JP5563854B2 - スケール抑制方法及び発電システム - Google Patents

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Description

本発明は、地熱熱水等におけるスケール抑制方法および、それを使用した発電システムに関する。
地熱発電システムは、生産井から噴出した蒸気又は熱水を用いて発電を行った後、温度が下がった熱水を還元井に戻している。
生産井から噴出する高温の熱水は、井戸水や河川水よりもカルシウムや溶存シリカを多く含むため、炭酸カルシウムや非晶質シリカなどのスケールを析出しやすい。特に地上部や還元井では、熱水が地上部で温度降下することにより発生するシリカスケールを抑制することが課題である。
一般に、シリカスケールの抑制法として硫酸注入法が用いられている。硫酸注入法は、熱水のpHを下げることにより、シリカの重合速度を抑制し、スケール析出量を低下させている。しかし、硫酸注入法はあくまでシリカの重合速度を低下させるだけであるため、還元井内で十分に時間が経過した後にはシリカが析出すると予想されている。また、硫酸イオン濃度が上昇するため、硬石膏等のスケールが析出する可能性が高まる。また、酸によって配管等が腐食する問題点も存在する。
これらの課題を解決する方法として、熱水をアルカリ性にすることが挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。すなわち、非晶質シリカの溶解度は、アルカリ性になるほど高くなり、特にpH8以上で急激に上昇する。そのため、高pH溶液中ではシリカスケールが発生し難くなる。さらにこの効果は、上述のシリカ重合速度を抑制する方法とは異なり、時間が経過してもシリカの析出量が増加しないので、還元井内でも持続する。さらに、生産井内でカルシウムやマグネシウムを捕捉するキレート剤を併用することで、生産井内における炭酸カルシウムや硬石膏、マグネシウム珪酸塩の析出を抑制する方法が開示されている。
また、従来、シリカを含有する水性系の中のコロイドシリカを可溶化後にシリカ濃度を測定するために、シリカを含有する水性サンプルを、予想した検出可能なシリカ濃度になるように希釈し、一つ又はそれ以上のキレート剤を添加し、pHを10.0以上とする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、アミノポリカルボン酸の少なくとも一種以上の水溶液に、アルカリ剤を少なくとも一種以上を添加し、pHを5〜10または5〜13に調整してなる混合溶液を地熱発電プラントの蒸気生産井内に注入し、この蒸気生産井内に生成付着している炭酸塩スケールを溶解除去する方法が開示されている(例えば、特許文献2、3参照)。
また、特許文献4には、蒸気井の噴気を停止した後、蒸気井の坑井内に水を溜めることにより坑井の圧力を抑えて冷却する坑井抑圧工程と、坑井内に溜められた水の層の上にアルカリ性のキレート液を注入して該水の層の上にキレート液の層を形成するキレート液注入工程と、キレート液の層の上にさらに水を注入することにより、キレート液の層を新たに注入した水の層によって後押ししてキレート液の層を坑井内のスケール付着領域に配置する後押し工程と、該スケール付着領域にキレート液の層を配置した状態を保持することによりキレート液によってスケールを溶解する養生工程とを有する蒸気井のカルシウム系スケールを除去する方法が開示されている。
また、非特許文献2には、冷却水やRO膜装置内の循環水などのように、温度、pHともにあまり高くない水のシリカの重合を防止する方法として、各温度と各pHの条件における非晶質シリカの溶解度グラフを参照して、使用機器の水温とpH条件での溶解度を読み取り、この溶解度以下になるように循環水の濃縮度を制御することが開示されている。
特開平6−277695号公報 特公平6−954号公報 特開昭63−39700号公報 特開2009−125680号公報
福田大輔、地熱技術,Vol.34,Nos.1&2(Ser.No74)51−57,2009 中島純一、山下浩、前川尚、ボイラ研究,第354号,4月,2009
非特許文献1に開示された方法は、キレート剤を生産井内に注入し、アルカリ剤を地上部において注入している。しかしながら、地熱熱水はボイラ用水などと異なり、カルシウム濃度、溶存シリカ濃度が高いため、アルカリ領域においてはカルシウムとシリカが塩を作り、カルシウム珪酸塩水和物(以下、CSHと称す)が生成する。特に上記方法においては、アルカリ剤を注入する際、注入口付近でpHが局所的に大きくなるため、CSHスケールが析出するという未解決の課題がある。
また、前述した特許文献1に記載された従来例にあっては、シリカを含有する水性サンプルのシリカ濃度を定量測定する際に、シリカを迅速、容易且つ経済的に可溶化するものである。特許文献1に記載された従来例は、高温の熱水流体がアルカリ領域でカルシウムとシリカが塩を作ってCSHが生成されることを抑制する方法を開示しておらず、地下熱水におけるスケール抑制方法として適用できないものである。
また、前述した特許文献2に記載された従来例にあっては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム等のスケールの除去を目的としており、シリカ系のスケールの除去については示唆も開示もされていないとともに、アミノポリカルボン酸水溶液にアルカリ剤を添加した混合溶液(pH5〜10)を洗浄剤とし、地熱発電プラントの蒸気生産を一時中止した後、混合洗浄剤注入管を蒸気生産井内のフラッシングポイント付近まで挿入して混合洗浄剤を注入する必要があり、生産井の洗浄のために蒸気生産を中止する必要があるという未解決の課題がある。
また、前述した特許文献3に記載された従来例にあっても、炭酸カルシウムを主成分とするスケールの除去を目的としており、シリカ系のスケールの除去については何ら示唆も開示もしていないとともに、上記特許文献2に記載された従来例のように蒸気生産を中止しないものの、熱水のフラッシング点より約5m程度深い深度まで薬注管を挿入し、蒸気生産量を1/4に下げて運転しながら混合溶液を6時間注入するようにしており、蒸気生産量が格段に低下するという未解決の課題がある。
また、前述した特許文献4に記載された従来例にあっては、蒸気井の内部に付着したカルシウム系スケールを除去する方法を開示しているに過ぎず、熱水が蒸気井の温度より低くなった状態でのシリカ系のスケールの除去について何ら示唆も開示もしていない。
また、前述した非特許文献2に記載された従来例にあっては、冷却水系やRO膜装置内の循環水などのように、温度、pHともにあまり高くない水のシリカの重合を防止する方法として、循環水のシリカ濃度を、使用機器の水温とpH条件での非晶質シリカの溶解度以下になるように、循環水の濃縮度を制御しており、地熱発電プラントのように水が高温であることを求められている場合は、水の濃縮度を調整するために低温の水を添加することは望ましくないため適用できないという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、カルシウム及びシリカを含む熱水流体に対して、CSHを析出させずにアルカリ剤を注入してシリカの析出を抑制することができるスケール抑制方法及びこれを使用した発電システムを提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明の一つの形態に係るスケール抑制方法は、生産井出口より下流側の流路を通流するカルシウム及びシリカを含有した流体に前記通路に形成したスケール抑制剤注入部からキレート剤を流量制御しながら注入することにより金属イオンを不活性化する金属イオン不活性化工程と、前記金属イオン不活性化工程と同時に前記スケール抑制剤注入部から前記流体へアルカリ剤を流量制御しながら注入するアルカリ剤注入工程とを設けたことを特徴としている。
ここで、キレート剤とは、金属イオンと配位結合をするカルボキシル基やアミノ基などの官能基を複数持つ分子のことであり、キレート剤は、強固に金属イオンと錯体を形成して、金属イオンを不活性化させるものである。生産井出口より下流側の流路を通流するカルシウム及びシリカを含有した熱水流体は、生産井出口以降温度が低下するとスケールが生じる。この方法によると、熱水流体中の金属イオン、特にカルシウムイオンをキレート剤により不活性化することで、カルシウムとシリカの結合を阻害し、カルシウム珪酸塩水和物(CSH)が析出することを抑制できる。
すなわち、図19に示すように、カルシウムイオン及びシリカを含む熱水流体に対して、金属イオン不活性化工程と同時あるいは図21に示すように金属イオン不活性化工程の直後にアルカリ剤注入工程を行う。両行程を行うことにより、全カルシウムイオンに対して、不活性になっているカルシウムイオンの割合が多い熱水流体中にアルカリ剤を注入することになる。カルシウムイオンが十分に不活性になっているため、注入口で局所的に高pHとなってもCSHの析出が抑制され、結果として非晶質シリカ、CSHの析出を共に抑制することが可能となる。
これに対して、前述した非特許文献1に記載された従来例の場合は、生産井内にキレート剤を注入し、地上部でアルカリ剤を注入していた。この場合、図20に示すように、アルカリ剤注入部付近では局所的にpHが高くなり、かつ不活性化されていないカルシウムが多く存在するため、CSHが析出する。
上述したアルカリ注入工程は、溶存シリカ濃度に応じてアルカリ注入量を変更し、生産井出口より下流側の流路における流体の飽和非晶質シリカ濃度とシリカ濃度とが同じになるpH値以上に設定することが好ましい。具体的には、25℃のpHで8以上にすることが望ましい。より望ましくは、25℃換算のpH値としてpH9.7以上になるようにアルカリ剤を注入することとしてもよい。非晶質シリカは25℃のpHで8以上にすると急激に溶解度が上昇する。一方、CSHはpHが低いほど溶解度が高い。そのため、溶存シリカが溶解したままでいるのに最低限必要な量のアルカリ剤を注入することで、アルカリ剤の使用量を抑えつつ、CSHの抑制に必要なキレート剤の使用量も抑えることができ、経済的な運転が可能となる。
上述した金属イオン不活性化工程は、カルシウム濃度に応じてキレート剤注入量を変更することが望ましい。この金属イオン不活性化工程のキレート剤注入流量は、流体の流量,カルシウム濃度,飽和カルシウム濃度,キレート剤濃縮液のキレート剤濃度に基づいてキレート剤注入流量を計算することが望ましい。具体的には、前記流体のカルシウム濃度からカルシウム珪酸塩水和物の溶解度に対して飽和となる飽和カルシウム濃度を引いた値である過飽和カルシウム濃度を、比例定数およびキレート剤濃縮液のキレート剤濃度で割った値に前記流体の流量をかけた値以上にすることが好ましい。ここで、カルシウム濃度はカルシウム濃度計で計測したり、カルシウム濃度の変動が少ない場合には予め設定したカルシウム濃度を使用したりするようにしてもよい。なお、流体のカルシウム濃度、温度、pHの変動が十分小さい場合には、流体の流量と予め定められた定数とに基づいてキレート剤注入量を計算することができる。CSHが溶解したままでいるのに最低限必要な量のキレート剤を注入することで、キレート剤の使用量を抑えることができ、経済的な運転が可能となる。
上述した金属イオン不活性化工程は、熱水流体を分流する熱水流体分流工程と、熱水流体分流工程で分流された熱水流体にキレート剤を注入するキレート剤注入工程とからなることが好ましい。すなわち、図21に示すように、熱水流体分流工程で分流された熱水流体にキレート剤を注入することで、全カルシウムイオンに対する、不活性なカルシウムイオンの割合を、より高くした状態でアルカリ剤を注入することが可能となる。そのため、アルカリ剤注入口付近で局所的に高pHとなっても、CSHの析出が抑制される。その際、CSHの抑制能を向上させること、さらにはキレート剤の注入量を少なくしてCSHを抑制することが可能となる。
本発明の他の形態に係る発電システムは、上述したスケール抑制方法により、還元熱水のスケールを抑制する。還元熱水からの非晶質シリカ、CSHの析出を共に抑制することで、配管や還元井内でのスケール析出を防ぐことができ、メンテナンス回数や還元井の浚渫回数を低減し、経済的に発電を行うことが可能となる。
発電システムの発電を、スケール抑制方法を用いた地熱熱水を熱源とするバイナリー発電とすることが好ましい。この場合には、地熱熱水からの非晶質シリカ、CSHの析出を共に抑制することで、地熱熱水から熱回収をして温度を降下させても、熱交換器、配管、還元井内でのスケール析出を防ぐことができる。そのため、熱交換器の洗浄回数や還元井の浚渫回数を低減し、経済的にバイナリー発電を行うことが可能となる。
本発明のスケール抑制方法によれば、カルシウム及びシリカを含む流体に対して、カルシウム珪酸塩水和物(CSH)を析出させずにアルカリ剤を注入してシリカの析出を抑制することができるという効果が得られる。
また、上記スケール抑制方法を使用して地熱熱水のスケール発生を抑制する発電システムを構成することにより、配管や還元井内でのスケール析出を防ぐことができ、メンテナンス回数や還元井の浚渫回数を低減し、経済的に発電を行うことが可能となるという効果が得られる。
本発明の第1の実施形態におけるスケール抑制方法を用いたバイナリー発電の地熱発電システムを示す系統図である。 各温度における熱水の25℃換算pHと飽和非晶質シリカ濃度の関係図である。 スケール抑制効果の確認試験設備を示す系統図である。 スケール析出状態を示す写真であって、左側はテストピースにおけるスケール析出状態を示し、右側はスタティックミキサ付近におけるスケール析出状態を示す。 スケールの付着状況を示す写真である。 スケール付着状況を示す写真であって、左側は試験7におけるテストピースに付着したスケール付着状況を示し、右側は試験8におけるテストピースに付着したスケール付着状況を示す。 本発明の第1の実施形態におけるスケール抑制方法を用いたバイナリー発電の地熱発電システムの変形例を示す系統図である。 本発明の第1の実施形態におけるスケール抑制方法を用いたバイナリー発電の地熱発電システムの他の変形例を示す系統図である。 本発明の第2の実施形態におけるスケール抑制方法を用いたバイナリー発電の地熱発電システムを示す系統図である。 pH制御演算器で実行するpH制御演算処理手順の一例を示すフローチャートである。 キレート剤制御演算器で実行するキレート剤制御処理手順の一例を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施形態の変形例を示す系統図である。 本発明の第2の実施形態の他の変形例を示す系統図である。 図13の変形例で実行するキレート剤制御処理手順の一例を示すフローチャートである。 本発明の第3の実施形態を示す地熱発電システムの系統図である。 本発明の第4の実施形態を示す地熱発電システムの系統図である。 本発明の第5の実施形態を示す地熱発電システムの系統図である。 第5の実施形態におけるアルカリ性キレート剤制御演算器で実行するアルカリ性キレート剤制御処理手順の一例を示すフローチャートである。 キレート剤とアルカリ剤を同時に注入する方法における、アルカリ剤注入口付近の模式図である。 生産井でキレート剤を注入する従来の方法における、アルカリ剤注入口付近の模式図である。 分流工程で分流された流体にキレート剤、アルカリ剤を注入する方法における、アルカリ剤注入口付近の模式図である。
以下、本発明の実施の形態の例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の実施形態を示すスケール抑制方法を適用した地熱発電システムのミニプラントを示す系統図である。上述の流体は、本実施例において地熱熱水である。図中、1は、地中から地熱熱水を取り出す生産井であって、この生産井1に流量調節弁2を介して1次配管3の一端が接続されている。
この1次配管3の他端は、熱交換器(蒸発器)4を介して還元井5に接続されている。この熱交換器4は、水より低沸点媒体であるペンタンと熱交換を行うケトル型のチューブアンドシェル熱交換器が望ましく、チューブアンドシェル熱交換器のチューブ側に1次配管3、シェル側に2次配管がそれぞれ接続されている。
熱交換器4に流入する地熱熱水は、低沸点媒体と熱交換されて、熱交換器チューブ側入口温度130℃から熱交換器チューブ側出口温度105℃に低下した後、還元井5を通って地中に戻される。
一方、熱交換器4のシェル側には地熱熱水に対して4分の1の質量流量のペンタンが通流されている。地熱熱水との熱交換によってシェル内で蒸発したペンタンは、2次配管に接続された衝動式背圧タービン6に供給され、タービンを回転させる。タービン6に連結された三相同期発電機7は、タービンの回転力を電力に変換する。この三相同期発電機7からの出力は、ペンタン1kg/s当たり、40kw、地熱熱水1kg/s当たり10kwとなるように設計した。
タービン6から回収されるペンタンは、2次配管を通流して凝縮器8に供給される。凝縮器8としては、空冷式フィンクーラーが好ましい。凝縮器8で冷却されて凝縮したペンタンは、凝縮器8の出口において45℃となる。凝縮器8を出たペンタンは、遠心式ポンプ9によって加圧されて熱交換器4へと向かい、再度加熱、蒸発し、ランキンサイクルを構成する。
一方、1次配管3の流量調節弁2と熱交換器4との間には、キレート剤及びアルカリ剤を同時に注入するスケール抑制剤注入部10が形成される。このスケール抑制剤注入部10にはスケール抑制剤注入ライン11を介して水酸化ナトリウム溶液タンク12に貯留されたアルカリ剤としての水酸化ナトリウム水溶液がアルカリ剤注入ポンプ13を介して供給される。これと同時に、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)の四ナトリウム塩四水和物の水溶液を貯留したEDTA溶液タンク14からキレート剤注入ポンプ15を介して、EDTA溶液がスケール抑制剤注入口10に供給される。このため、スケール抑制剤注入口10で水酸化ナトリウム溶液とEDTA溶液とが同時に1次配管3中の地熱熱水に注入される。
ここで、地熱熱水としては、次に示すような性状のものを用いた。但し、熱水性状は、時間による変動があるため概数として記す。温度は130℃、pHは9、カルシウム(Ca)濃度は、10ppm、溶存シリカ濃度は600ppmであり、その他、Cl、SO4、Naなど多くのイオンを含んでいる。
アルカリ剤の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、アンモニア、有機アミン類からなる群から1つまたは複数を溶質とする水溶液を用いることが可能であるが、これらに限定されるものではなく、非晶質シリカを溶解できるものであればよい。
さらに、キレート剤は、金属イオンと配位結合をするカルボキシル基やアミノ基などの官能基を複数持つ分子のことであり、キレート剤は、強固に金属イオンと錯体を形成して、金属イオンを不活性化させるものである。このキレート剤の例としては、EDTA、NTA(ニトリロ三酢酸)、HIDS(3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸)、カルボキシメチルエチレンイミン、クエン酸、酒石酸、およびそれらの各種ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、水和物などの水溶液を用いることができるが、これらに限定されるものではなく、金属イオン、特にカルシウムイオンを不活性化できるものであればよい。
このように、本実施形態では、1次配管3における熱交換器4の入側でアルカリ剤としての水酸化ナトリウム溶液とキレート剤としてのEDTA溶液とを同時にスケール抑制剤注入口10に供給して地熱熱水中に同時に注入する。このため、前述した図16に模式的に示すように、スケール抑制剤注入口10の近傍において、地熱熱水流体中に含まれるカルシウムイオン(Ca)21の大部分をキレート剤としてのEDTA溶液22によって不活性化して不活性カルシウムイオン23とすることができ、不活性化されなかった遊離カルシウムイオンの濃度が低くなった地熱熱水中に、アルカリ剤としての水酸化ナトリウム24を注入することになる。このとき、遊離カルシウムイオン濃度が飽和カルシウムイオン濃度より低くなっているため、スケール抑制剤注入口10で局所的に高pHとなる高pH領域25が発生してもカルシウム珪酸塩水和物(以下、CSHと称す)の析出が抑制され、結果として非晶質シリカ、CSHの析出を共に抑制することが可能となる。
図2に各温度における熱水の25℃換算pHと飽和非晶質シリカ濃度の関係図を示す。生産井出口の熱水が、130℃、溶存シリカ濃度600mg/Lとすると、105℃で飽和非晶質シリカ濃度600mg/Lとなる25℃換算pHは、9.7である。したがって、pHを9.7以上にすれば、飽和非晶質シリカ濃度をシリカ濃度以上にすることができる。
上記の通りバイナリー発電のミニプラントを構成し、スケール抑制剤としてのキレート剤及びアルカリ剤の実験条件を後述する表1における条件6に設定して、1ヶ月間の運転を行った。実験条件6は、アルカリ条件が25℃換算でpHが10.0で且つアルカリ剤タンクにおけるアルカリ剤濃度が14質量百分率(%)であり、熱水に混合後のキレート剤条件がEDTA:Ca=1:1.6(モル比)で且つキレート剤タンクにおけるキレート剤濃度が4.7質量百分率(%)である。
熱水性状を元に化学平衡シミュレーションを行った結果、サイクロンセパレータ直後の130℃の熱水は、既にシリカが過飽和な状態であると計算されたため、スケールの発生を抑制する対策をしなければシリカスケールが析出することが予測された。さらに、熱交換器4で熱水の温度が105℃にまで低下すると、シリカの過飽和度はさらに高まると予測された。そのため、スケールの発生を抑制する対策をしない場合、スケールが1次配管、熱交換器4のチューブおよび還元井内で析出すると予想された。
そこで、上記スケール抑制方法を適用して試験を行ったところ、熱交換器4のチューブにスケールの析出は見られず、非晶質シリカ、CSHの析出を共に抑制できた。
したがって、上記スケール抑制方法を適用すれば、熱交換器の洗浄回数や還元井の浚渫回数を低減でき、経済的にバイナリー発電を行うことが可能となった。
この第1の実施形態における効果を比較検証するために、図3に示す複数のラインを備えたミニプラントを製作した。このミニプラントに地熱熱水を通水し、各ライン内の各テストピース33に付着したスケール量を比較することで、スケール抑制効果を検証した。
ミニプラントは、1次配管3から地熱熱水を取り出して、10本の試験ラインL1〜L10に同一流量となるように分岐させている。各試験ラインL1〜L10には、スケール抑制剤タンク内におけるアルカリ剤とキレート剤が表1に示した濃度となるように、スケール抑制剤タンクT1〜T10内で混合し、アルカリ剤とキレート剤とが混合されたスケール抑制剤をスケール抑制剤注入ポンプ17によって試験ラインL1〜L10における長手方向における同一箇所のスケール抑制剤注入部31から注入した。
各試験ラインL1〜L10のスケール抑制剤注入部31の下流側にはそれぞれスタティックミキサ32が配設され、これらスタティックミキサ32で地熱熱水とスケール抑制剤とを混合する。そして、各スタティックミキサ32の下流側に、それぞれテストピース33を配設し、各テストピース33を通過した地熱熱水を排液ピット34に貯留する。
ここで、地熱熱水としては、前述した第1の実施形態と同様の性状のものを用いた。但し熱水性状は、時間による変動があるため概数として記す。温度は130℃、pHは9、カルシウム(Ca)濃度は10ppm、溶存シリカ濃度は600ppmであり、その他に塩化物イオン、硫酸イオン、Naイオンなどの多くのイオンを含んでいる。
スケール抑制剤は、アルカリ剤として水酸化ナトリウムを、キレート剤としてEDTA(エチレンジアミン四酢酸)四ナトリウム塩四水和物を用いた。
アルカリ剤とキレート剤は表1に示した各条件の濃度となるように、薬剤タンク内で混合し、両者を同一箇所から注入した。薬剤注入流量は10ml/minとなるように、アルカリ剤、キレート剤の濃度を調整した。
表1に、各スケール抑制方法における薬剤の注入条件を示す。なお、表1に記載のアルカリ剤濃度とキレート剤濃度は、スケール抑制剤タンクT1〜T10での濃度である。ここで、キレート剤の注入量は、溶存カルシウムのモル濃度と、カルシウム珪酸塩水和物の溶解度に対して飽和となるカルシウムのモル濃度との差以上となるモル濃度となるような注入量に設定されている。
各テストピース33は、内面の粗度がほぼ等しい1インチの配管を用いた。それぞれの試験は地熱熱水の流量を7L/min、温度を130℃にした。各テストピース33内に付着したスケール量の測定、あるいはスタティックミキサ32や配管内に付着したスケールの観察により、スケール抑制効果を評価した。
表2に、各試験における薬剤の注入条件、通水時間、テストピースに付着したスケール量、スケール種を示す。
試験1はスケール抑制剤を注入していない試験であり、25℃のpHで約9である。この性状ではシリカが過飽和となっており、かつアルカリ性でありシリカの重合速度が大きいため、テストピース33上に非晶質シリカが析出した。
試験2及び3は非晶質シリカを抑制するために、pHが9.5及び10.0になるまでアルカリ剤を注入した試験である。この性状ではシリカは全量溶解しているため、非晶質シリカは析出しなかった。しかし、アルカリ剤を注入したことでCSHが過飽和となり、テストピース33上へ析出が見られた。試験3のスケール析出の様子を観察した結果を図4に示す。図4の左側は、テストピース33、右側は、スタティックミキサ32付近の写真である。この写真から明らかなように、テストピース33及びスタティックミキサ32の両者に付着したスケール量を比較すると、明らかにスタティックミキサ32付近のスケール量が多いことが分かる。これは、スタティックミキサ32はアルカリ剤注入の直後に配置されており、この場所では、表1で示したアルカリ剤注入後の熱水のアルカリ条件よりも部分的にpHが高くなり、CSHの溶解度が急激に減少したためであると推測された。
試験4〜6はキレート剤の効果を確認した試験である。試験開始24時間後にテストピース33より後段における配管の一部を取り出し、スケール析出の様子を観察した結果を図5に示す。試験4では試験1と同じく非晶質シリカが、試験5では試験2と同じくCSHが析出したのに対し、試験6ではキレート剤を注入することにより、非晶質シリカ、CSHの両者の析出が無くなったことが確認された。
試験7〜10はアルカリ剤を混合後の熱水のpHが10.0になる量のアルカリ剤と、各条件のキレート剤を熱水に加えた試験である。スケール析出量が最も多い場所であるスタティックミキサ32上で、スケール析出の様子を観察した。試験7と8における各スタティックミキサ32に付着したスケールの様子を図6に示す。図6の左側の写真は、試験7の結果であり、スケールが明瞭に付着していた。図6の右側の写真は、試験8の結果であり、スケールがわずかに付着していた。試験8〜10では、キレート剤がカルシウムを捕捉することで、CSHの析出が抑制され、結果として、非晶質シリカ、CSH共に抑制できることが確認された。なお、析出量が少ないため、スケール量、スケール種は測定および同定することが困難であった。
以上、ミニプラントによる試験結果から、カルシウム及びシリカを含む熱水流体に、アルカリ剤とキレート剤を同時に注入することで、非晶質シリカ、CSH共に抑制することが可能であることが確認された。
なお、上記第1の実施形態においては、生産井1から供給される地熱熱水を1次配管3を介して熱交換器4に供給した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図7に示すように、生産井1から噴出した気液二相流を気液分離器(具体例としては、サイクロンセパレータ)69で液体から気体を分離した後、液相側の熱水流体を1次配管3を介して熱交換器4に供給するようにしてもよい。
また、上記第1の実施形態においては、スケール抑制剤注入部10で、キレート剤及びアルカリ剤を同時に注入する場合について説明したが、これに限らず、図8に示すようにスケール抑制剤注入部10の直後に混合装置70を配置してキレート剤及びアルカリ剤と地熱熱水とを混合するようにしてもよい。この場合には、キレート剤及びアルカリ剤と地熱熱水との混合を確実に行って、非晶質シリカ、CSHの析出を共に確実に抑制することが可能となる。
次に、本発明の第2の実施形態を図9〜図11について説明する。
この第2の実施形態は、前述した第1の実施形態の構成において、水酸化ナトリウム溶液注入量をpH検出値及び地熱熱水の熱交換器出口温度に基づいて制御し、EDTA注入量を地熱熱水のスケール抑制剤注入部10より上流側の温度、流量、カルシウム濃度及びスケール抑制剤注入部10より下流側のpHに基づいて制御するようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態においては、地熱熱水を熱源とするバイナリー発電の熱水配管にアルカリ剤とキレート剤を同時に注入するスケール抑制方法を適用したミニプラントを設置し、スケール抑制効果を検証した。バイナリー発電に用いる地熱熱水は、予めサンプルを採取し、カルシウム濃度、シリカ濃度、温度、pH、固形物濃度などの各種性状を測定し、前述した第1の実施形態で用いた熱水とほぼ同じであることを確認した。熱水流量は約50L/minとなるように生産井1から取り出した。但し、熱水の流量は、最大±10%程度増減した。また、還元井の深度に相当する貯留層温度を予め測定した。スケール抑制剤として用いたキレート剤及びアルカリ剤は、上記第1の実施形態の表1条件番号5と同一条件にした。
バイナリー発電の系統図を図9に示す。1次配管3上に温度計51、52、流量計53、カルシウム濃度計54、pH計55を備えた。但し、温度計51、流量計53、カルシウム濃度計54は、スケール抑制剤注入部10より上流側、pH計55はスケール抑制剤注入部10と熱交換器4との間、温度計52は熱交換器4より下流側の1次配管3上に備えた。
そして、アルカリ剤注入ポンプ13はpH制御演算器61で制御されるとともに、キレート剤注入ポンプ15はキレート剤制御演算器62で制御した。
ここで、pH制御演算器61は、マイクロコンピュータ等の演算処理装置を含んで構成されている。pH制御演算器61は、pH計55及び温度計52から検出信号が入力され、これら入力信号に基づいてスケール抑制剤注入部10の下流側のpHが設定値となるように制御した。
すなわち、pH制御演算器61は図10に示すpH制御処理を実行し、先ず、ステップS1で温度計52の温度検出値T2及びpH計55のpH検出値pHdを読込み、次いでステップS2に移行して、温度検出値T2に基づいて予め測定していた溶存シリカ濃度が非晶質シリカの溶解度に対して飽和となるpH目標値pH*を算出する。ここで、非晶質シリカの溶解度は予め測定した熱水性状を考慮した化学平衡シミュレータによって計算しておき、非晶質シリカの溶解度が溶存シリカ濃度と等しくなるようなpH目標値pH*を温度の関数式として算出し、この関数式をpH制御演算器61内の第2メモリ61aに記憶させておき、温度検出値T2を関数式に代入することにより、必要なpH目標値pH*を算出する。関数式を第2メモリ61aに記憶させる代わりに、各温度、各pHにおける関数式の各計算結果(pH目標値pH*)を格納した2次元の表を第2メモリ61aに記憶させておき、この2次元の表から温度検出値T2およびpH検出値pHdにおける計算結果(pH目標値pH*)を読み出しても良い。
次いで、ステップS3に移行して、ステップS2で算出したpH目標値pH*からpH検出値pHdを減算したpH偏差ΔpHを算出し、次いでステップS4に移行して、算出したpH偏差ΔpHに例えばPID演算処理を行ってアルカリ剤注入ポンプ13の吐出流量Faを算出し、次いでステップS5に移行して算出した吐出流量Faとなるようにアルカリ剤注入ポンプ13を駆動制御してから前記ステップS1に戻る。
また、キレート剤制御演算器62は、マイクロコンピュータ等の演算処理装置を含んで構成され、温度計51の温度検出値T1、流量計53の熱水流量Fw、カルシウム(Ca)濃度計54のカルシウム濃度Cca、pH計55のpH検出値pHdが入力され、これらに基づいてスケール抑制剤注入部10に供給するEDTA溶液量を制御する。
すなわち、キレート剤制御演算器62は、図11に示すキレート剤制御処理を実行する。このキレート剤制御処理では、先ず、ステップS11で、各検出値を読込み、次いでステップS12に移行して、温度検出値T1及びpH検出値pHdに基づいてCSHの溶解度に対して飽和となる飽和カルシウム濃度Csatを算出する。ここで、CSHの溶解度は、予め測定した熱水性状を考慮した化学平衡シミュレーションによって計算して、飽和カルシウム濃度Csatを温度検出値T1とpH検出値pHdとの関数式として算出し、算出した関数式をキレート剤制御演算器62の第1メモリ62aに記憶しておき、この関数式に温度検出値T1とpH検出値pHdとを代入することにより、飽和カルシウム濃度Csatを算出する。関数式を第1メモリ62aに記憶させる代わりに、各温度、各pHにおける関数式の各計算結果(飽和カルシウム濃度Csat)を格納した2次元の表を第1メモリ62aに記憶させておき、この2次元の表から温度検出値T2およびpH検出値pHdにおける計算結果(飽和カルシウム濃度Csat)を読み出しても良い。
次いで、ステップS13に移行して、キレート剤注入流量Fchを算出する。
このキレート剤注入流量Fchの算出は、流量計53によって測定された熱水流量Fw、カルシウム濃度計54によって測定されたカルシウム濃度Ccaに対して、EDTAで補足すべきカルシウム量は、(Cca−Csat)Fwと表される。ここで、(Cca−Csat)は過飽和カルシウム濃度を表す。
一方、キレート剤注入流量Fch、EDTA溶液タンク内のEDTA濃度Cchに対して、EDTAが捕捉するカルシウム量はαCchchと表される。但し、αはEDTAがカルシウムを捕捉する割合や、その他の安全係数を含めた比例定数で、予め地熱熱水を用いたミニプラント試験によって決定される。
以上より、キレート剤注入流量Fchは次の(1)式に従って算出される。
αCchch=(Cca−Csat)Fw
∴Fch={(Cca−Csat)/αCch}Fw
=A×Fw …………(1)
次いで、ステップS14に移行して、算出されたキレート剤注入流量Fchとなるように、キレート剤注入ポンプ15を駆動制御して、前記ステップS11に戻る。
上記の制御を行い、1次配管3に熱水を210分通水したところ、1次配管の熱水の平均流量48.3L/minに対して、キレート剤の注入量は平均69ml/minであった。
また、制御の効果を評価するために、温度計52よりも下流側から熱水を約50ml/minで分流し、孔径1μmのメンブレンフィルタを備えたフィルタハウジングに通水した。濾過した熱水が10Lとなったところで、フィルタハウジングへの通水を停止した。濾過したメンブレンフィルタは乾燥させ、濾過前の重量との差から析出したスケール量を見積もった。実験の結果、メンブレンフィルタは、2.0mg増加した。これは、生産井1出口付近の熱水から採取した熱水の固形物濃度0.2mg/Lと一致した。従って、スケールとして新たに析出した固形物はほとんど無く、メンブレンフィルタの重量増加は熱水に元々含まれている固形物重量に相当すると判断した。
上記の結果から、第2の実施形態においては、スケール抑制剤によって非晶質シリカ、CSHの析出がほぼ完全に抑制されたと考えられる。
この第2の実施形態によると、アルカリ剤の注入量を溶存シリカ濃度が非晶質シリカの溶解度に対して飽和となるpH以上となるように制御するので、溶存シリカが溶解したままでいるのに最低限必要な量のアルカリ剤を注入することができ、アルカリ剤の使用量を抑えつつ、CSHの抑制に必要なキレート剤の使用量も抑えることができ、経済的な運転が可能となる。
また、カルシウム濃度に応じてキレート剤注入量を変更するので、CSHが溶解したままでいるのに最低限必要な量のキレート剤を注入することで、キレート剤の使用量を抑えることができ、経済的な運転が可能となる。
なお、上記第2の実施形態において、カルシウム濃度Ccaの変動が十分小さい場合には、図12に示すように、カルシウム濃度計54を省略し、これに代えて第2のメモリ62aに、予め計測したカルシウム濃度Ccaを記憶しておき、この第1メモリ62aに記憶されたカルシウム濃度Ccaを前述した図11のキレート剤制御処理のステップS11で読込むようにすればよい。
また、第2の実施形態において、カルシウム濃度Cca、温度T1、pHの変動が十分小さい場合には、前述した(1)式における熱水流量Fwの係数Aを定数として制御することが可能であった。この定数はキレート剤注入流量Fchと熱水流量Fwを体積流量で表し、Cchを2.4wt%としたとき1.43×10-3であった。この場合には、図13に示すように、第1の温度計51、カルシウム濃度計54を省略するとともに、pH計55のキレート剤制御演算器62への入力を省略し、これに代えて、第1メモリ62aに、上記定数Aを記憶しておき、さらにキレート剤制御処理を図14に示すように、ステップS11′で、流体の流量Fwを流量計53から読込むとともに、第1メモリ62aから定数Aを読込み、次いでステップS12′で定数Aおよび流量Fwに基づいて前記(1)式の演算を行ってキレート剤注入流量Fchを算出し、次いでステップS13′に移行して算出したキレート剤注入量Gchに基づいてキレート剤注入ポンプ15を制御するようにすればよい。
[比較例1]
上記第2の実施形態において、熱水流量Fwの変動によるキレート剤注入流量Fchの制御を行わず、69ml/minの一定流量でキレート剤を注入した。それ以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、温度計52よりも下流側の熱水をメンブレンフィルタに10L通水した後のメンブレンフィルタの乾燥重量の増加は、26mgであった。
熱水の平均流量と通水時間は、上述した第2の実施形態と同じであったが、実際には流動変動があるため、熱水流量が48.3L/minよりも少ない時間帯では、熱水中のキレート剤濃度が想定した濃度よりも高くなり、一方、熱水流量が48.3L/minよりも多い時間帯では、熱水中のキレート剤濃度が想定した濃度よりも低くなったため、スケールが発生し、固形物濃度が増加したと考えられる。なお、熱水流量が48.3L/min以上となっている時間帯は合計110分で、そのときの平均流量は49.5L/minであった。
なお、上記第2の実施形態においても、前述した第1の実施形態における図7及び図8と同様に、気水分離器69を設けたり、混合装置70を設けたりすることができる。
次に、本発明の第3の実施形態を図15について説明する。
この第3の実施形態では、図15のように、カルシウム濃度計54'をスケール抑制剤注入部10と熱交換器4の間に設置した。その際、カルシウム濃度計54’は、EDTAにより捕捉されていない遊離カルシウム濃度Cca’を測定する。
この第3の実施形態では、EDTAにより補足されていない遊離カルシウム濃度Cca’を直接測定することができるので、キレート制御演算器62で実行する前述した図11のキレート剤制御処理を省略し、これに代えて、キレート制御演算器62に、例えば遊離カルシウム濃度Cca’の目標値を“0”とし、この目標値と計測した遊離カルシウム濃度Cca’との偏差をPI制御器またはPID制御器に入力してキレート剤注入流量Fchに対応した操作量を算出し、算出した操作量に基づいてキレート剤注入ポンプ15を制御するフィードバック回路を構成するようにすれば良い。
なお、第3の実施形態におけるカルシウム濃度計54’の代替として全カルシウム濃度計を用い、添加しているEDTA濃度に対応してキレートされるカルシウム濃度を別途算出し、全カルシウム濃度からEDTAでキレートされたカルシウム濃度を引いた値を遊離カルシウム濃度Cca’として制御装置に入力し、アルカリ剤注入ポンプ13とキレート剤注入ポンプ15を制御してもよい。
この第3の実施形態では、カルシウム濃度計54で、EDTAで捕捉されていない遊離カルシウム濃度を直接測定することが可能なため、キレート剤注入ポンプ15から注入されるキレート剤量が設定値と異なった場合にもフィードバック制御をすることが可能となる。
次に、本発明の第4の実施形態を図16について説明する。
この第4の実施形態では、アルカリ剤とキレート剤とを同時に注入する場合代えて、図16に示すように、1次配管3のカルシウム濃度計54の下流側にEDTA溶液タンク14からキレート剤注入ポンプ15を介してEDTA溶液が供給されるキレート剤注入部10aを形成するとともに、このキレート剤注入部10aの下流側に、水酸化ナトリウム溶液タンク12に貯留されたアルカリ剤としての水酸化ナトリウム水溶液がアルカリ剤注入ポンプ13を介して供給されるアルカリ剤注入部10bを形成するようにしてもよい。この場合に、図21に示すように、1次配管3内に、注入するキレート剤の注入量によって不活性化が可能なカルシウムイオン量に対応する流量を分流する分流部71を形成し、この分流部71で分流された地熱熱水に対してキレート剤72を注入するキレート剤注入部10aを形成し、このキレート剤注入部10aの下流側にアルカリ剤74を注入するアルカリ剤注入部10bを設けるようにすることが好ましい。この場合には、分流された地熱熱水に含まれるカルシウムイオンをキレート剤によって全て不活性化された状態で、アルカリ剤74が注入されるので、全カルシウムイオンに対する、不活性なカルシウムイオンの割合を、より高くした状態でアルカリ剤を注入することが可能となる。そのため、アルカリ剤注入部75付近で局所的に高pHとなっても、CSHの析出が抑制される。その際、CSHの抑制能を向上させること、さらにはキレート剤の注入量を少なくしてCSHを抑制することが可能となる。
なお、上記第4の実施形態においても、前述した第1の実施形態と同様に、前述した第1の実施形態における図7及び図8と同様に、気水分離器69を設けたり、混合装置70を設けたりすることができる。
また、上記第4の実施形態においても、前述した第2の実施形態と同様にカルシウム濃度の変動が十分少ない場合には、カルシウム濃度計54を省略して、第3メモリ63aに予め計測したカルシウム濃度Ccaを記憶しておくようにしてもよく、さらに温度、カルシウム濃度及びpHの変動が十分に小さい場合には、第1の温度計51、カルシウム濃度計54を省略し、これに代えて第3メモリ63aに前述した(1)式の定数Aを記憶しておけばよい。
次に、本発明の第5の実施形態を図17及び図18について説明する。
この第5の実施形態では、キレート剤とアルカリ剤とを個別のタンク12,14に貯留して、個別のポンプ13,15でスケール抑制剤注入部10に供給する場合に代えて、図17及び図18に示すように、キレート剤としてアルカリ性キレート剤を適用し、このアルカリ性キレート剤をアルカリ性キレート剤タンク18に貯留し、このアルカリ性キレート剤タンク18に貯留されたアルカリ性キレート剤をアルカリ性キレート剤ポンプ19によってスケール抑制剤注入部10に供給するようにしている。
ここで、アルカリ性キレート剤ポンプ19の吐出流量をアルカリ性キレート剤制御演算器63によって制御する。このアルカリ性キレート剤制御演算器63は、例えばマイクロコンピュータ等の演算処理装置で構成され、第1温度計51、第2温度計52、流量計53、カルシウム濃度計54及びpH計55の各検出値が入力され、これら検出値に基づいて図18に示すアルカリ性キレート剤制御処理を実行する。このアルカリ性キレート剤制御処理は、先ず、ステップS21で第1温度計51の温度T1、第2温度計52の温度T2、流量計53の流量Fw、カルシウム濃度計54のカルシウム濃度Cca及びpH計55のpH検出値pHdを読込み、次いでステップS22に移行して、前述した第2の実施形態における図11のステップS12と同様に温度検出値T1及びpH検出値pHdに基づいてCSHの溶解度に対して飽和となるカルシウム濃度Csatを算出する。ここで、CSHの溶解度は、予め測定した熱水性状を考慮した化学平衡シミュレーションによって計算して、飽和カルシウム濃度Csatを温度検出値T1とpH検出値pHdとの関数式として算出し、算出した関数式をアルカリ性キレート剤制御演算器63の第3メモリ63aに記憶しておき、この関数式に温度検出値T1とpH検出値pHdとを代入することにより、飽和カルシウム濃度Csatを算出する。関数式を第1メモリ63aに記憶させる代わりに、各温度、各pHにおける関数式の各計算結果(飽和カルシウム濃度Csat)を格納した2次元の表を第1メモリ63aに記憶させておき、この2次元の表から温度検出値T2およびpH検出値pHdにおける計算結果(飽和カルシウム濃度Csat)を読み出しても良い。
次いで、ステップS23に移行して、前記(1)式に従ってキレート剤注入流量Fchを算出してからステップS24に移行する。
このステップS24では、前述した図10のステップS2と同様に、温度検出値T2に基づいて予め測定していた溶存シリカ濃度が非晶質シリカの溶解度に対して飽和となるpH目標値pH*を算出する。ここで、非晶質シリカの溶解度は予め測定した熱水性状を考慮した化学平衡シミュレータによって計算しておき、非晶質シリカの溶解度が溶存シリカ濃度と等しくなるようなpH目標値pH*を温度の関数式として算出し、この関数式を前記第3メモリ63aに記憶させておき、温度検出値T2を関数式に代入することにより、必要なpH目標値pH*を算出する。関数式を第3メモリ63aに記憶させる代わりに、各温度、各pHにおける関数式の各計算結果(pH目標値pH*)を格納した2次元の表を第3メモリ63aに記憶させておき、この2次元の表から温度検出値T2およびpH検出値pHdにおける計算結果(pH目標値pH*)を読み出しても良い。
次いで、ステップS25に移行して、ステップS24で算出したpH目標値pH*からpH検出値pHdを減算したpH偏差ΔpHを算出し、次いでステップS26に移行して、算出したpH偏差ΔpHに例えばPID演算処理を行ってアルカリ剤注入ポンプ13の吐出流量Faを算出する。
次いで、ステップS27に移行して、ステップS23で算出したキレート剤注入流量FchがステップS25で算出した吐出流量Fa以上であるか否かを判定し、Fch≧Faであるときには、ステップS28に移行して、ステップS23で算出したキレート剤注入流量Fchに基づいてアルカリ性キレート剤注入ポンプ19を制御してから前記ステップS21に戻る。
一方、ステップS27の判定結果が、Fch<FaであるときにはステップS29に移行して、ステップS26で算出した吐出流量Faに基づいてアルカリ性キレート剤注入ポンプ19を制御してから前記ステップS21に戻る。
この第5の実施形態によると、アルカリ性キレート剤を使用しているので、前述した第1及び第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる他、アルカリ性キレート剤を使用することにより、タンク及びポンプを1組省略することができ、構成を簡易化して製作コストを低減することができるとともに、スケール抑制剤の管理も容易とする。
なお、上記第5の実施形態においても、前述した第1の実施形態と同様に、前述した第1の実施形態における図7及び図8と同様に、気水分離器69を設けたり、混合装置70を設けたりすることができる。
また、上記第5の実施形態においても、前述した第2の実施形態と同様にカルシウム濃度の変動が十分少ない場合には、カルシウム濃度計54を省略して、第3メモリ63aに予め計測したカルシウム濃度Ccaを記憶しておくようにしてもよく、さらに温度、カルシウム濃度及びpHの変動が十分に小さい場合には、第1の温度計51、カルシウム濃度計54を省略し、これに代えて第3メモリ63aに前述した(1)式の定数Aを記憶しておけばよい。
また、上記第1〜第5の実施形態においては、本発明によるスケール抑制方法を地熱発電システムに適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、カルシウム及びシリカを含む任意の熱水流体が、温度低下を伴って配管等の流体管路を介して送給される流体送給システムにも本発明を適用することができる。
1 生産井
2 流量調節弁
2’ 流量調節弁
3 1次配管
4 熱交換器(蒸発器)
5 還元井
6 衝動式背圧タービン
7 三相同期発電機
8 凝縮器
9 遠心式ポンプ
10 スケール抑制剤注入部
11 スケール抑制剤ライン
11a キレート剤注入ライン
11b アルカリ剤注入ライン
12 アルカリ剤タンク(水酸化ナトリウム溶液タンク)
13 アルカリ剤注入ポンプ
14 キレート剤タンク(EDTA溶液タンク)
15 キレート剤注入ポンプ
16 2次配管
17 スケール抑制剤注入ポンプ
18 アルカリ性キレート剤タンク
19 アルカリ性キレート剤ポンプ
21 カルシウムイオン
22 キレート剤
23 不活性カルシウムイオン
24 アルカリ剤
25 高pH領域
L1〜L10 試験ライン
T1〜T10 スケール抑制剤タンク
31 スケール抑制剤注入部
32 スタティックミキサ
33 テストピース
34 廃棄ピット
51 第1温度計
52 第2温度計
53 流量計
54 カルシウム濃度計
55 pH計
61 pH制御演算器
61a 第2メモリ
62 キレート剤制御演算器
62a 第1メモリ
63 アルカリ性キレート剤制御演算器
63a 第3メモリ
69 気液分離器
70 混合装置
71 分流部
72 キレート剤
74 アルカリ剤
76 高pH領域

Claims (15)

  1. 生産井出口より下流側の流路を通流するカルシウム及びシリカを含有した流体に前記通路に形成したスケール抑制剤注入部からキレート剤を流量制御しながら注入することにより金属イオンを不活性化する金属イオン不活性化工程と、前記金属イオン不活性化工程と同時に前記スケール抑制剤注入部から前記流体へアルカリ剤を流量制御しながら注入するアルカリ剤注入工程とを設けたことを特徴とするスケール抑制方法。
  2. 請求項1に記載のスケール抑制方法において、前記金属イオン不活性化工程のキレート剤注入流量は、前記流体のカルシウム濃度からカルシウム珪酸塩水和物の溶解度に対して飽和となる飽和カルシウム濃度を引いた値である過飽和カルシウム濃度を、比例定数およびキレート剤濃縮液のキレート剤濃度で割った値に前記流体の流量をかけた値以上にすることを特徴とするスケール抑制方法。
  3. 請求項1または2に記載のスケール抑制方法において、
    前記金属イオン不活性化工程は、
    前記流体の流量を流量計で計測する状態計測ステップと、
    前記状態計測ステップに続いて、前記流体の流量と予め定めた定数とに基づいてキレート剤注入量を計算するキレート剤注入量計算ステップと、
    前記キレート剤注入流量計算ステップに続いて、計算された前記キレート剤注入流量となるようにキレート剤注入ポンプを駆動制御するキレート剤注入ポンプ制御ステップとを備えることを特徴とするスケール抑制方法。
  4. 請求項1または2に記載のスケール抑制方法において、
    前記金属イオン不活性化工程は、
    前記流体の流量,温度,pHを各センサーで測定する状態計測ステップと、
    前記状態計測ステップに続いて、前記温度,前記pHに基づいてカルシウム珪酸塩水和物の飽和濃度に対して飽和となる飽和カルシウム濃度を計算する飽和カルシウム濃度計算ステップと、
    前記飽和カルシウム濃度計算ステップに続いて、前記流体の流量,予め設定したカルシウム濃度,前記飽和カルシウム濃度,前記キレート剤濃縮液のキレート剤濃度に基づいてキレート剤注入流量を計算するキレート剤注入流量計算ステップと、
    前記キレート剤注入流量計算ステップに続いて、計算された前記キレート剤注入流量となるようにキレート剤注入ポンプを駆動制御するキレート剤注入ポンプ制御ステップとを備えることを特徴とするスケール抑制方法。
  5. 請求項1または2に記載のスケール抑制方法において、
    前記金属イオン不活性化工程は、
    前記流体の流量,温度,pH,カルシウム濃度を各センサーで測定する状態計測ステップと、
    前記状態計測ステップに続いて、前記温度,前記pHに基づいてカルシウム珪酸塩水和物の飽和濃度に対して飽和となる飽和カルシウム濃度を計算する飽和カルシウム濃度計算ステップと、
    前記飽和カルシウム濃度計算ステップに続いて、前記流体の流量,計測した前記カルシウム濃度,前記飽和カルシウム濃度,前記キレート剤濃縮液のキレート剤濃度に基づいてキレート剤注入流量を計算するキレート剤注入流量計算ステップと、
    前記キレート剤注入流量計算ステップに続いて、計算された前記キレート剤注入流量となるようにキレート剤注入ポンプを駆動制御するキレート剤注入ポンプ制御ステップとを備えることを特徴とするスケール抑制方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のスケール抑制方法において、
    前記アルカリ剤注入工程で流体のpH値を、前記生産井出口より下流側の流路における流体の飽和非晶質シリカ濃度とシリカ濃度とが同じになるpH値以上に設定することを特徴とするスケール抑制方法。
  7. 請求項6に記載のスケール抑制方法において、
    前記アルカリ剤注入工程の流体のpH値が、25℃換算pH値として8以上になるようにアルカリ剤を注入することを特徴とするスケール抑制方法。
  8. 請求項6に記載のスケール抑制方法において、
    前記アルカリ剤注入工程の流体のpH値が、25℃換算pH値として9.7以上になるようにアルカリ剤を注入することを特徴とするスケール抑制方法。
  9. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載のスケール抑制方法において、
    前記流体を2つ以上に分流する流体分流工程と、前記分流の一方に、前記キレート剤注入工程および前記アルカリ剤注入工程を行った後に、前記一方の分流と他方の分流を混合する混合工程を行うことを特徴とするスケール抑制方法。
  10. カルシウム及びシリカを含有する流体を通流し生産井出口より下流側の流路である1次配管と、
    前記流体より低沸点の媒体と前記1次配管の前記流体とを熱交換させて前記媒体を気化させる蒸発器と、
    気化した前記媒体を通流する2次配管と、
    前記2次配管に接続したタービンと、
    前記タービンに連結した発電機とを備え、
    前記1次配管に形成したスケール抑制剤注入部にキレート剤を流量制御しながら注入するキレート剤注入装置と、前記スケール抑制剤注入部に前記キレート剤と同時にアルカリ剤を流量制御しながら注入するアルカリ剤注入装置とを備えることを特徴とする発電システム。
  11. 請求項10に記載の発電システムにおいて、
    前記キレート剤注入装置は、キレート剤を貯留するキレート剤タンクと、前記キレート剤タンクに貯留されたキレート剤を前記1次配管のスケール抑制剤注入部に供給するキレート剤注入配管と、前記キレート剤注入配管に備えられたキレート剤注入ポンプと、前記蒸発器より上流の前記1次配管に設けられた流量計と、前記流量計の計測値と予め設定された定数とを入力として前記キレート剤の添加量を制御するキレート剤制御演算器と、前記キレート剤制御演算器とデータの授受を行う第1メモリとからなり、
    前記アルカリ剤注入装置は、前記アルカリ剤を貯留するアルカリ剤タンクと、前記アルカリ剤タンクに貯留されたアルカリ剤を前記1次配管のスケール抑制剤注入部に供給するアルカリ剤注入配管と、前記アルカリ剤注入配管に備えられたアルカリ剤注入ポンプと、前記蒸発器より下流側の前記1次配管に第2温度計と、前記pH計と、前記pH計および前記第2温度計の計測値を入力として前記アルカリ剤の添加量を制御するpH制御演算器と、前記pH制御演算器とデータの授受を行う第2メモリとからなることを特徴とする発電システム。
  12. 請求項10に記載の発電システムにおいて、
    前記キレート剤注入装置は、キレート剤を貯留するキレート剤タンクと、前記キレート剤タンクに貯留されたキレート剤を前記1次配管のスケール抑制剤注入部に供給するキレート剤注入配管と、前記キレート剤注入配管に備えられたキレート剤注入ポンプと、前記蒸発器より上流の前記1次配管に設けられた第1温度計、流量計と、前記アルカリ剤が注入される部位より下流側の前記1次配管に設けたpH計と、
    前記第1温度計、前記流量計および前記pH計の計測値と予め設定されたカルシウム濃度を入力として前記キレート剤の添加量を制御するキレート剤制御演算器と、前記キレート剤制御演算器とデータの授受を行う第1メモリとからなり、
    前記アルカリ剤注入装置は、前記アルカリ剤を貯留するアルカリ剤タンクと、前記アルカリ剤タンクに貯留されたアルカリ剤を前記1次配管のスケール抑制剤注入部に供給するアルカリ剤注入配管と、前記アルカリ剤注入配管に備えられたアルカリ剤注入ポンプと、前記蒸発器より下流側の前記1次配管に第2温度計と、前記pH計と、前記pH計および前記第2温度計の計測値を入力として前記アルカリ剤の添加量を制御するpH制御演算器と、前記pH制御演算器とデータの授受を行う第2メモリとからなることを特徴とする発電システム。
  13. 請求項10に記載の発電システムにおいて、
    前記キレート剤注入装置は、キレート剤を貯留するキレート剤タンクと、前記キレート剤タンクに貯留されたキレート剤を前記1次配管のスケール抑制剤注入部に供給するキレート剤注入配管と、前記キレート剤注入配管に備えられたキレート剤注入ポンプと、前記蒸発器より上流の前記1次配管に設けた第1温度計、流量計およびカルシウム濃度計と、前記アルカリ剤が注入される部位より下流側の前記1次配管にpH計と、前記第1温度計、前記流量計、前記カルシウム濃度計および前記pH計の計測値を入力として前記キレート剤の添加量を制御するキレート剤制御演算器と、前記キレート剤制御演算器とデータの授受を行う第1メモリとからなり、
    前記アルカリ剤注入装置は、前記アルカリ剤を貯留するアルカリ剤タンクと、前記アルカリ剤タンクに貯留されたアルカリ剤を前記1次配管のスケール抑制剤注入部に供給するアルカリ剤注入配管と、前記アルカリ剤注入配管に備えられたアルカリ剤注入ポンプと、前記蒸発器より下流側の前記1次配管に設けた第2温度計と、前記pH計と、前記pH計および前記第2温度計の計測値を入力として前記アルカリ剤の添加量を制御するpH制御演算器と、前記pH制御演算器とデータの授受を行う第2メモリとからなることを特徴とする発電システム。
  14. 請求項10乃至13のいずれか1項に記載の発電システムにおいて、
    前記アルカリ剤注入装置より下流側の前記1次配管に、混合装置を備えることを特徴とする発電システム。
  15. 請求項10乃至14のいずれか1項に記載の発電システムにおいて、
    前記蒸発器より上流側の前記1次配管に気液分離器を備えることを特徴とする発電システム。
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