JP2011038660A - ドラムボイラの腐食及びスケール付着の抑制方法 - Google Patents

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和義 内田
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Abstract

【課題】 揮発性物質によりボイラ水のpHを調整する場合に、ボイラ水中に微量の硬度成分が持ち込まれても、蒸発管への腐食を抑制しつつ、蒸発管へのスケールの付着を直ちに抑制できるドラムボイラの腐食及びスケール抑制方法を提供する。
【解決手段】 揮発性物質を主体としたボイラ薬剤の添加により、ボイラ水のpHを調整して、ドラムボイラに対する腐食の抑制とスケール付着の抑制を図るドラムボイラの腐食及びスケール付着の抑制方法であって、ボイラ水中のリン酸イオン濃度を、このボイラ水1リッターに対して、0.1mg未満の値に維持するように、リン酸塩をボイラ薬剤として添加する。添加されたリン酸塩により、硬度成分によるスケールの付着を抑制できるとともに、このリン酸塩がハイドアウトに伴う腐食を生じさせるのも抑えることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、揮発性物質を主体としたボイラ薬剤の添加により、ボイラ水のpHを調整し、ドラムボイラに対する腐食の抑制とスケール付着の抑制とを図るドラムボイラの腐食及びスケール付着の抑制方法に関するものである。
JISB8223(2006)は、ボイラ水についてpHの推奨範囲を定めるとともに、ボイラ水のpHを調整する方法として、アルカリ処理、リン酸塩処理、揮発性物質処理を定めて、ボイラに対する腐食の抑制等を図っている。
アルカリ処理は、電離度が大きくpHを高める能力の高い遊離アルカリ(例えば水酸化ナトリウム、)をpH調整剤として用いるものであるが、ボイラの蒸気圧力が増して伝熱面負荷が高くなり、蒸発管にボイラ水の濃縮が生じ易くなると、ボイラに遊離アルカリに起因するアルカリ腐食を生じさせやすいという欠点を有す。
リン酸塩処理は、リン酸ナトリウム等のリン酸塩をpH調整剤として用いるものであり、遊離アルカリを使用しないので、アルカリ処理時に生じるようなアルカリ腐食は生じさせず、かつ、リン酸塩は硬度成分をスラッジ化させる緩衝能が高いので、水処理装置からの硬度成分の漏れ込みや、復水系統からの硬度成分の持ち込みがあっても、ボイラにスケールの付着を生じさせにくいという利点を有している。一方、リン酸塩処理は、蒸発管にボイラ水の過度の濃縮が生じると、蒸発管内面に溶解度を超えるリン酸塩が析出するハイドアウトを生じさせ、このとき生じた水酸化ナトリウムにより腐食を生じさせ易いという欠点を有する。
揮発性物質処理は、アンモニアやアミン類といった揮発性物質をpH調整剤として用いるものであり、アルカリ処理やリン酸塩処理に比べて、pH調整剤に固形アルカリを使用していないので、ボイラに最も腐食を生じさせにくいという利点を有する。一方、アンモニアやアミン類といった揮発性物質は、リン酸塩のような緩衝能が少なく、かつ、揮発性物質処理時には、リン酸塩処理時に比べて、硬度成分によるスケールの付着速度が早くなることも知られている(非特許文献1)。このため、揮発性物質処理は、硬度成分の漏洩や持ち込みがあると、リン酸塩処理に比べて、ボイラにスケールの付着を生じさせ易いという欠点を有する。
以上から、比較的圧力が高く、伝熱面負荷の大きいボイラでは、アンモニアやアミン類といった揮発性物質を用いた揮発性物質処理により、ボイラ水のpH調整がなされる場合も多いが、この場合に、JISB8223(2006)では、復水系統からの硬度成分の持ち込みがある場合には、スケール付着抑制の観点から、リン酸塩の添加も応急処理として考慮するとしている。
電力中央研究所、「汽力発電所給水ハンドブック(昭和60年3月)」p115−117
しかしながら、JISB8223(2006)では、揮発性物質処理時に、硬度成分の持ち込みがある場合、応急処理に必要な量のリン酸塩を添加することは規定されているものの、リン酸塩は、添加量が多いと蒸発管にハイドアウトに伴い腐食を生じさせる虞があるため、微量な硬度成分の持ち込み時に、リン酸塩をどの程度添加すべきかという点は明確ではないという問題があった。
また、リン酸塩の注入装置を有していても、普段使用していなければ、この装置を応急時に直ちに使えるのかという問題もあった。
この発明は、以上の点に鑑み、揮発性物質によりボイラ水のpHを調整する場合に、ボイラ水中に微量の硬度成分が持ち込まれても、蒸発管への腐食を抑制しつつ、スケールの付着を直ちに抑制できるドラムボイラの腐食及びスケール付着の抑制方法を提供することを目的とする。
この発明の請求項1記載の発明は、揮発性物質を主体としたボイラ薬剤の添加により、ボイラ水のpHを調整し、ドラムボイラに対する腐食の抑制とスケール付着の抑制とを図るドラムボイラの腐食及びスケール付着の抑制方法であって、前記ボイラ水中のリン酸イオン濃度を、このボイラ水1リッターに対して、0.1mg未満の値に維持するように、リン酸塩をボイラ薬剤として添加することを特徴とする。
アンモニアやアミン類といった揮発性物質を添加することにより、ボイラ水のpHを調整する場合、例えば復水系統から微量の硬度成分が持ち込まれると、この硬度成分が蒸発管にスケールとして付着しやすくなる。一方、リン酸塩は、揮発性物質に比べて、硬度成分をスラッジ化させる緩衝能が高いので、ボイラ水中にリン酸イオンを有しておれば、蒸発管へのスケール付着は抑制される。ところが、リン酸塩は、ドラムボイラにハイドアウトを生じさせて、このとき生じた水酸化ナトリウムにより、蒸発管に腐食を生じさせる可能性がある。特に、ハイドアウトは、ドラムボイラが、ボイラ水の濃縮を生じやすい構造、例えば水平な蒸発管を有している場合に生じやすい。しかしながら、ボイラ水中のリン酸イオン濃度が、ボイラ水1リッターに対して、0.1mg未満(以下0.1mg/L未満と記載)の場合、ボイラが水平蒸発管を有していても、蒸発管にハイドアウトに起因する腐食が生じにくいことが実施例等により確認されている。
そこで、この発明では、揮発性物質の添加によりボイラ水のpHを調整する場合に、リン酸イオン濃度を0.1mg未満の値に維持するようにリン酸塩を添加し、ボイラ水に硬度成分が持ち込まれても、ボイラへの腐食の抑制とスケール付着の抑制とが直ちに図られるようにしている。
この発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の場合において、前記ボイラ水中の水酸化ナトリウム濃度を、このボイラ水1リッターに対して、0.05mg以下に下げていることを特徴とする。
伝熱面負荷が高くボイラ水に濃縮が生じやすい、蒸気圧の高いドラムボイラでは、遊離アルカリによって、ドラムボイラにアルカリ腐食を生じさせ易いため、ボイラ水中の水酸化ナトリウム濃度は小さい方がよい。一方、ドラムボイラの補給水として用いられるイオン交換水には、微量であるが、ナトリウムが水酸化ナトリウムの形でリークしてくる場合も多く、特に添加していない場合でも、ボイラ水中に水酸化ナトリウムを含む場合も多い。したがって、ボイラ水中の水酸化ナトリウム濃度のコントロールは簡単ではないが、実施例等により、アルカリ腐食を生じさせにくいボイラ水中の水酸化ナトリウム濃度(0.05mg以下)が確認されているので、この濃度を超えないように、ブロー等により水酸化ナトリウム濃度をコントロールするようにした。
この発明の請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の場合において、前記ドラムボイラが水平な蒸発管を有していることを特徴とする。
水平な蒸発管は、蒸気の蒸発時にボイラ水に濃縮を生じやすい。したがって、水平な蒸発管には、一般のアルカリ腐食が生じやすいのはもちろん、ボイラ水のpH調整にリン酸塩を用いた場合でも、この部分でハイドアウトが生じやすく、ハイドアウトにより生じた水酸化ナトリウムによる蒸発管の腐食も生じやすい。このため、ドラムボイラが水平な蒸発管を有している場合のボイラ水のpH調整には、遊離アルカリやリン酸塩より、アンモニアやアミン類といった揮発性物質を用いるほうが、腐食の抑制効果が高い。
この発明の請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の場合において、前記ドラムボイラの蒸気の常用使用圧力が5MPa以上であることを特徴とする。
常用使用圧力が5MPa以上のボイラでは、伝熱面負荷が高く蒸発管に遊離アルカリによるアルカリ腐食やハイドアウトに伴う水酸化ナトリウムによる腐食を生じやすいので、ボイラ水のpH調整には、アンモニアやアミン類といった揮発性物質を用いるのが好ましい。
この発明の請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の場合において、前記ドラムボイラのボイラ給水用の補給水がイオン交換水であることを特徴とする。
この発明の請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明の場合において、前記揮発性物質としてアンモニアを添加することにより、前記ボイラの給水系統における給水のpH(25℃基準)を9.0〜9.4に維持するとともに、前記ボイラ水のpH(25℃基準)を8.5〜9.0に維持していることを特徴とする。
このボイラ給水やボイラ水のpH(25℃基準)の範囲は、蒸気の常用使用圧力が5〜20MPaで、揮発性物質によりボイラ水のpH調整がなされる水管ボイラについて、JISB8223(2006)で定めたボイラ給水及びボイラ水のpH(25℃基準)の範囲を満たしている。なお、ボイラ給水のpH(25℃基準)の上限を9.4としたのは、給水系統や復水系統には、ボイラ給水や復水と接触する部分に銅系材料を使用しているものも多く、銅腐食を防止するためである。
この発明の請求項1、3、4、5、又は6記載の発明によれば、揮発性物質によりボイラ水のpHを調整する場合に、ボイラ水中のリン酸イオン濃度が、0.1mg/L未満の値に維持されるようにリン酸塩を添加しているので、ボイラ水中に微量の硬度成分が持ち込まれても、蒸発管への腐食の抑制を図りつつ、蒸発管へのスケールの付着も直ちに抑制することができる。
この発明の請求項2記載の発明によれば、ボイラ水中の水酸化ナトリウム濃度を、0.05mg/L以下に下げているので、蒸気圧力の高いボイラにおいて、ボイラ水中にナトリウムが漏れ込んでも、これにより生じる水酸化ナトリウムによって、ボイラの蒸発管にアルカリ腐食が生じるのを抑制することができる。
この発明を実施するためのボイラ装置と、このボイラ装置周りの水と蒸気の流れを示す図である。
以下、この発明の実施の形態を説明する。
図1は、この発明を実施するためのボイラ装置と、このボイラ装置周りの水と蒸気の流れを示している。
ボイラ装置Aは、図1で示されるように、ボイラ1と、ブロー装置2と、補給水W0と復水W3とを集めてボイラ給水W1とする給水タンク3と、ボイラ1にボイラ給水W1を供給する給水ライン4と、給水ライン4中のボイラ給水W1にボイラ薬液を注入する薬液注入装置5とを有している。ボイラ1からの蒸気Sは、蒸気使用設備Bで使用された後、一部が復水ラインFに設けられた復水回収処理装置Cにより復水W3として回収される。なお、給水ライン4や復水ラインFには、ボイラ給水W1や復水W3と接する部分の一部に銅系材料が使用されている
ボイラ1は、例えば、気水分離用の蒸気ドラム10を備えた強制循環型のドラムボイラであって、蒸気圧が、例えば、5〜20MPaの中圧から高圧の水管ボイラである。このボイラ1では、蒸気ドラム10内のボイラ水W2を、ポンプ11で加圧して蒸発管12に送り、この蒸発管12で加熱して、一部を蒸気Sにして蒸気ドラム10に戻している。蒸発管12の多くのものは、図1で示されるように、平らに配置される水平管となっている。なお、このボイラ1は、図1には示されていないが、ボイラ給水W1を予熱するエコノマイザや、蒸気ドラム10からの蒸気を過熱するスーパーヒータを有している。
ブロー装置2は、蒸気ドラム10内で濃縮したボイラ水W2の一部を、連続的、又は連続的及び間欠的にブローして、蒸気ドラム10内でのボイラ水W2の濃縮を防止するものである。なお、ブロー装置2は、ブローされたボイラ水W2の一部を低圧の蒸気として回収する。
給水タンク3は、ボイラ1に供給するボイラ給水W1を一定時間分だけ貯留するためのものである。給水タンク3に供給される補給水W0は、純水装置(強酸性イオン交換樹脂と強塩基性イオン交換樹脂とを用いたイオン交換装置)で精製されたイオン交換水であり、この補給水W0中には、純水装置で充分に捕らえることができず、僅かにリークしてくる微量のナトリウムが、水酸化ナトリウムの形で含まれている。また、給水タンク3に供給される復水W3は、復水回収処理装置Cにおいて一定の処理(例えば、脱酸素処理)はなされるが、これにはポリッシャー(イオン交換樹脂装置)を備えていないので、復水W3中には、復水回収時に僅かに漏れ込んだマグネシュウムやカルシュウムといった微量の硬度成分が含まれている。
薬液注入装置5は、アンモニアやアミン類といったpH調整用の揮発性物質をボイラ給水W1に注入するとともに、硬度成分をスラッジ化させる緩衝能が高い(スケール抑制効果の高い)リン酸塩をボイラ給水W1に注入するものである。この結果、ボイラ水W2のpHが調整されるとともに、ボイラ水W2中のリン酸イオン濃度も調整される。なお、この薬液注入装置5は、例えばヒドラジンのような脱酸素剤等もボイラ給水W1に注入する。
ここで、ボイラ水のpHは、鋼材の腐食防止上、JISB8223(2006)で定められるpHの範囲を満たす必要がある。例えば、蒸気圧が5〜20MPaの水管ボイラで、揮発性物質によってpHの調整をする場合には、JISB8223(2006)によるボイラ水W2のpH(25℃基準)の範囲は8.5〜9.7となる。
一方、一般の産業用ボイラであれば、給復水系統に銅系材質が使用されており、銅の腐食抑制の観点から、揮発性物質によりpHの調整がなされる、蒸気圧が5〜20MPaのボイラの場合には、ボイラ給水のpH(25℃基準)は上限を9.4とすることが望ましいとされる。また、例えば、pH調整剤としてアンモニアを添加する場合、アンモニアの高温条件での汽液分配の関係から、ボイラ水のpH(25℃基準)を8.5以上に維持するためには、ボイラ給水のpH(25℃基準)を9.0以上とすることが必要であり、ボイラ給水のpH(25℃基準)を9.4以下に維持すると、ボイラ水のpH(25℃基準)は9.0以下に維持される。したがって、アンモニアによりpHの調整をする、蒸気圧が5〜20MPaの一般産業用ボイラの場合には、ボイラ給水のpH(25℃基準)を9.0〜9.4に維持することにより、ボイラ水のpH(25℃基準)が8.5〜9.0に維持されることとなる。
このボイラ1では、給水ライン4や復水ラインFに銅系材料が使用されているため、アンモニアの添加によるボイラ給水W1のpH(25℃基準)は、9.0〜9.4に維持され、その結果、ボイラ水W2のpH(25℃基準)は、8.5〜9.0に維持される。なお、このボイラ1では、揮発性物質の他に、僅かではあるがリン酸塩も注入されるため、ボイラ給水W1やボイラ水W2のpHは、リン酸塩によっても僅かに上げられる。
つぎに、このボイラ1に対する、腐食の抑制方法及びスケール付着の抑制方法について説明する。
このボイラ1では、ボイラ水W2のpH調整をアンモニアやアミン類といった揮発性物質により行っている。
一般に、中高圧のドラムボイラでは、伝熱面負荷が高く、蒸発管にボイラ水の濃縮が生じやすいため、遊離アルカリに起因するアルカリ腐食が生じやすい。このため、中高圧のドラムボイラでは、ボイラ水のpH調整に、水酸化ナトリウムのような遊離アルカリより、リン酸ナトリウムのようなリン酸塩や、アンモニアやアミン類といった揮発性物質を用いる場合が多い。
一方、ボイラ水のpH調整にリン酸塩を用いた場合、ボイラ水の濃縮が生じやすいボイラ構造を有するボイラでは、ボイラ水の過剰な濃縮によって、下式のように、
Na3PO4+0.3H2O → Na2.70.3PO4+0.3NaOH
蒸発管の内面にリン酸塩(Na2.70.3PO4)を析出させるハイドアウトを生じさせ、このとき生じた水酸化ナトリウム(NaOH)によって、蒸発管に腐食を生じさせる可能性がある。ボイラ1は、ボイラ水W2の濃縮を生じやすい水平な蒸発管12を有している。このため、このボイラ1では、ボイラ水W2のpH調整に、リン酸塩を用いず、揮発性物質を用いている。なお、ボイラ水に濃縮が生じやすいボイラ構造は、水平な蒸発管に限らないと考えられるので、一般に、中高圧のボイラのボイラ水のpH調整には、リン酸塩より揮発性物質を用いる方が好ましいと考えられる。
また、このボイラ1では、ボイラ給水W1にリン酸塩を加えて、ボイラ水W2にリン酸イオンが含まれるようにしている。
アンモニアのような揮発性物質は、リン酸塩に比べ硬度成分をスラッジ化させる緩衝能が少ないので、ボイラ水に微量でも硬度成分が含まれていると、ボイラの蒸発管には、この硬度成分がスケールとなって付着する可能性は高い。このボイラ1では、復水W3を介してボイラ水W2中に微量の硬度成分が含まれることとなるので、揮発性物質によりボイラ水W2のpHを調整するに際して、ボイラ給水W1に緩衝能の高いリン酸塩を注入し、これによりボイラ水W2中の硬度成分をスラッジ化して、この硬度成分が蒸発管12にスケールとなって付着するのを抑制している。
上記の場合、リン酸塩は、ボイラ水W2中のリン酸イオン濃度が、ボイラ水1リッターに対して、0.1mg未満(以下0.1mg/L未満と記載)の値に維持されるように添加される。伝熱面負荷の高い中高圧ボイラにおいて、リン酸塩は、ハイドアウトによって、ボイラの蒸発管に水酸化ナトリウムによる腐食を生じさせる可能性が高いので、リン酸塩の注入量はできるだけ抑えられるべきである。ところで、JISB8223では、蒸気圧力が10〜20MPaの水管ボイラに対して、リン酸塩によってボイラ水のpHを調整する場合には、ボイラ水中のリン酸イオン濃度が、0.1〜3mg/Lであることを定めているが、特にリン酸イオン濃度を0.1〜1mg/Lに規制したボイラにおいても、ハイドアウトに起因する蒸発管の腐食が確認されている。また、リン酸イオン濃度を、0.1mg/L未満に制限したボイラにおいても、ハイドアウトに起因する蒸発管の腐食はあるのかもしれないが、現在のところ明確な腐食情報は得られていない。なお、ボイラ水W2のリン酸イオン濃度を0.1mg/L未満の値に維持した場合でも、リン酸塩による蒸発管へのスケール付着の抑制効果は確認されている。
さらに、このボイラ1では、ボイラ水W2の水酸化ナトリウム濃度を、0.05mg/L以下に下げている。
微量の水酸化ナトリウムは、特に注入されない場合でも、ボイラの補給水にリークして持ち込まれる場合が多く、ボイラ水の水酸化ナトリウム濃度がある程度より多くなると、蒸発管にアルカリ腐食を生じさせる。このボイラ1で、ボイラ水W2の水酸化ナトリウム濃度を、0.05mg/L以下としたのは、実機テストの結果、0.05mg/L以下では、蒸発管にアルカリ腐食が生じなかったからである。なお、ボイラ水W2の水酸化ナトリウム濃度は、ブロー装置2の使用によって、0.05mg/L以下に下げられる。
以上にように、このボイラ1では、ボイラ水W2のpH調整を、アンモニアやアミン類といった揮発性物質により行っているので、リン酸塩によってpH調整を行う場合に比べて、蒸発管12にハイドアウトに伴う腐食が生じることはなく、蒸発管12の寿命を伸ばすことができる。特にこのボイラ1では、ボイラ水W2の濃縮が生じやすい水平な蒸発管12を有しているので、ボイラ水W2のpH調整にリン酸塩を使用すればハイドアウトが生じる可能性が高く、この点でも、ボイラ水W2のpH調整にリン酸塩を使用しない効果は大きい。また、ボイラ水W2のpH調整に用いる揮発性物質は、ボイラ水W2の全蒸発残留物質を小さく抑えることができ、蒸気純度の向上を図ることができる。
また、このボイラ1では、緩衝能の少ない揮発性物質を補助するように、緩衝能の高いリン酸塩を少量注入しているので、復水W3によってボイラ水W2中に微量の硬度成分が持ち込まれても、この硬度成分をスラッジ化して、これがスケールとして蒸発管12内面に付着するのを抑制することができる。この場合、ボイラ水W2のリン酸塩濃度を、0.1mg/L未満の値に抑えているので、ハイドアウトが生じたにしても、蒸発管12に認識できるような腐食は生じない。
さらに、このボイラ1では、ボイラ水W2の水酸化ナトリウム濃度を、0.05mg/L以下に下げているので、補給水W0によってボイラ水W2中に微量の水酸化ナトリウムが持ち込まれても、この水酸化ナトリウムによって蒸発管12にアルカリ腐食が生じることはない。
つぎに、実際のボイラを用いた具体的な運転結果について説明する。
ボイラは、蒸気圧力が12MPaで水平な蒸発管を有するドラムボイラであり、ボイラ給水には、蒸気の復水に、イオン交換水である補給水を加えたものが用いられる。このボイラにおいて、復水回収処理装置には、ポリッシャーが用いられていないため、復水には、微量の硬度成分が漏れ込んでいる可能性は高い。このボイラでは、pH調整剤として、Na/PO4のモル比が2.7のリン酸ナトリウムや、アンモニアが用いられ、脱酸素剤として水加ヒドラジンが用いられる。
Figure 2011038660
このボイラでは、表1中の従来運転で示されるように、従来から、ボイラのpH調整を、リン酸ナトリウムの添加によって行い、ボイラ水のpH(25℃基準)は9.0〜9.3で管理され、ボイラ水のリン酸イオン濃度は0.1〜2.0mg/Lで管理されていた。また、ボイラ水の水酸化ナトリウム濃度は、0.2〜0.8mg/Lとなるように維持されていた。この結果、水平な蒸発管で激しいハイドアウトを経験し、この蒸発管は、年間約3mm割合で減肉した。
そこで、表1中の改善運転で示されるように、このボイラでは、ボイラのpH調整を、リン酸ナトリウム(リン酸塩)の添加からアンモニア(揮発性物質)の添加に変え、かつ、復水からの硬度成分の持ち込みを考慮し、少量のリン酸ナトリウム(リン酸塩)の添加を継続した。すなわち、改善例では、ボイラ水のpH(25℃基準)を8.7〜9.0で管理するとともに、ボイラ水のリン酸イオン濃度を0.01〜0.1mg/Lで管理し、かつ、ボイラ水の水酸化ナトリウム濃度を、0.05mg/L以下となるように管理した。この結果、ボイラの蒸発管に減肉の進行は見られなかった。
1 ボイラ(ドラムボイラ)
W0 補給水
W1 ボイラ給水
W2 ボイラ水
W3 復水

Claims (6)

  1. 揮発性物質を主体としたボイラ薬剤の添加により、ボイラ水のpHを調整し、ドラムボイラに対する腐食の抑制とスケール付着の抑制とを図るドラムボイラの腐食及びスケール付着の抑制方法であって、
    前記ボイラ水中のリン酸イオン濃度を、このボイラ水1リッターに対して、0.1mg未満の値に維持するように、リン酸塩をボイラ薬剤として添加することを特徴とするドラムボイラの腐食及びスケール付着の抑制方法。
  2. 前記ボイラ水中の水酸化ナトリウム濃度を、このボイラ水1リッターに対して、0.05mg以下に下げていることを特徴とする請求項1記載のドラムボイラの腐食及びスケール付着の抑制方法。
  3. 前記ドラムボイラが水平な蒸発管を有していることを特徴とする請求項1記載のドラムボイラの腐食及びスケール付着の抑制方法。
  4. 前記ドラムボイラの蒸気の常用使用圧力が5MPa以上であることを特徴とする請求項1記載のドラムボイラの腐食及びスケール付着の抑制方法。
  5. 前記ドラムボイラのボイラ給水用の補給水がイオン交換水であることを特徴とする請求項1記載のドラムボイラの腐食及びスケール付着の抑制方法。
  6. 前記揮発性物質としてアンモニアを添加することにより、前記ドラムボイラの給水系統における給水のpH(25℃基準)を9.0〜9.4に維持するとともに、前記ボイラ水のpH(25℃基準)を8.5〜9.0に維持していることを特徴とする請求項1記載のドラムボイラの腐食及びスケール付着の抑制方法。
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