JP5402669B2 - ボイラ水系の水処理方法 - Google Patents

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本発明は、ボイラ水系の水処理方法に関する。より詳しくは、給水として軟水を使用するボイラ水系において、腐食等の発生を防止する水処理技術に関する。
ボイラの給水中に含まれる重炭酸塩や炭酸塩は、ボイラ水中で熱分解して、水酸化物と炭酸ガスを発生する。これらの分解生成物のうち、炭酸ガスはボイラ内で発生した蒸気と共に速やかに気相部に移行するが、水酸化物はボイラ水中で濃縮される。その結果、ボイラ水中の水酸化物濃度が高くなり、Pアルカリ度が上昇するため、ボイラ水のpHが上昇する。
このようなボイラ水のpH上昇は腐食抑制効果が期待できるが、その一方で、給水中の重炭酸塩や炭酸塩の濃度が過度に高くなると、ボイラ水中の水酸化物量が増加するため、Pアルカリ度が上昇し、電気伝導率及びpHがボイラ水の水質に関するJIS規格(JIS B 8233:2006)の基準値を超えてしまうことがある。そのような場合、熱負荷が高い箇所でアルカリ腐食が発生しやすくなる。
このアルカリ腐食を防止する方法としては、ボイラのブロー率を上昇させることにより、ボイラ水におけるPアルカリ度の上昇を抑制し、ボイラ水の水質をJIS規格で規定されている範囲内に収めることが考えられる。しかしながら、ブロー率の上昇は、ボイラ水中に含まれる熱や薬品の廃棄量の増加につながるため、省エネルギーの観点から好ましくない。
そこで、従来の水処理方法では、リン酸系の酸性物質を含む清缶剤を使用することにより、ボイラ水におけるPアルカリ度及び電気伝導率を低減させて、ブロー率の上昇を抑える対策がとられている。また、リン酸系の清缶剤と併せて、非ヒドラジン系の脱酸素剤として一般的に使用されているメタ重亜硫酸塩などの亜硫酸塩が添加されることもある。
一方、従来、安全性の観点から、有機酸又はその塩や糖類などの天然物系化合物を使用したボイラ水の水処理方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、タンニン酸又はその塩、アルドン酸又はその塩を使用したボイラ水系用の脱酸素剤が開示されている。
特開2006−212602号公報
しかしながら、前述した従来の技術には、以下に示す問題点がある。即ち、リン酸系の酸性清缶剤を使用する場合、排水におけるリン酸濃度の規制値やボイラ水中のリン酸濃度の基準値(JIS B 8223:2006)を満たすために、その添加量を制限しなければならず、Pアルカリ度を十分に低減させるだけの量を添加することができないという問題点がある。また、リン酸系清缶剤などの酸系の薬剤を使用すると、給水配管の腐食が進行するという問題点もある。
なお、リン酸系清缶剤と共に亜硫酸塩を添加すると、排水やボイラ水のリン酸濃度を高めずに、Pアルカリ度の低減効果を高めることができるが、この亜硫酸塩からなる脱酸素剤には、ボイラ水の電気伝導率を上昇させるという問題点がある。このため、このような脱酸素剤を併用すると、清缶剤を使用するメリットが少なくなる。
また、小型貫流ボイラなどで発停が多い運転を行う場合、ボイラ停止時に缶内に大気中の酸素が混入するため、亜硫酸塩からなる脱酸素剤を使用すると、ボイラ水中の残留亜硫酸濃度が低下して硫酸イオン濃度が増加し、却って腐食が進行しやすくなるという問題点もある。一方、特許文献1に記載の脱酸素剤は、安全性が高く、腐食の心配もないが、この脱酸素剤を使用すると、ボイラ水の電気伝導率が上昇する。
そこで、本発明は、ボイラ水の電気伝導率及びPアルカリ度の過剰な上昇を抑制して、アルカリ腐食の発生を防止することができるボイラ水系の水処理方法を提供することを主目的とする。
本発明に係るボイラ水系の水処理方法は、軟水を給水とするボイラ水系の水処理方法であって、ボイラ水におけるPアルカリ度の上限値を設定する工程と、前記給水のMアルカリ度と、前記給水に溶解しているアルカリ成分が熱分解する割合を示す係数とから、ボイラ水におけるPアルカリ度の上昇値を算出する工程と、算出されたボイラ水のPアルカリ度の上昇値とボイラのブロー率とから、ボイラ水のPアルカリ度を算出する工程と、算出したボイラ水のPアルカリ度と設定したPアルカリ度の上限値との差を求め、その値に応じて添加量を調節しながら、水系に、有機酸及びその塩並びに糖類及びその誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を添加する工程と、を有する。
ここで、Mアルカリ度とは、水に溶解している炭酸水素塩、炭酸塩、リン酸塩及び水酸化物などのアルカリ成分を中和して、pHを4.8にするために必要な酸の量(mg)であり、試料1リットルあたりに要する炭酸カルシウム(CaCO)量に換算した値(mg/リットル as CaCO)である。また、Pアルカリ度とは、水に溶解している炭酸水素塩、炭酸塩、リン酸塩及び水酸化物などのアルカリ成分を中和して、pHを8・3にするために必要な酸の量(mg)であり、試料1リットルあたりに要する炭酸カルシウム(CaCO)量に換算した値(mg/リットル as CaCO)である。
本発明においては、軟水を給水とするボイラ水系に、有機酸及びその塩並びに糖類及びその誘導体のうちの少なくとも1種以上の化合物を、所定量添加しているため、これらの化合物がボイラ缶内において熱分解し、酸性物質を生成する。そして、この酸性物質により、給水に含まれる重炭酸塩や炭酸塩から生じる水酸化物が中和される。
この水処理方法では、算出したPアルカリ度の値から設定したPアルカリ度の上限値を引いた値が0以下になるように、添加する化合物の量を調節してもよい。
また、この有機酸及びその塩並びに糖類及びその誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の化合物は、給水に添加することもできる。
更に、リン酸系化合物を、前記水系に添加してもよい。
本発明によれば、ボイラ水系に、有機酸及びその塩並びに糖類及びその誘導体のうちの少なくとも1種以上の化合物を、特定量添加しているため、ボイラ水の電気伝導率及びPアルカリ度の過剰な上昇を抑制し、アルカリ腐食の発生を防止することができる。
本発明の実施形態に係る水処理方法を示すフローチャート図である。 本発明の実施例で使用した試験装置の構成を示す系統図である。
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。本発明の実施形態に係る水処理方法は、軟水を給水とするボイラ水系に、有機酸及びその塩並びに糖類及びその誘導体からなる群から選択された1種以上の化合物を添加し、ボイラ缶内、給水配管及び蒸気復水系配管などの腐食を抑制するものである。先ず、本実施形態の水処理方法で使用される各化合物について説明する。
[有機酸及びその塩]
有機酸及びその塩は、ボイラ水系において熱分解して酸性物質を生成するため、ボイラ水中の水酸化物を中和する効果がある。このため、従来使用されているリン酸系清缶剤や亜硫酸塩に代えて、有機酸及び/又はその塩をボイラ水系に添加することにより、ボイラ水におけるPアルカリ度の過剰な上昇を抑制して、アルカリ腐食の発生を防止することができる。また、有機酸及びその塩が分解して生成する酸性物質は、そのほとんどがボイラ水の中和に使用されるため、この酸性物質により電気導電率の上昇は低く抑えられる。
本実施形態の水処理方法で使用される有機酸及びその塩は、所定の条件でボイラを運転した際に、ボイラ水内で熱分解して酸性物質を生成するものであればよく、例えば、アルドン酸及びその塩、タンニン酸及びその塩、エリソルビン酸及びその塩などが挙げられる。そのうちタンニン酸塩は、加水分解型及び縮合型のいずれでもよく、例えば、五倍子タンニン、没食子タンニン、スマックタンニン、タラタンニン、バロニアタンニン、チェスナットタンニン、ケプラチョタンニン、ミモザタンニン、ガンビアタンニン及びマングローブタンニンのナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
また、アルドン酸塩は、アルドースのアルデヒド基だけが酸化されて生成するヒドロキシモノカルボン酸塩の全てを含み、例えば、グルコン酸、α−グルコヘプトン酸、マンノン酸、マンノヘプトン酸、ガラクトン酸及びガラクトヘプトン酸のナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、アンモニウム塩などが挙げられる。更に、これらの有機酸及びその塩は、単独で使用しても、組み合わせて使用してもよい。なお、本実施形態で使用する有機酸及びその塩は、前述した化合物に限定されるものではなく、ボイラの運転条件などに応じて適宜選択することができる。
[糖類及びその誘導体]
糖類及びその誘導体も、ボイラ水系において熱分解して酸性物質を生成するため、ボイラ水中の水酸化物を中和する効果がある。このため、前述した有機酸及びその塩と同様に、ボイラ水系に添加することで、ボイラ水におけるPアルカリ度の過剰な上昇を抑制して、アルカリ腐食の発生を防止することができる。また、糖類及びその誘導体が分解して生成する酸性物質は、ほとんどがボイラ水の中和に使用されるため、電気導電率の上昇を低く抑えることができる。
本実施形態の水処理方法で使用される糖類及びその誘導体としては、グルコース、マンノース、フルクトース及びガラクトースなどの単糖、及びこれらが脱水縮合した生成物(二糖、三糖、四糖、オリゴ糖、多糖類)、並びにこれらの誘導体(例えば糖アルコールなど)が挙げられる。前述した糖類及びその誘導体は、処理効果に大きな違いはないが、原料の価格及び入手しやすさなど経済性の観点から、グルコースが好適である。なお、これらの糖類及びその誘導体は、単独で使用しても、組み合わせて使用してもよい。
[リン酸系化合物]
本実施形態の水処理方法では、有機酸、有機酸塩、糖類及び/又は糖類誘導体と共に、リン酸系化合物を添加してもよい。これにより、電気伝導率やPアルカリ度の上昇を抑制すると共に、給水から混入した硬度成分のスケール化を防止することができる。本実施形態の水処理方法で使用されるリン酸系化合物としては、例えば、リン酸、リン酸塩類及び重合リン酸塩類などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、ボイラ缶で酸性となる性質のものであればよい。
[その他の成分]
本実施形態の水処理方法では、前述した各化合物に加えて、本発明の効果発現に支障のない範囲で、更に、スケール防止剤、分散剤、脱酸素剤、腐食抑制剤、揮発性アミンなどを添加することができる。
[水処理方法]
次に、前述した各化合物を添加する方法について説明する。図1は本実施形態の水処理方法を示すフローチャート図である。本実施形態の水処理方法においては、ボイラ水系の任意の位置で、有機酸及びその塩、糖類及びその誘導体を添加することができるが、給水中に、給水量に応じた量を添加する方法が好適であり、これにより、給水のMアルカリ度に応じて添加することが可能となる。
(ステップS1:上限値の設定)
具体的には、図1に示すように、先ず、ボイラ水系に設けられたボイラ内の水(ボイラ水)について、例えばJIS B 8223:2006などに基づき、Pアルカリ度の上限値を設定する(ステップS1)。その際、ボイラの種類や運転状況なども考慮し、Pアルカリ度以外の水質管理基準を設定してもよい。
例えば、給水水質が、電気伝導率:28mS/m、Mアルカリ度:95mg/リットル as CaCO、硫酸イオン濃度:20mg/リットル、塩化物イオン濃度:15mg/リットル、シリカ濃度:20mg/リットルであり、運転条件を、圧力:0.7MPa、給水量:1000リットル/時間、ブロー量:100リットル/時間、濃縮倍率10倍(ブロー率10%)として炉筒煙管ボイラを運転する場合、水質管理基準値は、pH:11.0〜11.8、電気伝導率:400mS/m以下、Pアルカリ度:80〜600mg/リットル as CaCO、塩化物イオン:400mg/リットル、シリカ:350mg/リットル以下、リン酸:20〜40mg/リットルとなる。この場合、Pアルカリ度の上限値は、600mg/リットル as CaCOに設定する。
(ステップS2:上昇値の設定)
次に、ボイラ給水のMアルカリ度に基づいて、ボイラ水のPアルカリ度の上昇値を算出する(ステップS2)。例えば、前述した炉筒煙管ボイラの場合、Pアルカリ度の上昇値は、Mアルカリ度(95mg/リットル as CaCO)と、重炭酸塩や炭酸塩が水酸化物に熱分解する割合を示す係数(ボイラ圧力が0.7MPaのときは0.7)との積により求められ、67mg/リットル as CaCOとなる。
(ステップS3:Pアルカリ度の算出)
その後、ステップS2で算出したPアルカリ度の上昇値とボイラのブロー率とから、ボイラ水におけるPアルカリ度を算出する(ステップS3)。例えば、前述した炉筒煙管ボイラの場合、濃縮倍数が10倍(ブロー率10%)と設定されていると、ボイラ水のPアルカリ度は670mg/リットル as CaCO(算出値)となる。即ち、このボイラは、管理基準値(600mg/リットル as CaCO)に対して70mg/リットル超過している状態である。
(ステップS4:化合物の添加)
次に、ステップS3で算出したPアルカリ度と、ステップS1で設定されたPアルカリ度の上限値との差(算出値−上限値)を求め、その値に応じて添加量を調節しながら、給水中に、有機酸及びその塩並びに糖類及びその誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を添加する(ステップS4)。例えば、ステップS1で設定されたPアルカリ度の上限値との差(算出値−上限値)を、濃縮倍数で割った値(給水のPアルカリ度超過分に相当)を求め、それを中和するための薬剤を給水ラインに添加する。
前述した炉筒煙管ボイラにおいて、α−グルコヘプトン酸ナトリウムを添加する場合は、その添加量x(mg/リットル)は、下記数式1に示すように、Pアルカリ度の算出値(670mg/リットル as CaCO)、上昇値(600mg/リットル as CaCO)、α−グルコヘプトン酸ナトリウムから発生するPアルカリ度(0.24mg/リットル as CaCO)及び濃縮倍数から求められ、30mg/リットルとなる。
Figure 0005402669
その際、例えば、Pアルカリ度の算出値と設定値との差が0以下となるように、有機酸及びその塩並びに糖類及びその誘導体の添加量を調節する。これにより、効率よく、かつ、確実に、アルカリ腐食の発生を防止することができる。
なお、有機酸及びその塩並びに糖類及びその誘導体を薬液にして使用する場合は、薬液中のこれら化合物の総含有量は5〜60質量%とすることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。これにより、薬液の配合性及び安定性が向上する。その際、薬液に配合される有機酸及びその塩並びに糖類及びその誘導体の種類は、1種類以上であればよく、特に限定されるものではない。
本実施形態の水処理方法においては、軟水を給水とするボイラ水系に、有機酸及びその塩並びに糖類及びその誘導体のうちの少なくとも1種以上の化合物を添加しているため、これらの化合物がボイラ缶内において熱分解して生成する酸性物質により、給水中の重炭酸や炭酸塩から生成する水酸化物を中和することができる。その結果、ボイラ水中の電気伝導率及びPアルカリ度の過剰な上昇を抑制して、アルカリ腐食の発生を防止することができる。
また、これらの化合物は、熱分解前は中性であるため、従来の酸性清缶剤のように給水配管の腐食を進行させることがない。このため、給水配管や薬注配管をSUSで形成するなどの腐食対策が不要となり、これらの配管に炭素鋼を使用することも可能となる。その結果、本実施形態の水処理方法は、設備費や運転コストを低減することができるという経済的効果も期待できる。
更に、本実施形態の水処理方法は、リン酸系の酸性清缶剤の使用量を削減することができるため、排水規制の厳しい地域にも適用することが可能である。更にまた、本実施形態の水処理方法は、亜硫酸塩系清缶剤に比べて電気伝導率が上昇しにくく、かつ硫酸イオンの増加も生じないため、小型貫流ボイラにも好適である。
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。図2は本実施例で使用した試験装置の構成を示す系統図である。本実施例においては、図2に示す蒸気発生装置を模擬した容量5リットルの試験装置を用いて、前述した実施形態に記載の方法で、有機酸及びその塩、糖類及びその誘導体を添加したときの効果を確認した。
具体的には、給水タンク1から給水予備槽2に給水を導入し、この給水予備槽2で80℃に予熱して、80℃における飽和溶存酸素濃度の酸素を含む給水とした。その給水を、給水配管3に導入し、この給水配管3内において、薬注タンク4a,4bに貯留されている薬剤を、それぞれ薬注配管5a,5bを介して、薬液ポンプ(図示せず)により添加した。
次に、各薬剤が添加された給水を、テストピースカラム6内を通過させた後、蒸気発生器7に供給し、この蒸気発生器7において加熱して蒸発させた。そして、その蒸気を、蒸気ライン8を介して銅製の蒸気凝縮用熱交換器9に導入し、蒸気凝縮用熱交換器9において凝縮させて蒸気凝縮水とした。この蒸気凝縮水は、一部は回収ライン12を介して給水予備槽2に回収し、残りを蒸気凝集ライン10から排出した。また、蒸気発生器7中の高温水は凝縮されるため、設定された濃縮倍率に応じたブロー水を、ブローライン11から排出した。
<実施例1〜3,比較例1,2>
テストピースカラム6内に炭素鋼(SPCC)製のテストピースを配置し、給水中にαグルコンヘプトン酸ナトリウム(実施例1)、グルコン酸ナトリウム(実施例2)、グルコース(実施例3)又は正リン酸(比較例1)を添加したとき、及び何も添加しなかったとき(比較例2)について、テストピースの腐食速度(=腐食減量/試験時間)を求めた。
その際の試験条件は、圧力:1.5MPa、蒸発量:7.2リットル/時間、濃縮倍率:10倍(ブロー率:10%)、軟水給水温度:80℃、試験時間:72時間とした。また、給水の水質は、電気伝導率:28mS/m、Mアルカリ度:95mg/リットル・CaCO、硫酸イオン濃度:20mg/リットル、塩化物イオン濃度:15mg/リットル、シリカ濃度:20mg/リットルであった。以上の試験結果を、下記表1にまとめて示す。
Figure 0005402669
上記表1に示すように、有機酸塩又は糖類を添加した実施例1〜3の水処理方法では、従来のリン酸系清缶剤と同様に正リン酸を添加した比較例1の水処理方法、及び何も添加しなかった比較例2の方法に比べて、Pアルカリ度を下げつつ、テストピースの腐食速度を低下させることができた。
<実施例4〜7,比較例3〜5>
次に、有機酸、有機酸塩又は糖類とリン酸系酸性清缶剤(リン酸+NaOH)とを併用した場合(実施例4〜7)と、リン酸系清缶剤(リン酸+NaOH)のみを使用した場合(比較例3,4)、何も添加しなかった場合(比較例5)について、ボイラ水の水質を確認した。その際、試験条件は、圧力:1.5MPa、蒸発量:7.2リットル/時間、軟水給水温度:20℃、試験時間:72時間とし、ボイラ水の濃縮倍数は10倍(ブロー率10%)で一定にした。
また、ボイラ水の水質の評価は、JIS B 8223:2006に規定されている丸ボイラにおけるボイラ水の水質管理基準値(圧力:1MPaを超え2MPa以下,pH:11.0〜11.8,電気伝導率:350mS/m未満、Pアルカリ度:500mg/リットル as CaCO未満,リン酸イオン温度:20〜40mg/リットル)に基づいて行った。その結果を、下記表2に示す。
Figure 0005402669
上記表2に示すように、有機酸塩又は糖類とリン酸系清缶剤を併用した実施例4〜8の水処理方法では、ボイラ水の水質が管理基準値内に収まっていた。これに対して、リン酸系清缶剤のみを添加した比較例3及び何も添加しなかった比較例5の方法では、Pアルカリ度が基準値(<500mg/リットル as CaCO)を超えており、リン酸系清缶剤を多量に添加した比較例4の方法では、リン酸濃度が基準値(20〜40mg/リットル)を大幅に超過していた。
<実施例9〜13,比較例6〜7>
次に、テストピースカラム6内に炭素鋼(SPCC)製のテストピースを配置し、給水中にαグルコンヘプトン酸ナトリウム(実施例9)、グルコン酸ナトリウム(実施例10)、エリソルビン酸(実施例11)、タンニン酸(実施例12)、グルコース(実施例13)又はメタ重亜硫酸カリウム(比較例6)を添加したとき、及び何も添加しなかったとき(比較例7)について、ボイラ水中の硫酸イオン(アニオン)濃度とテストピースの腐食速度との関係を調べた。
その際、試験条件は、圧力:1.5MPa、蒸発量:7.2リットル/時間、軟水給水温度:20℃、試験時間:72時間とし、ボイラ水の濃縮倍数は8倍(ブロー率12%)で一定にした。また、腐食速度は、テストピースの腐食減量から算出した。その試験結果を、下記表3に示す。
Figure 0005402669
上記表3に示すように、メタ重亜硫酸カリウムを添加した比較例6の水処理方法では、ボイラ水中の硫酸イオン濃度が上昇し、テストピースの腐食速度が増加していた。一方、有機酸又はその塩、糖類を添加した実施例9〜13の水処理方法では、ボイラ水中の硫酸イオン濃度の上昇はみられず、テストピースの腐食速度の増加が抑制されることが確認された。
以上の結果より、軟水を給水とするボイラ水系に、有機酸及びその塩並びに糖類及びその誘導体のうちの少なくとも1種以上の化合物を添加することにより、ボイラ水の電気伝導率及びPアルカリ度の過剰な上昇を抑制して、アルカリ腐食の発生を防止することができることが確認された。

Claims (4)

  1. 軟水を給水とするボイラ水系の水処理方法であって、
    ボイラ水におけるPアルカリ度の上限値を設定する工程と、
    前記給水のMアルカリ度と、前記給水に溶解しているアルカリ成分が熱分解する割合を示す係数とから、ボイラ水におけるPアルカリ度の上昇値を算出する工程と、
    算出されたボイラ水のPアルカリ度の上昇値とボイラのブロー率とから、ボイラ水のPアルカリ度を算出する工程と、
    算出したボイラ水のPアルカリ度と設定したPアルカリ度の上限値との差を求め、その値に応じて添加量を調節しながら、水系に、有機酸及びその塩並びに糖類及びその誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を添加する工程と、
    を有するボイラ水系の水処理方法。
  2. 算出したPアルカリ度の値から設定したPアルカリ度の上限値を引いた値が0以下になるように、添加する化合物の量を調節することを特徴とする請求項1に記載のボイラ水系の水処理方法。
  3. 有機酸及びその塩並びに糖類及びその誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を、前記給水に添加することを特徴とする請求項1又は2に記載のボイラ水系の水処理方法。
  4. 更に、リン酸系化合物を添加することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のボイラ水系の水処理方法。
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