JP5876798B2 - ZnSe多結晶体およびその製造方法 - Google Patents

ZnSe多結晶体およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、赤外線透過窓や赤外線レンズに使用されるZnSe多結晶体とその製造方法に関する。
セレン化亜鉛(ZnSe)は赤外線の透過特性に優れていることから、切断加工や板金に用いられている炭酸ガスレーザー用の透過窓やレンズとして使用されている。本用途ではレーザー光の出力が非常に高いことから、透過窓やレンズでの吸収を極めて小さく抑える必要がある。炭酸ガスレーザーは9.4μmと10.6μmを中心とする2つの波長帯の赤外線レーザーを発光するが、前記赤外線レーザー光の吸収を極めて小さく抑えるために、高い純度と適切なZn:Seの化学量論組成比が要求され、現在はCVD(Chemical Vapour Deposition)法で多結晶体が合成されている(特許文献1)。
一方、ZnSe多結晶体を炭酸ガスレーザー用のレンズとして用いる際に、レーザー光を被加工材に正確に照射するための光学系の光軸調整が必要となるが、炭酸ガスレーザーは上述の通り非可視域の赤外線を発光するため、視認することができない。このため、光軸調整の際の操作性や安全性等の面から、非可視レーザーである炭酸ガスレーザーにヘリウムネオンレーザー等の可視レーザーを重畳することが行われている(特許文献2)。
特公昭61−24465号公報 特開昭60−22385号公報
ヘリウムネオンレーザーは、緑色(波長543.5nm)、黄色(波長594.1nm)、橙色(波長612.0nm)、赤色(波長632.8nm)等の可視レーザーを発振できるが、なかでも人間の視感度は緑色の光に対して最も高く、波長が500〜560nmの緑色レーザーを光軸調整に使用できれば、肉眼での光軸調整が容易になる。しかしながら、CVD法で作製されたZnSe多結晶体は、波長が560nmより短い光では50%以下の透過率しかなく、緑色レーザーを用いて光軸調整を行うには光が弱くて視認しにくいという問題があった。このため、560nmより短い波長の光に対するZnSe多結晶体の透過率の向上が求められていた。
本発明者らは上記の要請に鑑み、炭酸ガスレーザーの光軸調整に緑色レーザーの使用を可能とすべく、CVD法で作製されたZnSe多結晶体の500〜560nmの波長域の光の透過率を向上させる方法について鋭意検討を重ねた。その結果、ZnSe多結晶体中に含まれる不純物酸素や結晶粒界が、500〜560nmの波長域の光の透過率を低下させていることを見出し、前記不純物酸素や結晶粒界を低減することにより、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の第1の態様は、厚み5mmの測定試料における500〜560nmの波長域の光の透過率が、30%以上60%以下であるZnSe多結晶体である。
前記多結晶体において、酸素の含有量が1ppm以下であることが好ましい。
前記多結晶体において、平均結晶粒径が50μm以上1mm以下であることが好ましい。
前記多結晶体において、相対密度が99%以上であることが好ましい。
前記多結晶体において、500nmの波長の光の透過率が、30%以上60%以下であることが好ましい。
本発明の第2の態様は、上記の多結晶体を用いた光学部品である。
本発明の第3の態様は、CVD法によりZnSe多結晶体を合成する工程と、不純物濃度が0.001vol%以下、かつ圧力が0.1気圧以上10気圧以下の非酸化性ガス雰囲気中において、前記ZnSe多結晶体を920℃以上1050℃以下の温度に保持して熱処理する工程、を備えるZnSe多結晶体の製造方法である。
前記熱処理工程において、920℃以上1050℃以下の温度に10分以上保持することが好ましい。
前記熱処理工程において、920℃以上1050℃以下の温度に保持する際に、前記ZnSe多結晶体に20MPa以上60MPa以下の圧力を加えることが好ましい。
以上のような本発明によれば、500〜560nmの波長域の光の透過率が高いZnSe焼結体およびその製造方法を提供することができ、炭酸ガスレーザーの光学系の光軸調整に波長500〜560nmの緑色レーザーを使用することが可能となるため、肉眼での光軸調整が容易となる。
実施例16と比較例2の試料の透過率の測定結果を示すグラフである。
以下、本発明の第1の態様であるZnSe多結晶体の実施形態について説明する。
本発明のZnSe多結晶体は、厚み5mmの測定試料における500〜560nmの波長域の光の透過率が30%以上60%以下である。より具体的には、500nmの波長の光の透過率は30%以上60%以下であり、520nmの波長の光の透過率は40%以上60%以下であり、540nmの波長の光の透過率は50%以上60%以下であり、560nmの波長の光の透過率は52%以上60%以下であることが好ましい。かかる透過率を有するZnSe多結晶体を、炭酸ガスレーザーの光学系の透過窓、レンズとして用いることにより、波長500〜560nmの緑色レーザーを使用して肉眼で光軸調整を行うことができるようになるためである。透過率は分光光度計を用いて測定することができる。
このとき、上記のZnSe多結晶体において、酸素の含有量が1ppm以下であることが好ましい。酸素の含有量が1ppmを超えると、500nmの波長において30%以上の透過率を確保することが困難となるためである。ZnSe多結晶体中に含まれる酸素の量は、SIMS(二次イオン質量分析計)で分析することにより、定量化できる。CVD法により溶融亜鉛からの亜鉛蒸気とセレン化水素を反応させて作製されたZnSe多結晶体は、不純物として数ppm程度の酸素を含んでいる。このZnSe多結晶体中の不純物酸素が500〜560nmの波長域の光の透過を阻害するメカニズムについては、現時点では必ずしも明らかではないが、本発明者らは、ZnSe多結晶体中の不純物酸素を減少させることにより、500〜560nmの波長域の光の透過率が向上することを見出した。CVD法により作製されたZnSe多結晶体中の不純物酸素は、前記ZnSe多結晶体を920℃以上1050℃以下の温度に保持して熱処理することにより、減少させることができる。前記熱処理の際には、その雰囲気を精密に制御する必要があるが、具体的な雰囲気制御の内容については後述する。
さらに、上記のZnSe多結晶体の平均結晶粒径は、50μm以上1mm以下であることが好ましい。上記の酸素含有量を減少させる熱処理においては、CVD法により作製されたZnSe多結晶体が920℃以上1050℃以下の温度に保持される。CVD法により作製された直後のZnSe多結晶体の平均結晶粒径は、通常20〜30μm程度であるが、前記熱処理の過程でZnSeの結晶粒子の成長が起こる。結晶粒界における500〜560nmの波長域の光の散乱を低減するという観点からは、平均結晶粒径は50μm以上1mm以下とすることが望ましい。ZnSe多結晶体の平均結晶粒径が50μm未満の場合、結晶粒界の面積が増大することに伴い、500〜560nmの波長域の光の散乱が増大するため好ましくない。一方、平均結晶粒径が1mmを超えると、多結晶体であっても単結晶に近い状態になり、結晶粒界が500〜560nmの波長域の光の散乱に及ぼす影響が小さくなるため、熱処理の際の保持時間を長くしてまで、1mmを超えて粒成長させる意義は小さくなる。ZnSe多結晶体の強度も考え合わせると、平均結晶粒径はより好ましくは50μm以上300μm以下である。ZnSe多結晶体の酸素の含有量が1ppm以下であることが前提となるが、さらに平均結晶粒径が50μm以上1mm以下であることが相まって、500〜560nmの波長域の光の透過率が画期的に向上する。
このとき、熱処理の際にZnSe多結晶体を920℃以上1050℃以下の温度に保持し、保持時間を調節することによって、ZnSeの結晶粒子の大きさを制御することができる。平均結晶粒径は、鏡面研磨したZnSe多結晶体の表面を塩酸でエッチングした後、光学顕微鏡を用いて20倍で写真撮影し、その写真上に60mmの直線を任意に5本引き、その各直線上に存在する結晶粒子の粒界間距離を測定し、それらの平均値を算出することによって求めることができる。
本発明のZnSe多結晶体の相対密度は、99%以上であることが好ましい。相対密度が99%未満の場合、焼結体中の気孔によって波長500nm〜11μmの可視域〜赤外域の光が散乱され、透過率が低下するためである。相対密度は、アルキメデス法で測定したZnSe多結晶体の絶対密度を、ZnSeの理論密度で除することによって求めることができる。
本発明の第2の態様は、第1の態様であるZnSe多結晶体を用いた光学部品である。ここで光学部品とは、光の直進や屈折、干渉などの性質を利用した光学機器に用いられる、光を透過する部品の総称であって、例えば、レンズ、透過窓、プリズム、フィルター、ビームスプリッターなどが含まれる。本発明のZnSe多結晶体は上述の通り、従来にない優れた500〜560nmの波長域の光の透過率を有すると同時に、CVD法で作製されたZnSe多結晶体と同等の2μm〜11μmの波長域の赤外光透過率性能を有しているため、COレーザーに代表される赤外レーザー、赤外線センサー、赤外線カメラなどの用途で使用される光学部品として好適に用いることができる。
本発明の第3の態様であるZnSe多結晶体の製造方法の実施形態について、以下、工程順に説明する。
(ZnSe多結晶体の合成工程)
本発明のZnSe多結晶体は、高純度の材料が得られるという観点から、CVD法を用いて作製することが好ましい。具体的には、搬送ガスとして純度99.999%程度のアルゴンガスを用い、純度99.999%程度のセレン化水素および純度99.999%程度の溶融亜鉛からの亜鉛蒸気を、温度600〜800℃、雰囲気圧力10kPa以下の反応炉内で反応させ、黒鉛基板上にZnSe多結晶体を成長させることによって、合成することができる。
(ZnSe多結晶体の熱処理工程)
上記のようにして合成したZnSe多結晶体を、不純物濃度が0.001vol%以下、かつ圧力が0.1気圧以上10気圧以下の非酸化性ガス雰囲気中において、920℃以上1050℃以下の温度に保持して熱処理する。非酸化性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、水素ガスまたはこれらの混合ガスを用いることができる。前記熱処理により、CVD法により合成したZnSe多結晶体中に数ppmのオーダーで含有されていた不純物酸素を、1ppm以下に減少させることができ、これに伴って、熱処理後のZnSe多結晶体の500〜560nmの波長域の光の透過率を、30%以上60%以下に増大させることが可能になる。このとき、非酸化性ガスの不純物濃度を0.001vol%以下、かつ雰囲気圧力を0.1気圧以上10気圧以下とするのは、非酸化性ガス雰囲気中に不純物として含まれる酸素ガスの分圧を抑えるためである。非酸化性ガスの不純物濃度が0.001vol%を超えるか、あるいは雰囲気圧力が10気圧を超えるような場合には、非酸化性ガス雰囲気中に不純物として含まれる酸素ガスの分圧が高くなり、ZnSe多結晶体中からの不純物酸素の離脱が十分に進行せず、熱処理後のZnSe多結晶体中の不純物酸素を1ppm以下に減少させるのが困難になることがある。一方、雰囲気圧力が0.1気圧未満の場合、920℃以上1050℃以下の温度に保持する際に、ZnSeが分解・昇華する可能性があるため、雰囲気圧力は0.1気圧以上とすることが好ましい。また、920℃未満の温度で熱処理をしても、ZnSe多結晶体中の不純物酸素を1ppm以下に減少させることは難しく、1050℃を超える温度で熱処理をするとZnSeが分解・昇華する可能性があるため、熱処理温度は920℃以上1050℃以下とすることが好ましい。より好ましい熱処理温度は970〜1050℃であり、さらに好ましくは1000〜1050℃である。
前記熱処理の際に、920℃以上1050℃以下の温度に10分以上保持することが好ましい。保持時間が10分未満の場合、ZnSe多結晶体中からの不純物酸素の離脱が十分に進行せず、熱処理後のZnSe多結晶体中の不純物酸素を1ppm以下に減少させるのが困難になることがあるためである。
さらに、前記熱処理工程において、920℃以上1050℃以下の温度に保持する際に、ZnSe多結晶体に20MPa以上60MPa以下の圧力を加えることが好ましい。このとき、プレス成形用の上下一対の型の間にZnSe多結晶体をセットし、上下方向に荷重を加えることにより、ZnSe多結晶体を加圧することができる。前記型の材料としては、黒鉛やグラッシーカーボン等の熱処理温度においても耐熱性のある材料を用いる。圧力を加えながら熱処理を行うと、圧力を加えない場合に比べて、より短い保持時間でZnSe多結晶体中の不純物酸素を1ppm以下に減少させることが可能となる。圧力を加えて加熱することにより再結晶が促進され、再結晶に伴って不純物酸素がZnSe多結晶体から離脱する速度が大きくなるためと推察している。また、加圧による再結晶の促進に伴って、ZnSe多結晶体の粒成長の速度も大きくなる。20MPa未満の圧力では、上記の保持時間を短くできる効果はほとんど見られないが、熱処理温度における保持時間を延ばすことにより、ZnSe多結晶体中の不純物酸素を1ppm以下に減少させることは可能である。一方、熱処理温度において60MPaを超える圧力を加えると、ZnSe多結晶体が破損することがあるため、熱処理温度において加える圧力は、20MPa以上60MPa以下であることが好ましい。さらに好ましい圧力は、20MPa以上40MPa以下である。
(実施例1)
搬送ガスとして純度99.999%のアルゴンガスを用い、純度99.999%のセレン化水素および純度99.999%の溶融亜鉛からの亜鉛蒸気を、温度600℃、雰囲気圧力10kPaの反応炉内で反応させ、黒鉛基板上にCVD成長させてZnSe多結晶体のバルクを合成した。その後、前記バルクを直径20mm、厚み8mmの試料に加工した。前記試料の上面を鏡面研磨した後、前記研磨面を塩酸でエッチングし、光学顕微鏡を用いて20倍の倍率で写真撮影を行った。その写真上に60mmの直線を任意に5本引き、その各直線上に存在する結晶粒子の粒界間距離を測定し、それらの平均値を算出した結果、CVD法で合成した直後のZnSe多結晶体の平均結晶粒径は、20μmであった。次に、アルキメデス法で絶対密度を測定した。前記絶対密度をZnSeの理論密度(5.27g/cm)で除することによって、相対密度を求めた結果、相対密度は99.9%であった。
前記試料を熱処理炉内にセットし、炉内を真空引きして450℃まで加熱した後、高純度窒素JIS1級を導入し、0.1気圧の雰囲気中で1000℃に60分保持して熱処理を行った。高純度窒素JIS1級はJIS K 1107に規定されている、純度99.999vol%以上、酸素5volppm以下の窒素ガスである。
熱処理後の試料の上面を鏡面研磨した後、SIMS(ATOMIKA社製SIMS−400)を用いて、ZnSe多結晶体中に含まれる酸素量を分析した結果、1ppmであった。
CVD法で合成した直後の試料と同じ測定方法で、熱処理後のZnSe多結晶体の平均結晶粒径を測定した結果、150μmであった。
熱処理後の試料の上下面を鏡面研磨し、厚み5mmに仕上げた試料を用い、分光光度計(日本分光社製FT/IR−6100)を使って、500〜560nmの波長域の光の透過率を測定した。その結果を表1に示す。
(実施例2〜3)
熱処理の際の窒素ガス圧力が異なる他は実施例1と同様の方法により、実施例2〜3のZnSe焼結体を作製し、その性状を評価した。実施例2〜3の窒素ガス圧力と、熱処理後のZnSe多結晶体の酸素含有量、平均結晶粒径、500〜560nmの波長域の光の透過率の測定結果を表1に示す。
(比較例1)
HIP(熱間静水圧成形)装置を用いて、熱処理の際の窒素ガス圧力を1000気圧とした他は実施例1と同様の方法により、比較例1のZnSe多結晶体を作製し、その性状を評価した。比較例1の熱処理後のZnSe多結晶体の酸素含有量、平均結晶粒径、500〜560nmの波長域の光の透過率の測定結果を表1に示す。
(比較例2)
CVD法により実施例1と同じ条件で、比較例2のZnSe多結晶体を合成した。比較例2のZnSe多結晶体は熱処理を行わずに、CVD法で合成した直後の試料を用いて、実施例1と同様の方法によりその性状を評価した。比較例2のZnSe多結晶体の酸素含有量、平均結晶粒径、500〜560nmの波長域の光の透過率の測定結果を表1に示す。あわせて、透過率の測定結果のグラフを図1に破線で示す。
Figure 0005876798
表1に示す通り、CVD法で合成した直後のZnSe多結晶体の500〜560nmの波長域の光の透過率が12%以上50%以下と低いのに対して、CVD法で合成したZnSe多結晶体を、0.1〜10気圧の高純度窒素JIS1級中で1000℃に60分保持して熱処理することにより、500〜560nmの波長域の光の透過率が36%以上53%以下に増大することが分かる。また、前記熱処理によって、ZnSe多結晶体の酸素含有量が減少し、平均結晶粒径が増大していた。ZnSe多結晶体に不純物として含まれる酸素が熱処理中に離脱して、ZnSe多結晶体が高純度化されることに加え、ZnSe結晶粒子が成長して結晶粒界が減少することにより、500〜560nmの波長域の光の散乱が減少して、透過率が増大したと推察される。
一方、高純度窒素JIS1級中で1000℃に60分保持して熱処理する場合でも、比較例1のように熱処理の際の窒素ガス圧力が1000気圧と高い場合には、500〜560nmの波長域の光の透過率が15%以上48%以下と低い値になった。このときZnSe多結晶体の酸素含有量は10ppmと高い値であった。これは、不純物酸素の含有量が小さい高純度窒素JIS1級を用いても、熱処理の際の窒素ガス圧力が高いことにより、熱処理の雰囲気が全体として酸素分圧の高い状態になり、ZnSe多結晶体からの不純物酸素の離脱が進行せず、ZnSe多結晶体が高純度化されないために、500〜560nmの波長域の光の散乱が減少しなかったと推察される。
(実施例4)
CVD法により実施例1と同じ条件で実施例4のZnSe多結晶体を合成し、直径20mm、厚み8mmの円板状の試料に加工した。
前記試料の上下面を鏡面研磨した後、直径30mmの平面状のグラッシーカーボン製の型で前記試料を上下方向から挟み込んだ。前記型は、前記試料に接する面において、中心線平均粗さRaが0.05μm、二乗平均平方根粗さRqが0.07μmとなるように研磨されている。試料を挟み込んだ型一式をホットプレス装置にセットし、試料室を真空引きして450℃まで加熱した後、試料室に1気圧の高純度窒素JIS1級を導入して、1気圧の雰囲気圧力を保ったまま920℃まで昇温した。920℃に達した後、前記型を1kN/分の速度で昇圧し、22kNの荷重に達したところで昇圧を止め、前記最大荷重で10分間保持した。その後、型の荷重を取り除き、加熱を中止して試料と型を冷却した。かかる熱処理後に試料室から取り出したZnSe多結晶体は、厚みが減少し直径が23mmに拡大した平板状であった。したがって、除圧直前の試料には52.98MPaの圧力が掛かっていたことになる。
実施例1と同じ測定方法でZnSe多結晶体中に含まれる酸素量を分析した結果、1ppmであった。
実施例1と同じ測定方法で熱処理後のZnSe多結晶体の平均結晶粒径を測定した結果、100μmであった。
実施例1と同じ測定方法で500〜560nmの波長域の光の透過率を測定した。その結果を表2に示す。
(実施例5〜7)
熱処理の際に型に加える最大荷重が異なる他は実施例4と同様の方法により、実施例5〜7のZnSe多結晶体を作製し、その性状を評価した。実施例5〜7の最大荷重と、加圧後試料直径、熱処理後のZnSe多結晶体の酸素含有量、平均結晶粒径、500〜560nmの波長域の光の透過率の測定結果を表2に示す。
(実施例8〜18)
熱処理温度と、熱処理の際に型に加える最大荷重が異なる他は実施例4と同様の方法により、実施例8〜18のZnSe多結晶体を作製し、その性状を評価した。実施例8〜18の熱処理温度、最大荷重と、加圧後試料直径、熱処理後のZnSe多結晶体の酸素含有量、平均結晶粒径、500〜560nmの波長域の光の透過率の測定結果を表2に示す。あわせて、実施例16の透過率の測定結果のグラフを図1に実線で示す。
(比較例3)
熱処理温度を900℃とした他は実施例4と同様の方法により、比較例3のZnSe多結晶体を作製した。比較例3では熱処理後に試料に亀裂が発生した。熱処理温度が900℃と低かったために、熱処理中に型を加圧した際に試料が変形せず、圧壊したと推察される。
実施例1と同じ測定方法でZnSe多結晶体中に含まれる酸素量を分析した結果、10ppmであった。
実施例1と同じ測定方法で熱処理後のZnSe多結晶体の平均結晶粒径を測定した結果、20μmであった。
熱処理後に試料に亀裂が発生したため、500〜560nmの波長域の光の透過率は測定できなかった。
(比較例4)
熱処理温度を1100℃とした他は実施例4と同様の方法により、比較例4のZnSe多結晶体を熱処理した。比較例4では熱処理中に試料が昇華し、加圧後試料直径、熱処理後のZnSe多結晶体の酸素含有量、平均結晶粒径、500〜560nmの波長域の光の透過率を測定することができなかった。熱処理温度が1100℃と高すぎたために、熱処理中にZnSe多結晶体が分解、昇華したと推察される。
(比較例5)
熱処理の際の雰囲気ガスとして高純度窒素JIS2級を使用した他は実施例4と同様の方法により、比較例5のZnSe多結晶体を作製し、その性状を評価した。高純度窒素JIS2級は、純度99.99vol%以上、酸素50volppm以下の窒素ガスである。加圧後試料直径、熱処理後のZnSe多結晶体の酸素含有量、平均結晶粒径、500〜560nmの波長域の光の透過率の測定結果を表2に示す。
Figure 0005876798
表2に示す通り、CVD法で合成したZnSe多結晶体を1気圧の高純度窒素JIS1級中で、60MPa以下の圧力を加えながら920〜1050℃に保持して熱処理することにより、500〜560nmの波長域の光の透過率が30%以上60%以下に増大することが分かる。また、前記熱処理によって、ZnSe多結晶体の酸素含有量が減少し、平均結晶粒径が増大していた。ZnSe多結晶体に不純物として含まれる酸素が熱処理中に離脱して、ZnSe多結晶体が高純度化されることに加え、ZnSe結晶粒子が成長して結晶粒界が減少することにより、500〜560nmの波長域の光の散乱が減少して、透過率が増大したと推察される。
熱処理温度はより好ましくは970〜1050℃であり、さらに好ましくは1000〜1050℃である。熱処理温度が高くなるに従い、ZnSe多結晶体の酸素含有量が減少して高純度化されると共に、平均結晶粒径が増大して結晶粒界が減少し、500〜560nmの波長域の光の散乱が減少するためである。しかしながら、熱処理温度が1050℃を超えると、熱処理中にZnSe多結晶体が分解、昇華することがあるため、ZnSe多結晶体が分解、昇華しない温度を熱処理の上限温度とする必要がある。
一方、高純度窒素JIS2級中で920℃に保持して熱処理する場合、500〜560nmの波長域の光の透過率が15%以上45%以下と低い値になった。このときZnSe多結晶体の酸素含有量は20ppmと高い値であった。これは、不純物酸素の含有量が高純度窒素JIS1級と比べて10倍大きい高純度窒素JIS2級を用いると、熱処理の雰囲気が全体として酸素分圧の高い状態になり、ZnSe多結晶体中の不純物酸素の含有量が増加するために、500〜560nmの波長域の光の散乱が減少しなかったと推察される。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は上記の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の範囲でのすべての変更が含まれる。
本発明によるZnSe多結晶体は、赤外線透過窓や赤外線レンズとして好ましく用いることができ、炭酸ガスレーザーの光学系に用いた場合は、光軸調整の際に波長500〜560nmの緑色レーザーを使用して、肉眼での光軸調整を可能にすることができる。

Claims (7)

  1. 酸素の含有量が1ppm以下であり、平均結晶粒径が50μm以上1mm以下であり、厚み5mmの測定試料における500〜560nmの波長域の光の透過率が、30%以上60%以下であるZnSe多結晶体。
  2. 相対密度が99%以上である請求項に記載のZnSe多結晶体。
  3. 500nmの波長の光の透過率が、30%以上60%以下である請求項1または2に記載のZnSe多結晶体。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載のZnSe多結晶体を用いた光学部品。
  5. CVD法によりZnSe多結晶体を合成する工程と、
    不純物濃度が0.001vol%以下、かつ圧力が0.1気圧以上10気圧以下の非酸化性ガス雰囲気中において、前記ZnSe多結晶体を920℃以上1050℃以下の温度に保持して熱処理する工程、
    とを備える請求項1〜3のいずれか1項に記載のZnSe多結晶体の製造方法。
  6. 前記熱処理工程において、920℃以上1050℃以下の温度に10分以上保持する請求項に記載のZnSe多結晶体の製造方法。
  7. 前記熱処理工程において、920℃以上1050℃以下の温度に保持する際に、前記ZnSe多結晶体に20MPa以上60MPa以下の圧力を加える請求項またはに記載のZnSe多結晶体の製造方法。
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