JP5863593B2 - 空気調和機の室内機 - Google Patents
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Description
そして、単に在室者の位置を検知するだけでなく、在室者の活動状態を検知して、かかる活動状態に基づいて、調和空気の温度、吹出量および吹出方向を制御する、すなわち、軽い運動や軽い力仕事をして活動量が大きくなっていると検知したとき、当該居住者(以下、「ユーザー」と称す)に向けて集中的に送風し、活動によって発生した熱量を取り除くことにより、体温の上昇を抑えて暑いと感じさせないようにする室内機が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、暑い(または寒い)屋外から室内に入った直後に、リモコン(遠隔操作装置)を探して、起動操作をする面倒を解消して、急速に涼しくなりたい(または暖まりたい)という要請がある。特に、風呂上がりや暑い(または寒い)屋外から室内に入った直後には、一時的に急速に涼しくなりたい(または暖まりたい)という要請がある。
すなわち、自分に向かって調和空気を吹き出させたい人間(例えば、暑がりさんまたは寒がりさん、酷暑または厳寒の室外から入室した直後の人、あるいは風呂上がり直後の人等)は、自分の体を認識させるだけで、室内を移動しても、自分に向けて調和空気が送られてくるから、風向調整装置を操作する手間を省くことができ利便性も向上する。
一方、自分に向かって調和空気を吹き出させたくない人間は、自分の体を認識させる動作をしなければよい。このとき、予め設定された空調環境(例えば、室内に略平均に調和空気が吹き出される、あるいは、室内の所定の方向に調和空気が吹き出される)になるように調和空気の吹き出しが継続する。
すなわち、室内に複数の人間がいる場合には、一方の人間が、自分の体を認識させる動作をすることによって、当該一方の人間に向かって集中的に調和空気が吹き出されるのに対し、当該一方の人間とは体感温度が相違する他方の人間に向けては、集中的な調和空気が吹き出されないから、体感温度が相違する双方の人間の快適性が向上する。
さらに、例えば、カメラが撮像した可視画像に基づいて顔を認識する場合には、照明条件により見えなくなったり、メガネやマスクなど顔の特徴点が隠されたりすると、顔を認識することができなくおそれがあるのに対し、赤外線センサーが体を認識するため、照明条件等が悪化しても、体を認識することができる。
また、冷凍サイクルが停止しているときに、人間の体が認識された際、冷凍サイクルが起動されるようにすれば、リモコン等を探す手間を省くことが可能になり、利便性がさらに向上する。また、自分の体を認識させた人間は、体認識範囲にいる限り、本体の至近距離において本体から吹き出される調和空気を受けることができるから、一時的に急速に涼しくなる(暖まる)ことができる。
図1〜図8は、本発明の実施の形態1に係る空気調和機の室内機を説明するものであって、図1は正面図、図2は側面視の断面図、図3は一部(吹出口の周辺)を抜き出して示す斜視図、図4は室内への設置状況およびユーザーの体の認識要領を説明するための側面図、図5および図6は風向制御における各工程を説明するフローチャート、図7および図8は風向制御における風流れを示す平面図である。なお、各図は模式的に描いたものであって、本発明は図示された形態に限定するものではない。
そして、本体1の前面で吹出口7の脇に、リモコン(図示しない)からの信号を受信する受信装置40と、室内90の温度分布を検知する赤外線センサー50とが設置されている。
なお、室内機100は、受信装置40や赤外線センサー50(別途、実施例を示す)の型式や設置位置を限定するものではなく、例えば、前面パネル2の中央部等に設置してもよい。さらに、室内機の運転状況を報知するための音声または映像による報知装置(図示しない)が本体1またはリモコン(図示しない)に設けられている。
熱交換器4は前面パネル2に略平行な部分である熱交換前部分4aと、送風機5の前面寄り斜め上方の部分である熱交換上前部分4bと、送風機5の後面寄り斜め上方の部分である熱交換上後部分4cと、を具備している。そして、熱交換前部分4aの下方にはドレンパン8が配置され、ドレンパン8の上面8aが実際にドレンを受けるドレンパン面を形成し、ドレンパン8の下面8bが風路6の前面側を形成している。
風路の吹出口7に近い位置には、上下風向板9および左右風向板10と、これらを駆動する駆動手段と、を具備する風向調整装置が設置されている。
すなわち、熱交換器4において調和された室内空気(以下、「調和空気」と称す)の水平方向(左右方向)の吹き出し方向を調整する左側左右風向板群10Lと右側左右風向板群10R(これらをまとめて又はそれぞれを「左右風向板10」と称している)と、風路6の末端である吹出口7には、調和空気の鉛直方向(上下方向)の吹き出し方向を調整する上下風向板9(前上下風向板9aおよび後上下風向板9bをまとめて「上下風向板9」と称している)とが設けられている。
なお、前記「左側」および「右側」とは、室内機100から室内を見たとき、すなわち、本体1の背面側から前面パネル2の方向を見たときに、左手に見えるものを「左側」、右手に見えるものを「右側」と、それぞれ称している。
右側左右風向板群10Rは、左右風向板10a、10b・・・10gによって構成され、ドレンパン8の下面8bに回動自在に設置され、それぞれに右側連結棒20Rが連結されている。また、左側左右風向板群10Lは、左右風向板10h、10i・・・10nによって構成され、それぞれに左側連結棒20Lが連結されている。
そして、右側左右風向板群10Rと右側連結棒20Rとはリンク機構を形成し、また、左側左右風向板群10Lと左側連結棒20Lとはリンク機構を形成し、右側連結棒20Rには右側駆動手段(図示しない)が、左側連結棒20Lには左側駆動手段30Lが、それぞれ連結されている。
したがって、右側連結棒20Rが右側駆動手段によって平行移動された際、左右風向板10a、10b・・・10gは互いに平行を維持しながら回動し、左側連結棒20Lが左側駆動手段30Lによって平行移動された際、左右風向板10h、10i・・・10nは互いに平行を維持しながら回動する。このため、調和空気を吹出口7の全幅(全域)に渡って同じ方向に吹き出したり、吹出口7の半幅毎(中央から左側範囲または中央から右側の範囲)で互いに離れる方向に吹き出したり、吹出口7の半幅毎で互いに衝突する方向に吹き出したりすることが可能になっている。
なお、室内機100は、左右風向板10の形態を図示するものに限定するものではなく、左右風向板10の枚数は何れでもよく、また、左右風向板10を3以上の群に分け、それぞれの群を連結棒に回動自在に接合し、それぞれの連結棒を独立に平行移動させるようにしてもよい。
上下風向板9は水平方向(Y方向)に平行な回動中心を有し、本体1に回動自在に設置されている。前上下風向板9aの回動軸および後上下風向板9bの回動軸はそれぞれリンク機構または歯車機構によって連結され、共通の駆動モーターによって回動される。
なお、室内機100は、上下風向板9の形態を図示するものに限定するものではなく、前上下風向板9aおよび後上下風向板9bをそれぞれ別個の駆動モーターによって回動してもよい。また、それぞれを左右方向の中央で分割して合計4枚にし、それぞれが別個に独立して回動するようにしてもよい。
室内機100には制御装置60が設置され、制御装置60は室内環境やユーザー(居住者)の要求に応じて、調和空気の温度や吹出量等を制御する(以下、「風向制御」と称す)。
室内機100は、暑がりさんまたは寒がりさんであるユーザーの居る位置(または移動先)を特定し、特定された位置に向けて調和空気を送風するものであるため、まず(例えば、入室直後に)、ユーザーは、自分が「暑がりさんまたは寒がりさん」であることを制御手段に認識させる必要があり、そのために、室内機100に近づいて、自分の体を認識させる。
一方、暑がりさんまたは寒がりさんであるユーザーが居ない場合(室内機100に近づいて体を認識させたユーザーが居ない場合)には、室内に略平均に調和空気が向かうよう、あるいは予め設定された(例えば、特定のユーザーに調和空気が直接当たらない)吹出モードになるように(以下、「分散吹出」と称す)、左右風向板10および上下風向板9の姿勢を制御する(以下、「風向分散制御」と称す)。
図4は、ユーザーの体の認識要領を説明するためのものであって、室内機100が、室内90の一方の壁(以下、「背面壁」と称す)91で天井面92に近い位置に設置されている。
また、赤外線センサー50は、斜め下方に向かった視野51を有している。そして、視野51内で、赤外線センサー50から距離L1〜距離L2(>L1)にある範囲(図中、斜線にて示す。「体認識範囲」と称す)52内に、ユーザーU1の体F1が所定の体認識時間(例えば、10秒)の間あるとき、制御装置60は体F1を認識する(以下「体認識」と称す。体認識の要領については、別途詳細に説明する)。
例えば、体認識範囲52内にユーザーU1の体F1が入ったところで、図示しない報知手段にカウントダウン(例えば、「3、2、1」)を報知させ、所定の体認識時間が経過して体F1を認識したところでその旨(例えば、「集中吹き出しを開始します」)を報知をさせる。なお、報知手段は限定するものではなく、表示手段あるいは発声手段の一方でも、両方を併用するものであってもよい。
そして、距離L3よりも近づきながらも、体認識範囲52内に体F1がないときには、その旨を図示しない報知手段に報知させる。
例えば、「顔を認識することができません」とか、「もっと近づいて下さい」とか音声によって報知したり、あるいは、顔を認識することができないことを示すランプを点灯あるいは点滅したりする。なお、報知手段は、前記音声やランプの点灯あるいは点滅に代えて、文字ないし画像を表示するものであってもよい。
制御装置60は、ユーザーU1の体F1を認識した後は、赤外線センサー50が検知し温度情報に基づいて、ユーザーU1を追跡して、その移動先(以下、「ユーザー位置」と称す)P1を特定する(これについては、別途詳細に説明する)。すなわち、体F1を認識した直後は、ユーザーU1は室内機100から離れる方向に移動しているため、かかる移動が終わった後、すなわち、ユーザーU1が立ち止まった位置、あるいは座った位置を、ユーザー位置P1として特定する。
そして、特定されたユーザー位置P1に向けて調和空気を局所的に集中して送風する(集中送風する)。
図5および図6に示すフローチャート、および図7および図8に示す平面図に基づいて、制御装置が実行する風向制御について説明する。
図5および図6において、体認識範囲52にユーザーU1の体F1が所定の体認識時間の間あるとき(S1)、制御装置60は体F1を認識する(S2)。そして、冷凍サイクルが運転中(冷房運転中、暖房運転中等)であるのか停止しているのか判断(S3)し、停止している場合には冷凍サイクルを起動する(S4)。
以上は、ユーザー位置P1に向けた集中吹出が開始されるため、暑がりさん(または寒がりさん)であるユーザーU1以外の暑がりさん(または寒がりさん)も、ユーザー位置P1に居れば、調和空気を集中的に受けることができる。
図7の(a)において、ユーザー位置P1が室内90の左側(室内機100から見て左手)にある場合、右側左右風向板群10Rおよび左側左右風向板群10Lの両方(図3参照)は、ユーザー位置P1に向けて調和空気が吹き出される姿勢(集中吹出の姿勢)にされている。したがって、ユーザーU1は、室内90に略均一に調和空気が吹き出される(分散吹出の)場合に比較して、より長時間に渡ってまたはより多量の調和空気を集中的に受けることになる。
すなわち、暑がりさん(または寒がりさん)であるユーザーU1は、気温の高い(または低い)外部から室内90に入ったとき、リモコンを探してリモコンに設置された冷房(または暖房)開始釦を押すという操作が不要であって、体F1を室内機100に近づけるだけで、冷房(または暖房)運転を開始することができる。しかも、移動して所定の位置に立ち止まるか座っていれば、その位置がユーザー位置P1として自動的に特定され、ユーザー位置P1に向けて冷気(または暖気)が送られてくるから、自分の位置に調和空気が確実に届くよう、リモコン等を操作する必要がない。
よって、利便性および快適性が向上する。すなわち、暑がりさんに対しては局所的な「涼感(クール)モード」を実現し、寒がりさんに対しては局所的な「温感(ホット)モード」を実現する。
このため、本発明における「局所的に集中した」や「集中吹出」とは、前記広がった空気流れを平均化したときの中央が「特定の位置に向かっていること」を意味し、ユーザー位置P1の周囲にも調和空気が到達していることを意味している。
なお、以上は、右側左右風向板群10Rおよび左側左右風向板群10Lの両方が、ユーザー位置P1に向けて調和空気を吹き出しているが、本発明は集中吹出の要領をこれに限定するものではない。
そうすると、暑がりさん(または寒がりさん)であるユーザーU1に向けては、より多量の調和空気が集中的に吹き出されるから、ユーザーU1の快適性が高まると共に、ユーザー位置P1を除く範囲には、より少量の調和空気が間歇的に吹き出されることになる。
このため、ユーザーU1とは体感温度が相違し、暑がりさん(または寒がりさん)ではないユーザーU2が、ユーザー位置P1とは相違する位置であるユーザー位置P2に居る場合、ユーザー位置P2にはより少量の調和空気が間歇的に吹き出されるから、ユーザーU2の快適性も維持されることになる。
なお、集中吹出の要領の選定(図7の(a)、(b)または(c)に示す何れかの選定)は、予め決定しておいてもよいし、あるいは、暑がりさん(または寒がりさん)であるユーザーU1が、集中吹出が開始される時または開始された後に、リモコン等によって決定したり、変更したりしてもよい。
一方、集中吹出を実行中に、集中吹出を中止する釦が押されなかった場合、すなわち、集中吹出を継続する場合(図5に記載されたS8)、制御装置60は、体F1が認識されたユーザーU1の位置の追跡を継続している。
すなわち、ユーザーU1が一旦ユーザー位置P1から離れた後は、再度、戻って来るか、戻って来ないかに関わらず、室内90に誰か(ユーザー)が居る限り、集中吹出の開始から所定時間(時間)が経過したところで、分散吹出に切り替わる。
さらに、分散吹出中に、誰か(ユーザー)が図示しない遠隔操作装置(リモコン)を操作して分散吹出を中止する釦(冷房または暖房等の停止釦)を押した場合には(S14)、冷凍サイクルの運転を停止する(S15)。
図9は、本発明の実施の形態2に係る空気調和機の室内機を説明するフローチャートである。なお、実施の形態1と同じ部位または同じステップには同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
実施の形態2に係る空気調和機の室内機(以下、「室内機」と称す)200は、風呂上がりや暑い(または寒い)屋外から室内に入った直後には、一時的に急速に涼しくなりたい(または暖まりたい)というユーザー(以下、「湯上がりさん」と称す)の要請に応えるものである。
そうすると、実施の形態1の室内機100では、湯上がりさんが、湯上がり直後に体認識をすることによって室内機100を起動し、室内機100の至近位置P0(ユーザーU1が体F1を体認識範囲52にあるようにすることができる位置、および体認識範囲52を含む比較的狭い範囲を指す。図7参照)に立ち続け、所定の時間である至近判断時間(例えば、30秒)後に、至近位置P0から離れた場合、移動する湯上がりさんに向けて集中吹出が継続されることになる。このとき、湯上がりさんは、集中吹出を望まないで、分散吹出を希望する場合があるため、実施の形態2の室内機200は、これに対応している。
すなわち、ユーザーU1が「湯上がりさん」である場合、至近位置P0(このとき、ユーザー位置P1が至近位置P0に一致している)に向けて集中吹出が実行されるから、ユーザーU1は至近位置P0において涼むことができる(S22)。そして、涼み終わるまでの所定の時間である至近吹出時間(例えば、10分間)の間は集中吹出が継続され(S22)、前記至近吹出時間(例えば、10分間)が経過した時点で、分散吹出に移行する(図6のS9およびS10参照)。
また、前記至近吹出時間(例えば、10分間)が経過する前に、ユーザーU1が涼み終わって至近位置P0を離れた場合(S23)には、離れた時点で、分散吹出に移行する(図6のS9およびS10参照)。
この場合は、実施の形態1の室内機100と同様に、ユーザーU1の移動を追跡し、ユーザー位置P1(この場合、ユーザー位置P1は至近位置P0と相違する)に向けて集中吹出を継続し、再度、所定時間(例えば、30分)が経過したところで、ユーザーU1がユーザー位置P1から移動しているか否かを判断する(図6のS11参照)。かかる判断をした以降の工程は、実施の形態1の室内機100に同じである。
そして、前記至近吹出時間が経過した時点、あるいは、湯上がりさんであるユーザーU1が至近位置P0から離れた時点(涼み終わったとみなすことができる時点に相当する)において、集中吹出を中止し、分散吹出を開始する。
一方、湯上がりさんではないが、暑がりさん(または寒がりさん)であるユーザーU1については、あるいは湯上がりさんではないが、暑がりさん(または寒がりさん)でないユーザーU2については、実施の形態1の室内機100と同様に快適性が維持されることになる。
図10および図11は、本発明の実施の形態3に係る空気調和機の室内機を説明するものであって、図10はスイング吹出における体温の変化を模式的に示す温度変化図、図11は制御ステップを示すフローチャートである。なお、実施の形態2と同じ部位または同じステップには同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
実施の形態1、2に示す室内機100、200は、ユーザーU1の位置に対応した風向集中制御をするものであるのに対し、実施の形態3に係る空気調和機の室内機(以下、「室内機」と称す)300は、ユーザーU1の体温の変化に対応した風向集中制御をするものである。
しかしながら、ユーザーU1の暖まり(冷え)具合によって、涼み(暖まり)終わるまでの所定の時間である至近吹出時間は一定でないことから、室内機300では、前記至近吹出時間に代えて、ユーザーU1の体温の変化に着目して分散吹出に移行するタイミングを決めている。
そして、至近位置P0に立っている「湯上がりさん」であるユーザーU1に対しては、調和空気を間歇的に繰り返し吹き出す(以下「スイング吹出」と称す)。
すなわち、上下風向板9を回動して、所定の時間の間だけユーザーU1の体F1に向けて調和空気を吹き出し、これに続く所定の時間の間は、ユーザーU1の体F1に向けて調和空気を吹き出さない(ユーザーU1の体F1以外に向けて調和空気を吹き出す)サイクルを繰り返す。なお、上下風向板9に代えて、左右風向板10を回動して同様のスイング吹出をしてもよい。
したがって、初回の集中吹出による体F1の温度の低下量ΔT01(温度T0と温度T1との差)、初回の復熱による体F1の温度の上昇量ΔT12(温度T2と温度T1との差)、2回目の集中吹出による体F1の温度の低下量ΔT23(温度T3と温度T2との差)、2回目の復熱による体F1の温度の上昇量ΔT34(温度T4と温度T3との差)の順に、徐々に小さくなる。
そして、集中吹出による体F1の温度の低下量または復熱による体F1の温度の上昇量(以下「体温の変動幅ΔT」と称す)が所定の温度である快適温度幅ΔTa(例えば、1℃)以下になったとき、ユーザーU1は爽快感(涼んだまたは暖まったと感じる)を覚えると考えられる。
そして、至近判断時間が経過しても至近位置P0に居続けて(立ち続けて)いる場合は、ユーザーU1が「湯上がりさん」であると判断して、前記スイング吹出を開始する(S32)。スイング吹出は、ユーザーU1が爽快感を覚える(涼んだ又は暖まったと感じる)まで、すなわち、体温の変動幅ΔTが所定の快適温度幅ΔTa内(ΔT>ΔTa)にある限り継続し(S34)、体温の変動幅ΔTが所定の値である快適温度幅ΔTa以下になったところで(ΔT≦ΔTa)分散吹出に移行する(図6のS9、S10参照)。
この場合は、実施の形態1の室内機100と同様に、ユーザーU1の移動を追跡し、ユーザー位置P1(この場合、ユーザー位置P1は至近位置P0と相違する)に向けて集中吹出を継続し、再度、所定時間(例えば、30分)が経過したところで、ユーザーU1がユーザー位置P1から移動しているか否かを判断する(図6のS11参照)。かかる判断をした以降の工程は、実施の形態1、2の室内機100、200に同じである。
したがって、湯上がりさんであるユーザーU1は、リモコン等の操作をすることなく、簡便かつ迅速に涼み始めることができ、また、涼み終わった後も、リモコン等の操作をすることなく、集中した風流れに晒されないから、快適な空調環境を満喫することができる。このとき、赤外線センサー50が検知した温度情報を用いるから、体温を検知するための専用のセンサーを設置する必要がない。
一方、湯上がりさんではないが、暑がりさん(または寒がりさん)であるユーザーU1については、あるいは湯上がりさんではないが、暑がりさん(または寒がりさん)でないユーザーU2については、実施の形態1の室内機100と同様に快適性が維持されることになる。
さらに、複数回に渡る集中吹出による体F1の温度の低下量と復熱による体F1の温度の上昇量との平均値(初回および2回目を例にすると、ΔT=(ΔT01+ΔT12+Δ23+Δ34)/4)であってもよい。複数回に渡る前記低下量および前記上昇量の平均値を用いることによって、実際の表面温度や温度検出のバラツキの影響を抑えた判断をすることが可能になる。
次に、実施の形態1〜3のそれぞれで使用した赤外線センサー50として、16個の受光素子が、4列かつ4行の方眼状に配置された平面受光ユニットを有するものを例にして、体認識の要領を説明する。
図12〜図19は、実施の形態1〜3に示す赤外線センサーを模式的に説明するものであって、図12の(a)は赤外線センサーと男性ユーザーとの位置関係を示す側面図、図12の(b)および(c)は赤外線センサーと男性ユーザーとの位置関係を示す平面図、図13は受光素子に表れるパターン(図12の(b)の男性ユーザーの立位に対応)、図14は受光素子に表れるパターン(図12の(c)の男性ユーザーの立位に対応)、図15は赤外線センサーと女性ユーザーとの位置関係を示す側面図、図16は受光素子に表れるパターン(図15の女性ユーザーの立位に対応)、図17は受光素子に表れるパターン(図12の(b)の男性ユーザーの座位に対応)、図18は受光素子に表れるパターン(図15の女性ユーザーの座位に対応)、図19は距離減衰の一例を示す相関図である。なお、本発明において、人の立った姿勢を「立位」、座った姿勢を「座位」と称している。
図13、14、16〜18において、受光素子Cは1段目(最下段)に左側から右側に向かって順番に、受光素子C11、C12、C13、C14が配置され、2段目に左側から右側に向かって順番に、受光素子C21、C22、C23、C24が配置され、3段目に左側から右側に向かって順番に、受光素子C31、C32、C33、C34が配置され、4段目(最上段)に左側から右側に向かって順番に、受光素子C41、C42、C43、C44が配置されている(以下、受光素子C11〜C44をまとめて又はそれぞれを「受光素子C」と称す場合がある)。なお、受光素子Cの符号は、図14の(c)のみに記載し、その他の図には記載していない。
したがって、それぞれの受光素子Cは、それぞれの方向で、四角錐状に遠くになる程拡大する視野CFを有している(例えば、受光素子C11、C12・・・はそれぞれ視野CF11、CF12・・・を有している)。
なお、受光素子Cのそれぞれは、集光レンズの光軸に一致しない(一致しない範囲を具備する)ことから、受光素子Cのそれぞれは、同一距離だけ離れた発光源からの赤外線を検知した場合、受光量が相違するため、制御装置60(正確には、図示しない赤外線センサー用制御部)は、かかる場合に、それぞれの受光素子Cの出力が同じになるように増幅(減幅)率が設定されている(所謂キャリブレーションをしている)。
人体背景差分温度は、受光素子Cのうち人体の温度を検知した受光素子C(例えば、図13の(a)において、受光素子C12の検知温度)と、受光素子Cのうち背景(人体を除く景色)の温度を検知した受光素子(例えば、図13の(a)において、受光素子C44の検知温度)との差である。
なお、図13等は、受光素子Cのそれぞれにおける人体背景差分温度の値の大きい受光素子Cの分布パターンを模式的に示すものであって、人体背景差分温度の値が大きい受光素子Cには複斜線を、人体背景差分温度の値が、前記複斜線を付した受光素子Cとの対比において比較的小さい受光素子Cには単斜線を付し、人体背景差分温度の値がゼロ(表れない)の受光素子C(背景温度を検知した受光素子Cに同じ)は空白にしている。
図12の(a)および(b)に示す側面図および平面図において、赤外線センサー50(室内機100)の正面で、赤外線センサー50から所定の位置に男性ユーザーUmが立っている(および一個所で座っている)状況が模式的に示されている。このとき、赤外線センサー50からの水平方向の距離が、0.5m、1.0m、1.5m、3.0m、および5.0mの位置を、それぞれ位置イ、位置ロ、位置ハ、位置ニおよび位置ホと称す。
図13の(a)は、男性ユーザーUmが位置イ(0.5m離れた位置)に立っているときの受光素子Cの検知状況を示している。すなわち、男性ユーザーUmは近接した位置で、顔が視野CF22、CF23内にあり、体が、視野CF11、CF12、CF13、C14内にあるため、受光素子C11〜C14、C22、C23における人体背景差分温度の値が大きくなっている。そして、男性ユーザーUmの顔または体が視野CF内にない受光素子Cは人体背景差分温度が検知されないため空白になっている。
図13の(b)は、男性ユーザーUmが位置ロ(1.0m離れた位置)に立っているときであり、男性ユーザーUmの顔が視野CF32、CF33、CF42、CF43内にあり、体が、視野CF21〜CF24、CF31〜CF34内にある。このとき、赤外線センサー50から離れ、顔は体よりも温度が低いため、受光素子C32、C33、C42、C43における人体背景差分温度の値は、受光素子C21〜C24、C31〜C34における人体背景差分温度の値より小さくなっている。
図13の(d)は、男性ユーザーUmが位置ニ(3.0m離れた位置)に立っているときであり、男性ユーザーUmの顔は視野CFから外れているものの、体が、視野CF32、CF33、CF42、CF43内にある。このとき、男性ユーザーUmと赤外線センサー50との距離が大きいため、「距離減衰(これについては別途詳細に説明する)」によって、受光素子C32、C33、C42、C43における人体背景差分温度の値は小さくなっている。
図13の(e)は、男性ユーザーUmが位置ホ(5.0m離れた位置)に立っているときであり、男性ユーザーUmの体の下半身が視野CF42、CF43内にある。このとき、距離減衰によって、受光素子C42、C43における人体背景差分温度の値は小さくなっている。
すなわち、受光素子Cに表れた人体背景差分温度の形態に基づいて重心の位置を求めることによって、男性ユーザーUmの位置(移動経路)を知ることができる。このとき、所定時間の前後の重点の位置から、該所定時間における男性ユーザーUmの移動速度を知ることもできる。
図14の(a)において、男性ユーザーUmが位置へに立っているとき、受光素子C41、42に表れる人体背景差分温度の値は、受光素子C11、C12、C21、C22に表れる人体背景差分温度の値よりも小さくなっている。
図14の(b)において、男性ユーザーUmが位置トに立っているとき、受光素子C31、41に表れる人体背景差分温度の値は、赤外線センサー50と男性ユーザーUmとの距離が大きくなるため、「距離減衰」によって、受光素子C31、C41に表れる人体背景差分温度の値は小さくなっている。
したがって、赤外線センサー50の正面方向と同様に、斜め方向の位置においても同様に、重心の位置を求めることができるから、かかる重心の位置を求めることによって男性ユーザーUmの立っている位置を特定することができる。
女性ユーザーUfは、男性ユーザーUmに比べて背丈が低いことから、例えば、位置ロ(1.0m)では、顔が視野CFから外れるため、受光素子C41〜C44に人体背景差分温度の値が表れない等、背丈の違いによる相違が生じるものの、基本的には、男性ユーザーUmと同様に、赤外線センサー50と女性ユーザーUfとの位置関係で、受光素子Cには所定のパターン(人体背景差分温度の値)が表れる(図13に準じるため、説明を省略する)。したがって、前記と同様に「重心」を求めることによって、女性ユーザーUfの位置を知ることができる。
また、男性ユーザーUmと女性ユーザーUfとが相違する位置に立っている場合でありながら、受光素子Cに表れる人体背景差分温度の値のパターンが同一の場合が起こる可能性がある。このときは、後記する「距離減衰」を利用して、距離の相違を判定する。
図17において、男性ユーザーUmが座っている場合は、赤外線センサー50に近接した位置では、頭が視野CFから外れるから、位置イ(0.5m)では、受光素子Cに人体背景差分温度が表れていない。
なお、赤外線センサー50と距離との関係で、受光素子Cに表れる人体背景差分温度の値のパターンの推移は、図13等に準ずるため、説明を省略する。
次に、図19に基づいて、「距離減衰」について説明する。前記のように受光素子Cの前面には、図示しない集光レンズが設置され、それぞれの受光素子C(受光素子C11等)は、それぞれの方向で、四角錐状に遠くになる程拡大する視野CFを有している。
このため、受光素子Cが検知する人体背景差分温度の値(以下「検知差分ΔTs」と称す)は、実際に人間が居る位置における人体背景差分温度の値(以下「実際差分ΔTp(=人体温度−背景温度)」と称す)よりも低い値になり、両者の差(ΔTp−ΔTs)は、赤外線センサー50から離れる程、また、実際に人間が居る位置における人体背景差分温度の値が小さくなる程、大きくなる。
そして、検知差分ΔTsと実際差分ΔTpとの関係は、背景温度をパラメータにして、テーブルあるいは図(または関数)によって規定される。図19は、実際差分ΔTpに対する検知差分ΔTsの割合を背景差分率α(=ΔTs/ΔTa)として、背景差分率αと赤外線センサー50からの距離との関係を、パラメータである背景温度が25℃および30℃の場合を示している。
また、例えば、背景温度が30℃で人体温度が36度である場合、実際差分ΔTpは6℃(=36−30)であるものの、当該人間が赤外線センサー50から1.0mまたは2m離れていると、背景差分率αが0.35および0.25であるから、検知差分ΔTsは2.1℃(=6×0.35)または1.5℃(=6×0.25)になる。
したがって、実施の形態1〜3において説明した受光素子Cに表される所定のパターン(人体背景差分温度の値の分布)は、検知差分ΔTsのパターンであるから、当該パターン(分布形態)に基づいて当該人間の位置を判定することができると共に、背景差分率αを併用することによって、赤外線センサー50から当該人間が居る位置までの距離を知ることができる。
すなわち、ユーザー(人間)が異なる位置に居る場合でも、背丈や姿勢(立位または座位)によっては受光素子Cに表されるパターンが同じになることがあるものの、背景差分率αを用いて赤外線センサー50から当該人間が居る位置までの距離を知れば、当該ユーザー(人間)の位置を正確に知ることができる。
さらに、1列かつ複数行に配置された行受光ユニット、あるいは複数列かつ1行に配置された列受光ユニットであってもよい。このとき、行(列)受光ユニットについては列(行号)方向に揺動(往復旋回)させることによって、複数列(複数行)に相当する人体背景差分温度の値のパターンを得ることができる(正確には、複数列(複数行)における検知タイミングが相違する)。
Claims (13)
- 吸込口および吹出口がそれぞれ形成され、室内の壁面に設置される本体と、前記吸込口から室内空気を吸い込んで、前記吹出口に至る風路を形成する送風機と、前記風路に設置され、冷凍サイクルの一部を実行する熱交換器と、前記吹出口に設置され、前記熱交換器において調和された空気の吹き出し方向を調整する風向調整装置と、前記室内の温度分布を検知する赤外線センサーと、該赤外線センサーが検知した温度情報に基づいて前記風向調整装置を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
前記温度情報に基づいて、前記赤外線センサーの視野内の所定の体認識範囲に、人間の体が所定の体認識時間の間あると判断したとき、当該人間の体を認識すると共に、当該人間が移動したとき、前記温度情報に基づいて、当該人間を追跡して当該人間の位置を特定し、特定された位置に向けて前記調和された空気が送られるように前記風向調整装置を制御し、前記温度情報に基づいて、当該人間の体温の変動幅が所定の閾値以下になった場合、前記風向調整装置の制御を中止して、前記調和された空気が前記室内に略均一に送られるように前記風向調整装置を制御することを特徴とする空気調和機の室内機。 - 前記制御装置は、前記冷凍サイクルの停止中に人間の体を認識した際、前記冷凍サイクルを起動することを特徴とする請求項1記載の空気調和機の室内機。
- 前記制御装置は、前記風向調整装置を制御している際に、当該人間が前記室内の外に移動したと判断した場合、該判断の後、所定の時間が経過するまでは、前記風向調整装置の制御を継続し、所定の時間が経過したところで、前記風向調整装置の制御を停止することを特徴とする請求項1または2記載の空気調和機の室内機。
- 前記制御装置は、特定された位置に、特定された位置から離れた位置よりも、より長時間またはより多量の前記調和された空気が送られるように、前記風向調整装置を制御することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の空気調和機の室内機。
- 前記制御装置は、前記風向調整装置を制御している際、当該人間が所定の時間が経過しても当該特定された位置に居ると判断した場合、前記風向調整装置の制御を中止して、前記調和された空気が前記室内に略均一に送られるように前記風向調整装置を制御することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の空気調和機の室内機。
- 報知装置を有し、前記制御装置は、人間が前記本体に近づいていると判断し、且つ、当該人間の体を認識しているときおよび当該人間の体を認識したとき、前記報知装置にその旨を報知させることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の空気調和機の室内機。
- 報知装置を有し、前記制御装置は、人間が前記本体に近づいていると判断し、且つ、当該人間の体を認識することができない場合、前記報知装置に認識できていないことを報知させることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の空気調和機の室内機。
- 前記風向調整装置を制御している際、少なくとも当該制御を停止させる信号を発することができる遠隔操作装置を有することを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の空気調和機の室内機。
- 前記赤外線センサーは、複数の受光素子が複数列かつ複数行に配置された平面受光ユニットと、該平面受光ユニットに向けて赤外線を集光する集光レンズと、を有し、前記平面受光ユニットおよび集光レンズが前記本体に固定されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の空気調和機の室内機。
- 前記赤外線センサーは、複数の受光素子が一列に配置された一列受光ユニットと、該一列受光ユニットに向けて赤外線を集光する集光レンズと、を有し、
複数の受光素子が前記本体の上下方向と平行に配置され、前記一列受光ユニットおよび集光レンズが、前記本体の上下方向と平行な回転軸を中心にして揺動されることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の空気調和機の室内機。 - 前記制御装置は、前記複数の受光素子において、それぞれの受光素子が検知した人体の温度から背景温度を減算した人体背景差分温度の値を求め、前記複数の受光素子における前記人体背景差分温度の値の分布パターンから、前記人体の位置を決定することを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の空気調和機の室内機。
- 前記制御装置は、実際に当該人間が居る位置における人体温度と背景温度との差である人体背景差分温度の値(ΔTp)に対する前記赤外線センサーの受光素子が検知する人体背景差分温度の値(ΔTs)との割合(α)を、前記人体と前記赤外線センサーとの距離との関係で予め整理したテーブルまたは図を用い、前記受光素子が検知した人体背景差分温度の値(ΔTs)から、前記人体と前記赤外線センサーとの距離を求めることを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載の空気調和機の室内機。
- 前記風向調整装置は、前記調和された空気の上下方向の吹出方向を調整する上下風向板と、前記調和された空気の左右方向の吹出方向を調整する左右風向板とを、少なくとも一対づつ具備することを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項に記載の空気調和機の室内機。
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