以下、添付図面を参照して、無線タグ通信装置及びプログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、一実施形態であって、その構成や仕様等を限定するものではない。
図1は、本実施形態に係る無線タグ通信装置10の使用環境の一例を説明するための図である。同図において、物品1は商品や機器である。物品1は複数個存在しており、当該物品1の各々に無線タグ2が貼付されている。無線タグ2の記憶部3には、自己の無線タグ2と他の無線タグ2とを識別可能な識別情報4が格納されている。無線タグ通信装置10は、各物品1に付加された無線タグ2と交信し、特定の識別情報4を有した無線タグ2の存在位置、つまり物品1の存在位置を探索する。
図2、図3は、無線タグ通信装置10の外観構成の一例を示す図である。ここで、図2は、無線タグ通信装置10の表示面側を示す図であり、図3は、当該表示面に対応するアンテナ面側を示す図である。無線タグ通信装置10は、携帯可能なRFIDリーダ等であって、本体部11と、表示部12と、入力部13と、アンテナ14と、撮像部15とを有している。
表示部12は、液晶パネル等の表示デバイスである。入力部13は、キーボードやポインティングデバイス等の入力デバイスである。なお、表示部12をタッチパネル構成とすることで、当該タッチパネルを入力部13として用いる形態としてもよい。
アンテナ14は、特定の方向に極大の指向性を有する平面パッチアンテナ等の指向性アンテナである。図4は、アンテナ14の構成例を示す模式図である。同図では、アンテナ筐体141の内部に、板状の誘電体142を固定し、この誘電体142のアンテナ面143側に放射器144を設け、その反対の背面側にグランド145を設けている。また、アンテナ14は、図4、図5に示すように、アンテナ面143の中心から略0度を指す方向D1で利得が最大となり、0度から外れるほど利得が減少する指向性を有している。利用者は、無線タグ通信装置10のアンテナ面143を任意の方向に向け、無線タグ2の探索を行う。
図4に戻り、撮像部15は、CCDやCMOS等の撮像素子を有した撮像デバイスである。ここで、撮像部15の撮像方向D2は、アンテナ14の利得が極大となる指向性極大方向(方向D1)と略同一方向に向けられているものとする。
図6は、無線タグ通信装置10の要部構成を示すブロック図である。無線タグ通信装置10は、上述した表示部12、入力部13、アンテナ14及び撮像部15を備えるとともに、通信部16、電源部17、無線タグ通信部18、センサ19及び制御部20を備えている。
通信部16は、通信回線Nを介して接続される上位機器5との通信を司る。上位機器5は、各物品に貼付された識別情報や、当該識別情報に対応した物品に関する物品情報等を格納している。無線タグ通信装置10は、通信部16を介して上位機器5から識別情報や物品情報を取得できるようになっている。なお、通信回線Nは有線、無線を問わないものとする。
電源部17は、バッテリと当該バッテリの充電及び放電を制御する制御回路等を有する(何れも図示せず)。無線タグ通信部18は、アンテナ14と協働することで、無線により無線タグ2と通信し、当該無線タグ2の記憶部3に格納された識別情報4等を受信する。なお、無線タグ通信部18の詳細については後述する。
センサ19は、無線タグ通信装置10が向いている方向を検出するものである。センサ19は、方位センサや角度センサ、速度/加速度センサ等のセンサ装置とともに、当該センサ装置の検出値に基づき無線タグ通信装置10の向きを算出する算出部を含む。
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)を主体に構成され、無線タグ通信装置10の動作を統括的に制御する。また、制御部20は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶媒体からなる記憶部21を有する。記憶部21には、制御部20(CPU)が使用するプログラムや設定データ等が予め格納されている。また、記憶部21は、探索の対象とする無線タグ2の識別情報4を保持する。なお、探索対象の識別情報4を設定する方法は特に問わないものとする。例えば、入力部13を介して入力する形態としてもよいし、上位機器5から取得した識別情報4を設定する形態としてもよい。
また、制御部20は、機能部として、通信制御部30と、探索部40とを有する。通信制御部30は、無線タグ通信部18を制御し、無線タグ2との通信を行う。ここで、図7は、無線タグ通信部18及び通信制御部30の構成例を示すブロック図である。
図7に示すように、無線タグ通信部18は、送信部51と、方向性結合器52と、受信部53と、ローパスフィルタ54とを備える。送信部51、受信部53及びローパスフィルタ54は、方向性結合器52に接続されている。ローパスフィルタ54は、アンテナ14が接続されている。また、通信制御部30は、データの送信を制御する送信制御部31と、データの受信を制御する受信制御部32と、データの受信状態を検出する受信状態検出部33と、送受信に要した時間を計測する時間計測部34とを、機能部として有する。
送信制御部31は、探索の対象となる無線タグ2(以下、対象タグという)の識別情報4を指定することで、当該識別情報4に対応する対象タグとの通信を繰返し行う。ここで、識別情報4の指定は、例えば、ISO18000−6CのSelectコマンドを用いて行うことができる。また、送信制御部31は、探索部40からの指示に応じて、後述する電力増幅器515を制御することで、アンテナ14からの送信出力を調整する。
無線タグ通信部18の送信部51は、符号化部511、PLL(Phase Locked Loop)部512、振幅変調部513、バンドパスフィルタ514及び電力増幅器515を備えている。
符号化部511は、通信制御部30の送信制御部31から出力されるデータの送信信号を符号化する。PLL部512は、振幅変調部513にローカルキャリア信号を供給する。振幅変調部513は、PLL部512からのローカルキャリア信号を、符号化部511にて符号化された送信信号で振幅変調する。バンドパスフィルタ514は振幅変調部513で振幅変調された送信信号から、不要な成分を除去する。電力増幅器515は、通信制御部30からの指示に応じた増幅率で、バンドパスフィルタ514を通過した送信信号を増幅する。電力増幅器515は、増幅した送信信号を方向性結合器52に供給する。
方向性結合器52は、サーキュレータ等の方向性結合器である。方向性結合器52は、送信部51からの送信信号を、ローパスフィルタ54を介してアンテナ14に供給する。アンテナ14に供給された送信信号は、このアンテナ14から電波として放射される。
無線タグ2は、アンテナ14から放射された電波を受信すると起動する。起動した無線タグ2は、無変調信号に対してバックスキャッタ変調を行うことにより、無線タグ2の記憶部3に格納された識別情報4等の情報を無線タグ通信装置10に無線送信する。
アンテナ14は、無線タグ2からの信号を受信する。ローパスフィルタ54は、アンテナ14で受信された信号から不要な高周波成分を除去して、方向性結合器52に供給する。方向性結合器52は、アンテナ14で受信された信号、すなわち無線タグ2からの信号を受信部53に供給する。
受信部53は、第1生成部531、第2生成部532、第1処理部533、第2処理部534及び受信レベル検出部535を備えている。
第1生成部531は、第1ミキサ531aと、ローパスフィルタ531bと、2値化回路531cとを有する。第2生成部532は、第2ミキサ532aと、ローパスフィルタ532bと、2値化回路532cと、位相シフト器532dとを有する。
受信部53は、方向性結合器52からの受信信号を、第1ミキサ531aと第2ミキサ532aとに入力する。また、受信部53は、送信部51のPLL部512からのローカルキャリア信号を、第1ミキサ531aと位相シフト器532dとに入力する。位相シフト器532dは、ローカルキャリア信号の位相を90度シフトして、第2ミキサ532aに供給する。
第1ミキサ531aは、受信信号とローカルキャリア信号とを混合して、ローカルキャリア信号と同相成分のI信号を生成する。I信号は、ローパスフィルタ531bを介して2値化回路531cに供給される。ローパスフィルタ531bは、I信号から不要な高周波成分を除去して、符号化されたデータ成分を取り出す。2値化回路531cは、ローパスフィルタ531bを通過した信号を2値化する。
第2ミキサ532aは、受信信号と90度位相がシフトされたローカルキャリア信号とを混合して、ローカルキャリア信号と直交成分のQ信号を生成する。Q信号は、ローパスフィルタ532bを介して2値化回路532cに供給される。ローパスフィルタ532bは、Q信号から不要な高周波成分を除去して、符号化されたデータ成分を取り出す。2値化回路532cは、ローパスフィルタ532bを通過した信号を2値化する。
第1処理部533は、第1同期クロック生成部533a、第1プリアンブル検出部533b、第1復号部533c及び第1エラー検出部533dを有する。また、第2処理部534は、第2同期クロック生成部534a、第2プリアンブル検出部534b、第2復号部534c及び第2エラー検出部534dを有する。
受信部53は、第1生成部531の2値化回路531cで2値化したI信号を、第1処理部533の各部(第1同期クロック生成部533a、第1プリアンブル検出部533b、第1復号部533c、第1エラー検出部533d)にそれぞれ供給する。また、受信部53は、第2生成部532の2値化回路532cで2値化したQ信号を、第2処理部534の各部(第2同期クロック生成部534a、第2プリアンブル検出部534b、第2復号部534c、第2エラー検出部534d)にそれぞれ供給する。ここで、第1処理部533と第2処理部534とは、その動作が共通である。そのため、以下では第1処理部533について説明し、第2処理部534の説明は省略する。
第1同期クロック生成部533aは、2値化回路531cからの2値化信号と同期したクロック信号を常時生成し、生成したクロック信号を、通信制御部30の受信制御部32、第1プリアンブル検出部533b、第1復号部533c及び第1エラー検出部533dに供給する。
第1プリアンブル検出部533bは、第1同期クロック生成部533aからのクロック信号を基に、I信号の先頭に付されているプリアンブルを検出する。プリアンブルが検出されると、第1プリアンブル検出部533bは、通信制御部30の受信制御部32に検出信号を出力する。
受信制御部32は、プリアンブル検出信号を受信すると、第1復号部533cに復号開始の指令信号を供給する。第1復号部533cは、第1同期クロック生成部533aからのクロック信号に同期して、2値化回路531cからの2値化信号をサンプリングする。そして、受信制御部32から復号開始の指令を受けると、そのサンプリングした2値化信号を復号する。復号されたデータは、受信制御部32に供給される。
受信制御部32は、復号されたデータを第1エラー検出部533dに供給する。第1エラー検出部533dは、復号されたデータのチェックコードからエラーの有無を検出する。そして、その検出結果を示すデータを受信制御部32に供給する。受信制御部32は、少なくともI信号或いはQ信号の一方で誤りが無い場合、正しくデータを受信したと判定する構成になっている。正しく受信した受信データは、無線タグ通信装置10の記憶部21(RAM)等に格納される。
受信レベル検出部535は、ローパスフィルタ531bを通過したI信号の振幅と、ローパスフィルタ532bを通過したQ信号の振幅とをそれぞれ検出する。そして、大きい方の振幅の値を、受信レベルとして通信制御部30に通知する。なお、振幅の代わりに、両信号のベクトルの大きさ({I2+Q2}1/2)を、受信レベルとして通知してもよい。
受信状態検出部33は、受信レベル検出部535からの受信レベルに基づき、所定時間の間の通信成功率を受信状態として検出する。ここで、通信成功率の検出(算出)方法は特に問わないものとするが、例えば下記式(1)を用いて算出してもよい。
通信成功率=正しくデータを受信した回数/(正しくデータを受信した回数+エラーを検出した回数) …(1)
ここで、図8を用いて、受信状態検出部33の動作例について説明する。図8は、対象タグの読み取り動作を説明するためのタイミングチャートである。同図では、ISO18000−6typeCのプロトコルに準拠した例を示している。なお、1ラウンドあたりのスロット数を“1”として説明する。
図8において、記号[S]、[Q]、[R]、[A]、[ID]は、何れも通信データを示している。各通信データの先頭には、データの先頭を示すプリアンブル符号が含まれる。また、[S]を除く各通信データには、CRC(Cyclic Redundancy Check)符号等の誤り検出符号が含まれており、受信側でエラーを検出できる。また、記号“○”は、識別情報[ID]の受信成功を意味している。また、記号“×”は、識別情報[ID]の受信失敗を意味している。
まず、無線タグ通信部18は、無変調のキャリア信号をアンテナ14から電波として送信する。次に、無線タグ通信部18は、Selectコマンド[S]、続いてQueryコマンド[Q]を送信し、1番目のラウンドR1を開始する。Selectコマンド[S]は、探索対象である対象タグだけが応答するように、対象タグの識別情報4を指定している。
対象タグ以外の無線タグが、このSelectコマンド[S]、Queryコマンド[Q]を受信した場合、他の無線タグは、自身の識別情報とは異なる識別情報4が指定されていると判断して、応答信号[R]を送信しない。なお、1番目のラウンドR1は、対象タグに十分な電波が届いていない等の理由により、応答信号[R]の受信待機中にタイムアウトを検出した場合を示している。
無線タグ通信部18は、ラウンドR1のSelectコマンド[S]の送信開始から、所定時間t1が経過すると、ラウンドR1と同様にSelectコマンド[S]、Queryコマンド[Q]を送信することで、2番目のラウンドR2を開始する。ここで、2番目のラウンドR2は、無線タグ通信装置10が対象タグから識別情報[ID]を正常に受信した場合を示している。
以降、無線タグ通信部18は、Selectコマンド[S]の送信開始から所定時間t1が経過すると、Selectコマンド[S]、Queryコマンド[Q]を送信することで、次のラウンドを順次開始する。なお、ラウンドR5、ラウンドR6、およびラウンドR8は、無線タグ通信装置10がAckコマンド[A]を送信した後、識別情報[ID]の待機中に受信タイムアウトを検出した場合を示している。
受信状態検出部33は、各ラウンドにおいて識別情報[ID]を正しく受信したか否かを検出するとともに、所定ラウンド分での通信成功率を算出する。例えば、直近4ラウンド分の通信成功率を算出する場合、ラウンドR4で算出する通信成功率は、ラウンドR1からラウンドR4までの受信可否結果から75%となる。また、ラウンドR5で算出する通信成功率は、ラウンドR2からラウンドR5までの[ID]受信可否結果から75%となる。以下のラウンドにおいても、受信状態検出部33は、同様に通信成功率を算出する。
図7に戻り、時間計測部34は、送信制御部31及び受信制御部32の制御により、対象タグとの間でデータの送受信に要した時間(以下、応答時間という)を、ラウンド毎に計測する。ここで、計測される応答時間は、自装置と対象タグとの間の離間距離に関係し、応答時間が短いほど離間距離が近いことを意味する。なお、時間の計測にはRTC(Real Time Clock)等の計時手段を用いるものとする。
図6に戻り、探索部40は、センサ19や通信制御部30から得られる各種の情報に基づいて対象タグの存在位置を推定し、その存在位置を撮像部15で撮像された画像とともに表示部12に表示する。
具体的に、探索部40は、存在位置の推定の開始に際し、送信制御部31を制御することで、アンテナ14の送信出力値を設定する。具体的に、探索部40は、送信出力の最大値を設定する。なお、送信出力値は、入力部13を介して入力された値を用いてもよいし、記憶部3に予め記憶された後述するテーブル情報(図9参照)を用いてもよい。
また、探索部40は、対象タグの識別情報4を通信制御部30に設定することで、当該通信制御部30に対象タグとの通信を行わせる。なお、対象タグの識別情報4は、入力部13を介して入力されてもよいし、記憶部21に予め格納しておいてもよいし、通信部16を介して上位機器5から取得する形態としてもよい。
また、探索部40は、送信出力に最大値を設定した状態で、受信状態検出部33で検出される通信成功率に基づき、自装置が対象タグと通信可能な位置にあるか否かを判定する。ここで、探索部40は、例えば、通信成功率と所定の閾値(例えば70%)とを比較し、閾値以上であれば通信可能な位置にあると判定する。なお、通信成功率が閾値未満の場合には、探索位置の変更を促す表示を表示部12に表示させるものとする。
また、探索部40は、対象タグとの通信が可能な位置にある場合、自装置と対象タグとの間の離間距離を推定する。ここで、離間距離の推定方法は特に問わないものとする。例えば、時間計測部34で計測される応答時間に基づいて、自装置と対象タグとの間の離間距離を推定してもよい。なお、離間距離の推定方法はこれに限らず、例えば、受信レベルの値に基づいて推定してもよい。
また、探索部40は、対象タグとの通信が可能な場合、自装置に対する対象タグの存在方向を推定する。ここで、存在方向の推定方法は特に問わないものとするが、例えば、アンテナ14を左右に振った際の受信レベルの変化量から推定する方法を採用してもよい。以下、この推定方法について説明する。
まず、探索部40は、アンテナ14の送信出力を段階的に低下させることで、アンテナ14により読み取り可能な範囲(以下、読取可能範囲という)を絞り込む。読取可能範囲は、例えば、下記式(2)を用いて導出することができる。
Po×f(θ)−d≧Pt …(2)
上記式(2)において、Poはアンテナ14の送信出力、f(θ)は角度θにおけるアンテナ14の利得(図5参照)、dはアンテナ14のアンテナ面143から想定する読取距離Lまでの減衰量、Ptは対象タグとの通信に要するパワーである。ここで、読取距離Lは、後述するテーブル情報(図9参照)に格納された送信出力に対応する所定値であってもよいし、先に求めた対象タグとの離間距離であってもよい。
なお、読取可能範囲は、上記式(2)を用いて算出する形態に限らず、図9に示すように、送信出力及び読取距離の組と読取可能範囲とを対応付けたテーブル情報等を用いて導出する形態としてもよい。
ここで、図9は、読取可能範囲の導出に係るテーブル情報の一例を示す図である。同図に示すように、テーブル情報T1には、送信出力及び読取距離の各組と対応付けて、読取可能範囲が定められている。ここで、読取可能範囲は、180度や120度等の角度で表され、アンテナ面143の正面方向(D1方向)を中央値とした角度範囲を意味する。なお、テーブル情報T1は、記憶部21等に格納されているものとする。
探索部40は、通信成功率が閾値以上となる状態を維持しながら、アンテナ14の送信出力を低下させていくことで、アンテナ14による読取可能範囲を絞り込んでいく。また、探索部40は、センサ19で検出される自装置の方向を、つまりアンテナ14の正面方向を基準方向として記憶部21に保持する。
さらに、探索部40は、送信出力を低下させた状態で、自装置(アンテナ14)を左右方向に振ることを指示する画面を表示部12に表示させる。利用者により自装置が左右方向に振られるとアンテナ14の読取可能範囲も左右に変位する。そこで、探索部40は、その際に得られた受信レベルの変化量に基づき、自装置(アンテナ面143)に対する無線タグ2の存在方向を推定する。
具体的には、基準方向から無線タグ通信装置10(アンテナ14)を左方向に振った際に、受信レベルが極大となった場合には、その極大となった左方向に対象タグが存在すると推定する。また、基準となる位置から無線タグ通信装置10(アンテナ14)を右方向に振った際に、受信レベルが極大となった場合には、その極大となった右方向に対象タグが存在すると推定する。また、左右両方向に振った際に、電波強度が下降した場合には、基準方向に対象タグが存在すると推定する。なお、左右両方向に振っても電波強度が変化しなかった場合には、読取可能範囲を絞りきれていない可能性があるため、利用者に基準方向への移動を促す画面を表示させる。
探索部40は、離間距離及び存在方向を推定すると、自装置と対象タグとの相対的な位置関係を示す相対位置情報を記憶部21等に保持する。なお、相対位置情報は、自装置の変位位置から対象タグの存在位置を特定可能であれば、そのデータ形式は特に問わないものとする。例えば、相対位置情報は、基準方向における自装置の位置と、対象タグの位置との関係をベクトルや座標で表したものであってもよい。また、相対位置情報は、自装置の移動に伴い更新してもよい。
また、探索部40は、上記相対位置情報とセンサ19の検出値とに基づき、撮像部15で撮像された撮像画像内での対象タグの存在位置に対応する位置に、マーカー画像を重畳表示させる。ここで、撮像画像内での対象タグの存在位置に対応する領域の特定方法は、特に問わないものとする。例えば、以下に説明する特定方法を用いて特定する形態としてもよい。
まず、撮像部15が撮像する範囲(撮像範囲)内において、読取可能範囲の各々が占める範囲を予め計測し、設定データとして記憶部21に格納しておく。次いで、上記した送信出力の調整等により自装置に対する対象タグの存在位置を推定する。そして、上記の設定データに基づき、そのときの読取可能範囲内での存在位置に対応する位置(領域)を、撮像範囲内から特定する。
なお、本実施形態では、自装置に対する対象タグの存在方向を左右方向(実空間における水平方向)としているが、高さ方向(実空間における垂直方向)についても推定する形態としてもよい。この場合、左右方向と同様、アンテナ14の読取可能範囲を上下方向に振らせる等することで推定することが可能である。また、高さ方向の推定を行わない場合には、予め定めた高さ方向(例えば仰角15度等)を用いる等してもよい。
図10は、探索部40が表示部12に表示する画面の一例を示す図である。同図に示すように、探索部40は、表示部12の画面内において、撮像部15で撮像された撮像画像G1上に、円形のマーカー画像G2を透過表示している。ここで、撮像画像G1内でのマーカー画像G2の中心Cの配置位置は、対象タグの存在位置に対応している。
また、マーカー画像G2の大きさ(半径R)は、自装置と対象タグとの離間距離に関係しており、離間距離が小さいほど半径Rが小さくなるよう設定される。ここで、離間距離に伴う半径Rの縮小又は拡大率は、例えば、上述した読取可能範囲における離間距離L’での弦の長さや円弧の長さに基づくものであってもよい。
例えば、弦の長さを用いる場合、下記式(3)で求めることができる。
2L’×sin(φ/2) …(3)
また、円弧の長さを用いる場合、下記式(4)で求めることができる。
L’×φ …(4)
なお、上記式(3)、(4)において、φは読取可能範囲の角度を意味する(ただし、φは弧度法で測った角度)。
無線タグ通信装置10の利用者は、マーカー画像G2に向かって歩いていくと、自装置と対象タグとの離間距離は小さくなる。そのため、探索部40は、図11に示すように、離間距離の縮小量に応じて半径Rを小さくすることで、マーカー画像G2の表示を更新する。
なお、探索部40は、自装置と対象タグとの離間距離が所定の閾値以下となった場合には、図12に示すように、マーカー画像G2に対応付けて対象タグを発見した旨のメッセージを示した第1指示画像G3を表示してもよい。また、他の表示形態としては、マーカー画像G2の中心位置(中心点)のみを表示することで、対象タグの存在位置をピンポイントで表してもよい。
このように、探索部40は、対象タグの存在位置をマーカー画像G2で示すことで、無線タグ通信装置10の利用者に対し、対象タグが存在すると推定される距離及び方向を提示する。これにより、無線タグ通信装置10の利用者は、表示部12を見ながら対象タグが実空間のどのあたりにあるのか容易に把握することができるため、対象タグの探索を効率的に行うことができる。また、表示部12と実空間との間における視線の移動を減らすことができるため、利用者の利便性を向上させることができる。
なお、自装置と対象タグとの離間距離に伴うマーカー画像G2の表示方法は、上記例に限らないものとする。例えば、自装置と対象タグとの離間距離に応じて、半径Rを縮小するとともに、マーカー画像G2の表示色を切り替える形態としてもよい。また、この形態を採用する場合、図13に示すように、各地点でのマーカー画像G2を重ねて表示することで、対象タグへの移動履歴を色分けにより表してもよい。
また、自装置の向きが変更した等により、撮像部15の撮像画像内から対象タグの存在位置が消失した場合には、図14に示すように、現在の自装置の向きを基準に、対象タグの存在方向を指示する第2指示画像G4を表示してもよい。これにより、撮像部15の撮像範囲から対象タグが外れた場合に、何れの方向に対象タグがあるかを利用者に提示することができるため、対象タグの探索の効率化を図ることができる。
さらに、利用者(自装置)の向きが対象タグの存在方向と一致又は相違した場合に、マーカー画像G2の大きさや形状、表示色等を変える表示効果を施すことで、両方向の一致又は相違を利用者に報知する形態としてもよい。これにより、自装置の向きが対象タグの存在方向と一致又は相違した場合に、その旨を利用者に報知することができるため、対象タグの探索の効率化を図ることができる。
以下、図15を参照して、本実施形態の無線タグ通信装置10の動作について説明する。ここで、図15は、対象タグの探索に係る探索処理の手順を示すフローチャートである。なお、この手順は、記憶部21に格納されたプログラムによって制御される。
利用者は無線タグ通信装置10を携帯し、任意の場所において入力部13から探索作業の開始を指示する操作を行うとプログラムが起動する。プログラムが起動すると、探索部40は、入力部13等を介して入力された対象タグの識別情報4を、通信制御部30に設定する(ステップS11)。
次に、探索部40は、読取距離を設定する(ステップS12)。続いて、探索部40は、ステップS12で設定した読取距離に応じて、アンテナ14の送信出力の初期値(最大値)を、通信制御部30を介して設定する(ステップS13)。続いて、制御部20は、通信制御部30と協働することで、対象タグの読み取りを開始する(ステップS14)。
探索部40は、通信制御部30(受信状態検出部33)で算出された通信成功率と所定の閾値とを比較する(ステップS15)。ここで、通信成功率が閾値未満の場合(ステップS15;No)、探索部40は、探索位置の変更を促す情報を表示部12に表示させ(ステップS16)、ステップS15に再び戻る。
一方、通信成功率が閾値以上の場合(ステップS15;Yes)、探索部40は、自装置から対象タグまでの離間距離を推定する(ステップS17)。ここで、探索部40は、例えば、通信制御部30(時間計測部34)で計測された応答時間に基づいて、自装置から対象タグまでの離間距離を推定する。
続いて、探索部40は、自装置に対する対象タグの存在方向を推定する(ステップS18)。ここで、探索部40は、例えば、通信成功率が閾値以上となる送信出力の最低値を維持したまま、アンテナ14の読取可能範囲を左右方向に振らせることで、自装置の基準方向に対する対象タグの存在方向を推定する。なお、探索部40は、ステップS17及びS18で推定した離間距離及び存在方向を、相対位置情報として記憶部21に保持する。
次に、探索部40は、相対位置情報とセンサ19の検出値とに基づき、撮像部15で撮像された撮像画像内での対象タグの存在位置に対応する位置に、マーカー画像を重畳表示させる(ステップS19)。
次いで探索部40は、センサ19の検出値に基づき、自装置の向きに変更があったか否かを判定する(ステップS20)。ここで、向きの変更が検出されない場合には(ステップS20;No)、ステップS23に移行する。
また、ステップS20において、向きの変更が検出された場合には(ステップS20;Yes)、探索部40は、撮像部15の撮像範囲内に対象タグの存在位置が包含されるか否かを判定する(ステップS21)。ここで、対象タグの存在位置が撮像範囲内にある場合には(ステップS21;Yes)、ステップS23に移行する。一方、対象タグの存在位置が撮像範囲外にある場合には(ステップS21;No)、探索部40は、現在の自装置の向きを基準に、対象タグが存在する方向を示す第2指示画像を表示部12に表示させ(ステップS22)、ステップS23に移行する。
なお、自装置の向きが対象タグの存在方向と一致又は相違した時に、表示効果を施すことで両方向の一致又は相違を利用者に報知してもよい。
続くステップS23において、探索部40は、自装置から対象タグまでの離間距離に変更があったか否かを判定する(ステップS23)。ここで、離間距離に変更がない場合には(ステップS23;No)、ステップS25に移行する。離間距離に変更があった場合(ステップS23;Yes)、探索部40は、マーカー画像の大きさを、離間距離の変更量に応じて変更(拡大又は縮小)し(ステップS24)、ステップS25に移行する。
次に、探索部40は、自装置と対象タグとの間の離間距離が所定の閾値以内か否かを判定する(ステップS25)。ここで、離間距離が閾値を上回る場合には(ステップS25;No)、ステップS27に移行する。離間距離が閾値以内の場合には(ステップS25;Yes)、対象タグを発見した旨の第1指示画像を表示部12に表示させ(ステップS26)、ステップS27に移行する。
続いて、探索部40は、入力部13等を介して、対象タグの探索を終了する指示がなされたか否かを判定する(ステップS27)。ここで、探索の終了指示が確認されない場合には(ステップS27;No)、ステップS20に再び戻る。また、探索の終了指示が入力された場合には(ステップS27;Yes)、探索部40は、本処理を終了する旨を表示部12に表示した後(ステップS28)、本処理を終了する。
以上のように、本実施形態の無線タグ通信装置10は、撮像部15が撮像した撮像画像内において、対象タグが存在すると推定される領域にマーカー画像を表示する。これにより、無線タグ通信装置10の利用者は、表示部12を見ながら対象タグが実空間のどのあたりにあるのか容易に把握することができるため、対象タグの探索を効率的に行うことができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加、組み合わせ等を行うことができる。また、上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、上記実施形態では、円形のマーカー画像を表示する形態を説明したが、マーカー画像の形状は円形に限らないものとする。
上記実施形態の無線タグ通信装置10で実行されるプログラムは、ROM等の記録媒体に予め組み込まれて提供されるものとするが、これに限らないものとする。例えば、上記実施形態の無線タグ通信装置10で実行されるプログラムを、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
さらに、上記実施形態の無線タグ通信装置10で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、上記実施形態の無線タグ通信装置10で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
上記実施形態の無線タグ通信装置10で実行されるプログラムは、上述した各処理を行うモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはプロセッサが上記ROMからプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、主記憶装置上に生成されるようになっている。