JP5866992B2 - ボイラー缶水の水質管理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ボイラー缶体内の水の水質を、ナトリウム及びリン酸を含む薬剤を適量注入することによって予め定められた管理基準値の範囲内に維持する技術に関する。
従来、供給された水を加熱して蒸気を発生させるボイラーにおいて、ボイラーから蒸気機器に送られた蒸気の凝縮水(復水)と補給水との混合水が給水として該ボイラーへ供給される。そして、この給水は、ボイラー缶体内に貯留されると共に、蒸気を発生するためにボイラー内の水管を循環する。このボイラー缶体内の水(缶水)は、ボイラー内における腐食やスケーラー付着の要因となるため、ボイラー缶水の水質を、ナトリウムやリン酸等を含有する清缶剤を注入することによって、予め定められた管理基準値の範囲内に維持している(特許文献1参照)。
特許文献1には、ボイラー内における腐食防止のためのpH調整や、硬度成分の混入によるスケールの付着防止のために、ナトリウム塩タイプのリン酸塩系清缶剤で、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウムを用いた液体の清缶剤を注入する技術が開示されている。
一方、ボイラー缶水に清缶剤を注入した後は、注入した清缶剤によって浮遊性物質へと変化した硬度成分を系外に排出するためブロー制御が行われる。このブロー制御によって、ボイラー缶水内の清缶剤成分も系外へと排出される。そのため、従来では、ブローによる排出分を補うという考え方で、清缶剤の注入量が決められていた。
特開2007−181797号公報
本発明者らは、上記従来の注入量の決定方法を用いたボイラー缶水の水質管理において、ボイラー缶水中のリン酸濃度が管理下限値を下回ると共に、ボイラー缶水中のナトリウムとリン酸とのモル比である缶水Na/POモル比が管理上限値を上回る状況が生じることを確認した。そして、この原因が、ボイラー給水中に含まれるナトリウムによるものであることを突き止めた。
そこで、本発明は、このような従来の技術を有する未解決の課題に着目してなされたものであって、ボイラー給水がナトリウムを含有する場合でも、ボイラー缶水の水質を管理基準値の範囲内に維持することが可能なボイラー缶水の水質管理方法を提供することを目的としている。
〔形態1〕 上記目的を達成するために、形態1に記載のボイラー缶水の水質管理方法は、ボイラー缶体内に存在する水であるボイラー缶水に、ナトリウム及びリン酸を含有する薬剤を注入して、前記ボイラー缶水に含まれるナトリウムとリン酸とのモル比である缶水Na/PO4モル比を予め定められた目標管理値となるように調整することで、前記ボイラー缶水の水質を予め定められた管理基準値の範囲内に維持するボイラー缶水の水質管理方法であって、前記ボイラー缶水に注入する薬剤を、該薬剤に含まれるナトリウムとリン酸とのモル比である薬剤Na/PO4モル比が前記目標管理値よりも低いモル比の低モル比薬剤とし、前記ボイラー缶体内に供給される水であるボイラー給水中に含まれるナトリウムの濃度を測定するナトリウム濃度測定ステップと、前記ナトリウム濃度測定ステップにおいて測定した前記ボイラー給水中のナトリウム濃度に基づき、前記缶水Na/PO4モル比を前記目標管理値とするための前記低モル比薬剤の注入量を算出する薬注量算出ステップと、前記薬注量算出ステップにおいて算出した注入量で前記低モル比薬剤を前記ボイラー缶水に注入する薬剤注入ステップと、を含む。
つまり、ボイラー給水中のナトリウム濃度に基づき、缶水Na/PO4モル比を目標管理値とする低モル比薬剤の注入量を算出し、該算出した注入量で薬剤Na/PO4モル比が目標管理値よりも低い低モル比薬剤を注入するようにした。これによって、給水中のナトリウムを要因としたボイラー缶水中のNa/PO4モル比を目標管理値となるように調整することができ、ボイラー缶水中のPH、リン酸濃度及びNa/PO4モル比を管理基準値の範囲内に維持することが可能となる。
ここで、上記ナトリウム濃度測定ステップにおいては、ボイラー給水中のナトリウム濃度を、測定器等で直接測定してもよいし、分析によって求めてもよいし、例えば、ボイラー缶水中のリン酸濃度や、缶水Na/PO4モル比等を測定し、この測定結果に基づき算出するようにしてもよい。
〔形態2〕 更に、形態2に記載のボイラー缶水の水質管理方法は、形態1の構成に対して、前記ナトリウム濃度測定ステップにおいては、前記ボイラー缶水に含まれる現在のリン酸の濃度BCPO4の測定値と、現在の前記缶水Na/PO4モル比の測定値と、前記低モル比薬剤の薬剤Na/PO4モル比と、前記ナトリウムのモル質量WNaと、前記リン酸のモル質量WPO4とに基づき、以下の式(1)に従って、前記給水中に含まれるナトリウムの濃度CNaを算出することを特徴とする請求項1に記載のボイラー缶水の水質管理方法。
CNa=BCPO4×(缶水Na/PO4モル比の測定値−薬剤Na/PO4モル比)/(WPO4/WNa) ・・・(1)
これによって、現在のボイラー給水中のナトリウム濃度を適切に測定することが可能となり、上記形態1と同等の効果を得ることができる。
〔形態3〕 更に、形態3に記載のボイラー缶水の水質管理方法は、形態1又は2の構成に対して、前記薬注量算出ステップは、
前記ナトリウム濃度測定ステップにおいて測定した前記給水中のナトリウムの濃度CNaと、前記低モル比薬剤の薬剤Na/PO4モル比と、前記目標管理値と、前記ナトリウムのモル質量WNaと、前記リン酸のモル質量WPO4とに基づき、以下の式(2)に従って、前記缶水Na/PO4モル比を前記目標管理値とするのに必要な前記ボイラー缶水中のリン酸濃度TCPO4を算出する第1算出ステップと、
前記第1算出ステップにおいて算出したリン酸濃度TCPO4と、ボイラーの濃縮倍率Bemと、前記低モル比薬剤中のリン酸の割合PRとに基づき、以下の式(3)に従って、前記リン酸濃度TCPO4に対応する前記ボイラー給水中の低モル比薬剤の濃度CDrを算出する第2算出ステップと、
前記第2算出ステップにおいて算出した前記低モル比薬剤の濃度CDrと、前記ボイラー給水の給水量WSと、前記低モル比薬剤の希釈倍率Pとに基づき、以下の式(4)に従って、前記低モル比薬剤の注入量SDrを算出する第3算出ステップと、を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のボイラー缶水の水質管理方法。
TCPO4=CNa×(WPO4/WNa)/(目標管理値−薬剤Na/PO4モル比) ・・・(2)
CDr=(TCPO4/Bem)/PR ・・・(3)
SDr=WS×CDr×P ・・・(4)
これによって、ボイラー缶水中の缶水Na/PO4モル比を目標管理値にするための適切な低モル比薬剤の注入量を算出することが可能となり、上記形態1と同等の効果を得ることができる。
〔形態4〕 一方、上記目的を達成するために、形態4の水質管理装置は、ボイラー缶体内に存在する水であるボイラー缶水に、ナトリウム及びリン酸を含有する薬剤を注入して、前記ボイラー缶水に含まれるナトリウムとリン酸とのモル比である缶水Na/PO4モル比を予め定められた目標管理値となるように調整することで、前記ボイラー缶水の水質を予め定められた管理基準値の範囲内に維持する水質管理装置であって、前記薬剤を、該薬剤に含まれるナトリウムとリン酸とのモル比である薬剤Na/PO4モル比が前記目標管理値よりも低いモル比の低モル比薬剤とし、前記ボイラー缶体に供給される水であるボイラー給水中に含まれるナトリウムの濃度を測定するナトリウム濃度測定部と、前記ナトリウム濃度測定部で測定した前記ボイラー給水中のナトリウム濃度に基づき、前記ボイラー缶水の前記缶水Na/PO4モル比を前記目標管理値とするための前記低モル比薬剤の注入量を算出する薬注量算出部と、前記薬注量算出部で算出した注入量で前記低モル比薬剤を前記ボイラー缶水に注入する薬剤注入部と、を備える。
このような構成であれば、ナトリウム濃度測定部によって、ボイラー給水中のナトリウム濃度が測定されると、薬注量算出部によって、ボイラー給水中のナトリウム濃度に基づき、ボイラー缶水中のNa/PO4モル比を目標管理値とするための低モル比薬剤の注入量が算出される。そして、薬剤注入部によって、算出した注入量でボイラー缶水に低モル比薬剤が注入される。
これによって、給水中のナトリウムを要因としたボイラー缶水中のNa/PO4モル比を目標管理値となるように調整することができ、ボイラー缶水中のPH、リン酸濃度及びNa/PO4モル比を管理基準値の範囲内に維持することが可能となる。
ここで、上記ナトリウム濃度測定部は、ボイラー給水中のナトリウム濃度を直接測定する構成としてもよいし、分析によって求める構成としてもよいし、例えば、ボイラー缶水中のリン酸濃度や、缶水Na/PO4モル比等を測定し、この測定結果に基づき算出する構成としてもよい。
本発明に係るボイラー缶水の水質管理方法又は水質管理装置によれば、ボイラー給水中のナトリウムを要因としたボイラー缶水中のNa/PO4モル比の上昇を抑えることができる。これにより、ボイラー缶水中のNa/PO4モル比を管理基準値の範囲内に維持することができると共に、ボイラー缶水中のPH、及びリン酸濃度をも管理基準値の範囲内に維持することができるという効果が得られる。また、適正な水質で管理することが可能となるのでボイラーチューブの減肉量を軽減でき、ボイラーチューブの補修費用の削減という効果も得ることができる。
本発明に係るボイラー設備の一実施形態を模式的に示す図である。 水質管理装置の構成を示すブロック図である。 薬注制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。 (a)及び(b)は、清缶剤の変更前後におけるボイラー缶水のPH、リン酸濃度、缶水Na/PO4モル比の一例を示す図であり、(c)は、低モル比清缶剤の注入量の変更前後におけるボイラー缶水のPH、リン酸濃度、缶水Na/PO4モル比の一例を示す図である。 試験に用いた各ボイラーの操業条件を示す図である。 (a)〜(c)は、試験に用いた各ボイラーに対して水質管理装置2と同様の薬注量制御方法で低モル比清缶剤を注入した場合の試験結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。図1〜図4は、本発明に係るボイラー缶水の水質管理方法及び水質管理装置の実施形態を示す図である。
(構成)
まず、本発明に係る水質管理装置を適用したボイラー設備の構成を図1に基づき説明する。図1は、本発明に係るボイラー設備の一実施形態を模式的に示す図である。
図1に示すように、ボイラー設備100は、供給水を加熱して高圧蒸気を発生するボイラー装置1と、ボイラー缶内に存在する水の水質を管理する水質管理装置2と、低圧タービン3と、復水装置4と、純水装置5と、脱気装置6とを含んで構成されている。
低圧タービン3は、ボイラー装置1で発生した高圧蒸気をタービン内で膨張させて低圧蒸気に変換し、変換した低圧蒸気の一部を系外(工場等)へと排出し、残りを復水装置4へと排出する。
復水装置4は、低圧タービン3からの低圧蒸気を冷却して復水し、この復水を脱気装置6へと排出する。
純水装置5は、原水(水道水、工業用水、地下水など)に対して、ろ過やイオン交換等を施して純水を精製し、この純水を脱気装置6へと排出する。
脱気装置6は、復水装置4からの復水及び純水装置5からの純水の混合水を加熱し、混合水中に含まれる溶存ガスを分離除去する。そして、溶存ガスを分離除去した混合水(以下、ボイラー給水と称す)をボイラー装置1に供給する。
ボイラー装置1は、水管11と、燃焼室12と、蒸気ドラム13と、水ドラム14とを備えている。
水管11は、燃焼室12の加熱部を横切って配設されており、水ドラム14と蒸気ドラム13との間で水を循環させる管である。燃焼室12は、石油やガス等の燃料を燃焼して熱を発生し、水管11内を循環する水を加熱する。蒸気ドラム13は、この加熱によって発生する蒸気を取り出す。水ドラム14は、脱気装置6を介して供給されるボイラー給水を貯留する。
ボイラー装置1は、水ドラム14に貯留された水を不図示のポンプ等によって水管11内を循環させる一方、燃焼室12において燃料を燃焼する。この燃料の燃焼によって発生する熱によって、水管11内を循環する水を加熱し高圧蒸気を発生する。そして、蒸気ドラム13において、発生した高圧蒸気を取り出す。
なお、本実施形態において、水管11と、蒸気ドラム13と、水ドラム14とがボイラー缶体を構成する。また、本実施形態において、ボイラー装置1は、定期的にブローを行って、ボイラー缶体内の水(以下、ボイラー缶水と称す)に含まれる不純物(硬度成分)を系外へと排出する。
水質管理装置2は、ボイラー缶体内のボイラー缶水に清缶剤を注入して、ボイラー缶水の水質を、予め定められた管理基準値の範囲内に維持する。
ここで、清缶剤は、ボイラー缶水内の硬度成分であるCa、Mg、SiO2と反応して、これらを浮遊性物質へと変化させる薬剤である。浮遊性物質となったCa、Mg、SiO2は、ブローによって系外へと排出する。つまり、清缶剤は、ボイラー本体に対するスケール付着を防止する機能と、ボイラー缶水のPH(ペーハー)を調節して水管11の腐食を防止する機能とを有している。
一方、ボイラー缶水の水質を管理する上で重要になってくるのが腐食とスケール付着による影響であることから、PHとリン酸(PO4)の濃度とを重視して水質管理を行っている。
本発明者らは、これまで、清缶剤として、ナトリウム(Na)とリン酸(PO4)とのモル比(以下、薬剤Na/PO4モル比と称す)が「3」のもの(Na3PO4)を使用してきた。また、これまでは、清缶剤の注入を、連続ブローによって排出される薬品分を補充するという考えから、以下の式(5)によって求めた注入量によって行ってきた。
清缶剤の注入量[g/h]=必要リン酸濃度[mg/L]×ブロー量[t/h]×100/清缶剤中のリン酸の割合[%] ・・・(5)
そして、本発明者らは、上式(5)に従って求めた薬剤注入量による注入方法で、薬剤Na/PO4モル比が「3」の清缶剤を注入した場合に、ボイラー缶水のリン酸濃度が管理基準値の範囲を逸脱することを確認した。加えて、ボイラー缶水に含まれるNaとPO4とのモル比(以下、缶水Na/PO4モル比と称す)が管理基準値の範囲を逸脱することも確認した。また、本発明者らは、これらの原因が、ボイラー給水中に含まれるNaが遊離アルカリとなってボイラー缶水のPHを上昇させていると共に、缶水Na/PO4モル比を上昇させていることであることを突き止めた。
なお、JIS(日本工業規格)で規定されている管理基準値は、PHが9.0〜10.0、リン酸濃度が2〜6[ppm]、缶水Na/PO4モル比が3.0以下となっている。
以上のことから、本発明者らは、まず、注入する清缶剤を、その薬剤Na/PO4モル比が、目標管理値(例えば2.8〜3.0)よりも低いもの(以下、低モル比清缶剤と称す)に変更した。なお、目標管理値は、管理基準値の範囲内の値に設定する。次に、ボイラー給水中のNa濃度を求め、このNa濃度に基づき、かかる低モル比清缶剤について、缶水Na/PO4モル比を目標管理値とするのに必要なリン酸濃度となる注入量を求めるようにした。
次に、図2に基づき、水質管理装置2の詳細な構成を説明する。図2は、水質管理装置の構成を示すブロック図である。
水質管理装置2は、図2に示すように、缶水成分測定部20と、ナトリウム濃度算出部21と、目標リン酸濃度算出部22と、薬剤濃度算出部23と、薬注量算出部24と、薬注制御部25と、注入ポンプ26と、薬剤タンク27とを含んで構成されている。
缶水成分測定部20は、ボイラー缶体内のボイラー缶水を所定量採取する。そして、採取したボイラー缶水に対して試薬等の添加を行って、現在のボイラー缶水中のPO4濃度BTPO4を測定する。加えて、採取したボイラー缶水から現在の缶水Na/PO4モル比を測定する。更に、缶水成分測定部20は、これらの測定結果をナトリウム濃度算出部21に出力する。
ナトリウム濃度算出部21は、缶水成分測定部20からの測定結果と、不図示のメモリに予め記憶されている低モル比薬剤の薬剤Na/PO4モル比と、Naのモル質量WNaと、PO4のモル質量WPO4とに基づき、下式(6)に従って、ボイラー給水中のNa濃度CNaを算出する。
CNa[ppm]=BTPO4[ppm]×(缶水Na/PO4モル比−薬剤Na/PO4モル比)/(WPO4/WNa) ・・・(6)
なお、上式(6)において、WNaは「23」、WPO4は「95」であることから、「WPO4/WNa=95/23≒4.13」となる。また、本実施形態では、不図示のメモリに記憶されている上式(6)の情報において、「WPO4/WNa」として、予め「4.13」が設定されているものとする。
ナトリウム濃度算出部21は、上式(6)に従って算出した、ボイラー給水中のNa濃度CNaを、目標リン酸濃度算出部22に出力する。
目標リン酸濃度算出部22は、ナトリウム濃度算出部21からのNa濃度CNaと、不図示のメモリに予め記憶されている薬剤Na/PO4モル比及び缶水Na/PO4モル比の目標管理値(例えば2.8〜3.0)と、WNaと、WPO4とに基づき、下式(7)に従って、目標リン酸濃度TCPO4を算出する。
TCPO4[ppm]=CNa[ppm]×(WPO4/WNa)/(目標管理値−薬剤Na/PO4モル比) ・・・(7)
目標リン酸濃度算出部22は、上式(7)に従って算出した目標リン酸濃度TCPO4を、薬剤濃度算出部23に出力する。なお、本実施形態では、不図示のメモリに記憶されている上式(7)の情報において、「WPO4/WNa」として、予め「4.13」が設定されているものとする。
薬剤濃度算出部23は、目標リン酸濃度算出部22からの目標リン酸濃度TCPO4と、不図示のメモリに予め記憶されているボイラー装置1の連続ブロー量Brq[L/h]、ボイラー給水量WS[L/h]及び低モル比薬剤中のリン酸の割合PRとに基づき、下式(4)に従って、ボイラー給水中の薬剤濃度CDrを算出する。
CDr[ppm]={TCPO4[ppm]/(WS/Brq[L/h])}/PR
・・・(8)
上式(4)において、ボイラー給水量WSを、連続ブロー量Brqで除算した結果(WS/Brq[L/h])は、ボイラーの濃縮倍率Bemとなる。また、上式(4)における、TCPO4[ppm]/(WS/Brq[L/h])は、ボイラー缶水中のリン酸濃度を上式(7)で求めたTCPO4とするのに必要なボイラー給水中のリン酸濃度となる。
薬剤濃度算出部23は、上式(8)に従って算出したボイラー給水中の薬剤濃度CDrを、薬注量算出部24に出力する。
薬注量算出部24は、薬剤濃度算出部23からの薬剤濃度CDrと、不図示のメモリに予め記憶されているボイラー給水量WS[L/h]及び薬品希釈倍率P[倍]とに基づき、下式(9)に従って、缶水Na/PO4モル比をその目標管理値とするために必要な低モル比清缶剤の注入量SDrを算出する。
SDr[mL/h]=WS[L/h]×CDr[ppm]×P[倍] ・・・(9)
薬注量算出部24は、上式(9)に従って算出した低モル比清缶剤の注入量SDrを、薬注制御部25に出力する。
なお、薬剤Na/PO4モル比の情報、缶水Na/PO4モル比の目標管理値の情報、低モル比薬剤中のリン酸の割合PRの情報及び薬品希釈倍率Pの情報は、設備管理者が入力した情報を予めメモリに記憶したもの等を用いることができる。また、連続ブロー量Brq[L/h]及びボイラー給水量WS[L/h]の情報は、既存の流量測定器やボイラー装置1の制御部等から入力されてくる情報を予めメモリに記憶したもの、または設備管理者が入力した情報を予めメモリに記憶したもの等を用いることができる。
薬注制御部25は、薬注量算出部24からの注入量SDrに基づき、注入ポンプ26の駆動信号を生成し、生成した駆動信号を注入ポンプの駆動部に供給する。
注入ポンプ26は、電動ポンプであって、薬注制御部25からの駆動信号に基づき電動モータを駆動することで、薬剤タンク27に貯留された低モル比清缶剤を吸入し、吸入した低モル比清缶剤をボイラー缶内に注入する。このとき、駆動信号に応じた注入量SDr[mL/h]で低モル比清缶剤をボイラー缶内に注入する。なお、本実施形態において、注入ポンプ26は、低モル比清管剤をボイラー給水を介して注入する。つまり、ボイラー給水の給水経路を介して低モル比清缶剤をボイラー缶水中に注入する。
なお、水質管理装置2は、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、専用のプログラムの記憶されたROM(Read Only Memory)と、を備えており、CPUにより専用のプログラムを実行することによって上記各部の機能を果たす。ここで、水質管理装置2の上記各機能は、専用のプログラムのみでその機能を果たすもの、専用のプログラムによりハードウェアを制御してその機能を果たすもの等が混在している。
次に、図3に基づき、水質管理装置2における低モル比清缶剤の注入を制御する処理である薬注制御処理の処理手順を説明する。図3は、薬注制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
薬注制御処理は、CPUにおいて実行されると、図3に示すように、まず、ステップS100に移行する。
ステップS100では、缶水成分測定部20において、薬注指令があったか否かを判定し、薬注指令があったと判定した場合(Yes)は、ステップS102に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、薬注指令があるまで判定処理を繰り返す。
ステップS102に移行した場合は、缶水成分測定部20において、ボイラー缶水中のリン酸濃度を測定し、測定したリン酸濃度BCPO4をナトリウム濃度算出部21に出力して、ステップS104に移行する。
ステップS104では、缶水成分測定部20において、ボイラー缶水中の缶水Na/PO4モル比を測定し、測定した缶水Na/PO4モル比をナトリウム濃度算出部21に出力して、ステップS106に移行する。
ステップS106では、ナトリウム濃度算出部21において、缶水成分測定部20からのリン酸濃度BCPO4及び缶水Na/PO4モル比と、不図示のメモリ(RAM又はROM)から読み出した薬剤Na/PO4モル比とに基づき、上式(6)に従って、ボイラー給水中のナトリウム濃度CNaを算出する。そして、算出したナトリウム濃度CNaを、目標リン酸濃度算出部22に出力して、ステップS108に移行する。
ステップS108では、目標リン酸濃度算出部22において、ボイラー給水中のナトリウム濃度CNaと、不図示のメモリから読み出した薬剤Na/PO4モル比及び缶水Na/PO4モル比の目標管理値とに基づき、上式(7)に従って、目標リン酸濃度TCPO4を算出する。そして、算出した目標リン酸濃度TCPO4を、薬剤濃度算出部23に出力して、ステップS110に移行する。
ステップS110では、薬剤濃度算出部23において、目標リン酸濃度TCPO4と、不図示のメモリから読み出した連続ブロー量Brq、ボイラー給水量WS及び低モル比薬剤中のリン酸の割合PRとに基づき、上式(8)に従って、ボイラー給水中の低モル比清缶剤の濃度CDrを算出する。そして、算出したボイラー給水中の低モル比清缶剤の濃度CDrを、薬注量算出部24に出力して、ステップS112に移行する。
ステップS112では、薬注量算出部24において、ボイラー給水中の低モル比清缶剤の濃度CDrと、不図示のメモリから読み出したボイラー給水量WS及び低モル比清缶剤の希釈倍率Pとに基づき、上式(9)に従って、缶水Na/PO4モル比の目標管理値を維持するための低モル比清缶剤の注入量SDrを算出する。そして、算出した注入量SDrを、薬注制御部25に出力して、ステップS114に移行する。
ステップS114では、薬注制御部25において、低モル比清缶剤の注入量SDr[mL/h]に基づき注入ポンプ26の駆動信号を生成し、生成した駆動信号を注入ポンプ26に出力して、ステップS100に移行する。
これにより、注入ポンプ26は、駆動信号に応じて注入量SDr[mL/h]となるように、薬剤タンク27に貯留されている希釈倍率Pで希釈された低モル比清缶剤を吸入し、吸入した低モル比清缶剤をボイラー缶体内のボイラー缶水へと注入する。
(動作)
次に、図4に基づき、従来の清缶剤の注入方法と比較しながら、本実施形態の水質管理装置2の動作を説明する。図4(a)及び(b)は、清缶剤の変更前後におけるボイラー缶水のPH、リン酸濃度、缶水Na/PO4モル比の一例を示す図であり、(c)は、清缶剤の注入量の変更前後におけるボイラー缶水のPH、リン酸濃度、缶水Na/PO4モル比の一例を示す図である。
従来は、清缶剤として、薬剤Na/PO4モル比が「3」(Na3PO4)の清缶剤(以下、モル比3清缶剤と称す)を使用していた。以下に、モル比3清缶剤の硬度成分との反応式を示す。
10Ca(HCO3)2+6Na3PO4+2NaOH→[Ca3(PO4)2]3Ca(OH)2+10Na2CO3+10CO2+10H2O ・・・(10)
MgCl2+2NaOH→Mg(OH)2+2NaCl ・・・(11)
MgCl2+SiO2+2NaOH→MgSiO3+2NaCl+H2O ・・・(12)
SiO2+2NaOH→Na2SiO3+H2O ・・・(13)
また、従来は、連続ブローによって不足する分の清缶剤を補給する考えで、上式(5)に従って、モル比3清缶剤の注入量を算出していた。図4の例では、実際に、3号、4号、5号及び7号ボイラーに対してモル比3清缶剤の注入を行っている。なお、図4(a)及び(c)において、左側縦軸がPHを示し、右側縦軸がNa/PO4モル比を示し、横軸がリン酸濃度[ppm]を示す。
このようにして算出した注入量で、モル比3清缶剤を各ボイラー缶内に注入したところ、図4(a)及び(b)に示すように、缶水Na/PO4モル比が最大で「5」となり、全てのボイラーで管理基準値の範囲(3.0以下)を上回った。加えて、図4(a)及び(b)に示すように、7号ボイラーを除く3つのボイラーでリン酸濃度が管理下限値(2.0)を下回った。また、PHは、いずれも高い値を示してはいるが、管理基準値の範囲内であった。
次に、低モル比清缶剤として、薬剤Na/PO4モル比が「2」(Na2HPO4)の低モル比清缶剤(以下、モル比2清缶剤と称す)を使用し、従来と同様に、上式(5)に従って、モル比2清缶剤の注入量を算出した。
そして、このようにして算出した注入量で、モル比2清缶剤を各ボイラー缶内に注入したところ、図4(a)及び(b)に示すように、5号ボイラーを除く3つのボイラーにおいて缶水Na/PO4モル比が、モル比3清缶剤を使用した場合と比較して低くなった。しかしながら、未だに、リン酸濃度は7号ボイラー以外で管理下限値を下回り、缶水Na/PO4モル比は全てのボイラーで管理基準値の範囲を上回った。
本発明者らは、このように缶水Na/PO4モル比が上昇し、リン酸濃度が不足する原因は、ボイラー給水中のNaによるものであることを突き止めている。従って、本実施形態では、モル比2清缶剤を使用することに加えて、連続ブローで排出した分を補給するという考えだけではなく、ボイラー給水中のNa濃度も考慮して、モル比2清缶剤の注入量を算出するようにした。
水質管理装置2は、まず、電源投入後に又は予め設定されたスケジュールで決められたタイミングで入力される薬注指令に応じて(S100のYes)、缶水成分測定部20において、ボイラー缶水を所定量採取する。更に、採取した缶水に対して試薬等を用いて、ボイラー缶水中の現在のリン酸濃度BTPO4[ppm]を測定する(S102)。続いて、現在の缶水Na/PO4モル比を測定する(S104)。そして、缶水成分測定部20は、これら測定結果を、ナトリウム濃度算出部21に出力する。
例えば、採取したボイラー缶水に酒石酸アンチモニルカリウム溶液とモリブデン酸アンモニウム溶液とを添加し、この反応液を、アスコルビン酸溶液で還元する。この還元によって反応液は青色を呈するので、この青色の強度を吸光光度計により定量する。青色の強度はリン酸のイオン濃度に比例するためリン酸濃度を定量できる。また、ボイラー缶水中のNa濃度は、例えばナトリウム濃度計で測定する。そして、ボイラー缶水中の現在のリン酸濃度及びNa濃度から現在の缶水Na/PO4モル比を算出する。
ナトリウム濃度算出部21は、缶水成分測定部20から現在のリン酸濃度BTPO4及び現在の缶水Na/PO4モル比が入力されると、メモリからモル比2清缶剤の薬剤Na/PO4モル比(例えば2.0)の情報を読み出す。そして、現在のリン酸濃度BTPO4、現在の缶水Na/PO4モル比、及び薬剤Na/PO4モル比を用いて、上式(2)から、ボイラー給水中のNa濃度CNa[ppm]を算出する(S106)。ナトリウム濃度算出部21は、算出したNa濃度CNaを目標リン酸濃度算出部22に出力する。
目標リン酸濃度算出部22は、ナトリウム濃度算出部21からNa濃度CNaが入力されると、メモリからモル比2清缶剤の薬剤Na/PO4モル比と、缶水Na/PO4モル比の目標管理値(ここでは3.0とする)とを読み出す。そして、Na濃度CNaと、薬剤Na/PO4モル比と、目標管理値「3.0」とを用いて、上式(7)から、缶水Na/PO4モル比を目標管理値「3.0」とするのに必要なボイラー給水中のリン酸濃度TCPO4[ppm]を算出する(S108)。目標リン酸濃度算出部22は、算出したリン酸濃度TCPO4を、薬剤濃度算出部23に出力する。
薬剤濃度算出部23は、目標リン酸濃度算出部22からリン酸濃度TCPO4が入力されると、メモリから連続ブロー量Brq[L/h]の情報と、ボイラー給水量WS[L/h]の情報と、低モル比薬剤中のリン酸の割合PRの情報とを読み出す。そして、リン酸濃度TCPO4と、連続ブロー量Brqと、ボイラー給水量WSと、低モル比薬剤中のリン酸の割合PRとを用いて、上式(8)から、ボイラー給水中のリン酸濃度を上記算出したリン酸濃度TCPO4とするのに必要なボイラー給水中のモル比2清缶剤の濃度CDr[ppm]を算出する(S110)。薬剤濃度算出部23は、算出したモル比2清缶剤の濃度CDrを、薬注量算出部24に出力する。
薬注量算出部24は、薬剤濃度算出部23からモル比2清缶剤の濃度CDrが入力されると、メモリから薬剤タンク27に貯留されたモル比2清缶剤の薬品希釈倍率Pの情報と、ボイラー給水量WSの情報とを読み出す。そして、濃度CDrと、薬品希釈倍率Pと、ボイラー給水量WSとを用いて、上式(9)から、ボイラー缶水中の缶水Na/PO4モル比をその目標管理値とするのに必要な、モル比2清缶剤の注入量SDr[mL/h]を算出する(S112)。薬注量算出部24は、算出したモル比2清缶剤の注入量SDrを、薬注制御部25に出力する。
薬注制御部25は、薬注量算出部24から注入量SDrが入力されると、注入量SDrに基づき、注入ポンプ26の電動モータを駆動する駆動信号を生成する。この駆動信号は、薬剤タンク27に貯留されたモル比2清缶剤を、注入量SDr[mL/h]で、ボイラー装置1のボイラー缶内に注入するように電動モータを駆動する信号となる。薬注制御部25は、生成した駆動信号を注入ポンプ26に出力する。
注入ポンプ26は、薬注制御部25からの駆動信号に応じて電動モータを駆動し、電動ポンプを作動させる。これにより、薬剤タンク27に貯留されたモル比2清缶剤を吸入すると共に、吸入した清缶剤を注入量SDr[mL/h]でボイラー缶内に注入する。
これにより、図4(c)に示すように、変更前の注入量(上式(5)で求めた注入量)では、リン酸濃度が管理基準値の範囲外となっていたものが、注入量を上記SDrに変更後は、いずれのボイラーも管理基準値である2.0〜6.0の範囲内に入るようになった。加えて、いずれのボイラーも缶水Na/PO4モル比が管理基準値である3.0以下となった。
以上説明したように、本実施形態の水質管理装置2は、清缶剤として、当該清缶剤の薬剤Na/PO4モル比が、目標管理値よりも低いモル比の清缶剤(低モル比清缶剤)を使用するようにした。そして、本実施形態の水質管理装置2は、現在のボイラー缶水中のリン酸濃度の測定値BTPO4と、現在の缶水Na/PO4モル比の測定値と、低モル比清缶剤の薬剤Na/PO4モル比とに基づきボイラー給水中のNa濃度CNaを算出する。更に、このCNaと低モル比清缶剤の薬剤Na/PO4モル比と目標管理値とに基づき、缶水Na/PO4モル比を目標管理値とするために必要なボイラー給水中のリン酸濃度TCPO4を算出する。更に、リン酸濃度TCPO4と、連続ブロー量Brqと、ボイラー給水量WSと、低モル比薬剤中のリン酸の割合PRとに基づき、ボイラー給水中のリン酸濃度をTCPO4とするために必要なボイラー給水中の低モル比清缶剤の濃度CDrを算出する。そして、濃度CDrと、薬品希釈倍率Pと、ボイラー給水量WSとに基づき、ボイラー缶水中の缶水Na/PO4モル比を目標管理値とするのに必要な低モル比清缶剤の注入量SDrを算出するようにした。
このように、低モル比清缶剤を使用すると共に、ボイラー給水中のNa濃度を考慮して低モル比清缶剤の注入量を算出するようにしたので、ボイラー給水がNaを含有している場合でも、ボイラー缶水中のPH、リン酸濃度及び缶水Na/PO4モル比を予め定められた管理基準値の範囲内に維持することが可能となる。
ここで、缶水成分測定部20及びナトリウム濃度算出部21は、ナトリウム濃度測定部を構成する。目標リン酸濃度算出部22、薬剤濃度算出部23及び薬注量算出部24は、薬注量算出部を構成する。薬注制御部25及び注入ポンプ26は、薬剤注入部を構成する。
また、ステップS100〜S106は、ナトリウム濃度測定ステップを構成する。ステップS108〜S112は、薬注量算出ステップを構成する。ステップS114は、薬剤注入ステップを構成する。
(変形例)
なお、上記実施形態において、缶水Na/PO4モル比の目標管理値を「3.0」とする例を説明したが、これに限らず、予め定められた管理基準値の範囲内であれば、別の値に設定してもよい。
また、上記実施形態において、ナトリウム濃度算出部21において、ボイラー缶水中のリン酸濃度の測定値とNa/PO4モル比の測定値とに基づき、ボイラー給水中のNa濃度を上式(5)に従って求める構成としたが、この構成に限らない。例えば、ボイラー給水中のNa濃度をナトリウム濃度計等で直接測定する構成、ボイラー給水の成分分析によって求める構成など他の構成としてもよい。
また、上記実施形態において、低モル比清缶剤としてNa/PO4モル比が「2」の清缶剤を用いる例を説明したが、この構成に限らない。目標管理値よりも低いモル比であれば、別のモル比の清缶剤を用いる構成としてもよい。
また、上記実施形態において、缶水成分測定部20において、ボイラー缶水中の現在のリン酸濃度及び缶水Na/PO4モル比を自動で測定する構成としたが、この構成に限らない。これらの測定の少なくとも一部を人手で行い、その測定結果の人手による入力値をメモリに記憶する。そして、ナトリウム濃度算出部21は、このメモリに記憶された測定結果の情報を用いてボイラー給水中のNa濃度を算出する構成とするなど、他の構成としてもよい。
また、上記実施形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、上記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、上記の説明で用いる図面は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
次に、図5〜図6に基づき、上記実施形態の水質管理装置2と同様の薬注量制御方法を用いた実施例1を説明する。図5は、試験に用いた3号、4号、5号及び7号ボイラーの各操業条件を示す図である。図6(a)〜(c)は、試験に用いた各ボイラーに対して水質管理装置2と同様の薬注量制御方法で求めた注入量SDrで低モル比清缶剤を注入した場合の試験結果を示す図である。
図5において、給水量、連続ブロー量は、各ボイラーにおける測定値であり、ボイラー濃縮倍率は、各ボイラーにおける給水量の測定値を連続ボイラー量の測定値で除算したものとなる。また、現状−缶水中のリン酸濃度、現状−Na/PO4モル比は、上記実施形態の缶水成分測定部20で測定される現在のボイラー缶水中のリン酸濃度BTPO4、現在の缶水Na/PO4モル比である。また、清缶剤中のNa/PO4モル比は、上記実施形態における低モル比清缶剤の薬剤Na/PO4モル比である。なお、実施例における低モル比清缶剤は、薬剤Na/PO4モル比が「2.0」の清缶剤である。また、図5における、目標−Na/PO4モル比は、上記実施形態における缶水Na/PO4モル比の目標管理値である。また、低モル比薬剤中のリン酸の割合PRは、「0.27(27[%])」となっている。
例えば、3号ボイラーであれば、図5に示すように、現状−缶水中のリン酸濃度が「2.60[ppm]」、現状−Na/PO4モル比が「3.63」、清缶剤中のNa/PO4モル比が「2.00」となっている。なお、NaとPO_{4}のモル質量の比は「WPO4/WNa≒4.13」を用いる。
従って、上記実施形態の式(6)より、ボイラー給水中のNa濃度CNaは、「CNa=2.60×(3.63−2.00)/4.13≒1.026(1.03)[ppm]」となる。
更に、缶水Na/PO4モル比を目標−Na/PO4モル比にするために必要なボイラー缶水中のリン酸濃度TCPO4は、上記実施形態の式(7)より、「TCPO4=1.026×4.13/(3.00−2.00)=4.24[ppm]」となる。
なお更に、ボイラー給水中のリン酸濃度は、図5の3号ボイラーのボイラー濃縮倍率130[倍]を用いて、上記実施形態の式(8)の一部「TCPO4[ppm]/(WS/Brq[L/h])」から、「4.24/130≒0.0326[ppm]」となる。そして、このボイラー給水中のリン酸濃度を低モル比薬剤に含まれるリン酸の割合PR「0.27」で除算したものが、ボイラー缶水中のリン酸濃度をTCPO4(ボイラー給水中のリン酸濃度を「0.0326[ppm]」)とするのに必要なボイラー給水中のモル比2清缶剤の濃度CDrとなる。つまり、「CDr=0.0326/0.27≒0.121[ppm]」となる。
そして、図5に示すように、3号ボイラーの薬品希釈倍率P「22[倍]」、及びボイラー給水量WS「65[t/h]」が解っているので、これらとボイラー給水中のモル比2清缶剤の濃度CDr「0.121[ppm]」とから、上記実施形態の式(9)より、モル比2清缶剤の注入量SDrは、「SDr=65×0.121×22≒173[mL/h]」となる。
なお、4号、5号、7号ボイラーも同様に注入量SDrを算出することができる。
このようにして算出した注入量SDrで、モル比2清缶剤を各ボイラーに注入する試験を行った結果、図6(a)〜(c)に示す試験結果が得られた。
図6(a)に示すように、各ボイラーのPHは、モル比3清缶剤をモル比2清缶剤に変更しただけのときよりは高くなったが、いずれのボイラーも管理下限値である9.0と管理上限値である10.0との間の範囲の値を維持した。なお、図6(a)において、横軸は測定日を示し、縦軸はPHを示す。
加えて、図6(b)に示すように、各ボイラーのリン酸濃度は、特に、3号、4号及び5号ボイラーについては、モル比3清缶剤をモル比2清缶剤に変更しただけのときと比較して大幅に増加していることが解る。そして、いずれのボイラーも管理下限値である2.0と、管理上限値である6.0との間の範囲の値となった。なお、図6(b)において、横軸は測定日を示し、縦軸はリン酸濃度を示す。
更に、図6(c)に示すように、各ボイラーの缶水Na/PO4モル比は、モル比3清缶剤をモル比2清缶剤に変更しただけのときと比較して大幅に低下し、いずれのボイラーも管理基準値である3.0以下となった。なお、図6(c)において、横軸は測定日を示し、縦軸は缶水Na/PO4モル比を示す。
なお、本実施例の試験においては、低モル比清缶剤のNa/PO4モル比を「2.0」としたが、「2.0〜2.5」の清缶剤を用いても「2.0」と同様に注入量を算出することで、ボイラー缶水中のPH、リン酸濃度及びNa/PO4モル比を、管理基準値の範囲内に維持できることを確認できた。
以上実施例にて判明したように、清缶剤として、薬剤Na/PO4モル比が缶水Na/PO4モル比の目標管理値よりも低いモル比の低モル比清缶剤を使用し、上記実施形態と同様の式(6)〜(9)を用いた薬注量の算出方法によって低モル比清缶剤の注入量を算出する。この注入量で低モル比清缶剤をボイラー缶内に注入することによって、ボイラー給水中にNaが含まれている場合でも、ボイラー缶水中のPH、リン酸濃度及びNa/PO4モル比を、管理基準値の範囲内に維持することができる。
100 ボイラー設備
1 ボイラー装置
2 水質管理装置
3 低圧タービン
4 復水装置
5 純水装置
6 脱気装置
20 缶水成分測定部
21 ナトリウム濃度算出部
22 目標リン酸濃度算出部
23 薬剤濃度算出部
24 薬注量算出部
25 薬注制御部
26 注入ポンプ
27 薬剤タンク

Claims (2)

  1. ボイラー缶体内に存在する水であるボイラー缶水に、ナトリウム及びリン酸を含有する薬剤を注入して、前記ボイラー缶水に含まれるナトリウムとリン酸とのモル比である缶水Na/PO モル比を予め定められた目標管理値となるように調整することで、前記ボイラー缶水の水質を予め定められた管理基準値の範囲内に維持するボイラー缶水の水質管理方法であって、
    前記ボイラー缶水に注入する薬剤を、該薬剤に含まれるナトリウムとリン酸とのモル比である薬剤Na/PO モル比が前記目標管理値よりも低いモル比の低モル比薬剤とし、
    前記ボイラー缶体内に供給される水であるボイラー給水中に含まれるナトリウムの濃度を測定するナトリウム濃度測定ステップと、
    前記ナトリウム濃度測定ステップにおいて測定した前記ボイラー給水中のナトリウム濃度に基づき、前記缶水Na/PO モル比を前記目標管理値とするための前記低モル比薬剤の注入量を算出する薬注量算出ステップと、
    前記薬注量算出ステップにおいて算出した注入量で前記低モル比薬剤を前記ボイラー缶水に注入する薬剤注入ステップと、を含み、
    前記ナトリウム濃度測定ステップにおいては、前記ボイラー缶水に含まれる現在のリン酸の濃度BCPOの測定値と、現在の前記缶水Na/POモル比の測定値と、前記低モル比薬剤の薬剤Na/POモル比と、前記ナトリウムのモル質量WNaと、前記リン酸のモル質量WPOとに基づき、以下の式(1)に従って、前記給水中に含まれるナトリウムの濃度CNaを算出することを特徴とするボイラー缶水の水質管理方法。
    CNa=BCPO×(缶水Na/POモル比の測定値−薬剤Na/POモル比)/(WPO/WNa) ・・・(1)
  2. 前記薬注量算出ステップは、
    前記ナトリウム濃度測定ステップにおいて測定した前記給水中のナトリウムの濃度CNaと、前記低モル比薬剤の薬剤Na/POモル比と、前記目標管理値と、前記ナトリウムのモル質量WNaと、前記リン酸のモル質量WPOとに基づき、以下の式(2)に従って、前記缶水Na/POモル比を前記目標管理値とするのに必要な前記ボイラー缶水中のリン酸濃度TCPOを算出する第1算出ステップと、
    前記第1算出ステップにおいて算出したリン酸濃度TCPOと、ボイラーの濃縮倍率Bemと、前記低モル比薬剤中のリン酸の割合PRとに基づき、以下の式(3)に従って、前記リン酸濃度TCPOに対応する前記ボイラー給水中の低モル比薬剤の濃度CDrを算出する第2算出ステップと、
    前記第2算出ステップにおいて算出した前記低モル比薬剤の濃度CDrと、前記ボイラー給水の給水量WSと、前記低モル比薬剤の希釈倍率Pとに基づき、以下の式(4)に従って、前記低モル比薬剤の注入量SDrを算出する第3算出ステップと、を含むことを特徴とする請求項に記載のボイラー缶水の水質管理方法。
    TCPO=CNa×(WPO/WNa)/(目標管理値−Na/POモル比) ・・・(2)
    CDr=(TCPO/Bem)/PR ・・・(3)
    SDr=WS×CDr×P ・・・(4)
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