JP5874123B2 - 汚濁水処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、汚濁水処理方法に関する。
処理が必要な汚濁水は飲食店やレストランの厨房、食品加工工場、畜産センター、製油工場などから多量に産出される。しかも、これらの汚濁水は高濃度の油脂類を含んでいる。これらの油脂は排水管内に付着して配管の閉塞を引き起こしたり、生物処理層への悪影響を引き起こしたりする。また、公共用水域において高濃度の有機汚濁を引き起こし、BOD負荷を5〜8倍も引き上げて、腐敗して悪臭の原因ともなり、水棲生物にも悪い影響を与え問題になっている。この問題における手法として微生物による汚濁水処理が知られている(特許文献1、2)。
一方、シュードクロバクテリウム アサッカロリティカム(Pseudochrobactrum asacharolyticum)はオキシダーゼ陽性、非胞子形成性、非運動性のグラム陰性桿菌として知られている(非特許文献1)。
しかし、シュードクロバクテリウム アサッカロリティカムが汚濁水処理に有効であることについては一切報告されていない。
特開2004−216286号公報 特開2012−105635号公報
Int J Syst Evol Microbiol 56(8), 1823-1829, 2006
本発明は、高濃度の油脂を含む汚濁水に対して高い油脂分解能を有する微生物を用いた汚濁水処理方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の各発明を包含する。
〔1〕シュードクロバクテリウム アサッカロリティカム(Pseudochrobactrum asacharolyticum)と汚濁水を接触させることを特徴とする汚濁水処理方法。
〔2〕前記汚濁水が油脂を含有することを特徴とする〔1〕に記載の汚濁水処理方法。
〔3〕さらに、シュードモナス、プロテアバクテリア、フラボバクテリア、コリネバクテリア、アクチノバクテリア、サイトファーガ、ノカルデイア、アルカリジェネス、クロモバクテリア、ニトロソモナス、ニトロバクター、ズーグレア、バシルス、アシネトバクター、オセアノバシルス、セルモナス、デルフチア、サーモモナス、ハロモナス、ブレビバクテリウム、オーシャノバチルス、マリノバクター、マイクロバクテリウム、バージバチラス、ラオウルテラ、ブラキバクテリウム又はステノトロホモナスに属する微生物から選択される1又は2以上を接触させることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の汚濁水処理方法。
〔4〕処理対象の汚濁水に対する浄化作用につき好適性を有する微生物を選択し、シュードクロバクテリウム アサッカロリティカム(Pseudochrobactrum asacharolyticum)と合わせて有効微生物を構成する工程、
有効微生物をそれぞれ培養する工程、
培養した各有効微生物を前記汚濁水に馴化させる工程、及び
馴化させた各有効微生物と汚濁水を接触させる工程
を包含することを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の汚濁水処理方法。
〔5〕汚濁水を貯留する貯留槽と、貯留槽から流出した汚濁水を貯水可能であり、かつ汚濁水に空気を供給する曝気槽と、有効微生物を吸着物質に吸着させて保持した反応槽とを備え、有効微生物と曝気槽に貯められた汚濁水を接触させることにより汚濁水を処理する汚濁水処理装置を用いることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の汚濁水処理方法。
〔6〕前記汚濁水処理装置において、反応槽を曝気槽から離れた位置に設置し、曝気槽と反応槽との間に送水管を設け、曝気槽と反応槽との間で汚濁水を循環させることを特徴とする〔5〕に記載の汚濁水処理方法。
〔7〕前記汚濁水処理装置において、さらに、汚濁水を反応槽に散水噴射する散水噴射装置を備えることを特徴とする〔6〕に記載の汚濁水処理方法。
〔8〕前記吸着物質が、石英粗面岩、活性炭、木炭、カキ殻、サンゴ砂、セラミックス、ナイロン綱、黒雲母流紋岩、黒雲母花崗岩、流紋岩、花崗岩よりなる群から選択される1又は2以上である〔5〕〜〔7〕のいずれかに記載の汚濁水処理方法。
〔9〕前記汚濁水処理装置において、減少した反応槽内の有効微生物量を補充するために貯留槽に有効微生物を追加投入することを特徴とする〔5〕〜〔8〕のいずれかに記載の汚濁水処理方法。
〔10〕前記汚濁水処理装置において、貯留槽に有効微生物の栄養剤を添加することを特徴とする〔5〕〜〔9〕のいずれかに記載の汚濁水処理方法。
本発明の汚濁水処理方法は、シュードクロバクテリウム アサッカロリティカムを用いるので、油脂を高濃度に含有する汚濁水を処理することができる。
本発明は、汚濁水を微生物によって浄化するので、薬液を使用する必要がない。微生物は浄化後に自己分解して自然消滅するので、二次公害のおそれがなく周囲(環境)への安全性を向上できる。微生物を追加するだけで、浄化能力を容易に強化することができるため、大型で高価な設備を増加する必要がない。また、汚濁水処理設備からの悪臭を軽減できる。
本発明の方法の実施の一形態を示す構成図である。 本発明の方法の実施の一形態を示す構成図である。
本願の発明者らはシュードクロバクテリウム アサッカロリティカムがオリーブ油等の油脂を分解する作用を有すること及びシュードクロバクテリウム アサッカロリティカムが汚濁水処理に有効であるであることを初めて見出した。さらに、シュードクロバクテリウム アサッカロリティカムが耐塩性(3%)を有し、カタラーゼ陽性であること、グリセロール、澱粉、グルコース、ラクトース、マルトース、マンニット、スクロース、フルクトース又はキシロースに対して分解能を有すること及び中温菌であることを初めて見出した。ここでシュードクロバクテリウム アサッカロリティカムはグリセロールも分解除去できることから、完全酸化にも働くことが示唆される。さらに本願の発明者らはシュードクロバクテリウム アサッカロリティカムが優れた生物学的酸素要求量、化学的酸素要求量、浮遊物質及びノルマル・ヘキサン浄化能を有することを初めて見出した。また、本願の発明者らはシュードクロバクテリウム アサッカロリティカムのバイオセーフティレベルが1であり安全であることを確認している。
本発明は、シュードクロバクテリウム アサッカロリティカムと汚濁水を接触させることを特徴とする汚濁水処理方法(以下、「本発明の汚濁水処理方法」という。)を提供する。シュードクロバクテリウム アサッカロリティカムと汚濁水を接触させる方法は、特に限定されず、例えば汚濁水中にシュードクロバクテリウム アサッカロリティカムを投入する方法、シュードクロバクテリウム アサッカロリティカムを吸着した吸着物質に汚濁水を散布する方法等が挙げられる。
本発明の汚濁水処理方法において処理対象の汚濁水は、浄化を必要とする汚濁水であれば特に限定されないが、例えば飲食店やレストランの厨房、食品加工工場、畜産施設、工場、家庭などから多量に産出された様々な汚濁水等が挙げられる。また、該汚濁水は油脂を含有していていることが好ましく、油脂を高濃度に含有していていることがさらに好ましい。油脂濃度は、公知の方法により測定され1000ppm以上であることが好ましく、5000ppm以上であることがさらに好ましく、10000ppm以上であることが特に好ましい。本発明の汚濁水処理方法において、油脂濃度が65000ppmの汚濁水が処理されることが実証されている(実施例参照)。また、本発明の汚濁水処理方法は油脂濃度が100000ppmを超える汚濁水も処理することが可能である。汚濁水中の油脂の種類は特に限定されないが、例えば動物性油、植物性油等が挙げられる。さらに該汚濁水は、活性汚泥法による工場や家庭排水等の処理にて発生した余剰汚泥、生汚泥、脱水ケーキ等、様々な汚泥を含有していてもよい。また、該汚濁水は他にも、ナイロン、ポリビニルアルコール(PVA)、臭気物質、未分解物等を含有していてもよい。
シュードクロバクテリウム アサッカロリティカムと汚濁水を接触させることにより処理された水は、その後処理水として放流される。
本発明の汚濁水処理方法においては、さらに他の微生物を汚濁水と接触させることが好ましい。他の微生物は特に限定されないが、例えばシュードモナス、プロテアバクテリア、フラボバクテリア、コリネバクテリア、アクチノバクテリア、サイトファーガ、ノカルデイア、アルカリジェネス、クロモバクテリア、ニトロソモナス、ニトロバクター、ズーグレア、バシルス、アシネトバクター、オセアノバシルス、セルモナス、デルフチア、サーモモナス、ハロモナス、ブレビバクテリウム、オーシャノバチルス、マリノバクター、マイクロバクテリウム、バージバチラス、ラオウルテラ、ブラキバクテリウム、ステノトロホモナス等に属する微生物が挙げられ、これらの1又は2以上を用いていることが好ましい。他の微生物と汚濁水を接触させる方法は、特に限定されず、例えば汚濁水中に他の微生物を投入する方法、他の微生物を吸着した吸着物質に汚濁水を散布する方法等が挙げられる。
本発明の汚濁水処理方法は、処理対象の汚濁水に対する浄化作用につき好適性を有する微生物を選択し、シュードクロバクテリウム アサッカロリティカムと合わせて有効微生物を構成する工程を包含していることが好ましい。
処理対象の汚濁水に対する浄化作用につき好適性を有する微生物を選択するとは、予め採取した処理対象の汚濁水に対して良好な処理作用、処理効果を有する微生物を選択することである。処理対象となる汚濁水の種類を分析し、その汚濁水に含まれている自然発生的に増殖した微生物に関係なく上記微生物を選択する。つまり、処理対象の汚濁水の浄化作用及び効果につき好適性を有する微生物を意図的(人為的)に選択し、オーダーメイド微生物を開発する。
有効微生物はシュードクロバクテリウム アサッカロリティカムを含んでいればよく、さらに他の微生物を含んでいることが好ましい。油脂の他にも様々な成分が含まれている汚濁水に対応するように、油脂以外の様々な成分を分解する作用を有する複数の微生物を選択することが好ましい。
上記工程を含むことにより、施設や工場ごとに異なる複雑な汚濁成分に対応して汚濁水を処理することができる。つまり、様々な工場や施設からの汚濁水に各々最適な微生物をその施設や工場単位で開発することができ、各工場や施設ごとの独自の問題に対応することができる。
本発明の汚濁水処理方法は、有効微生物をそれぞれ培養する工程を包含していることが好ましい。培養の方法は特に限定されず各有効微生物に応じて公知の方法を用いることができる。該工程においては、各有効微生物を、好気的、嫌気的をも勘案して、培養槽等で効率よく培養、育生することが好ましい。
本発明の汚濁水処理方法は、培養した各有効微生物を処理対象の汚濁水に馴化させる工程を包含していることが好ましい。馴化の方法は特に限定されず例えば、処理対象の汚濁水を一部別の容器に取り出して、その容器内に有効微生物を添加して、増殖させる方法等が挙げられる。該工程を含むことにより、本発明の汚濁水処理方法の汚濁水処理効果はさらに増大する。
本発明の汚濁水処理方法は、馴化させた各有効微生物と汚濁水を接触させる工程を包含していることが好ましい。接触の方法は特に限定されず、例えば有効微生物を汚濁水に投入する方法、有効微生物を吸着した吸着物質に汚濁水を散布する方法等が挙げられる。該工程を含むことにより、各有効微生物が汚濁水に含まれる油脂、汚泥、ナイロン、ポリビニルアルコール(PVA)臭気物質、未分解物等様々な成分を分解し、汚濁水の処理反応が進む。
本発明の汚濁水処理方法は、汚濁水を貯留する貯留槽と、貯留槽から流出した汚濁水を貯水可能であり、かつ汚濁水に空気を供給する曝気槽と、有効微生物を吸着物質に吸着させて保持した反応槽とを備え、有効微生物と曝気槽に貯められた汚濁水を接触させることにより汚濁水を処理する汚濁水処理装置を用いることが好ましい。既存の汚濁水処理設備の一部又は全部を本発明の汚濁水処理方法に用いる汚濁水処理装置として、本発明の汚濁水処理方法に用いてもよい。
貯留槽は、汚濁水を貯留する機能を有していればよく、さらに他の機能を有していてもよい。他の機能としては特に限定されないが、例えば、下流槽への流水量を調節する機能、汚濁水のpH、温度を調整する機能、空気を供給する機能等が挙げられる。下流槽への流水量を調節する機能を有する場合には貯留槽及び下流槽の大きさ、汚濁の程度等により流水量は適宜調節される。既存の汚濁水処理設備の一部が汚濁水を貯留する機能を有する場合には、当該一部を本発明の汚濁水処理方法に用いる汚濁水処理装置の貯留槽として用いてもよい。
曝気槽は、前記貯留槽から流出した汚濁水を貯水可能であればよく、さらに汚濁水に空気を供給する機能を有していることが好ましい。また、他の機能を有していてもよい。他の機能としては特に限定されないが、例えば、下流槽への流水量を調節する機能、汚濁水のpH、温度を調整する機能等が挙げられる。下流槽への流水量を調節する機能を有する場合には曝気槽及び下流槽の大きさ、汚濁の程度等により流水量は適宜調節される。既存の汚濁水処理設備の一部が貯留槽から排出された汚濁水を貯水可能である場合には、当該一部を本発明の汚濁水処理方法に用いる汚濁水処理装置の曝気槽として用いてもよい。
反応槽は、有効微生物と汚濁水を接触させる槽であり、有効微生物を吸着物質に吸着させて保持する機能を有していることが好ましい。また、他の機能を有していてもよい。吸着物質は、有効微生物を吸着させる機能を有していればよく特に限定されないが、例えば石英粗面岩、活性炭、木炭、カキ殻、サンゴ砂、セラミックス、ナイロン綱、黒雲母流紋岩、黒雲母花崗岩、流紋岩、花崗岩等が挙げられる。1の吸着物質を単独で使用してもよく、2以上の吸着物質を組み合わせて使用してもよい。また吸着物質の構成は、使用条件や周囲条件等に応じて、適宜、改良されてよい。
反応槽において、有効微生物と曝気槽に貯められた汚濁水を接触させることにより、吸着物質に吸着させて保持した各有効微生物が汚濁水に含まれる油脂、汚泥、ナイロン、ポリビニルアルコール(PVA)等様々な成分を分解し、汚濁水の処理反応が進む。反応槽において、活性剤の付与、温度調整等、有効微生物の分解活動がより促進されるような環境作り(条件設定)を必要に応じて行うことが好ましい。既存の汚濁水処理設備の一部が有効微生物と汚濁水を接触させる機能を有する場合には、当該一部を本発明の汚濁水処理方法に用いる汚濁水処理装置の反応槽として用いてもよい。
また、反応槽は、曝気槽の中に設置してもよく、曝気槽から離れた位置に設置してもよい。反応槽を曝気槽から離れた位置に設置する場合には、反応槽を曝気槽の上方、下方等いずれに設置してもよいが、上方に設置することが好ましい。反応槽を曝気槽から離れた位置に設置する場合には、曝気槽と反応槽との間に送水管を設け、曝気槽と反応槽との間で汚濁水を循環させることが好ましい。曝気槽と反応槽との間で汚濁水の循環が繰り返し行われることにより浄化が重ねられる。
本発明の汚濁水処理方法に用いる汚濁水処理装置において、さらに、汚濁水を反応槽に散水噴射する散水噴射装置を備えることが好ましい。散水噴射装置において、噴射速度、噴射される水滴の大きさの調節等、有効微生物の分解活動がより促進されるような条件設定を必要に応じて行うことが好ましい。例えば、噴射される水滴の大きさは、用いる散水噴射装置において可能な限り小さく設定し、多くの吸着物質(担体)に汚濁水が接触するように条件設定を行うことが好ましい。
本発明の汚濁水処理方法に用いる汚濁水処理装置において、反応槽内の有効微生物は自己分解又は反応槽から下流槽への流出により減少する。そのため、減少した反応槽内の有効微生物を補充するために貯留槽、反応槽、曝気槽等に有効微生物を追加投入することが好ましく、貯留槽に有効微生物を追加投入することがさらに好ましい。有効微生物を追加投入することにより、反応槽内の有効微生物の減少に伴う汚濁水処理効果の減少を回復させることができる。有効微生物を追加投入する方法は、特に限定されず、例えば培養した有効微生物を汚濁水に投入する方法等が挙げられる。有効微生物を追加投入する頻度は自動設定してもよい。
本発明の汚濁水処理方法に用いる汚濁水処理装置において、貯留槽に有効微生物の栄養剤を添加してもよい。栄養剤は有効微生物の活性を高める成分を含有するものであれば特に限定はされず、市販品を使用してもよい。栄養剤を貯留槽に添加する方法は、特に限定されず、例えば有効微生物に対して適量の栄養剤を貯留槽に添加する方法等が挙げられる。
以下、本発明の実施の形態を詳説する。
図1は本発明の汚濁水処理方法を実施するための装置の基本的な構成の好ましい一例であるが、本発明の汚濁水処理方法を実施するための装置はこれに限定されない。1は、汚濁水を取り込み、砂等の比較的大きな異物を沈殿させるための沈砂槽で、内部に仕切板や堰等を設けている。2は、沈砂槽1から導入した汚濁水を一時貯留するための原水槽である。なお、5は、汚濁水を濾過するためのフィルターを内蔵した細目スクリーンである。3は、原水槽2から導入した汚濁水を貯留する貯留槽でありpHや温度を調整し、流水量等を調節する機能を有する。4は、pHや温度等の調整を行うための測定器、6は、曝気を行うためのエアパイプで、ブロア7と接続されている。
8、9は調整された汚濁水を浄化のために空気を供給する曝気槽、10、11は、曝気槽8、9の底部に配設されたポンプ、12、13は、曝気をおこなうためのエアパイプである。14、15は、曝気槽8、9の直上位置に配設された反応槽で、その内部には、吸着物質16として、例えば、多孔質の黒雲母流紋岩等が投入・堆積されており、その底部には、多数の細孔を有する濾床17が敷設されている。一方、曝気槽8、9の上部には、ポンプ10、11に接続された散水用ノズル18が多く配設されている。
上述の吸着物質16には、浄化の対象となる汚濁水に対して、好適な浄化作用を有する有効微生物(分解有効菌)が吸着・保持されている。その有効微生物は、予め、処理対象の汚濁水を採取して、その汚濁水に対して好適な浄化作用を有するものが選択され、別途、培養槽等で効率よく培養・育生されたものである。
散水用ノズル18から散水噴射された汚濁水は、吸着物質16を流過する際に、その中に含まれている汚濁物質が有効微生物によって効率よく分解された後、濾床17を経て、直下に配置されている曝気槽8、9に落下する。この曝気槽8、9では、常時、エアパイプ12、13によって曝気がおこなわれており、汚濁物質が分解されやすい状態とされ、ポンプ10、11で汲み上げられて、散水噴射・濾過の循環が繰り返しおこなわれて浄化が重ねられ、下流側に配設されている曝気槽19に流下し、さらに沈降槽20にて異物を沈降させた後に、放流される。なお、図1中、24は曝気のオン・オフを操作するための開閉弁である。
そして、最終段の沈降槽20の底部には、還流用のポンプ21が設けられており、一点鎖線で示す還流ライン25によって、原水槽2及び貯留槽3又は曝気槽8、9に還流させることにより、その還流水中に含まれている有効微生物を再度の浄化のために使用し、無駄な流失を防ぐことができる。また、三方切換弁27を操作することによって、一点鎖線で示す還流ライン25を二点鎖線で示す還流ライン26と接続し、最終段の沈降槽20の未分解物及び分解菌を原水槽2又は貯留槽3、曝気槽8に還流させることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
3種類の店舗(とんかつ店、レストラン、中華料理店)の汚濁水を採取した。採取した汚濁水を、酸(HCl)またはアルカリ(NaOH)を用いてpH7に調整した。
有効微生物としてPseudochrobactrum asacharolyticumの他にBacillus属細菌、Alcaligenes属細菌及びLysinibacillus属細菌を使用し、それぞれをペプトン、酵母エキスを含む栄養培地にて培養した。培養した有効微生物を各店舗の汚濁水に入れて馴化させた。その後、馴化させた有効微生物を混合し、有効微生物含有溶液を調製した。
pH調整した汚濁水1Lに上記有効微生物含有溶液50mLを加えて、図2に示すような構成を有するバイオジェットリアクターユニットを用いて反応を行わせた。ここで、バイオジェットリアクターユニットとは、下方に曝気槽を設け、上方に反応槽を設置したものである。曝気槽中の汚濁水にはエアポンプで空気を供給した。下方の曝気槽よりポンプで汚濁水を汲み上げて反応槽の上部に噴霧した。反応槽の上部への噴霧は小さい水滴にて噴霧させた。反応槽中の吸着物質は多孔質のレアライト(天然の硫紋岩)を使用した。反応槽を通過した汚濁水は上方より下方に流下させた。なお、いわゆる排水処理は開放系であるため汚染菌の混入は避けられず、また汚濁水の中にも土着の微生物も多く存在する。
3日間反応させた処理水を取り出した。処理水を分液漏斗に入れ、ヘキサンを弱酸性(pH4)で加え激しく撹拌してから水層とヘキサン層に分け、水層の水分を除去し、80℃でヘキサンを揮散させて、残留する物質を測定して、油脂としてヘキサン抽出物を定量した。その結果を表1に示す。
表1から明らかなように、3種類の店舗のいずれにおいても、汚濁水中の油脂濃度に比べて処理水の油脂濃度が著しく減少しており、有効微生物含有溶液は優れた油脂分解除去能を有することが確認された。
(実施例2)
食品加工工場の汚濁水を採取した。採取した汚濁水を酸(HCl)またはアルカリ(NaOH)を用いてpH6.8に調整した。
有効微生物としてPseudochrobactrum asacharolyticumの他にBacillus属細菌、Alcaligenes属細菌及びLysinibacillus属細菌を使用し、それぞれをペプトン、酵母エキスを含む栄養培地にて培養した。培養した有効微生物を食品加工工場の汚濁水に入れて馴化させた。その後、馴化させた有効微生物を混合し、有効微生物含有溶液を調製した。
pH調整した汚濁水1Lに上記有効微生物含有溶液50mLを加えて、実施例1と同じバイオジェットリアクターユニットを用いて反応を行わせた。
3日間反応させた処理水を取り出した。pHは7.4であった。処理水中のBOD(生物学的酸素要求量)、COD(化学的酸素要求量)、SS(浮遊物質)及びn−hex(ノルマル・ヘキサン)を定量した。対照については、異なる食品加工工場の汚濁水を採取した点、及び有効微生物含有溶液にPseudochrobactrum asaccharolyticumを使用しない点以外は実施例2と同様に行った。その結果を表2に示す。
表2から明らかなように、シュードクロバクテリウム アサッカロリティカムを含む実施例2では、特に汚濁水中に多量に含まれていたn−hex及びBODがほとんど浄化され、その浄化率はそれぞれ、99.8%、98.8%であった。有効微生物含有溶液は食品加工工場の汚濁水において、優れたBOD、COD、SS及びn−hex浄化能を有することが確認された。
なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
1 沈砂槽
2 原水槽
3 貯留槽
4 測定器
5 細目スクリーン
6 エアパイプ
7 ブロア
8 曝気槽
9 曝気槽
10 ポンプ
11 ポンプ
12 エアパイプ
13 エアパイプ
14 反応槽
15 反応槽
16 吸着物質
17 濾床
18 散水用ノズル
19 曝気槽
20 沈降槽
21 環流用のポンプ
22 エアパイプ
23 エアパイプ
24 開閉弁
25 環流ライン
26 環流ライン
27 三方切換弁
28 反応槽
29 曝気槽

Claims (9)

  1. シュードクロバクテリウム アサッカロリティカム(Pseudochrobactrum asacharolyticum)と油脂を含有する汚濁水を接触させることで、油脂を分解することを特徴とする汚濁水処理方法。
  2. さらに、シュードモナス、プロテアバクテリア、フラボバクテリア、コリネバクテリア、アクチノバクテリア、サイトファーガ、ノカルデイア、アルカリジェネス、クロモバクテリア、ニトロソモナス、ニトロバクター、ズーグレア、バシルス、アシネトバクター、オセアノバシルス、セルモナス、デルフチア、サーモモナス、ハロモナス、ブレビバクテリウム、オーシャノバチルス、マリノバクター、マイクロバクテリウム、バージバチラス、ラオウルテラ、ブラキバクテリウム又はステノトロホモナスに属する微生物から選択される1又は2以上を接触させることを特徴とする請求項1に記載の汚濁水処理方法。
  3. 処理対象の汚濁水に対する浄化作用につき好適性を有する微生物を選択し、シュードクロバクテリウム アサッカロリティカム(Pseudochrobactrum asacharolyticum)と合わせて有効微生物を構成する工程、
    有効微生物をそれぞれ培養する工程、
    培養した各有効微生物を前記汚濁水に馴化させる工程、及び
    馴化させた各有効微生物と汚濁水を接触させる工程
    を包含することを特徴とする請求項1又は2に記載の汚濁水処理方法。
  4. 汚濁水を貯留する貯留槽と、貯留槽から流出した汚濁水を貯水可能であり、かつ汚濁水に空気を供給する曝気槽と、有効微生物を吸着物質に吸着させて保持した反応槽とを備え、有効微生物と曝気槽に貯められた汚濁水を接触させることにより汚濁水を処理する汚濁水処理装置を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の汚濁水処理方法。
  5. 前記汚濁水処理装置において、反応槽を曝気槽から離れた位置に設置し、曝気槽と反応槽との間に送水管を設け、曝気槽と反応槽との間で汚濁水を循環させることを特徴とする請求項4に記載の汚濁水処理方法。
  6. 前記汚濁水処理装置において、さらに、汚濁水を反応槽に散水噴射する散水噴射装置を備えることを特徴とする請求項5に記載の汚濁水処理方法。
  7. 前記吸着物質が、石英粗面岩、活性炭、木炭、カキ殻、サンゴ砂、セラミックス、ナイロン綱、黒雲母流紋岩、黒雲母花崗岩、流紋岩、花崗岩よりなる群から選択される1又は2以上である請求項4〜6のいずれかに記載の汚濁水処理方法。
  8. 前記汚濁水処理装置において、減少した反応槽内の有効微生物量を補充するために貯留槽に有効微生物を追加投入することを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の汚濁水処理方法。
  9. 前記汚濁水処理装置において、貯留槽に有効微生物の栄養剤を添加することを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の汚濁水処理方法。
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