JP5870766B2 - 液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置 - Google Patents
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このような液滴吐出ヘッドにあっては、駆動用の圧電素子を伸縮させることにより、インク室の一部(振動板)を変位させる。これにより、インク室の容積を変化させて、ノズルからインク液滴が吐出される。
また、振動板は、圧電素子の歪みにより振動する振動フィルムと、圧電素子の歪みを振動フィルムに伝播する支持板とを有しており、これら同士を互いに接合することによって組み立てられている(例えば、特許文献1等参照。)。
かかる構成の液滴吐出ヘッドにおいて、振動フィルムは、支持板により伝播された圧電素子の歪みにより振動してインク室の容積を変化させる振動性と、インク室にインクを保持するインク保持性との双方の特性に優れることが求められる。
振動フィルムは、一般的に、特に、耐薬品性および低水分透過性に優れるという観点から、ポリフェニレンサルファイドやアラミド樹脂のような芳香族系の樹脂材料で構成されるものが提案されているが、この場合、ヤング率が高くなる傾向を示すため、振動フィルムの厚さを薄くすることで対応がなされている。
しかしながら、振動フィルムの厚さを薄くし過ぎると、振動フィルムの耐薬品性および低水分透過性は低下する傾向を示すため、現在のところ、耐薬品性および低水分透過性のようなインク保持性と、ヤング率のような振動性との双方が使用に耐え得る範囲内で発揮されるように、振動フィルムの厚さを設定しているのが実状である。
本発明の液滴吐出ヘッドは、吐出液を貯留する吐出液貯留室が形成された基板と、
前記吐出液貯留室に設けられた振動板と、
歪みにより前記振動板を振動させる振動手段とを有する液滴吐出ヘッドであって、
前記振動板は、前記振動手段の歪みにより振動する振動フィルムと、前記振動手段の歪みを前記振動フィルムに伝播する支持板と、前記振動フィルムと前記支持板とを接合する接着層とを有しており、
前記振動フィルムは、芳香族系の樹脂材料を主材料として構成され、
前記接着層は、アルケンとアルケニレンジカルボン酸との共重合体を主材料として含有する接着剤を用いて形成されたものであることを特徴とする。
これにより、インク保持性および振動性の双方に優れる振動フィルムを備える液滴吐出ヘッドとすることができる。
かかる範囲内の膜厚を有する振動フィルムであっても、本発明によれば、振動フィルムのヤング率を低く設定することができる。また、振動フィルムの厚さをかかる範囲のように厚く設定することができるため、インク保持性をより優れたものとすることができる。
本発明の液滴吐出ヘッドでは、前記振動フィルムは、ヤング率が0.2GPa以上、20GPa以下であることが好ましい。
本発明によれば、振動フィルムの膜厚が厚いものであっても、振動フィルムのヤング率をかかる範囲内に設定することが可能となる。
前記接着層は、前記振動フィルムの前記支持板を接合する側の面のほぼ全面に形成されていることが好ましい。
このように振動フィルムのほぼ全面に接着層が形成される場合に、振動フィルムのヤング率をその全面に亘ってほぼ均一に低下させることができる。
これにより、得られる共重合体の水に対する溶解性を向上させることができるため、接着剤に用いられる溶媒として水を選択することが可能となる。また、接着層を振動フィルムに接触して形成することにより得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
これにより、形成される接着層の支持板および振動フィルムに対する接合強度の向上が図られる。また、接着層を振動フィルムに接触して形成することにより得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
接着剤の耐熱温度は、主としてアルケンの種類に依存するため、接合すべき液滴吐出ヘッドとして、100℃以下の耐熱温度が必要な場合には、アルケンとしてエチレンが選択される。また、エチレンを選択することで、接着層を振動フィルムに接触して形成することにより得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
接着剤の耐熱温度は、主としてアルケンの種類に依存するため、接合すべき液滴吐出ヘッドとして、100℃以上の耐熱温度が必要な場合には、アルケンとしてプロピレンが選択される。また、プロピレンを選択することで、接着層を振動フィルムに接触して形成することにより得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
このような材料は、耐薬品性および低水分透過性に特に優れるものである。
本発明の液滴吐出装置は、本発明の液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い液滴吐出装置を得ることができる。
<インクジェット式記録ヘッド>
まず、本発明の液滴吐出ヘッドについて説明するが、以下では、本発明の液滴吐出ヘッドを、インクジェット式記録ヘッドに適用した場合を一例に説明する。
図1に示すインクジェット式記録ヘッド1(以下、単に「ヘッド1」と言うこともある。)は、図2に示すようなインクジェットプリンタ(本発明の液滴吐出装置)9に搭載されている。
操作パネル97は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプ等で構成され、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示せず)と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示せず)とを備えている。
制御部96の制御により、給紙装置95は、記録用紙Pを一枚ずつ間欠送りする。この記録用紙Pは、ヘッドユニット93の下部近傍を通過する。このとき、ヘッドユニット93が記録用紙Pの送り方向とほぼ直交する方向に往復移動して、記録用紙Pへの印刷が行なわれる。すなわち、ヘッドユニット93の往復動と記録用紙Pの間欠送りとが、印刷における主走査および副走査となって、インクジェット方式の印刷が行なわれる。
ヘッドユニット93は、その下部に、多数のノズル孔11を備えるヘッド1と、ヘッド1にインクを供給するインクカートリッジ931と、ヘッド1およびインクカートリッジ931を搭載したキャリッジ932とを有している。
なお、インクカートリッジ931として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒)の4色のインクを充填したものを用いることにより、フルカラー印刷が可能となる。
キャリッジ932は、キャリッジガイド軸943に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト944の一部に固定されている。
キャリッジモータ941の作動により、プーリを介してタイミングベルト944を正逆走行させると、キャリッジガイド軸943に案内されて、ヘッドユニット93が往復動する。そして、この往復動の際に、ヘッド1から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
給紙ローラ952は、記録用紙Pの送り経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ952aと駆動ローラ952bとで構成され、駆動ローラ952bは給紙モータ951に連結されている。これにより、給紙ローラ952は、トレイ921に設置した多数枚の記録用紙Pを、印刷装置94に向かって1枚ずつ送り込めるようになっている。なお、トレイ921に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成であってもよい。
制御部96は、通信回路を介して、印刷データを入手してメモリに格納する。CPUは、この印刷データを処理して、この処理データおよび各種センサからの入力データに基づいて、各駆動回路に駆動信号を出力する。この駆動信号により印刷装置94および給紙装置95は、それぞれ作動する。これにより、記録用紙Pに印刷が行われる。
図1に示すように、ヘッド1は、ノズルプレート10と、ノズルプレート10上に設けられた吐出液貯留室形成基板(基板)20と、吐出液貯留室形成基板20上に設けられた振動フィルム30と、振動フィルム30上に設けられた支持板40と、支持板40上に設けられた圧電素子(振動手段)50およびケースヘッド60とを有している。なお、本実施形態では、このヘッド1は、ピエゾジェット式ヘッドを構成する。
吐出液貯留室形成基板20(以下、省略して「基板20」と言う。)には、インクを貯留する複数の吐出液貯留室(圧力室)21が形成され、さらに、各吐出液貯留室21に連通し、各吐出液貯留室21にインクを供給する吐出液供給室22が形成されている。
また、各吐出液貯留室21は、吐出液供給室22に対して、ほぼ垂直をなすように配置されており、各吐出液貯留室21および吐出液供給室22は、平面視において全体として、櫛状をなしている。
また、上記のような材料に、酸化処理(酸化膜形成)、めっき処理、不働態化処理、窒化処理等の各処理を施した材料でもよい。
また、吐出液供給室22は、後述するケースヘッド60に設けられた吐出液供給路61と連通して複数の吐出液貯留室21にインクを供給する共通のインク室として機能するリザーバ70の一部を構成する。
ノズルプレート10には、各吐出液貯留室21に対応するように、それぞれノズル孔11が形成(穿設)されている。このノズル孔11から、吐出液貯留室21に貯留されたインク(吐出液)を押し出すことにより、インクが液滴として吐出されることとなる。
また、ノズルプレート10は、各吐出液貯留室21や吐出液供給室22の内壁面の下面を構成している。すなわち、ノズルプレート10と、基板20および振動フィルム30とにより、各吐出液貯留室21や吐出液供給室22を画成している。
これらの中でも、ノズルプレート10の構成材料は、シリコン材料またはステンレス鋼であるのが好ましい。このような材料は、耐薬品性に優れることから、長時間にわたってインクに曝されたとしても、ノズルプレート10が変質・劣化するのを確実に防止することができる。また、これらの材料は、加工性に優れるため、寸法精度の高いノズルプレート10が得られる。このため、信頼性の高いヘッド1が得られる。
また、ノズルプレート10の厚さは、特に限定されないが、0.01〜1mm程度であるのが好ましい。
また、ノズルプレート10の下面には、必要に応じて、撥液処理を施すのが好ましい。これにより、ノズル孔から吐出されるインク滴が意図しない方向に吐出されるのを防止することができる。
また、振動フィルム30は、各吐出液貯留室21や吐出液供給室22の内壁面の上面を構成している。すなわち、振動フィルム30と、基板20およびノズルプレート10とにより、各吐出液貯留室21や吐出液供給室22を画成している。そして、振動フィルム30が基板20と確実に接合されていることにより、各吐出液貯留室21や吐出液供給室22の液密性を確保している。
さらに、振動フィルム30は、弾性変形する機能を有するものである。したがって、圧電素子50で発生した歪みにより、支持板40を介して振動フィルム30を変位(振動)させることで、吐出液貯留室21の容積を変化させることができ、その結果、インクが吐出される。
芳香族系の樹脂材料としては、芳香族環を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、アラミド樹脂(芳香族ポリアミド樹脂)、芳香族ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、フタル酸樹脂、キシレン樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、ポリフェニレンサルファイド(PPS)またはアラミド樹脂であるのが好ましい。このような材料は、耐薬品性および低水分透過性に特に優れる。そのため、長時間にわたってインクに曝されたとしても、振動フィルム30が変質・劣化するのを確実に防止することができ、さらに、吐出液貯留室21内および吐出液供給室22内に、長期間に亘ってインク量を低下させることなくインクを貯留することができる。
ここで、このアルケンとアルケニレンジカルボン酸との共重合体は、ポリオレフィン系の熱可塑性材料である。
かかる共重合体を主材料として含有する接着剤は、特にアルケンが含まれることに起因して、耐溶剤性に優れたものとなる。そのため、ヘッド1では、接着層35は、図1に示すようにインクと接触することとなるが、このインクとの接触に起因する接着層35の膨潤を的確に防止または抑制することができる。
なお、接着剤の耐熱温度は、主としてこのアルケンの種類に依存する。そのため、ヘッド1の耐熱温度が100℃以下で十分な場合には、例えば、エチレン、1−ブテン等を選択し、100℃以上の耐熱温度が必要な場合には、例えば、プロピレン、メチレンシクロヘキサン等を選択すればよい。
なお、接着剤に含まれる構成材料として、前記材料を選択して用いることで、後述するような、接着層35を振動フィルム30に接触して形成することにより得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
なお、接着層35は、その平均厚さが1μm以上、100μm以下程度であるのが好ましく、5μm以上、80μm以下程度であるのがより好ましい。膜厚をかかる範囲内に設定することで、支持板40と振動フィルム30とを確実に接合することができる。
このように、振動フィルム30に接着層35が接触する構成とすることで、その厚さを薄く設定することなく、振動フィルム30の低ヤング率化を図ることができる。
これは、後述するインクジェット式記録ヘッド1の製造方法において詳述するように、接着層35を、接着剤を加熱・冷却して形成する際に、アルケン、アルケニレンジカルボン酸のような接着層35に含まれる構成材料が振動フィルム30側に拡散することに起因すると推察される。
また、振動フィルム30のヤング率は、0.2GPa以上、20GPa以下であるのが好ましく、4GPa以上、15GPa以下であるのがより好ましい。本発明によれば、振動フィルム30の膜厚が前記範囲内のように厚いものであっても、振動フィルム30のヤング率をかかる範囲内に設定することが可能となる。
支持板40は、圧電素子50で発生した歪みを、このものを介して、振動フィルム30に伝播する機能を有するものである。これにより、圧電素子50に歪みを発生させることで、振動フィルム30に変位が生じ、その結果、各吐出液貯留室21における容積変化を確実に生じさせることができる。
これらの中でも、支持板40の構成材料は、シリコン材料またはステンレス鋼(SUS)であるのが好ましい。このような材料は、優れた強度を有するものである。そのため、圧電素子50で発生した歪みが、より確実に、振動フィルム30に伝播されることから、インクがより高精度に吐出されることとなる。
なお、本実施形態では、上述した振動フィルム30と支持板40とが接着層35を介して接合された積層体により、吐出液貯留室21および吐出液供給室22を覆う振動板(封止板)が構成される。
圧電素子50は、圧電材料で構成された圧電体層51と、この圧電体層51に電圧を印加する電極膜52との積層体で構成されている。このような圧電素子50では、電極膜52を介して圧電体層51に電圧を印加することにより、圧電体層51に電圧に応じた歪みが発生する(逆圧電効果)。この歪みが支持板40を介して振動フィルム30に撓み(振動)をもたらし、吐出液貯留室21の容積を変化させる。かかる構成の圧電素子50が支持板40と確実に接合されていることにより、圧電素子50に発生した歪みを、支持板40を介して振動フィルム30の変位へと確実に変換することができ、その結果、各吐出液貯留室21が確実に容積変化することとなる。
圧電素子50のうち、圧電体層51を構成する材料としては、例えば、チタン酸バリウム、ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶等が挙げられる。
一方、電極膜52を構成する材料としては、例えば、Fe、Ni、Co、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、Mo、またはこれらを含む合金等の各種金属材料が挙げられる。
また、支持板40の上面の一部(図1では、凹部53を隔てて、島状をなす部分を取り囲む部分)には、ケースヘッド60が接合されている。このように、ケースヘッド60と支持板40とが接合されることで、ノズルプレート10、基板20、振動フィルム30および支持板40の積層体で構成された、いわゆるキャビティー部分を補強し、キャビティー部分のよじれや反り等を確実に抑制することができる。
これらの中でも、ケースヘッド60の構成材料は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ザイロンのような変性ポリフェニレンエーテル樹脂(「ザイロン」は登録商標)またはステンレス鋼であるのが好ましい。これらの材料は、十分な剛性を備えていることから、ヘッド1を支持するケースヘッド60の構成材料として好適である。
なお、ヘッド1は、前述したような構成のものに限らず、例えば、振動手段としての圧電素子50に代えて、静電アクチュエータを備えるものであってもよい。
ただし、本実施形態のように、振動手段が圧電素子で構成されていることにより、振動フィルム30に発生する撓みの程度を容易に制御することができる。これにより、インク滴の大きさを容易に制御することができる。
以上のようなインクジェット式記録ヘッド1は、例えば、母材20’を用いて、次のようにして作製される。
図3ないし図5は、インクジェット式記録ヘッドの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図3ないし図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
[1]まず、支持板40と、振動フィルム30とを用意し、図3(a)に示すように、接着層35を介して、支持板40と振動フィルム30とを接着することで、支持板40と接着層35と、振動フィルム30とがこの順で積層された振動板を得る。
この支持板40と振動フィルム30とを接着する接着層35の形成に、上述したような、アルケンとアルケニレンジカルボン酸との共重合体を主材料として含有する接着剤が用いられる。これにより、振動フィルム30(振動板)を、インク保持性および振動性の双方に優れたものとすることができる。
すなわち、接着層35で接合すべき支持板40および振動フィルム30のうちの少なくとも一方に接着剤を供給した後、乾燥させることで接着層35を形成する。その後、接着層35を介して支持板40と振動フィルム30とを接触させた状態で、接着層35を加熱して溶融させた後に冷却して固化させる。これにより、支持板40と振動フィルム30とが固化状態の接着層35により接合される。
また、固化時の接着層(接着剤)35のヤング率が1.0GPa以下に設定されている場合には、このような高温度で加熱したとしても接着層35中における残留応力が大きくなってしまうのを的確に防止または抑制することができる。そのため、形成されるヘッド1に生じる反りの大きさを小さくすることができる。
次いで、図3(c)に示すように、母材20’に対して加工を施し、各吐出液貯留室21および吐出液供給室22を形成することで、母材20’から基板20を得る。
なお、吐出液貯留室21および吐出液供給室22の形成は、ドライエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウエットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いて行うことができる。
この接着層25の形成には、ビスフェノール系、ノボラック系のようなエポキシ系接着剤や、ウレタン系接着剤等の各種接着剤を用いることができるが、接着層35の形成で説明した接着剤を用いるのが好ましい。これにより、接着層25を、耐溶剤性により優れたものとすることができる。
貫通孔23および凹部53の形成は、前述した吐出液貯留室21および吐出液供給室22の形成で説明したのと同様の各種エッチング法を用いて行われる。
[5]次に、圧電素子50を用意し、支持板40の島状をなす部分に、圧電素子50を接合することで、図4(b)に示すように、基板20、振動フィルム30、支持板40および圧電素子50をそれぞれ接合させる。
この際、吐出液供給室22は、振動フィルム30、接着層35および支持板40に形成された貫通孔23、および、ケースヘッド60に設けられた吐出液供給路61と連通し、これにより、リザーバ70が形成される。
この接着層15の形成には、ビスフェノール系、ノボラック系のようなエポキシ系接着剤や、ウレタン系接着剤等の各種接着剤を用いることができるが、接着層35の形成で説明した接着剤を用いるのが好ましい。これにより、接着層15を、耐溶剤性により優れたものとすることができる。
例えば、本発明の液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置において、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
1.接着剤の調製
(サンプルNo.1)
エチレンとマレイン酸との共重合体(エチレンの含有率80wt%)を用意し、水中に、かかる共重合体の含有率が40wt%となるように溶解することでサンプルNo.1の接着剤を調製した。
エチレンとマレイン酸との共重合体(エチレンの含有率60wt%)を用意し、水中に、かかる共重合体の含有率が20wt%となるように溶解することでサンプルNo.2の接着剤を調製した。
(サンプルNo.3)
ウレタン系接着剤を、サンプルNo.3の接着剤として用意した。
(実施例1)
<1> まず、ステンレス鋼(SUS430)製の支持板(厚さ:30μm)と、パラ系アラミド樹脂で構成される振動(樹脂)フィルム(東レ社製、「ミクトロン」、厚さ:4μm)とを用意した。
<2> 次に、支持板にプラズマ処理を施した後、支持板上にグラビアロールを用いてサンプルNo.1の接着剤を塗布し、その後、80℃×1時間の条件で乾燥炉を用いて乾燥させることで、支持板上に接着層(厚さ:5μm)を形成した。
<3> 次に、ラミネート法を用いて支持板に振動フィルムを貼付することにより、接着層を介して支持板と振動フィルムとが接合された実施例1の振動板様部材を得た。
なお、振動フィルムをラミネートする際の温度は120℃とした。
前記工程<2>に用いる接着剤としてサンプルNo.2のものを用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例2の振動板様部材を得た。
(実施例3)
振動フィルムとして、ポリフェニレンサルファイド(東レ社製、「トレリナ」、厚さ4μm)で構成される樹脂フィルムを用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例3の振動板様部材を得た。
前記工程<2>に用いる接着剤としてサンプルNo.3のものを用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、比較例1の振動板様部材を得た。
(比較例2)
振動フィルムとして、ポリフェニレンサルファイド(東レ社製、「トレリナ」、厚さ4μm)で構成される樹脂フィルムを用いたこと以外は、前記比較例1と同様にして、比較例2の振動板様部材を得た。
各実施例および各比較例の振動板様部材について、塩化第二鉄を用いて振動板様部材から支持板をエッチングすることにより、接着層と振動フィルムとで構成される積層体を得た。
そして、得られた各積層体について、それぞれ、適切な大きさに切断した後、卓上形精密万能装置(島津製作所社製、「AGSH」)を用いて引張試験を行うことにより、ヤング率を測定した。
その結果を、表1に示す。
さらに、サンプルNo.1〜3の接着剤について、それぞれ、厚さ20μmの接着剤シートを作成し、これらを比較例5〜7として、前記と同様にしてヤング率の測定を行なった。
その結果を、表2に示す。
また、比較例3、4の樹脂フィルムおよび比較例5〜7の接着剤シートで測定されたヤング率を用いて、下記理論式(1)(2)から、実施例1〜3および比較例1、2の振動板様部材から得られる積層体(構造体)におけるヤング率の理論値を求めた。
その結果を、表1に示す。
これに対して、比較例1の振動板様部材から得られた積層体のヤング率は、理論式(1)から得られた理論値を上回る結果となった。さらに、比較例2の振動板様部材から得られた積層体のヤング率は、理論式(1)から得られた理論値を下回る結果となったが、実施例3の振動板様部材から得られた積層体のヤング率と比較してその低下の度合いは小さかった。
さらに、実施例1〜3の振動板様部材から得られた積層体が備える振動フィルムについて、インクに対する耐溶剤試験を行なったが、比較例3、4の樹脂フィルムとほぼ同等の耐性を示す結果が得られた。
なお、耐溶剤試験は、インクジェットプリンタ用インク(EPSON社製)に85℃×168時間の条件で浸漬した後の膨潤率を比較することで行なった。
Claims (10)
- 吐出液を貯留する吐出液貯留室が形成された基板と、
前記吐出液貯留室に設けられた振動板と、
歪みにより前記振動板を振動させる振動手段とを有する液滴吐出ヘッドであって、
前記振動板は、前記振動手段の歪みにより振動する振動フィルムと、前記振動手段の歪みを前記振動フィルムに伝播する支持板と、前記振動フィルムと前記支持板とを接合する接着層とを有しており、
前記振動フィルムは、芳香族系の樹脂材料を主材料として構成され、
前記接着層は、アルケンとアルケニレンジカルボン酸との共重合体を主材料として含有する接着剤を用いて形成されたものであることを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 前記振動フィルムは、平均厚さが1μm以上、10μm以下である請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記振動フィルムは、ヤング率が0.2GPa以上、20GPa以下である請求項1または2に記載の液滴吐出ヘッド。
- フィルム状をなす前記振動フィルムと、該振動フィルムの一部に対応するように設けられた前記支持板とが、前記接着層を介して接合されており、
前記接着層は、前記振動フィルムの前記支持板を接合する側の面のほぼ全面に形成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。 - 前記共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルを含む請求項1ないし4のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記アルケニレンジカルボン酸は、(無水)マレイン酸である請求項1ないし5のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記アルケンは、エチレンである請求項1ないし6のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記アルケンは、プロピレンである請求項1ないし6のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記芳香族系の樹脂材料は、アラミド樹脂またはポリフェニレンサルファイドである請求項1ないし8のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
- 請求項1ないし9のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする液滴吐出装置。
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