JP5875545B2 - 電動舵取機 - Google Patents
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Description
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、電動機の駆動を行うことなく舵角を保持するとともに、過大トルクの吸収を可能にした電動舵取機を提供することにある。
本発明に係る電動舵取機は、歯車を介して伝達される電動機の駆動力を用いて舵板を取り付けた舵軸を回動させて操舵する電動舵取機であって、前記舵軸を貫通させて舵軸外周面との間に磁性流体を封入する密閉空間を形成する磁性流体封入部と、前記磁性流体封入部内で前記舵軸から半径方向外向きに前記密閉空間へ突出するよう取り付けられた板状の回転子と、前記密閉空間の円周方向を二分割するように前記磁性流体封入部の内壁面から前記舵軸外周面へ向けて突設された分離板と、前記分離板を挟んで前記密閉空間に連通する閉回路の磁性流体循環流路と、前記磁性体循環流路に設けられて流路抵抗を制御する磁性流体流調整部と、を具備してなる舵角保持及び過大トルク吸収機構を備えていることを特徴とするものである。
この場合、前記磁性流体調整部を複数設けると、流路流れ方向の長さを増すことができるため、磁性流体が破断しにくくなり、使用可能な減衰力を大きくすることができる。また、通電する電磁石の数を変化させることにより、流路抵抗の増減は、広範囲にわたる段階的な調整が可能となる。
電動舵取機10は、例えば図8及び図9に示すように、船舶1の進行方向を所望の方向へ導くための装置として、船尾部分に取り付けられている。この電動舵取機10は、駆動側歯車11及び従動側歯車12を介して伝達される電動機13の駆動力を用いて、舵板14を取り付けた舵軸15を回動(図1(b)の矢印R参照)させて操舵する装置である。図示の構成例では、複数の電動機13を備え、各電動機13の駆動軸に取り付けられた駆動側歯車11が舵軸15に取り付けた従動側歯車12と噛合している。すなわち、電動舵取機10は、電動機13を所望の方向へ適宜回動させることにより、舵板14に必要な舵角を与えることができる。
本実施形態のトルク変動対策部20は、舵軸15に設けられ、磁性流体封入部21と、回転子22と、分離板23と、磁性流体循環流路24と、磁性流体流調整部30と、を備えている。
密閉空間21a及び後述する磁性流体循環流路24に封入される磁性流体(MR流体)は、例えばマグネタイトやマンガン亜鉛フェライトなどの強磁性微粒子をベース液中に含む流体であり、磁性を帯び、砂鉄のように磁石に吸い寄せられる性質を有している。
また、磁性流体流路24の両端部は、いずれも密閉空間21aに開口し、密閉空間21aの軸方向長さと略一致する領域に延在する開口部24a,24bとなる。すなわち、磁性流体流路24の開口部24a,24bは、舵板14の操舵限界角度に規定される回転子22の回動範囲外で、かつ、分離板23の両側となる領域に開口する。換言すれば、磁性流体流路24の開口部24a,24bは、回転子22及び分離板23により常に周方向が分離された状態となる領域にそれぞれ開口している。
本実施形態の磁性流体調整部30は、例えば図2に示すように、磁性体循環流路24の流路断面積を絞るオリフィス部31と、磁性体循環流路24の外周部に設けられた電磁石32とを備えている。この電磁石32は、制御部40からの制御信号を受けて、舵軸15の過大トルク検出時に通電されて磁力を発生する。
図6(a)に示す第1変形例のオリフィス部50では、矩形断面の磁性流体循環流路24の中心部に流路断面積より小さい板材51を固定設置することで、磁性流体循環流路24の流路断面積を絞っている。なお、小さい板材51の流路方向の長さは、予想される過大トルクに応じて適宜調整する。特に、流路抵抗が増す磁性流体調整部30で流路断面積を絞った場合、少ない磁力で過大トルクを吸収可能な流路抵抗となるため、例えば磁性流体調整部30と同じ位置、長さで小さい板材51を固定設置する。
ただし、過大トルクや舵角保持が必要でない、例えば舵角を大きく変更する場合のような電動舵取機が正常な作動をする場合は、流路抵抗が大きいと舵軸を回転させる電動機の駆動力が多く必要となるため、流路抵抗が小さいほうが望ましい。そのため、磁性流体調整部30の流路抵抗だけで予想される過大トルクを吸収可能である場合、オリフィス部30を撤去する構造も考えられる。
図5において、上段に示す磁場が形成されていない状況では、磁性流体中の強磁性微粒子Pは不規則に分散した状態で流れていく。しかし、磁場が形成された下段の状況では、磁場の影響を受けた強磁性微粒子Pが流れ方向と直交する方向(S/N極の方向)へ整列する。この結果、磁性流体の粘度が増して大きくなるので、磁性体循環流路24の流路抵抗、すなわち、磁性体循環流路24を流れる磁性流体の圧力損失は増すこととなる。このような磁性流体の粘度上昇は、磁場が強いほど大きくなる。
トルク変動対策部20は、回転子22及び分離板23で常に周方向が二つの空間に分離された状態となる密閉空間21aに対し、磁性流体循環流路24の両端部となる開口部24a,24bを連通させている。このため、磁性流体封入部21の密閉空間21a内に封入された磁性流体は、回転子22の回動方向に応じて磁性体循環流路24を流動することとなる。このような磁性流体の流動は、舵板14及び舵軸15とともに同方向へ同速度で回動する回転子22の回転速度や回動範囲に応じて、流速や流量も変化する。
以下、この過大トルクを吸収する場合について、制御部40の制御例を図3のフローチャートを参照して説明する。
上述した入力を受けて、次のステップS2では、指令舵角(θ0)を算出し、例えば図4に示す式1及び式2に基づいて、電動機13に対する入力電圧(Vm)を算出するとともに、ダンパ入力仮定電圧(Ipre_d)を算出する。このダンパ入力仮定電圧とは、トルク変動対策部20の流路抵抗を定める(意味する)値であり、従って、電磁石32へ通電する電圧となる。
これと同時に、ステップS11ではひずみゲージにより舵軸15のひずみを検出する。そして、ステップS12では、ひずみゲージの検出値に基づいて、舵軸15のトルクを算出する。この場合のトルクは、例えば潮流からの力に起因するものである。
一方、トルクの算出値が所定値未満と小さいNOの場合には、次のステップS6に進んでダンパ入力電圧とダンパ入力仮定電圧とが等しくなるように制御する。すなわち、過大なトルクの作用がなく正常な運転状況にあるので、電磁石32への通電をダンパ入力仮定電圧に設定して現状の運転を継続する。
磁性流体循環流路24の流路抵抗を増減させる具体例としては、磁性流体流調整部30の電磁石32に対する通電を制御して磁場を変化させ、磁性流体の粘度を変化させることが効果的である。また、磁性流体流調整部30に設けたオリフィス部31の流路抵抗により、比較的小さな潮流変化等に対する舵角保持が可能である。
そこで、流路流れ方向の長さを大きく確保するため、磁性流体調整部30を複数に分割して磁性流体循環流路24に設けると、磁性流体の破断を低減できる。また、通電する電磁石32の数を変化させることにより、磁性流体に作用する流路抵抗の増減についても、広範囲にわたる段階的な調整が可能になる。すなわち、磁性流体循環流路24に設ける磁性流体調整部30は、磁性流体を破断しにくくし、使用可能な減衰力を大きくするため、電磁石32による磁場発生部及びオリフィス部31について、流路流れ方向の長さを大きく設定することが望ましい。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
10 電動舵取機
11 駆動側歯車
12 従動側歯車
13 電動機
14 舵板
15 舵軸
15a 舵軸外周面
20 舵角保持及び過大トルク吸収機構(トルク変動対策部)
21 磁性流体封入部
21a 密閉空間
22 回転子
23 分離板
24 磁性流体循環流路
24c 波形部
30 磁性流体流調整部
31,50,60,70 オリフィス部
32 電磁石
40 制御部
Claims (3)
- 歯車を介して伝達される電動機の駆動力を用いて舵板を取り付けた舵軸を回動させて操舵する電動舵取機であって、
前記舵軸を貫通させて舵軸外周面との間に磁性流体を封入する密閉空間を形成する磁性流体封入部と、
前記磁性流体封入部内で前記舵軸から半径方向外向きに前記密閉空間へ突出するよう取り付けられた板状の回転子と、
前記密閉空間の円周方向を二分割するように前記磁性流体封入部の内壁面から前記舵軸外周面へ向けて突設された分離板と、
前記分離板を挟んで前記密閉空間に連通する閉回路の磁性流体循環流路と、
前記磁性体循環流路に設けられて流路抵抗を制御する磁性流体流調整部と、
を具備してなる舵角保持及び過大トルク吸収機構を備えていることを特徴とする電動舵取機。 - 前記磁性流体調整部は、前記磁性体循環流路の流路断面積を絞るオリフィス部と、前記磁性体循環流路の外周部に設けられた電磁石とを備え、
前記電磁石は、前記舵軸の過大トルク検出時に通電されることを特徴とする請求項1に記載の電動舵取機。 - 前記磁性流体調整部を複数設けたことを特徴とする請求項2に記載の電動舵取機。
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