JP5499514B2 - 接合方法および接合体 - Google Patents
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Description
ところが、これらの方法では、I:紫外線照射に1分〜数十分を要する、II:紫外線照射を短時間で行った場合、2つの基材を圧着するのに数十分以上を要する、III:場合によっては、2つの基材を加圧しながら、紫外線を照射することを要する等の問題がある。
すなわち、これらの方法を用いた場合、2つの基材同士を接合するのに、長時間を要したり、その操作が煩雑になるという問題がある。
このように、接合面に対する紫外線の照射に代えてプラズマの接触を選択することにより、前記問題点I〜IIIを解消し得るものの、接合面にプラズマを接触させる方法として、互いに対向する電極間に基材を配置し、この電極間に電圧を印加した状態で、これらの間にガスを導入することによりプラズマ化させ、このプラズマ化されたガスを前記電極間に配置された基材に直接接触させる方法を用いた場合には、以下のような問題が生じることが判った。
そこで、本発明の目的は、選択した基材の種類および形状によらず、2つの基材同士を、短時間かつ低コストで接合し得る接合方法、および、かかる接合方法により接合された接合体を提供することにある。
本発明の接合方法は、接合膜を介して互いに接合すべき第1の基材と第2の基材とを用意する工程と、
前記第1の基材および前記第2の基材の少なくとも一方に、ポリエステル樹脂と脱水縮合反応させることにより得られたポリエステル変性シリコーン材料であるシリコーン材料を含有する液状材料を供給することにより液状被膜を形成する工程と、
前記液状被膜を乾燥して、前記第1の基材および前記第2の基材の少なくとも一方に、接合膜を得る工程と、
互いに対向する電極間に電圧を印加した状態で、これら電極間にガスを導入してプラズマ化させた後、このプラズマ化されたガスを前記接合膜に供給することにより、前記プラズマを前記接合膜に接触させて、前記接合膜の表面付近に接着性を発現させる工程と、
当該接着性が発現した接合膜を介して前記第1の基材と前記第2の基材とを接触させ、前記第1の基材と前記第2の基材とが前記接合膜を介して接合された接合体を得る工程とを有することを特徴とする。
これにより、選択した基材の種類および形状によらず、2つの基材同士を、短時間かつ低コストで接合することができる。
また、本発明の接合方法では、前記シリコーン材料は、ポリエステル樹脂と脱水縮合反応させることにより得られたポリエステル変性シリコーン材料であることにより、接合膜をより膜強度に優れたものとすることができる。
本発明によれば、かかる構成の接合面で構成される第1の基材と第2の基材であっても、これら基材同士を、接合膜を介して確実に接合することができる。
これらの基材は、電荷を帯びることに起因して変質・劣化してしまうものであるが、本発明によれば、荷電粒子を接合膜に接触させることなく接合膜に接着性を発現させることができるので、基材が電荷を帯びることに起因する基材の変質・劣化を確実に防止することができる。
これにより、接合膜の表面における異物による汚染を確実に防止することができるので、接合膜の表面により均一に接着性を発現させることができる。
本発明の接合方法では、前記プラズマの接触を、大気圧下で行うことが好ましい。
大気圧下で行われるプラズマの接触、すなわち、大気圧プラズマ処理によれば、接合膜の周囲が減圧状態とならないので、プラズマの作用により、例えば、接合膜を構成するシリコーン材料が含んでいるポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基を切断、除去して、接合膜の表面付近に接着性を発現させる際に、この切断が不要に進行するのを防止することができる。
これにより、シリコーン材料の分枝鎖同士が互いに絡まり合うようにして接合膜が形成されることから、得られる接合膜は特に膜強度に優れたものとなる。
本発明の接合方法では、前記シリコーン材料は、シラノール基を複数個有することが好ましい。
これにより、シリコーン材料が有する水酸基とポリエステル樹脂が有する水酸基とを確実に結合させることができ、シリコーン材料とポリエステル樹脂とが脱水縮合反応することにより得られるポリエステル変性シリコーン材料を確実に合成することができる。
さらに、液状被膜を乾燥させて接合膜を得る際に、隣接するシリコーン材料が有するシラノール基に含まれる水酸基同士が結合することとなり、得られる接合膜の膜強度が優れたものとなる。
これにより、第1の基材と第2の基材とを接合した接合体の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。
本発明の接合方法では、前記第1の基材および前記第2の基材の少なくとも前記接合膜と接触する部分は、シリコン材料、金属材料またはガラス材料を主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、表面処理を施さなくても、十分な接合強度が得られる。
これにより、基材の接合面が清浄化および活性化され、接合面に対して接合膜が化学的に作用し易くなる。その結果、基材の接合面と接合膜との接合強度を高めることができる。
これにより、接合膜を形成するために、基材の表面を特に最適化することができる。
本発明の接合体は、本発明の接合方法により、前記第1の基材と前記第2の基材とを、前記接合膜を介して接合してなることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い接合体が得られる。
<接合方法>
本発明の接合方法は、[1]接合膜3を介して互いに接合すべき第1の基材21と第2の基材22とを用意する工程と、[2]第1の基材21および第2の基材22の少なくとも一方に、シリコーン材料を含有する液状材料を供給することにより液状被膜30を形成する工程と、[3]液状被膜30を乾燥して、第1の基材21および第2の基材22の少なくとも一方に、接合膜3を得る工程と、[4]互いに対向する電極間に電圧を印加した状態で、これら電極間にガスを導入してプラズマ化させた後、このプラズマ化されたガスを接合膜3に供給することにより、接合膜3にプラズマを接触させて、接合膜3の表面付近に接着性を発現させる工程と、[5]接着性が発現した接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを接触させ、第1の基材21と第2の基材22とが接合膜3を介して接合された接合体1を得る工程とを有する。
<<第1実施形態>>
図1および図2は、本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図1および図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
[1]まず、図1(a)に示すように、第1の基材21と第2の基材22とを用意する。なお、図1(a)では、第2の基材22を省略している。
このような第1の基材21および第2の基材22の各構成材料は、それぞれ特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリブテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂系材料、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、V、Mo、Nb、Zr、Pr、Nd、Smのような金属、またはこれらの金属を含む合金、炭素鋼、ステンレス鋼、インジウム錫酸化物(ITO)、ガリウムヒ素のような金属系材料、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンのようなシリコン系材料、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス系材料、アルミナ、ジルコニア、MgAl2O4、フェライト、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス系材料、グラファイトのような炭素系材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
第1の基材21および第2の基材22は、それぞれ、その表面に、Niめっきのようなめっき処理、クロメート処理のような不働態化処理、または窒化処理等を施したものであってもよい。
なお、後に詳述するが、第1の基材21の熱膨張率と第2の基材22の熱膨張率が互いに異なる場合でも、後述する工程において、第1の基材21と第2の基材22とを接合する際の条件を最適化することにより、これらを高い寸法精度で強固に接合することができる。
また、2つの基材21、22のうち、少なくとも一方の構成材料は、樹脂材料であるのが好ましい。樹脂材料は、その柔軟性により、2つの基材21、22を接合した際に、その接合界面に発生する応力(例えば、熱膨張に伴う応力等)を緩和することができる。このため、接合界面が破壊し難くなり、結果的に、2つの基材21、22が高い接合強度で接合された接合体1を得ることができる。
また、各基材21、22の形状は、それぞれ、接合膜3を支持する面を有するような形状であればよく、本実施形態のように平板状(層状)をなす場合の他、例えば、塊状(ブロック状)、棒状等とされる。
なお、表面処理を施す第1の基材21が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、第1の基材21の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜3との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第1の基材21の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
なお、この場合、第1の基材21の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合膜3を形成する接合面23付近が上記のような材料で構成されていればよい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、接合膜3との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層上に接合膜3を成膜することにより、最終的に、信頼性の高い接合体1を得ることができる。
一方、第1の基材21と同様、第2の基材22の接合面24(後述する工程において、接合膜3と密着する面)にも、必要に応じて、あらかじめ接合膜3との密着性を高める表面処理を施してもよい。これにより、接合面24を清浄化および活性化する。その結果、後述する工程において、接合面24と接合膜3とを密着させ、これらを接合したとき、接合面24と接合膜3との接合強度を高めることができる。
また、第1の基材21の場合と同様に、第2の基材22の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜3との密着性が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第2の基材22の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
なお、この場合、第2の基材22の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合面24付近が上記のような材料で構成されていればよい。
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような各種官能基、各種ラジカル、開環分子または、2重結合、3重結合のような不飽和結合を有する脱離性中間体分子、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基や物質、または、これらの基が脱離することにより、終端化されていない原子が有する未結合手(ダングリングボンド)が挙げられる。
また、接合面24が有する官能基は、特に水酸基が好ましい。これにより、接合面24は、接合膜3に対して特に容易かつ強固に接合可能なものとなる。特に接合膜3の表面に水酸基が露出している場合には、水酸基同士間に生じる水素結合に基づいて、接合面24と接合膜3との間を短時間で強固に接合することができる。
このうち、第2の基材22の接合面24には、水酸基が存在しているのが好ましい。このような接合面24には、水酸基が露出した接合膜3との間に、水素結合に基づく大きな引力が生じる。これにより、最終的に、第1の基材21と第2の基材22とを特に強固に接合することができる。
この表面層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、前記第1の基材21の場合と同様に、接合膜3との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような表面層を介して、第2の基材22と接合膜3とを接合することにより、最終的に、信頼性の高い接合体1を得ることができる。
かかる表面層の構成材料には、例えば、前記第1の基材21の接合面23に形成する中間層の構成材料と同様の材料を用いることができる。
なお、上記のような表面処理および表面層の形成は、必要に応じて行えばよく、特に高い接合強度を必要としない場合には、省略することができる。
ここで、接合面23に液状材料35を付与する方法としては、例えば、浸漬法、液滴吐出法(例えば、インクジェット法)、スピンコート法、ドクターブレード法、バーコート法、刷毛塗り等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここで、「シリコーン材料」とは、ポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物であり、通常、主骨格(主鎖)部分が主としてオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる化合物のことを言い、主鎖の途中から枝分かれする分枝状の構造を有するものであってもよく、主鎖が環状をなす環状体であってもよく、主鎖の末端同士が連結しない直鎖状のものであってもよい。
このようなシリコーン材料において、ポリオルガノシロキサン骨格は、分枝状をなすもの、すなわち上記一般式(1)で表わされる構造単位、上記一般式(2)で表わされる構造単位および上記一般式(3)で表わされる構造単位で構成されているのが好ましい。この分枝状をなすポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物(以下、「分枝状化合物」と略すこともある。)は、主骨格(主鎖)部分が主としてオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる化合物であり、主鎖の途中でオルガノシロキサン単位の繰り返しが分枝するとともに、主鎖の末端同士が連結しないものである。
なお、上記一般式(1)〜上記一般式(3)中、基R(置換または無置換の炭化水素基)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。さらに、これらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部が、I)フッ素原子、塩素原子、臭素原子のようなハロゲン原子、II)グリシドキシ基のようなエポキシ基III)メタクリル基のような(メタ)アクリロイル基、IV)カルボキシル基、スルフォニル基のようなアニオン性基等で置換された基等が挙げられる。
また、分枝状化合物は、その分子量が、1×104〜1×106程度のものであるのが好ましく、1×105〜1×106程度のものであるのがより好ましい。分子量をかかる範囲内に設定することにより、液状材料35の粘度を上述したような範囲内に比較的容易に設定することができる。
[4]において、接合膜3にプラズマを接触させることにより、メチル基が容易に切断されて、その結果として、接合膜3に確実に接着性を発現させることができるため、分枝状化合物(シリコーン材料)として好適に用いられる。
以上のことを考慮すると、分枝状化合物としては、例えば、下記一般式(4)で表わされる化合物が好適に用いられる。
[5]において、接合膜3を介して第1の基材21に第2の基材22を接合して接合体1を得る際に、例えば、第1の基材21と第2の基材22との各構成材料が互いに異なるものを用いる場合であったとしても、各基材21、22間に生じる熱膨張に伴う応力を確実に緩和することができる。これにより、最終的に得られる接合体1において、剥離が生じるのを確実に防止することができる。
ここで、本明細書中において、「ポリエステル変性シリコーン材料」とは、シリコーン材料と、ポリエステル樹脂とを脱水縮合反応させることにより得られたものである。
また、「ポリエステル樹脂」とは、飽和多塩基酸と多価アルコールとのエステル化反応により得られるものを言い、1分子中に少なくとも2つの水酸基を備えるものが好適に用いられる。
飽和多塩基酸としては、特に限定されないが、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸およびアジピン酸等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、飽和多塩基酸と多価アルコールとをエステル化反応させる際の、それぞれの含有量は、飽和多塩基酸が有するカルボキシル基よりも多価アルコールが有する水酸基よりも多くなるように設定する。これにより、合成されるポリエステル樹脂は、その1分子中において、少なくとも2つの水酸基を備えるものとなる。
以上のことを考慮すると、ポリエステル樹脂としては、例えば、下記一般式(5)で表わされる化合物が好適に用いられる。
液状被膜30を乾燥させる際の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜200℃程度であるのがより好ましい。
かかる条件で液状被膜30を乾燥させることにより、次工程[4]において、プラズマに接触させることにより接着性が好適に発現する接合膜3を確実に形成することができる。また、シリコーン材料として前記工程[2]で説明したようなシラノール基を有するもの、または、ポリエステル変性シリコーン材料を用いた場合には、これらの材料が有するシラノール基同士を、さらには、これらの材料が有するシラノール基と第1の基材21が有する水酸基とを、確実に結合させることができるため、形成される接合膜3を膜強度に優れ、かつ第1の基材21に対して強固に結合したものとすることができる。
以上のように、接合膜3を形成する際の条件を適宜設定することにより、形成される接合膜3の膜強度等を所望のものとすることができる。
さらに、接合膜3の平均厚さをかかる範囲とすることにより、接合膜3がある程度弾性に富むものとなることから、後工程[5]において、第1の基材21と第2の基材22とを接合する際に、接合膜3と接触させる第2の基材22の接合面24にパーティクル等が付着していても、このパーティクルを接合膜3で取り囲むようにして接合膜3と接合面24とが接合することとなる。そのため、このパーティクルが存在することによって、接合膜3と接合面24との界面における接合強度が低下したり、この界面において剥離が生じたりするのを的確に抑制または防止することができる。
また、本発明では、液状材料35を供給して接合膜3を形成する構成となっていることから、たとえ第1の基材21の接合面23に凹凸が存在している場合であっても、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状を吸収するようにして接合膜3を形成ことができる。その結果、接合膜3の表面32がほぼ平坦面を構成することとなる。
接合膜3にプラズマを接触させると、この接合膜3では、特に表面32付近の分子結合の一部が選択的に切断されることに起因して、表面32が活性化されて表面32付近に第2の基材22に対する接着性が発現する。
なお、本明細書中において、表面32が「活性化された」状態とは、上述のように接合膜3の表面32の分子結合の一部、具体的には、例えば、ポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基が切断されて、接合膜3を構成する原子が終端化されないで、未結合手(または、「ダングリングボンド」)が生じた状態の他、この未結合手を持っていた原子が、水酸基(OH基)によって終端化された状態、さらに、これらの状態が混在した状態を含めて、接合膜3が「活性化された」状態と言うこととする。
A:接合膜3の表面32の活性化に長時間(例えば、1分〜数十分)を要する。また、紫外線照射を短時間にした場合、第1の基材21と第2の基材22とを接合する工程において、その接合に長時間(数十分以上)を要する。すなわち、接合体1を得るのに長時間を要する。
B:また、紫外線を用いた場合、この紫外線は、接合膜3を厚さ方向に透過し易い。このため、基材(本実施形態では、第1の基材21)の構成材料(例えば、樹脂材料)等によっては、基材の接合膜3との界面(接触面)において劣化が生じ、接合膜3が基材から剥離し易くなる。
さらに、紫外線は、接合膜3の厚さ方向に透過する際に、接合膜3全体に作用し、その全体において、例えば、ポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基が切断、除去される。すなわち、接合膜3中における有機成分の量が極端に低下し、その無機化が進行する。このため、有機成分の存在に起因する接合膜3の柔軟性が全体として低下し、得られる接合体1では、接合膜3の層内剥離が生じ易くなる。
C:さらに、接合された接合体1を、第1の基材21を第2の基材22から剥離して、各基材21、22をそれぞれ分別してリサイクルや再利用に用いる場合、この操作は、接合体1に対して、剥離用エネルギーを付与することにより各基材21、22同士を剥離し得る。このとき、例えば、接合膜3中に残存するメチル基(有機成分)がポリジメチルシロキサン骨格から切断、除去され、切断された有機成分がガスとなる。このガス(ガス状の有機成分)は、接合膜3にへき乖を生じさせ、接合膜3が分割される。
これに対して、本発明では、接合膜3の表面32の活性化にプラズマが用いられる。プラズマを用いることにより、接合膜3の表面32付近において、選択的に、この接合膜3を構成する材料の分子結合の一部、例えば、ポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基が切断される。
また、プラズマは、接合膜3の表面32に選択的に作用し、その内部にまで影響を及ぼし難い。このため、分子結合の切断は、接合膜3の表面32付近で選択的に生じる。すなわち、接合膜3は、その表面32付近で選択的に活性化される。しかがって、紫外線を用いて接合膜3を活性化させる場合の不都合(前述したようなBおよびCの不都合)が生じ難い。
また、紫外線照射により接合膜3を活性化させる場合、照射する紫外線の強度に依存する接合膜3の活性化の程度の変化が極めて大きい。このため、第1の基材21と第2の基材22との接合に適した程度に接合膜3を活性化させるのには、紫外線照射の厳密な条件管理が必要である。また、厳密な管理をしない場合、得られる接合体1間における、第1の基材21と第2の基材22との接合強度のバラつきが生じる。
これに対して、プラズマにより接合膜3を活性化させる場合、前述したように、接合膜3の表面付近が選択的に活性化されるため、接合膜3の収縮はないか極めて少ない。したがって、接合膜3を比較的薄く形成した場合であっても、第1の基材21と第2の基材22とを高い接合強度で接合することができる。また、この場合、高い寸法精度の接合体1を得ることができるとともに、接合体1の薄型化を図ることも可能である。
以上のように、プラズマにより接合膜3を活性化させる場合には、紫外線により接合膜3を活性化させる場合に比べて、多くのメリットがある。
図3は、大気圧プラズマ装置の構成を示す概略図である。なお、以下の説明では、図3中の上側を「上」、下側を「下」という。
図3に示すプラズマ処理装置501は、第1の基材21に対して相対的に移動可能な互いに対向する1対の電極(第1の電極502および第2の電極503)と、ガスの流路を画成する誘電体部504と、第1の基材21の表面32に向けてプラズマを噴出するプラズマ噴出部505と、処理ガスを1対の電極間に導入する処理ガス導入口506と、1対の電極間に電圧を印加する電源572を備えた電源回路507と、プラズマ生成のための処理ガスを供給するガス供給手段508と、プラズマの生成により発生した異物540を捕捉する異物捕捉部509とを備えている。
第1の電極502は、ワークに対して直交する方向に沿って配置され、第2の電極503と対向配置されている。そして、第1の電極502は、電圧を印加するための電極であり、電気的接続をとるために導線571を介して電源572に接続されている。
第1の電極502の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、銅、アルミニウム、鉄、銀等の金属単体、ステンレス鋼、真鍮、アルミニウム合金等の各種合金、金属間化合物、各種炭素材料等が挙げられる。
なお、第1の電極502の形状は、本実施形態では、図3に示すように、平板状をなすが、特に限定されず、例えば、円筒状等の形状をなしていてもよい。
第2の電極503の構成材料としては、第1の電極502と同様のものが挙げられる。
また、第2の電極503の形状は、本実施形態では、平板状をなすが、第1の電極502と同様に、特に限定されない。
このように、第1の電極502と第2の電極503との対向面に、それぞれ誘電体部504が位置することにより、第1の電極502と第2の電極503との間において、各電極の構成材料である金属等が露出しないため、電極502、503間に電界を均一に発生させることができる。また、インピーダンスの増大を防止することができ、比較的低電圧で所望の放電を生じさせ、プラズマを確実に発生させることができる。さらに、電圧印加時における絶縁破壊を防止して、アーク放電が生じるのを好適に防止し、グローライクな安定した放電を得ることもできる。
このような誘電体部504の構成材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の各種プラスチック、石英ガラス等の各種ガラス、無機酸化物等が挙げられる。前記無機酸化物としては、例えば、Al2O3(アルミナ)、SiO2、ZrO2、TiO2、ZnO等の金属酸化物、窒化シリコン、窒化アルミニウムなどの窒化物、炭化ケイ素などの炭化物、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ジルコニウムなどのリン酸塩、BaTiO3(チタン酸バリウム)等の複合酸化物等の誘電体材料等が挙げられる。これらのうち、金属酸化物が好ましく、アルミナがより好ましい。このような材料を用いることにより、電界におけるアーク放電の発生をより確実に防止することができる。
この異物捕捉部509は、プラズマ噴出部505から噴出されたプラズマの通過を許容するとともに、プラズマ発生領域530において発生した異物(パーティクル)540を捕捉するフィルタとしての機能を有する。
この異物540は、異物捕捉部509の配置を省略すると、処理ガスとともにプラズマ噴出部505まで流れ、プラズマ噴出部505から処理ガスとともに第1の基材21に設けられた接合膜3の表面32に向けて噴出される。異物540が表面32に到達すると、異物540は表面32に付着する。その結果、接合膜3の表面32が異物540によって汚染される。これに対して、プラズマ処理装置501では、異物捕捉部509を備えており、この異物捕捉部509をプラズマ化されたガスを通過させた後に接合膜3に供給する構成となっていることから、プラズマ噴出部505から処理ガスとともに噴出される異物540を選択的に異物捕捉部509で捕捉することができるため、表面32の異物540による汚染を確実に防止することができる。これにより、接合膜3の表面32により均一に接着性を発現させることができる。
絶縁性材料層591は、多孔質体で構成され、各孔は、層中において隣接するもの同士が互いに連通し、三次元的に連通する三次元連通孔を構成する。
絶縁性材料層591を構成する絶縁性材料としては、特に限定されないが、金属酸化物を用いることが好ましく、アルミナを用いることがより好ましい。金属酸化物、特にアルミナを用いることにより、誘電率が特に高いので、電界におけるアーク放電の発生をより確実に防止することができる。
さらに、絶縁性材料層591の厚さT1は、100mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましい。
また、支持部材595が狭持されていない絶縁性材料層591の下面には、網状部材596が設けられている。これにより、絶縁性材料層591の落下を確実に防止することができる。
これら支持部材595と網状部材596とを構成する材料は、アーク放電や異物540が発生しないように絶縁性材料で構成されている。具体的には、絶縁性材料層591の材料と同様の材料が挙げられる。
接合膜3にプラズマを接触させる際には、高周波電源572の作動により第1の電極502と第2の電極503との間に電圧が印加される。このとき、その第1の電極502と第2の電極503との間には、電界が発生し、この電界内にガスが供給されると、放電が生じて、プラズマが発生する。
また、高周波電源572の周波数は、特に限定されないが、1〜1000KHzであるのが好ましく、50〜200KHzであるのがより好ましい。
処理ガスの種類としては、例えば、ヘリウムガス、アルゴンガスのような希ガス、酸素ガス等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、処理ガスには、希ガスを主成分とするガスを用いるのが好ましく、特にヘリウムガスを主成分とするガスを用いるのが好ましい。
また、このガス(処理ガス)中のヘリウムガスの含有量は、85vol%以上が好ましく、90vol%以上(100%も含む)がより好ましい。これにより、前述した効果をさらに顕著に発揮させることができる。
また、接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを接合しているため、各基材21、22の構成材料に制約がないという利点もある。
以上のことから、本発明によれば、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料の選択の幅をそれぞれ広げることができる。
具体的には、第1の基材21と第2の基材22との熱膨張率の差にもよるが、第1の基材21および第2の基材22の温度が25〜50℃程度である状態下で、第1の基材21と第2の基材22とを貼り合わせるのが好ましく、25〜40℃程度である状態下で貼り合わせるのがより好ましい。このような温度範囲であれば、第1の基材21と第2の基材22との熱膨張率の差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、接合体1における反りや剥離等の発生を確実に抑制または防止することができる。
ここで、本工程において、第1の基材21と第2の基材22とを接合するメカニズムについて説明する。
また、第1の基材21の接合膜3の表面や内部、および、第2の基材22の接合面24や内部に、それぞれ終端化されていない結合手すなわち未結合手(ダングリングボンド)が存在している場合、第1の基材21と第2の基材22とを貼り合わせた時、これらの未結合手同士が再結合する。この再結合は、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、接合界面にネットワーク状の結合が形成されることとなる。これにより、接合膜3と第2の基材22とが特に強固に接合される。
以上のようにして、図4(f)に示す接合体(本発明の接合体)1を得ることができる。
なお、接合体1を得る際、または、接合体1を得た後に、この接合体1に対して、必要に応じ、以下の2つの工程([6A]および[6B])のうちの少なくとも1つの工程(接合体1の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、接合体1の接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
これにより、第1の基材21の表面および第2の基材22の表面に、それぞれ接合膜3の表面がより近接し、接合体1における接合強度をより高めることができる。
また、接合体1を加圧することにより、接合体1中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、接合体1における接合強度をさらに高めることができる。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、接合体1を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
これにより、接合体1における接合強度をより高めることができる。
このとき、接合体1を加熱する際の温度は、室温より高く、接合体1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜200℃程度とされ、より好ましくは50〜200℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、接合体1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
また、前記工程[6A]および[6B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、図2(g)に示すように、接合体1を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、接合体1の接合強度を特に高めることができる。
以上のような工程を行うことにより、接合体1における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
次に、本発明の接合方法の第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、接合方法の第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態にかかる接合方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
すなわち、本実施形態の接合方法は、第1の基材21上および第2の基材22上の双方に接合膜3を形成して、これら接合膜3同士を一体化させることにより、第1の基材21と第2の基材22とを接合する接合方法である。
[2’]次に、前記工程[2]および前記工程[3]で説明したのと同様にして、第1の基材21の接合面23に接合膜3を形成するとともに、第2の基材22の接合面24にも接合膜3を形成する。
[3’]次に、第1の基材21に形成された接合膜3と、第2の基材22に形成された接合膜3の双方に、前記工程[4]で説明したのと同様の方法を用いて、プラズマを接触させることにより、各接合膜3の表面32付近に接着性を発現させる。
[4’]次に、図4(a)に示すように、各基材21、22が備える接着性が発現した接合膜3同士を、それぞれが密着するように、各基材21、22同士を貼り合わせる。これにより、双方の基材21、22に形成された接合膜3により、基材21、22同士が接合され、図4(b)に示すような接合体1が得られる。
以上のようにして接合体1を得ることができる。
例えば、図4(c)に示すように、接合体1を加圧しつつ、加熱することにより、接合体1の各基材21、22同士がより近接する。これにより、各接合膜3の界面における水酸基の脱水縮合や未結合手同士の再結合が促進される。その結果、接合膜3の一体化がより進行し、最終的には、ほぼ完全に一体化される。
次に、本発明の接合方法の第3実施形態について説明する。
図5は、本発明の接合方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、接合方法の第3実施形態について説明するが、前記第1実施形態にかかる接合方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
すなわち、本実施形態の接合方法は、凹凸面を有する構造体である第1の基材21および第2の基材22同士を、これら凹凸面において接合膜3を介して接合して一体化させることにより、接合体1を得る接合方法である。
本実施形態では、図5(a)に示すように、第1の基材21の接合面23が凸面で構成され、第2の基材22の接合面24が凹面で構成され、この凸面は、第1の基材21の双方の縁部から中央部に向かって厚さが漸増する形状をなしており、また、凹面は、第2の基材22の双方の縁部から中央部に向かって厚さが漸減する形状をなしている。そして、接合面(凸面)23および接合面(凹面)24同士を対向するように重ね合わせたとき、接合面23および接合面24は、互いに対応する形状をなしている。
なお、本実施形態の第1の基材21および第2の基材22は、前記工程[1]で説明した第1の基材21および第2の基材22と、上記のようにその形状だけが異なり、その構成材料等については同様である。
[3”]次に、第1の基材21の接合面23に形成された接合膜3に、前記工程[4]で説明したのと同様の方法を用いて、プラズマを接触させることにより、接合膜3の表面32付近に接着性を発現させる。
以上のようにして接合体1を得ることができる。
例えば、図5(c)に示すように、接合体1を加圧しつつ、加熱することにより、接合体1の各基材21、22同士がより近接する。これにより、接合体1中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができるので、接合体1における接合強度をさらに高めることができる。
なお、前記第1〜第3実施形態では、接合膜3を第1の基材21および第2の基材22の一方または双方の全面に形成する場合について説明したが、本発明では、接合膜3は、第1の基材21および第2の基材22の一方または双方の表面の一部の領域に選択的に形成するようにしてもよい。
かかる観点から、容易に分離可能な接合体1を作製する場合には、接合体1の接合強度は、人の手で容易に分離可能な程度の大きさであるのが好ましい。これにより、接合体1を分離する際、装置等を用いることなく、簡単に行うことができる。
さらに、この場合、接合膜3を形成しない領域(非膜形成領域)42では、第1の基材21と第2の基材22との間に、接合膜3の厚さに相当する距離(高さ)の空間が形成される。この空間を活かすため、接合膜3を形成する領域(膜形成領域)の形状を適宜調整することにより、第1の基材21と第2の基材22との間に、閉空間や流路を形成したりすることができる。
かかる接合膜3は、有機溶剤を含む組成物を収納する製品を構成する部材同士を接合する場合に好適に使用することができる。このような製品としては、以下に説明するようなインクジェット式記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)等が挙げられる。
また、架橋処理には、例えば、加熱処理、触媒導入処理等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
次に、本発明の接合体をインクジェット式記録ヘッドに適用した場合の実施形態について説明する。
図6は、本発明の接合体を適用して得られたインクジェット式記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)を示す分解斜視図、図7は、図6に示すインクジェット式記録ヘッドの主要部の構成を示す断面図、図8は、図6に示すインクジェット式記録ヘッドを備えるインクジェットプリンタの実施形態を示す概略図である。なお、図6は、通常使用される状態とは、上下逆に示されている。
図8に示すインクジェットプリンタ9は、装置本体92を備えており、上部後方に記録用紙Pを設置するトレイ921と、下部前方に記録用紙Pを排出する排紙口922と、上部面に操作パネル97とが設けられている。
また、装置本体92の内部には、主に、往復動するヘッドユニット93を備える印刷装置(印刷手段)94と、記録用紙Pを1枚ずつ印刷装置94に送り込む給紙装置(給紙手段)95と、印刷装置94および給紙装置95を制御する制御部(制御手段)96とを有している。
ヘッドユニット93は、その下部に、多数のノズル孔111を備えるインクジェット式記録ヘッド10(以下、単に「ヘッド10」と言う。)と、ヘッド10にインクを供給するインクカートリッジ931と、ヘッド10およびインクカートリッジ931を搭載したキャリッジ932とを有している。
往復動機構942は、その両端をフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸944と、キャリッジガイド軸944と平行に延在するタイミングベルト943とを有している。
キャリッジモータ941の作動により、プーリを介してタイミングベルト943を正逆走行させると、キャリッジガイド軸944に案内されて、ヘッドユニット93が往復動する。そして、この往復動の際に、ヘッド10から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
給紙ローラ952は、記録用紙Pの送り経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ952aと駆動ローラ952bとで構成され、駆動ローラ952bは給紙モータ951に連結されている。これにより、給紙ローラ952は、トレイ921に設置した多数枚の記録用紙Pを、印刷装置94に向かって1枚ずつ送り込めるようになっている。なお、トレイ921に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成であってもよい。
制御部96は、いずれも図示しないが、主に、各部を制御する制御プログラム等を記憶するメモリ、圧電素子(振動源)14を駆動して、インクの吐出タイミングを制御する圧電素子駆動回路、印刷装置94(キャリッジモータ941)を駆動する駆動回路、給紙装置95(給紙モータ951)を駆動する駆動回路、および、ホストコンピュータからの印刷データを入手する通信回路と、これらに電気的に接続され、各部での各種制御を行うCPUとを備えている。
制御部96は、通信回路を介して、印刷データを入手してメモリに格納する。CPUは、この印刷データを処理して、この処理データおよび各種センサからの入力データに基づいて、各駆動回路に駆動信号を出力する。この駆動信号により圧電素子14、印刷装置94および給紙装置95は、それぞれ作動する。これにより、記録用紙Pに印刷が行われる。
ヘッド10は、ノズル板11と、インク室基板12と、振動板13と、振動板13に接合された圧電素子(振動源)14とを備えるヘッド本体17と、このヘッド本体17を収納する基体16とを有している。なお、このヘッド10は、オンデマンド形のピエゾジェット式ヘッドを構成する。
このノズル板11には、インク滴を吐出するための多数のノズル孔111が形成されている。これらのノズル孔111間のピッチは、印刷精度に応じて適宜設定される。
このインク室基板12は、ノズル板11、側壁(隔壁)122および後述する振動板13により、複数のインク室(キャビティ、圧力室)121と、インクカートリッジ931から供給されるインクを貯留するリザーバ室123と、リザーバ室123から各インク室121に、それぞれインクを供給する供給口124とが区画形成されている。
インク室基板12を得るための母材としては、例えば、シリコン単結晶基板、各種ガラス基板、各種樹脂基板等を用いることができる。これらの基板は、いずれも汎用的な基板であるので、これらの基板を用いることにより、ヘッド10の製造コストを低減することができる。
また、振動板13の所定位置には、振動板13の厚さ方向に貫通して連通孔131が形成されている。この連通孔131を介して、前述したインクカートリッジ931からリザーバ室123に、インクが供給可能となっている。
各圧電素子14は、それぞれ、振動源として機能し、振動板13は、圧電素子14の振動により振動し、インク室121の内部圧力を瞬間的に高めるよう機能する。
以上のような、ノズル板(ノズルプレート)11とインク室基板12との接合、インク室基板12と振動板13との接合、およびノズル板11と基体16との接合のうち、少なくとも1箇所を接合する際に本発明の接合方法が用いられる。
このようなヘッド10は、上記の接合界面に前述したような接合膜3が介挿されて接合されている。このため、接合界面の接合強度および耐薬品性が高くなっており、これにより、各インク室121に貯留されたインクに対する耐久性および液密性が高くなっている。その結果、ヘッド10は、信頼性の高いものとなる。
また、ヘッド10の一部に本発明の接合体が適用されていると、寸法精度の高いヘッド10を構築することができる。このため、ヘッド10から吐出されたインク滴の吐出方向や、ヘッド10と記録用紙Pとの離間距離を高度に制御することができ、インクジェットプリンタ9による印字結果の品位を高めることができる。
このようなヘッド10は、圧電素子駆動回路を介して所定の吐出信号が入力されていない状態、すなわち、圧電素子14の下部電極142と上部電極141との間に電圧が印加されていない状態では、圧電体層143に変形が生じない。このため、振動板13にも変形が生じず、インク室121には容積変化が生じない。したがって、ノズル孔111からインク滴は吐出されない。
なお、ヘッド10は、圧電素子14の代わりに電気熱変換素子を有していてもよい。つまり、ヘッド10は、電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用してインクを吐出するバブルジェット方式(「バブルジェット」は登録商標))のものであってもよい。
以上、本発明の接合方法および接合体を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、本発明の接合体は、液滴吐出ヘッド以外のものに適用可能であることは言うまでもない。具体的には、本発明の接合体は、例えば、光学装置が備えるレンズ、半導体装置、マイクロリアクタ等に適用することができる。
(実施例1)
まず、第1の基材および第2の基材として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの単結晶シリコン基板上に厚さ10nmのSiO2膜が形成されているものを用意し、これらの基材の双方を、酸素プラズマによる下地処理を行った。
次に、この液状被膜を、100〜200℃の間の加熱温度で、1時間乾燥・硬化させることにより、第1の基材上に、接合膜(平均厚さ:約3μm)を形成した。
<プラズマ処理条件>
・処理ガス :窒素ガス
・ガス供給速度:100SLM
・印加電圧 :2KVpp
・電圧周波数 :100KHz
そして、第1の基材と第2の基材とを50MPaで加圧しつつ、常温(25度前後)で、1分間維持した。これにより、第1の基材と第2の基材とが接合膜を介して接合された接合体を得た。
そして、この接合体の第1の基材と第2の基材との間の接合強度を、QUAD GROUP社製「ロミュラス」)を用いて測定したところ、10MPa以上であった。
まず、第1の基材として、縦20mm×横20mm×(縁部の厚さ1mm、中央部の厚さ4mm)の単結晶シリコン基板上に厚さ10nmのSiO2膜が形成されているものを用意し、第2の基材として、縦20mm×横20mm×(縁部の厚さ4mm、中央部の厚さ1mm)の単結晶シリコン基板上に厚さ10nmのSiO2膜が形成されているものを用意した以外は、前記実施例1と同様にして、接合体を得た。
本実施例2においても、接合体の第1の基材と第2の基材との間の接合強度が10MPa以上であった。
第1の基材および第2の基材として、単結晶シリコン基板上にSiO2膜が形成されているものに代えて、単結晶シリコン基板上に厚さ10nmのSiN膜が形成されているものを用意した以外は、前記実施例1と同様にして、接合体を得た。
本実施例3においても、接合体の第1の基材と第2の基材との間の接合強度が10MPa以上であった。
第1の基材上に接合膜を形成したのと同様の方法を用いて、第2の基材上にも接合膜を形成し、各基材上に形成された接合膜同士が接触するようにして、第1の基材と第2の基材とを接合膜を介して接合させた以外は、前記実施例1と同様にして、接合体を得た。
本実施例4においても、接合体の第1の基材と第2の基材との間の接合強度が10MPa以上であった。
接合膜を活性化させるために、プラズマ処理に代えて、以下に示す条件で、第1の基材に形成された接合膜に紫外線照射を行った以外は、前記実施例1と同様にして、接合体を得た。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :大気(空気)
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :900秒
本比較例においては、接合体の第1の基材と第2の基材との間の接合強度が5MPaを大きく下回った。
接合膜にプラズマを接触させる方法として、図3に示す大気圧プラズマ装置を用いた方法に代えて、直接放電型の大気プラズマ装置を用い、以下に示す条件でプラズマを接触させる方法を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、接合体を得た。
<プラズマ処理条件>
・処理ガス :ヘリウムガスと酸素ガスとの混合ガス
・ガス供給速度:10SLM
・電極間距離 :1mm
・印加電圧 :1.0KVpp(定常)
・電圧周波数 :40MHz
本比較例2においては、接合体の第1の基材と第2の基材との間の接合強度が5MPa以上を維持しているものの、第1の基材において顕著な変質・劣化が認められた。
接合膜にプラズマを接触させる方法として、図3に示す大気圧プラズマ装置を用いた方法に代えて、直接放電型の大気プラズマ装置を用い、以下に示す条件でプラズマを接触させる方法を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、接合体を得た。
<プラズマ処理条件>
・処理ガス :ヘリウムガスと酸素ガスとの混合ガス
・ガス供給速度:10SLM
・電極間距離 :1mm
・印加電圧 :1.0KVpp(定常)
・電圧周波数 :40MHz
本比較例3においては、接合体の第1の基材と第2の基材との間の接合強度が5MPaを下回るとともに、第1の基材において顕著な変質・劣化が認められた。
Claims (13)
- 接合膜を介して互いに接合すべき第1の基材と第2の基材とを用意する工程と、
前記第1の基材および前記第2の基材の少なくとも一方に、ポリエステル樹脂と脱水縮合反応させることにより得られたポリエステル変性シリコーン材料であるシリコーン材料を含有する液状材料を供給することにより液状被膜を形成する工程と、
前記液状被膜を乾燥して、前記第1の基材および前記第2の基材の少なくとも一方に、接合膜を得る工程と、
互いに対向する電極間に電圧を印加した状態で、これら電極間にガスを導入してプラズマ化させた後、このプラズマ化されたガスを前記接合膜に供給することにより、前記プラズマを前記接合膜に接触させて、前記接合膜の表面付近に接着性を発現させる工程と、
当該接着性が発現した接合膜を介して前記第1の基材と前記第2の基材とを接触させ、前記第1の基材と前記第2の基材とが前記接合膜を介して接合された接合体を得る工程とを有することを特徴とする接合方法。 - 前記第1の基材の接合面と前記第2の基材の接合面とは、ともに凹凸面で構成され、これら凹凸面同士が互いに対応する形状をなしている請求項1に記載の接合方法。
- 前記接合膜が形成される前記第1の基材および前記第2の基材のうちの少なくとも一方は、母材上にシリコン酸・窒化物を主材料として構成される薄膜を備えるものである請求項1または2に記載の接合方法。
- 前記プラズマ化されたガスを、プラズマの通過を許容するフィルタを通過させた後に、前記接合面に接触させる請求項1ないし3のいずれかに記載の接合方法。
- 前記プラズマの接触を、大気圧下で行う請求項1ないし4のいずれかに記載の接合方法。
- 前記シリコーン材料は、その主骨格がポリジメチルシロキサンで構成され、この主骨格が分枝状をなしている請求項1ないし5のいずれかに記載の接合方法。
- 前記シリコーン材料は、シラノール基を複数個有する請求項1ないし6のいずれかに記載の接合方法。
- ポリエステル樹脂は、飽和多塩基酸と多価アルコールとのエステル化反応により得られるものである請求項1ないし7のいずれかに記載の接合方法。
- 前記接合膜の平均厚さは、10〜10000nmである請求項1ないし8のいずれかに記載の接合方法。
- 前記第1の基材および前記第2の基材の少なくとも前記接合膜と接触する部分は、シリコン材料、金属材料またはガラス材料を主材料として構成されている請求項1ないし9のいずれかに記載の接合方法。
- 前記第1の基材および前記第2の基材の前記接合膜と接触する面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されている請求項1ないし10のいずれかに記載の接合方法。
- 前記表面処理は、プラズマ処理または紫外線照射処理である請求項11に記載の接合方法。
- 請求項1ないし12のいずれかに記載の接合方法により、前記第1の基材と前記第2の基材とを、前記接合膜を介して接合してなることを特徴とする接合体。
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