋作用による凝集とを同時に行わせしめることを主な目的とする。
無機凝集剤を汚泥に注入して撹拌した場合には、汚泥の表面電荷の中和のみであるから、これに比べて、本凝集方法は、より大きな凝集フロックを形成でき、ろ過性のよい凝集汚泥を形成できる。このため、無機凝集剤を汚泥に注入して撹拌した場合に比べて、本凝集方法により凝集させた汚泥は、ろ過速度の大きい脱水処理が可能となる。
(第1の高分子凝集剤)
第1の高分子凝集剤としては、アニオン性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤、カチオン性高分子凝集剤および両性高分子凝集剤のいずれも用いることができる。有機性汚泥を処理する場合には、カチオン性高分子凝集剤又は両性高分子凝集剤を用いるのが特に好ましい。
アニオン性高分子凝集剤としては、例えばポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合物、ポリメタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウムとアクリルアミドの共重合物などを挙げることができる。
ノニオン性高分子凝集剤としては、例えばポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイドなどを挙げることができる。
カチオン性高分子凝集剤としては、例えばアクリレート系高分子凝集剤(「DAA系高分子凝集剤」とも称する)、メタクリレート系高分子凝集剤(「DAM系高分子凝集剤」とも称する)、アミド基、ニトリル基、アミン塩酸塩、ホルムアミド基などを含むポリビニルアミジン(「アミジン系高分子凝集剤」とも称する)、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物などが挙げられる。DAA系高分子凝集剤には、ジメチルアミノエチルアクリレートの四級化物の重合物、ジメチルアミノエチルアクリレートの四級化物とアクリルアミドとの共重合物などがある。DAM系高分子凝集剤には、ジメチルアミノエチルメタクリレートの四級化物の重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレートの四級化物とアクリルアミドとの共重合物などがある。
両性高分子凝集剤としては、例えばジメチルアミノメチルアクリレートの四級化物とアクリルアミドとアクリル酸との共重合物、ジメチルアミノメチルメタクリレートの四級化物とアクリルアミドとアクリル酸との共重合物などを挙げることができる。
但し、以上は例示であり、これらに限定するものではない。
第1の高分子凝集剤の分子量は450万以上であるのが好ましい。より好ましい分子量は500万以上である。ここでの分子量は、粘度法により求められた平均分子量である。
高速撹拌による凝集において、高分子凝集剤の分子量が低すぎると、高速撹拌により高分子凝集剤の分子鎖が切断された場合に、高分子凝集剤の凝集力が弱まってしまうからである。このため、分子量が450万以上の高分子凝集剤を使用することにより、高分子凝集剤の凝集力を弱めることなく、高分子凝集剤を汚泥に均一に分散させ、また、高分子凝集剤を汚泥の細部まで行き渡らせることができる。
第1の高分子凝集剤の粘度は、分子量と同じ観点から、150mPa・s以上であるのが好ましく、特に175mPa・s以上、その中でも200mPa・s以上であるのが好ましい。
この際の粘度は、高分子凝集剤を純水に2g/Lで溶解し、B型粘度計を使用し、25℃、60rpmの回転速度で測定した値である。
第1の高分子凝集剤の分子量が450万以上である場合、第1の高分子凝集剤の注入量は、第1の高分子凝集剤と第2の高分子凝集剤の合計注入量の45〜95質量%となるように調整して注入するのが好ましく、中でも50〜95質量%、その中でも特に55〜90質量%を占めるように調整して注入するのが好ましい。
第1撹拌工程における高分子凝集剤の注入量の割合が高すぎると、高分子凝集剤は汚泥に均一に分散し、高分子凝集剤は汚泥の細部まで行き渡るが、第2の撹拌時に注入する高分子凝集剤の注入量が少なすぎるため、凝集フロックは成長しない可能性がある。この結果、濃縮処理や脱水処理において、ろ過性が悪化する。一方、第1撹拌工程における高分子凝集剤の注入量の割合が低すぎると、高速撹拌により汚泥に均一に分散する高分子凝集剤の割合が少なくなるため、高速撹拌の効果は低下するようになる。このため、第1撹拌工程における高分子凝集剤の注入量を、合計注入量の45〜95%に制御することにより、高分子凝集剤を汚泥に均一に分散させるとともに凝集フロックを成長させることできる。
第1の高分子凝集剤の溶液における溶媒は、純水、水道水、工業用水、地下水、各種廃水処理の処理水、海水などを挙げることができるが、高分子凝集剤の凝集力を最大限発揮させる観点からは純水が好ましい。(第2の高分子凝集剤の溶液についても同様)。一方、経済性の観点からは水道水、工業用水、地下水、各種廃水処理の処理水が好ましい。(第2の高分子凝集剤の溶液についても同様)。
第1の高分子凝集剤の溶液における高分子凝集剤濃度は1〜3g/Lであってもよいが、3g/L以上であるのが好ましく、より好ましくは5g/L以上、さらにより好ましくは10g/L以上である。
高分子凝集剤による汚泥の凝集において、高分子凝集剤の溶液は1〜3g/Lに調製するのが一般的であり、通常は3g/L以上の高分子凝集剤の溶液を使用することはない。この理由は、高分子凝集剤濃度が3g/L以上になると、高分子凝集剤の溶液は高粘度になるため、従来の凝集槽で使用される撹拌機の回転速度(10〜500rpm程度)では、高分子凝集剤を汚泥に均一に分散させることが難しいからである。一方、高速撹拌では、3g/L以上の高濃度溶液を使用しても、高分子凝集剤を汚泥に均一に分散させることができる。この結果、高分子凝集剤の溶解水量を削減できるメリットが生じる。高濃度の高分子凝集剤の溶液を使用する別のメリットとして、高分子凝集剤を注入した汚泥中の高分子凝集剤の濃度を高めることができるため、高分子凝集剤の注入量を削減でき、脱水処理後の脱水ケーキの含水率を低減できる点を挙げることができる。例えば、1Lの汚泥に2g/Lの高分子凝集剤溶液を200mL注入(高分子凝集剤として0.4g注入)した場合、汚泥中の高分子凝集剤の濃度は333mg/Lである。一方、1Lの汚泥に10g/Lの高分子凝集剤を40mL注入(高分子凝集剤として0.4g注入)した場合、汚泥中の高分子凝集剤の濃度は385mg/Lである。このように、同じ0.4gの高分子凝集剤を注入する場合であっても、2g/Lの高分子凝集剤溶液を使用するよりも、10g/Lの高分子凝集剤を使用する方が汚泥中の高分子凝集剤の濃度を高められ、高分子凝集剤の注入量を削減でき、脱水処理後の脱水ケーキの含水率を低減することができる。
(高速撹拌)
第1撹拌工程では、1000rpm以上の高速で撹拌することが重要である。より好ましい回転速度は2000rpm以上である。さらにより好ましい回転速度は3000rpm以上である。
該回転速度を高めた場合には、撹拌時間をより短くすればよいので、回転速度の上限は特にないが、現状では15000rpmまで実験的に効果があることを確認している。
高分子凝集剤により汚泥を凝集させる場合、高分子凝集剤を汚泥に均一に分散させること、高分子凝集剤を汚泥の細部まで行き渡らせることが重要である。高分子凝集剤を汚泥に均一に分散させることにより、無駄な高分子凝集剤を削減でき、高分子凝集剤の注入量を削減することができる。また、高分子凝集剤を汚泥の細部まで行き渡らせることにより、凝集汚泥が緻密になるため、脱水処理後の脱水ケーキの含水率を低減できる。高分子凝集剤の溶液は高粘度の液体であり、従来の凝集槽で使用される撹拌機の回転速度(10〜500rpm程度)では、高分子凝集剤を汚泥に均一に分散させることが難しいうえ、高分子凝集剤を汚泥の細部まで行き渡らせることができなかった。このため、高分子凝集剤の注入量の増加や脱水ケーキ含水率の悪化が生じていた。一方、高速撹拌では、高分子凝集剤を均一に汚泥に分散させることができるうえ、高分子凝集剤を汚泥の細部まで行き渡らせることができる。このため、高分子凝集剤の注入量を削減でき、脱水ケーキ含水率を低減することができる。
なお、高速撹拌における撹拌する際の回転速度は、汚泥の種類、汚泥の性状(TSなど)、高分子凝集剤の分子量、高分子凝集剤の溶解濃度などに合わせて、1000rpm以上において調整するのが好ましい。
第1撹拌工程における撹拌時間、すなわち第1の高分子凝集剤の溶液と汚泥を混合撹拌する時間は、20秒以下、特に5秒〜20秒とするのが好ましく、より好ましくは5〜15秒、さらにより好ましくは5〜10秒である。
高速撹拌による撹拌時間が長すぎると、高分子凝集剤の凝集力が弱まる程度まで高分子凝集剤の分子鎖は切断されてしまう。このため、撹拌時間を20秒以下に制御することにより、高分子凝集剤の凝集力を弱めることなく、高分子凝集剤を汚泥に均一に分散させ、高分子凝集剤を汚泥の細部まで行き渡らせることができる。
高速撹拌する手段としては、撹拌翼、シャフト、モーターから構成される高速撹拌機やローター、ステーター、モーターから構成される高速撹拌機などの高速撹拌機を使用してもよいし、また、インラインミキサーによって高速撹拌してもよい。
インラインミキサーとは、配管に組み込まれたミキサーである。インラインミキサーのメリットはミキサーが密封されているため、上流にある汚泥用ポンプ、高分子凝集剤用ポンプの2台があれば、下流に液を送ることができる。一方、容器に撹拌機が設置された場合、容器上部が開放されているので、上流にある汚泥用ポンプ、高分子凝集剤用ポンプの他に、もう1台ポンプ或いはポンプ相当のものがないと下流に液を送れない。そのため通常は、ポンプを設置せず、高低差で下流に液を送るのが一般的である。
<第2撹拌工程>
第2撹拌工程は、凝集フロックを形成させることが主な目的である。
(第2の高分子凝集剤)
第2の高分子凝集剤は、第1の高分子凝集剤の項目で前述した高分子凝集剤と同様のものを用いることができる。この場合、第2の高分子凝集剤は、第1の高分子凝集剤と同一種類の高分子凝集剤を用いることもできるが、異なる種類の高分子凝集剤を用いることができる。高分子凝集剤溶解槽を共用できる観点からは、第2の高分子凝集剤は、第1の高分子凝集剤と同一種類の高分子凝集剤を用いるのが好ましい。
第2の高分子凝集剤の溶液における高分子凝集剤濃度は1〜3g/Lであってもよいが、3g/L以上であるのが好ましく、より好ましくは5g/L以上、さらにより好ましくは10g/L以上である。
(通常撹拌)
第2撹拌工程における撹拌する際の回転速度は、従来の汚泥の凝集装置において一般的な回転速度、すなわち10〜500rpmであればよい。その理由は、第2撹拌工程では高分子凝集剤を第1撹拌工程において調製した混合汚泥に緩やかに接触させ、凝集フロックを成長させる必要があるからである。かかる観点から、第2撹拌工程における撹拌する際の回転速度は、中でも20rpm以上或いは400rpm以下、その中でも30rpm以上或いは300rpm以下であるのがさらに好ましい。
なお、第2撹拌工程における撹拌する際の回転速度は、汚泥の種類、汚泥の性状(TSなど)、高分子凝集剤の分子量、高分子凝集剤の溶解濃度などに合わせて、10〜500rpmにおいて調整するのが好ましい。
第2撹拌工程における撹拌時間、すなわち第2の高分子凝集剤の溶液と汚泥を混合撹拌する時間は1分〜20分であるのが好ましい。その理由は、第2撹拌工程では高分子凝集剤を第1撹拌工程において調製した混合汚泥に緩やかに接触させ、凝集フロックを成長させる必要があるからである。かかる観点から、第2撹拌工程における撹拌の撹拌時間は、中でも2分以上或いは15分以下、その中でも3分以上或いは10分以下であるのがさらに好ましい。
撹拌する手段としては、撹拌翼、シャフト、モーターから構成される撹拌機などの通常の撹拌機を使用すればよく、特に種類を限定するものではない。
<脱水>
第2撹拌工程で凝集フロックを形成させた後は、脱水機により固液分離し、固体として脱水ケーキを得、液体として脱水ろ液を得ることができる。
この際の脱水方法としては、圧力を加えて脱水する手段を採用するのが一般的であるが、特に限定するものではない。例えば従来から汚泥脱水に使用される脱水機、例えばスクリュープレス脱水機、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、真空脱水機、フィルタプレス脱水機、多重円板脱水機などを用いることができる。
<汚泥希釈工程>
本凝集方法では、必要に応じて、第1撹拌工程の前に汚泥希釈工程を実施するようにしてもよい。
汚泥希釈工程の目的は、被処理物である汚泥を希釈水で希釈することにより、高分子凝集剤の凝集効果を促進させることにある。塩類などの溶解性成分濃度が高い汚泥では、高分子凝集剤のイオン性官能基の解離が抑制され、溶解性が低下するため、高分子凝集剤は凝集効果を発揮することが難しくなる。そこで、汚泥を希釈し、溶解性成分の濃度を低下させることにより、高分子凝集剤の凝集効果を促進させることができる。
この際、希釈倍率は、汚泥の種類、汚泥の性状(TS、電気伝導率、Mアルカリ度、溶解性成分濃度、塩類濃度など)、高分子凝集剤の分子量、高分子凝集剤の溶解濃度、高分子凝集剤の溶解性などに合わせて調整するのが好ましい。
例えば、汚泥の電気伝導率を指標とする場合であれば、希釈後の汚泥の電気伝導率が15mS/cm以下になるように希釈倍率を調整するのが好ましく、特に希釈後の汚泥の電気伝導度が10mS/cm以下になるように希釈倍率を調整するのがさらに好ましい。
汚泥のMアルカリ度を指標とする場合であれば、希釈後の汚泥のMアルカリ度が7000mg−CaCO/L以下になるように希釈倍率を調整するのが好ましく、特に希釈後の汚泥のMアルカリ度が5000mg−CaCO/L以下になるように希釈倍率を調整するのがさらに好ましい。
希釈水としては、純水、水道水、工業用水、地下水、各種廃水処理の処理水、海水などを挙げることができる。希釈の効果を最大限発揮させる観点からは純水が好ましい。一方、経済性の観点からは水道水、工業用水、地下水、各種廃水処理の処理水が好ましい。
<汚泥の凝集装置>
次に、本発明が提案する汚泥の凝集方法を実施するための装置について説明する。
(第1の凝集装置例)
図1は、第1の実施形態を実施するための装置例を示した概略図である。
図1に示した装置は、汚泥貯槽1に高速撹拌槽6、通常速度撹拌槽8及び脱水機10が順次連通して配置され、高速撹拌槽6には第1の高分子凝集剤ポンプ4を介して第1の高分子凝集剤溶解槽2が連通して配置され、通常速度撹拌槽8には第2の高分子凝集剤ポンプ5を介して第2の高分子凝集剤溶解槽3が連通して配置されてなる構成を備えている。
この装置において、汚泥は汚泥貯槽1に貯留され、貯留された汚泥は高速撹拌槽6に供給される。第1の高分子凝集剤の溶液は、第1の高分子凝集剤ポンプ4により、第1の高分子凝集剤溶解槽2から高速撹拌槽6に供給される。高速撹拌槽6において、高速撹拌機7により汚泥と第1の高分子凝集剤の溶液が混合され、混合汚泥が調製される。調製された混合汚泥は、高速撹拌槽6から通常速度撹拌槽8に供給される。第2の高分子凝集剤の溶液は、第2の高分子凝集剤ポンプ5により、第2の高分子凝集剤溶解槽3から通常速度撹拌槽8に供給される。通常速度撹拌槽8において、通常速度撹拌機9により混合汚泥と第2の高分子凝集剤の溶液が混合され、混合汚泥を凝集させ、凝集フロックを形成させる。凝集フロックは脱水機10により脱水される。
(第2の凝集装置例)
図2は、上記凝集装置例とは異なる他の装置例を示した概略図である。
図2に示した装置は、汚泥貯槽1に高速撹拌槽6、通常速度撹拌槽8及び脱水機10が順次連通して配置され、高速撹拌槽6には第1の高分子凝集剤ポンプ4を介して第1の高分子凝集剤溶解槽2が連通して配置され、通常速度撹拌槽8には第2の高分子凝集剤ポンプ5を介して第1の高分子凝集剤溶解槽2が連通して配置されてなる構成を備えている。
この装置では、図1の装置における第2の高分子凝集剤溶解槽3が省略されており、第1の高分子凝集剤の溶液は、第1の高分子凝集剤ポンプ4により、第1の高分子凝集剤溶解槽2から高速撹拌槽6に供給されるようになっている。また、第1の高分子凝集剤の溶液は、第2の高分子凝集剤ポンプ5により、第1の高分子凝集剤溶解槽2から通常速度撹拌槽8に供給されるようになっている。
(第3の凝集装置例)
図3は、上記凝集装置例とは異なる他の装置例を示した概略図である。
図3に示した装置は、汚泥貯槽1に高速撹拌槽6、通常速度撹拌槽8及び脱水機10が順次連通して配置され、高速撹拌槽6には第1の高分子凝集剤ポンプ4を介して第1の高分子凝集剤溶解槽2が連通して配置され、通常速度撹拌槽8には第1の高分子凝集剤ポンプ4及び高分子凝集剤流量調整バルブ11を介して第1の高分子凝集剤溶解槽2が連通して配置されてなる構成を備えている。
この装置では、図2の装置における第2の高分子凝集剤ポンプ5が省略され、高分子凝集剤流量調整バルブ11が設置されている。よって、第1の高分子凝集剤の溶液は、第1の高分子凝集剤ポンプ4により、第1の高分子凝集剤溶解槽2から高速撹拌槽6に供給される。また、第1の高分子凝集剤の溶液は、第1の高分子凝集剤ポンプ4により、第1の高分子凝集剤溶解槽2から通常速度撹拌槽8に供給される。第1の高分子凝集剤の溶液の、通常速度撹拌槽8への供給量は、高分子凝集剤流量調整バルブ11により調整される。
(第4の凝集装置例)
図4は、上記凝集装置例とは異なる他の装置例を示した概略図である。
図4に示した装置は、汚泥貯槽1にインラインミキサー12、通常速度撹拌槽8及び脱水機10が順次連通して配置され、インラインミキサー12の入口側に第1の高分子凝集剤ポンプ4を介して第1の高分子凝集剤溶解槽2が連通して配置され、通常速度撹拌槽8には第2の高分子凝集剤ポンプ5を介して第2の高分子凝集剤溶解槽3が連通して配置されてなる構成を備えている。
この装置では、図1の装置における高速撹拌槽6と高速撹拌機7が省略され、汚泥貯槽1と通常撹拌槽8を接続する配管にインラインミキサー12が設置されている。よって、第1の高分子凝集剤の溶液は、第1の高分子凝集剤ポンプ4により、第1の高分子凝集剤溶解槽2からにインラインミキサー12の入口側の配管に供給される。
(第5の凝集装置例)
図5は、上記凝集装置例とは異なる他の装置例を示した概略図である。
図5に示した装置は、汚泥貯槽1にインラインミキサー12、通常速度撹拌槽8及び脱水機10が順次連通して配置され、インラインミキサー12の入口側に第1の高分子凝集剤ポンプを介して第1の高分子凝集剤溶解槽2が連通して配置され、通常速度撹拌槽8には、第2の高分子凝集剤ポンプ5を介して第2の高分子凝集剤溶解槽3が連通して配置され、汚泥貯槽1とインラインミキサー12を接続する配管に希釈水供給ライン13が配置されてなる構成を備えている。
この装置では、図4の装置における汚泥貯槽1とインラインミキサー12を接続する配管に希釈水供給ライン13が設置されている。よって、汚泥は、希釈水供給ライン13から供給される希釈水により希釈された後、インラインミキサーに供給される。
なお、図5の装置では、希釈水供給ライン13は、汚泥貯槽1とインラインミキサー12を接続する配管に配置されているが、インラインミキサー12に入口側であれば何れの位置に配置してもよい。例えば、汚泥貯槽1に配置してもよい。また、汚泥貯槽1の入口側に配置してもよい。
なお、上述した第1〜第5の凝集装置例はあくまでも例示であって、これらに限定するものではない。
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
(実施例1)
本実施例では、第1の高分子凝集剤の溶液を汚泥に注入して第1撹拌を実施した後、第2の高分子凝集剤の溶液を注入して第2撹拌を実施し、得られた凝集汚泥をベルトプレス脱水機により脱水して脱水ケーキを得るという工程において、第1撹拌における撹拌する際の回転速度を変更して脱水ケーキの含水率との関係を検討した。
実験には3種類の汚泥(A、B、C)を使用した。いずれも嫌気性消化汚泥である。いずれも異なる廃水処理施設から採取した。
汚泥A、B、CのTSは、それぞれ12.0、26.2、34.9g/Lである。なお、TSとは、蒸発残留物のことであり、汚泥を105〜110℃で蒸発乾固したときに残留する物質の濃度である。測定方法は下水試験方法に準拠した。
汚泥Aの実験では、第1及び第2の高分子凝集剤ともに、カチオン性高分子凝集剤a(DAM系高分子凝集剤、分子量300万、粘度114mPa・s)を使用した。
汚泥Bの実験では、第1及び第2の高分子凝集剤ともに、カチオン性高分子凝集剤gを使用した。
汚泥Cの実験では、第1及び第2の高分子凝集剤ともに、カチオン性高分子凝集剤h(アミジン系高分子凝集剤、分子量300万、粘度34mPa・s)を使用した。
また、第1の高分子凝集剤の溶液及び第2の高分子凝集剤の溶液は、いずれも高分子凝集剤を水に溶解して得た水溶液であり、その濃度とは、水溶液中の高分子凝集剤の濃度の意味である(後述する実施例でも同様)。
実験手順は以下の通りである。
250mLの汚泥に第1の高分子凝集剤の溶液(濃度10g/L)を所定量注入し、高速撹拌機により汚泥と高分子凝集剤の溶液を10秒混合撹拌し、混合汚泥を調製した。次に、混合汚泥に第2の高分子凝集剤の溶液(濃度10g/L)を所定量注入し、撹拌する際の回転速度150rpmの撹拌機により混合汚泥と高分子凝集剤を2分間混合撹拌し、混合汚泥を凝集させ、凝集フロックを形成させた。最後に、ベルトプレス脱水機により、凝集フロックを脱水し、得られた脱水ケーキの含水率(%)を測定した。
なお、汚泥Aの実験では、第1の高分子凝集剤の溶液を2mL、第2の高分子凝集剤を2mL注入した。
汚泥Bの実験では、第1の高分子凝集剤の溶液を4mL、第2の高分子凝集剤の溶液を5mL注入した。
汚泥Cの実験では、第1の高分子凝集剤の溶液を20mL、第2の高分子凝集剤の溶液を7mL注入した。
脱水ケーキの含水率(%)は、脱水ケーキを105〜110℃で蒸発乾固したときに蒸発する水の質量から求めた。測定方法は下水試験方法に準拠した。(以降の実施例でも同様)。
実験結果を表1に示す。なお、表中の「−」はデータが無いことを示している。
Figure 0005878619
汚泥A、Bについては、高速撹拌機の回転速度が1000rpm程度以上でケーキ含水率を低減できた。汚泥Cについては、3000rpm程度以上の回転速度で撹拌することにより汚泥を凝集させることができ、脱水ケーキを得ることができた。これらのことから、高速撹拌において撹拌する際の回転速度を、好ましくは1000rpm以上、より好ましくは2000rpm以上、さらにより好ましくは3000rpm以上に調整することにより、ケーキ含水率を低減できること、又は汚泥を凝集させ、脱水ケーキを得ることができることが分かった。
(実施例2)
本実施例では、第1の高分子凝集剤の溶液を汚泥に注入して第1撹拌を実施した後、第2の高分子凝集剤の溶液を注入して第2撹拌を実施し、得られた凝集汚泥をベルトプレス脱水機により脱水して脱水ケーキを得るという工程において、第1の高分子凝集剤の溶液の濃度を2〜20g/Lの範囲で変更して脱水ケーキの含水率との関係を検討した。
実験には3種類の汚泥(A、D、E)を使用した。いずれも嫌気性消化汚泥である。汚泥A、Dは同じ廃水処理施設から採取したが、汚泥濃度が異なる。
汚泥Eは汚泥A、Dとは異なる廃水処理施設から採取した。汚泥A、D、EのTSは、
それぞれ12.0、12.2、37.1g/Lである。
汚泥A、Dの実験では、第1及び第2の高分子凝集剤ともに、カチオン性高分子凝集剤a(DAM系高分子凝集剤、分子量300万、粘度114mPa・s)を使用した。
汚泥Eの実験では、第1及び第2の高分子凝集剤ともに、カチオン性高分子凝集剤h(アミジン系高分子凝集剤、分子量300万、粘度34mPa・s)を使用した。
実験では、第1及び第2の高分子凝集剤の溶液は同じ濃度に調製した。例えば、第1の高分子凝集剤の溶液を2g/Lに調製した場合、第2の高分子凝集剤の溶液も2g/Lに調製した。第1の高分子凝集剤の溶液を20g/Lに調製した場合、第2の高分子凝集剤の溶液も20g/Lに調製した。
実験手順は以下の通りである。
250mLの汚泥に第1の高分子凝集剤の溶液(濃度2〜20g/L)を所定量注入し、回転速度を10000〜11000rpmに設定した高速撹拌機により汚泥と高分子凝集剤の溶液を10秒混合撹拌し、混合汚泥を調製した。次に、混合汚泥に第2の高分子凝集剤の溶液(濃度2〜20g/L)を所定量注入し、回転速度を150rpmに設定した撹拌機により混合汚泥と高分子凝集剤を2分間混合撹拌し、混合汚泥を凝集させ、凝集フロックを形成させた。
最後に、ベルトプレス脱水機により、凝集フロックを脱水し、得られた脱水ケーキの含水率(%)を測定した。
汚泥Aの実験では、第1の高分子凝集剤を合計注入量の50%注入し、第2の高分子凝集剤を合計注入量の50%注入した。
汚泥Dの実験では、第1の高分子凝集剤を合計注入量の57%注入し、第2の高分子凝集剤を合計注入量の43%注入した。
汚泥Eの実験では、第1の高分子凝集剤を合計注入量の75%注入し、第2の高分子凝集剤を合計注入量の25%注入した。
実験結果を表2に示す。
Figure 0005878619
汚泥Aについては、第1の高分子凝集剤濃度が3g/L以上でケーキ含水率を低減でき、10g/L程度で最もケーキ含水率を低減できた。汚泥Dについては、第1の高分子凝集剤濃度が3g/L以上でケーキ含水率を低減でき、3g/Lと5g/Lで最もケーキ含水率を低減できた。汚泥Eについては、第1の高分子凝集剤濃度が3g/L以上でケーキ含水率を低減でき、10g/L程度で最もケーキ含水率を低減できた。これらのことから、第1の高分子凝集剤溶液の濃度は、好ましくは3g/L以上、より好ましくは5g/L以上、さらにより好ましくは10g/L以上に調製することにより、ケーキ含水率を低減できることが分かった。
(実施例3)
本実施例では、第1の高分子凝集剤の溶液を汚泥に注入して第1撹拌を実施した後、第2の高分子凝集剤の溶液を注入して第2撹拌を実施し、得られた凝集汚泥をベルトプレス脱水機により脱水して脱水ケーキを得る工程において、第1撹拌における撹拌時間を3〜30秒の間で変更して脱水ケーキの含水率との関係を検討した。
実験には2種類の汚泥(F、G)を使用した。いずれも嫌気性消化汚泥である。汚泥F、Gは異なる廃水処理施設から採取した。汚泥F、GのTSは、それぞれ20.9、28.9g/Lである。
汚泥Fの実験では、第1及び第2の高分子凝集剤ともに、カチオン性高分子凝集剤f(DAA系高分子凝集剤、分子量800万、粘度280mPa・s)を使用し、かつカチオン性高分子凝集剤fの溶液は2g/Lに調製した。
汚泥Gの実験では、第1及び第2の高分子凝集剤ともに、カチオン性高分子凝集剤h(アミジン系高分子凝集剤、分子量300万、粘度34mPa・s)を使用し、かつカチオン性高分子凝集剤hの溶液は10g/Lに調製した。
実験手順は以下の通りである。
250mLの汚泥に第1の高分子凝集剤の溶液を所定量注入し、回転速度を5000rpmに設定した高速撹拌機により汚泥と高分子凝集剤の溶液を3〜30秒混合撹拌し、混合汚泥を調製した。次に、混合汚泥に第2の高分子凝集剤の溶液を所定量注入し、回転速度を100〜200rpmに設定した撹拌機により混合汚泥と高分子凝集剤を2〜5分間混合撹拌し、混合汚泥を凝集させ、凝集フロックを形成させた。最後に、ベルトプレス脱水機により、凝集フロックを脱水し、得られた脱水ケーキの含水率(%)を測定した。
なお、汚泥Fの実験では、第1の高分子凝集剤の溶液を35mL、第2の高分子凝集剤の溶液を5mL注入した。混合汚泥と第2の高分子凝集剤との混合撹拌では、撹拌する際の回転速度は100rpm、撹拌時間は2分間とした。
汚泥Gの実験では、第1の高分子凝集剤の溶液を15mL、第2の高分子凝集剤の溶液を5mL注入した。混合汚泥と第2の高分子凝集剤との混合撹拌では、撹拌する際の回転速度は200rpm、撹拌時間は5分間とした。
実験結果を表3に示す。なお、表中の「−」はデータが無いことを示している。
Figure 0005878619
汚泥Fについては、高速撹拌の撹拌時間が20秒以上で凝集不良となった。汚泥Gについては、高速撹拌の撹拌時間が5秒より長いとき、ケーキ含水率を低減できた。高速撹拌の撹拌時間が10秒で最もケーキ含水率を低減できた。高速撹拌の撹拌時間が20秒では、10秒と比較するとケーキ含水率は悪化した。これらことから、高速撹拌の撹拌時間は、好ましくは5〜20秒、より好ましくは5〜15秒、さらにより好ましくは5〜10秒に調整することにより、ケーキ含水率を低減できることが分かった。
(実施例4)
本実施例では、第1の高分子凝集剤の溶液を汚泥に注入して第1撹拌を実施した後、第2の高分子凝集剤の溶液を注入して第2撹拌を実施し、得られた凝集汚泥をベルトプレス脱水機により脱水して脱水ケーキを得る工程において、第1の高分子凝集剤の種類を変更して脱水ケーキの含水率、SS回収率との関係を検討した。
実験には汚泥Fを使用した。汚泥Fは嫌気性消化汚泥である。汚泥FのTSは20.9g/Lである。
高分子凝集剤としては、分子量の異なる高分子凝集剤(a、b、c、d、e、f)を使用した。高分子凝集剤a、b、c、d、fはカチオン性高分子凝集剤であり、中でも高分子凝集剤a、bはDAM系高分子凝集剤、高分子凝集剤c、d、fはDAA系高分子凝集剤である。高分子凝集剤eは両性高分子凝集剤である。
高分子凝集剤a、b、c、d、e、fの分子量(粘度mPa・s)は、それぞれ300万(114mPa・s)、400万(143mPa・s)、500万(147mPa・s)、600万(225mPa・s)、700万(238mPa・s)、800万(280mPa・s)である。
ここで記載した分子量は粘度法より求めた平均分子量である。また、粘度は、高分子凝集剤を水に2g/Lで溶解し、B型粘度計を使用し、25℃、60rpmの回転速度で測定した値である。
実験手順は以下の通りである。
250mLの汚泥に第1の高分子凝集剤の溶液(濃度2g/L)を31mL注入し、回転速度を5000rpmに設定した高速撹拌機により汚泥と高分子凝集剤の溶液を10秒混合撹拌し、混合汚泥を調製した。次に、混合汚泥に第2の高分子凝集剤の溶液(濃度2g/L)を9mL注入し、回転速度を200rpmに設定した撹拌機により混合汚泥と高分子凝集剤を5分間混合撹拌し、混合汚泥を凝集させ、凝集フロックを形成させた。最後に、ベルトプレス脱水機により、凝集フロックを脱水し、得られた脱水ケーキの含水率(%)を測定した。また、SS回収率を測定した。
なお、SS回収率(%)は「(250mLの汚泥から得られた脱水ケーキの乾燥重量)
÷(250mLの汚泥に含まれるSS)×100」として算出した。(以降の実施例でも同様)。
実験結果を表4に示す。
Figure 0005878619
表4において、SS回収率の比とは、高分子凝集剤fを使用した時のSS回収率を100とした時の比率を示すものである。
SS回収率の比について、分子量が500万以上(高分子凝集剤c、d、e、f)では97以上であるが、分子量が400万以下(高分子凝集剤a、b)では81〜87であった。一方、どの高分子凝集剤を使用しても、ケーキ含水率は82〜83%の範囲内であった。これらのことから、分子量は好ましくは450万以上、より好ましくは500万以上の高分子凝集剤を使用することにより、SS回収率を増加させることができることが分かった。
(実施例5)
本実施例では、第1の高分子凝集剤の溶液を汚泥に注入して第1撹拌を実施した後、第2の高分子凝集剤の溶液を注入して第2撹拌を実施し、得られた凝集汚泥をベルトプレス脱水機により脱水して脱水ケーキを得る工程において、第1の高分子凝集剤の注入量を変更してSS回収率との関係を検討した。
実験には汚泥Fを使用した。汚泥Fは嫌気性消化汚泥である。汚泥FのTSは20.9g/Lである。
高分子凝集剤としては、分子量の異なる高分子凝集剤(c、d、e、f)を使用した。
高分子凝集剤c、d、fはカチオン性高分子凝集剤であり、高分子凝集剤eは両性高分子凝集剤である。
高分子凝集剤c、d、e、fの分子量(粘度mPa・s)は、それぞれ500万(147mPa・s)、600万(225mPa・s)、700万(238mPa・s)、800万(280mPa・s)である。
ここで記載した分子量は粘度法より求めた平均分子量である。また、粘度は、高分子凝集剤を水に2g/Lで溶解し、B型粘度計を使用し、25℃、60rpmの回転速度で測定した値である。
実験では、第1及び第2の高分子凝集剤ともに同じ種類のものを使用し、第1及び第2の高分子凝集剤の溶液は同じ濃度に調製した。
実験手順は以下の通りである。
250mLの汚泥に第1の高分子凝集剤の溶液(濃度2g/L)を所定量注入し、回転速度を5000rpmに設定した高速撹拌機により汚泥と高分子凝集剤の溶液を10秒混合撹拌し、混合汚泥を調製した。次に、混合汚泥に第2の高分子凝集剤の溶液(濃度2g/L)を所定量注入し、回転速度を200rpmに設定した撹拌機により混合汚泥と高分子凝集剤を5分間混合撹拌し、混合汚泥を凝集させ、凝集フロックを形成させた。最後に、ベルトプレス脱水機により、凝集フロックを脱水し、脱水ケーキを得、SS回収率を測定した。
実験では、第1及び第2の高分子凝集剤の溶液の合計注入量を40mLとし、第1の高分子凝集剤の溶液を2.5〜37.5mLの範囲で変更して注入した。
実験結果を図6に示す。
図6は、高速撹拌時に注入する高分子凝集剤の注入量と、高分子凝集剤c、d、e、fを使用した時の平均SS回収率の比との関係を示したグラフである。この図において、平均SS回収率の比は、第1の高分子凝集剤の注入量が59%時の平均SS回収率を100とした時の比率を示すものである。
この結果から、高速撹拌時に注入する高分子凝集剤の注入量を合計注入量の好ましくは45〜95%、より好ましくは50〜95%、さらにより好ましくは55〜90%に調整することのより、SS回収率を増加させることができるが分かった。
(実施例6)
本実施例では、第1の高分子凝集剤の溶液を汚泥に注入して第1撹拌を実施した後、第2の高分子凝集剤の溶液を注入して第2撹拌を実施し、得られた凝集汚泥をベルトプレス脱水機により脱水して脱水ケーキを得る工程において、第1及び第2の高分子凝集剤の合計注入率を変更して脱水ケーキの含水率との関係を検討した。
実験には汚泥Cを使用した。汚泥Cは嫌気性消化汚泥である。汚泥CのTSは34.9g/Lである。
実験では、第1及び第2の高分子凝集剤ともに、カチオン性高分子凝集剤h(アミジン系高分子凝集剤、分子量300万、粘度34mPa・s)を使用した。カチオン性高分子凝集剤hは10g/Lに調製した。
実験手順は以下の通りである。
250mLの汚泥に第1の高分子凝集剤の溶液を所定量注入し、回転速度を11000rpmに設定した高速撹拌機により汚泥と高分子凝集剤の溶液を10秒混合撹拌し、混合汚泥を調製した。次に、混合汚泥に第2の高分子凝集剤の溶液を5mL注入し、回転速度を150rpmに設定した撹拌機により混合汚泥と高分子凝集剤を2分間混合撹拌し、混合汚泥を凝集させ、凝集フロックを形成させた。最後に、ベルトプレス脱水機により、凝集フロックを脱水し、得られた脱水ケーキの含水率(%)を測定した。
本実験では、第2の高分子凝集剤の溶液の注入量を一定(5mL)とし、合計注入率に合わせて、第1の高分子凝集剤の注入量を12〜19mLの範囲で変更した。
比較例として、通常速度の撹拌と2g/Lの高分子凝集剤の溶液により汚泥を凝集させ、凝集させた汚泥をベルトプレス脱水機により脱水した。
比較例の実験手順は以下の通りである。
250mLの汚泥に高分子凝集剤の溶液(濃度2g/L)を所定量注入し、回転速度を150rpmに設定した撹拌機により汚泥と高分子凝集剤を3分間混合撹拌し、汚泥を凝集させ、凝集フロックを形成させた。次に、ベルトプレス脱水機により、凝集フロックを脱水し、得られた脱水ケーキの含水率(%)を測定した。
比較例の実験では、合計注入率に合わせて、高分子凝集剤の溶液の注入量を85〜125mLの範囲で変更した。
実験結果を図7に示す。
図7は高分子凝集剤注入率と脱水ケーキ含水率との関係を示す。この結果から、高速撹拌と10g/Lの高分子凝集剤溶液を使用した方が、通常速度撹拌と2g/Lの高分子凝集剤溶液を使用したよりも、脱水ケーキ含水率を2〜3ポイント程度低減できることが分かった。また、高速撹拌と10g/Lの高分子凝集剤溶液を使用した方が、通常速度撹拌と2g/Lの高分子凝集剤溶液を使用したよりも、高分子凝集剤の注入率を2〜3割程度削減できることが分かった。
(実施例7)
本実施例では、汚泥を希釈水で希釈して汚泥希釈を実施した後、第1の高分子凝集剤の溶液を汚泥に注入して第1撹拌を実施し、第2の高分子凝集剤の溶液を注入して第2撹拌を実施し、得られた凝集汚泥をスクリュープレス脱水機により脱水して脱水ケーキを得るという工程において、汚泥希釈を実施することにより脱水ケーキ含水率を低減できるか検討した。
実験には汚泥Hを使用した。汚泥Hは嫌気性消化汚泥である。実験期間中の汚泥HのTSは42.5〜43.5g/Lであった。汚泥Hの溶解性成分濃度は極めて高く、試験期間中の汚泥Hの電気伝導率は19.9〜21.1mS/cmであり、Mアルカリ度は7600〜9000mg−CaCO/Lであった。
第1及び第2の高分子凝集剤ともに、カチオン性高分子凝集剤h(アミジン系高分子凝集剤、分子量300万、粘度34mPa・s)を使用した。カチオン性高分子凝集剤hは2g/L或いは5g/Lに調製した。高分子凝集剤の溶解には、工業用水を使用した。希釈水には、工業用水を使用した。
実験手順は以下の通り連続式で行った。
汚泥(汚泥流量3.0m/h)に希釈水(希釈水流量1.5m/h)を注入し、希釈汚泥(1.5倍希釈)を調製した。希釈汚泥に第1の高分子凝集剤の溶液を合計注入量の70%注入し、回転速度を3000rpmに設定した高速撹拌機(撹拌部容積0.8L)により希釈汚泥と高分子凝集剤の溶液を混合撹拌し、混合汚泥を調製した。次に混合汚泥に第2の高分子凝集剤の溶液を合計注入量の30%注入し、撹拌する際の回転速度を33rpmに設定した撹拌機(撹拌槽容積900L)により混合汚泥と高分子凝集剤を混合撹拌し、混合汚泥を凝集させ、凝集フロックを形成させた。最後にスクリュープレス脱水機により、凝集フロックを脱水し、得られた脱水ケーキ含水率(%)を測定した。
比較参照例として、希釈水を注入しない実験も行った。希釈水を注入しないこと以外、上記実験手順と同様とした。
実験結果を表5に示す。
Figure 0005878619
高分子凝集剤の溶液の濃度が2g/Lの場合、希釈工程を行うことにより高分子凝集剤の注入率、脱水ケーキ含水率を低減できた。高分子凝集剤の溶液の濃度が5g/Lの場合も、希釈工程を行うことにより高分子凝集剤の注入率、脱水ケーキ含水率を低減できた。これらのことから、汚泥希釈工程を導入することにより、高分子凝集剤の注入率および脱水ケーキ含水率を低減できることが分かった。
上記実施例1〜4の実験がバッチ式であるのに対し、本実施例(実施例7)の実験は連続式で行った。また、実施例1〜4と同様の実験を連続式に行ったところ、バッチ式の実験と連続式の実験とでは結果に相違は認められなかった。
1 汚泥貯槽
2 第1の高分子凝集剤溶解槽
3 第2の高分子凝集剤溶解槽
4 第1の高分子凝集剤ポンプ
5 第2の高分子凝集剤ポンプ
6 高速撹拌槽
7 高速撹拌機
8 通常速度撹拌槽
9 通常速度撹拌機
10 脱水機
11 高分子凝集剤流量調整バルブ
12 インラインミキサー

Claims (14)

  1. DAM系高分子凝集剤、DAA系高分子凝集剤、アミジン系高分子凝集剤から選ばれる少なくとも1つの第1の高分子凝集剤の溶液を、被処理物としての嫌気性消化汚泥に注入し、撹拌機の回転速度を1000rpm以上に設定した高速撹拌により、前記汚泥と前記第1の高分子凝集剤の溶液とを混合して混合汚泥を調製する第1撹拌工程と、
    DAM系高分子凝集剤、DAA系高分子凝集剤、アミジン系高分子凝集剤から選ばれる少なくとも1つの第2の高分子凝集剤の溶液を前記混合汚泥に注入し、撹拌槽で前記混合汚泥と前記第2の高分子凝集剤の溶液とを混合して凝集フロックを成長させる第2撹拌工程と、を有する汚泥の凝集方法。
  2. 前記第1の高分子凝集剤の溶液の高分子凝集剤濃度が3g/L以上であることを特徴とする請求項1に記載の汚泥の凝集方法。
  3. 前記第1撹拌工程において、被処理物としての前記汚泥と、前記第1の高分子凝集剤の溶液との撹拌時間が20秒以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の汚泥の凝集方法。
  4. 前記第1の高分子凝集剤の分子量が450万以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の汚泥の凝集方法。
  5. 下記測定で得られる、前記第1の高分子凝集剤の粘度が150mPa・s以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の汚泥の凝集方法。
    粘度測定試験:高分子凝集剤を純水に2g/Lで溶解し、B型粘度計を使用し、25℃、60rpmの回転速度で粘度を測定する。
  6. 前記第1の高分子凝集剤の注入量が、前記第1の高分子凝集剤と前記第2の高分子凝集剤の合計注入量の45〜95質量%であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の汚泥の凝集方法。
  7. 前記第1撹拌工程の前に、被処理物としての汚泥を希釈水で希釈する汚泥希釈工程を有することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の汚泥の凝集方法。
  8. 請求項1〜7の何れかに記載の汚泥の凝集方法は、機械的な脱水工程に先立って行われることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の汚泥の凝集方法。
  9. 第2撹拌工程で、凝集フロックを成長させ、脱水することを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の汚泥の凝集方法。
  10. 前記脱水は、遠心脱水することを特徴とする請求項8又は9に記載の汚泥の凝集方法。
  11. 第1撹拌槽と第2撹拌槽とを備え、
    前記第1撹拌槽は、DAM系高分子凝集剤、DAA系高分子凝集剤、アミジン系高分子凝集剤から選ばれる少なくとも1つの第1の高分子凝集剤の溶液を、被処理物としての嫌気性消化汚泥に注入し、撹拌機の回転速度を1000rpm以上に設定した高速撹拌により、前記汚泥と第1の高分子凝集剤の溶液を混合して混合汚泥を調製する手段を備え、
    前記第2撹拌槽は、DAM系高分子凝集剤、DAA系高分子凝集剤、アミジン系高分子凝集剤から選ばれる少なくとも1つの第2の高分子凝集剤の溶液を前記混合汚泥に注入し、前記混合汚泥と第2の高分子凝集剤の溶液とを混合して凝集フロックを成長させる手段を備えた汚泥の凝集装置。
  12. 請求項11に記載の汚泥の凝集装置は、機械的な脱水装置に連結されることを特徴とする請求項11に記載の汚泥の凝集装置。
  13. 前記第2撹拌槽では、凝集フロックを形成させ、脱水することを特徴とする請求項11又は12に記載の汚泥の凝集装置。
  14. 前記脱水は、遠心脱水することを特徴とする請求項12又は13に記載の汚泥の凝集装置。
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