JP5868129B2 - インクジェット記録媒体 - Google Patents
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そこで、本発明は、不織布からの繊維の脱落を抑制しつつ不透明性の高いインクジェット記録媒体を提供することを目的とする。
すなわち、本発明のインクジェット記録媒体は、不織布の片面又は両面にインク受容層を設け、該不織布が有機顔料粒子及び接着剤を含有し、該有機顔料粒子のレーザー回折法による平均粒子径が0.1〜3.0μmであり、かつ前記有機顔料粒子が前記不織布の全重量に対して固形分換算で7〜15 w %含有され、該接着剤が前記不織布の全重量に対して固形分換算で0.5〜15.0wt%含有され、不透明度が80%以上である。
前記接着剤の示差走査熱量測定によるガラス転移温度が0℃未満であることが好ましい。
前記不織布は、繊度が0.1〜3.5dtexである合成繊維を含むことが好ましい。
本発明において、インクジェット記録媒体の支持体に用いられる不織布(以下、単に「不織布」又は「支持体」ということがある。)とは、繊維を熱・機械的または化学的な作用によって接着または絡み合わせる事で布状にしたものである。不織布は、紙支持体等に比べ、風合いが柔軟で織物風の地合を有しているという特徴がある。
不織布に用いられる繊維としては、特に限定されるものではなく、セルロース繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維を例示することができ、これらを単独又は2種類以上併用することも可能であるが、中でも、風合いが柔軟であり、耐水性に優れる点からポリエステル繊維を用いることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維を用いることが特に好ましい。特に湿式抄造においては、ポリエチレンテレフタレート繊維の絡み合いだけでは強度が十分に発現せず、抄造時のワイヤーや毛布からの剥離性や、引張強さが不十分となる場合がある。そこで、PETと共に低融点タイプや未延伸タイプのポリエステルバインダー繊維を配合し、乾燥工程や次工程の熱加工によって強度を発現させることが特に好ましい。
繊維の繊度が0.1dtexよりも小さいと、湿式で不織布を製造する際に繊維を水中で分散させ、フォーマー上で脱水する際に水とともに脱落しやすくなる。繊維の繊度が3.5dtexを超えると、不織布の風合いが剛直になり、不織布表面の平滑性も悪化する傾向にある。
又、不織布の厚みは30〜2000μmが好ましい。不織布の厚みが30μmよりも薄いと給紙の際にロールで不織布を十分にニップできずにロールで滑ってしまい、正確に通紙できず、しわが発生することがある。また不織布の厚みが2000μmよりも厚いと、この厚みに対応するインクジェットプリンターが限られる場合がある。
但し、支持体の表面平滑性が低いとインクジェットプリンターでの印刷時の作業性が低下することから、表面平滑性を付与しやすい湿式法を用いることが好ましい。
本発明において、不織布に接着剤を含有させて不織布からの繊維の脱落を抑制する。不織布に接着剤を添加すると合成繊維の脱落を抑制することができると共に、後述する有機顔料粒子を不織布に固定する機能を有する。
接着剤は、特に限定されるものではないが、カゼイン、大豆蛋白、澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンラテックス、アクリル樹脂、酢酸ビニル、ポリウレタン等の水溶性樹脂、親水性樹脂又は水分散性樹脂を例示することができ、これらを単独又は2種類以上含有させることもできる。
なお、ポリエチレンテレフタレート繊維を主成分(不織布全体に対して50wt%を超える割合)とした不織布を用いる場合、接着剤としてアクリル樹脂を用いると、耐水性や繊維の脱落の抑制の点から好ましい。
接着剤の示差走査熱量測定によるガラス転移温度(Tg)が0℃未満であることが好ましい。ガラス転移温度が0℃以上であると接着剤の柔軟性が乏しくなり、不織布の風合いが剛直になることがある。示差走査熱量測定は、JIS K7121に準拠して測定する。
本発明において、不織布に有機顔料粒子を含有させて不織布の不透明性の低下を抑制する。不織布に接着剤を添加すると合成繊維の脱落を抑制することができるが、不織布中の空隙が接着剤によって充填されてしまうため、不織布中で光の散乱が起こり難くなって不織布の不透明性が低下する。そこで、不織布に有機顔料粒子を含有させることで、Mie散乱理論により不織布中で光の散乱を起こさせることができる。特に、本願発明のインクジェット記録媒体を壁紙用途に用いるなど裏抜けの防止が必要とされる場合は、インクジェット記録媒体の不透明度を65%以上とすることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上が最も好ましい。
有機顔料粒子は特に限定されるものではないが、スチレン・アクリル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シリコーン、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂等を例示することができ、これらを単独又は2種類以上含有させることもできる。
なお、ポリエチレンテレフタレート繊維を主成分とした不織布を用い、且つアクリル樹脂を接着剤に用いる場合、アクリル系の有機顔料粒子を用いることが不織布の不透明性の向上、有機顔料粒子脱落防止の点から好ましい。
なお、レーザー回折法による平均粒子径の測定は、粒子に光を照射した際、粒子径により散乱光量とパターンが異なること(Mie散乱理論)を利用したものである。但し、粒度測定機によって散乱光から平均粒子径を算定する方法が異なるため、本発明においては、レーザ回折装置(株式会社島津製作所の製品名SALD-200V ER)によって測定する。又、平均粒子径の測定方法は、純水中に試料を滴下混合して均一分散体としたものをサンプルに用いて行う。
又、不織布には、酸化防止剤、染料、蛍光増白剤、可塑剤、帯電防止剤、防カビ剤、防汚剤、難燃剤など等を添加することが可能である。
なお、不織布中の接着剤の種類及びTgの同定は、不織布から接着剤を溶解して集めることで行うことができる。不織布中の有機顔料粒子の種類及び平均粒子径の同定は、不織布から有機顔料粒子を取り出して行うことができる。
インク受容層としては、顔料およびバインダーを主成分としたピグメントコート層、又はカチオン性樹脂及び/又は接着剤を主成分としたクリアーコート層とすることが好ましい。上記顔料、バインダー、各種添加剤は公知ものを適宜選択して用いることができ、これらの配合量は要求される品質により適宜調整することができる。
顔料としては、シリカ、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ソーダ、アルミノケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム複合シリカなどの無機填料、またはメラミン樹脂填料、尿素−ホルマリン樹脂填料、ポリエチレンパウダー、ナイロンパウダー、スチレン、スチレン−アクリル、アクリルなどの有機充填剤が挙げられる。中でも、インク吸収性および発色性の点から、シリカ、アルミナ、焼成カオリン、炭酸カルシウムなどを用いることが好ましい。
各種添加剤としては、カチオン性樹脂(染料定着剤)、顔料分散剤、消泡剤、潤滑剤、紫外線吸収剤、サイズ剤、蛍光染料、防腐剤等が挙げられる。中でも、カチオン性樹脂は画像部の耐水性および発色性を著しく向上させるため、併用することは望ましい。塗工機としては、特に限定されるものではなく、エアナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、キャストコーター、チャンプレックスコーター、グラビアコーター、2ロールコーター、トランスファーロールコーター等が使用される。
PET繊維B(帝人株式会社社製ポリエステル繊維の製品名TT04N、 繊度1.7dtex×繊維長5mm)60部、PET繊維E(帝人株式会社社製ポリエステルバインダー繊維の製品名TR07N、繊度1.2dtex×繊維長5mm)40部を水に分散させて抄紙し、熱処理を行って乾燥させ、坪量70g/m2の湿式不織布を製造した。
次に、接着剤A(新中村化学工業株式会社製の製品名ニューコート FH-3550HN、Tg:-40℃)17部、有機顔料粒子B(綜研化学株式会社製の製品名MP-1000、平均粒子径0.4μm)83部を水に分散させてサイズプレス液を調製した。このサイズプレス液を上記不織布の両面にサイズプレス(含侵加工)して12g/m2(固形分)付着させて乾燥した。さらに、インク受容層用塗工液(明成化学工業株式会社製の製品名TK-64-conc)を上記不織布の片面にマイヤーバーを用いて固形分で7g/m2付着させ、インクジェット記録媒体を得た。
サイズプレス液として、接着剤B(新中村化学工業株式会社製の製品名ニューコート K-2、Tg:-26℃)17部、上記有機顔料粒子B:83部を水に分散させたものを用いたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
サイズプレス液として、接着剤C(新中村化学工業株式会社製の製品名ベステックス L-1HN、Tg:0℃)17部、上記有機顔料粒子B:83部を水に分散させたものを用いたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
サイズプレス液として、上記接着剤B:33部、上記有機顔料粒子B:67部を水に分散させたものを用いたと共に、その付着量を固形分で15g/m2としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
サイズプレス液として、上記接着剤B:29部、上記有機顔料粒子B:71部を水に分散させたものを用いたと共に、その付着量を固形分で7g/m2としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
サイズプレス液として、上記接着剤B:67部、上記有機顔料粒子B:33部を水に分散させたものを用いたと共に、その付着量を固形分で30g/m2としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
上記不織布の繊維として、PET繊維D(帝人株式会社社製ポリエステル繊維の製品名TT04、繊度6.6dtex×繊維長5mm)60部、上記PET繊維E 40部を用いたこと以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
サイズプレス液として、接着剤D(新中村化学工業株式会社製ベステックスの製品名HCR-120、Tg:32℃) 17部、上記有機顔料粒子B:83部を水に分散させたものを用いたと共に、その付着量を固形分で12g/m2としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
サイズプレス液として、上記接着剤B 17部、有機顔料粒子D(綜研化学株式会社製MX-500、平均粒子径5.0μm) 83部を水に分散させたものを用いたと共に、その付着量を固形分で12g/m2としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
サイズプレス液として、上記接着剤B 17部、有機顔料粒子A(綜研化学株式会社製の製品名MP-1451、平均粒子径0.15μm)83部を水に分散させたものを用いたと共に、その付着量を固形分で12g/m2としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
サイズプレス液として、上記接着剤B 17部、有機顔料粒子C(綜研化学株式会社製の製品名MX-300、平均粒子径3.0μm)83部を水に分散させたものを用いたと共に、その付着量を固形分で12g/m2としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
上記不織布の繊維として、PET繊維A(帝人株式会社社製ポリエステル繊維の製品名TA04PN、 繊度0.3dtex×繊維長5mm)60部、上記PET繊維E 40部を用いたこと以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
上記不織布の繊維として、PET繊維C(帝人株式会社社製ポリエステル繊維の製品名TA04N、 繊度3.3dtex×繊維長5mm)60部、上記PET繊維E 40部を用いたこと以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
上記不織布にサイズプレスをせずにインク受容層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
サイズプレス液として、上記接着剤B:100部を水に分散させたものを用いたと共に、その付着量を固形分で2g/m2としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
サイズプレス液として、上記有機顔料粒子B:100部を水に分散させたものを用いたと共に、その付着量を固形分で10g/m2としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
インクジェット記録媒体の風合い:インクジェット記録媒体を手で保持し、曲げの力を与えたときの反発力(剛度)を官能評価により判定した。なお、試験者は7名とし、平均を取って判定した。(○(良好):曲げても反発力がなく、柔らかく感じる、△(可):曲げると若干反発力を感じるが柔らかく感じる、×(不可):曲げると明らかに反発力があり、硬く感じる)
不透明度:JAPAN TAPPI 紙パルプ試験法No.70に準拠して測定した。
耐擦過性:セイコーエプソン株式会社製インクジェットプリンター(PX-401A)でインク受容層上にベタ画像を印字した後、消しゴムで擦過して表面の状態を目視で観察して評価した(○(良好):擦過後もベタ画像の擦れは認められない、△(可):擦過後はベタ画像の一部が擦り取られていることが確認できる、×(不可):擦過後はベタ画像のかなりの部分が擦り取られている)。
得られた結果を表1に示す。
一方、不織布に有機顔料粒子及び接着剤を含有させずにインク受容層を設けた比較例1の場合、不織布からの繊維の脱落により耐擦過性が劣ると共に、不透明度が65%未満となった。不織布に有機顔料粒子を含有させずにインク受容層を設けた比較例2の場合、不透明度が65%未満となった。不織布に接着剤を含有させずにインク受容層を設けた比較例3の場合、不織布からの繊維の脱落により耐擦過性が劣った。
Claims (3)
- 不織布の片面又は両面にインク受容層を設けたインクジェット記録媒体において、該不織布が有機顔料粒子及び接着剤を含有し、
該有機顔料粒子のレーザー回折法による平均粒子径が0.1〜3.0μmであり、かつ前記有機顔料粒子が前記不織布の全重量に対して固形分換算で7〜15 w %含有され、
該接着剤が前記不織布の全重量に対して固形分換算で0.5〜15.0wt%含有され、
不透明度が80%以上であるインクジェット記録媒体。 - 前記接着剤の示差走査熱量測定によるガラス転移温度が0℃未満である請求項1記載のインクジェット記録媒体。
- 前記不織布は、繊度が0.1〜3.5dtexである合成繊維を含む請求項1又は2記載のインクジェット記録媒体。
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