JP2010030048A - 液滴吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】寸法精度および耐薬品性に優れ、長期間にわたって高品位の印字が可能な信頼性の高い液滴吐出ヘッドを効率よく製造する液滴吐出ヘッドの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法は、封止シート30と振動板40とを接合してなる封止板を用意する工程と、ノズルプレート10上に接合膜15を形成するとともに封止板の下面に接合膜25を形成する工程と、各接合膜15、25にそれぞれエネルギーを付与する工程と、吐出液貯留室形成基板20に接合膜15および接合膜25が密着するように、封止板、吐出液貯留室形成基板20およびノズルプレート10の3部材を同時に接合する工程とを有する。各接合膜15、25は、それぞれプラズマ重合法により形成されたものであり、シロキサン結合を含むランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含むものである。
【選択図】図7

Description

本発明は、液滴吐出ヘッドの製造方法に関するものである。
例えば、インクジェットプリンタのような液滴吐出装置には、液滴を吐出するための液滴吐出ヘッドが備えられている。このような液滴吐出ヘッドとしては、例えば、インクを液滴として吐出するノズルと連通し、インクを収容するインク室(キャビティ)と、このインク室の壁面を変形させる圧電素子とを備えるものが知られている。
このような液滴吐出ヘッドにあっては、壁面駆動用の圧電素子を伸縮させることにより、インク室の一部(振動板)を変位させる。これにより、インク室の容積を変化させて、ノズルからインク液滴が吐出される。
従来、このような液滴吐出ヘッドは、ノズルが形成されたノズルプレートと、インク室を画成する基板との間を、感光性接着剤または弾性接着剤で接着することによって組み立てられている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、ノズルプレートと基板との間に接着剤を供給する際に、接着剤の供給量を厳密に制御することは極めて困難である。このため、供給する接着剤の量を均一にすることができず、ノズルプレートと基板との距離が不均一になる。これにより、液滴吐出ヘッド内に複数個設けられたインク室のそれぞれの容積が不均一になったり、液滴吐出ヘッド毎でインク室の容積が不均一になってしまう。また、液滴吐出ヘッドと印刷用紙等の印字媒体との間の距離が不均一になる。さらに、接合箇所から接着剤がはみ出してしまうおそれがある。このような問題により、液滴吐出ヘッドの寸法精度が低下し、インクジェットプリンタの印字の品位が低下することとなる。
また、接着剤は、インク室に貯留されたインクに長期間曝される。このように接着剤がインクに曝されると、インク中の有機成分によって、接着剤に変質・劣化が生じる。このため、インク室の液密性が低下したり、接着剤中の成分がインクに溶出したりするおそれがある。
一方、液滴吐出ヘッドを構成する各部を、固体接合法によって接合する方法も知られている。
固体接合は、接着剤等の接着層を介在させることなく、部材同士を直接接合する方法であり、例えば、シリコン直接接合法、陽極接合法等の方法が知られている。
ところが、固体接合には、
・接合可能な部材の材質が限られる
・接合プロセスにおいて高温(例えば、700〜800℃程度)での熱処理を伴う
・接合プロセスにおける雰囲気が減圧雰囲気に限られる
・一部の領域を部分的に接合することができない
といった問題がある。
特開平5−155017号公報
本発明の目的は、寸法精度および耐薬品性に優れ、長期間にわたって高品位の印字が可能な信頼性の高い液滴吐出ヘッドを効率よく製造する液滴吐出ヘッドの製造方法を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法は、吐出液を貯留する吐出液貯留室が形成された基板と、前記吐出液を液滴として吐出するノズル孔を備え、前記吐出液貯留室を覆うように前記基板の一方の面に設けられるノズルプレートと、前記吐出液貯留室を覆うように前記基板の他方の面に設けられる封止板とを用意する第1の工程と、
前記基板および前記ノズルプレートの各対向面の一方または双方と、前記基板および前記封止板の各対向面の一方または双方とに、それぞれ接合膜を形成する第2の工程と、
前記各接合膜にエネルギーを付与するとともに、前記各接合膜を介して、前記基板と前記ノズルプレートとの接合、および、前記基板と前記封止板との接合を行う第3の工程とを有し、
前記各接合膜は、プラズマ重合法により形成されたものであり、シロキサン(Si−O)結合を含むランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、前記第3の工程において、前記各接合膜にエネルギーを付与することにより、前記各接合膜に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離することにより接着性を発現するものであり、
前記第3の工程において、前記基板と前記ノズルプレートとの接合および前記基板と前記封止板との接合を同時に行うことを特徴とする。
これにより、寸法精度および耐薬品性に優れ、長期間にわたって高品位の印字が可能な信頼性の高い液滴吐出ヘッドを効率よく製造することができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記接合膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%であることが好ましい。
これにより、接合膜は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜自体が強固なものとなる。また、かかる接合膜は、各部材に対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3であることが好ましい。
これにより、接合膜の安定性が高くなり、各部材間をより強固に接合することができるようになる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記Si骨格の結晶化度は、45%以下であることが好ましい。
これにより、Si骨格は特にランダムな原子構造を含むものとなる。そして、寸法精度および接着性に優れた接合膜が得られる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記接合膜は、Si−H結合を含んでいることが好ましい。
Si−H結合は、シロキサン結合の生成が規則的に行われるのを阻害すると考えられる。このため、シロキサン結合は、Si−H結合を避けるように形成されることとなり、Si骨格の規則性が低下する。このようにして、接合膜中にSi−H結合が含まれることにより、結晶化度の低いSi骨格を効率よく形成することができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記Si−H結合を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、Si−H結合に帰属するピーク強度が0.001〜0.2であることが好ましい。
これにより、接合膜中の原子構造は、相対的に最もランダムなものとなる。このため、接合膜は、接合強度、耐薬品性および寸法精度において特に優れたものとなる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記脱離基は、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子が前記Si骨格に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものであることが好ましい。
これらの脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、エネルギーを付与することによって比較的簡単に、かつ均一に脱離する脱離基が得られることとなり、接合膜の接着性をより高度化することができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記脱離基は、アルキル基であることが好ましい。
これにより、耐候性および耐薬品性に優れた接合膜が得られる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記脱離基としてメチル基を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、メチル基に帰属するピーク強度が0.05〜0.45であることが好ましい。
これにより、メチル基の含有率が最適化され、メチル基がシロキサン結合の生成を必要以上に阻害するのを防止しつつ、接合膜中に必要かつ十分な数の活性手が生じるため、接合膜に十分な接着性が生じる。また、接合膜には、メチル基に起因する十分な耐候性および耐薬品性が発現する。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、接着性により優れた接合膜が得られる。また、この接合膜は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなり、液滴吐出ヘッドの耐久性を向上することができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものであることが好ましい。
これにより、接着性に特に優れた接合膜が得られる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記プラズマ重合法において、プラズマを発生させる際の高周波の出力密度は、0.01〜100W/cmであることが好ましい。
これにより、高周波の出力密度が高過ぎて原料ガスに必要以上のプラズマエネルギーが付加されるのを防止しつつ、ランダムな原子構造を有するSi骨格を確実に形成することができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmであることが好ましい。
これにより、接合膜を介して部材間を接合してなる液滴吐出ヘッドの寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものであることが好ましい。
これにより、液滴吐出ヘッドの寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。また、従来に比べ、短時間で強固な接合が可能になる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記基板は、シリコン材料またはステンレス鋼を主材料として構成されていることが好ましい。
このような材料は、耐薬品性に優れることから、長時間にわたってインクに曝されたとしても、基板が変質・劣化するのを確実に防止することができる。また、これらの材料は、加工性に優れるため、寸法精度の高い基板が得られる。このため、各吐出液貯留室の容積の精度が高くなり、高品位の印字が可能な液滴吐出ヘッドが得られる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記ノズルプレートは、シリコン材料またはステンレス鋼を主材料として構成されていることが好ましい。
このような材料は、耐薬品性に優れることから、長時間にわたってインクに曝されたとしても、ノズルプレートが変質・劣化するのを確実に防止することができる。また、これらの材料は、加工性に優れるため、寸法精度の高いノズルプレートが得られる。このため、信頼性の高い液滴吐出ヘッドが得られる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記封止板は、樹脂材料を主材料として構成されていることが好ましい。
このような材料は、耐薬品性に優れることから、長時間にわたってインクに曝されたとしても、封止板が変質・劣化するのを確実に防止することができる。このため、吐出液貯留室内に、長時間にわたってインクを貯留することができる。また、このような材料は、柔軟性が高く、変位量の向上を図ることができ、吐出するインクの調整量の幅を拡大することができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および、前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、接合膜に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線であることが好ましい。
これにより、接合膜に付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜中のSi骨格が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、Si骨格と脱離基との間の結合を選択的に切断することができる。その結果、接合膜の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜に接着性を発現させることができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記加熱の温度は、25〜100℃であることが好ましい。
これにより、封止板、吐出液貯留室形成基板、ノズルプレート等が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記圧縮力は、0.2〜10MPaであることが好ましい。
これにより、圧力が高すぎて封止板、吐出液貯留室形成基板、ノズルプレート等に損傷等が生じるのを防止しつつ、接合体の接合強度を確実に高めることができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記エネルギーの付与は、前記基板、前記ノズルプレートおよび前記封止板を、それぞれ前記各接合膜を介して重ね合わせ、仮接合体とした後、該仮接合体に対して行うことが好ましい。
このようにすれば、仮接合体の状態では、封止板と吐出液貯留室形成基板との間、および、吐出液貯留室形成基板とノズルプレートとの間は、それぞれ接合されていない。このため、これらの相対的な位置を容易に調整する(ずらす)ことができる。したがって、一旦、仮接合体を得た後、各部材の相対位置を微調整することにより、最終的に得られる液滴吐出ヘッドの組み立て精度(寸法精度)を確実に高めることができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記仮接合体の前記吐出液貯留室に対応する位置を避けるようにして、圧縮力を付与することが好ましい。
これにより、封止板やノズルプレートが湾曲するのを防止して、封止板とノズルプレートとの平行度を維持することができる。その結果、液滴吐出ヘッドの組み立て精度のさらなる向上を図ることができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われることが好ましい。
これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギーの付与をより簡単に行うことができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記第2の工程において、前記接合膜の前記吐出液に対する特性に応じて、前記各対向面において前記接合膜を形成する領域を選択することが好ましい。
これにより、油性および水性のいずれの性質のインクであっても、目的とする量のインクを効率よく確実に吐出可能な液滴吐出ヘッドを容易に製造することができる。その結果、印字品位に優れた液滴吐出ヘッドが得られる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記吐出液は、油性のものであり、
前記第2の工程において、前記吐出液貯留室の内面に対応する領域に前記接合膜を形成することにより、前記吐出液貯留室の内面を前記吐出液に対して親液性とすることが好ましい。
これにより、各吐出液貯留室内での油性インクの流動性が向上するため、目的とする量の油性インクを効率よく確実に吐出可能な液滴吐出ヘッドが得られる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記吐出液は、水性のものであり、
前記第2の工程において、前記各対向面のうちの前記吐出液貯留室の内面に対応する領域に前記接合膜を形成しないようにすることにより、前記吐出液貯留室の内面を前記吐出液に対して親液性とすることが好ましい。
これにより、各吐出液貯留室内での水性インクの流動性が向上するため、目的とする量の水性インクを効率よく確実に吐出可能な液滴吐出ヘッドが得られる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記第1の工程において、さらに、前記封止板の前記基板と反対側に設けられ、前記封止板を振動させる振動手段を用意し、
前記第2の工程において、前記封止板および前記振動手段の各対向面の一方または双方に、前記接合膜と同様の第2の接合膜を形成し、
前記第3の工程において、前記基板と前記ノズルプレートとの接合および前記基板と前記封止板との接合と同時に、前記第2の接合膜を介して、前記封止板と前記振動板とを接合することが好ましい。
これにより、封止板、吐出液貯留室形成基板およびノズルプレートの3部材と圧電素子とを個別に接合した場合に比べて、接合後の寸法精度を高めることができる。その結果、印字品位に特に優れた液滴吐出ヘッドが得られる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記第1の工程において、さらに、前記封止板の前記基板と反対側に設けられるケースヘッドを用意し、
前記第2の工程において、前記封止板および前記ケースヘッドの各対向面の一方または双方に、前記接合膜と同様の第3の接合膜を形成し、
前記第3の工程において、前記基板と前記ノズルプレートとの接合および前記基板と前記封止板との接合と同時に、前記第3の接合膜を介して、前記封止板と前記ケースヘッドとを接合することが好ましい。
これにより、封止板、吐出液貯留室形成基板およびノズルプレートの3部材とケースヘッドとを個別に接合した場合に比べて、接合後の寸法精度を高めることができる。その結果、印字品位に特に優れた液滴吐出ヘッドが得られる。
以下、本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
≪第1実施形態≫
まず、本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法の第1実施形態により製造された液滴吐出ヘッドをインクジェット式記録ヘッドに適用した場合について説明する。
図1は、本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法により製造された液滴吐出ヘッドをインクジェット式記録ヘッドに適用した場合を示す分解斜視図、図2は、図1に示すインクジェット式記録ヘッドの断面図、図3は、図1に示すインクジェット式記録ヘッドを備えるインクジェットプリンタの実施形態を示す概略図、図4は、本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法に用いる接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図5は、本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法に用いる接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。なお、以下の説明では、図1および図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図1に示すインクジェット式記録ヘッド1(以下、単に「ヘッド1」という。)は、図3に示すようなインクジェットプリンタ(本発明の液滴吐出装置)9に搭載されている。
図3に示すインクジェットプリンタ9は、装置本体92を備えており、上部後方に記録用紙Pを設置するトレイ921と、下部前方に記録用紙Pを排出する排紙口922と、上部面に操作パネル97とが設けられている。
操作パネル97は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプ等で構成され、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示せず)と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示せず)とを備えている。
また、装置本体92の内部には、主に、往復動するヘッドユニット93を備える印刷装置(印刷手段)94と、記録用紙Pを1枚ずつ印刷装置94に送り込む給紙装置(給紙手段)95と、印刷装置94および給紙装置95を制御する制御部(制御手段)96とを有している。
制御部96の制御により、給紙装置95は、記録用紙Pを一枚ずつ間欠送りする。この記録用紙Pは、ヘッドユニット93の下部近傍を通過する。このとき、ヘッドユニット93が記録用紙Pの送り方向とほぼ直交する方向に往復移動して、記録用紙Pへの印刷が行なわれる。すなわち、ヘッドユニット93の往復動と記録用紙Pの間欠送りとが、印刷における主走査および副走査となって、インクジェット方式の印刷が行なわれる。
印刷装置94は、ヘッドユニット93と、ヘッドユニット93の駆動源となるキャリッジモータ941と、キャリッジモータ941の回転を受けて、ヘッドユニット93を往復動させる往復動機構942とを備えている。
ヘッドユニット93は、その下部に、多数のノズル孔11を備えるヘッド1と、ヘッド1にインクを供給するインクカートリッジ931と、ヘッド1およびインクカートリッジ931を搭載したキャリッジ932とを有している。
なお、インクカートリッジ931として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のインクを充填したものを用いることにより、フルカラー印刷が可能となる。
往復動機構942は、その両端をフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸943と、キャリッジガイド軸943と平行に延在するタイミングベルト944とを有している。
キャリッジ932は、キャリッジガイド軸943に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト944の一部に固定されている。
キャリッジモータ941の作動により、プーリを介してタイミングベルト944を正逆走行させると、キャリッジガイド軸943に案内されて、ヘッドユニット93が往復動する。そして、この往復動の際に、ヘッド1から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
給紙装置95は、その駆動源となる給紙モータ951と、給紙モータ951の作動により回転する給紙ローラ952とを有している。
給紙ローラ952は、記録用紙Pの送り経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ952aと駆動ローラ952bとで構成され、駆動ローラ952bは給紙モータ951に連結されている。これにより、給紙ローラ952は、トレイ921に設置した多数枚の記録用紙Pを、印刷装置94に向かって1枚ずつ送り込めるようになっている。なお、トレイ921に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成であってもよい。
制御部96は、例えばパーソナルコンピュータやディジタルカメラ等のホストコンピュータから入力された印刷データに基づいて、印刷装置94や給紙装置95等を制御することにより印刷を行うものである。
制御部96は、いずれも図示しないが、主に、各部を制御する制御プログラム等を記憶するメモリ、印刷装置94(キャリッジモータ941)を駆動する駆動回路、給紙装置95(給紙モータ951)を駆動する駆動回路、および、ホストコンピュータからの印刷データを入手する通信回路と、これらに電気的に接続され、各部での各種制御を行うCPUとを備えている。
また、CPUには、例えば、インクカートリッジ931のインク残量、ヘッドユニット93の位置等を検出可能な各種センサ等が、それぞれ電気的に接続されている。
制御部96は、通信回路を介して、印刷データを入手してメモリに格納する。CPUは、この印刷データを処理して、この処理データおよび各種センサからの入力データに基づいて、各駆動回路に駆動信号を出力する。この駆動信号により印刷装置94および給紙装置95は、それぞれ作動する。これにより、記録用紙Pに印刷が行われる。
以下、ヘッド1について、図1および図2を参照しつつ詳述する。
図1および図2に示すように、ヘッド1は、ノズルプレート10と、吐出液貯留室形成基板(基板)20と、封止シート30と、封止シート30上に設けられた振動板40と、振動板40上に設けられた圧電素子(振動手段)50およびケースヘッド60とを有する。また、本実施形態では、封止シート30と振動板40との積層体により、封止板を構成している。なお、このヘッド1は、ピエゾジェット式ヘッドを構成する。
吐出液貯留室形成基板20(以下、省略して「基板20」と言う。)には、インクを貯留する複数の吐出液貯留室(圧力室)21と、各吐出液貯留室21に連通し、各吐出液貯留室21にインクを供給する吐出液供給室22とが形成されている。
図1および図2に示すように、各吐出液貯留室21および吐出液供給室22は、それぞれ、平面視において、ほぼ長方形状をなし、各吐出液貯留室21の幅(短辺)は、吐出液供給室22の幅(短辺)より細幅となっている。
また、各吐出液貯留室21は、吐出液供給室22に対して、ほぼ垂直をなすように配置されており、各吐出液貯留室21および吐出液供給室22は、平面視において全体として、櫛状をなしている。
なお、吐出液供給室22は、平面視において、本実施形態のように長方形状のものの他、例えば、台形状、三角形状または俵形状(カプセル形状)のものであってもよい。
基板20を構成する材料としては、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンのようなシリコン材料、ステンレス鋼、チタン、アルミニウムのような金属材料、石英ガラス、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料、アルミナ、ジルコニア、フェライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス材料、グラファイトのような炭素材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(PBO)、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
また、上記のような材料に、酸化処理(酸化膜形成)、めっき処理、不働態化処理、窒化処理等の各処理を施した材料でもよい。
これらの中でも、基板20の構成材料は、シリコン材料またはステンレス鋼であるのが好ましい。このような材料は、耐薬品性に優れることから、長時間にわたってインクに曝されたとしても、基板20が変質・劣化するのを確実に防止することができる。また、これらの材料は、加工性に優れるため、寸法精度の高い基板20が得られる。このため、吐出液貯留室21や吐出液供給室22の容積の精度が高くなり、高品位の印字が可能なヘッド1が得られる。
また、吐出液供給室22は、後述するケースヘッド60に設けられた吐出液供給路61と連通して複数の吐出液貯留室21にインクを供給する共通のインク室として機能するリザーバ70の一部を構成する。
また、吐出液貯留室21と吐出液供給室22との内面に、あらかじめ、親水処理を施しておいてもよい。これにより、吐出液貯留室21および吐出液供給室22に貯留されたインク中に気泡が含まれるのを防止することができる。
また、基板20の下面(封止シート30と反対側の面)には、接合膜15を介して、ノズルプレート10が接合(接着)されている。
この接合膜15は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、このSi骨格に結合する脱離基とを含むものである。
そして、この接合膜15は、エネルギーを付与したことにより、脱離基がSi骨格から脱離し、接合膜15の表面に発現した接着性によって、基板20とノズルプレート10とを接合している。
なお、接合膜15については、後に詳述する。
ノズルプレート10には、各吐出液貯留室21に対応するように、それぞれノズル孔11が形成(穿設)されている。このノズル孔11に、吐出液貯留室21に貯留されたインクを押し出させることにより、インクを液滴として吐出することができる。
また、ノズルプレート10は、各吐出液貯留室21や吐出液供給室22の内壁面の下面を構成している。すなわち、ノズルプレート10と、基板20および封止シート30とにより、各吐出液貯留室21や吐出液供給室22を画成している。
このようなノズルプレート10を構成する材料としては、例えば、前述したようなシリコン材料、金属材料、ガラス材料、セラミックス材料、炭素材料、樹脂材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
これらの中でも、ノズルプレート10の構成材料は、シリコン材料またはステンレス鋼であるのが好ましい。このような材料は、耐薬品性に優れることから、長時間にわたってインクに曝されたとしても、ノズルプレート10が変質・劣化するのを確実に防止することができる。また、これらの材料は、加工性に優れるため、寸法精度の高いノズルプレート10が得られる。このため、信頼性の高いヘッド1が得られる。
なお、ノズルプレート10の構成材料は、線膨張係数が300℃以下で2.5〜4.5[×10-6/℃]程度であるものが好ましい。
また、ノズルプレート10の厚さは、特に限定されないが、0.01〜1mm程度であるのが好ましい。
また、ノズルプレート10の下面には、必要に応じて、撥液膜(図示せず)が設けられる。これにより、ノズル孔11から吐出されるインク滴が意図しない方向に吐出されるのを防止することができる。
このような撥液膜の構成材料としては、例えば、撥液性を示す官能基を有するカップリング剤や、撥液性の樹脂材料等が挙げられる。
カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、有機リン酸系カップリング剤、シリルパーオキサイド系カップリング剤等を用いることができる。
撥液性を示す官能基としては、例えば、フルオロアルキル基、アルキル基、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基等が挙げられる。
一方、撥液性の樹脂材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、パーフルオロエチレン−プロペン共重合体(FEP)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)のようなフッ素系樹脂等が挙げられる。
また、基板20の上面には、接合膜25を介して、封止シート30が接合(接着)されている。
また、封止シート30は、各吐出液貯留室21や吐出液供給室22の内壁面の上面を構成している。すなわち、封止シート30と、基板20およびノズルプレート10とにより、各吐出液貯留室21や吐出液供給室22を画成している。そして、封止シート30が基板20と確実に接合されていることにより、各吐出液貯留室21や吐出液供給室22の液密性を確保している。
封止シート30を構成する材料としては、例えば、前述したようなシリコン材料、金属材料、ガラス材料、セラミックス材料、炭素材料、樹脂材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
これらの中でも、封止シート30の構成材料は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、アラミド樹脂のような樹脂材料、シリコン材料またはステンレス鋼であるのが好ましい。このような材料は、耐薬品性に優れることから、長時間にわたってインクに曝されたとしても、封止シート30が変質・劣化するのを確実に防止することができる。このため、吐出液貯留室21内および吐出液供給室22内に、長期間にわたってインクを貯留することができる。また、柔軟性が高く、変位量の向上を図ることができ、吐出するインクの調整量の幅を拡大することができる。
このような封止シート30と基板20とを接合する接合膜25は、前述の接合膜15と同じ接合機能(接着性)を有するものである。
すなわち、接合膜25は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、このSi骨格に結合する脱離基とを含むものである。
そして、接合膜25は、エネルギーを付与したことにより、脱離基がSi骨格から脱離し、接合膜25の表面に発現した接着性によって、基板20と封止シート30とを接合している。
なお、接合膜25については、前述した接合膜15とともに、後に詳述する。
封止シート30の上面には、接合膜35を介して、振動板40が接合(接着)されている。
振動板40を構成する材料としては、例えば、前述したようなシリコン材料、金属材料、ガラス材料、セラミックス材料、炭素材料、樹脂材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。そして、振動板40が封止シート30と確実に接合されていることにより、圧電素子50に発生した歪みを、封止シート30の変位、すなわち各吐出液貯留室21の容積変化に確実に変換している。
これらの中でも、振動板40の構成材料は、シリコン材料またはステンレス鋼であるのが好ましい。このような材料は、高速で弾性変形することが可能である。このため、圧電素子50が振動板40を変位させることによって、吐出液貯留室21の容積を高速に変化させることができる。その結果、インクを高精度に吐出することができる。
このような振動板40と封止シート30とを接合する接合膜35は、封止シート30と振動板40とを接合または接着し得るものであれば、いかなる材料で構成されていてもよく、封止シート30や振動板40の各構成材料によって適宜選択されるが、例えば、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤のような接着剤、半田、ろう材等が挙げられる。
また、接合膜35は必ずしも設けられていなくてもよく、省略してもよい。この場合、封止シート30と振動板40との間は、融着(溶接)、または、シリコン直接接合、陽極接合のような固体接合等の直接接合法によって接合(接着)することができる。
本実施形態では、接合膜35が前述の接合膜15と同じ接合機能(接着性)を有するものとする。
すなわち、接合膜35は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、このSi骨格に結合する脱離基とを含むものである。
そして、接合膜35は、エネルギーを付与したことにより、脱離基がSi骨格から脱離し、接合膜35の表面に発現した接着性によって、封止シート30と振動板40とを接合している。
なお、接合膜35については、前述した接合膜15および接合膜25とともに、後に詳述する。
また、本実施形態では、封止シート30と振動板40とを積層してなる積層体により封止板を構成しているが、この封止板は、1層であってもよく、3層以上の層が積層してなる積層体で構成されていてもよい。
なお、3層以上の層が積層してなる積層体によって封止板が構成されている場合、積層体中の層のうち、隣接する少なくとも1組の層間が接合膜35で接合されたものであれば、積層体の寸法精度が高くなり、ひいては、ヘッド1の寸法精度を高めることができる。
振動板40の上面の一部(図2では、振動板40の上面の中央部付近)に、接合膜45a(第2の接合膜)を介して、圧電素子(振動手段)50が接合(接着)されている。
圧電素子50は、圧電材料で構成された圧電体層51と、この圧電体層51に電圧を印加する電極膜52との積層体で構成されている。このような圧電素子50では、電極膜52を介して圧電体層51に電圧を印加することにより、圧電体層51に電圧に応じた歪みが発生する(逆圧電効果)。この歪みが振動板40および封止シート30に撓み(振動)をもたらし、吐出液貯留室21の容積を変化させる。このように、圧電素子50が振動板40と確実に接合されていることにより、圧電素子50に発生した歪みを、振動板40および封止シート30の変位、ひいては、各吐出液貯留室21の容積変化へと確実に変換することができる。
また、圧電体層51と電極膜52との積層方向は、特に限定されず、振動板40に対して平行な方向であっても、直交する方向であってもよい。なお、圧電体層51と電極膜52との積層方向が、振動板40に対して直交する方向である場合、このように配置された圧電素子50を特にMLP(Multi Layer Piezo)と言う。圧電素子50がMLPであれば、振動板40の変位量を大きくとることができるので、インクの吐出量の調整幅が大きいという利点がある。
圧電素子50のうち、接合膜45aに隣接する(接触する)面は、圧電素子50の配置方法によって異なるが、圧電体層が露出した面、電極膜が露出した面、または圧電体層と電極膜の双方が露出した面のいずれかである。
圧電素子50のうち、圧電体層51を構成する材料としては、例えば、チタン酸バリウム、ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶等が挙げられる。
一方、電極膜52を構成する材料としては、例えば、Fe、Ni、Co、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、Mo、またはこれらを含む合金等の各種金属材料が挙げられる。
このような圧電素子50と振動板40とを接合する接合膜45aは、振動板40と圧電素子50とを接合または接着し得るものであれば、いかなる材料で構成されていてもよく、振動板40や圧電素子50の各構成材料によって適宜選択されるが、例えば、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤のような接着剤、半田、ろう材等が挙げられる。
また、接合膜45aは必ずしも設けられていなくてもよく、省略してもよい。この場合、振動板40と圧電素子50との間は、融着(溶接)、または、シリコン直接接合、陽極接合のような固体接合等の直接接合法によって接合(接着)することができる。
本実施形態では、接合膜45aが前述の接合膜15と同じ接合機能(接着性)を有するものとする。
すなわち、接合膜45aは、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、このSi骨格に結合する脱離基とを含むものである。
そして、接合膜45aは、エネルギーを付与したことにより、脱離基がSi骨格から脱離し、接合膜45aの表面に発現した接着性によって、振動板40と圧電素子50とを接合している。
なお、接合膜45aについては、前述した接合膜15、接合膜25および接合膜35とともに、後に詳述する。
ここで、前述した振動板40は、圧電素子50に対応する位置を取り囲むように環状に形成された凹部53を有している。すなわち、圧電素子50に対応する位置では、振動板40の一部が、この環状の凹部53を隔てて島状に孤立している。そして、接合膜45aは、環状の凹部53の内側に設けられている。
また、圧電素子50の電極膜52は、図示しない駆動ICと電気的に接続されている。これにより、駆動素子50の動作を駆動ICによって制御することができる。
また、振動板40の上面の一部には、接合膜45bを介して、ケースヘッド60が接合(接着)されている。このように、ケースヘッド60が振動板40と確実に接合されていることにより、ノズルプレート10、基板20、封止シート30および振動板40の積層体で構成された、いわゆるキャビティ部分を補強し、キャビティ部分のよじれや反り等を確実に抑制することができる。
ケースヘッド60を構成する材料としては、例えば、前述したようなシリコン材料、金属材料、ガラス材料、セラミックス材料、炭素材料、樹脂材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
これらの中でも、ケースヘッド60の構成材料は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ザイロンのような変性ポリフェニレンエーテル樹脂(「ザイロン」は登録商標)またはステンレス鋼であるのが好ましい。これらの材料は、十分な剛性を備えていることから、ヘッド1を支持するケースヘッド60の構成材料として好適である。
このようなケースヘッド60と振動板40とを接合する接合膜45b(第3の接合膜)は、振動板40とケースヘッド60とを接合または接着し得るものであれば、いかなる材料で構成されていてもよく、振動板40やケースヘッド60の各構成材料によって適宜選択されるが、例えば、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤のような接着剤、半田、ろう材等が挙げられる。
また、接合膜45bは必ずしも設けられていなくてもよく、省略してもよい。この場合、振動板40とケースヘッド60との間は、融着(溶接)、または、シリコン直接接合、陽極接合のような固体接合等の直接接合法によって接合(接着)することができる。
本実施形態では、接合膜45bが前述の接合膜15と同じ接合機能(接着性)を有するものとする。
すなわち、接合膜45bは、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、このSi骨格に結合する脱離基とを含むものである。
そして、接合膜45bは、エネルギーを付与したことにより、脱離基がSi骨格から脱離し、接合膜45bの表面に発現した接着性によって、振動板40とケースヘッド60とを接合している。
なお、接合膜45bについては、前述した接合膜15、接合膜25、接合膜35および接合膜45aとともに、後に詳述する。
また、接合膜25、封止シート30、接合膜35、振動板40および接合膜45bは、吐出液供給室22に対応する位置に貫通孔23を有する。この貫通孔23により、ケースヘッド60に設けられた吐出液供給路61と吐出液供給室22とが連通している。なお、吐出液供給路61と吐出液供給室22とにより、複数の吐出液貯留室21にインクを供給する共通のインク室として機能するリザーバ70の一部を構成する。
このようなヘッド1では、図示しない外部吐出液供給手段からインクを取り込み、リザーバ70からノズル孔11に至るまで内部をインクで満たした後、駆動ICからの記録信号により、各吐出液貯留室21に対応するそれぞれの圧電素子50を動作させる。これにより、圧電素子50の逆圧電効果によって振動板40および封止シート30に撓み(振動)が生じる。その結果、例えば、各吐出液貯留室21内の容積が収縮すると、各吐出液貯留室21内の圧力が瞬間的に高まり、ノズル孔11からインクが液滴として押し出される(吐出される)。
このようにして、ヘッド1において、印刷したい位置の圧電素子50に、駆動ICを介して電圧を印加すること、すなわち、吐出信号を順次入力することにより、任意の文字が図形等を印刷することができる。
なお、ヘッド1は、前述したような構成のものに限らず、例えば、振動手段として圧電素子50をヒータで代替した構成(サーマル方式)のヘッドであってもよい。このようなヘッドは、ヒータでインクを加熱して沸騰させ、それによって吐出液貯留室内の圧力を高めることにより、インクをノズル孔11から液滴として吐出するよう構成されているものである。
さらに、振動手段のその他の例としては、静電アクチュエータ方式等が挙げられる。
なお、本実施形態のように、振動手段が圧電素子で構成されていることにより、振動板40および封止シート30に発生する撓みの程度を容易に制御することができる。これにより、インク滴の大きさを容易に制御することができる。
次に、接合膜15、接合膜25、接合膜35、接合膜45aおよび接合膜45bに共通して用いられる接合膜について説明する。なお、以下では、接合膜15を代表に説明する。
接合膜15のエネルギーを付与する前の状態は、プラズマ重合法により形成されたものであり、図4に示すように、シロキサン(Si−O)結合302を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格301と、このSi骨格301に結合する脱離基303とを含むものである。
そして、この接合膜15にエネルギーを付与すると、図5に示すように、一部の脱離基303がSi骨格301から脱離し、代わりに活性手304が生じる。これにより、接合膜15の表面に接着性が発現する。このようにして接着性が発現した接合膜15により、基板20とノズルプレート10とが接合されている。
このような接合膜15は、シロキサン結合302を含みランダムな原子構造を有するSi骨格301の影響によって、変形し難い強固な膜となる。これは、Si骨格301の結晶性が低くなるため、結晶粒界における転位やズレ等の欠陥が生じ難いためであると考えられる。このため、基板20とノズルプレート10との間の距離を高い寸法精度で一定に保持することができ、各吐出液貯留室21や吐出液供給室22の各容積を厳密に制御することができる。その結果、ヘッド1内に複数個設けられた各吐出液貯留室21同士の容積を均一にすることができ、各ノズル孔11から吐出されるインク滴の大きさを揃えることができる。また、ノズルプレート10の固定角度を厳密に制御することができるため、インク滴の吐出方向を一定に維持することができる。これらのことから、インクジェットプリンタ9による印字の品位を高めることができる。また、複数のヘッド1を作製する場合には、ヘッド1毎の印字品位のバラツキを抑制することができるので、インクジェットプリンタ9の印字品位の個体差を抑制することができる。
また、接合膜15を用いて基板20とノズルプレート10とを接合したことにより、従来、接着剤を用いて接合した場合に、接着剤がはみ出すといった問題が生じることがない。したがって、はみ出した接着剤がヘッド1内のインクの流路を塞いでしまうのを避けることができる。また、はみ出した接着剤を除去する手間も省略できるという利点もある。
また、接合膜15は、前述したような強固なSi骨格301の作用により、耐薬品性に優れる。このため、接合膜15は長期にわたってインクに曝されたとしても、変質・劣化することが防止され、基板20とノズルプレート10との接合(接着)を長期にわたって確保することができる。すなわち、接合膜15によれば、ヘッド1の液密性を十分に確保することができるため、信頼性の高いヘッド1を提供することができる。
さらに、接合膜15は、化学的に安定なSi骨格301の作用により、耐熱性に優れている。このため、ヘッド1が高温下に曝されたとしても、接合膜15の変質・劣化を確実に防止することができる。
また、このような接合膜15は、流動性を有しない固体状のものとなる。このため、従来の流動性を有する液状または粘液状の接着剤に比べて、接着層(接合膜15)の厚さや形状がほとんど変化しない。このため、接合膜15を用いて製造されたヘッド1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合を可能にするものである。
このような接合膜15としては、特に、接合膜15を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%程度であるのが好ましく、20〜80原子%程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子とが、前記範囲の含有率で含まれていれば、接合膜15は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜15自体がより強固なものとなる。また、かかる接合膜15は、基板20およびノズルプレート10に対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
また、接合膜15中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜15の安定性が高くなり、基板20とノズルプレート10とをより強固に接合することができるようになる。
なお、接合膜15中のSi骨格301の結晶化度は、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、Si骨格301は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、前述したSi骨格301の特性が顕在化し、接合膜15の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
また、接合膜15は、その構造中にSi−H結合を含んでいるのが好ましい。このSi−H結合は、プラズマ重合法によってシランが重合反応する際に重合物中に生じるものであるが、このとき、Si−H結合がシロキサン結合の生成が規則的に行われるのを阻害すると考えられる。このため、シロキサン結合は、Si−H結合を避けるように形成されることとなり、Si骨格301の原子構造の規則性が低下する。このようにして、プラズマ重合法によれば、結晶化度の低いSi骨格301を効率よく形成することができる。
一方、接合膜15中のSi−H結合の含有率が多ければ多いほど結晶化度が低くなるわけではない。具体的には、接合膜15の赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピークの強度を1としたとき、Si−H結合に帰属するピークの強度は、0.001〜0.2程度であるのが好ましく、0.002〜0.05程度であるのがより好ましく、0.005〜0.02程度であるのがさらに好ましい。Si−H結合のシロキサン結合に対する割合が前記範囲内であることにより、接合膜15中の原子構造は、相対的に最もランダムなものとなる。このため、Si−H結合のピーク強度がシロキサン結合のピーク強度に対して前記範囲内にある場合、接合膜15は、接合強度、耐薬品性および寸法精度において特に優れたものとなる。
また、Si骨格301に結合する脱離基303は、前述したように、Si骨格301から脱離することによって、接合膜15に活性手304を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないようSi骨格301に確実に結合しているものである必要がある。
かかる観点から、脱離基303には、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子を含み、これらの各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものが好ましく用いられる。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜15の接着性をより高度なものとすることができる。
なお、上記のような各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基、メルカプト基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
これらの各基の中でも、脱離基303は、特にアルキル基であるのが好ましい。アルキル基は化学的な安定性が高いため、アルキル基を含む接合膜15は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
ここで、脱離基303がメチル基(−CH)である場合、その好ましい含有率は、赤外光吸収スペクトルにおけるピーク強度から以下のように規定される。
すなわち、接合膜15の赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピークの強度を1としたとき、メチル基に帰属するピークの強度は、0.05〜0.45程度であるのが好ましく、0.1〜0.4程度であるのがより好ましく、0.2〜0.3程度であるのがさらに好ましい。メチル基のピーク強度がシロキサン結合のピーク強度に対する割合が前記範囲内であることにより、メチル基がシロキサン結合の生成を必要以上に阻害するのを防止しつつ、接合膜15中に必要かつ十分な数の活性手が生じるため、接合膜15に十分な接着性が生じる。また、接合膜15には、メチル基に起因する十分な耐候性および耐薬品性が発現する。
このような特徴を有する接合膜15の構成材料としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのようなシロキサン結合を含む重合物等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜15は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜15は、基板20とノズルプレート10とをより強固に接合することができる。
また、ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性(非接着性)を示すが、エネルギーを付与されることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性を発現するが、この非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行えるという利点を有する。
なお、この撥水性(非接着性)は、主に、ポリオルガノシロキサン中に含まれたアルキル基による作用である。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜15は、エネルギーを付与された領域に接着性が発現するとともに、エネルギーを付与しなかった領域においては、前述したアルキル基による優れた撥液性が得られるという利点も有する。したがって、エネルギーを付与する領域を制御することにより、接合膜15の基板20およびノズルプレート10に接触しない領域に、優れた撥液性を発現させることができる。その結果、接合膜15は、例えば、樹脂材料を浸食し易い有機系インクが用いられる工業用インクジェットプリンタのヘッド1を製造する際に、耐久性に優れた信頼性の高いヘッド1を提供することができる。
また、ポリオルガノシロキサンの中でも、特に、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものが好ましい。オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とする接合膜15は、接着性に特に優れることから、本発明の液滴吐出ヘッドに対して特に好適に適用できるものである。また、オクタメチルトリシロキサンを主成分とする原料は、常温で液状をなし、適度な粘度を有するため、取り扱いが容易であるという利点もある。
また、接合膜15の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、2〜800nm程度であるのがより好ましい。接合膜15の平均厚さを前記範囲内とすることにより、基板20とノズルプレート10との間の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。
すなわち、接合膜15の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜15の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、ヘッド1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
さらに、接合膜15の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜15にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、基板20の接合面(接合膜15に隣接する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜15を被着させることができる。その結果、接合膜15は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、接合膜15を備える基板20とノズルプレート10とを貼り合わせた際に、接合膜15のノズルプレート10に対する密着性を高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜15の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜15の厚さをできるだけ厚くすればよい。
このような接合膜15は、プラズマ重合法により作製した膜にエネルギーを付与することによって作製することができる。プラズマ重合法によれば、最終的に、緻密で均質な接合膜15を効率よく作製することができる。これにより、プラズマ重合法で作製された接合膜15は、基板20とノズルプレート10とを特に強固に接合し得るものとなる。さらに、プラズマ重合法で作製され、エネルギーが付与される前の接合膜15は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持することができる。このため、ヘッド1の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
また、本実施形態では、基板20と封止シート30とが接合膜25を介して接合されているため、これらの間の密着性が高くなり、各吐出液貯留室21や吐出液供給室22の液密性を特に高めることができる。
また、本実施形態では、封止シート30と振動板40とが接合膜35を介して接合されているため、これらの間の密着性および歪みの伝搬性が高くなる。このため、圧電素子50の歪みを各吐出液貯留室21の圧力変化に確実に変換することができる。すなわち、封止シート30および振動板40の変位のレスポンスを高めることができる。
また、本実施形態では、振動板40と圧電素子50とが接合膜45aを介して接合されているため、これらの間の密着性および歪みの伝搬性が高くなる。従来、圧電素子と振動板とが接着剤で接着されていたため、圧電素子の歪みが振動板を変位させる前に減衰したりする問題があったが、接合膜45aによれば、圧電素子50の歪みを各吐出液貯留室21の圧力変化に確実に変換することができる。
また、本実施形態では、振動板40とケースヘッド60とが接合膜45bを介して接合されているため、これらの間の密着性が高くなる。このため、ケースヘッド60によって、振動板40を確実に支持し、振動板40、封止シート30、基板20およびノズルプレート10のよじれや反り等を確実に防止することができる。
以下、各接合膜15、25、35、45aおよび45bを作製する方法、およびこの方法を含むヘッド1を作製する方法(本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法の第1実施形態)について説明する。
図6ないし図8は、本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図6ないし図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
本実施形態にかかるヘッド1の製造方法は、封止シート30上に接合膜35を形成し、この接合膜35を介して封止シート30と振動板40とを接合し、封止板とする工程と、母材20’をエッチングして得られた基板20とノズルプレート10とを用意し、ノズルプレート10の表面に成膜した接合膜15を介して基板20とノズルプレート10とを接合するとともに、封止シート30の表面に成膜した接合膜25を介して基板20と封止板とを接合する工程と、接合膜45aを介して封止板と圧電素子50とを接合する工程と、接合膜45bを介して封止板とケースヘッド60とを接合する工程とを有する。
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、図6(a)に示すように、封止シート30上に、プラズマ重合法により接合膜35を形成する。この接合膜35の形成方法は、後述する接合膜15の形成方法と同様である。
次いで、接合膜35に対してエネルギーを付与する。これにより、接合膜35に接着性が発現する。なお、接合膜35に対するエネルギーの付与は、後述する接合膜15に対するエネルギーの付与方法と同様の方法で行うことができる。
[2]次に、振動板40を用意し、接着性が発現した接合膜35と振動板40とが密着するように、封止シート30と振動板40とを貼り合わせる。これにより、図6(b)に示すように、封止シート30と振動板40とが接合膜35を介して接合(接着)され、封止板が得られる。
[3]次に、図6(c)に示すように、封止板の両面にレジスト膜80を形成する。このレジスト膜80には、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術とにより、後述する工程で封止板に形成する貫通孔23と凹部53とに対応する窓部81を形成する。
そして、この封止板に対して、封止シート30および振動板40を加工するエッチング処理を施す。これにより、窓部81を介して封止シート30および振動板40が部分的にエッチングされ、図6(d)に示す貫通孔23および凹部53が得られる。その後、レジスト膜80を除去する。
[4]一方、図6(e)に示すように、封止シート30の下面に接合膜25を形成するとともに、振動板40の上面に接合膜45aおよび接合膜45bを形成する。
[5]次に、基板20を作製するための母材として、母材20’を用意する。母材20’は、後述する工程において加工を施すことにより、基板20になり得るものである。
次に、図7(f)に示すように、母材20’の表面にレジスト膜80を形成する。このレジスト膜80には、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術とにより、後述する工程で母材20’に形成する各吐出液貯留室21および吐出液供給室22に対応する窓部81を形成する。
そして、この母材20’を加工するエッチング処理を施す。これにより、窓部81を介して母材20’が部分的にエッチングされ、図7(g)に示す各吐出液貯留室21および吐出液供給室22が得られる。その後、レジスト膜80を除去する。
[6]次に、図7(h)に示すように、ノズルプレート10の上面に接合膜15を形成する。
この接合膜15は、プラズマ重合法により形成する。プラズマ重合法は、例えば、強電界中に、原料ガスとキャリアガスとの混合ガスを供給することにより、原料ガス中の分子を重合させ、重合物をノズルプレート10の上面に堆積させ、膜を得る方法である。
以下、接合膜15をプラズマ重合法にて形成する方法について詳述するが、まず、接合膜15の形成方法を説明するのに先立って、ノズルプレート10上にプラズマ重合法を行いて接合膜15を作製する際に用いるプラズマ重合装置について説明し、その後、接合膜15の形成方法について説明する。
図9は、本実施形態にかかるインクジェット式記録ヘッドが備える接合膜の作製に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図9中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図9に示すプラズマ重合装置100は、チャンバー101と、ノズルプレート10を支持する第1の電極130と、第2の電極140と、各電極130、140間に高周波電圧を印加する電源回路180と、チャンバー101内にガスを供給するガス供給部190と、チャンバー101内のガスを排気する排気ポンプ170とを備えている。これらの各部のうち、第1の電極130および第2の電極140がチャンバー101内に設けられている。以下、各部について詳細に説明する。
チャンバー101は、内部の気密を保持し得る容器であり、内部を減圧(真空)状態にして使用されるため、内部と外部との圧力差に耐え得る耐圧性能を有するものとされる。
図9に示すチャンバー101は、軸線が水平方向に沿って配置されたほぼ円筒形をなすチャンバー本体と、チャンバー本体の左側開口部を封止する円形の側壁と、右側開口部を封止する円形の側壁とで構成されている。
チャンバー101の上方には供給口103が、下方には排気口104が、それぞれ設けられている。そして、供給口103にはガス供給部190が接続され、排気口104には排気ポンプ170が接続されている。
なお、本実施形態では、チャンバー101は、導電性の高い金属材料で構成されており、接地線102を介して電気的に接地されている。
第1の電極130は、板状をなしており、ノズルプレート10を支持している。
この第1の電極130は、チャンバー101の側壁の内壁面に、鉛直方向に沿って設けられており、これにより、第1の電極130は、チャンバー101を介して電気的に接地されている。なお、第1の電極130は、図9に示すように、チャンバー本体と同心状に設けられている。
第1の電極130のノズルプレート10を支持する面には、静電チャック(吸着機構)139が設けられている。
この静電チャック139により、図9に示すように、ノズルプレート10を鉛直方向に沿って支持することができる。また、ノズルプレート10に多少の反りがあっても、静電チャック139に吸着させることにより、その反りを矯正した状態でノズルプレート10をプラズマ処理に供することができる。
第2の電極140は、ノズルプレート10を介して、第1の電極130と対向して設けられている。なお、第2の電極140は、チャンバー101の側壁の内壁面から離間した(絶縁された)状態で設けられている。
この第2の電極140には、配線184を介して高周波電源182が接続されている。また、配線184の途中には、マッチングボックス(整合器)183が設けられている。これらの配線184、高周波電源182およびマッチングボックス183により、電源回路180が構成されている。
このような電源回路180によれば、第1の電極130は接地されているので、第1の電極130と第2の電極140との間に高周波電圧が印加される。これにより、第1の電極130と第2の電極140との間隙には、高い周波数で向きが反転する電界が誘起される。
ガス供給部190は、チャンバー101内に所定のガスを供給するものである。
図9に示すガス供給部190は、液状の膜材料(原料液)を貯留する貯液部191と、液状の膜材料を気化してガス状に変化させる気化装置192と、キャリアガスを貯留するガスボンベ193とを有している。また、これらの各部とチャンバー101の供給口103とが、それぞれ配管194で接続されており、ガス状の膜材料(原料ガス)とキャリアガスとの混合ガスを、供給口103からチャンバー101内に供給するように構成されている。
貯液部191に貯留される液状の膜材料は、プラズマ重合装置100により、重合してノズルプレート10の表面に重合膜を形成する原材料となるものである。
このような液状の膜材料は、気化装置192により気化され、ガス状の膜材料(原料ガス)となってチャンバー101内に供給される。なお、原料ガスについては、後に詳述する。
ガスボンベ193に貯留されるキャリアガスは、電界の作用により放電し、およびこの放電を維持するために導入するガスである。このようなキャリアガスとしては、例えば、Arガス、Heガス等が挙げられる。
また、チャンバー101内の供給口103の近傍には、拡散板195が設けられている。
拡散板195は、チャンバー101内に供給される混合ガスの拡散を促進する機能を有する。これにより、混合ガスは、チャンバー101内に、ほぼ均一の濃度で分散することができる。
排気ポンプ170は、チャンバー101内を排気するものであり、例えば、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ等で構成される。このようにチャンバー101内を排気して減圧することにより、ガスを容易にプラズマ化することができる。また、大気雰囲気との接触によるノズルプレート10の汚染・酸化等を防止するとともに、プラズマ処理による反応生成物をチャンバー101内から効果的に除去することができる。
また、排気口104には、チャンバー101内の圧力を調整する圧力制御機構171が設けられている。これにより、チャンバー101内の圧力が、ガス供給部190の動作状況に応じて、適宜設定される。
次に、ノズルプレート10の上面に接合膜15を形成する方法について説明する。
まず、ケースヘッド60が下側になるように、ノズルプレート10をプラズマ重合装置100のチャンバー101内に収納して封止状態とした後、排気ポンプ170の作動により、チャンバー101内を減圧状態とする。
次に、ガス供給部190を作動させ、チャンバー101内に原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給する。供給された混合ガスは、チャンバー101内に充填される。
ここで、混合ガス中における原料ガスの占める割合(混合比)は、原料ガスやキャリアガスの種類や目的とする成膜速度等によって若干異なるが、例えば、混合ガス中の原料ガスの割合を20〜70%程度に設定するのが好ましく、30〜60%程度に設定するのがより好ましい。これにより、重合膜の形成(成膜)の条件の最適化を図ることができる。
また、供給するガスの流量は、ガスの種類や目的とする成膜速度、膜厚等によって適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、原料ガスおよびキャリアガスの流量を、それぞれ、1〜100ccm程度に設定するのが好ましく、10〜60ccm程度に設定するのがより好ましい。
次いで、電源回路180を作動させ、一対の電極130、140間に高周波電圧を印加する。これにより、一対の電極130、140間に存在するガスの分子が電離し、プラズマが発生する。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、重合物がノズルプレート10上に付着・堆積する。これにより、図7(h)に示すように、ノズルプレート10の上面にプラズマ重合膜で構成された接合膜15が形成される。
また、プラズマの作用により、ノズルプレート10の表面が活性化・清浄化される。このため、原料ガスの重合物がノズルプレート10の表面に堆積し易くなり、接合膜15の安定した成膜が可能になる。このようにプラズマ重合法によれば、ノズルプレート10の構成材料によらず、ノズルプレート10と接合膜15との密着強度をより高めることができる。
原料ガスとしては、例えば、メチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルシロキサンのようなオルガノシロキサン等が挙げられる。
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜、すなわち接合膜15は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわちポリオルガノシロキサンで構成されることとなる。
プラズマ重合の際、一対の電極130、140間に印加する高周波の周波数は、特に限定されないが、1kHz〜100MHz程度であるのが好ましく、10〜60MHz程度であるのがより好ましい。
また、高周波の出力密度は、特に限定されないが、0.01〜100W/cm程度であるのが好ましく、0.1〜50W/cm程度であるのがより好ましく、1〜40W/cm程度であるのがさらに好ましい。高周波の出力密度を前記範囲内とすることにより、高周波の出力密度が高過ぎて原料ガスに必要以上のプラズマエネルギーが付加されるのを防止しつつ、ランダムな原子構造を有するSi骨格301を確実に形成することができる。すなわち、高周波の出力密度が前記下限値を下回った場合、原料ガス中の分子に重合反応を生じさせることができず、接合膜15を形成することができないおそれがある。一方、高周波の出力密度が前記上限値を上回った場合、原料ガスが分解する等して、脱離基303となり得る構造がSi骨格301から分離してしまい、得られる接合膜15において脱離基303の含有率が著しく低くなったり、Si骨格301のランダム性が低下する(規則性が高くなる)おそれがある。
また、成膜時のチャンバー101内の圧力は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。
原料ガス流量は、0.5〜200sccm程度であるのが好ましく、1〜100sccm程度であるのがより好ましい。一方、キャリアガス流量は、5〜750sccm程度であるのが好ましく、10〜500sccm程度であるのがより好ましい。
処理時間は、1〜10分程度であるのが好ましく、4〜7分程度であるのがより好ましい。なお、成膜される接合膜15の厚さは、主に、この処理時間に比例する。したがって、この処理時間を調整することのみで、接合膜15の厚さを容易に調整することができる。このため、従来は、接着剤を用いて基板とノズルプレートとを接着した場合、接着剤の厚さを厳密に制御することができなかったが、接合膜15によれば、接合膜15の厚さを厳密に制御することができるので、基板20とノズルプレート10との距離を厳密に制御することができる。
また、ノズルプレート10の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、接合膜15を得ることができる。
[7]次に、ノズルプレート10上に形成した接合膜15、および前述した封止板の下面に形成した接合膜25に対してエネルギーを付与する。接合膜25は、接合膜15と同様であるため、以下、代表として接合膜15の挙動について説明する。
エネルギーが付与されると、接合膜15では、図4に示すように、脱離基303がSi骨格301から脱離する。そして、脱離基303が脱離した後には、図5に示すように、接合膜15の表面および内部に活性手304が生じる。これにより、接合膜15の表面に、ノズルプレート10との接着性が発現する。
ここで、接合膜15に付与するエネルギーは、いかなる方法で付与されてもよく、例えば、(I)接合膜15にエネルギー線を照射する方法、(II)接合膜15を加熱する方法、(III)接合膜15に圧縮力を付与する(物理的エネルギーを付与する)方法が代表的に挙げられ、この他、プラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、オゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。
このうち、接合膜15にエネルギーを付与する方法として、特に、上記(I)、(II)、(III)の各方法のうち、少なくとも1つの方法を用いるのが好ましい。これらの方法は、接合膜15に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギー付与方法として好適である。
以下、上記(I)、(II)、(III)の各方法について詳述する。
(I)接合膜15にエネルギー線を照射する場合、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザー光のような光、X線、γ線、電子線、イオンビームのような粒子線等、またはこれらのエネルギー線を組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長126〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい。かかる紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜15中のSi骨格301が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、Si骨格301と脱離基303との間の結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜15の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜15に接着性を発現させることができる。
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、脱離基303の脱離を効率よく行わせることができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、160〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜15の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜15との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
また、紫外線を照射する時間は、接合膜15の表面付近の脱離基303を脱離し得る程度の時間、すなわち、接合膜15の内部の脱離基303を多量に脱離させない程度の時間とするのが好ましい。具体的には、紫外線の光量、接合膜15の構成材料等に応じて若干異なるものの、0.5〜30分程度であるのが好ましく、1〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
一方、レーザー光としては、例えば、エキシマレーザー(フェムト秒レーザー)、Nd−YAGレーザー、Arレーザー、COレーザー、He−Neレーザー等が挙げられる。
また、接合膜15に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、特に大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、接合膜15に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与によるノズルプレート10の変質・劣化を防止することができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜15から脱離する脱離基303の脱離量を調整することが可能となる。このように脱離基303の脱離量を調整することにより、接合膜15とノズルプレート10との間の接合強度を容易に制御することができる。
すなわち、脱離基303の脱離量を多くすることにより、接合膜15の表面および内部に、より多くの活性手が生じるため、接合膜15に発現する接着性をより高めることができる。一方、脱離基303の脱離量を少なくすることにより、接合膜15の表面および内部に生じる活性手を少なくし、接合膜15に発現する接着性を抑えることができる。
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
(II)接合膜15を加熱する場合(図示せず)、加熱温度を25〜100℃程度に設定するのが好ましく、50〜100℃程度に設定するのがより好ましい。かかる範囲の温度で加熱すれば、封止板やノズルプレート10等が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合膜15を確実に活性化させることができる。
また、加熱時間は、接合膜15の分子結合を切断し得る程度の時間であればよく、具体的には、加熱温度が前記範囲内であれば、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、接合膜15は、いかなる方法で加熱されてもよいが、例えば、ヒータを用いる方法、赤外線を照射する方法、火炎に接触させる方法等の各種加熱方法で加熱することができる。
なお、基板20とノズルプレート10の熱膨張率がほぼ等しい場合には、上記のような条件で接合膜15を加熱すればよいが、基板20とノズルプレート10の熱膨張率が互いに異なっている場合には、後に詳述するが、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
(III)本実施形態では、基板20とノズルプレート10とを貼り合わせる前に、接合膜15に対してエネルギーを付与する場合について説明しているが、かかるエネルギーの付与は、基板20とノズルプレート10とを重ね合わせた後に行われるようにしてもよい。すなわち、ノズルプレート10上に接合膜15を形成した後、エネルギーを付与する前に、接合膜15と基板20とが密着するように、基板20とノズルプレート10とを重ね合わせて、仮接合体とする。そして、この仮接合体中の接合膜15に対してエネルギーを付与することにより、接合膜15に接着性が発現し、接合膜15を介して基板20とノズルプレート10とが接合(接着)される。
この場合、仮接合体中の接合膜15に対するエネルギーの付与は、前述した(I)、(II)の方法でもよいが、接合膜15に圧縮力を付与する方法を用いてもよい。
この場合、基板20とノズルプレート10とが互いに近づく方向に、0.2〜10MPa程度の圧力で圧縮するのが好ましく、1〜5MPa程度の圧力で圧縮するのがより好ましい。これにより、単に圧縮するのみで、接合膜15に対して適度なエネルギーを簡単に付与することができ、接合膜15に十分な接着性が発現する。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、基板20とノズルプレート10の各構成材料によっては、基板20やノズルプレート10に損傷等が生じるおそれがある。
また、圧縮力を付与する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、圧縮力を付与する時間は、圧縮力の大きさに応じて適宜変更すればよい。具体的には、圧縮力の大きさが大きいほど、圧縮力を付与する時間を短くすることができる。
なお、仮接合体の状態では、基板20とノズルプレート10との間が接合されていないので、これらの相対的な位置を容易に調整する(ずらす)ことができる。したがって、一旦、仮接合体を得た後、基板20とノズルプレート10との相対位置を微調整することにより、最終的に得られるヘッド1の組み立て精度(寸法精度)を確実に高めることができる。
また、この圧縮力は、前述した仮接合体のうち、吐出液貯留室に対応する位置を避けるようにして付与されるのが好ましい。これにより、封止板やノズルプレート10が湾曲するのを防止して、封止板とノズルプレート10との平行度を維持することができる。その結果、ヘッド1の組み立て精度のさらなる向上を図ることができる。
以上のような(I)、(II)、(III)の各方法により、接合膜15にエネルギーを付与することができる。
なお、接合膜15の全面にエネルギーを付与するようにしてもよいが、一部の領域のみに付与するようにしてもよい。このようにすれば、接合膜15の接着性が発現する領域を制御することができ、この領域の面積・形状等を適宜調整することによって、接合界面に発生する応力の局所集中を緩和することができる。これにより、例えば、基板20とノズルプレート10の熱膨張率差が大きい場合でも、これらを確実に接合することができる。
ここで、前述したように、エネルギーが付与される前の状態の接合膜15は、図4に示すように、Si骨格301と脱離基303とを有している。かかる接合膜15にエネルギーが付与されると、脱離基303(本実施形態では、メチル基)がSi骨格301から脱離する。これにより、図5に示すように、接合膜15の表面31に活性手304が生じ、活性化される。その結果、接合膜15の表面に接着性が発現する。
また、接合膜15を「活性化させる」とは、接合膜15の表面31および内部の脱離基303が脱離して、Si骨格301において終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態や、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、または、これらの状態が混在した状態のことを言う。
したがって、活性手304とは、未結合手(ダングリングボンド)、または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。このような活性手304によれば、ノズルプレート10に対して、特に強固な接合が可能となる。
なお、後者の状態(未結合手が水酸基によって終端化された状態)は、例えば、接合膜15に対して大気雰囲気中でエネルギー線を照射することにより、大気中の水分が未結合手を終端化することによって、容易に生成することができる。
[8]次に、前記工程で作製した封止板(封止シート30と振動板40との積層体)と、ノズルプレート10とを用意し、図7(h)に示すように、接着性が発現した接合膜15と基板20とが密着するようにノズルプレート10と基板20とを貼り合わせるとともに、接着性が発現した接合膜25と基板20とが密着するように封止板と基板20とを貼り合わせる。これにより、図7(i)に示すように、封止板、基板20およびノズルプレート10が、各接合膜15、25を介して接合(接着)される。
ここで、本発明では、封止板、基板20およびノズルプレート10の3部材を接合する際に、これらの接合を同時に行うことを特徴とする。このように同時に接合することにより、封止板と基板20、および、基板20とノズルプレート10をそれぞれ個別に時間差をもって接合する場合に比べ、接合後の寸法精度を高めることができる。
具体的には、従来、封止板と基板20とを先に接合する場合、両者の熱膨張率差に伴って接合後の接合体に反り等の変形が発生する。このため、今度は基板20とノズルプレート10とを接合する際に、反りが発生した基板20に沿ってノズルプレート10を接合しなければならず、基板20に対するノズルプレート10の位置精度が低下することが避けられなかった。このため、例えば複数のノズル孔11の基板20に対する位置にバラツキが生じ、インクジェットプリンタ9の印字品位の低下を招いていた。
これに対し、本発明によれば、封止板、基板20およびノズルプレート10の3部材を同時に接合することにより、接合後のこれらの部材の位置精度が低下するのを防止することができる。これにより、複数のノズル孔11の位置を基板20に対して厳密に制御することができる。
また、3部材のうちの中央に位置する基板20は、シリコンのような比較的熱膨張率が小さい材料で構成される一方、基板20の上方に位置する封止板や下方に位置するノズルプレート10は、基板20に比べて熱膨張率が大きい材料で構成される。すなわち、相対的に熱膨張率が小さい基板20を、相対的に熱膨張率が大きい封止板およびノズルプレート10で挟み込むようにして、これらを同時に接合する。このため、接合体中において熱膨張率差に起因する応力が相殺されることとなり、本発明によれば、3部材を個別に接合する場合に比べ、反り等の変形を確実に抑制することができる。
以下、特に基板20とノズルプレート10との接合について代表に説明する。なお、基板20と封止板との接合も同様である。
上記のようにして接合される基板20とノズルプレート10の各熱膨張率は、ほぼ等しいのが好ましい。基板20とノズルプレート10の熱膨張率がほぼ等しければ、これらを貼り合せた際に、その接合界面に熱膨張に伴う応力が発生し難くなる。その結果、最終的に得られるヘッド1において、剥離等の不具合が発生するのを確実に防止することができる。
また、基板20とノズルプレート10の各熱膨張率が互いに異なる場合でも、基板20とノズルプレート10とを貼り合わせる際の条件を以下のように最適化することにより、基板20とノズルプレート10とを高い寸法精度で強固に接合することができる。
すなわち、基板20とノズルプレート10の熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
具体的には、基板20とノズルプレート10との熱膨張率差にもよるが、基板20とノズルプレート10の温度が25〜50℃程度である状態下で、基板20とノズルプレート10とを貼り合わせるのが好ましく、25〜40℃程度である状態下で貼り合わせるのがより好ましい。このような温度範囲であれば、基板20とノズルプレート10の熱膨張率差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、ヘッド1における反りや剥離等の発生を確実に防止することができる。
また、この場合、基板20とノズルプレート10との間の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが特に推奨される。なお、接合膜15を用いることにより、上述したような低温下でも、基板20とノズルプレート10とを強固に接合することができる。
なお、ノズルプレート10の接合膜15を成膜する領域には、あらかじめ、接合膜15との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。これにより、接合膜15のノズルプレート10に対する密着強度をより高めることができ、最終的には、基板20とノズルプレート10との接合強度を高めることができる。
かかる表面処理としては、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。このような処理を施すことにより、ノズルプレート10の表面を清浄化するとともに、該領域を活性化させることができる。
また、これらの各表面処理の中でもプラズマ処理を用いることにより、接合膜15を形成するために、ノズルプレート10の表面を特に最適化することができる。
なお、表面処理を施すノズルプレート10が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、ノズルプレート10の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜15の接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られるノズルプレート10の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
このような材料で構成されたノズルプレート10は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、比較的活性の高い水酸基が結合している。したがって、このような材料で構成されたノズルプレート10を用いると、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜15をノズルプレート10に対して強固に密着させることができる。
なお、この場合、ノズルプレート10の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合膜15を成膜する領域の表面付近が上記のような材料で構成されていればよい。
さらに、ノズルプレート10の接合膜15を成膜する領域に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜15のノズルプレート10に対する密着強度を十分に高くすることができる。
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような官能基、ラジカル、開環分子、2重結合、3重結合のような不飽和結合、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基または物質が挙げられる。
また、このようなものを有する表面が得られるように、上述したような各種表面処理を適宜選択して行うのが好ましい。
また、表面処理に代えて、ノズルプレート10の少なくとも接合膜15を成膜する領域には、あらかじめ、中間層を形成しておくのが好ましい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、接合膜15との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層を介してノズルプレート10上に接合膜15を成膜することにより、ノズルプレート10と接合膜15との接合強度を高め、信頼性の高い接合体、すなわちヘッド1を得ることができる。
かかる中間層の構成材料としては、例えば、アルミニウム、チタンのような金属系材料、金属酸化物、シリコン酸化物のような酸化物系材料、金属窒化物、シリコン窒化物のような窒化物系材料、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素系材料、シランカップリング剤、チオール系化合物、金属アルコキシド、金属−ハロゲン化合物のような自己組織化膜材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの各材料で構成された中間層の中でも、酸化物系材料で構成された中間層によれば、ノズルプレート10と接合膜15との間の接合強度を特に高めることができる。
一方、基板20の接合膜15と接触する領域にも、あらかじめ、接合膜15との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。これにより、基板20と接合膜15との間の接合強度をより高めることができる。
なお、この表面処理には、ノズルプレート10に対して施す前述したような表面処理と同様の処理を適用することができる。
また、表面処理に代えて、基板20の接合膜15と接触する領域に、あらかじめ、接合膜15との密着性を高める機能を有する中間層を形成しておくのが好ましい。これにより、基板20と接合膜15との間の接合強度をより高めることができる。
かかる中間層の構成材料には、前述のノズルプレート10に形成する中間層の構成材料と同様のものを用いることができる。
なお、基板20やノズルプレート10に対する前述の表面処理および中間層の形成は、言うまでもなく、封止シート30、振動板40、圧電素子50およびケースヘッド60に対して行うようにしてもよい。これにより、各部の接合強度をより高めることができる。
ここで、本工程において、接合膜15を備えるノズルプレート10と基板20とが接合されるメカニズムについて説明する。
例えば、基板20のノズルプレート10との接合に供される領域に、水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、接合膜15と基板20とが接触するように、基板20とノズルプレート10とを貼り合わせたとき、接合膜15の表面31に存在する水酸基と、基板20の前記領域に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、接合膜15を備えるノズルプレート10と基板20とが接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合する。その結果、接合膜15と基板20との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が酸素原子を介して結合する。これにより、接合膜15を介して基板20とノズルプレート10とがより強固に接合されると推察される。
なお、前記工程で活性化された接合膜15の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程の終了後、できるだけ早く本工程を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程の終了後、60分以内に本工程を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜15の表面が十分な活性状態を維持しているので、本工程で接合膜15を備えるノズルプレート10と基板20とを貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
このようにして接合された基板20とノズルプレート10との間は、その接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度であれば、接合界面の剥離を十分に防止し得るものとなる。そして、信頼性の高いヘッド1が得られる。
[9]次に、振動板40上に形成した接合膜45a(第2の接合膜)に対してエネルギーを付与する。これにより、接合膜45aに接着性が発現する。なお、接合膜45aに対するエネルギーの付与は、前述した接合膜15に対するエネルギーの付与方法と同様の方法で行うことができる。
[10]次に、圧電素子50を用意し、接着性が発現した接合膜45aと圧電素子50とが密着するように、振動板40と圧電素子50とを貼り合わせる。これにより、図8(j)に示すように、振動板40と圧電素子50とが接合される。
[11]次に、振動板40上に形成した接合膜45b(第3の接合膜)に対してエネルギーを付与する。これにより、接合膜45bに接着性が発現する。なお、接合膜45bに対するエネルギーの付与は、前述した接合膜15に対するエネルギーの付与方法と同様の方法で行うことができる。
[12]次に、ケースヘッド60を用意し、接着性が発現した接合膜45bとケースヘッド60とが密着するように、振動板40とケースヘッド60とを貼り合わせる。これにより、図8(k)に示すように、振動板40とケースヘッド60とが接合される。
以上のような工程を経て、ヘッド1が製造される。
また、ヘッド1を得た後、このヘッド1に対して、必要に応じ、以下の2つの工程([13A]および[13B])のうちの少なくとも1つの工程(ヘッド1の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、ヘッド1の各部の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
[13A]得られたヘッド1を圧縮するように、すなわちノズルプレート10、基板20、封止シート30、振動板40およびケースヘッド60が互いに近づく方向に加圧する。
これにより、上記各部の表面と隣接する接合膜の表面とがより近接し、ヘッド1における接合強度をより高めることができる。
また、ヘッド1を加圧することにより、ヘッド1中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、ヘッド1における接合強度をさらに高めることができる。
このとき、ヘッド1を加圧する際の圧力は、ヘッド1が損傷を受けない程度の圧力で、できるだけ高い方が好ましい。これにより、この圧力に比例してヘッド1における接合強度を高めることができる。
なお、この圧力は、ヘッド1の各部の構成材料や形状、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、上記条件に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、ヘッド1の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、ヘッド1の各部の構成材料によっては、ヘッド1に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、ヘッド1を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
[13B]得られたヘッド1を加熱する。
これにより、ヘッド1における接合強度をより高めることができる。
このとき、ヘッド1を加熱する際の温度は、室温より高く、ヘッド1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、ヘッド1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
なお、前記工程[13A]、[13B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、ヘッド1を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、ヘッド1の接合強度を特に高めることができる。
以上のような工程を行うことにより、ヘッド1における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
以上のような方法で製造されたヘッド1では、各吐出液貯留室21および吐出液供給室22の内面にプラズマ重合法により形成された各接合膜15、25が設けられている。
ここで、各接合膜15、25は、シラン系ガスを原料ガスとしてプラズマ重合法により形成されたものであり、膜中にアルキル基等の有機基を含んでいるため、疎水性(親油性)が高い。このため、各吐出液貯留室21等に貯留されたインクが、工業用インクのように親油性の高いものである場合、各吐出液貯留室21の内面のインクに対する親和性が向上し、インクの流動性を高めることができる。また、インクと各吐出液貯留室21の内面との間に空気層が生じ難くなるため、圧電素子50の変位に伴ってインクに及ぼされる圧力が、空気層によって吸収されてしまうのを防止することができる。その結果、目的とする量のインクを効率よく確実に吐出可能なヘッド1を得ることができる。
また、各接合膜15、25は、プラズマ重合法により形成されたものであるため、緻密であり、耐薬品性に優れている。このため、各接合膜15、25は、部材間を接合する機能に加え、各吐出液貯留室21および吐出液供給室22の内面がインクに侵されるのを保護する保護膜としての機能を併せ持つものとなる。これにより、各吐出液貯留室21の耐久性が向上し、ヘッド1の長寿命化を図ることができる。さらに、各吐出液貯留室21の構成材料がインク中に溶出するのを防止することができ、インクが変質・劣化したり、インクの発色が変化するのを防止することができる。
なお、本実施形態では、前述した3部材を接合した後、得られた接合体に圧電素子50およびケースヘッド60を順次接合する場合について説明しているが、これらの部材も、前述した3部材と同時に接合されるのが好ましい。このようにすれば、圧電素子50およびケースヘッド60をそれぞれ個別に接合した場合に比べ、接合後の寸法精度を高めることができる。その結果、寸法精度がより高く、印字品位に特に優れたヘッド1を得ることができる。
≪第2実施形態≫
次に、本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法の第2実施形態について説明する。
図10は、本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図10中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、液滴吐出ヘッドの製造方法の第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態にかかる液滴吐出ヘッドとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかるインクジェット式記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)は、各接合膜15、25を成膜した箇所が異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかるヘッド1の製造方法は、封止シート30上に接合膜35を形成し、この接合膜35を介して封止シート30と振動板40とを接合し、封止板とする工程と、母材20’をエッチングして得られた基板20とノズルプレート10とを用意し、基板20の下面に成膜した接合膜15を介して基板20とノズルプレート10とを接合するとともに、基板20の上面に成膜した接合膜25を介して基板20と封止板とを接合する工程と、接合膜45aを介して封止板と圧電素子50とを接合する工程と、接合膜45bを介して封止板とケースヘッド60とを接合する工程とを有する。
以下、各工程について順次説明する。
まず、前記第1実施形態と同様にして、封止シート30と振動板40とを接合し、封止板を得る。次いで、封止板中の振動板40の上面の接合膜45aおよび接合膜45bを形成する。
次に、基板20の下面に、プラズマ重合法により接合膜15を形成する。また、基板20の上面に、接合膜25を形成する。
次いで、各接合膜15、25にそれぞれエネルギーを付与した後、封止板、基板20およびノズルプレート10の3部材を同時に接合する。
次に、前記第1実施形態と同様にして、封止板上(振動板40上)に圧電素子50を接合する。
次に、前記第1実施形態と同様にして、封止板上(振動板40上)にケースヘッド60を接合する。
以上のような工程を経て、ヘッド1が製造される。
以上のような第2実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
また、本実施形態にかかるヘッド1の製造方法によれば、前記第1実施形態と異なり、各吐出液貯留室21および吐出液供給室22の内面に、接合膜が設けられていない。すなわち、各吐出液貯留室21および吐出液供給室22の内面には、ノズルプレート10や封止シート30が露出している。
ここで、ノズルプレート10や封止シート30の表面は、その構成材料にもよるが、一般に親水性を有している。このため、各吐出液貯留室21等に貯留されたインクが、民生用プリンタ向けインクのように親水性の高いものである場合、各吐出液貯留室21の内面のインクに対する親和性が向上し、インクの流動性を高めることができる。また、インクと各吐出液貯留室21の内面との間に空気層が生じ難くなるため、圧電素子50の変位に伴ってインクに及ぼされる圧力が、空気層によって吸収されてしまうのを防止することができる。その結果、目的とする量のインクを効率よく確実に吐出可能なヘッド1を得ることができる。なお、この場合、必要に応じて封止シート30やノズルプレート10の表面を親水化する表面処理を行うようにしてもよい。
また、前記第1実施形態と本実施形態とは、単に、各接合膜15、25を成膜する位置を異ならせただけであるため、これによりヘッド1に用いるインクの特性に応じて、前記第1実施形態にかかるヘッドの製造方法と、本実施形態にかかるヘッドの製造方法とを適宜選択することによって、油性および水性のいずれの性質のインクであっても、目的とする量のインクを効率よく確実に吐出可能なヘッド1を容易に製造することができる。すなわち、本発明によれば、印字品位に優れたヘッド1を効率よく製造することができる。
≪第3実施形態≫
次に、本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法の第3実施形態について説明する。
図11は、本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図11中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、液滴吐出ヘッドの製造方法の第3実施形態について説明するが、前記第1実施形態にかかる液滴吐出ヘッドとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかるインクジェット式記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)は、接合膜同士を接合することにより部材同士を接合するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかるヘッド1の製造方法は、封止シート30上に成膜した接合膜35と振動板40の下面に成膜した接合膜35とを接合し、封止板とする工程と、母材20’をエッチングして得られた基板20とノズルプレート10とを用意し、ノズルプレート10上に成膜した接合膜15と基板20の下面に成膜した接合膜15とを接合するとともに、封止板(封止シート30)の下面に成膜した接合膜25と基板20上に成膜した25とを接合する工程と、封止板(振動板40)上に成膜した接合膜45aと圧電素子50の下面に成膜した接合膜45aとを接合する工程と、封止板(振動板40)上に成膜した接合膜45bとケースヘッド60の下面に成膜した接合膜45bとを接合する工程とを有する。
以下、各工程について順次説明する。
まず、封止シート30上と振動板40の下面にそれぞれ接合膜35を成膜する。次いで、各接合膜35、35にエネルギーを付与した後、接合膜35同士が密着するように封止シート30と振動板40とを貼り合わせることにより、これらを接合する。これにより、封止板を得る。
次いで、封止板(封止シート30)の下面に接合膜25を形成するとともに、封止板(振動板40)上に接合膜45aおよび接合膜45bを形成する。
一方、母材20’をエッチングして得られた基板20を用意し、基板20上に接合膜25を形成するとともに、基板20の下面に接合膜15を形成する。
また、ノズルプレート10を用意し、その上面に接合膜15を形成する。
そして、各接合膜25、25および各接合膜15、15にそれぞれエネルギーを付与した後、接合膜25同士および接合膜15同士が密着するように、封止板、基板20およびノズルプレート10の3部材を同時に貼り合わせる。これにより、3部材の接合体が得られる。
次に、前記第1実施形態と同様にして、接合体の封止板上(振動板40上)に圧電素子50を接合する。
次に、前記第1実施形態と同様にして、接合体の封止板上(振動板40上)にケースヘッド60を接合する。
以上のような工程を経て、ヘッド1が製造される。
以上のような第3実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
また、本実施形態では、接合膜同士を接合するようにしたため、被着体(接合される部材)の材質によらず、より強固に接合することが可能である。
さらに、本実施形態にかかる製造方法で製造されたヘッド1では、前記第1実施形態と同様、各吐出液貯留室21および吐出液供給室22の内面にプラズマ重合法により形成された各接合膜15、25が設けられている。このため、各吐出液貯留室21の内面のインクに対する親和性が向上し、インクの流動性を高めたり、インクの変質・劣化を防止することができる。
以上、本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法は、前記各実施形態のうち、任意の1つまたは2つ以上を組み合わせたものであってもよい。
また、本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、必要に応じて、1以上の任意の目的の工程を追加してもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.インクジェット式記録ヘッドの製造
(実施例1)
<1>まず、ステンレス鋼製のノズルプレート、単結晶シリコン製の板状の母材、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)製の封止シート、ステンレス鋼製の振動板、ジルコン酸鉛の焼結体で構成された圧電体層とAgペーストを焼成した電極膜との積層体からなる圧電素子と、PPS製のケースヘッドとを用意した。
次いで、封止シート上に、平均厚さ200nmのプラズマ重合膜を形成した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
<成膜条件>
・原料ガスの組成 :オクタメチルトリシロキサン
・原料ガスの流量 :10sccm
・キャリアガスの組成:アルゴン
・キャリアガスの流量:10sccm
・高周波電力の出力 :100W
・高周波出力密度 :25W/cm
・チャンバー内圧力 :1Pa(低真空)
・処理時間 :15分
・基板温度 :20℃
このようにして成膜されたプラズマ重合膜は、オクタメチルトリシロキサン(原料ガス)の重合物で構成されており、シロキサン結合を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格と、アルキル基(脱離基)とを含むものである。
次に、得られたプラズマ重合膜に以下に示す条件で紫外線を照射した。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :大気(空気)
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
そして、紫外線を照射してから1分後に、プラズマ重合膜の紫外線を照射した面と、振動板とが接触するように、封止シートと振動板とを貼り合わせた。これにより、封止シートと振動板との接合体を得た。
次いで、接合体の表面にレジスト膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術により、レジスト膜をパターニングした。そして、このレジスト膜をマスクとして接合体にエッチング処理を施した。これにより、接合体に貫通孔および凹部(図6参照)を形成した。その後、レジスト膜を除去して、封止板を得た。
次いで、封止板の両面にプラズマ重合膜を形成した。
<2>次に、母材の表面にレジスト膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術により、レジスト膜をパターニングした。そして、このレジスト膜をマスクとして母材にエッチング処理を施した。これにより、母材に、各吐出液貯留室および吐出液供給室を形成した。その後、レジスト膜を除去して、吐出液貯留室形成基板を得た。
<3>次に、ノズル孔を備えるノズルプレートを用意し、その上に前述した成膜条件でプラズマ重合膜を成膜した。
<4>次に、封止板の下面に成膜したプラズマ重合膜およびノズルプレート上に成膜したプラズマ重合膜に、それぞれ前述した照射条件で紫外線を照射した。
次いで、封止板、吐出液貯留室形成基板およびノズルプレートの3部材をこの順で重ね、同時に貼り合わせた。これにより、3部材の接合体を得た。
<5>次に、封止板上に成膜したプラズマ重合膜の一部に紫外線を照射し、この照射面に対して圧電素子を貼り合わせた。これにより、圧電素子を組み立てた。
<6>次に、封止板上に成膜したプラズマ重合膜の残部に紫外線を照射し、この照射面に対してケースヘッドを貼り合わせた。これにより、ケースヘッドを組み立て、図2に示すインクジェット式記録ヘッドを作製した。
<7>次に、得られたインクジェット式記録ヘッドを3MPaの圧力で圧縮しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、インクジェット式記録ヘッドの接合強度の向上を図った。
(実施例2)
封止板の下面に成膜するのではなく、基板20上にプラズマ重合膜を形成するように変更するとともに、ノズルプレート上にプラズマ重合膜を成膜するのではなく、基板20の下面にプラズマ重合膜を形成するように変更した以外は、前記実施例1と同様にして図10に示すインクジェット式記録ヘッドを作製した。
(実施例3)
接合に供されるノズルプレート、吐出液貯留室形成基板、封止シート、振動板、圧電素子およびケースヘッドの各部材間に接合に際し、各部材表面に成膜したプラズマ重合膜同士を接合するようにした以外は、前記実施例1と同様にして図11に示すインクジェット式記録ヘッドを作製した。
(比較例1)
封止板、吐出液貯留室形成基板およびノズルプレートの3部材を接合する際に、まず封止板と吐出液貯留室形成基板とを接合して接合体とした後、次いで、この接合体とノズルプレートとを接合するようにした以外は、前記実施例1と同様にして図2に示すインクジェット式記録ヘッドを作製した。
(比較例2)
プラズマ重合膜に代えて、エポキシ系接着剤を用いるようにした以外は、前記実施例1と同様にして図2に示すインクジェット式記録ヘッドを作製した。
2.インクジェット式記録ヘッドの評価
2.1 印字品位の評価
各実施例および各比較例で得られたインクジェット式記録ヘッドをインクジェットプリンタに組み込み、印刷用紙に印字した。なお、印字に用いたインクとして、油性インクおよび水性インクを用い、それぞれの印字結果を個別に評価した。そして、印字結果について、以下の評価基準にしたがい評価を行った。
<印字品位の評価基準>
◎:印字ムラがない
○:わずかに印字ムラが認められる
△:多くの薄い印字ムラが認められる
×:多くの濃い印字ムラが認められる
2.2 耐薬品性の評価
各実施例および各比較例において、それぞれ4つのインクジェット式記録ヘッドを作製し、この4つのうちの2つには、80℃に維持した油性インクと水性インクとをそれぞれ充填し、3週間保持した。また、残る2つには、同様の油性インクと水性インクとをそれぞれ充填して100日間保持した。その後、各インクジェット式記録ヘッドの各部材を引き剥し、接合界面にインクが浸入していないか確認した。そして、その結果を以下の評価基準にしたがって評価した。
<耐薬品性の評価基準>
◎:全く浸入していない
○:角部にわずかに浸入している
△:縁部に沿って浸入している
×:ヘッドからインクが漏出している
以上、2.1および2.2の評価結果を表1に示す。
Figure 2010030048
表1から明らかなように、各実施例で得られたインクジェット式記録ヘッドは、印字品位が良好であった。特に、油性インクを用いた場合には、実施例1、3で得られたインクジェット式記録ヘッドにおいて、また、水性インクを用いた場合には、実施例2で得られたインクジェット式記録ヘッドにおいて、それぞれ特に良好な印字結果が得られた。
一方、各比較例で得られたインクジェット式記録ヘッドでは、印字結果に多くの印字ムラが認められた。
このような印字ムラに認められる差異は、インクジェット式記録ヘッドに設けられた複数のノズル孔の位置精度に起因したものと考えられる。すなわち、各比較例で得られたインクジェット式記録ヘッドでは、紙送り方向およびヘッドの走査方向に対して複数のノズル孔の配列方向がずれていた(ノズルプレートの組み立て精度が低かった)ため、部分的に筋状の印字ムラが発生したと推察される。
また、各実施例で得られたインクジェット式記録ヘッドは、各比較例に比べて長期にわたるインク耐性に優れていた。特に実施例3で得られたインクジェット式記録ヘッドは、その傾向が顕著であった。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法により製造された液滴吐出ヘッドをインクジェット式記録ヘッドに適用した場合を示す分解斜視図である。 図1に示すインクジェット式記録ヘッドの断面図である。 図1に示すインクジェット式記録ヘッドを備えるインクジェットプリンタの実施形態を示す概略図である。 本発明の接合膜付き基材が備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。 本発明の接合膜付き基材が備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。 本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本実施形態にかかるインクジェット式記録ヘッドが備える接合膜の作製に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。 本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
符号の説明
1……インクジェット式記録ヘッド 10……ノズルプレート 11……ノズル孔 15、25、35、45a、45b……接合膜 20……吐出液貯留室形成基板 20’……母材 21……吐出液貯留室 22……吐出液供給室 23……貫通孔 30……封止シート 40……振動板 50……圧電素子 51……圧電体層 52……電極膜 53……凹部 60……ケースヘッド 61……吐出液供給路 70……リザーバ 80……レジスト膜 81……窓部 31……表面 301……Si骨格 302……シロキサン結合 303……脱離基 304……活性手 100……プラズマ重合装置 101……チャンバー 102……接地線 103……供給口 104……排気口 130……第1の電極 139……静電チャック 140……第2の電極 170……排気ポンプ 171……圧力制御機構 180……電源回路 182……高周波電源 183……マッチングボックス 184……配線 190……ガス供給部 191……貯液部 192……気化装置 193……ガスボンベ 194……配管 195……拡散板 9……インクジェットプリンタ 92……装置本体 921……トレイ 922……排紙口 93……ヘッドユニット 931……インクカートリッジ 932……キャリッジ 94……印刷装置 941……キャリッジモータ 942……往復動機構 943……キャリッジガイド軸 944……タイミングベルト 95……給紙装置 951……給紙モータ 952……給紙ローラ 952a……従動ローラ 952b……駆動ローラ 96……制御部 97……操作パネル P……記録用紙

Claims (29)

  1. 吐出液を貯留する吐出液貯留室が形成された基板と、前記吐出液を液滴として吐出するノズル孔を備え、前記吐出液貯留室を覆うように前記基板の一方の面に設けられるノズルプレートと、前記吐出液貯留室を覆うように前記基板の他方の面に設けられる封止板とを用意する第1の工程と、
    前記基板および前記ノズルプレートの各対向面の一方または双方と、前記基板および前記封止板の各対向面の一方または双方とに、それぞれ接合膜を形成する第2の工程と、
    前記各接合膜にエネルギーを付与するとともに、前記各接合膜を介して、前記基板と前記ノズルプレートとの接合、および、前記基板と前記封止板との接合を行う第3の工程とを有し、
    前記各接合膜は、プラズマ重合法により形成されたものであり、シロキサン(Si−O)結合を含むランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、前記第3の工程において、前記各接合膜にエネルギーを付与することにより、前記各接合膜に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離することにより接着性を発現するものであり、
    前記第3の工程において、前記基板と前記ノズルプレートとの接合および前記基板と前記封止板との接合を同時に行うことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  2. 前記接合膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%である請求項1に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  3. 前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3である請求項1または2に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  4. 前記Si骨格の結晶化度は、45%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  5. 前記接合膜は、Si−H結合を含んでいる請求項1ないし4のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  6. 前記Si−H結合を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、Si−H結合に帰属するピーク強度が0.001〜0.2である請求項5に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  7. 前記脱離基は、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子が前記Si骨格に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものである請求項1ないし6のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  8. 前記脱離基は、アルキル基である請求項7に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  9. 前記脱離基としてメチル基を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、メチル基に帰属するピーク強度が0.05〜0.45である請求項8に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  10. 前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されている請求項1ないし9のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  11. 前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものである請求項10に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  12. 前記プラズマ重合法において、プラズマを発生させる際の高周波の出力密度は、0.01〜100W/cmである請求項1ないし11のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  13. 前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmである請求項1ないし12のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  14. 前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものである請求項1ないし13のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  15. 前記基板は、シリコン材料またはステンレス鋼を主材料として構成されている請求項1ないし14のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  16. 前記ノズルプレートは、シリコン材料またはステンレス鋼を主材料として構成されている請求項1ないし15のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  17. 前記封止板は、樹脂材料を主材料として構成されている請求項1ないし16のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  18. 前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および、前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項1ないし17のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  19. 前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線である請求項18に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  20. 前記加熱の温度は、25〜100℃である請求項18に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  21. 前記圧縮力は、0.2〜10MPaである請求項18に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  22. 前記エネルギーの付与は、前記基板、前記ノズルプレートおよび前記封止板を、それぞれ前記各接合膜を介して重ね合わせ、仮接合体とした後、該仮接合体に対して行う請求項1ないし21のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  23. 前記仮接合体の前記吐出液貯留室に対応する位置を避けるようにして、圧縮力を付与する請求項22に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  24. 前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われる請求項1ないし23のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  25. 前記第2の工程において、前記接合膜の前記吐出液に対する特性に応じて、前記各対向面において前記接合膜を形成する領域を選択する請求項1ないし24のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  26. 前記吐出液は、油性のものであり、
    前記第2の工程において、前記吐出液貯留室の内面に対応する領域に前記接合膜を形成することにより、前記吐出液貯留室の内面を前記吐出液に対して親液性とする請求項25に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  27. 前記吐出液は、水性のものであり、
    前記第2の工程において、前記各対向面のうちの前記吐出液貯留室の内面に対応する領域に前記接合膜を形成しないようにすることにより、前記吐出液貯留室の内面を前記吐出液に対して親液性とする請求項25に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  28. 前記第1の工程において、さらに、前記封止板の前記基板と反対側に設けられ、前記封止板を振動させる振動手段を用意し、
    前記第2の工程において、前記封止板および前記振動手段の各対向面の一方または双方に、前記接合膜と同様の第2の接合膜を形成し、
    前記第3の工程において、前記基板と前記ノズルプレートとの接合および前記基板と前記封止板との接合と同時に、前記第2の接合膜を介して、前記封止板と前記振動板とを接合する請求項1ないし27のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  29. 前記第1の工程において、さらに、前記封止板の前記基板と反対側に設けられるケースヘッドを用意し、
    前記第2の工程において、前記封止板および前記ケースヘッドの各対向面の一方または双方に、前記接合膜と同様の第3の接合膜を形成し、
    前記第3の工程において、前記基板と前記ノズルプレートとの接合および前記基板と前記封止板との接合と同時に、前記第3の接合膜を介して、前記封止板と前記ケースヘッドとを接合する請求項1ないし28のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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