JP5871222B2 - 植物に耐塩性を付与するabcトランスポーター遺伝子 - Google Patents
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Description
[1] AtWBC7タンパク質を過剰発現している形質転換植物細胞。
[2] 前記AtWBC7タンパク質が、以下:
(A) 配列番号:2のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(B) 配列番号:2のアミノ酸配列において1〜9個のアミノ酸基の欠失、挿入、置換および/もしくは付加を含むアミノ酸配列であって、植物細胞の塩耐性を向上させるポリペプチド、または
(C) 配列番号:2のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるポリペプチド
を含む、[1]に記載の植物細胞。
[3] 前記AtWBC7タンパク質が配列番号:2のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、[1]に記載の植物細胞。
[4] 前記AtWBC7タンパク質が、以下の(a)〜(f)のいずれかのポリヌクレオチドによってコードされる、[1]に記載の植物細胞:
(a) 配列番号:1もしくは3のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;
(b) 配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;
(c) 配列番号:2のアミノ酸配列において、1〜9個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;
(d) 配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質と80%以上の同一性を有し、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(e) 配列番号:1または3のヌクレオチド配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;及び
(f) 配列番号:1または3の塩基配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の相同性を有し、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
[5] 前記AtWBC7タンパク質が、以下の(g)〜(l)のいずれかのポリヌクレオチドによってコードされる、[1]に記載の植物細胞:
(g) 配列番号:1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
(h) 配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(i) 配列番号:2のアミノ酸配列において1〜9個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(j) 配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質と80%以上の相同性を有し、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(k) 配列番号:1のヌクレオチド配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;及び
(l) 配列番号:1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の相同性を有し、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
[6] 上記[1]〜[5]に記載の植物細胞より誘導されるカルス。
[7] 上記[1]〜[5]に記載の植物細胞または[6]に記載のカルスより誘導される、形質転換植物体。
[8] 上記[7]に記載の植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。
[9] 下記(a)〜(f)のいずれかのポリヌクレオチドを植物細胞に導入することによって、植物細胞の塩耐性を向上させる、方法:
(a) 配列番号:1または3のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;
(b) 配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;
(c) 配列番号:2のアミノ酸配列において、1〜9個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(d) 配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質と80%以上の同一性を有し、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(e) 配列番号:1または3のヌクレオチド配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;及び
(f) 配列番号:1または3のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の相同性を有し、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド。
本発明で用いる「植物細胞」とは、培地で培養されている脱分化した状態の植物細胞を指す。本明細書中で使用される用語「脱分化」とは、植物体中の葉、茎、根、胚などに一旦特定された細胞(又は分化した細胞)がその性質を失い、再び葉、茎、根、胚、さらには植物体へと成長又は分化する能力を新たに獲得することを指す。
本発明において使用される「AtWBC7タンパク質」は、ABCトランスポータータンパク質ファミリーに属するタンパク質をいう。このABCトランスポータータンパク質は一般に、細菌からヒトまでの様々な種において、糖、アミノ酸、ポリペプチド、疎水性物質などのトランスポーターとして機能する。植物において、このABCトランスポータータンパク質スーパーファミリーは公知の最も大きなファミリーの一つであり、このファミリーにはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)およびコメ(Oryza sativa)の両方で120種以上のものが属する。ABCトランスポータータンパク質は、一般的な分子構造として、数回膜を貫通し基質特異性を決めている疎水性ドメインを2つ、およびATP結合ドメインを2つ有する。例えば、Rea, P.A., Annu. Rev. Plant Biol. 2007. 58:347-75、Sanchez-Fernandes, R.ら、J. Biol. Chem. Vol. 276. 30231-30244, 2001などを参照のこと。
(A) 配列番号:2のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(B) 配列番号:2のアミノ酸配列において、1〜9個のアミノ酸基の欠失、挿入、置換および/または付加を含むアミノ酸配列を含み、を有するポリペプチド、または
(C) 配列番号:2のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ宿主の植物細胞の塩耐性を向上させるポリペプチド。
本発明において使用されるポリヌクレオチド(以下、本発明のポリヌクレオチドともいう)は、好ましくはDNAであり、具体的には、cDNA、合成DNAなどが挙げられる。本発明において用いるDNAが由来する生物種としては、特に制限はないが、好ましくは植物である。植物としては、例えば、シロイヌナズナ、イネ、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、ダイズ、トマト、ワタ、タバコ、ナタネ、ジャガイモ、テンサイ、サトウキビ、ヒマワリ、シバ、樹木(ポプラやユーカリなど)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明において使用されるポリヌクレオチドの具体例としては、例えば、以下の(a)〜(f)のいずれかのポリヌクレオチドによってコードされるものであり得る:
(a) 配列番号:1もしくは3のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;
(b) 配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;
(c) 配列番号:2のアミノ酸配列において、1〜9個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;
(d) 配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質と80%以上の同一性を有し、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(e) 配列番号:1または3のヌクレオチド配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;及び
(f) 配列番号:1または3の塩基配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の相同性を有し、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
より具体的には、以下の(g)〜(l)のいずれかのポリヌクレオチドであり得る:
(g) 配列番号:1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
(h) 配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(i) 配列番号:2のアミノ酸配列において1〜9個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(j) 配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質と80%以上の相同性を有し、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(k) 配列番号:1のヌクレオチド配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;及び
(l) 配列番号:1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の相同性を有し、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
本発明において使用される組換えベクターは、野生型と比較して、本発明において用いられる上記のポリヌクレオチドを過剰発現させて、宿主細胞の塩耐性を向上させるものである。この目的のために本発明において使用される組換えベクターは、植物細胞の形質転換のために使用される当業者に公知の適当なベクター(又はベクター系)に上記のポリヌクレオチドを挿入することによって作製できる。このようなベクターとしては、pBluescript系のベクター、pBI系のベクター、pUC系のベクターなどが使用できる。
本発明の形質転換植物細胞は、本発明において使用される組換えベクターを植物細胞に導入することによって取得できる。組換えベクターの植物細胞への導入は、公知の方法、例えば、植物に感染するウイルスや細菌を介して導入する方法(I. Potrylkus, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol. 42, 205 (1991))、外来DNAを直接導入する方法などが挙げられる。具体的には、アグロバクテリウム法、パーティクルガン法、PEG法、エレクトロポレーション法などを用いることができる。これらの方法は、例えば、形質転換する宿主植物の種類などに応じて適宜決定できる。
以下の実験において、形質転換株の作製及び選択の方法として、本発明者らによる先の出願(特開2008-220303)に記載の手順、または下記に記載の「参考文献」に記載の手順に従った。
第4および第5染色体上に1コピーのpGA-cab-luc-rbcS-gusとpGA-cab-bar-rbcS-hphレポーター遺伝子をもつシロイヌナズナ2-1-6株(エコタイプcol-0)をアクティベーションタギング用の親株とした。種子は表面を滅菌後、4℃で処理し、0.2 % ゲランガム (San-Ei Gen F.F.I., Inc., Toyonaka, Japan) (Tsugane et al., 1999)で固化したMurashige-Skoog (MS)培地上に播いた。
20℃、24時間連続光照射下で7日間培養後、15-25本の芽生えをMS液体培地を入れた三角フラスコに移し、80 rpmで2週間旋回培養を行った。
生長した根を地上部より切り離した後、3-6 mmの大きさに切り刻んだ。切り刻んだ根の断片を、MS培地に0.5 μg mL-1 2,4-Dと50 ηg mL -1 カイネチンを添加したカルス誘導培地(callus inducing medium (CIM);Valvekens, 1998)に移した後、人工気象器 (Biotron NC220、Nksystem)で5日間培養した。
得られた根に、アクティベーションタギング用のpRi35ADEn4 (Niwa et al., 2006)バイナリーベクターを保有するアグロバクテリウムGV3101を感染させた。1週間の共存培養後、根は、0.1 mg mL-1 セフォタキシム(cefotaxime)を含むCIM液体培地で洗浄した。続いて、形質転換体の選抜のための0.1 μg mL-1 クロロスルフロン(chlorsulfuron:1-[(o-クロロフェニル)スルホニル]-3-(4-メトキシ-6-メチル-1,3,5-トリアジン-2-イル)尿素)に加えて、アグロバクテリウムの増殖を防ぐ目的で、0.2 mg mL-1 バンコマイシン(vancomycin)と0.1 mg mL-1 セフォタキシムを含むCIM培地上で3週間以上培養した。最後に、形質転換カルスは、0.2 mg mL-1 バンコマイシン、0.1 mg mL-1 セフォタキシム、0.1 μg mL-1 クロロスルフロン、150 mM NaClを含むCIM培地に移した。突然変異体候補は、選抜培地上で選抜を繰り返した。最初の150 mM NaClでの選抜後、250 mM NaClで2次選抜を行った。
上記のアクティベーションタギング法により、異なる濃度のNaC1培地上で62,000系統から突然変異体を選抜した。
上記の手順によって選抜した66個のカルスは18系統に分類できた。これらの18系統の塩耐性突然変異体および同じ大きさの野生型(2-1-6)について、0.1 μg mL-1 chlorsulfuron と 150 mM NaCl もしくは250 mM NaClを添加したCIM培地上で培養を行った。
18系統の塩耐性突然変異体の中のsalt tolerant callus 5 (以下、「stc5」)と名付けた系統は、150mMおよび200mM NaC1を含む培地において顕著な塩耐性を示した(図1)。
Isoplant (NipponGene, Toyama, Japan)もしくは、(Weigel et al., 2002)に記載の方法により、0.1 μg mL-1 クロロスルフロンを含むCIM培地上で生育させたカルスよりゲノムDNAを単離した。単離したDNAは、35SminiL-fd (Niwa et al., 1999) と ALS22-rv (Niwa et al., 2006)プライマーによって増幅される約200 bpのP35S-ALS-Sur部分の確認に用いた。PCRによる増副産物は、agarose21 (NipponGene)を用いた3% (w/v)のアガロースゲル電気泳動により確認した。
T-DNAのコピー数を調べるために、カルスからDNAを単離し (NipponGene, Toyama, Japan)、 HindIII、PstI、SphIAで制限酵素処理した後、0.8% アガロースゲル電気泳動し、Hybond-N フィルター膜に転写後、UV 照射して膜に固定した。P32で標識した 2.6 kbのpUC18 をプローブとして65oCにてハイブリダイゼーションを (Sambrook and Russel, 2001)の方法により行った。その結果、stc5変異体におけるコピー数は少なくとも2コピーであることを確認した。
候補のカルスよりゲノムDNA を単離後、AD と T-DNA end プライマー (Liu et al 1995; Niwa et al., 2006)を用いて、TAIL-PCRを行った。3度目のPCRにより増幅されたDNA断片を精製後、ダイレクトシークエンシングにより得られた塩基配列についてArabidopsis Information Resource (TAIR) ウェブサイト(http://www.Arabidopsis.org)を利用してBLAST検索を行いT-DNA挿入箇所の同定を行った。最終的に、遺伝子特異的な順、逆向きのプライマーをデザインしたプライマー、およびT-DNA end プライマーとの組み合わせを用い、上記参考文献に記載の条件を使用することで特異的な配列を増幅し、その塩基配列を決定することで確認を行った。
stc5変異体の解析の結果、第1染色体上に1箇所、第2染色体上に1箇所の挿入を確認した。
Isogen (NipponGene)を利用して、トータルRNAを抽出後、RNase-free DNaseI (Takara, Otsu, Japan)処理を行った。First Strand cDNA Synthesis Kit (Roche, Indianapolis)を用い、cDNA合成を行った後、LightCycler Quick System 330 (Roche)を用いてReal-time PCRを行った。各反応液として、2 μLの希釈したcDNA (200 pgのトータルRNAに相当)は、10 μLのSYBR green PCR master mix (TKARA) と各10 pmol のforward、reverse プライマー (それぞれ、配列番号:4および5に示される)と混合後、最終20 μLの液量とした。PCRの反応条件は、95 oCを5秒、 60oCを20秒で 45サイクルとした。増幅の特異性は、増幅後のthermal denaturing stepによる解離曲線により確認した。内部標準としてアクチン2(Isono et al., 1997 a&b)を利用して転写量の標準化を行った。
リアルタイムPCR解析の結果、その中のABCトランスポータータンパク質(AtWBC7)のみが、NaC1添加の有無にかかわらず、転写活性化されていることが明らかとなった。野生型と比較して、通常のCIM培地で2倍、150 mM NaCl添加培地では4倍、AtWBC7をコードするポリヌクレオチドの発現レベルが上昇していた(図2)。
AtWBC7をコードする遺伝子の破壊株(ABC-KO)では、100 mM NaC1 だけでなく、KC1,KN03、LiC1ストレスにも感受性を示した(図3)。なお、「ABC-KO」は、SALK_110674 (http://signal.salk.edu/cgi-bin/tdnaexpress) のホモ接合系統である。このABC-KO株と野生型株(WT)との植物体の生長について目視にて確認すると、ABC-KOにおいて根の長さおよび植物体の大きさが野生型と比較して有意に低下していた。これらの結果から、AtWBC7をコードする遺伝子が塩耐性に有効であることが示される。
1. AtWBC7強制発現ベクター
シロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana) Col-0から調製したDNAを鋳型として、KOD-Plus (東洋紡) を用い、AtWBC7タンパク質コード領域をPCRにより増幅後、塩基配列を決定し、ゲノムプロジェクトで登録されている塩基配列と同一であることを確認した。これをバイナリーベクターpBCH1 (Ito et al., 2001) のKpnI-SmaIに挿入し、pBCH1:AtWBC7を作製した(図4)。
pBCH1:AtWBC7を含有するアグロバクテリウムGV3101を、14-mLファルコンチューブを用いて2 mLのLB (100 mg/Lリファンピシリン、50 mg/Lカナマイシンを含む) 培地に植菌した。28℃で20時間震盪培養後、3.000 rpm で10分間遠心分離し、得られた菌体ペレットを懸濁培地2 mLに懸濁し、 OD 1.0にした。この懸濁液1 mLに、0.5 μLのSilwet77と0.02 μLのBAP (ベンジルアミノプリン) 1 mg/mL溶液を加え、感染液とした。
懸濁培地
1/2 Murashige & Skoog (MS) Basal Salt Mixture(Sigma)
10% ショ糖
0.5 g/L MES-KOH (pH5.7)
オートクレーブ (120℃、20分間) 処理
Isono, K., Niwa, Y., Satoh, K. and Kobayashi, H. (1997a) Evidence for transcriptional regulation of plastid photosynthesis genes in Arabidopsis thaliana roots. Plant Physiol. 114: 623-630.
Isono, K., Shimizu, M., Yoshimoto, K., Niwa, Y., Satoh, K., Yokota, A. and Kobayashi, H. (1997b) Leaf-specifically expressed genes for polypeptides destined for chloroplasts with domains of σ70 factors of bacterial RNA polymerases in Arabidopsis thaliana. Proc. Natl Acad. Sci. USA 94: 14948-14953.
Liu, Y.G., Mitsukawa, N., Oosumi, T. and Whittier, R.F. (1995) Efficient isolation and mapping of Arabidopsis thaliana T-DNA insert junctions by thermal asymmetric interlaced PCR. Plant J. 8: 457-463.
Liu, Y.G., Chen, Y. and Zhang, Q. (2005) Amplification of genomic sequences flanking T-DNA insertions by thermal asymmetric interlaced polymerase chain reaction. Methods Mol. Biol. 286: 341-348.
Niwa, Y, S. Goto, T. Nakano, M. Sakaiya, T. Hirano, H. Tsukaya, Y. Komeda, and H. Kobayashi. 2006. Arabidopsis mutants by activation tagging in which photosynthesis genes are expressed in dedifferentiated calli. Plant Cell Physiol., 47, 319-331.
Niwa, Y., Hirano, T., Yoshimoto, K., Shimizu, M. and Kobayashi, H. (1999). Non-invasive quantitative detection and applications of nontoxic-, S65T-type green fluorescent protein in living plants. Plant J. 18: 455-463.
Sambrook J and Russell DW (2001). Molecular Cloning. 3rd ed. Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York.
Tsugane, K., Kobayashi, K., Niwa, Y., Ohba, Y., Wada, K. and Kobayashi, H. (1999) A recessive Arabidopsis mutant that grows photoautotrophically under salt stress shows enhanced active oxygen detoxification. Plant Cell 11: 1195-1206.
Valvekens, D., Montagu, M.V. and Lijsebettens, M.V. (1988) Agrobacteriumumefaciens-mediated transformation of Arabidopsis thaliana root explants by using kanamycin selection. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5536-5540.
Weigel, D. and Glazebrook, J. (2002) Arabidopsis: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY.
配列番号2:AtWBC7のアミノ酸配列
配列番号3:At2g01320の遺伝子断片
配列番号4:RT-PCRにて使用したプライマー1
配列番号5:RT-PCRにおいて使用したプライマー2
Claims (9)
- 塩耐性を有する形質転換植物体を得るための、AtWBC7タンパク質を過剰発現している形質転換植物細胞であって、前記AtWBC7タンパク質が、以下:
(A) 配列番号:2のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(B) 配列番号:2のアミノ酸配列において1〜9個のアミノ酸基の欠失、挿入、置換および/もしくは付加を含むアミノ酸配列であって、植物細胞の塩耐性を向上させるポリペプチド、または
(C) 配列番号:2のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるポリペプチド
を含む、形質転換植物細胞。 - 前記AtWBC7タンパク質が配列番号:2のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、請求項1に記載の植物細胞。
- 前記AtWBC7タンパク質が、以下の(a)〜(f)のいずれかのポリヌクレオチドによってコードされる、請求項1に記載の植物細胞:
(a) 配列番号:1もしくは3のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;
(b) 配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;
(c) 配列番号:2のアミノ酸配列において、1〜9個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;
(d) 配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質と90%以上の同一性を有し、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(e) 配列番号:1または3のヌクレオチド配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;及び
(f) 配列番号:1または3の塩基配列からなるポリヌクレオチドと90%以上の同一性を有し、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。 - 前記AtWBC7タンパク質が、以下の(g)〜(l)のいずれかのポリヌクレオチドによってコードされる、請求項1に記載の植物細胞:
(g) 配列番号:1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
(h) 配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(i) 配列番号:2のアミノ酸配列において1〜9個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(j) 配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質と90%以上の同一性を有し、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(k) 配列番号:1のヌクレオチド配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;及び
(l) 配列番号:1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドと90%以上の同一性を有し、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチド。 - 前記塩耐性に係る塩が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、又は硝酸カリウムを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の植物細胞。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の植物細胞より誘導されるカルス。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の植物細胞または請求項6に記載のカルスより誘導される、形質転換植物体。
- 請求項7に記載の植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。
- 下記(a)〜(f)のいずれかのポリヌクレオチドを植物細胞に導入することによって、植物細胞の塩耐性を向上させる、方法:
(a) 配列番号:1または3のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;
(b) 配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;
(c) 配列番号:2のアミノ酸配列において、1〜9個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(d) 配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質と90%以上の同一性を有し、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(e) 配列番号:1または3のヌクレオチド配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;及び
(f) 配列番号:1または3のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドと90%以上の同一性を有し、かつ植物細胞の塩耐性を向上させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド。
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