JP5864873B2 - プラスチック成形品の成形方法、プラスチック成形システム、プラスチック成形システムによる光学素子 - Google Patents

プラスチック成形品の成形方法、プラスチック成形システム、プラスチック成形システムによる光学素子 Download PDF

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Description

本発明は、プラスチック成形品の成形方法、プラスチック成形システム、プラスチック成形システムによる光学素子に関する。特に、複数の金型を用いて射出充填及び冷却をそれぞれ別の場所で行う、所謂、ロータリー成形システムと呼ばれているプラスチックの射出成形システムに関するものである。
プラスチックの射出成形においては、通常、射出成形機に金型を取り付け、その金型内に加熱溶融された樹脂を射出し、その樹脂の冷却硬化を待って、金型より取出し、その空になった金型に、次の溶融樹脂を射出するという繰返し工程を行っている。
しかしながら、このようなプロセスで成形する場合には、厚肉のものや高精度が要求されるもの、例えば、光学系におけるプラスチックのレンズ、プリズム、ミラー等は、冷却時間を長くする必要がある。
そのため、樹脂が冷却硬化するまでの長い時間、金型が空かず、射出成形機はその間、次の樹脂の射出に用いることができない。このため、射出成形機の使用効率が悪く、生産性が上がらないという問題が生じる。
このようなことから、特許文献1のように、所謂、ロータリー成形システムと呼ばれているプラスチックの射出成形システムが提案されている。
このシステムでは、複数の金型を用意し、これらを順次、射出成形機に装填して、そこで溶融樹脂を射出し、射出充填された金型を別の場所へ移動し、そこで冷却する。
一方、射出成形機では、直ちに、次に装填された金型に溶融樹脂を射出する。
以下の説明では、このような複数の金型を用いて射出充填及び冷却をそれぞれ別の場所で行うプラスチック成形システムを、ロータリー成形システムと記す。
特開平05−124078号公報
近年、デジタル複写機、プリンタ等の高画質化に伴い、光学素子に要求される精度も高くなり、形状だけでなく複屈折、屈折率分布といった光学特性にも高性能が要求されてきている。
ロータリー成形は高精度な形状の成形品を得られるだけではなく、これらの光学特性についても良好な成形品を短いタクトで得ることができる。
例えば、屈折率分布の良好な成形品を得るためにはガラス転移温度付近での型冷却速度を遅くすることが有効である。
また、複屈折を低減するためには型温度を高くすることが有効である。これら型冷却速度を遅くすることはもちろん、型温度を高くすることは冷却時間が必要となるため成形機の使用効率が低下する。
上記したロータリー成形システムでは、射出充填された型を別の場所に移動させ冷却するため成形機の効率を下げることなく、光学特性の良好な成形品を短いタクトで得ることが可能である。
しかしながら、ロータリー成形システムは、つぎのような課題を有している。
すなわち、形状、光学特性ともに高精度が要求される成形品を短いタクトで生産することができる反面、長い冷却時間と短いタクトに相当する金型数が必要となる。
近年の成形品に求められる高精度化に伴い、金型も高精度な形状が求められ、このような高精度の金型が多数個必要となる。
本発明は、上記課題に鑑み、屈折率分布や複屈折の少ない光学特性を有する高精度な形状の成形品を、面精度の高い高精度な型を多数用いることなく得ることが可能となるプラスチック成形品の成形方法、プラスチック成形システム、該システムによる光学素子の提供を目的とする。
本発明の素子の製造方法は、プラスチック成形品の製造方法であって、第一の型に溶融樹脂を供給し、前記溶融樹脂を供給した前記第一の型に対して圧力をかけながら所定時間冷却する工程と、前記第一の型を前記所定時間冷却している間に、第二の型に溶融樹脂を供給し、前記溶融樹脂を供給した前記第二の型に対して圧力をかけながら所定時間冷却する工程と、前記所定時間冷却した前記第一の型から第一の成形部材を取り出す工程と、前記所定時間冷却した前記第二の型から第二の成形部材を取り出す工程と、前記第一の型および前記第二の型よりも面精度の高い面を有する第三の型の内部に、前記第一の成形部材を設置する工程と、前記設置した前記第一の成形部材の表面のみを溶融し、前記面精度の高い面を前記表面に押し当てる工程と、前記第三の型の内部に、前記第二の成形部材を設置する工程と、前記設置して前記第二の成形部材の表面のみを溶融し、前記面精度の高い面を前記表面に押し当てる工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明の光学素子は、上記素子の製造方法を用いて製造されることを特徴とする。
また、本発明のプラスチック成形システムは、型を昇温させるための昇温ユニットと、前記型に溶融樹脂を供給するための溶融樹脂供給ユニットと、前記溶融樹脂を供給した型に対して、圧力をかけながら所定時間冷却させるための第1のプレス冷却ユニットと、前記所定時間冷却した前記型から成形部材を取り出すための取り出しユニットと、前記昇温ユニット、前記溶融樹脂供給ユニット、前記第1のプレス冷却ユニット及び取り出しユニットに、前記型を、搬送して循環させる搬送ユニットと、前記型よりも面精度の高い面を有する型に、前記成形部材を設置し、前記成形部材の表面のみを溶融し、前記面精度の高い面を前記表面に押し当てるための第2のプレス冷却ユニットと、を有することを特徴とする。
また、本発明の光学素子は、上記プラスチック成形システムを用いて製造されることを特徴とする。
本発明によれば、屈折率分布や複屈折の少ない光学特性を有する高精度な形状の成形品を、高精度の型を多数用いることなく得ることが可能となるプラスチック成形品の成形方法、プラスチック成形システム、該システムによる光学素子を実現することが可能となる。
本発明の第一の実施形態におけるプラスチック成形システムを説明する模式図。 本発明の第一の実施形態のプラスチック成形システムの2次プレス工程における溶融量の説明図。 本発明の第一の実施例におけるプラスチック成形システムを説明する概要図。 本発明の第二の実施形態におけるプラスチック成形システムを説明する模式図。 本発明の第二の実施例におけるプラスチック成形システムを説明する概要図。 本発明の第二の実施例における成形部材の複屈折測定結果を示す図。 本発明の第三の実施形態における切断痕除去工程について説明する模式図。 本発明の第四の実施形態における2次プレス装置の一例を示す模式図。
昇温ユニット、溶融樹脂供給ユニット、第1のプレス冷却ユニット及び成形品の取り出しユニットを備えたロータリー成形システムにおいては、加圧するとともに、温度制御しながら冷却する工程の時間が長く、タクトを短縮するために多数個の型を必要とする。
そこで、本発明のプラスチック成形品の成形方法、および、プラスチック成形システムでは、多数個の型を要する前記工程に所望の形状と近似した面精度の低い型を用いて成形し、得られた成形品の表面層だけを所望の形状を有した高精度の型で再成形する。
具体的には、昇温ユニットで昇温され、溶融樹脂供給ユニットで溶融樹脂が供給された型を、更に搬送ユニットを介して第1のプレス冷却手段、成形品の取り出し手段、昇温ユニットの順に搬送して循環させるようにした上記システムを、つぎのように構成する。
まず、第1のプレス冷却ユニットは、最終的に得ようとする面精度の高い形状と類似したそれよりも面精度の低い型を用いて成形する。
一方、成形品の取り出しユニットから取り出された成形品を再成形するため、前記第1のプレス冷却ユニットとは別の、最終的に得ようとする面精度の高い形状の型を用いて成形する第2のプレス冷却ユニットを構成する。
そして、第2のプレス冷却ユニットによって、第1のプレス冷却機で成形された成形品の表面のみを再溶融し、面精度の高い形状型により圧縮成形することを可能に構成する。
このように、ロータリー成形システムで得られた成形品の表面層だけを、高精度の型で成形することによって、従来のロータリー成形システムと比較して高精度の型の個数を削減し、良好な光学特性を維持した成形品を得ることができる。
また、再成形においては、冷却時間の短い成形が可能となる。
本発明のプラスチック成形品の成形方法、および、プラスチック成形システムは、特に非球面光学レンズ等のように成形精度や表面精度と共に複屈折や屈折率分布などについて高度な光学特性が要求される成形品を工業的量産過程で成形する際に好適なものである。
具体的には、例えば、カメラやビデオカメラをはじめとする撮像機器、もしくは液晶プロジェクタや電子写真機器の光走査装置をはじめとする、投影機器に好適なものである。
以下、図を用いて本発明の実施形態について説明する。
本発明の第一の実施形態であるプラスチック成形品の成形方法、および、プラスチック成形システムを、図1を用いて説明する。
本実施形態は、上記した昇温ユニットの順に搬送して循環させ、プラスチック成形品を成形するプラスチック成形システムにおいて、溶融樹脂供給ユニットを、射出成形機で構成した例について説明する。
本実施形態では、プラスチック成形システムは射出成形機を用いたロータリー成形システムと、所望の形状と近似した面精度の低いロータリー駒を用いて成形した後、表面層だけを高精度の型で所望の形状に再度成形する。
冷却時間が長いロータリー成形システムはタクトを短くするために多くの型数が必要となる。
一方、表面層を再成形する場合においては、光学特性の劣化が表面層のみであるため影響が少なく、早い速度で冷却することが可能となるためタクトを短くすることができる。
そこでロータリー成形システムには面精度の低い型を用い、表面層の再成形には高精度な型を用いることによって高精度の型の個数を削減し、屈折率分布の小さい成形品を得る。
つまり、最終的な面形状(微細な凹凸形状、平面、球面、非球面等の自由曲面等)を形成するための表面形状を有する高精度な型を少なくとも1つ用意する。そして、前記最終的な面形状(微細な凹凸形状、平面、球面、非球面等の自由曲面等)を形成するための表面形状よりも、面精度の低い型を、前記高精度な型1つに対して複数用意する。
本明細書においては、最終的な面形状(微細な凹凸形状、平面、球面、非球面等の自由曲面等)を形成するための表面形状を有する高精度な型を、面精度の高い面を有する型と呼ぶことにする。
また、最終的な面形状(微細な凹凸形状、平面、球面、非球面等の自由曲面等)を形成するための表面形状よりも面精度の低い型を、面精度の高い面より面精度の低い型、あるいは面精度の低い型と呼ぶことにする。
面精度の低い型は、具体的には、目標とする面形状に比べて、20μm以上150μm以下、より好ましくは、20μm以上100μm以下の形状誤差を有する。
また、面精度の高い面を有する型は、面精度の低い型より面精度が高い面を有し、より具体的には、目標とする表面形状に対する形状誤差は、10μm以下、より好ましくは1μm以下である。
面精度の高い面を有する型および面精度の低い型いずれも、表面粗さRaは、100nm以下、より好ましくは10nm以下であることが望ましい。
図1(A)から(F)は本実施形態であるプラスチック成形システムを模式的に示した図である。
それぞれ(A)は型昇温工程、(B)は昇温工程から樹脂の射出工程の型移動工程、(C)は型への樹脂の射出充填工程、(D)は樹脂を充填させた型のプレス機によるプレス冷却工程への移動工程、(E)はプレス機による型のプレス冷却工程である。
また、(F)は冷却された型からの成形品の取り出し工程、(G)は型から取り出された成形品のスプール、ランナー部をカットするゲートカット工程、(H)はゲートカットされた成形品の表面のみ加熱圧縮成形する2次プレス工程である。
型昇温工程(A)は、射出成形の型であり、面精度の高い面より面精度の低い型であるロータリー駒101を昇温させる工程である。
ロータリー駒101は、搬送ローラー102によって自動的に昇温装置103に入る。成形品の形状や使用樹脂の種類、あるいは加工して得ようとする成形品の光学特性に応じ、成形に適した温度までロータリー駒101を昇温する。
使用する樹脂の種類は、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂など一般的な光学用途の樹脂を用いることができる。
また、面精度の低い型であるロータリー駒の材質は、例えば、SUS、超硬、ガラスなど一般的な型材を用いることができるが、成形時の圧力と温度に耐久性があれば他の材質を用いても良い。
用いられるロータリー駒101は所望とする形状まで加工する必要はなく、後の2次プレス工程(H)において所望の面が形成可能な範囲であれば良い。
そのため、最終的な面形状が自由曲面や面精度の高い面を所望するものであったとしても、2次プレス工程(H)で所望の面が形成可能な範囲で面形状が外れたものであっても良く、そのため面精度の高い面でなくても良い。
ここで、図2を用いて2次プレス工程(H)で所望の面における形成可能な範囲について説明する。
プレス方向201に対して、所望の面202の形状と近似した型による成形品の面の形状における面−面間の最大距離204が、プレス方向201に対する溶融量205以下であれば良い。
このような場合に、2次プレス工程(H)において高精度な面を成形することが可能である。
また、2次プレス工程(H)での再溶融は、溶融量に応じてプレス冷却工程(E)で得た、屈折率分布、複屈折を悪化させる。
そのため、2次プレス工程(H)での溶融量と(A)から(F)の工程に用いられるロータリー駒の面形状の精度は所望とする光学特性に応じて適宜設定すればよい。
型移動工程(B)は、昇温工程(A)から射出充填工程(C)へのロータリー駒101を移動させる工程である。
昇温工程を経たロータリー駒101は、射出成形機の固定プラテン104に取り付けられた成形機取り付けダイセット105に挿入され、射出充填可能な位置にセットされる。
また、射出充填工程(C)は、射出成形機によるロータリー駒101へ樹脂を充填する工程である。
型移動工程(B)で成形機取り付けダイセット105に組み込まれたロータリー駒101は、本工程では可動プラテン107により例えば数十トンの型締め力がかけられた状態で、射出シリンダー106より樹脂をそのキャビティー部108に射出充填される。
その際、ロータリー駒101は成形機取り付けダイセット105によって、樹脂充填に必要な温度に調整され、射出充填工程におけるロータリー駒101の温度バランスが保たれる。
移動工程(D)は、射出充填工程(C)から再プレス冷却工程(E)へ、ロータリー駒101を移動させる工程である。
工程(C)で樹脂を射出充填させたロータリー駒101は、キャビティー108に成形品である樹脂を保持したまま成形機取り付けダイセット105から取り出される。
その際、圧力を開放された状態で搬送ローラー102上を移動し、プレス冷却機に取り付けられたプレス冷却ダイセット109に組み込まれる。
プレス冷却工程(E)は、プレス冷却機によるロータリー駒101のプレス冷却工程である。
工程(D)でプレス冷却ダイセット109に組み込まれたロータリー駒101は、本工程でプレスシリンダー110により圧縮圧力を加えられる。
このとき、加圧されると同時にプレス冷却ダイセット109によって温度制御されつつ冷却され、該冷却によって生じるロータリー駒101内の樹脂の冷却固化により、ロータリー駒101内に成形品111が形成される。
この際、冷却固化状態は、ロータリー駒101の内部に組み込まれた圧力センサ及び温度センサによって計測される圧力と温度勾配に基づいて、プレス冷却ダイセット109に加える圧縮圧力及び温度の制御を行う。
このように、冷却時の温度勾配と圧力を制御することによって成形品111の充填時に発生する応力による複屈折、冷却時に発生する収縮及び内部応力歪により発生する屈折率分布を抑えることができる。そして、光学特性の優れた所望の形状と近似した成形品を得ることができる。
レンズの形状や材質などにもよるがこのときの冷却速度としては10℃/min以下で冷却することによって、屈折率分布、複屈折を低減することが可能となる。
成形品の取り出し工程(F)は、成形品を取り出す工程である。
工程(E)で冷却されたロータリー駒101内の成形品111は、プレス機でロータリー駒101のパーティングを開かれる。
その後、プレス機に設けられた成形品突き出し用シリンダー112によりロータリー駒101から離型される。工程(F)で成形品111が取り出されたロータリー駒101は、再度パーティングが閉じられ、上記(A)から(F)の工程に戻される。
なお、上記実施形態においては、説明を簡略化するために1つのロータリー駒のみの動きを示したが、実際には複数の駒が、上記(A)から(F)の工程を順次巡回している。
また、ロータリー駒101の昇温工程(A)を射出成形機で行うことも可能であるが、成形時間を短縮するためには、本実施形態のように射出成形機とは別に設けることが好ましい。
ゲートカット工程(G)は、工程(F)より取り出された成形品をゲートカットする工程である。
射出成形で成形された成形品111には必要なレンズとなる成形部材113以外にスプール114、ランナー115、ゲート116から構成されておりゲート116で切断することによって必要な成形部材を取り出す。
ゲートカット工程にはゲート切断装置が設置されている。ゲート切断装置は使用樹脂によって切断カッター117の温度を適宜設定できるようになっている。
切断カッター117は上下に1本づつ配置されており、その間にゲート116が位置するように固定され切断される。
2次プレス工程(H)は、2次プレスする工程であり、2次プレスダイセット118に所望の面精度の高い面を有する型である、面精度の高い面上駒119、面精度の高い面下駒120が設けられている。
面精度の高い面上駒、面精度の高い面下駒の材質は、例えばSUS、超硬、ガラスなど一般的な型材を用いることができるが、成形時の圧力と温度に耐久性があれば他の材質を用いても良い。
また、前記した型材の所望の面には、ニッケルメッキや銅メッキなどの加工層を施すことによって、所望の面精度への加工性を向上させたものや、成形時の離型性を向上させたものを用いることができる。
面精度の高い面下駒120はプレスシリンダー121により上下し、成形部材113が設置される際には退避している。
ゲートカット工程(G)で取り出された成形部材113は、2次プレスダイセット118上に設置された後、位置決め機構122が型内にスライドしてくることにより位置を決められる。
成形部材113の位置が決められた後、位置決め機構122は退避し型締めシリンダー123により型締めされる。
成形部材113は所望の面形状を形成するために、表面を加熱し、圧縮圧力をかけることによって所望の面形状を形成する。表面を加熱することにより、表面のみを溶融する。この表面とは、具体的には、表面から約100μm以下であることが好ましい。
表面のみを溶融することによって、プレス冷却工程(E)において得られた複屈折、屈折率分布の変化を表面の溶融した層のみに抑えることができ、全体として複屈折、屈折率分布の少ない所望の形状を有した成形品を得ることができる。
そのため、2次プレス工程(H)では屈折率分布や複屈折の変化に因らず冷却速度を早くすることができる。
また、溶融した表面層のみを冷却すれば良いため冷却すべき熱容量を小さくすることができるため、冷却時間を短くすることができる。
レンズの形状、材質などにもよるがこのときの冷却速度としては40℃/min以上で冷却することが可能である。
このように、2次プレス工程(H)での冷却時間を、プレス冷却工程(E)の冷却時間よりも短く設定することができる。
そのため、プレス冷却工程で高精度な複数の型を用意する従来のロータリー成形と比較して、少ない個数で所望の面形状を有し、屈折率分布の小さい成形品が得られる。
本発明の第二の実施形態におけるプラスチック成形システムを、図4(A)〜(F)を用いて説明する。
本実施形態は、上記した昇温ユニットの順に搬送して循環させ、プラスチック成形品を成形するプラスチック成形システムにおいて、溶融樹脂供給ユニットを、下型に可塑化溶融樹脂を吐出する吐出装置で構成した例について説明する。
本実施形態のプラスチック成形システムにおいては、プレス成形を用いたロータリー成形システムと、面精度の高い面より面精度の低い型であるロータリー駒を用いて成形した後、表面層だけを再度、面精度の高い面を有する高精度の型で所望の形状に成形する。
本実施形態では、第一の実施形態での効果は当然ながら、冷却プレス工程において高い温度でプレスを開始することが可能となり、第一の実施形態より複屈折の小さい成形品を得るものである。
図4の(A)から(F)は本実施形態であるプラスチック成形システムを模式的に示した図である。
それぞれ(A)は型加熱工程、(B)は下型への吐出工程、(C)は吐出された樹脂の切断工程、(D)は樹脂が吐出された下型のプレス機への投入工程である。
また、(E)はプレス成形機によるプレス冷却工程、(F)は(E)工程で成形された成形品の表面のみを加熱し、圧縮成形する2次プレス工程である。
型加熱工程(A)は、型となるロータリー下駒(下型)401を昇温させる工程である。
ロータリー下駒401は、搬送ロボットによって搬送され、加熱ステーション402に設置され加熱される。
第一の実施形態と同様に用いられるロータリー下駒401は所望とする形状に加工する必要はなく、後の2次プレス工程(F)で所望の面が形成可能な範囲であれば良い。
そのため、最終的な面形状が自由曲面や面精度の高い面を所望するものであったとしても、2次プレス工程(F)で所望の面が形成可能な範囲で面形状が外れたものであっても良く、そのため面精度の高い面でなくても良い。
このため面精度の高い面を有する複数個の型を用いる必要が無く、型の加工コストを減少することが可能となる。
また、ロータリー駒下401の加熱は後の吐出工程(B)で樹脂を引き伸ばす際に型と樹脂の密着力を得るためである。
このときの型温度としては、型と樹脂の密着力を得られれば良く樹脂のガラス転移点(Tg)よりも10℃以上高い(用いる樹脂のガラス転移温度よりも10℃以上高い)ことが好ましい。
吐出工程(B)は、昇温工程(A)で加熱されたロータリー下駒401へ吐出装置404を用いて樹脂を吐出する工程である。
加熱ステーション402より加熱ヒーターを持つハンド403を搭載したロボットが吐出装置404下までロータリー下駒401を搬送する。
ハンド403の持つ加熱ヒーターは搬送中加熱したロータリー下駒401の温度を維持するためである。
搬送後、ロータリー下駒401上に吐出装置404で可塑化溶融された樹脂405が吐出される。
樹脂の切断工程(C)は、吐出された樹脂405を吐出装置404から切り離し樹脂を切断するための工程である。
吐出装置404下に取り付けられた刃406が閉じることによって樹脂が吐出装置404から切断される。
投入工程(D)は、吐出された樹脂405を載せたロータリー下駒401をプレス冷却機へ投入する工程である。
ロータリー下駒401はプレス冷却機の下型407に投入される。下型407とロータリー下駒401は勘合により位置決めを行う。
下型407にはロータリー下駒401と勘合するための呼び込みを形成し、ロボットハンド403がロータリー下駒401を保持しながら下型407上に移動した後ハンド403を開き投下される。
この時ロータリー下駒401は呼び込まれ勘合される。その後ロボットハンド403は退避する。
プレス冷却工程(E)は、投入工程(D)で組み込まれた樹脂405を載せたロータリー下駒401と予め取り付けられた上駒408により樹脂405を成形するプレス冷却工程である。
このロータリー下駒401(下型)は、プレス冷却工程におけるプレス冷却ユニット(第1のプレス冷却ユニット)に備えられている上駒408(上型)と組合せ可能に構成されている。樹脂405を載せたロータリー下駒401とガイド409に取り付けられた上胴型410がシリンダー411によって型締めされる。上胴型410内のプレス軸412にはあらかじめ上駒408が取り付けられており、プレス用シリンダー412によって上駒408に圧縮圧力をかけることによって樹脂を成形する。
このとき上胴型、下型にはヒーターと冷却機構が取り付けられており、所望の温度で加熱、冷却が可能となっている。
投入された樹脂405は加圧すると共に、上胴型410、下型407によって温度制御されつつ冷却され、該冷却によって生じるキャビティー内の樹脂の冷却固化により成形品が形成される。
この際、冷却固化状態は、予め校正されたシリンダー圧力とロータリー駒の内部に組み込まれた温度センサによって計測される温度勾配に基づいて、上駒408の圧縮圧力及び温度の制御を行う。
このように、冷却時の温度勾配と圧力を制御することによって成形品の充填時に発生する応力による複屈折、冷却時に発生する収縮及び内部応力歪により発生する屈折率分布を抑えることができ、光学特性の優れた所望の形状と近似した成形品を得ることができる。
レンズの形状や材質などにもよるがこのときの冷却速度としては10℃/min以下で冷却することによって、屈折率分布を低減することが可能となる。
また、複屈折の低減においては高いプレス温度で成形することが有効である。複屈折は、充填やプレス時に発生する応力が分子を配向させ発生することが知られている。
そのためプレス時の温度を高くすることは、樹脂の粘弾性を下げ、プレス時に発生する応力を小さくすることができる。
また、樹脂の粘弾性が小さいことによって配向した分子が緩和しやすい。このためプレス開始温度は高いことが望ましく、成形による複屈折を低減するためにはガラス転移点(Tg)より50℃以上高い温度で成形することによって成形により発生する複屈折をほぼ無くすことができる。
第一の実施形態である射出成形ロータリー駒を用いた場合においては、樹種の充填口が必要であり開口している。
そのため、多くの樹脂においてはガラス転移点(Tg)以上でプレスを行った場合、充填口から樹脂が漏れ、ロータリー駒に張り付き、不良の原因となるだけでなく、漏れにより圧力がかかりにくいという問題が発生する。
本実施形態では、プレス成形を用い上下のロータリー駒と胴によって樹脂が密閉されるため、漏れることがなくプレス開始温度を高くすることができる。
一方で高いプレス温度は長い冷却時間を必要とするため、所望する光学特性に応じて適宜決定すればよい。
2次プレス工程(F)は、2次プレス工程であり、第一の実施形態と同様の構成となっている。
本実施形態では第一の実施形態と比較してプレス冷却工程(E)において胴型による圧縮成形を用いているため、プレス温度を高くすることが可能となり、複屈折の小さい成形品を得ることができる。
また、ランナー、スプールといった余分な部材が無く、またゲートをカットするといった工程が不要である。
また、下駒のみを移動させるため射出成形型を移動させるのと比較して簡易的で小型の搬送装置を用いることが可能となる。
本発明の第三の実施形態における切断痕除去工程について、図7(A)〜(D)を用いて説明する。
本実施形態の製造方法は第二の実施形態の製造方法と重複する点が多いので、以下の説明では、重複する点についての説明は省略し、本実施形態の製造方法が第二の実施形態のプラスチック成形システムと異なる点のみを説明する。
第三の実施形態では上型と下型のロータリー駒にガラス成形品(ガラスの型)を用い、第二の実施形態における切断工程(D)の後に切断痕除去工程を有している。
本実施形態では第二の実施形態と同様にプレス成形を用いているため型構成が単純化するため、上下のロータリー駒にガラス成形によるロータリー駒を用いることができる。
ガラス成形により製造されたロータリー駒を用いることは本発明のロータリー成形システムのように多くのロータリー駒を用いる場合、金属製の駒と比べても簡易的に製造できる点から好ましい。
本実施形態でロータリー駒にかけられる温度は270℃であるため、一般的に市販されている成形用のガラスであればガラス転移点が350℃以上であるため、本実施形態で使用するうえではこの温度を上回ることはない。
本実施形態でのガラス成形のロータリー駒の取扱は第二の実施形態と同様に用いられる。
図7(A)〜(D)に示すように、第二の実施形態と同様に切断工程から搬送された切断痕を有する樹脂701を載せたロータリー下駒702は(図7(A))、上下動ステージ703上に設置される(図7(B))。
上下動ステージ703にはヒーターが設定されており、駒底面の温度低下を抑制する。
更に、上下動ステージ703の上には、赤外線の照射ユニットとして赤外線ランプ704が設置されており、ロータリー下駒702が上下動ステージ703に設置された後、上昇し(図7(C))、切断痕を有する樹脂が加熱される。
加熱された樹脂の切断痕は溶融しながら収縮し、楕円状態の溶融樹脂705を得る(図7(D))。
切断工程で残された切断痕は、プレス時に折りたたまれプレス冷却工程での溶融が十分でないとウェルドラインが発生する。
型温度が十分高く、加熱時間を長く設けられる場合においてはこの切断痕は溶融され成形品に影響を及ぼさない。
しかしながら、冷却速度を早くすることによってタクトの短縮を行う場合においては、予め樹脂を溶融しておくことによって、ウェルドのない成形品を得ることが可能となる。
また、このようなウェルドは形状に観測されなくとも複屈折などの光学特性に影響するため、本実施形態のように切断痕を除去する工程を有することが好ましい。
本発明の第四の実施形態における2次プレス装置の構成例について説明する。本実施形態の製造方法は第三の実施形態の製造方法と重複する点が多いので、以下の説明では、重複する点についての説明は省略し、本実施形態の製造方法が第三の実施形態の製造方法と異なる点のみを説明する。
本実施形態では2次プレス工程でランプ加熱を用いた2次プレス装置を用いている以外は第三の実施形態と同様である。
図8に示すように、本実施形態の2次プレス装置には2次プレスダイセット801に所望の形状を有する面精度の高い面を有する型には、石英製の上駒802、下駒803が設けられている。
上駒802にはプレスシリンダー804により上下し成形部材805に圧縮圧力をかける。
前工程であるプレス冷却工程より取り出された成形部材805はハンドリングロボットにより2次プレスダイセット801に組み込まれた下駒上に設置された後、位置決め機構806が型内にスライドしてくることにより位置を決められる。成形部材805の位置が決められた後、位置決め機構806は退避し、プレスシリンダー804により加圧され、面精度の高い面を有する型の面精度の高い面を、成形部材に押し当てる。
加熱源としては上下駒の裏面に配置された中赤外のランプ807を用いる。この際ランプの点灯に時間を要するため、シャッター808などにより、照射のON・OFFを切り替えることが望ましい。
シャッター808を開けることによって成形部材804は赤外線が照射され加熱される。中赤外の波長は成形部材である樹脂吸収効率の良い波長であり、表面近傍では良く赤外線を吸収される。
その結果深さ方向で減衰するため表面のみを溶融するには好適である。
また、ランプでの加熱は接触の熱伝導でないため、昇温速度が早く、成形部材の形状による溶融量の差が小さいことも良い。
プレスを開始すると共に、シャッター808が開かれ成形部材804は所望の面形状に形成される。ランプ加熱であるため昇温速度が速く成形部材の表面は数秒から数十秒程度で所望の温度に到達する。
また、転写面付近の樹脂は赤外線を吸収するため、樹脂は昇温して粘性が低下するが、型は赤外線を透過するためほとんど昇温せず、冷却に時間を有しないためタクトを短縮することができる。
レンズの形状、材質などにもよるがこのときの冷却速度としては100℃/min以上で冷却することが可能である。
本実施形態では表面のみを溶融するための赤外ランプを用いているため本工程に求められる型の材質としては、中赤外を透過する、セレン亜鉛、サファイア、石英などの赤外線用ガラスなどが挙げられる。
これらの中でも石英は加工しやすい材料であるという点で好ましい。石英は組成によって透過する波長が異なり成形する材料の吸収により適宜選択される。
その中でも無水石英は透過波長領域が広いためより好適である。
樹脂の大きな吸収波長領域は2600nm以上に存在する。石英の組成に水酸基を含んでいると樹脂材料の吸収効率が良い2600nm以上の波長領域に吸収を持つため、加熱効率が低下してしまう。
無水石英では、この水酸基がより少なく2600nm以上の波長領域に対しても十分な透過率を得ることができる。
以下に、本発明の実施例について説明する。
第一の実施例として、図3を用いて上記第一の実施形態の各工程(A)から(H)を順次行うことが可能な成形システムの構成例について説明する。
本実施例では射出充填工程におけるタクトを60秒に設定したロータリー成形システムについて説明する。
図3は本第一の実施例のロータリー成形システム概要図である。
本実施例では外径9mm、中心肉厚3mmの両凸レンズを製作した。成形材料としてはポリオレフィン樹脂(ZeonexE48R:日本ゼオン(株)製)を用いた。ポリオレフィン樹脂を射出成形機301のホッパーに投入し、本装置にて可塑化溶融させた。
可塑化温度は270℃とした。ロータリー駒302には射出充填するためのスプール、ランナー、ゲートが構成されておりゲートの先には本実施例で成形する両凸レンズ形状のキャビティーが1箇所設けた。
本実施例ではキャビティーは1箇所のみ設けたが特に制約はない。
本実施例で用いたロータリー駒302は、面精度の必要がないため切削加工のみで加工した。
ロータリー駒には、SUSのベース上にNi−Pメッキを施し、このメッキ層を切削加工したものを用いた。
ロータリー駒302のパーティングラインは成形するレンズの側面と平行に設けており、スプールはパーティングラインに対して直角方向に配置した。
本実施例では冷却工程におけるプレス方向はパーティングラインに対して垂直方向に行なった。
そのため通常の射出成形機は横型であるが、プレス工程でロータリー駒の方向変換を省くため、本装置では縦型の射出成形機を用いてロータリー駒302への充填を行なった。
まず、ロータリー駒302を昇温工程である昇温装置303に入れた。昇温装置303に入れたロータリー駒302を、120℃に加熱した。
本実施例でのロータリー駒302が、120℃に加熱されるまでに2分必要であったため、射出充填工程のタクトに相当する2個の昇温装置303を設けた。
1タクト分作業時間をずらした状態で、一方の装置で型の昇温を行っている最中に、他方の装置でも同様に他のロータリー駒302の昇温が行うことができるよう構成した。
昇温工程と射出充填工程等、各工程の間はロータリー駒搬送路304で接続されており、ロータリー駒搬送方向に並べられたコロ305が内蔵した駆動源により回転されるように構成し、ロータリー駒302を搬送した。
120℃に加熱されたロータリー駒302を搬送路304で移送し、射出成形機内のダイセットに挿入し型締めした。型締めしたロータリー駒302に270℃の樹脂を射出した。
その後、ロータリー駒302を一定時間保圧し、ダイセットの型開を行なった後、搬出した。この間のタクトを60秒と設定した。
搬出したロータリー駒302をプレス冷却工程へと搬送路304によって移送した。
プレス冷却工程においては、8つのプレス冷却装置306を用いた。各プレス冷却装置306は、所定距離離れた状態で並設した。
各装置へはガイドレール307及びその上を移動するロータリー駒供給搬出装置308によって構成し、空いている装置へとロータリー駒302を供給した。ロータリー駒302が供給されると上下の温度調整部材が移動して、ロータリー駒302を加圧し、プレス冷却ダイセット内を流れる冷媒によってロータリー駒302を冷却した。
これにより、成形品の冷却時に発生する内部応力歪みを最小限に抑えつつ、効率よく成形品の冷却を行うことができた。
本実施例では冷却工程においてキャビティーが120℃付近から80℃に到達するまで冷却した。ロータリー駒302を所定時間冷却し、プレス冷却ダイセットを開きロータリー駒302を搬出した。
本実施例ではロータリー駒302の供給から搬出までの時間は480秒となるように設定した。
仮に、本実施例にあるロータリー成形機に所望の形状(面精度の高い面)を有する型を搭載した場合、8セットの面精度の高い面を有する型が必要となる。
ロータリー駒供給排出装置308が移動させ、成形品取り出し装置309の前で型を開き、ハンドリングロボット310により成形品をロータリー駒302より取り出した。取り出された後のロータリー駒302は、型締めされ昇温工程へ移行し、昇温装置303へと搬送した。
ハンドリングロボット310により取り出された成形品をゲートカット工程に搬送した。ゲートカット工程にはゲート切断装置311が設置され、ゲート切断装置311は使用樹脂によって切断カッター部の温度を適宜設定できるようになっており、本実施例では200℃に設定した。切断カッターは上下に1本づつ配置されており、その間にゲート部が位置するように固定し切断した。
ロータリー駒302から取り出された成形品の面形状を計測した所、所望の面形状との面−面間最大距離が0.1mmであった。
ゲートカットされた成形部材は、成形品取り出し装置310で2次プレス工程へ搬送した。2次プレス工程の2次プレス装置312には210℃に設定した所望の面形状を有した高精度な面を有する型である駒を上下それぞれに設置した。
面精度の高い面を有する型である駒の材質は、SUSのベース上にNi−Pメッキを施し、このメッキ層を切削加工したものを用いた。
成形品取り出し装置310により下型上に成形部材を設置した。
このとき、加圧を開始するまで成形部材が加熱されないようにするため、予め下型の駒は後退させておいた。
2次プレス装置の位置決め装置により下型上に設置した成形部材の位置決めを行った後、型を閉じた。
下型の駒は型が閉じると同時に成形部材に接触するように前進させ加圧を開始させた。この際、下型の駒に内蔵してある圧力センサによって荷重を計測しており、荷重が懸かり始めた位置から下型駒を0.4mm前進させた位置まで移動させた。
このときの駒へは20kgfの荷重を与えた。210℃に加熱された駒と接触した成形部材の部位は表面温度が上昇し軟化温度に到達しながら潰れた。
潰れながら周囲に接触面が広がって行き、成形部材全面が面精度の高い面を有する駒(所望の形状をした型)と接触した。
本実施例では、近似した成形品と所望の形状との面−面間最大距離が0.1mmであったため、レンズの表面を上下面ともに最大0.2mmの厚みの溶融と加圧を行うべく、型締め状態から下型の駒を0.4mm前進させた状態で10秒間保持した。その後、駒を120℃に50℃/minで冷却を行った。
上下の駒の温度が120℃になった時点で、下型の駒を後退させ、型を開き、レンズ成形品を型より離型し、光学素子を得た。
本実施例では、レンズの投入から取り出しまでを120秒間に設定した。そのため本実施例では2次プレス工程に2台の2次プレス装置312を設置した。
本実施例によれば、ロータリー成形のみの場合は8セットの面精度の高い面を有する型が必要であるのに対して、2次プレス工程に設置してある2台の2次プレス装置にのみ面精度の高い面を有する型を搭載すれば良い。よって、面精度の高い面を有する型の個数を削減することができた。また、本実施例で得た光学素子の形状は所望形状に得られていた。
屈折率分布を測定した結果、1.2×10−4の光学素子を得ることができた。ここでの屈折率分布とは、レンズ中心部における厚み方向の屈折率の最大値と最小値の差を意味している。
比較例では、一般的な射出成形を用い、タクトを150秒に設定しレンズを製作した。本比較例では、外径9mm、中心肉厚3mmの両凸レンズを作製した。成形材料としては、非晶質ポリオレフィン樹脂(ZeonexE48R:日本ゼオン(株)製)を用いた。
可塑化温度270℃、型温130℃、冷却120秒で成形を行い、本比較例の成形品を得た。
成形された本比較例の成形品について屈折率分布及び複屈折を測定した結果、屈折率分布2.9×10−4、複屈折はレンズ中心8mmの面内における最大値が150nmであった。
本発明の第一の実施例における光学素子屈折率分布は、上記したとおり1.2×10−4であり、このように第一の実施例によれば本比較例で作製したポリオレフィン樹脂の射出成形品と比較して、屈折率分布の小さい光学素子を得ることが可能となった。
第二の実施例として、図5を用いて 上記第二の実施形態の各工程(A)から(F)を順次行うことが可能な成形システムの構成例について説明する。
本実施例ではプレス成形を用い、タクトを60秒に設定したロータリー成形システムについて説明する。
図5は本実施例のロータリー成形システム概要図である。
本実施例で製作するレンズは実施例1と同じ外径9mm、中心肉厚3mmの両凸レンズとした。
成形材料としては非晶質ポリオレフィン樹脂(ZeonexE48R:日本ゼオン(株)製)を用いた。
プレス成形に用いる型は、上下のロータリー駒と胴型及び位置決めを行う下型から構成した。
搬送されるロータリー駒は下駒のみであり、上駒と胴型及び下型はプレス冷却ステーションに設置してあるプレス冷却機に予め設置した。本実施例で用いるロータリー駒は第一の実施例と同様に、面精度が必要ないため切削加工のみで加工した。
ロータリー駒の材質は、SUSのベース上にNi−Pメッキを施し、このメッキ層を切削加工したものを用いた。
非晶質ポリオレフィン樹脂を吐出装置501のホッパーに投入し、本装置にて可塑化溶融させた。可塑化温度は250℃であり、ノズル先端温度は250℃であった。
吐出装置501は汎用のインラインスクリュー式射出成形機の可塑化溶融機構と同じ構成となっており間欠で計量と吐出を繰り返すことが可能であった。
まず、ロータリー駒502は昇温工程である昇温装置503に置いた。昇温装置503に置かれたロータリー駒502は、170℃に加熱した。
本実施例でのロータリー駒502が170℃に加熱されるまでに2分必要であったため、吐出工程のタクトに相当する2個の昇温装置503を設けた。
1タクト分、作業時間をずらした状態で、一方の装置でロータリー駒502の昇温を行っている最中に、他方の装置でも同様に他のロータリー駒の昇温が行うことができるよう構成した。
搬送には2軸ロボット504を用い、ピニオンラックを用いたハンド505の開閉によりロータリー下駒502を保持した。
また、ハンド505にはヒーターが搭載され、270℃に加熱しており、ハンド505には樹脂の酸化劣化防止のために170℃に加熱した窒素を供給し、窒素雰囲気を形成した。
これにより、ロータリー駒を窒素雰囲気で搬送可能に構成することができた。
ノズル先端の先には刃物を搭載した切断装置506が設置されており、エアーシリンダーにてガイド上に設置された刃物を開閉し吐出した樹脂を切断し、吐出装置501から切り離した。
昇温装置503により加熱されたロータリー下駒502をロボット504で吐出装置501のノズル先端位置に搬送した。
吐出装置501にて0.1gの樹脂を吐出するとともにロータリー駒502を降下させ、吐出される樹脂がロータリー駒502の形状調整を行った。
具体的には、後のプレス冷却工程においてロータリー下駒と胴型が型締めされる際に樹脂が型締めされる面に挟まらないように吐出される樹脂の外径の調整を行った。
ロータリー駒の降下により引き伸ばされた樹脂を切断装置(不図示)により切断し、可塑化溶融された樹脂を載せたロータリー下駒を得た。
ロボット504により溶融した樹脂を載せたロータリー下駒をプレス冷却装置506へ移動した。
プレス冷却装置506は胴型と下型及びプレス軸からなり、それぞれはエアーシリンダーにより接続され上下し、型締め、プレスを行った。
本実施例では、同じプレス冷却装置506がロータリーインデックス507上に9台設置されており、順次搬送されたロータリー下駒に対してプレス冷却を行った。
搬送された樹脂を載せたロータリー下駒は下型上まで移動し、ハンド505を開けることによって投入した。
下型にはロータリー下駒の位置を決める勘合を形成し、勘合に対して呼び込みを形成した。
投入されたロータリー下駒は勘合に投入され位置決めされた後、胴型がシリンダーにより降下し型締めを行った。この際胴型及び下型にはヒーターが設置されており、本実施例では190℃、180℃、170℃、150℃にそれぞれ設定した条件で成形を行った。
胴型内部にはプレス軸と上駒が設置した。型締めが行われた後、プレス軸がシリンダーにより降下し、上駒とロータリー下駒の間の樹脂に20kgfの圧力をかけ成形した。
本実施例では吐出した樹脂を切断した痕が残っているため各温度で60秒間保持した後、エアーを用いて10℃/minの冷却速度で冷却を行った。
冷却時の圧力は離型するまで一定であり、120℃まで冷却した後、胴型を開け、所望の形状と近似した成形品をハンドリングロボット508により取り出した。
ロータリー駒供給から成形品の搬出までの時間は540秒となるように設定した。
仮に、本実施例にあるロータリー成形機に所望の形状を有する面精度の高い面を有する型を搭載した場合、9セットの面精度の高い面を有する型が必要であった。
また、ハンドリングロボットにより取り出された成形品の面形状を計測した所、所望の面形状との面−面間最大距離が0.1mmであった。
また、型温度の違う本実施例の成形部材の複屈折を測定した結果を図6に示した。型温度が高くなるにつれ複屈折の低下が観測された。
各型温度で成形され取り出した成形品は第一の実施例と同様に2次プレス装置510によって成形した。
その際、駒の温度は210℃に設定し、レンズの表面を上下面ともに最大0.2mmの厚みの溶融と加圧を行い本実施例の光学素子を得た。
本実施例によればロータリー成形のみの場合は9セットの高精度の型が必要であるのに対して2次プレス工程での2台のプレス装置にのみ高精度の型を搭載すれば良いため高精度な型の個数を削減することができた。
また、本実施例で得た光学素子の形状は所望形状に得られており、比較例で作製したポリオレフィン樹脂の成形品と比較して、屈折率分布の小さい光学素子を得ることができた。さらには1次プレス工程における型温度を高くすることが可能であるため複屈折の小さい光学素子を得ることができた。
第三の実施例として、上記第三の実施形態を適用した構成例について説明する。
具体的には、第二の実施例のロータリー駒にガラス成形品を用い、吐出工程とプレス工程の間に切断痕除去工程を設置した例について説明する。
本実施例は第二の実施例と重複する点が多いので、以下の説明では、重複する点についての説明は省略し、本実施例と第二の実施例が異なる点のみを説明する。第二の実施例と同様に、加熱ステーションで予め加熱されたロータリー下駒上に樹脂を吐出し、切断した樹脂を搭載したガラス成形によるロータリー下駒を搬送ロボットにより溶融ステーションへと移動させた。
溶融ステーションでは200Wの中赤外のランプが設置した。
切断された樹脂を載せたロータリー下駒は加熱ステーションの上昇とともに中赤外のランプに近づき、樹脂の切断された部位は加熱されて楕円球状に溶融された。溶融した樹脂を載せたロータリー下駒をプレス冷却装置へと移動させる。本実施例では溶融ステーションからプレス冷却装置への移動まで60秒で設定した。
本実施例では、切断痕が無く、表面が溶融しているため型温度で保持する必要が無く、プレス開始とともに冷却を行うことができた。
型温を190℃に設定しプレスを開始した、プレス荷重は20kgfであり、10℃/minで冷却を行った。
冷却時の圧力は離型するまで一定であり、120℃まで冷却した後、胴型を開け、所望の形状と近似した成形品をハンドリングロボットにより取り出した。
ロータリー駒供給から成形品の搬出までの時間は480秒となるように設定した。そのためロータリーインデックスには8台のプレス冷却装置を設置した。
取り出した成形品を第二の実施例と同様の方法で2次プレスを行い本実施例の成形品を得た。本実施例では溶融ステーションを設けているため1次プレスでの工程を短くすることができるため装置を簡素化できた。
また、ガラスを用いても第二の実施例と同様に成形品を得ることができ、簡易的にロータリー駒を製造することが可能となった。
第四の実施例として、上記第四の実施形態を適用した構成例について説明する。具体的には、第三の実施例の2次プレス工程において、石英型と赤外ランプ加熱により成形を行った例について説明する。
本実施例は第三の実施例と重複する点が多いので、以下の説明では、重複する点についての説明は省略し、本実施例と第三の実施例が異なる点のみを説明する。第三の実施例と同様にプレス冷却工程で得た成形部材を本実施例の赤外ランプ加熱を用いた2次プレス成形装置に設置した。
所望の形状をした無水石英基(ED−B:東ソークォーツ製)を上下の駒として用いた。位置出しを行った後、ランプシャッターを開け10秒間照射したと同時に、プレス荷重が20kgfで40秒間加圧を行った。
加圧中は、加圧開始10秒間は連続でランプを照射し続け、残りの40秒間はランプシャッターを閉じて冷却を行った。冷却終了後取り出し本実施例の成形品を得た。
本実施例によれば、ロータリー成形のみの場合は8セットの面精度の高い面を有する型が必要であるのに対して2次プレス工程で1台のプレス装置にのみ面精度の高い面を有する石英型を搭載すれば良いため、高精度な型の個数を削減することができた。
また、本実施例で得た光学素子の形状は所望形状に得られていた。屈折率分布を測定結果0.9×10−4、複屈折率53nmであり、比較例で作製したポリオレフィン樹脂の射出成形品と比較して屈折率分布の小さい光学素子を得ることができた。
101:ロータリー駒
102:搬送ローラー
103:昇温装置
104:固定プラテン
105:成形機取り付けダイセット
106:射出シリンダー
107:可動プラテン
108:キャビティー部
109:プレス冷却ダイセット
110:プレスシリンダー
111:成形品
112:成形品突き出し用シリンダー
113:成形部材
114:スプール
115:ランナー
116:ゲート
117:切断カッター
118:2次プレスダイセット
119:鏡面上駒
120:鏡面下駒
121:プレスシリンダー
122:位置決め機構
123:型締めシリンダー

Claims (16)

  1. プラスチック成形品の製造方法であって、
    第一の型に溶融樹脂を供給し、前記溶融樹脂を供給した前記第一の型に対して圧力をかけながら所定時間冷却する工程と、
    前記第一の型を前記所定時間冷却している間に、第二の型に溶融樹脂を供給し、前記溶融樹脂を供給した前記第二の型に対して圧力をかけながら所定時間冷却する工程と、
    前記所定時間冷却した前記第一の型から第一の成形部材を取り出す工程と、
    前記所定時間冷却した前記第二の型から第二の成形部材を取り出す工程と、
    前記第一の型および前記第二の型よりも面精度の高い面を有する第三の型の内部に、前記第一の成形部材を設置する工程と、
    前記設置した前記第一の成形部材の表面のみを溶融し、前記面精度の高い面を前記表面に押し当てる工程と、
    前記第三の型の内部に、前記第二の成形部材を設置する工程と、
    前記設置して前記第二の成形部材の表面のみを溶融し、前記面精度の高い面を前記表面に押し当てる工程と、
    を有することを特徴とするプラスチック成形品の製造方法。
  2. 前記第三の型の前記面精度の高い面は、赤外線用ガラスからなる駒で構成されていることを特徴とする請求項1記載のプラスチック成形品の製造方法。
  3. 前記第一の型および前記第二の型は、目標とする面形状に比べて、20μm以上、150μm以下の形状誤差を有することを特徴とする請求項1または2記載のプラスチック成形品の製造方法。
  4. 前記第三の型は、目標とする面形状に比べて、10μm以下の形状誤差を有することを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載のプラスチック成形品の製造方法。
  5. 請求項1または4いずれか1項に記載のプラスチック成形品の製造方法によって製造されたことを特徴とする光学素子の製造方法
  6. プラスチック成形システムであって、
    型を昇温させるための昇温ユニットと、
    前記型に溶融樹脂を供給するための溶融樹脂供給ユニットと、
    前記溶融樹脂を供給した型に対して、圧力をかけながら所定時間冷却させるための第1のプレス冷却ユニットと、
    前記所定時間冷却した前記型から成形部材を取り出すための取り出しユニットと、
    前記昇温ユニット、前記溶融樹脂供給ユニット、前記第1のプレス冷却ユニット及び取り出しユニットに、前記型を、搬送して循環させる搬送ユニットと、
    前記型よりも面精度の高い面を有する型に、前記成形部材を設置し、前記成形部材の表面のみを溶融し、前記面精度の高い面を前記表面に押し当てるための第2のプレス冷却ユニットと、
    を有することを特徴とするプラスチック成形システム。
  7. 前記型は、目標とする面形状に比べて、20μm以上、150μm以下の形状誤差を有することを特徴とする請求項6記載のプラスチック成形システム。
  8. 前記型よりも面精度の高い面を有する型は、目標とする面形状に比べて、10μm以下の形状誤差を有することを特徴とする請求項6または7記載のプラスチック成形システム。
  9. 前記溶融樹脂供給ユニットは、射出成形機で構成されていることを特徴とする請求項6乃至8いずれか1項に記載のプラスチック成形システム。
  10. 前記溶融樹脂供給ユニットは、下型に可塑化溶融樹脂を吐出する吐出装置で構成されていることを特徴とする請求項6乃至9いずれか1項に記載のプラスチック成形システム。
  11. 前記下型は、前記第1のプレス冷却ユニットに備えられている上型と組合せ可能に構成され、前記下型と前記上型とが、ガラスの型で構成されていることを特徴とする請求項10に記載のプラスチック成形システム。
  12. 前記面精度の高い面を有する型の前記面精度の高い面は、赤外線用ガラスからなる駒で構成されていることを特徴とする請求項6乃至11のいずれか1項に記載のプラスチック成形システム。
  13. 前記第2のプレス冷却ユニットは、前記成形品の表面のみの溶融を行なうための赤外線の照射ユニットを有することを特徴とする請求項6乃至12のいずれか1項に記載のプラスチック成形システム。
  14. 前記搬送ユニットによる型の搬送は、窒素雰囲気で搬送可能に構成されていることを特徴とする請求項6乃至13のいずれか1項に記載のプラスチック成形システム。
  15. 前記窒素雰囲気の温度は、用いる樹脂のガラス転移温度より10℃以上高く設定されていることを特徴とする請求項14に記載のプラスチック成形システム。
  16. 請求項6乃至15のいずれか1項に記載のプラスチック成形システムにより成形されたことを特徴とする光学素子。
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