以下、発明を実施するための実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付す。
(第1の実施形態)
図1は、一実施形態に係る無線タグ通信装置を用いた棚卸作業の説明図である。図1の例では、倉庫10と売場11が隣接しており、売場11には、棚12,13,14が配置され、それぞれの棚12,13,14及び倉庫10には商品等の物品が置かれている。各物品(商品)には無線タグ(後述)が貼付されている。
棚卸作業を行う際には、作業を行うオペレータは、無線タグ通信装置を携帯し、例えば、図1のA地点から点線の経路で移動し、棚1(エリア1) 、棚2(エリア2)、棚3(エリア3)にある商品の無線タグの読取りを行う。次に倉庫10(エリア4)にある商品の無線タグの読取りを行い、B地点まで移動する。
図2(a)は、無線タグ通信装置20の外観図である。無線タグ通信装置20は、本体21とアンテナ22を有し、本体21とアンテナ22は、ケーブル23で接続されており、携帯可能になっている。本体21は、ディスプレイ等の通知部24と、キーボード等の入力部25を備えている。
アンテナ22は、板状のアンテナ筐体26にグリップ27を取り付けている。オペレータは、グリップ27を握ってアンテナ22のアンテナ面28を任意の方向に向けて無線タグの読取りを行う。尚、図2では本体21とアンテナ22は分離して示しているが、一体化した構造であってもよい。
図2(b)に示すように、アンテナ22は、アンテナ筐体26の内部に板状の誘電体221を固定し、この誘電体221のアンテナ面28側に放射器222を設け、その反対の背面側にグランド223を設けた平面パッチアンテナである。そして、アンテナ面28の中心から略垂直方向に最大の利得を持つ指向性を有している。
図2(c)は、商品に貼付した無線タグ15を示す。無線タグ15は、記憶部16を有し、記憶部16には、識別情報(タグID)等が格納されている。そして無線タグ通信装置20によって、各商品の無線タグ15に記憶されたタグID等を読取る。以下の説明では、無線タグ15に記憶された情報を読取ることを便宜上、「無線タグ15を読取る」と表現することもある。
図3は、無線タグ通信装置20の構成を示すブロック図である。無線タグ通信装置20(以下、単に通信装置20と呼ぶ)は、通知部24、入力部25のほかに、無線タグ通信部31、電源部32、上位機器100との通信を行う通信部33及び制御部34を備えている。
無線タグ通信部31はアンテナ22を備え、無線により無線タグ15と通信して、無線タグ15の記憶部16に記憶された識別情報(タグID)等を受信して読み取る。無線タグ通信部31の詳細は後述する。
電源部32は、バッテリと、バッテリを充電及び放電する制御回路からなる。通知部24は、ディスプレイとブザーを含む。入力部25はキーボードである。尚、入力部25は、通知部24のディスプレイ上に構成したタッチパネルでもよい。上位機器100(例えばサーバ)との通信部33は、通信回線を介して接続される上位機器100と通信を行う。通信回線は有線、無線を問わない。
上位機器100は、無線タグ15の識別情報に対応した商品情報が格納されており、通信装置20は、上位機器100と通信部33を介して通信できる。商品エリア情報入力部101は、通信装置20の記憶部35(後述)或いは上位機器100に格納された商品情報の一部であるエリア情報を入力する。商品を配置するエリア(位置)が変更になった場合等に入力を行う。
制御部34は、コンピュータを構成するもので、CPU(Central Processing Unit)を有し、入力部25、通知部24、無線タグ通信部31、電源部32及び通信部33を制御して通信装置20の全体を制御する。制御部34は、ROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)からなる記憶部35を有する。ROMには、制御部34が使用するプログラムや設定データ等が予め格納されている。RAMには、制御部34の作用により可変的なデータが一時的に書き込まれる。
またRAMには、無線タグ通信部31が受信した無線タグの識別情報を含むタグ読取情報351、読取対象である店舗内にあるべき商品に貼付した無線タグの情報(棚卸リスト)352、棚卸リスト352に有るがタグ読取情報351に無い無線タグの情報である読落としリスト353、入力部25の入力により設定された経路情報354、棚卸リスト352に無いが無線タグ通信部31で受信した無線タグの情報である探索リスト355等を格納する。
棚卸リスト352は、通信部33を介して上位機器100から入手するか、予め記憶部35に記憶された棚卸リスト352を用いるかを入力部25の棚卸リスト設定部251により選択することができる。また、経路情報354は、入力部25の経路情報設定部252によって選択された内容が設定される。
制御部34は、通信制御部36を備える。通信制御部36は、無線タグ通信部31に送信出力や送信データ等を設定して制御するとともに、受信データ等を受信制御する。通信制御部36については無線タグ通信部31と併せて後述する。
さらに制御部34は、比較部37、経路情報生成部38、読落としリスト生成部39及び探索リスト生成部40を有する。比較部37は、タグ読取情報351と棚卸リスト352を比較し、読取結果を出力する。経路情報生成部38は、タグ読取情報351から経路情報を生成する。読落としリスト生成部39は、指定順番情報生成部391を有し、タグ読取情報351と、比較部37の比較結果と、経路情報354とをもとに指定順番情報を含む読落としリスト353を生成する。
探索リスト生成部40は、指定順番情報生成部401を有し、タグ読取情報351と、比較部37の比較結果と、経路情報354とをもとに指定順番情報を含む探索リストを生成する。比較部37、経路情報生成部38、読落としリスト生成部39、探索リスト生成部40の詳細については後述する。
図4は、無線タグ通信部31と通信制御部36の具体的な構成を示すブロック図である。無線タグ通信部31は、無線タグ15にデータを送信する送信部41と、無線タグ15からデータを受信する受信部42と、サーキュレータ等の方向性結合器43と、ローパスフィルタ44と、アンテナ22を備え、方向性結合器43に、送信部41、受信部42及びローパスフィルタ44を接続し、方向性結合器43をローパルフィルタ44を介してアンテナ22を接続している。
送信部41は、符号化部45、PLL(Phase Locked Loop)部46、振幅変調部47、バンドパスフィルタ48及び電力増幅器49を有している。符号化部45は、通信制御部36の送信制御部72から出力される送信信号を符号化する。PLL部46は、振幅変調部47にローカルキャリア信号を供給する。振幅変調部47は、PLL部46からのローカルキャリア信号を、符号化部45にて符号化した送信信号で振幅変調する。バンドパスフィルタ48は振幅変調部47で振幅変調された送信信号から不要な成分を除去する。電力増幅器49は、通信制御部36の送信出力設定部71からの送信出力設定信号に応じた増幅率で送信信号を増幅する。送信信号を増幅することにより送信出力が可変され、電力増幅器49で増幅された送信信号は、方向性結合器43に供給される。
方向性結合器43は、送信部41からの送信信号を、ローパスフィルタ44を介してアンテナ22に供給する。アンテナ22に供給された送信信号は、アンテナ22から電波として放射される。アンテナ22から放射された電波を受信して無線タグ15は起動する。起動した無線タグ15は、無変調信号に対してバックスキャッタ変調を行うことにより無線タグ15の記憶部16に格納された情報を通信装置20に無線送信する。無線タグ15からの無線信号は、アンテナ22で受信される。
アンテナ22で受信した受信信号は、ローパスフィルタ44を介して方向性結合器43に供給される。方向性結合器43は、アンテナ22の受信信号、即ち、無線タグ15からの信号を受信部42に供給する。受信部42は、I信号生成部50、Q信号生成部51、I信号処理部52、Q信号処理部53及び受信信号レベル検出部54を備えている。
I信号生成部50は、ミキサ55と、ローパスフィルタ56と、2値化回路57とからなる。Q信号生成部51は、ミキサ58と、ローパスフィルタ59と、2値化回路60と、90度位相シフト器61とからなる。
I信号処理部52は、I信号同期クロック生成部62、I信号プリアンブル検出部63、I信号復号部64及びI信号エラー検出部65からなる。Q信号処理部53は、Q信号同期クロック生成部66、Q信号プリアンブル検出部67、Q信号復号部68及びQ信号エラー検出部69からなる。
受信部42は、方向性結合器43からの受信信号を、第1のミキサ55と第2のミキサ58にそれぞれ入力する。また、受信部42は、PLL部46からのローカルキャリア信号を、第1のミキサ55と90度位相シフト器61とに入力する。90度位相シフト器61は、ローカルキャリア信号の位相を90度シフトして、第2のミキサ58に供給する。
第1のミキサ55は、受信信号とローカルキャリア信号とを混合して、ローカルキャリア信号と同相成分のI信号を生成する。I信号は、ローパスフィルタ56を介して2値化回路57に供給される。ローパスフィルタ56は、I信号から不要な高周波成分を除去して、符号化されたデータ成分を取り出す。2値化回路57は、ローパスフィルタ56を通過した信号を2値化する。
第2のミキサ58は、受信信号と、90度位相がシフトされたローカルキャリア信号とを混合して、ローカルキャリア信号と直交成分のQ信号を生成する。Q信号は、ローパスフィルタ59を介して2値化回路60に供給される。ローパスフィルタ59は、Q信号から不要な高周波成分を除去して、符号化されたデータ成分を取り出す。2値化回路60は、ローパスフィルタ59を通過した信号を2値化する。
2値化回路57で2値化したI信号は、I信号処理部52の各部62〜65にそれぞれ供給される。また、2値化回路60で2値化したQ信号は、Q信号処理部53の各部66〜66にそれぞれ供給される。I信号処理部52とQ信号処理部53は、その動作が共通であるため、以下ではI信号処理部52について説明し、Q信号処理部53の説明は省略する。
同期クロック生成部62は、2値化回路57からの2値化信号と同期したクロック信号を常時生成し、生成したクロック信号を、通信制御部36の受信制御部70、プリアンブル検出部63、復号部64及びエラー検出部65に供給する。
プリアンブル検出部63は、同期クロック生成部62からのクロック信号を基に、I信号の先頭に付されているプリアンブルを検出する。プリアンブルが検出されると、プリアンブル検出部63は、通信制御部36の受信制御部70に検出信号を出力する。プリアンブル検出信号を受信すると、受信制御部70は、復号部64に復号開始の指令信号を供給する。復号部64は、同期クロック生成部62からのクロック信号に同期して、2値化回路57からの2値化信号をサンプリングする。そして、受信制御部70から復号開始の指令を受けると、そのサンプリングした2値化信号を復号する。復号されたデータは、受信制御部70に供給される。
受信制御部70は、復号されたデータをエラー検出部65に供給する。エラー検出部65は、復号されたデータのチェックコードからエラー有無を検出する。そして、検出結果を示すデータを受信制御部70に供給する。受信制御部70は、I信号或いはQ信号の少なくとも一方で誤りが無い場合、正しくデータを受信したと判定する。正しく受信した受信データは、記憶部35にタグ読取情報351として格納される。
受信信号レベル検出部54は、ローパスフィルタ56を通過したI信号の振幅と、ローパスフィルタ59を通過したQ信号の振幅とをそれぞれ検出する。そして、大きい方の振幅の値を、受信信号レベルとして通信制御部36に通知する。或いは、I信号とQ信号をベクトル合成した値(√{I2+Q2})を受信信号レベルとして通知してもよい。
通信制御部36は、受信制御部70のほかに、送信出力設定部71、送信制御部72、機能設定部73及び受信状態検出部74を有している。受信状態検出部74は、所定時間の間の受信成功率(下記の式1)を算出する。或いは、所定時間に受信信号レベル検出部54から通知された受信信号レベルの平均値或いは最大値を用いて受信状態を検出してもよい。
受信成功率=正しくデータを受信した回数/(正しくデータを受信した回数+エラーを検出した回数) …(式1)
以下、ISO18000-6Cのプロトコルを使用した無線タグ15の読取り動作を説明する。通信装置20は、ISO18000-6C のプロトコルを使用した通常読取機能(第1の読取機能)、指定読取機能(第2の読取機能)、及び指定繰返し読取機能(第3の読取機能)の3つの読取機能を持つ。機能設定部73は、通常読取機能、指定読取機能、及び指定繰返し読取機能の1つを設定する。送信制御部72、送信出力設定部71、受信状態検出部74は、機能設定部73で設定された機能に従い対応した動作を行う。
通常読取機能は、無線タグ15を指定しないで読取を行う機能であり、アンテナ22から放射された電波を受けて起動し、通信可能な状態にある無線タグ15と通信を行い、無線タグ15の記憶部16に格納された識別情報等を読取る。
指定読取機能は、ISO18000-6C のSelectコマンドにより応答するタグを指定して読取を行う機能であり、アンテナ22から放射された電波を受けて無線タグ15が起動するが、Selectコマンドで指定された識別情報と合致した無線タグ15だけが応答し、その無線タグ15と通信を行って記憶部16に格納された識別情報を読取る。
指定繰返し読取機能は、指定読取機能と同様に、ISO18000-6 type CのSelectコマンドにより応答するタグを指定して、読取りを繰返し行う機能であり、加えて、受信状態検出部74で検出した受信状態を通知部24で通知する。さらに受信状態検出部74で検出した受信状態によって、送信出力設定部71で送信出力設定信号を設定して送信出力を制御し、指定した無線タグ15の存在範囲を絞込み、オペレータが指定した無線タグ15を特定するのを補助する。
以下、棚卸作業での通常読取機能、指定読取機能及び指定繰返し読取機能の3つの読取機能について説明する。
図5A、図5Bは、通信装置20を用いて棚卸作業を行う場合の、制御部34の処理手順を示すフローチャートである。この手順は、記憶部35のROMに格納された棚卸プログラムによって制御される。
オペレータが通信装置20を携帯し、図1のA地点で、例えば、入力部25の棚卸開始キーを操作すると棚卸プログラムが起動する。制御部34は、先ず棚卸リスト352を設定する(動作A1)。図示しないが、ディスプレイ24に予め記憶部35の棚卸リスト352に格納された棚卸リストを使用するか、又は通信部33を介して上位機器100から棚卸リストを受信して記憶部35の棚卸リスト352に格納するかを表示し、オペレータが入力部25で入力し、選択した方法で棚卸リスト352を設定する。後者が選択された場合には、通信部33を介して上位機器100から棚卸リストを受信して、記憶部35に格納し、棚卸リスト352を設定する。
図6は、設定時の棚卸リスト352の一例である。図6の例では、棚卸リストは、商品名、商品に貼付した無線タグの識別情報、商品が存在するはずのエリア番号に加え、比較部37の比較結果1で構成している。比較結果1は、通常読取機能による読取りを行う前の設定時は全て“0”が格納されている。比較部37は、通常読取機能で読取られたタグ識別情報が、棚卸リスト352にあることを検出した場合に、比較結果1の内容を“1”に変更する。
次に、制御部34は、通信制御部36の機能設定部73で通常読取機能を設定する(動作A2)。動作A2では、通常読取機能の場合の予め定められた送信出力に対応した送信出力設定信号が送信出力設定部71から出力される。また、送信制御部72から通常読取機能の場合の送信信号が出力され、かつ送信制御部72は、送信タイミング等を設定する。
次いで、通常読取りを開始する(動作A3)。送信出力設定部71から送信出力設定信号を出力すると、無変調キャリア信号がアンテナ22から電波として放射され、送信制御部72から送信信号を出力すると、無線タグ15に対する送信が行われる。制御部34は、入力部25から通常読取機能終了のキー入力があるか否かを判断し(動作A4)、通常読取機能終了のキー入力を検出するまで通常読取りを続ける。
図7は、通信装置20と無線タグ15(ここでは、4つの無線タグTG1〜TG4)との間の無線通信プロトコルの一例を示すタイミングチャートである。上述のように、ISO18000-6type Cのプロトコルに準拠する例を示しており、1ラウンドあたりのスロット数を“4”とした場合である。
図7において、記号[Q]、[R]、[A]、[ID]、[Qr]はいずれも通信データを示している。各通信データの先頭には、データの先頭を示すプリアンブル符号が含まれ、また各通信データには、CRC(Cyclic Redundancy Check)符号等の誤り検出符号が含まれており、受信側でエラーを検出できる。
先ず、通信装置20は、無変調のキャリア信号をアンテナ22から電波として送信する。各無線タグTG1〜TG4は、この電波を受けて起動する。次に、通信装置20は、第1ラウンドの読取開始を指令するためのQueryコマンド[Q]を送信する。Queryコマンド[Q]には、1ラウンドあたりのスロット数を“4”とするパラメータ(Q値=2)が含まれている。各無線タグTG1〜TG4は、Queryコマンド[Q]を受信すると、乱数を生成する。そして、乱数により各無線タグTG1〜TG4は、1ラウンド中の4つのスロットのうち、どのスロットで応答するかを決定する。同じく乱数により、各無線タグは応答データ[R]を生成する。応答データ[R]は、乱数によって生成されるため、無線タグ毎に異なる値となる。また、同じ無線タグでも乱数を生成する毎に異なる値となる。
図7の例では、無線タグTG2は1番目のスロット0で応答データ[R]を送信する。無線タグTG2からの応答データ[R]を受信すると、通信装置20は、その応答データ[R]を正常に受信したことを指令するAcknowledge(Ack)コマンド[A]を送信する。このAckコマンド[A]には、無線タグTG2から受信した応答データ[R]が含まれる。
応答データ[R]を送信した無線タグTG2は、Ackコマンド[A]を待つ。そして、Ackコマンド[A]を受信すると、自身が送信した応答データ[R]が含まれているか否かを確認する。応答データ[R]が含まれている場合、無線タグTG2は、Ackコマンド[A]が自身宛であると認識し、自己のメモリで記憶しているID情報[ID]を送信する。通信装置20は、ID情報[ID]を受信したら誤りの有無を検出し、誤りが無い場合には、受信したID情報[ID]を記憶部35にタグ読取情報351として記憶する。ID情報[ID]は、図6の無線タグ識別情報に該当する。
次に、通信装置20は、スロットの切換を指令するため、Query-repコマンド[Qr]を送信する。ただし、既に応答データ[R]を送信した無線タグTG2はQuery-repコマンド[Qr]を受信しても応答しない。図7の例では、無線タグTG1が2番目のスロット1で応答データ[R]を送信する。以降の2番目のスロット1での動作は、1番目のスロット0の動作と同じため、説明を省略する。2番目のスロット1での通信が終了すると、通信装置20は、スロットの切換を指令するためのQuery-repコマンド[Qr]を送信する。ただし、既に応答データ[R]を送信した無線タグTG1、TG2は、Query-repコマンド[Qr]を受信しても応答しない。
図7の例では、無線タグTG3及びTG4は、3番目のスロット2でそれぞれ異なる応答データ[R]を送信する。応答データ[R]の送信開始時間は、Queryコマンド[Q]或いはQuery-repコマンド[Qr]を受信してから所定時間以内に規定されているため、同じスロットで2つ以上の無線タグが、それぞれ応答データ[R]を送信する場合には、応答データ[R]の送信の一部は必ず衝突するようになっている。このため、通信装置20は、無線タグTG3の応答データ[R]と無線タグTG4の応答データ[R]を受信できず、通信装置20は、応答データ[R]の受信タイムアウトを検出する。
次に、通信装置20は、スロットの切換を指令するための、Query-repコマンド[Qr]を送信し、4番目のスロット3を開始する。ただし、図7の例では、既に無線タグTG1〜TG4は、ラウンド1で応答データ[R]を送信しているため、4番目のスロット3では応答データ[R]の送信は無く、通信装置20は、応答データ[R]の受信タイムアウトを検出する。
通信装置20は、ラウンド1の4つのスロットの終了を検出し、新しいラウンド2の1番目のスロット0の開始を指令するQueryコマンド[Q]を送信する。図7の例では、ID情報[ID]を送信した無線タグTG1とTG2はラウンド2以降も応答しない。ラウンド2の1番目のスロット0では、無線タグTG4が応答データ[R]を送信する。以降のラウンド2の1番目のスロット0の動作はラウンド1の1番目のスロット0動作と同じため、説明を省略する。
ラウンド2の1番目のスロット0での通信が終了すると、通信装置20は、スロットの切換を指令するQuery-repコマンド[Qr]を送信する。ラウンド2の2番目のスロット1では、無線タグTG3が応答データ[R]を送信する。通信装置20は、無線タグTG3からの応答データ[R]を受信すると、応答データ[R]を正常に受信したことを指令するAckコマンド[A]を送信する。図7では、例えば、無線タグTG3が、物陰にあり、通信装置20が送信したAckコマンド[A]の信号が減衰し、無線タグTG3がAckコマンド[A]受信時に受信エラーを検出した例を示している。
通信装置20は、Ackコマンド[A]を送信した後、無線タグTG3からのID情報[ID]の受信を待っているが、受信タイムアウトとなり、同様に次のスロットに切り換える。以降、上述と同様な動きをして、通信装置20は、通常読取機能により、店舗内の多数の無線タグと通信して、ID情報[ID]を受信する。
図5Aに戻り、制御部34は、通常読取機能でタグ識別情報を読取ったかどうかを判断し(動作A5)、タグ識別情報を読取った場合には、読取ったタグ識別情報を読取順に記憶部35に記憶する。
図8は、記憶部35のタグ読取情報351の一例を示す。制御部34は、既に記憶部35に記憶したタグ読取情報351と同じタグ識別情報は重複して記憶しない。また、比較部37は、タグ読取情報351と棚卸リスト352を比較し、読取ったタグ識別情報351が棚卸リスト352に無い場合には、比較結果2に“0”を格納する。読取ったタグ識別情報351が棚卸リスト352にある場合には、比較結果2に“1”を格納するとともに、棚卸リスト352の該当する無線タグ識別情報の比較結果1(図6)を“1”に変更する(動作A6)。そして動作A4に戻る。また動作A5で、タグ識別情報の読取りを検出しない場合も、そのまま動作A4に戻り、動作A4〜A6を繰返す。
オペレータは、図のA地点から点線の経路を通ってB地点まで通常読取機能による読取動作を行い、入力部25の通常読取機能終了のキー入力をする。制御部34は通常読取機能終了のキー入力を検出すると(動作A4でYES)、通常読取機能を終了する。図9には、通常読取機能終了時の棚卸リストの一例を示す。また通常読取機能を終了すると、図5Bの動作A7に進む。
次に、制御部34は棚卸リスト23の比較結果1が0となっている無線タグの数、即ち、棚卸リスト352の中で読落とした無線タグの数を検出する(動作A7)。読落としが無い場合には終了する(動作A8)。
また読落とした無線タグの数が2以上であることを検出した場合(動作A9)には、制御部34は、入力部25により入力された経路情報を記憶部35の経路情報354として設定する(動作A10)。即ち、図10に示すように、ディスプレイ24に経路情報入力を促す表示を行い、入力部25の数字キーで選択された経路情報を記憶部35に格納する。本実施形態では、予め記憶部35に格納しておいた経路選択肢を表示し、入力部25で選択された経路情報を記憶部35に格納して、経路情報354を設定するようにしている。
図10の例では、エリア4→エリア3→エリア2→エリア1の経路が選択された例を示す。即ち、図1において、オペレータは、B地点からA地点まで、通常読取りの場合とは逆の経路で、指定読取機能による読取動作を設定したことになる。尚、本実施形態では、指定読取機能の指定タグ数を“2”に設定した場合について説明する。指定読取機能の指定タグ数については後述する。
次に、読落としリスト生成部39は、記憶部35に格納された経路情報354をもとに、読落としリスト353を生成する(動作A11)。読落としリスト353は、指定読取機能による読取りの指定順番情報を含む。
即ち、図9に示す棚卸リストの先頭から、先ず、比較結果1が“0”でエリアが“4”の無線タグの情報を抽出し、読落としリスト353に格納する。同様に、比較結果1が“0”でエリアが“3”、比較結果1が“0”でエリアが“2”、比較結果1が“0”でエリアが“1”の無線タグの情報をそれぞれ順に抽出し、読落としリスト353を生成する。
図11には、読落としリストの一例を示す。読落としリストは、商品名、無線タグ識別情報、エリア、指定順番情報及び指定読取機能による読取結果を含む。指定読取機能による読取結果は、読落としリスト生成時には“0”が格納されている。制御部34は、指定読取機能によって無線タグを読取ったことを検出した場合に、該当する読取結果を“1”に変更する。
図5Bに戻って、読落とした無線タグの数が1の場合は(動作A9)、読落としリストを生成するまでもないため、ディスプレイ24に、読落とした無線タグに対応した、商品名、無線タグ識別情報、エリアを表示するとともに、指定読取機能の指定タグ数に“1”を設定する(動作A12)。
次に、制御部34は、通信制御部36の機能設定部73で指定読取機能を設定する(動作A13)。即ち、指定読取機能の場合の予め定められた送信出力に対応した送信出力設定信号が送信出力設定部71から出力される、また、送信制御部72から指定読取機能の場合の送信信号が出力され、かつ送信制御部72は送信タイミング等を設定する。
次いで、指定読取機能を開始する(動作A14)。送信出力設定部71から、送信出力設定信号を出力すると、無変調キャリア信号がアンテナ22から電波として放射され、送信制御部72から送信信号を出力すると、無線タグ15に対する送信が行われる。制御部34は、例えば、入力部25の指定読取機能終了のキー入力があるか否かを検出し(動作A15)、入力を検出するまで指定読取機能を続ける。
図12は、通信装置20と4つの無線タグTG17、TG7、TG22、TG6との間の指定読取機能の通信例(指定タグ数2の場合)を示すタイミングチャートである。図11に示すように、無線タグTG17、TG7、TG22、TG6の指定順番情報を、それぞれ1、2、3、4としている。また図7と同様に、ISO18000-6type Cのプロトコルに準拠する例を示しており、1ラウンドあたりのスロット数を“1”としている。
図7と同様に、記号[S]、[Q]、[R]、[A]、[ID]は、いずれも通信データを示している。各通信データの先頭には、データの先頭を示すプリアンブル符号が含まれ、また[S]を除く各通信データには、CRC(Cyclic Redundancy Check)符号等の誤り検出符号が含まれており、受信側でエラーを検出できる。
先ず、通信装置20は、無変調のキャリア信号をアンテナ22から電波として送信する。次に通信装置20は、Selectコマンド[S]、次いでQueryコマンド[Q]を送信し、1番目のラウンドR1を開始する。ラウンドR1のSelectコマンド[S]は、指定順番情報が“1”である無線タグTG17だけが応答するように、無線タグ識別情報を設定している。無線タグTG17以外の無線タグが、このSelectコマンド[S]、Queryコマンド[Q]を受信した場合、この無線タグは、自身の識別情報とは異なる識別情報が指定されていると判断して、応答信号[R]を送信しない。1番目のラウンドR1は、無線タグTG17に十分な電波が届いていない等の理由により、通信装置20は応答信号[R]を待機中に受信タイムアウトを検出した場合を示している。
通信装置20は、ラウンドR1終了後、指定順番情報が“2”である無線タグTG7だけが応答するように、無線タグ識別情報を設定したSelectコマンド[S]、次いでQueryコマンド[Q]を送信し、2番目のラウンドR2を開始する。2番目のラウンドR2も、1番目のラウンドR1と同様に、通信装置20が応答信号[R]を待機中に受信タイムアウトを検出した例を示している。
ラウンドR2終了後、通信装置20は、指定順番情報が“1”である無線タグTG17だけが応答するように、無線タグ識別情報を設定したSelectコマンド[S]、次いでQueryコマンド[Q]を送信し、3番目のラウンドR3を開始する。このように、図12は、指定タグ数として“2”を設定した場合の例であり、2つの無線タグを交互に指定する。即ち、奇数番目のラウンドでは無線タグTG17を指定し、偶数番目のラウンドでは無線タグTG7を指定する。
なお、指定タグ数として“1”を設定した場合には、各ラウンドのSelectコマンド[S]で、同じ1つの無線タグ識別情報を設定する。指定タグ数として“3”を設定した場合には、3種類の無線タグ識別情報を、1ラウンドずつ順番に繰返して指定する。即ち、3の剰余1番目のラウンドでは1番目の無線タグ、3の剰余2番目のラウンドでは2番目の無線タグ、3の剰余0のラウンドでは3番目の無線タグを指定する。
オペレータが、指定読取機能による読取動作を行いながら、無線タグTG17の近くに到達すると、図12のラウンドR5の例のように、通信装置20は、無線タグTG17の無線タグ識別情報を設定したSelectコマンド[S]とQueryコマンド[Q]を送信した後、無線タグTG17からID情報[ID]を正しく受信することができる。
制御部34は、ID情報[ID]を受信すると、読落としリスト353の無線タグTG17の指定読取機能による読取結果を“1“に変更するとともに、ラウンドR6で無線タグTG7を指定した後、次のラウンドR7では指定順番情報“3”の無線タグTG22を指定する。以降、同様に、ラウンドR8では無線タグTG7を指定し、ラウンドR9では無線タグTG22を指定する。
そして、ラウンドR10で、通信装置20が無線タグTG7を指定し、無線タグTG7からID情報[ID]を受信すると、制御部34は、読落としリスト353の無線タグTG7の指定読取機能による読取結果を“1“に変更する。またラウンドR11で無線タグTG22を指定した後、次のラウンドR12では、指定順番情報“4“の無線タグTG6を指定する。
このように、指定タグ数として“2“を設定した指定読取機能の場合、指定順番の順に2種の無線タグを交互に指定するラウンドを繰返し、無線タグからID情報[ID]を正しく受信した場合には、次の指定順番の無線タグを指定するようにする。
図5Bのフローチャートに戻り、制御部34は、指定読取機能を開始(動作A14)後、入力部25から指定読取機能終了のキー入力があるか否かを判定する(動作A15)。入力を検出した場合には終了する。
指定読取機能終了のキー入力を検出しない場合には、入力部25から指定変更入力があるか否かを判定する(動作A16)。これは、指定読取機能による読取動作で、なかなかタグ識別情報を読取ることができない場合等に、オペレータが入力部25の指定変更入力キーを入力するものである。
入力部25から指定変更入力があった場合、制御部34は、読落としリスト353の中で未だSelectコマンド[S]で指定していない最も指定順番の小さい無線タグを指定するように変更する(動作A17)。また、図示しないが、1つの無線タグについて、指定するラウンドの回数に閾値を設け、この閾値を超えたら、指定するタグを変更するようにしてもよい。制御部34は、入力部25から指定変更入力がない場合には、無線タグの指定を変更しない。
次に、制御部34は、無線タグ識別情報を読取ったか否かを判定し(動作A18)、読取ったことを検出した場合には、記憶部35の読落としリスト353において、読取った無線タグの読取結果を“1”に変更する(動作A19)。また指定する無線タグを次の指定順番の無線タグに変更する。さらに、制御部34は棚卸リスト352(図9)の読取った無線タグの比較結果1を“2”に変更する。そして、動作A15に戻る。
また動作A18で無線タグ識別情報を読取れなかった場合には、そのまま動作A15に戻り、動作A15〜動作19を繰返す。また制御部34は、入力部25から指定読取機能終了のキー入力があるか否かを判定し(動作A15)、指定読取機能終了のキー入力を検出した場合には終了する。
このように、読落とした無線タグを、指定した経路情報に従って通常読取機能による読取りよりも読取成功率が高い指定読取機能によって読取り、読落としリスト353を自動生成することができる。
上述したように、図1で、オペレータはA地点からB地点まで通常読取機能による読取動作を行った後、経路情報を指定して、B地点から逆の経路でA地点まで指定読取機能による読取動作を行うことで、棚卸リスト中の無線タグの読取率を大幅に改善することができる。
したがって、棚卸作業に要する時間が短くなり、棚卸作業を効率的に行うことができる。また、店舗内を何度も往復することなく、オペレータの負担が軽くなる。
さらに、第1の実施形態により、棚卸リスト352の各商品及び無線タグの比較結果に、通常読取機能による読取動作で読取った場合には“1”が格納され、指定読取機能による読取動作で読取った場合には“2”が格納されるため、棚卸作業における履歴情報を容易に残すことができる。
(第2の実施の形態)
次に、記憶部35の経路情報354を他の態様とした第2の実施例について、図13〜図15を用いて説明する。
図13A、図13Bは、第2の実施の形態において、通信装置20による棚卸作業を行う場合の制御部34の処理手順を示すフローチャートである。第1の実施形態の図5A、図5Bの処理手順と共通するステップ(動作)には同一符号を付している。
即ち、第2の実施形態では、読落とした無線タグが複数あることを検出した場合(動作A9)に、制御部34の経路情報生成部38が経路情報を生成して、記憶部35の経路情報354に設定する(動作A21)。また、第2の実施形態では、予め指定読取機能による読取りの経路情報として、通常読取機能による読取りの経路と逆の経路を設定するものとして説明する。
図14は、通常読取機能による読取動作を終了した後(動作A4でYESの場合)のタグ読取情報351の例を示す。図14に示すように、商品に貼付された無線タグの識別情報には、例えば6桁の商品種別コードを含み、商品は商品種別ごとにまとまって店舗内に配置されているとする。
制御部34の経路情報生成部38は、図14に示すタグ読取情報の読取順と無線タグ識別情報の商品種別コードから、図15に示すように、各商品種別コードに対する読取順平均値を算出する。
先ず図14の一番目の行について、読取順“1”、商品種別コード“005001”を読取り、図15の商品種別コード“005001”の読取数を“1”とし、読取順合計値を“1”とし、読取順平均値を以下の(式2)で算出して、読取順合計値を“1”とする。
読取順平均値=読取順合計値/読取数 …(式2)
次に図14の2番目の行について、読取順“2”、商品種別コード“005001”を読取り、図15の商品種別コード“005001”の読取数を“2”、読取順合計値を“3”、読取順平均値を式2で算出して、読取順合計値を“1.5”とする。図14のタグ読取情報全てについて同様に行い、各商品種別コードに対して、読取順平均値を算出する。
次に、読取順平均値の最も小さいものを検出し、その経路生成結果を“1”とする。次に読取順平均値の小さいものを検出し、同様に、経路生成結果を“2”とする。全ての商品識別コードに対して、同様に、経路生成結果を格納する。そして制御部34は、オペレータが、この経路生成結果の小さい順の経路で、通常読取機能による読取動作を行ったと判断する。
即ち、図14の読取順(1,2…26)は、通常読取機能で読み取った順位を示している。また図15の例では“005001”の商品に貼付した無線タグを10枚読み取ったことを示し、10枚の読取順の合計値(25+26+…)が305であり、読取順の平均値が30.5(=305/10)であることを示している。
また“005002”の商品に貼付した無線タグを6枚読み取ったことを示し、6枚の読取順の合計値(2+3+…)が22であり、読取順の平均値が3.7(=22/6)であることを示している。同様に“005003”の商品コードで示す商品の読取順の平均値が7.5で、“005004”の商品コードで示す商品の読取順の平均値が17.7である例を示している。
そして経過生成結果は、読取順の平均値を小さい順に並べたものであり、制御部34は、オペレータが、経路生成結果の小さい順の経路で、通常読取機能による読取動作を行ったと判断する。
第2の実施形態では、通常読取機能による読取経路と逆の経路を、記憶部35の経路情報354に設定する。即ち、経路情報生成部38は、記憶部35の経路情報354に、図15の経路生成結果の大きい商品種別コードから順に全ての商品種別コードを設定する。次に、読落としリスト生成部39は、設定された経路情報354と棚卸リスト352から読落としリスト353を生成する(動作A22)。
第2の実施形態では、商品識別コードによる経路情報を使用しており、読落としリスト生成部39は、先ず、棚卸リスト352の比較結果1が“0”で、最初の経路に設定された商品識別コードと同じ商品識別コードの無線タグの情報を抽出し、読落としリスト353に、商品名、無線タグ識別情報、エリア、指定順番情報及び指定読取機能による読取結果を格納し、同様に、経路情報に従って該当する無線タグの情報を抽出して、棚卸リスト352に格納する。
これにより、エリア情報を用いることなく、通常読取機能による読取動作の経路情報を自動的に検出できる。従って、店舗内のレイアウト変更等による商品配置換えを行った場合でも、記憶部35或いは上位機器100の商品情報を変更する必要がない。
なお、第2の実施形態では、読落とした無線タグが複数あることを検出した場合(動作A9)に、経路情報生成部38によって経路情報を生成したが、読落とした無線タグの数に限らず、通常読取機能による読取動作が終了した後で、経路情報生成部38によって経路情報を生成してもよい。この場合には、通常読取りによる読取経路と逆の経路の経路情報を生成する必要はなく、オペレータが入力部25から経路情報を1つずつ入力してもよい。またディスプレイ24に経路情報の選択肢を表示して、オペレータが入力部25から選択入力してもよい。
また、第2の実施形態では、指定読取機能による経路情報として、通常読取機能の経路と逆の経路の経路情報を自動的に簡単に設定することができる。従って、オペレータは、通常読取機能による読取経路と逆の経路で行うということを知るだけで指定読取機能による読取動作を行うことができ、経路情報を入力・設定することなく棚卸作業ができるので、棚卸作業を効率的に行うことができる。
(第3の実施の形態)
次に、制御部34の処理手順を他の様態とした第3の実施形態について、図16A、図16B、図17を用いて説明する。
図16A、図16Bは、制御部34の処理手順を示すフローチャートであり、図5A、図5B及び図13A、図13Bと共通するステップ(動作)には同一符号を付している。
図16Aにおいて、比較部37が、通常読取機能により読取ったタグ読取情報351と棚卸リスト352を比較し、読取った無線タグ識別情報が棚卸リスト352にある場合には、棚卸リスト352の該当する無線タグの比較結果1を“1”にするとともに、タグ読取情報351の該当する無線タグの比較結果2を“1”にする(動作A6)。制御部34は、タグ読取情報351の比較結果2が“0”の無線タグ、即ち、棚卸リスト352にない無線タグを読取ったか否かを検出する(動作A31)。
棚卸リスト352にない無線タグを読取らなかった場合には、動作A4に戻り、通常読取機能による読取動作を続ける。一方、棚卸リスト352にない無線タグを読取ったことを検出した場合には、通常読取機能による読取動作を中断し、図16Bのフロー進み、指定繰返し読取機能による読取動作に切換える。或いはオペレータが入力部25の指定繰返し読取機能切換のキー入力を行った場合に切換えるようにしてもよい。
先ず、制御部34はディスプレイ24に指定繰返し読取機能に切換える旨を表示する(動作A32)。次に、通信制御部36の機能設定部73で、指定繰返し読取機能を設定する(動作A33)。また指定繰返し読取機能の場合の予め定められた送信出力の初期値に対応した送信出力設定信号が出力設定部71から出力される。また送信制御部72から指定繰返し読取機能の場合の送信信号が出力され、かつ送信制御部72は送信タイミング等を設定する。ここでは、説明を簡単にするために、送信出力の初期値は通信装置20で設定可能な送信出力の最大値とする。
また、通常読取機能による読取動作で読取った棚卸リスト352に無い無線タグ(例えば、図8の無線タグTG25)を指定繰返し読取機能の対象として設定する。次いで、指定繰返し読取機能による読取動作を開始する(動作A34)。以下の説明では、無線タグTG25を対象とした指定繰返し読取機能を行う例を述べる。
送信出力設定部71から、送信出力設定信号を出力すると、無変調キャリア信号がアンテナ22から電波として放射され、送信制御部72から送信信号を出力すると、無線タグに対する送信が行われる。
図17は、第3の実施形態の通信装置20と無線タグTG25との間の無線通信プロトコルの一例を示すタイミングチャートである。図12と同様にISO18000-6type Cのプロトコルに準拠する例を示しており、1ラウンドあたりのスロット数を“1”とした場合である。
記号[S]、[Q]、[R]、[A]、[ID]は、いずれも通信データを示す。各通信データの先頭には、データの先頭を示すプリアンブル符号が含まれ、また、[S]を除く各通信データには、CRC(Cyclic Redundancy Check)符号等の誤り検出符号が含まれており、受信側でエラーを検出できる。
図17の丸印“○”は、各ラウンドで通信装置20のID情報[ID]の受信成功を意味している。記号“×”は受信失敗を意味している。先ず、通信装置20は、上述の通り、無変調のキャリア信号をアンテナ22から電波として送信する。次に、通信装置20は、Selectコマンド[S]、次いでQueryコマンド[Q]を送信し、1番目のラウンドR1を開始する。Selectコマンド[S]は、指定繰返し読取機能の対象である無線タグTG25だけが応答するように、無線タグTG25の識別情報を設定している。無線タグTG25以外の無線タグが、このSelectコマンド[S]及びQueryコマンド[Q]を受信した場合、この無線タグは、自身の識別情報とは異なる識別情報が指定されていると判断して、応答信号[R]を送信しない。1番目のラウンドR1は、無線タグTG25に十分な電波が届いていない等の理由により、通信装置20は応答信号[R]を待機中に受信タイムアウトを検出した例である。
通信装置20は、ラウンドR1のSelectコマンド[S]の送信開始時から、時間t1経過時に、無線タグTG25だけが応答するように、無線タグTG25の識別情報を設定したSelectコマンド[S]、次いでQueryコマンド[Q]を送信し、2番目のラウンドR2を開始する。2番目のラウンドR2は、通信装置20が無線タグTG25からID情報[ID]を正しく受信した場合を示す。以降、同様に通信装置20は、Selectコマンド[S]の送信開始時から時間t1経過時に、無線タグTG25だけが応答するように、無線タグTG25の識別情報を設定したSelectコマンド[S]及びQueryコマンド[Q]を送信し、次のラウンドを開始する。ラウンドR5、R6、及びラウンドR8は、通信装置20がAckコマンド[A]を送信した後、通信装置20がID情報[ID]を待っている間に受信タイムアウトを検出し、ID情報[ID]の受信に失敗した例を示している。
また、制御部34は、各ラウンドでID情報[ID]を正しく受信したか否かを検出するとともに、例えば、前3ラウンドのID情報[ID]の受信可否結果を含めて通信成功率を算出する。図17の例では、ラウンドR4で算出した通信成功率SVは、ラウンドR1からラウンドR4までのID情報[ID]受信可否結果から75%となる。ラウンドR5で算出した通信成功率SVは、ラウンドR2からラウンR5までのID情報[ID]受信可否結果から75%である。
図16Bに戻り、制御部34は、指定繰返し読取機能による読取動作を開始し(動作A34)、各ラウンドでID情報[ID]の受信可否を検出するとともに通信状態を算出する(動作A35)。ここでは、通信状態として通信成功率SVを算出する。また算出した通信成功率SVをディスプレイ24に表示してもよい(動作A36)。
次に、制御部34は、算出した通信成功率SVを閾値aと比較する(動作A37)。通信成功率SVが閾値aより大きいときは、通信状態が良好と判定する。例えば、閾値a=70%とする。また制御部34は、通信成功率SVが閾値aより大きい場合には、「アンテナを向けた方向に対象の無線タグがあるので、その方向に進んでください」というメッセージをディスプレイ24に表示する(動作A38)。
また、制御部34は、現在の通信装置20の送信出力と、予め設定された指定繰返し読取機能での送信出力の最小値とを比較する(動作A39)。通信装置20の送信出力を最小値に設定した場合に、指定繰返し機能によって対象の無線タグを特定するときの読取範囲が最小になる。指定繰返し読取機能での送信出力の初期値、最大値及び最小値は予めオペレータにより設定されている。
制御部34は、現在の送信出力が最小値よりも大きい場合には、送信出力を1ステップ下げ(動作A40)、読取範囲を狭める。現在の送信出力が最小値の場合には、「最小の読取範囲内に対象の無線タグが存在する」及び「指定繰返し読取機能を終了して通常読取機能に切換える」旨をディスプレイ24に表示する(動作A47)。
制御部34は、通信成功率SVが閾値a以下の場合には、通信成功率SVを閾値bと比較する(動作A41)。閾値bは、通信成功率SVが閾値bより小さいときは通信状態が悪いと判定する。例えば、閾値b=30%とする。
制御部34は、現在の通信装置20の送信出力と、予め設定された指定繰返し読取機能での送信出力の最大値とを比較する(動作A42)。現在の送信出力が、最大値よりも小さい場合には、送信出力を1ステップ大きくする(動作A43)。
次に、制御部34は、入力部25の指定繰返し読取機能終了のキー入力があるか否かを検出し(動作A44)、入力を検出した場合には、「指定繰返し読取機能終了の入力を検出したため、通常読取機能に切換える」旨をディスプレイ24に表示し(動作A47)、図16Aの動作A2に戻る。終了キーの入力を検出しない場合には、指定繰返し読取機能を続け、制御部34は、ラウンド開始からt1時間が経過したことを検出する(動作A45)と、無線タグTG25の識別情報を設定したSelectコマンド[S]、次いでQueryコマンド[Q]を送信し、次のラウンドを開始し(動作A46)、動作A34に戻って繰返す。
指定繰返し読取機能による読取動作により、オペレータは、対象の無線タグの存在範囲を簡単に絞り込むことができる。通常読取機能による読取の動作中に、棚卸リスト352に無い無線タグを読取ったことを検出すると、一旦通常読取機能を中断して、その無線タグを簡単に特定することができ、特定後は、通常読取機能を再開することができる。
したがって、店舗全域にわたって通常読取機能による読取動作を行った後で、棚卸リスト352に無い無線タグを読取っても、それを特定するために移動する必要がなくなり、棚卸作業に要する時間が短くなり、棚卸作業を効率的に行うことができる。
なお、図16Aでは、通常読取機能終了のキー入力を検出すると(動作A4)、終了するとしているが、図5Bの(1)或いは図13Bの(2)につながって、指定読取機能による読取動作を行ってもよい。また、図16A,16B、図17では通信成功率SVを用いて通信状態を判定する例を示したが、連続してID情報[ID]を受信したラウンド数、連続してID情報[ID]を受信できなかったラウンド数、或いは他の方法で判定してもよい。さらに、図16A,16B、図17では、各ラウンドの時間をt1に固定した例を示したが、ID情報[ID]の受信可否により、各ラウンドの時間を可変してもよい。
また、第1の実施の形態では、読落としリストについて、指定読取機能による読取を行う場合を説明したが、棚卸リストにない無線タグを読取った場合の無線タグのリスト、即ち、探索リストについて、指定繰返し読取機能による読取を行う場合についても、同様に適用できる。
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施形態の無線タグ通信システムについて、図18、図19を用いて説明する。
図18は、第4の実施形態を示す無線タグ通信システムのブロック図であり、無線タグ通信装置20と上位機器(サーバ)100とで構成し、図3と機能的に同じ部分には同一符号を付している。以下、無線タグ通信装置20は通信装置20と呼ぶ。通信装置20は、電源部32、通知部24、入力部25、上位機器との通信部331、無線タグ通信部31、制御部34、及び記憶部75を備えている。
電源部32は、バッテリとバッテリの充電・放電の制御回路からなる。通知部24は、ディスプレイとブザーを含む。入力部25はキーボードや、通知部24のディスプレイ上に構成したタッチパネルで構成される。通信部331は、通信回線を介して接続される上位機器100との通信を司る。通信回線は有線、無線を問わない。
無線タグ通信部31はアンテナ22を備え、無線により、無線タグ15と通信して無線タグ15の記憶部16に記憶された識別情報等を受信する。制御部34は、CPUを主体に構成し、入力部25、通知部24、電源部32、通信部331及び無線タグ通信部31を制御して、通信装置20の全体を制御する。
制御部34は、ROMとRAMからなる記憶部75を有する。ROMには、制御部34が使用するプログラムや設定データ等が予め格納されている。RAMには、制御部34の作用により、可変的なデータが一時的に書き込まれる。RAMには、無線タグ通信部31が受信した無線タグ識別情報を含むタグ読取情報751等を格納する。タグ読取情報751は、通信部331を介して上位機器100に送信される。
また、制御部34は、無線タグ通信部31に送信出力や送信データ等を設定して制御するとともに受信データ等を受信する通信制御部36を備える。入力部25は、経路情報設定部252を備え、指定読取機能による読取動作での経路情報を入力する。入力した経路情報は、通信部331を介して上位機器100に送信される。
また上位機器100は、記憶部35、比較部37、経路情報生成部38、読落としリスト生成部39、探索リスト生成部40、及び通信部332を備えている。
記憶部35には、通信装置20から送信されたタグ読取情報351、店舗内にあるべき商品の情報である棚卸リスト352、棚卸リスト352に有るがタグ読取情報351に無い無線タグの情報である読落としリスト353、経路情報354、及び棚卸リスト352に無いが無線タグ通信部31で受信した無線タグの情報である探索リスト355等を格納する。
さらに、通信部332は、通信装置20と通信し、比較部37は、タグ読取情報351と棚卸リスト352を比較する。読落としリスト生成部39は、指定順番情報生成部391を有し、タグ読取情報351と比較部37の比較結果と経路情報354から、指定順番情報を含む読落としリスト353を生成する
探索リスト生成部40は、指定順番情報生成部401を有し、タグ読取情報351と比較部37の比較結果と経路情報354から指定順番情報を含む探索リスト355を生成する、経路情報生成部38は、タグ読取情報351から経路情報を生成する。
商品エリア情報入力部101は、上位機器100の記憶部35に格納された商品情報の一部であるエリア情報を入力するものであり、商品を配置するエリア(位置)が変更になった場合等に入力を行う。
図19A、図19Bは、第4の実施形態における通信装置20と上位機器100の処理手順を示すフローチャートである。図19A、図19Bの左側は通信装置20の制御部34の処理手順を示し、右側は、上位機器100の処理手順を示す。
制御部34は、オペレータによって入力部25の棚卸開始キーが操作されたことを検出すると、通信部331を介して、上位機器100に「棚卸開始」を送信する(動作A50)。上位機器100は、通信部332を介して「棚卸開始」を受信すると(動作A71)、通信部332を介して通信装置20に「通常読取機能による読取動作開始」の指示を送信する(動作A72)。また通信装置20が通常読取機能による読取動作を行う時の送信出力等を含めて送信してもよいし、予め、通信装置20の記憶部75に格納された通常読取機能による読取動作を行う場合の送信出力を用いるように指示してもよい。
制御部34は、上位機器100から「通常読取機能による読取動作開始」の指示を受信すると(動作A51)、通信制御部36の機能設定部73(図4)で、通常読取機能を設定する(動作A52)。即ち、通常読取機能の場合の予め定められた送信出力に対応した送信出力設定信号が送信出力設定部71から出力される。また、送信制御部72から通常読取機能の場合の送信信号が出力され、かつ送信制御部72は、送信タイミング等を設定する。
次いで、通常読取りを開始する(動作A53)。送信出力設定部71から、送信出力設定信号を出力すると、無変調キャリア信号がアンテナ22から電波として放射され、送信制御部72から送信信号を出力すると、無線タグ15に対する送信が行われる。
制御部34は、例えば、入力部25の通常読取機能終了のキー入力があるか否かを検出し(動作A54)、入力を検出した場合には、通常読取機能による読取動作を終了し(動作A55)、上位機器100へ「通常読取機能による読取動作終了」を送信する(動作A56)。
一方、入力部25の通常読取機能終了のキー入力を検出しない場合には、通常読取機能でタグ識別情報を読取ったかどうかを検出し(動作A57)、タグ識別情報を読取ったことを検出した場合には、読取ったタグ識別情報を読取順に記憶部75に記憶する。また通信部331を介して読取ったタグ識別情報を上位機器100に送信する(動作A58)。そして(動作A54)に戻る。
上位機器100は、通信装置20から読取ったタグ識別情報を受信すると(動作A73)、受信順にタグ読取情報として記憶部35に記憶する。なお、上位機器100は、記憶部35のタグ読取情報に記憶したタグ識別情報351と同じタグ識別情報は重複して記憶しないようする。また、比較部37は、タグ読取情報351と棚卸リスト352を比較する。
受信したタグ読取情報351が棚卸リスト352に無い場合には、タグ読取情報351の各無線タグ識別情報の比較結果2に“0”を格納する。受信したタグ読取情報351が棚卸リスト352にある場合には、タグ読取情報351の該当する無線タグ識別情報の比較結果2に“1”を格納するとともに、棚卸リスト352の該当する無線タグ識別情報の比較結果1を“1”に変更する(動作A74)。通信装置20から「通常読取機能による読取動作終了」を受信しない場合 (動作A75でNOのとき) には、動作A73に戻る。
次に、上位機器100は、通信装置20から「通常読取機能による読取動作終了」を受信すると(動作A75でYESのとき)、棚卸リスト352の比較結果1が0となっている無線タグの数、即ち、棚卸リスト352の中で読落とした無線タグの数を検出する(動作A76)。読落としが無い場合には終了する(動作A77)。
上位機器100は、読落とした無線タグの数が2以上であることを検出した場合(動作A78でYESのとき)には、通信装置20へ「経路情報要求」を送信する(動作A79)。通信装置20は上位機器100から「経路情報要求」を受信する(動作A59)と、図10に示す例のように、ディスプレイ24に経路情報入力を促す表示を表示し、入力部25の数字キーで選択された経路情報を、上位機器100に送信する(動作A60)。
上位機器100は通信装置20から経路情報を受信すると、記憶部35に格納する(動作A80)。次に、読落としリスト生成部39は、記憶部35に格納された経路情報354をもとに、指定読取機能による読取の指定順番情報を含む読落としリスト353を生成する(動作A81)。即ち、図9に示す棚卸リスト352の先頭から、先ず、比較結果1が“0”でエリアが“4”の無線タグの情報を抽出し、読落としリスト353に格納する。同様に、比較結果1が“0”でエリアが“3”の無線タグ、比較結果1が“0”でエリアが“2”の無線タグ、比較結果1が“0”でエリアが“1”の無線タグ、と順に抽出し、読落としリスト353を生成する。
図11に読落としリスト生成例を示す。指定読取機能による読取結果の領域は、読落としリスト生成時には“0”が格納されている。制御部34は、指定読取機能によって無線タグを読取ったことを検出した場合に、該当する指定読取機能による読取結果を“1”に変更する。
読落とした無線タグの数が1の場合は(動作A78でNOのとき)、指定読取機能の指定タグ数に“1”を設定する(動作A82)。なお、読み落とした無線タグが複数の場合には、指定読取機能の指定タグ数に“2”を設定するものとして説明する。
以下、図19Bのフローチャートに移る。上位機器100は、指定読取機能の指定タグ数、指定するタグの識別情報(タグID)を含む「指定読取機能開始」の指示を無線タグ通信装置11に送信する(動作A83)。
通信装置20は、上位機器100から「指定読取機能開始」の指示を受信すると(動作A61)、通信制御部36の機能設定部73で指定読取機能を設定し、指定読取機能の場合の予め定められた送信出力に対応した送信出力設定信号が送信出力設定部71から出力される。また送信制御部72から指定読取機能の場合の送信信号が出力され、かつ送信制御部72は送信タイミング等を設定する(動作A62)。
次いで、制御部34は、指定読取を開始する(動作A63)。即ち、送信出力設定部71から、送信出力設定信号を出力すると、無変調キャリア信号がアンテナ22から電波として放射され、送信制御部72から送信信号を出力すると、無線タグ15に対する送信が行われる。
制御部34は、入力部25の指定読取機能終了のキー入力があるか否かを検出し(動作A64)、入力を検出するまで指定読取機能を続ける。また指定読取機能終了のキー入力を検出した場合には指定読取機能による読取動作を終了し(動作A65)、上位機器100に「指定読取機能終了」を送信する(動作A66)。上位機器100は通信装置20から「指定読取機能終了」を受信する(動作A84)と、終了する。
次いで、制御部34は、入力部25の指定変更キーの入力があるか否かを検出し(動作A67)、入力がある場合には、上位機器100に「指定タグ情報変更要求」を送信する(動作A68)。
上位機器100は「指定タグ情報変更要求」を受信すると(動作A85)、現在指定している無線タグの次の指定順番の無線タグの識別情報を通信装置20へ送信する(動作A86)。そして、通信装置20は、これを受信し(動作A68)、受信した識別情報をSelectコマンド[S]に設定する。次に、制御部34は、無線タグ識別情報を読取ったか否かを判定し(動作A69)、読取ったことを検出した場合には、上位機器100に読取ったタグ情報を送信する(動作A70)。
上位機器100は通信装置20から読取ったタグ情報を受信すると(動作A87)、記憶部35の読落としリスト353において、読取った無線タグに該当する指定読取機能による読取結果を“1“に変更するとともに、棚卸リスト352の読取った無線タグに該当する比較結果を“2“に変更し、さらに、通信装置20に、次の指定順番情報の無線タグの識別情報を送信する(動作A88)。そして、動作A84に戻る。また動作A87で無線タグ識別情報を読取れなかった場合には、動作A84に戻り、動作を繰返す。通信装置20は、上位機器100から次に指定するタグ情報を受信し、受信した識別情報をSelectコマンド[S]に設定して指定読取機能を続ける(動作A70)。
このように、第4の実施形態の構成においても、第1の実施形態と同様に、通常読取機能による読取りよりも読取成功率が高い指定読取機能による読取りにおいて、指定した経路情報に従って読落とした無線タグを自動的に指定することができ、読落としリスト353を生成することができる。したがって、棚卸リスト中の無線タグの読取効率を大幅に改善することができる。
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施形態の無線タグ通信システムについて、図20A、図20Bを用いて説明する。図20A、図20Bは、第5の実施形態における通信装置20と上位機器100の処理手順を示すフローチャートであり、図20Aの左側及び図20Bは通信装置20の制御部34の処理手順を示し、図20Aの右側は、上位機器100の処理手順を示す。尚、第5の実施形態の無線タグ通信システムのブロック図は、図18に示す通りである。
制御部34は、オペレータが、例えば入力部25の棚卸開始キーを操作したことを検出すると、通信部331を介して、上位機器100に「棚卸開始」を送信する(動作A90)。上位機器100は、通信部332を介して「棚卸開始」を受信する(動作A101)と、通信部332を介して通信装置20に「通常読取機能による読取動作開始」の指示を送信する(動作A102)。また通信装置20が通常読取機能により読取動作を行う時の送信出力等を含めて送信してもよいし、予め通信装置20の記憶部75に格納された、通常読取機能により読取動作を行う場合の送信出力を用いる指示を含めてもよい。
制御部34は、上位機器100から「通常読取機能による読取動作開始」の指示を受信すると(動作A91)、通信制御部36の機能設定部73で、通常読取機能を設定する(動作A92)。即ち、通常読取機能の場合の予め定められた送信出力に対応した送信出力設定信号が送信出力設定部71から出力される。また、送信制御部72から通常読取機能の場合の送信信号が出力され、かつ送信制御部72は、送信タイミング等を設定する。
次いで、通常読取を開始する(動作A93)。送信出力設定部71から、上記送信出力設定信号を出力すると、無変調キャリア信号がアンテナ22から電波として放射され、送信制御部36から送信信号を出力すると、無線タグ15に対する送信が行われる。
制御部34は、例えば、入力部25の通常読取機能終了のキー入力があるか否かを検出し(動作A94)、入力を検出した場合には、通常読取機能による読取動作を終了し(動作A95)、上位機器100へ「通常読取機能による読取動作終了」を送信する(動作A96)。
また通常読取機能終了のキー入力を検出しない場合には、通常読取機能でタグ識別情報を読取ったかどうかを検出し(動作A97)、タグ識別情報を読取った場合には、読取ったタグ識別情報を、読取順に記憶部75に記憶するとともに、通信部331を介して読取ったタグ識別情報を上位機器100に送信する(動作A98)。動作A97で、タグ識別情報を読取れなかった場合には、動作A94に戻る。
上位機器100は、通信装置20から読取ったタグ識別情報を受信すると(動作A103)、受信順にタグ読取情報として記憶部35に記憶する。尚、上位機器100は、記憶部35のタグ読取情報に記憶したタグ識別情報351と同じタグ識別情報は重複して記憶しないようにする。また、比較部37は、タグ読取情報351と棚卸リスト352を比較する。
受信したタグ読取情報351が棚卸リスト352に無い場合には、タグ読取情報351の各無線タグ識別情報の比較結果2に“0”を格納する。受信したタグ読取351が棚卸リスト352にある場合は、タグ読取情報351の該当する無線タグ識別情報の比較結果2に“1”を格納するとともに、棚卸リスト352の該当する無線タグ識別情報の比較結果1を“1”に変更する(動作A104)。
さらに、受信したタグ読取情報351が棚卸リスト352に無い場合(動作A105)は、上位機器100は、通信装置20へ棚卸リスト352に無いタグ識別情報を含む「指定繰返し読取機能開始」の指示を送信する(動作A106)。
制御部34は、読取ったタグ識別情報を上位機器100に送信したら(動作A98)、上位機器100から「指定繰返し読取機能開始」の指示を受信したかどうかを検出する(動作A99)。検出しない場合には(動作A94)に戻る。検出した場合には、通常読取機能による読取動作を中断し、指定繰返し読取機能による読取動作に切換え、指定繰返し読取機能による読取動作を行う。
即ち、図20Bの動作A32から動作A47の動作を行う。図20Bの動作は、図16の動作と同様のもので、動作A100が追加されている。簡単に説明すると、通信状態が良好で(動作A38)、送信出力が最小値の場合(動作A39)、或いは指定繰返し読取機能終了の入力を検出した場合(動作A44)に、制御部34は上位機器100へ「指定繰返し読取機能終了」を送信する(動作A100)。またディスプレイ24に通常読取機能に切換える表示を行い(動作A47)、図20Aの動作A92に戻り、通常読取機能に切換えて通常読取機能を再開する。
上位機器100は通信装置20から「指定繰返し読取機能終了」を受信すると(図20Aの動作A107)、通信装置20から「通常読取機能による読取動作終了」を受信したか否かを検出し(動作A108)、検出しない場合には(動作A103)に戻る。検出した場合には終了する。
第3の実施形態と同様に、指定繰返し読取機能による読取動作により、オペレータは、対象の無線タグの存在範囲を、設定した送信出力最小値での読取範囲に簡単に絞り込むことができる。通常読取機能による読取の動作中に、棚卸リスト352に無い無線タグを読取ったことを検出すると、一旦通常読取機能を中断して、その無線タグを簡単に特定することができ、特定後は、通常読取機能を再開することができる。
したがって、店舗全域にわたって通常読取機能による読取動作を行った後で、棚卸リスト352に無い読取った無線タグを特定するために移動する必要がなくなり、棚卸作業に要する時間が短くなり棚卸作業を効率的に行うことができる。
また、第4の実施の形態では、棚卸リストに有る無線タグを読み落とした場合の無線タグのリスト、即ち読落としリストについて、指定読取機能による読取を行う場合を説明したが、棚卸リストにない無線タグを読取った場合の無線タグのリスト、即ち、探索リストについて、指定繰返し読取機能による読取を行う場合についても、同様に適用できる。
以上述べたように、各実施形態では、棚卸作業での無線タグの読取率を向上し、棚卸作業を効率的に短時間で行うことができる装置及びシステムを提供することができる。また棚卸作業を行うオペレータの負担を軽減することができる。
尚、本発明のいくつかの実施形態を述べたが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。