JP2009292917A - 接合方法および接合体 - Google Patents

接合方法および接合体 Download PDF

Info

Publication number
JP2009292917A
JP2009292917A JP2008147242A JP2008147242A JP2009292917A JP 2009292917 A JP2009292917 A JP 2009292917A JP 2008147242 A JP2008147242 A JP 2008147242A JP 2008147242 A JP2008147242 A JP 2008147242A JP 2009292917 A JP2009292917 A JP 2009292917A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
base material
bonding
bonding film
film
bonded
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2008147242A
Other languages
English (en)
Inventor
Yoshifumi Ito
佳史 伊藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Seiko Epson Corp
Original Assignee
Seiko Epson Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Seiko Epson Corp filed Critical Seiko Epson Corp
Priority to JP2008147242A priority Critical patent/JP2009292917A/ja
Publication of JP2009292917A publication Critical patent/JP2009292917A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】耐久性の異なる2つの部材同士が接合膜を介して接合された接合体において、耐久性の低い部材の寿命に合わせて接合体を廃棄することなく、2つの部材を分割し、耐久性の高い部材を再利用することができる接合方法、かかる接合方法を用いて形成される接合体を提供すること。
【解決手段】本発明の接合方法は、第1の基材21と第2の基材22とが、シリコーン材料を含有する接合膜3を介して接合された接合体1の接合膜3に剥離用エネルギーを付与して、接合膜3内にへき開を生じさせて、第2の基材22から、接合膜3が残存した第1の基材21を剥離し、第1の基材21と、第2の基材22とは異なる第3の基材23とを、接合膜3を介して貼り合わせる事により第2の接合体22を得る。
【選択図】図3

Description

本発明は、接合方法および接合体に関するものである。
2つの部材同士を接合して接合体を得る際には、従来、これらの部材同士の間に、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤等の接着剤で構成される接合層を介在させることにより2つの部材同士を接合させる方法が多用されている。
また、このような接合層を介した部材同士の接合では、寸法精度が低かったり、硬化時間に長時間を要する等の問題点があるため、この方法に代えて、接着剤を用いず、2つの部材同士を直接接合する固体接合法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
以上のような方法が、2つの部材同士を接合する方法として一般的に用いられている。
ここで、2つの部材間での耐久性が異なると、接合体としての耐久性は、耐久性の低い一方の部材の耐久性に依存し、耐久性の高い他方の部材自体は使用可能であるにもかかわらず、耐久性の低い部材とともに、耐久性の高い部材をも廃棄されていた。
そこで、これらの部材同士を、部材毎に剥離して、耐久性の低い部材を廃棄するとともに、耐久性の高い部材に、耐久性の低い部材と同種の部材を接合して、耐久性の高い部材を再利用する方法が求められている。
特開平5−82404号公報
本発明の目的は、耐久性の異なる2つの部材同士が接合膜を介して接合された接合体において、耐久性の低い部材の寿命に合わせて接合体を廃棄することなく、2つの部材を分割し、耐久性の高い部材を再利用することができる接合方法、かかる接合方法を用いて形成される接合体を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の接合方法は、第1の基材と第2の基材とがシリコーン材料を含有する接合膜を介して接合された第1の接合体の前記接合膜に剥離用エネルギーを付与して、前記シリコーン材料を構成する分子結合の一部を切断することにより、前記接合膜内にへき開を生じさせて、前記第2の基材から、前記接合膜が残存した前記第1の基材を剥離する工程と、
前記第1の基材と、前記第2の基材とは異なる第3の基材とを、前記第1の基材に残存した前記接合膜を介して貼り合わせ、前記へき開により前記接合膜の表面付近に発現した接着性によって、前記第1の基材と前記第3の基材とが接合した第2の接合体を得る工程とを有することを特徴とする。
これにより、耐久性の異なる2つの部材同士が接合膜を介して接合された接合体において、耐久性の低い部材の寿命に合わせて接合体を廃棄することなく2つの部材を分割し、耐久性の高い部材を再利用することができる。
本発明の接合方法では、前記第2の接合体が有する前記接合膜は、前記剥離用エネルギーが付与されると、前記接合膜内に前記へき開を生じて、その表面付近に接着性が発現するものであることが好ましい。
これにより、接合体を構成する部材のうち、耐久性の高い部材の再利用性をさらに高めることができる。
本発明の接合方法では、前記第1の接合体は、前記第1の基材および前記第2の基材の少なくとも一方に、前記シリコーン材料を含有する液状材料を供給することにより、液状被膜を形成する工程と、
前記液状被膜を乾燥して、前記第1の基材および前記第2の基材の少なくとも一方に前記接合膜を得る工程と、
前記接合膜に接合用エネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に接着性を発現させ、当該接合膜を介して前記第1の基材と前記第2の基材とを接合する工程とを経ることにより得られたものであることが好ましい。
これにより、接合体を構成する部材のうち、耐久性の高い部材の再利用性をさらに高めることができる。
本発明の接合方法では、前記接合用エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行うことが好ましい。
これにより、接合膜の表面を効率よく活性化させることができる。また、接合膜中の分子構造を必要以上に切断しないので、剥離用エネルギーを付与した際に、接合膜内で確実にへき開を生じさせることができる。
本発明の接合方法では、前記剥離用エネルギーの大きさは、前記接合用エネルギーの大きさよりも大きいことが好ましい。
これにより、接合用エネルギーを付与した際には、接合膜の表面付近に接着性を発現させ、剥離用エネルギーを付与した際には、接合膜にへき開を生じさせることができる。
本発明の接合方法では、前記剥離用エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法および前記接合膜を加熱する方法の少なくとも一方の方法により行うことが好ましい。
これにより、第1の基材および第2の基材に変質・劣化が生じるのを防止しつつ、接合膜にへき開を確実に生じさせることができる。
本発明の接合方法では、前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線であることが好ましい。
これにより、第1の基材および第2の基材に変質・劣化が生じるのを防止しつつ、接合膜にへき開を確実に生じさせることができる。
本発明の接合方法では、前記剥離用エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われることが好ましい。
これにより、雰囲気中には十分な量の水分子が含まれていることから、接合膜内にへき開を確実に生じさせることができる。
本発明の接合方法では、前記シリコーン材料は、その主骨格がポリジメチルシロキサンで構成されることが好ましい。
かかる化合物は、比較的入手が容易で、かつ安価であるとともに、かかる化合物を含有する接合膜にエネルギーを付与することにより、化合物を構成するメチル基が容易に切断されて、その結果として、接合膜に確実にへき開を生じさせることができるとともに、へき開された接合膜の表面付近に確実に接着性を発現させることができるため、シリコーン材料として好適に用いられる。
本発明の接合方法では、前記シリコーン材料は、シラノール基を有することが好ましい。
これにより、液状被膜を乾燥させて接合膜を得る際に、隣接するシリコーン材料が有する水酸基同士が結合することとなり、得られる接合膜の膜強度が優れたものとなる。
本発明の接合方法では、前記接合膜の平均厚さは、10〜10000nmであることが好ましい。
接合膜の平均厚さがかかる範囲を満足することにより、接合膜内により確実にへき開を生じさせて、第1の基材と第3の基材とを確実に接合することができる。
本発明の接合方法では、前記第1の基材の少なくとも前記接合膜と接合している部分は、シリコーン材料、金属材料またはガラス材料を主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、表面処理を行わなくても、第1の基材を第3の基材に十分な接合強度で接合することができる。
本発明の接合方法では、前記第1の基材の前記接合膜と接合している面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されていることが好ましい。
これにより、第1の基材の接合面が清浄化および活性化され、接合面に対して接合膜が化学的に作用し易くなる。その結果、第1の基材の接合面と接合膜との接合強度を高めることができる。
本発明の接合方法では、前記第3の基材の前記接合膜と接合している面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されていることが好ましい。
これにより、第3の基材の接合面が清浄化および活性化され、接合面に対して接合膜が化学的に作用し易くなる。その結果、第3の基材の接合面と接合膜との接合強度を高めることができる。
本発明の接合方法では、前記表面処理は、プラズマ処理または紫外線照射処理であることが好ましい。
これにより、接合膜を形成するために、第1の基材、および/または第2の基材の表面を特に最適化することができる。
本発明の接合方法では、前記第3の基材は、前記接合膜と同様の接合膜を有し、
前記第1の基材と前記第3の基材とを、それぞれが有する前記接合膜を互いに密着するように貼り合わせることにより、前記第1の基材と前記第3の基材とが接合した第2の接合体を得ることが好ましい。
これにより、第1の基材と第3の基材とをより高い接合強度で接合することができる。
本発明の接合方法では、前記第2の基材には、前記接合膜が残存しており、
前記第2の基材と、前記第1の基材とは異なる第4の基材とを、前記第2の基材に残存した前記接合膜を介して貼り合わせ、前記へき開により前記接合膜の表面付近に発生した接着性によって、前記第2の基材と前記第4の基材とが接合した第3の接合体を得る工程をさらに有することが好ましい。
これにより、第1の基材のみならず、第2の基材も再度接合に供することができる。
本発明の接合方法では、前記第2の基材は、前記第1の基材よりも耐久性が低いものであることが好ましい。
このようにして得られる第2の接合体は、例えば、第1の接合体において、第2の基材が変質、劣化等によって消耗された際に、第2の基材のみを廃棄して、第1の基材と第3の基材とを接合して形成されるものである。これにより、先に消耗されてしまう第2の基材の製品寿命に合わせて第1の基材を廃棄する必要がないため、環境に優しい接合方法となるとともに、第1の基材の高寿命化を図ることができる。
本発明の接合方法では、前記第3の基材は、前記第2の基材と同種であり、未使用のものであることが好ましい。
これにより、例えば、第2の基材および第3の基材として、消耗品となるような部材を用いて、消耗品のみを繰り返し剥離、接合する接合体に好適に適用することができる。
本発明の接合方法では、前記第1の基材と前記第2の基材とは、それぞれ、インクジェットヘッドに用いられる振動板と封止シートであることが好ましい。
かかる接合方法によれば、インクジェットヘッド内の封止シートと振動板とからなる封止板において、インクに接液する封止シートが劣化した際に、劣化した封止シートのみを廃棄して、新しい封止シートを振動板に貼り合わせるため、振動板の高寿命化を図ることができ、環境に優しい封止板となる。
本発明の接合体は、本発明の接合方法を用いて得られたことを特徴とする。
これにより、得られる接合体の信頼性は優れたものとなる。
以下、本発明の接合方法および接合体を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
まず、本発明の接合方法の第1実施形態について説明する。
<<第1実施形態>>
図1および図2は、本実施形態の接合方法に供される第1の接合体の形成方法を説明するための図(縦断面図)であり、図3〜図5は、本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図1〜図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
本実施形態の接合方法は、第1の基材21と第2の基材22とが、シリコーン材料を含有する接合膜3を介して接合された第1の接合体11を用意する工程と、第1の接合体11が有する接合膜3に対して剥離用エネルギーを付与することにより、第1の接合体11が有する接合膜3内にへき開を生じさせ、第2の基材22から、接合膜3が残存した第1の基材21を剥離する工程と、第1の基材21と、第2の基材22とは異なる第3の基材23とを、第1の基材21に残存した接合膜3を介して貼り合わせ、へき開により接合膜3の表面付近に発現した接着性によって、第1の基材21と第3の基材23とが接合した第2の接合体12を得る工程とを有している。なお、本実施形態の接合方法で用いる第1の基材21は、第2の基材22、第3の基材23よりも耐久性が高いものとして説明する。
以下、本実施形態の接合方法について、工程ごとに詳述する。
[1]まず、第1の接合体11を用意する。
このような第1の接合体11は、例えば、次のような第1の接合体の形成方法を用いて、第1の基材21と第2の基材22とを接合膜3を介して接合することにより形成される。
具体的には、第1の基材21と第2の基材22とを用意し、第1の基材21および第2の基材22の少なくとも一方に、シリコーン材料を含有する液状材料を供給することにより液状被膜30を形成する工程と、液状被膜30を乾燥して、第1の基材21および第2の基材22の少なくとも一方に接合膜3を得る工程と、接合膜3に接合用エネルギーを付与することにより、接合膜3の表面付近に接着性を発現させ、この接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを接合する工程とを経ることにより第1の接合体11が形成される。
以下、本実施形態における第1の接合体の形成方法について説明する。
[1A]まず、第1の基材21と第2の基材22とを用意する(図1(a)参照)。なお、図1(a)では、第2の基材22を省略している。
第1の基材21は、後述する第2の基材22よりも耐久性(耐候性、耐熱性等)が高いものである。
このような第1の基材21の構成材料は、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリブテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂系材料、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、V、Mo、Nb、Zr、Pr、Nd、Smのような金属、またはこれらの金属を含む合金、炭素鋼、ステンレス鋼、インジウム錫酸化物(ITO)、ガリウムヒ素のような金属系材料、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンのようなシリコン系材料、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス系材料、アルミナ、ジルコニア、MgAl、フェライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス系材料、グラファイトのような炭素系材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
第2の基材22は、前述した第1の基材21よりも耐久性が低いものである。
このような第2の基材22の構成材料は、特に限定されないが、例えば、前述した第1の基材21の構成材料として挙げたものを用いることができる。
第2の基材22の構成材料は、第1の基材21の構成材料よりも耐久性の低い材料が用いられるが、本実施形態の接合方法では、次工程[2]において、第1の基材21と第2の基材22とを完全に分離することができるため、耐久性の高い第1の基材21を効率良く再利用することができる。
また、第1の基材21の熱膨張率と第2の基材22の熱膨張率は、ほぼ等しいのが好ましい。これらの熱膨張率がほぼ等しければ、第1の基材21と第2の基材22とを接合した際に、その接合界面に熱膨張に伴う応力が発生し難くなる。その結果、第1の接合体11において、不本意に剥離が生じるのを確実に防止することができる。
また、2つの基材21、22は、互いに剛性が異なるのが好ましい。これにより、2つの基材21、22をより強固に接合することができる。
なお、上記のような観点から、2つの基材21、22のうちの少なくとも一方は、可撓性を有しているのが好ましい。これにより、接合体11の接合強度のさらなる向上を図ることができる。さらに、2つの基材21、22の双方が可撓性を有している場合には、全体として可撓性を有し、信頼性の高い第1の接合体11が得られる。
これら第1の基材21および第2の基材22は、それぞれ、その表面に、Niめっきのようなめっき処理、クロメート処理のような不働態化処理、または窒化処理等を施したものであってもよい。
また、各基材21、22の形状は、それぞれ、接合膜3を支持する面を有するような形状であればよく、例えば、板状(層状)、塊状(ブロック状)、棒状等とされる。
なお、本実施形態では、図1、2に示すように、各基材21、22がそれぞれ板状をなしている。これにより、各基材21、22は撓み易くなり、2つの基材21、22を重ね合わせたときに、互いの形状に沿って十分に変形し得るものとなる。このため、2つの基材21、22を重ね合わせたときの密着性が高く、第1の基材21と第2の基材22との接合強度は十分に高いものとなる。
また、各基材21、22が撓むことによって、接合界面に生じる応力を、ある程度緩和する作用が期待できる。
この場合、各基材21、22の平均厚さは、特に限定されないが、0.01〜10mm程度であるのが好ましく、0.1〜3mm程度であるのがより好ましい。
また、第1の基材21の接合面215には、必要に応じて、形成される接合膜3との密着性を高める表面処理を施してもよい。これにより、接合面215を清浄化および活性化され、接合面215に対して接合膜3が化学的に作用し易くなる。その結果、後述する工程において、接合面215上に接合膜3を形成したとき、接合面215と接合膜3との接合強度を高めることができる。
この表面処理としては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。
なお、表面処理を施す第1の基材21が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、表面処理として、特にプラズマ処理または紫外線照射処理を行うことにより、接合面215を、より清浄化および活性化することができる。その結果、接合面215と接合膜3との接合強度を特に高めることができる。
また、第1の基材21の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜3との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第1の基材21の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
このような材料で構成された第1の基材21は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、水酸基が結合している。したがって、このような酸化膜で覆われた第1の基材21を用いることにより、上記のような表面処理を施さなくても、第1の基材21の接合面215と接合膜3との接合強度を高めることができる。
一方、第1の基材21と同様、第2の基材22の接合面225(後述する工程において、接合膜3と密着する面)にも、必要に応じて、あらかじめ接合膜3との密着性を高める表面処理を施してもよい。これにより、接合面225を清浄化および活性化する。その結果、後述する工程において、接合面225と接合膜3とを密着させ、これらを接合したとき、接合面225と接合膜3との接合強度を高めることができる。
この表面処理としては、特に限定されないが、前述の第1の基材21の接合面215に対する表面処理と同様の処理を用いることができる。
また、第2の基材22の接合面225に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、第2の基材22の接合面225と接合膜3との接合強度を十分に高くすることができる。
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような各種官能基、各種ラジカル、開環分子または、2重結合、3重結合のような不飽和結合を有する脱離性中間体分子、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基や物質、または、これらの基が脱離してなる終端化されていない結合手(未結合手、ダングリングボンド)が挙げられる。
このうち、脱離性中間体分子は、開環分子または不飽和結合を有する炭化水素分子であるのが好ましい。このような炭化水素分子は、開環分子および不飽和結合の顕著な反応性に基づき、接合膜3に対して強固に作用する。したがって、このような炭化水素分子を有する接合面225は、接合膜3に対して特に強固に接合可能なものとなる。
また、接合面225が有する官能基は、特に水酸基が好ましい。これにより、接合面225は、接合膜3に対して特に容易かつ強固に接合可能なものとなる。特に接合膜3の表面に水酸基が露出している場合には、水酸基同士間に生じる水素結合に基づいて、接合面225と接合膜3との間を短時間で強固に接合することができる。
また、このような基や物質を有するように、接合面225に対して上述したような各種表面処理を適宜選択して行うことにより、接合膜3に対して強固に接合可能な第2の基材22が得られる。
このうち、第2の基材22の接合面225には、水酸基が存在しているのが好ましい。このような接合面225には、水酸基が露出した接合膜3との間に、水素結合に基づく大きな引力が生じる。これにより、最終的に、第1の基材21と第2の基材22とを特に強固に接合することができる。
また、表面処理を施すのに代えて、第1の基材21の接合面215に、あらかじめ、中間層を形成するようにしてもよい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、接合膜3との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層上に接合膜3を成膜することにより、第1の接合体11の信頼性を十分に高いものとすることができる。
かかる中間層の構成材料としては、例えば、アルミニウム、チタンのような金属系材料、金属酸化物、シリコン酸化物のような酸化物系材料、金属窒化物、シリコン窒化物のような窒化物系材料、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素系材料、シランカップリング剤、チオール系化合物、金属アルコキシド、金属−ハロゲン化合物のような自己組織化膜材料、樹脂系接着剤、樹脂フィルム、樹脂コーティング材、各種ゴム材料、各種エラストマーのような樹脂系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの各材料で構成された中間層の中でも、酸化物系材料で構成された中間層によれば、第1の基材21と接合膜3との間の接合強度を特に高めることができる。
また、第1の基材21と同様、表面処理に代えて、第2の基材22の接合面225に、あらかじめ、中間層を形成しておいてもよい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、前記第1の基材21の場合と同様に、接合膜3との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層を介して、第2の基材22と接合膜3とを接合することにより、信頼性の高い第1の接合体11を得ることができる。
かかる中間層の構成材料には、例えば、前記第1の基材21の接合面215に形成する中間層の構成材料と同様の材料を用いることができる。
なお、上記のような表面処理および中間層の形成は、必要に応じて行えばよく、第1の接合体11として、特に高い接合強度を必要としない場合には、省略することができる。
[1B]次に、シリコーン材料を含有する液状材料を塗布法を用いて接合面215上に供給する。これにより、第1の基材21の接合面215上に、液状被膜30が形成される(図1(b)参照)。
塗布法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法および液滴吐出法や等が挙げられるが、特に、液滴吐出法を用いるのが好ましい。液滴吐出法によれば、図1(b)に示すように、液状材料を液滴31として接合面215に供給することができるため、たとえ液状被膜30を接合面215の一部の領域に選択的にパターニングして形成する場合であったとしても、液状材料をこの領域の形状に対応して(選択的に)供給することができる。
液滴吐出法としては、特に限定されないが、圧電素子による振動を利用して液状材料を吐出する構成のインクジェット法が好適に用いられる。インクジェット法によれば、目的とする領域(位置)に、液状材料を液滴31として、優れた位置精度で供給することができる。また、圧電素子の振動数および液状材料の粘度等を適宜設定することにより、液滴31のサイズ(大きさ)を、比較的容易に調整できることから、液滴31のサイズを小さくすれば、たとえ膜を形成する領域の形状が微細なものであったとしても、この領域の形状に対応した液状被膜30を確実に形成することができる。
液状材料の粘度(25℃)は、通常、0.5〜200mPa・s程度であるのが好ましく、3〜20mPa・s程度であるのがより好ましい。液状材料の粘度をかかる範囲とすることにより、液滴の吐出をより安定的に行うことができるとともに、微細な形状の膜を形成する領域に対応した形状を描画し得る大きさの液滴31を吐出することができる。さらに、この液状材料で構成される液状被膜30を次工程[1C]で乾燥させた際に、接合膜3を形成するのに十分な量のシリコーン材料を液状材料中に含有したものとすることができる。
また、液状材料の粘度をかかる範囲内とすれば、具体的には、液滴31の量(液状材料の1滴の量)を、平均で、0.1〜40pL程度に、より現実的には1〜30pL程度に設定し得る。これにより、接合面215に供給された際の液滴31の着弾径が小さなものとなることから、微細な形状の接合膜3をも確実に形成することができる。
また、液状材料は、前述のようにシリコーン材料を含有するものであるが、シリコーン材料単独で、液状をなし目的とする粘度範囲である場合、シリコーン材料をそのまま液状材料として用いることができる。また、シリコーン材料単独で、固形状または高粘度の液状をなす場合には、液状材料として、シリコーン材料の溶液または分散液を用いることができる。
シリコーン材料を溶解または分散するための溶媒または分散媒としては、例えば、アンモニア、水、過酸化水素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等を用いることができる。
シリコーン材料は、液状材料中に含まれ、次工程[1C]において、この液状材料を乾燥させることにより形成される接合膜3の主材料として構成するものである。
ここで、「シリコーン材料」とは、ポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物であり、通常、主骨格(主鎖)部分が主としてオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる化合物のことを言い、主鎖の一部から突出する分枝状の構造を有するものであってもよく、主鎖が環状をなす環状体であってもよく、主鎖の末端同士が連結しない直鎖状のものであってもよい。
例えば、ポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物において、オルガノシロキサン単位は、その末端部では下記一般式(1)で表わされる構造単位を有し、連結部では下記一般式(2)で表わされる構造単位を有し、また、分枝部では下記一般式(3)で表わされる構造単位を有している。
Figure 2009292917
[式中、各Rは、それぞれ独立して、置換または無置換の炭化水素基を表し、各Zは、それぞれ独立して、水酸基または加水分解基を表し、Xはシロキサン残基を表し、aは0または1〜3の整数を表し、bは0または1〜2の整数を表し、cは0または1を表す。]
このようなシリコーン材料において、ポリオルガノシロキサン骨格は、分枝状をなすもの、すなわち上記一般式(1)で表わされる構造単位、上記一般式(2)で表わされる構造単位および上記一般式(3)で表わされる構造単位で構成されているのが好ましい。この分枝状をなすポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物(以下、「分枝状化合物」と略すこともある。)は、主骨格(主鎖)部分が主としてオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる化合物であり、主鎖の途中でオルガノシロキサン単位の繰り返しが分枝するとともに、主鎖の末端同士が連結しないものである。
この分枝状化合物を用いることにより、次工程[1C]において、液状材料中に含まれるこの化合物の分枝鎖同士が互いに絡まり合うようにして接合膜3が形成されることから、得られる接合膜3は特に膜強度に優れたものとなる。
なお、上記一般式(1)〜上記一般式(3)中、基R(置換または無置換の炭化水素基)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。さらに、これらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部が、I)フッ素原子、塩素原子、臭素原子のようなハロゲン原子、II)グリシドキシ基のようなエポキシ基、III)メタクリル基のような(メタ)アクリロイル基IV)カルボキシル基、スルフォニル基のようなアニオン性基等で置換された基等が挙げられる。
加水分解基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基等のケトオキシム基、アセトキシ基等のアシルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基等が挙げられる。
また、分枝状化合物は、その分子量が、1×10〜1×10程度のものであるのが好ましく、1×10〜1×10程度のものであるのがより好ましい。分子量をかかる範囲内に設定することにより、液状材料の粘度を上述したような範囲内に比較的容易に設定することができる。
このような分枝状化合物は、シラノール基を有するものであるのが好ましい。すなわち、上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位において、各基Zは水酸基であるのが好ましい。これにより、次工程[1C]において、液状被膜30を乾燥させて接合膜3を得る際に、隣接する分枝状化合物が有する水酸基同士が結合することとなり、得られる接合膜3の膜強度が優れたものとなる。さらに、第1の基材21として、前述したように、その接合面(表面)215から水酸基が露出しているものを用いた場合には、分枝状化合物が備える水酸基と、第1の基材21が備える水酸基とが結合することから、分枝状化合物を物理的な結合ばかりでなく、化学的な結合によっても第1の基材21に結合させることができる。その結果、接合膜3は、第1の基材21の接合面215に対して、強固に結合したものとなる。
また、シラノール基が有するシリコン原子に連結している炭化水素基は、フェニル基であるのが好ましい。すなわち、基Zが水酸基である上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rは、フェニル基であるのが好ましい。これにより、シラノール基の反応性がより向上するため、隣接する分枝状化合物が有する水酸基同士の結合がより円滑に行われるようになる。
さらに、シラノール基が存在しないシリコン原子に連結している炭化水素基は、メチル基であるのが好ましい。すなわち、基Zが存在しない上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rは、メチル基であるのが好ましい。このように、基Zが存在しない上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rがメチル基である化合物は、比較的入手が容易で、かつ安価であるとともに、次工程[1C]において、接合膜3に接合用エネルギーを付与することにより、メチル基が容易に切断されて、その結果として、接合膜3に確実に接着性を発現させることができるため、分枝状化合物(シリコーン材料)として好適に用いられる。
以上のことを考慮すると、分枝状化合物としては、例えば、下記一般式(4)で表わされるような主骨格がポリジメチルシロキサンで構成される化合物が好適に用いられる。
Figure 2009292917
[式中、nは、それぞれ独立して、0または1以上の整数を表す。]
さらに、上述した分枝状化合物は、比較的柔軟性に富む材料である。そのため、次工程[1E]において、接合膜3を介して第1の基材21に第2の基材22を接合して第1の接合体11を得る際に、例えば、第1の基材21と第2の基材22との各構成材料が互いに異なるものを用いる場合であったとしても、第1の基材21と第2の基材22との間に生じる熱膨張に伴う応力を確実に緩和することができる。これにより、第1の接合体11において、剥離が生じるのを確実に防止することができる。
また、分岐状化合物は耐薬品性に優れているため、薬品類等に長期にわたって晒されるような部材の接合に際して効果的に用いることができる。また、このような分岐状化合物は、耐熱性にも優れていることから、高温下に晒されるような部材の接合に際しても効果的に用いることができる。
[1C]次に、第1の基材21上に設けられた液状被膜30を乾燥することにより、接合膜3を形成する(図1(c)参照)。
液状被膜30を乾燥させる際の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
また、乾燥させる時間は、0.5〜48時間程度であるのが好ましく、15〜30時間程度であるのがより好ましい。
かかる条件で液状被膜30を乾燥させることにより、次工程[1D]において、接合用エネルギーを付与することにより接着性が好適に発現する接合膜3を確実に形成することができる。また、シリコーン材料として前記工程[1B]で説明したようなシラノール基を有するものを用いた場合には、シリコーン材料が有するシラノール基同士を、さらには、シリコーン材料が有するシラノール基と第1の基材21が有する水酸基とを、確実に結合させることができるため、形成される接合膜3を膜強度に優れ、かつ第1の基材21に対して強固に結合したものとすることができる。
さらに、乾燥させる際の雰囲気の圧力は、大気圧下であってもよいが、減圧下であるのが好ましい。具体的には、減圧の程度は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。これにより、接合膜3の膜密度が緻密化して、接合膜3をより優れた膜強度を有するものとすることができる。
以上のように、接合膜3を形成する際の条件を適宜設定することにより、形成される接合膜3の膜強度等を所望のものとすることができる。
接合膜3の平均厚さは、10〜10000nm程度であるのが好ましく、50〜5000nm程度であるのがより好ましい。供給する液状材料の量を適宜設定して、形成される接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、第1の基材21と第2の基材22とを接合した接合体の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、より強固に接合することができる。
なお、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、第1の基材21と第3の基材23とを十分な接合強度で接合することができなくなるおそれがあり、最終的に得られる第2の接合体12の信頼性を十分に得られない可能性がある。
また、接合膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、後述する接合体の剥離方法において、接合膜3内にへき開を確実に生じさせて、第1の基材21から第2の基材22を剥離することができる。
さらに、接合膜3の平均厚さをかかる範囲とすることにより、接合膜3がある程度弾性に富むものとなることから、後工程[1E]において、第1の基材21と第2の基材22とを接合する際に、接合膜3と接触させる第2の基材22の接合面225にパーティクル等が付着していても、このパーティクルを接合膜3で取り囲むようにして接合膜3と接合面225とが接合することとなる。そのため、このパーティクルが存在することによって、接合膜3と接合面225との界面における接合強度が低下したり、この界面において剥離が生じたりするのを的確に抑制または防止することができる。
また、本実施形態では、液状材料を供給して接合膜3を形成する構成となっていることから、たとえ第1の基材21の接合面215に凹凸が存在している場合であっても、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するようにして接合膜3を形成ことができる。その結果、接合膜3が凹凸を吸収して、その表面がほぼ平坦面で構成されることとなる。
[1D]次に、接合面215に形成された接合膜3の表面35に対して接合用エネルギーを付与する。
接合膜3に接合用エネルギーを付与すると、この接合膜3では、表面35付近の分子結合(例えば、シリコーン材料の主骨格がポリジメチルシロキサンで構成されている場合、Si−CH結合)の一部が切断し、表面35が活性化されることに起因して、表面35付近に第2の基材22に対する接着性が発現する。
このような状態の第1の基材21は、第2の基材22と、化学的結合に基づいて強固に接合可能なものとなる。
ここで、本明細書中において、表面35が「活性化された」状態とは、上述のように接合膜3の表面35の分子結合の一部、具体的には、例えば、ポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基が切断されて、接合膜3中に終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態の他、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、さらに、これらの状態が混在した状態を含めて、接合膜3が「活性化された」状態と言うこととする。
接合膜3に付与する接合用エネルギーは、いかなる方法を用いて付与するものであってもよいが、例えば、接合膜3にエネルギー線を照射する方法、接合膜3を加熱する方法、接合膜3に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、接合膜3をプラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、接合膜3をオゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。中でも、本実施形態では、接合膜3に接合用エネルギーを付与する方法として、特に、接合膜3にエネルギー線を照射する方法を用いるのが好ましい。かかる方法は、接合膜3に対して比較的簡単に効率よく接合用エネルギーを付与することができるので、接合用エネルギーを付与する方法として好適に用いられ、接合膜の表面を効率よく活性化させることができる。また、接合膜3中の分子構造を必要以上に切断しないので、後述する接合体の剥離方法において剥離用エネルギーを付与した際に、接合膜3内で確実にへき開を生じさせることができる。
このうち、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザ光のような光、X線、γ線のような電磁波、電子線、イオンビームのような粒子線等や、またはこれらのエネルギー線を2種以上組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長126〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい(図1(d)参照)。かかる範囲内の紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜3中の骨格をなす分子結合が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、接合膜3から表面35付近の分子結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜3の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜3に接着性を確実に発現させることができる。
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、分子結合の切断を効率よく行うことができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、126〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜3の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜3との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
また、紫外線を照射する時間は、接合膜3の表面35付近の分子結合を切断し得る程度の時間、すなわち、接合膜3の表面付近に存在する分子結合を選択的に切断し得る程度の時間とするのが好ましい。具体的には、紫外線の光量、接合膜3の構成材料等に応じて若干異なるものの、1秒〜30分程度であるのが好ましく、1秒〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
また、接合膜3に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、中でも、大気雰囲気(特に、露点が低い雰囲気下)中で行うのが好ましい。これにより、表面35付近にオゾンガスが生じて、表面35の活性化がより円滑に行われることとなる。さらに、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、接合膜3に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、接合用エネルギーの付与による第1の基材21の変質・劣化を防止することができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与する接合用エネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜3で切断される分子結合の量を調整することが可能となる。このように切断される分子結合の量を調整することにより、第1の記載21と第2の基材22との間の接合強度を容易に制御することができる。
すなわち、表面35付近で切断される分子結合の量を多くすることにより、接合膜3の表面35付近に、より多くの活性手が生じるため、接合膜3に発現する接着性をより高めることができる。一方、表面35付近で切断される分子結合の量を少なくすることにより、接合膜3の表面35付近に生じる活性手を少なくし、接合膜3に発現する接着性を抑えることができる。
なお、付与する接合用エネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きな接合用エネルギーを付与することができるので、接合用エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
[1E]次に、接合膜3と第2の基材22とが密着するように、第1の基材21と第2の基材22とを貼り合わせる(図2(e)参照)。これにより、前記工程[1D]において、接合膜3の表面35に第2の基材22に対する接着性が発現していることから、接合膜3と第2の基材22の接合面225とが化学的に結合する。その結果、第1の基材21と第2の基材22とが、接合膜3により接合され、図2(f)に示すような第1の接合体11が得られる。
このようにして得られた第1の接合体11では、従来の接合方法で用いられていた接着剤のように、主にアンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて、2つの基材21、22が接合されている。このため、第1の接合体11は短時間で形成することができ、かつ、極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
また、このような接合方法によれば、高温(例えば、700℃以上)での熱処理を必要としないことから、耐熱性の低い材料で構成された第1の基材21および第2の基材22をも、接合に供することができる。
また、接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを接合しているため、各基材21、22の構成材料に制約がないという利点もある。
以上のことから、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料の選択の幅をそれぞれ広げることができる。
また、第1の基材21の熱膨張率と第2の基材22の熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
具体的には、第1の基材21と第2の基材22との熱膨張率の差にもよるが、第1の基材21および第2の基材22の温度が25〜50℃程度である状態下で、第1の基材21と第2の基材22とを貼り合わせるのが好ましく、25〜40℃程度である状態下で貼り合わせるのがより好ましい。このような温度範囲であれば、第1の基材21と第2の基材22との熱膨張率の差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、接合体11における反りや剥離等の発生を確実に抑制または防止することができる。
また、この場合、具体的な第1の基材21と第2の基材22との間の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが特に推奨される。
また、第1の基材21と第2の基材22とが接合する接合膜3の面積や形状を適宜設定することにより、接合膜3に生じる応力の局所集中を緩和することができる。これにより、例えば、第1の基材21と第2の基材22との間で熱膨張率差が大きい場合でも、各基材21、22を確実に接合することができる。
なお、本実施形態では、前記工程[1D]および本工程[1E]で示したように、接合膜3に接合用エネルギーを付与して、接合膜3の接合面(表面)23付近に接着性を発現させた後、接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを接触させることにより第1の接合体11を得るようにしたが、これに限らず、接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを接触させた後、接合膜3に接合用エネルギーを付与することにより第1の接合体11を得るようにしてもよい。すなわち、前記工程[1D]と本工程[1E]との順序を逆にして第1の接合体11を得るようにしてもよい。このような順序で各工程を施して第1の接合体11を得る場合においても前述したのと同様の効果が得られる。
ここで、本工程において、第1の基材21と第2の基材22とを接合するメカニズムについて説明する。
例えば、第2の基材22の接合面225に水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、第1の基材21に形成された接合膜3と、第2の基材22の接合面225とが接触するように、これらを貼り合わせたとき、接合膜3の表面35に存在する水酸基と、第2の基材22の接合面225に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、第1の基材21と第2の基材22とが接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、第1の基材21と第2の基材22との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、第1の基材21と第2の基材22とがより強固に接合されると推察される。
また、第1の基材21の接合膜3の表面や内部、および、第2の基材22の接合面225や内部に、それぞれ終端化されていない結合手すなわち未結合手(ダングリングボンド)が存在している場合、第1の基材21と第2の基材22とを貼り合わせた時、これらの未結合手同士が再結合する。この再結合は、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、接合界面にネットワーク状の結合が形成されることとなる。これにより、接合膜3と第2の基材22とが特に強固に接合される。
なお、前記工程[1D]で活性化された接合膜3の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[1D]の終了後、できるだけ早く本工程[1E]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[1D]の終了後、60分以内に本工程[1E]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜3の表面が十分な活性状態を維持しているので、第1の基材21と第2の基材22とを貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
換言すれば、活性化させる前の接合膜3は、シリコーン材料を乾燥させて得られた接合膜であるため、化学的に比較的安定であり、耐候性に優れている。このため、活性化させる前の接合膜3は、長期にわたる保存に適したものとなる。したがって、そのような接合膜3を備えた第1の基材21を多量に製造または購入して保存しておき、本工程の貼り合わせを行う直前に、必要な個数のみに前記工程[1D]に記載した接合用エネルギーの付与を行うようにすれば、第1の接合体11の製造効率の観点から有効である。
以上のようにして、図2(f)に示す第1の接合体11を得ることができる。
このようにして得られた第1の接合体11は、第1の基材21と第2の基材22との間の接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する第1の接合体11は、後述するような剥離用エネルギーが付与されなければ、その剥離を十分に防止し得るものとなる。また、かかる構成の接合方法によれば、第1の基材21と第2の基材22とが上記のような大きな接合強度で接合された第1の接合体11を効率よく作製することができる。
なお、第1の接合体11を得る際、または、第1の接合体11を得た後に、この第1の接合体11に対して、必要に応じ、以下の3つの工程([1E−a]、[1E−b]および[1E−c])のうちの少なくとも1つの工程(第1の接合体11の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、第1の接合体11の接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
[1E−a] 図2(g)に示すように、得られた第1の接合体11を、第1の基材21と第2の基材22とが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、第1の基材21の表面および第2の基材22の表面に、それぞれ接合膜3の表面がより近接し、第1の接合体11における接合強度をより高めることができる。
また、第1の接合体11を加圧することにより、第1の接合体11中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、第1の接合体11における接合強度をさらに高めることができる。
なお、この圧力は、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料や各厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料や各厚さ等に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、第1の接合体11の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料によっては、各基材21、22に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、第1の接合体11を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
[1E−b] 図2(g)に示すように、得られた第1の接合体11を加熱する。
これにより、第1の接合体11における接合強度をより高めることができる。
このとき、第1の接合体11を加熱する際の温度は、室温より高く、第1の接合体11の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、第1の接合体11が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、前記工程[1E−a]、[1E−b]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、図2(g)に示すように、第1の接合体11を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、第1の接合体11の接合強度を特に高めることができる。
[1E−c] 得られた第1の接合体11に紫外線を照射する。
これにより、接合膜3と第2の基材22との間に形成される化学結合を増加させ、第1の接合体11の接合強度を特に高めることができる。
このとき照射される紫外線の条件は、前記工程[1D]に示した紫外線の条件と同等にすればよい。
また、本工程[1E−c]を行う場合、第1の基材21および第2の基材22のうち、いずれか一方が透光性を有していることが必要である。そして、透光性を有する基材側から、紫外線を照射することにより、接合膜3に対して確実に紫外線を照射することができる。
以上のような工程を行うことにより、第1の接合体11における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
なお、本構成の接合方法では、液滴吐出法としてインクジェット法を用いる場合について説明したが、これに限定されず、電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用してインクを吐出するバブルジェット法(「バブルジェット」は登録商標)を液滴吐出法として用いるようにしてもよい。バブルジェット法によっても前述したのと同様の効果が得られる。
[2]用意した第1の接合体11が有する接合膜3に対して剥離用エネルギーを付与して、接合膜3内にへき開を生じさせ、第2の基材22から、接合膜3が残存した第1の基材21を剥離する。
以下、本工程について詳述する。
[2A]まず、前述したような、第1の基材21と第2の基材22とが、シリコーン材料を含有する接合膜3を介して接合された第1の接合体11を用意する(図3(a)参照。)。
なお、次工程[2B]において、接合膜3に剥離用エネルギーを付与する方法として、エネルギー線(例えば、紫外線)を照射する方法を用いる場合には、第1の基材21および第2の基材22の少なくとも一方、すなわちエネルギー線を照射する側の基材に、エネルギー線(例えば、紫外線)透過性を有するものが用いられる。
このようなエネルギー線透過性を有する基材の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー、ポリブテン−1、エチレン−酢酸ビニル系共重合体等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、PMMAのような樹脂材料や、MgAlのようなセラミックス系材料等の紫外線透過性を有するものが挙げられる。
[2B]次に、この第1の接合体11の接合膜3に、剥離用エネルギーを付与する(図3(b)参照。)。これにより、前記シリコーン材料を構成する分子結合の一部が切断されることとなり、その結果として、接合膜3内にへき開が生じて、第2の基材22から接合膜3が残存した第1の基材21を剥離することができる(図3(c)参照)。
上述したように、第1の接合体11は、シリコーン材料を含有する接合膜3を介して、第1の基材21と第2の基材22とが十分に高い接合強度で接合されるとともに、寸法精度にも優れており、信頼性の高い接合体である。しかしながら、本実施形態において、第2の基材22は、第1の基材21に比べて耐久性(耐候性、耐熱性等)が低いものである。そのため、第1の接合体11の使用環境や、第2の基材22の寿命により、第2の基材22が、第1の基材21よりも早く、変質、劣化してしまい、第1の接合体11の機能を維持することができなくなってしまう。かかる場合、従来からの樹脂系接着剤等を介して部材同士が接合された接合体では、部材同士を完全に分離(分割)することができなかったため、接合体として廃棄しなければならなかった。これに対して、本発明の接合方法では、接合膜3を構成するシリコーン材料の分子結合の一部が切断し、へき開が生じることにより、第1の基材21と第2の基材22とを各基材毎に完全に分割することができる。そのため、耐久性の低い第2の基材22の寿命に合わせて、第1の基材21を廃棄する必要がなく、耐久性の高い第1の基材21を確実に再利用することができる。
また、第2の基材22から分離された第1の基材21に残存する接合膜3は、へき開されると同時に、その表面(へき開面)32付近に接着性が発現する。これにより、次工程[3]において、第1の基材21に残存した接合膜3を介して、第1の基材21と第3の基材23とを貼り合わせるのみで、第1の基材21と第3の基材23とが接合された第2の接合体12を確実に得ることができる。
このように、第1の基材21は、第2の基材21から容易に剥離することができるとともに、第3の基材23と容易に接合することができる。その結果、第1の基材21の再利用性を確実に向上させることができる。
また、第1の接合体11の接合膜3内にへき開を生じさせて、第1の基材21に残存した新たな接合膜3は、その表面(へき開面)32の平滑性が高いものとなる。そのため、第1の基材21を、接合膜3を介して、第3の基材23に優れた寸法精度で接合することができる。
ここで、剥離用エネルギーを付与することにより、接合膜3にへき開が生じるとともに、へき開面32付近に接着性が発現するメカニズムとしては、次のようなことが考えられる。例えば、接合膜3に含まれるシリコーン材料の主骨格がポリジメチルシロキサンで構成されている場合、接合膜3に剥離用エネルギーを付与すると、Si−CH結合が切断され、雰囲気中の水分子等と反応することにより、例えば、メタンが発生する。このメタンは、気体(メタンガス)として存在し、大きな体積を占有することから、気体が発生した部分で、接合膜3が押し上げられる。その結果、Si−O結合も切断され、最終的に接合膜3内にへき開が生じるものと推察される。さらに、Si−O結合の切断により、へき開面32付近が、接合膜3に接合用エネルギーを付与した場合と同様に活性化されるため、接合膜3のへき開面32付近に接着性が発現するものと考えられる。
また、接合膜3として、前記一般式(4)で表わされるような主骨格がポリジメチルシロキサンで構成される化合物を用いた場合には、剥離用エネルギーが付与されると、容易に接合膜3内にへき開が生じるとともに、その表面付近に第3の基材23との接着性を確実に発現するものとなり、最終的に得られる第2の接合体12は、第1の接合体11と同様の信頼性を有するものとなる。
また、接合膜3の厚さが前述したような範囲のものである場合には、剥離用エネルギーの付与により、接合膜3内にへき開を生じさせた際に、接合膜3内に確実にへき開を生じさせて、第2の基材22から第1の基材21を効率良く剥離することができる。さらに、第1の基材21に残存した接合膜3の厚さを十分なものとすることができ、最終的に得られる第2の接合体12の寸法精度を十分に高いものとすることができるとともに、第1の基材21と第3の基材23とを強固に接合することができる。
剥離用エネルギーを付与する際の雰囲気は、雰囲気中に水分子が含まれていればよく、特に限定されないが、大気雰囲気であるのが好ましい。大気雰囲気であれば、特に装置を必要とせず、雰囲気中に十分な量の水分子が含まれていることから、接合膜3内にへき開を確実に生じさせることができる。
このように接合膜3にへき開を生じさせるためには、接合膜3がSiOで構成されることなく、膜中に有機物が結合した状態、すなわちシリコーン材料を含有した状態で接合膜3が形成されている必要があるが、接合膜3における、シリコン原子と炭素原子の存在比は、2:8〜8:2程度であるのが好ましく、3:7〜7:3程度であるのがより好ましい。シリコン原子と炭素原子の存在比が前記範囲内となっていることにより、接合膜3として優れた機能を発揮させることができるとともに、剥離用エネルギーの付与によりへき開が確実に生じるとともに、へき開面32付近に接着性を確実に発現させることが可能な膜となる。
また、剥離用エネルギーの大きさは、第1の接合体11の形成時に接合膜3に付与する接合用エネルギーの大きさよりも大きくなっているのが好ましい。これにより、第1の接合体11を形成時に、接合用エネルギーを付与した際には、接合膜3の表面付近に存在するSi−CH結合を選択的に切断することができるとともに、剥離用エネルギーを付与した際には、接合膜3内部に残存するSi−CH結合を切断することができる。その結果、接合用エネルギーを付与した際には、接合膜3の表面付近に接着性が発現し、剥離用エネルギーを付与した際には、接合膜3にへき開が確実に生じるとともに、へき開面32付近に接着性がより確実に発現することとなる。
また、接合膜3に付与する剥離用エネルギーは、前述した接合用エネルギーと同様に、いかなる方法を用いての付与するものであってもよく、接合膜3にエネルギー線を照射する方法、接合膜3を加熱する方法、接合膜3に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、接合膜3をプラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、接合膜3をオゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。中でも、本実施形態では、接合膜3に剥離用エネルギーを付与する方法として、特に、接合膜3にエネルギー線を照射する方法および接合膜3を加熱する方法のうちの少なくとも1つの一方により行うのが好ましい。かかる方法は、接合膜3に対して比較的簡単に、かつ選択的に剥離用エネルギーを付与することができるので、接合膜3により確実にへき開を生じさせることができる。
エネルギー線としては、接合用エネルギーの説明で記載したのと同様のものが挙げられるが、中でも、特に、紫外線、レーザ光のような光であるのが好ましい。これにより、第1の基材21および第2の基材22に変質・劣化が生じるのを防止しつつ、接合膜3にへき開を確実に生じさせることができる。
紫外線の波長は、好ましくは126〜300nm程度、より好ましくは126〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜3の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜3との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
また、紫外線を照射する時間は、接合膜3内にへき開が生じる程度の時間に設定される。具体的には、紫外線の光量、接合膜3の構成材料等に応じて若干異なるものの、10〜180分程度であるのが好ましく、30〜60分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
一方、レーザ光としては、例えば、エキシマレーザのようなパルス発振レーザ(パルスレーザ)、炭酸ガスレーザ、半導体レーザのような連続発振レーザ等が挙げられる。中でも、パルスレーザが好ましく用いられる。パルスレーザでは、接合膜3のレーザ光が照射された部分に経時的に熱が蓄積され難いので、蓄積された熱による第1の基材21および第2の基材22の変質・劣化を確実に防止することができる。
また、パルスレーザのパルス幅は、熱の影響を考慮した場合、できるだけ短い方が好ましい。具体的には、パルス幅が1ps(ピコ秒)以下であるのが好ましく、500fs(フェムト秒)以下であるのがより好ましい。パルス幅を前記範囲内にすれば、レーザ光照射に伴って接合膜3に生じる熱の影響を、的確に抑制することができる。また、パルス幅が前記範囲内であれば、レーザ光の照射に伴って熱が蓄積し、高温の領域が接合膜3の厚さ方向(レーザ光の照射方向)へ広がるのを特に確実に防止することができる。これにより、へき開位置の位置精度をより高めることができる。なお、パルス幅が前記範囲内程度に小さいパルスレーザは、「フェムト秒レーザ」と呼ばれる。
また、レーザ光の波長は、特に限定されないが、例えば、200〜1200nm程度であるのが好ましく、400〜1000nm程度であるのがより好ましい。
また、レーザ光のピーク出力は、パルスレーザの場合、パルス幅によって異なるが、0.1〜10W程度であるのが好ましく、1〜5W程度であるのがより好ましい。
さらに、パルスレーザの繰り返し周波数は、0.1〜100kHz程度であるのが好ましく、1〜10kHz程度であるのがより好ましい。パルスレーザの周波数を前記範囲内に設定することにより、Si−CH結合を選択的に切断することができる。
また、接合膜3を加熱する場合、第1の接合体11を加熱する際の温度は、好ましくは100〜400℃程度とされ、より好ましくは150〜300℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、第1の基材および第2の基材が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合膜3にへき開を確実に生じさせることができる。
また、加熱時間は、接合膜3内にへき開が生じる程度の時間に設定される。具体的には、加熱する温度、接合膜3の構成材料等に応じて若干異なるものの、10〜180分程度であるのが好ましく、30〜60分程度であるのがより好ましい。
なお、接合用エネルギーを付与する方法と、剥離用エネルギーを付与する方法とは、同一であっても、異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。これらを同一の方法とすれば、剥離用エネルギーの大きさと接合用エネルギーの大きさとを比較的容易に設定できることから、前述したように剥離用エネルギーの大きさを接合用エネルギーの大きさよりも容易に大きくすることができる。また、これらのエネルギーを付与するために用いる装置を同一のものとし得ること、すなわち、同一の装置で第1の接合体11の形成から剥離、さらには、次工程[3]で得られる第2の接合体12まで行え得ることから、コストの削減を図ることができる。
また、本工程[2B]において、第1の基材21から剥離された第2の基材22は、上述した剥離後の第1の基材21と同様に、接合膜3が残存したものである。したがって、第2の基材22が、再利用可能な状態であれば、第1の基材21と同様に、第2の基材22を再利用することができる。
[3]次に、第1の基材21と、第2の基材22とは異なる第3の基材23とを、第1の基材21に残存した接合膜3を介して貼り合わせる(図4(d)参照)。これにより、第1の基材21に残存した接合膜3の表面(へき開面)32付近には、前記工程[2]において、第1の接合体11が有する接合膜3にへき開が生じた際に接着性が発現していることから、接合膜3と第3の基材23の接合面235が化学的に結合する。その結果、第1の基材21と第3の基材23とが、接合膜3により接合され、図4(e)に示すような第2の接合体12が得られる。
また、このようにして得られた第2の接合体12は、前述した第1の接合体11と同様に、第1の基材21と第2の基材22とが共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて接合されたものである。そのため、第2の接合体12は短時間で形成することができ、かつ、極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。また、第1の接合体11と同様に、第2の接合体12の寸法精度も優れたものとなる。
このように、本実施形態の接合方法では、第1の接合体11の消耗によって、構成成分である第2の基材22が変質、劣化等を起こし、第1の接合体11としての機能を十分に発揮できなくなった際に、第2の基材22から第1の基材21を完全に分離して、第1の基材21と第3の基材23とを再接合して第2の接合体12を形成する。これにより、先に消耗されてしまう第2の基材22の寿命に合わせて第1の基材21を廃棄する必要がないため、第1の基材21の再利用率を向上させ、環境に優しい接合方法となる。
また、このようにして得られた第2の接合体12が有する接合膜3に対して、前述した剥離用エネルギーを付与すると、前記工程[2]と同様に、第2の接合体12が有する接合膜3内にへき開を生じて、それぞれ接合膜3が残存した第1の基材21および第3の基材23を得ることができる。このように、接合膜3がへき開を生じる厚さを有する限り、上述した接合方法を用いることによって、何度でも接合体の構成部材を再利用することができる。
第3の基材23は、第1の基材21よりも耐久性が低いものである。
第3の基材23の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、前述した第1の基材21および第2の基材22として用いることのできる材料と同様のものを用いることができる。
また、このような第3の基材23として、第2の基材22と同種であり、未使用のものを用いた場合には、第2の接合体12は、消耗される前の第1の接合体11と同様の機能を有するものとすることができる。また、かかる場合には、第2の基材22および第3の基材23を消耗品として用い、これらが消耗によって変質、劣化した際に、第1の基材21から剥離して、新たなる基材に交換するようにすれば、第1の基材21の高寿命化を確実に図ることができる。
なお、前記工程[2]でへき開され、活性化された接合膜3のへき開面32(表面)は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[2]の終了後、できるだけ早く本工程[3]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[2]の終了後、60分以内に本工程[3]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜3の表面32が十分な活性状態を維持しているので、第1の基材21と第2の基材22とを貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
また、このような第3の基材23の接合面235には、前述した第2の基材22と同様の、接合膜3との密着性を高める表面処理を行ってもよい。このような表面処理としては、例えば、前述した第2の基材22に施した表面処理等が挙げられる。
また、第3の基材23の接合面235に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、第3の基材23の接合面235と接合膜3との接合強度を十分に高くすることができる。
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような各種官能基、各種ラジカル、開環分子または、2重結合、3重結合のような不飽和結合を有する脱離性中間体分子、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基や物質、または、これらの基が脱離してなる終端化されていない結合手(未結合手、ダングリングボンド)が挙げられる。
また、第2の基材22と同様、表面処理に代えて、第3の基材23の接合面235に、あらかじめ、中間層を形成しておいてもよい。このような中間層としては、例えば、前述した第2の基材22の接合面225に形成する中間層の構成材料と同様の材料を用いることができる。
また、第2の接合体12を得た後、この第2の接合体12に対して、必要に応じ、前記工程[1E−a]、[1E−b]および[1E−c]のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。
例えば、第2の接合体12を加圧しつつ、加熱することにより、第2の接合体12の各基材21、23同士がより近接する。これにより、接合膜3の界面における水酸基の脱水縮合や未結合手同士の再結合が促進される結果、第1の基材21と第3の基材23との接合強度がより優れたものとなり、第2の接合体12の信頼性は特に優れたものとなる。
なお、前記工程[2]において、第1の基材21から剥離された第2の基材22は、前述した第1の基材21と同様に接合膜3が残存したものである。第2の基材22が再度利用可能な状態であれば、本行程[3]と同様の工程を経ることにより、第2の基材22の再利用率を向上させることができる。
より具体的には、第2の基材22と、第1の基材21とは異なる第4の基材24とを、第2の基材22に残存した接合膜3を介して貼り合わせる(図5(a)参照)。これにより、第2の基材22に残存した接合膜3の表面(へき開面)32付近には、第1の基材21に残存した接合膜3と同様の接着性が発現していることから、接合膜3と第4の基材24の接合面245が化学的に結合する。その結果、第2の基材22と第4の基材24とが、接合膜3により接合され、図5(b)に示すような第3の接合体13が得られる。
<<第2実施形態>>
次に、本発明の接合方法の第2実施形態について説明する。
図6は、本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、本実施形態の接合方法について説明するが、前記第1実施形態に記載の接合方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の接合方法では、第1の基材21の接合面215上に、第1の接合体11が有する接合膜3がへき開して、残存した接合膜3が形成されている他に、第3の基材23の接合面(表面)235上にもシリコーン材料を含有する接合膜3が形成されている。そして、第1の基材21に残存した接合膜3と、第3の基材23が備える接合膜3とのそれぞれの表面付近に接着性を発現させ、これら接合膜3同士を接触させることにより、第1の基材21と第3の基材23とを接合させて第2の接合体12を得る以外は前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態の接合方法は、液状材料を用いて、第1の基材21上および第2の基材22上の双方に接合膜3を形成して、これら接合膜3同士を一体化させることにより、第1の基材21と第3の基材23とを接合する接合体の形成方法である。
[1’]まず、前記工程[1]と同様に、第1の接合体11を用意する。
[2’]次に、前記工程[2]と同様に、第1の接合体が備える接合膜3に剥離用エネルギーを付与して、接合膜3内にへき開を生じさせ、第2の基材22から、接合膜3が残存した第1の基材21を剥離する。
[3’]次に、第1の基材21と、前記工程[1C]および前記工程[1D]で説明したのと同様にして、接合面235上に接合膜3を形成するとともに、かかる接合膜3に接合用エネルギーを付与してその表面32付近に接着性が発現した第3の基材23とを、第1の基材21および第3の基材23がそれぞれ有する接合膜3同士を貼り合わせる(図6(a)参照)。これにより、双方の基材21、23が有する接合膜3により、基材21、23同士が接合され、図6(b)に示すような第2の接合体12が得られる。
以上のようにして第2の接合体12を得ることができる。このようにして得られた第2の接合体12は、第1の基材21および第3の基材23がそれぞれ有する接合膜3同士が化学的結合に基づいて特に強固に接合されたものとなり、第2の接合体12の信頼性は特に優れたものとなる。
また、本実施形態の第2の接合体12が備える接合膜3は、第1の基材21に残存した接合膜3に、第3の基材23が備える接合膜3が密着し、お互いの接合膜3同士が一体化したものである。そのため、本実施形態の接合方法によれば、接合体を剥離して、再接合する度に、接合膜3が補給されることとなり、長期間にわたって繰り返し部材(基材)交換を行うことができる。
なお、第2の接合体12を得た後、この第2の接合体12に対して、必要に応じ、前記第1構成の工程[1E−a]、[1E−b]および[1E−c]のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。
例えば、第2の接合体12を加圧しつつ、加熱することにより、第2の接合体12の各基材21、23同士がより近接する。これにより、各接合膜3の界面における水酸基の脱水縮合や未結合手同士の再結合が促進される。その結果、接合膜3の一体化がより進行し、最終的には、ほぼ完全に一体化され、第1の基材21と第3の基材23との接合強度をさらに優れたものとすることができる。
<液滴吐出ヘッド>
次に、上述した接合方法を適用して接合された接合体をインクジェット式記録ヘッドに適用した場合について説明する。
図7は、インクジェット式記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)を示す分解斜視図、図8は、図7に示すインクジェット式記録ヘッドの平面図および断面図、図9は、図7に示すインクジェット式記録ヘッドを備えるインクジェットプリンタの一例を示す概略図である。なお、以下の説明では、図7および図8の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図7に示すインクジェット式記録ヘッド1(以下、単に「ヘッド1」という。)は、図9に示すようなインクジェットプリンタ9に搭載されている。
図9に示すインクジェットプリンタ9は、装置本体92を備えており、上部後方に記録用紙Pを設置するトレイ921と、下部前方に記録用紙Pを排出する排紙口922と、上部面に操作パネル97とが設けられている。
操作パネル97は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプ等で構成され、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示せず)と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示せず)とを備えている。
また、装置本体92の内部には、主に、往復動するヘッドユニット93を備える印刷装置(印刷手段)94と、記録用紙Pを1枚ずつ印刷装置94に送り込む給紙装置(給紙手段)95と、印刷装置94および給紙装置95を制御する制御部(制御手段)96とを有している。
制御部96の制御により、給紙装置95は、記録用紙Pを一枚ずつ間欠送りする。この記録用紙Pは、ヘッドユニット93の下部近傍を通過する。このとき、ヘッドユニット93が記録用紙Pの送り方向とほぼ直交する方向に往復移動して、記録用紙Pへの印刷が行なわれる。すなわち、ヘッドユニット93の往復動と記録用紙Pの間欠送りとが、印刷における主走査および副走査となって、インクジェット方式の印刷が行なわれる。
印刷装置94は、ヘッドユニット93と、ヘッドユニット93の駆動源となるキャリッジモータ941と、キャリッジモータ941の回転を受けて、ヘッドユニット93を往復動させる往復動機構942とを備えている。
ヘッドユニット93は、その下部に、多数のノズル孔110を備えるヘッド1と、ヘッド1にインクを供給するインクカートリッジ931と、ヘッド1およびインクカートリッジ931を搭載したキャリッジ932とを有している。
なお、インクカートリッジ931として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒)の4色のインクを充填したものを用いることにより、フルカラー印刷が可能となる。
往復動機構942は、その両端をフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸943と、キャリッジガイド軸943と平行に延在するタイミングベルト944とを有している。
キャリッジ932は、キャリッジガイド軸943に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト944の一部に固定されている。
キャリッジモータ941の作動により、プーリを介してタイミングベルト944を正逆走行させると、キャリッジガイド軸943に案内されて、ヘッドユニット93が往復動する。そして、この往復動の際に、ヘッド1から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
給紙装置95は、その駆動源となる給紙モータ951と、給紙モータ951の作動により回転する給紙ローラ952とを有している。
給紙ローラ952は、記録用紙Pの送り経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ952aと駆動ローラ952bとで構成され、駆動ローラ952bは給紙モータ951に連結されている。これにより、給紙ローラ952は、トレイ921に設置した多数枚の記録用紙Pを、印刷装置94に向かって1枚ずつ送り込めるようになっている。なお、トレイ921に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成であってもよい。
制御部96は、例えばパーソナルコンピュータやディジタルカメラ等のホストコンピュータから入力された印刷データに基づいて、印刷装置94や給紙装置95等を制御することにより印刷を行うものである。
制御部96は、いずれも図示しないが、主に、各部を制御する制御プログラム等を記憶するメモリ、印刷装置94(キャリッジモータ941)を駆動する駆動回路、給紙装置95(給紙モータ951)を駆動する駆動回路、および、ホストコンピュータからの印刷データを入手する通信回路と、これらに電気的に接続され、各部での各種制御を行うCPUとを備えている。
また、CPUには、例えば、インクカートリッジ931のインク残量、ヘッドユニット93の位置等を検出可能な各種センサ等が、それぞれ電気的に接続されている。
制御部96は、通信回路を介して、印刷データを入手してメモリに格納する。CPUは、この印刷データを処理して、この処理データおよび各種センサからの入力データに基づいて、各駆動回路に駆動信号を出力する。この駆動信号により印刷装置94および給紙装置95は、それぞれ作動する。これにより、記録用紙Pに印刷が行われる。
以下、ヘッド1について、図7および図8を参照しつつ詳述する。
図7および図8に示すように、ヘッド1は、ノズルプレート100と、吐出液貯留室形成基板(基板)200と、封止シート300と、封止シート300上に設けられた振動板400と、振動板400上に設けられた圧電素子(振動手段)50およびケースヘッド600とを有する。また、ヘッド1では、封止シート300と振動板400との積層体により、封止板を構成している。なお、このヘッド1は、ピエゾジェット式ヘッドを構成する。
吐出液貯留室形成基板200(以下、省略して「基板200」と言う。)には、インクを貯留する複数の吐出液貯留室(圧力室)210と、各吐出液貯留室210に連通し、各吐出液貯留室210にインクを供給する吐出液供給室220とが形成されている。
図7および図8に示すように、各吐出液貯留室210および吐出液供給室220は、それぞれ、平面視において、ほぼ長方形状をなし、各吐出液貯留室210の幅(短辺)は、吐出液供給室220の幅(短辺)より細幅となっている。
また、各吐出液貯留室210は、吐出液供給室220に対して、ほぼ垂直をなすように配置されており、各吐出液貯留室210および吐出液供給室220は、平面視において全体として、櫛状をなしている。
なお、吐出液供給室220は、平面視において、図7に示すような長方形状のものの他、例えば、台形状、三角形状または俵形状(カプセル形状)のものであってもよい。
基板200を構成する材料としては、例えば、シリコーン材料やステンレス鋼等が用いられる。このような材料は、耐薬品性に優れることから、長時間にわたってインクに曝されたとしても、基板200が変質・劣化するのを確実に防止することができる。また、これらの材料は、加工性に優れるため、寸法精度の高い基板200が得られる。このため、吐出液貯留室210や吐出液供給室220の容積の精度が高くなり、高品位の印字が可能なヘッド1が得られる。
また、吐出液供給室220は、後述するケースヘッド600に設けられた吐出液供給路610と連通して複数の吐出液貯留室210にインクを供給する共通のインク室として機能するリザーバ700の一部を構成する。
また、吐出液貯留室210と吐出液供給室220との内面に、あらかじめ、親水処理を施しておいてもよい。これにより、吐出液貯留室210および吐出液供給室220に貯留されたインク中に気泡が含まれるのを防止することができる。
また、基板200の下面(封止シート300と反対側の面)には、接合膜15を介して、ノズルプレート100が接合(接着)されている。
ノズルプレート100には、各吐出液貯留室210に対応するように、それぞれノズル孔110が形成(穿設)されている。このノズル孔110に、吐出液貯留室210に貯留されたインクを押し出させることにより、インクを液滴として吐出することができる。
また、ノズルプレート100は、各吐出液貯留室210や吐出液供給室220の内壁面の下面を構成している。すなわち、ノズルプレート100と、基板200および封止シート300とにより、各吐出液貯留室210や吐出液供給室220を画成している。
このようなノズルプレート100を構成する材料としては、例えば、シリコーン材料、ステンレス鋼等が用いられる。このような材料は、耐薬品性に優れることから、長時間にわたってインクに曝されたとしても、ノズルプレート100が変質・劣化するのを確実に防止することができる。また、これらの材料は、加工性に優れるため、寸法精度の高いノズルプレート100が得られる。このため、信頼性の高いヘッド1が得られる。
また、ノズルプレート100の下面には、必要に応じて、撥液膜(図示せず)が設けられる。これにより、ノズル孔から吐出されるインク滴が意図しない方向に吐出されるのを防止することができる。
このような撥液膜の構成材料としては、例えば、撥液性を示す官能基を有するカップリング剤や、撥液性の樹脂材料等が挙げられる。
カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、有機リン酸系カップリング剤、シリルパーオキサイド系カップリング剤等を用いることができる。
撥液性を示す官能基としては、例えば、フルオロアルキル基、アルキル基、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基等が挙げられる。
一方、撥液性の樹脂材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、パーフルオロエチレン−プロペン共重合体(FEP)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)のようなフッ素系樹脂等が挙げられる。
このような基板200とノズルプレート100とを接合する接合膜15は、基板200とノズルプレート100とを接合または接着し得るものであれば、いかなる材料で構成されていてもよく、基板200とノズルプレート100の各構成材料によって適宜選択されるが、例えば、上述した接合膜3と同様のシリコーン材料を含有する接合膜、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤のような接着剤、半田、ろう材等が挙げられる。
また、接合膜15は必ずしも設けられていなくてもよく、省略してもよい。この場合、基板200とノズルプレート100との間は、融着(溶接)、または、シリコン直接接合、陽極接合のような固体接合等の直接接合法によって接合(接着)することができる。
一方、基板200の上面のうち、封止シート300と接合される領域には、上述した接合膜3と同様の接合膜25がパターニングして設けられており、基板200と封止シート300とが接合膜25を介して接合(接着)されている。すなわち、このような基板200と封止シート300とは、本発明の接合方法を用いて接合された接合体である。
また、封止シート300は、各吐出液貯留室210や吐出液供給室220の内壁面の上面を構成している。すなわち、封止シート300と、基板200およびノズルプレート100とにより、各吐出液貯留室210や吐出液供給室220を画成している。そして、封止シート300が基板200と確実に接合されていることにより、各吐出液貯留室210や吐出液供給室220の液密性を確保している。
封止シート300を構成する材料としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、アラミド樹脂のような樹脂材料が用いられる。
封止シート300の上面には、上述した接合膜3と同様の接合膜35を介して、振動板400が接合(接着)されている。すなわち、このような封止シート300と振動板400とは、本発明の接合方法を用いて接合された接合体である。
振動板400を構成する材料としては、例えば、シリコーン材料またはステンレス鋼等が用いられる。そして、振動板400が封止シート300と確実に接合されていることにより、圧電素子50に発生した歪みを、封止シート300の変位、すなわち各吐出液貯留室210の容積変化に確実に変換している。また、振動板400が上述したような材料で構成されたものである場合には、振動板400は、高速で弾性変形することが可能である。このため、圧電素子50が振動板400を変位させることによって、吐出液貯留室210の容積を高速に変化させることができる。その結果、インクを高精度に吐出することができる。
上述したように、封止シート300としては、一般的に、PPSやアラミド樹脂等の樹脂材料で構成されたものが用いられている。このような封止シート300は、吐出貯留室210内のインクと常に接液しており、ヘッド1の長期間の使用により、インクに侵食され、劣化しやすいものである。このように、封止シート300が劣化すると、封止シート300の可撓性が低下し、圧電素子50に発生した歪みを効率良く封止シート300の変位、すなわち吐出貯留室210の容積変化に変換することができなくなる。その結果、ヘッド1からの安定した液滴吐出が困難となる可能性がある。
一般的なヘッドでは、封止シートと基板および振動板との接合を、接着剤で接着(接合)したり、固体接合で融着させたりするため、封止シートのみを分離することができず、封止シートに接着(接合)し、未だ利用可能な部材も、封止シートともに廃棄する必要があった。これに対して、ヘッド1は、このような封止シート300が、基板200および振動板400と、本発明の接合方法を用いて接合されたものである。そのため、封止シート300が劣化した際には、使用済みの封止シート300のみを廃棄して、未使用の封止シート300に交換し、基板200および振動板400を廃棄することなく、再利用することができる。これにより、ヘッド1の構成部材の再利用率を向上させることができる。
また、ヘッド1は、封止シート300と振動板400とを積層してなる積層体により封止板を構成している。これにより、封止シート300による吐出液貯留室210の優れた液密性と、振動板400による優れた振動伝搬性とを両立させることができる。なお、この封止板は、1層であってもよく、3層以上の層が積層してなる積層体で構成されていてもよい。
また、3層以上の層が積層してなる積層体によって封止板が構成されている場合、積層体中の層のうち、少なくとも封止シート300と振動板400とが接合膜3と同様の接合膜35で接合されたものであればよい。これにより、積層体の寸法精度が高くなり、ひいては、ヘッド1の寸法精度を高めることができる。
振動板400の上面の一部(図7では、振動板400の上面の中央部付近)に、接合膜45aを介して、圧電素子(振動手段)50が接合(接着)されている。
圧電素子50は、圧電材料で構成された圧電体層51と、この圧電体層51に電圧を印加する電極膜52との積層体で構成されている。このような圧電素子50では、電極膜52を介して圧電体層51に電圧を印加することにより、圧電体層51に電圧に応じた歪みが発生する(逆圧電効果)。この歪みが振動板400および封止シート300に撓み(振動)をもたらし、吐出液貯留室210の容積を変化させる。このように、圧電素子50が振動板400と確実に接合されていることにより、圧電素子50に発生した歪みを、振動板400および封止シート300の変位、ひいては、各吐出液貯留室210の容積変化へと確実に変換することができる。
また、圧電体層51と電極膜52との積層方向は、特に限定されず、振動板400に対して平行な方向であっても、直交する方向であってもよい。なお、圧電体層51と電極膜52との積層方向が、振動板400に対して直交する方向である場合、このように配置された圧電素子50を特にMLP(Multi Layer Piezo)と言う。圧電素子50がMLPであれば、振動板400の変位量を大きくとることができるので、インクの吐出量の調整幅が大きいという利点がある。
圧電素子50のうち、接合膜45aに隣接する(接触する)面は、圧電素子50の配置方法によって異なるが、圧電体層が露出した面、電極膜が露出した面、または圧電体層と電極膜の双方が露出した面のいずれかである。
圧電素子50のうち、圧電体層51を構成する材料としては、例えば、チタン酸バリウム、ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶等が挙げられる。
一方、電極膜52を構成する材料としては、例えば、Fe、Ni、Co、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、Mo、またはこれらを含む合金等の各種金属材料が挙げられる。
このような圧電素子50と振動板400とを接合する接合膜45aは、振動板400と圧電素子50とを接合または接着し得るものであれば、いかなる材料で構成されていてもよく、振動板400や圧電素子50の各構成材料によって適宜選択されるが、例えば、上述した接合膜3と同様のシリコーン材料を含有する接合膜、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤のような接着剤、半田、ろう材等が挙げられる。
また、接合膜45aは必ずしも設けられていなくてもよく、省略してもよい。この場合、振動板400と圧電素子50との間は、融着(溶接)、または、シリコン直接接合、陽極接合のような固体接合等の直接接合法によって接合(接着)することができる。
ここで、前述した振動板400は、圧電素子50に対応する位置を取り囲むように環状に形成された凹部53を有している。すなわち、圧電素子50に対応する位置では、振動板400の一部が、この環状の凹部53を隔てて島状に孤立している。
なお、接合膜45aは、環状の凹部53の内側に設けられている。
また、圧電素子50の電極膜52は、図示しない駆動ICと電気的に接続されている。これにより、駆動素子50の動作を駆動ICによって制御することができる。
また、振動板400の上面の一部には、接合膜45bを介して、ケースヘッド600が接合(接着)されている。このように、ケースヘッド600が振動板400と確実に接合されていることにより、ノズルプレート100、基板200、封止シート300および振動板400の積層体で構成された、いわゆるキャビティ部分を補強し、キャビティ部分のよじれや反り等を確実に抑制することができる。
ケースヘッド600を構成する材料としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ザイロンのような変性ポリフェニレンエーテル樹脂(「ザイロン」は登録商標)またはステンレス鋼等が用いられる。これらの材料は、十分な剛性を備えていることから、ヘッド1を支持するケースヘッド600の構成材料として好適である。
このようなケースヘッド600と振動板400とを接合する接合膜45bは、振動板400とケースヘッド600とを接合または接着し得るものであれば、いかなる材料で構成されていてもよく、振動板400やケースヘッド600の各構成材料によって適宜選択されるが、例えば、上述した接合膜3と同様のシリコーン材料を含有する接合膜、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤のような接着剤、半田、ろう材等が挙げられる。
また、接合膜45bは必ずしも設けられていなくてもよく、省略してもよい。この場合、振動板400とケースヘッド600との間は、融着(溶接)、または、シリコン直接接合、陽極接合のような固体接合等の直接接合法によって接合(接着)することができる。
また、接合膜25、封止シート300、接合膜35、振動板400および接合膜45bは、吐出液供給室220に対応する位置に貫通孔230を有する。この貫通孔230により、ケースヘッド600に設けられた吐出液供給路610と吐出液供給室220とが連通している。なお、吐出液供給路610と吐出液供給室220とにより、複数の吐出液貯留室210にインクを供給する共通のインク室として機能するリザーバ700の一部を構成する。
このようなヘッド1では、図示しない外部吐出液供給手段からインクを取り込み、リザーバ700からノズル孔110に至るまで内部をインクで満たした後、駆動ICからの記録信号により、各吐出液貯留室210に対応するそれぞれの圧電素子50を動作させる。これにより、圧電素子50の逆圧電効果によって振動板400および封止シート300に撓み(振動)が生じる。その結果、例えば、各吐出液貯留室210内の容積が収縮すると、各吐出液貯留室210内の圧力が瞬間的に高まり、ノズル孔110からインクが液滴として押し出される(吐出される)。
このようにして、ヘッド1において、印刷したい位置の圧電素子50に、駆動ICを介して電圧を印加すること、すなわち、吐出信号を順次入力することにより、任意の文字が図形等を印刷することができる。
なお、ヘッド1は、前述したような構成のものに限らず、例えば、振動手段として圧電素子50をヒータで代替した構成(サーマル方式)のヘッドであってもよい。このようなヘッドは、ヒータでインクを加熱して沸騰させ、それによって吐出液貯留室内の圧力を高めることにより、インクをノズル孔110から液滴として吐出するよう構成されているものである。
さらに、振動手段のその他の例としては、静電アクチュエータ方式等が挙げられる。
なお、振動手段が圧電素子で構成されていることにより、振動板400および封止シート300に発生する撓みの程度を容易に制御することができる。これにより、インク滴の大きさを容易に制御することができる。
また、封止シート300と振動板400とが接着剤を介して接合された場合に比べ、これらの間の密着性および歪みの伝搬性が高くなる。このため、圧電素子50の歪みを各吐出液貯留室210の圧力変化に確実に変換することができる。すなわち、封止シート300および振動板400の変位のレスポンスを高めることができる。
また、接合膜35を用いて封止シート300と振動板400とを接合したことにより、従来、接着剤を用いて接合した場合に、接着剤がはみ出すといった問題が生じることがない。したがって、はみ出した接着剤がヘッド1内のインクの流路を塞いでしまうのを避けることができる。また、はみ出した接着剤を除去する手間も省略できるという利点もある。
以上、本発明の接合方法および接合体を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の接合方法では、必要に応じて、1以上の任意の目的の工程を追加してもよい。
また、前述した実施形態では、第1の基材は第2の基材および第3の基材よりも耐久性(耐候性、耐熱性等)が低いものとして説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1の接合体を構成する第1の基材と第2の基材とを分離して、第2の基材とは異なる性能、機能を有する第3の基材と、第1の基材とを前述した接合方法を用いて接合することにより、第1の基材とは、性能、機能が異なる第2の接合体を得ることができる。
本発明の接合方法の第1実施形態に供される第1の接合体の形成方法を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合方法の第1実施形態に供される第1の接合体の形成方法を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合体を適用して得られたインクジェット式記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)を示す分解斜視図である。 図7に示すインクジェット式記録ヘッドの平面図および断面図である。 図7に示すインクジェット式記録ヘッドを備えるインクジェットプリンタの実施形態を示す概略図である。
符号の説明
11……第1の接合体 12……第2の接合体 13……第3の接合体 21……第1の基材 22……第2の基材 23……第3の基材 24……第4の基材 215、225、235、245……表面 3……接合膜 30……液状被膜 31……液滴 32……表面 1……インクジェット式記録ヘッド 100……ノズルプレート 110……ノズル孔 15、25、35、45a、45b……接合膜 200……吐出液貯留室形成基板 210……吐出液貯留室 220……吐出液供給室 230……貫通孔 300……封止シート 400……振動板 50……圧電素子 51……圧電体層 52……電極膜 53……凹部 600……ケースヘッド 610……吐出液供給路 700……リザーバ 9……インクジェットプリンタ 92……装置本体 921……トレイ 922……排紙口 93……ヘッドユニット 931……インクカートリッジ 932……キャリッジ 94……印刷装置 941……キャリッジモータ 942……往復動機構 943……キャリッジガイド軸 944……タイミングベルト 95……給紙装置 951……給紙モータ 952……給紙ローラ 952a……従動ローラ 952b……駆動ローラ 96……制御部 97……操作パネル P……記録用紙

Claims (21)

  1. 第1の基材と第2の基材とがシリコーン材料を含有する接合膜を介して接合された第1の接合体の前記接合膜に剥離用エネルギーを付与して、前記シリコーン材料を構成する分子結合の一部を切断することにより、前記接合膜内にへき開を生じさせて、前記第2の基材から、前記接合膜が残存した前記第1の基材を剥離する工程と、
    前記第1の基材と、前記第2の基材とは異なる第3の基材とを、前記第1の基材に残存した前記接合膜を介して貼り合わせ、前記へき開により前記接合膜の表面付近に発現した接着性によって、前記第1の基材と前記第3の基材とが接合した第2の接合体を得る工程とを有することを特徴とする接合方法。
  2. 前記第2の接合体が有する前記接合膜は、前記剥離用エネルギーが付与されると、前記接合膜内に前記へき開を生じて、その表面付近に接着性が発現するものである請求項1に記載の接合方法。
  3. 前記第1の接合体は、前記第1の基材および前記第2の基材の少なくとも一方に、前記シリコーン材料を含有する液状材料を供給することにより、液状被膜を形成する工程と、
    前記液状被膜を乾燥して、前記第1の基材および前記第2の基材の少なくとも一方に前記接合膜を得る工程と、
    前記接合膜に接合用エネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に接着性を発現させ、当該接合膜を介して前記第1の基材と前記第2の基材とを接合する工程とを経ることにより得られたものである請求項1または2に記載の接合方法。
  4. 前記接合用エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行う請求項3に記載の接合方法。
  5. 前記剥離用エネルギーの大きさは、前記接合用エネルギーの大きさよりも大きい請求項3または4に記載の接合方法。
  6. 前記剥離用エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法および前記接合膜を加熱する方法の少なくとも一方の方法により行う請求項1ないし5のいずれかに記載の接合方法。
  7. 前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線である請求項6に記載の接合方法。
  8. 前記剥離用エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われる請求項6または7に記載の接合方法。
  9. 前記シリコーン材料は、その主骨格がポリジメチルシロキサンで構成される請求項1ないし8のいずれかに記載の接合方法。
  10. 前記シリコーン材料は、シラノール基を有する請求項1ないし9のいずれかに記載の接合方法。
  11. 前記接合膜の平均厚さは、10〜10000nmである請求項1ないし10のいずれかに記載の接合方法。
  12. 前記第1の基材の少なくとも前記接合膜と接合している部分は、シリコーン材料、金属材料またはガラス材料を主材料として構成されている請求項1ないし11のいずれかに記載の接合方法。
  13. 前記第1の基材の前記接合膜と接合している面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されている請求項1ないし12のいずれかに記載の接合方法。
  14. 前記第3の基材の前記接合膜と接合している面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されている請求項1ないし13のいずれかに記載の接合方法。
  15. 前記表面処理は、プラズマ処理または紫外線照射処理である請求項13または14に記載の接合方法。
  16. 前記第3の基材は、前記接合膜と同様の接合膜を有し、
    前記第1の基材と前記第3の基材とを、それぞれが有する前記接合膜を互いに密着するように貼り合わせることにより、前記第1の基材と前記第3の基材とが接合した第2の接合体を得る請求項1ないし15のいずれかに記載の接合方法。
  17. 前記第2の基材には、前記接合膜が残存しており、
    前記第2の基材と、前記第1の基材とは異なる第4の基材とを、前記第2の基材に残存した前記接合膜を介して貼り合わせ、前記へき開により前記接合膜の表面付近に発生した接着性によって、前記第2の基材と前記第4の基材とが接合した第3の接合体を得る工程をさらに有する請求項1ないし16のいずれかに記載の接合方法。
  18. 前記第2の基材は、前記第1の基材よりも耐久性が低いものである請求項1ないし17のいずれかに記載の接合方法。
  19. 前記第3の基材は、前記第2の基材と同種であり、未使用のものである請求項1ないし18のいずれかに記載の接合方法。
  20. 前記第1の基材と前記第2の基材とは、それぞれ、インクジェットヘッドに用いられる振動板と封止シートである請求項19に記載の接合方法。
  21. 請求項1ないし20のいずれかに記載の接合方法を用いて得られたことを特徴とする接合体。
JP2008147242A 2008-06-04 2008-06-04 接合方法および接合体 Pending JP2009292917A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008147242A JP2009292917A (ja) 2008-06-04 2008-06-04 接合方法および接合体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008147242A JP2009292917A (ja) 2008-06-04 2008-06-04 接合方法および接合体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2009292917A true JP2009292917A (ja) 2009-12-17

Family

ID=41541403

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008147242A Pending JP2009292917A (ja) 2008-06-04 2008-06-04 接合方法および接合体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2009292917A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1207423A1 (en) 2000-11-20 2002-05-22 Sumitomo Chemical Company, Limited Chemically amplifying type positive resist composition
JP2012091353A (ja) * 2010-10-25 2012-05-17 Fujifilm Corp 撥水膜の形成方法、撥水膜、インクジェットヘッドのノズルプレート
WO2016010031A1 (ja) * 2014-07-16 2016-01-21 日東電工株式会社 偏光フィルムおよびその製造方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1207423A1 (en) 2000-11-20 2002-05-22 Sumitomo Chemical Company, Limited Chemically amplifying type positive resist composition
JP2012091353A (ja) * 2010-10-25 2012-05-17 Fujifilm Corp 撥水膜の形成方法、撥水膜、インクジェットヘッドのノズルプレート
WO2016010031A1 (ja) * 2014-07-16 2016-01-21 日東電工株式会社 偏光フィルムおよびその製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4710897B2 (ja) 接合体の剥離方法
JP4697243B2 (ja) 接合体および接合方法
JP4865688B2 (ja) 液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置
JP4674619B2 (ja) ノズルプレート、ノズルプレートの製造方法、液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置
JP4497218B2 (ja) 接合方法および接合体
JP2010275423A (ja) 接合方法および接合体
JP4608629B2 (ja) ノズルプレート、ノズルプレートの製造方法、液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法および液滴吐出装置
JP2010095595A (ja) 接合方法および接合体
JP2011235533A (ja) 液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置
JP2010274523A (ja) 液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置
US8679283B2 (en) Bonding method and bonded body
JP2010003853A (ja) 接合膜付き基材、接合方法および接合体
JP2010106079A (ja) 接合方法および接合体
JP2010189518A (ja) 接合方法および接合体
JP2009292917A (ja) 接合方法および接合体
JP2010275421A (ja) 接合方法および接合体
JP2010275422A (ja) 接合方法および接合体
JP2010095594A (ja) 接合方法および接合体
JP2009143992A (ja) 接合方法および接合体
JP5434772B2 (ja) 接合方法
JP2009248368A (ja) 接合体および接合体の剥離方法
JP4947133B2 (ja) 液滴吐出ヘッドの製造方法
JP2010040877A (ja) 接合方法、接合体、液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置
JP5499514B2 (ja) 接合方法および接合体
JP2009285886A (ja) 接合膜付き基材および接合体