JP5862561B2 - 連続発酵による化学品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、分離膜を用いて発酵により連続的に化学品を製造する連続発酵による化学品の製造方法に関するものである。
微生物や培養細胞の培養を伴う物質生産方法である発酵法は、大きく(1)回分発酵法(Batch発酵法)および流加発酵法(Fed−Batch発酵法)と、(2)連続発酵法とに分類することができる。
上記(1)の回分発酵法および流加発酵法は、設備的には簡素であり、短時間で培養が終了し雑菌汚染による被害が少ないという利点がある。しかしながら、時間経過と共に発酵培養液中の化学品濃度が高くなり、浸透圧あるいは化学品阻害等の影響により生産性および収率が低下してくる。そのため、長時間にわたり安定して高収率かつ高生産性を維持することが困難である。
また、上記(2)の連続発酵法は、発酵槽内で目的化学品が高濃度に蓄積することを回避することによって、長時間にわたって高収率かつ高生産性を維持できるという特徴がある。この連続発酵法については、L−グルタミン酸やL−リジンの発酵についての連続培養法が開示されている(非特許文献1参照)。しかしながら、この例では、発酵培養液に原料の連続的な供給を行うと共に、微生物や培養細胞を含んだ発酵培養液を抜き出すために、発酵培養液中の微生物や培養細胞が希釈されることから、生産効率の向上は限定されたものであった。
そこで、連続発酵法において、微生物や培養細胞を分離膜で濾過し、濾液から化学品を回収すると同時に濃縮液中の微生物や培養細胞を発酵培養液に保持または還流させることにより、発酵培養液中の微生物や培養細胞濃度を高く維持する方法が提案されている。例えば、分離膜として有機高分子からなる平膜を用いた連続発酵装置において、連続発酵する技術が提案されている。(特許文献1参照)。
一方、分離膜については、上述したような発酵分野への適用を含め、飲料水製造、浄水処理、排水処理などの水処理分野、食品工業分野等様々な方面で利用されている。飲料水製造、浄水処理、排水処理などの水処理分野においては、分離膜が従来の砂濾過、凝集沈殿過程の代替として水中の不純物を除去するために用いられている。浄水処理や排水処理などの水処理分野においては、処理水量が大きいため、透水性能の向上が求められており、透水性能が優れている分離膜で膜面積を減らし、膜面積あたりの設置面積が小さい中空糸膜モジュールやスパイラル式モジュールを使用することで、装置のコンパクト化、設備費および膜交換費の低減を試みている。
連続発酵装置において、より効率的な連続発酵による生産を行うために、膜面積あたりの設置面積が小さく、分離膜モジュールの交換費用が少ない中空糸膜モジュールなどを用いた技術が開示されている(特許文献2参照)。この技術では、微生物や培養細胞を、分離膜に中空糸膜を用いて、濾液から化学品を回収すると同時に濃縮液中の微生物や培養細胞を発酵培養液に保持または還流させることにより、発酵培養液中の微生物や培養細胞濃度を高く維持することが可能となっている。発酵培養液を中空糸膜モジュールに送液し、一部は濾過をして、大部分は発酵槽に還流させるクロスフロー濾過を採用しており、このクロスフローの流れの剪断力により、膜表面の汚れを除去し、効率的な濾過を長期間継続することも可能であった。
ここで、工業化における設備対応を考えると、大きいものでは数百mの発酵槽にて発酵を行うことも想定されるが、高濃度の微生物を含む発酵液を濾過するためには多くの膜面積が必要であり、そのため、分離膜モジュールを複数本使用することとなる。例えば百m3の発酵液を濾過する場合、発酵液の濾過性、分離膜モジュールの性能により最適数は変わるが、多い場合は数百本、数千本の複数の分離膜モジュールが必要となる。
分離膜モジュールの運転方法については、連続発酵を行なう期間、良好な濾過性を維持するため、間欠的に濾過をしてクロスフロー流れの剪断力により分離膜表面の堆積物を除去する技術(特許文献3参照)や、濾過停止時にpH調整液により逆圧洗浄を行い、分離膜内部の堆積物を除去する技術(特許文献4参照)が開示されている。
一方、水処理分野においては、濾過の際は並列配置とした各モジュールに原液を供給して濾過を行うとともに、洗浄の際は、モジュール間をフラッシング管で接続し、所定位置に設置した開閉バルブの開閉操作によりモジュールを直列配置として、中空糸膜をフラッシング洗浄することにより、洗浄液量や廃液量、分離膜洗浄用のエアー量を低減する技術が開示されている(特許文献5)。
特開2007−252367号公報 特開2008−237101号公報 特開2009−65966号公報 特開2008−161071号公報 特開2009−72708号公報
Toshihiko Hirao et al., Appl. Microbiol. Biotechnol.,32,269−273(1989)
しかしながら、特許文献3に記載する間欠濾過を、例えば、9分間の濾過と、1分間の濾過停止とを繰り返す間欠濾過を行う場合、濾過時の9分間は、濾過で発酵液が減量した分、発酵槽に原料が添加されるが、濾過停止時の1分間は、発酵液は減量しないので、発酵槽に原料は添加されない。したがって、連続発酵装置が複数の分離膜ユニットによりクロスフロー濾過を行う場合であって、複数の分離膜モジュールが、全て同じタイミングで9分間濾過し、1分間濾過停止すると、原料の添加が間欠的になり、発酵槽中の原料濃度が安定せず、そのため安定した発酵が困難となる懸念がある。
また、特許文献4に記載の逆圧洗浄を、例えば、上記間欠濾過の濾過停止時に行う場合、濾過時の9分間は、濾過で発酵液が減量した分、発酵槽に原料が添加されるが、濾過停止時に逆圧洗浄する1分間は、逆圧洗浄の洗浄液が発酵槽に流入するため、発酵槽の発酵液量が増加する。そのため、濾過開始後、逆圧洗浄液の増加分が解消されるまで、発酵槽に原料は添加されない。したがって、複数の分離膜モジュールが、全て同じタイミングで9分間濾過と1分間濾過停止・逆圧洗浄とを繰り返すと、原料の添加が間欠的となり、発酵槽中の原料濃度が安定せず、安定した発酵が困難となる懸念がある。
また、アルカリや酸を含む水を逆圧洗浄液として使用する場合、複数の分離膜モジュールで逆液洗浄を同時に行うと、発酵液のpHが一時的にでも適正範囲を外れ、その期間の発酵成績が低下し、また微生物の活性が低下する懸念がある。
さらに、特許文献5に記載されるように、分離モジュールを直列に配置して発酵液の濾過を行う場合、クロスフロー流量の総和を低減することができ、設備の大型化やコストアップを抑制できるものの、直列に配置した分離モジュールで濾過処理を行うと、直列配置の前段のモジュールに比べ、後段のモジュールは、前段モジュールの1次側に通液する際の圧力損失分だけ1次側の圧力が低下するため、後段のモジュールほど分離膜差圧が小さくなり、濾過量が低下する問題がある。微生物濃度の高い連続発酵の発酵液では、クロスフロー流束を高めに設定する必要があり、そのため分離膜1次側へ通液する際のモジュールの圧力損失も大きくなるため、この傾向は大きくなる。さらに前段のモジュールの方では濾過量が多くなるため、後段のモジュールより膜詰まりが発生しやすい問題もある。また、連続発酵では濁質濃度が高く、微生物を含む発酵培養液を濾過するため、分離膜の1次側の表面において、クロスフローの剪断力により微生物等の堆積を防止する必要がある。
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、連続的に培養を行いながら、微生物又は培養細胞の培養液より、分離膜を通して生産物を含む液を効率よく濾過・回収すること及び非濾過液を培養液に戻すことで発酵に関与する微生物濃度を増加させることで高い生産性を得ることを特徴とする化学品の製造において、分離膜の洗浄を効率的に行い、かつ安定的に発酵を行う化学品の製造方法に関するものである。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の連続発酵による化学品の製造方法は、発酵槽にて発酵原料を微生物または培養細胞の発酵培養により化学品を含有する発酵液へと変換する発酵工程と、該発酵液から複数の分離膜モジュールにより濾過液として化学品を回収するとともに、非濾過液を前記発酵槽に還流する膜分離工程と、を含む連続発酵による化学品の製造方法であって、前記膜分離工程は、前記複数の分離膜モジュールについて濾過処理と濾過停止処理とを交互に繰り返す間欠濾過処理を行い、該間欠濾過処理の際、各分離膜モジュールの濾過停止処理のタイミングを制御することを特徴とする。
また、本発明の連続発酵による化学品の製造方法は、上記発明において、前記分離膜モジュールの濾過停止処理は、少なくとも1本の分離膜モジュールの濾過運転の停止を他の分離膜モジュールの濾過運転中に行うよう制御することを特徴とする。
また、本発明の連続発酵による化学品の製造方法は、上記発明において、前記分離膜モジュールの濾過停止処理は、各分離膜モジュールの濾過停止処理を重複しないよう制御することを特徴とする。
また、本発明の連続発酵による化学品の製造方法は、上記発明において、前記分離膜モジュールの濾過停止処理のタイミングは、前記分離膜モジュールから前記発酵槽に還流する単位時間あたりの非濾過液量の変化が小さくなるよう制御することを特徴とする。
また、本発明の連続発酵による化学品の製造方法は、上記発明において、前記膜分離工程は、濾過停止処理中に水を洗浄液として逆圧洗浄を行うことを特徴とする。
また、本発明の連続発酵による化学品の製造方法は、上記発明において、前記膜分離工程は、濾過停止処理中に酸化剤または還元剤を含む水を洗浄液として逆圧洗浄を行うことを特徴とする。
また、本発明の連続発酵による化学品の製造方法は、上記発明において、前記膜分離工程は、濾過停止処理中に酸またはアルカリを含む水を洗浄液として逆圧洗浄を行うことを特徴とする。
また、本発明の連続発酵による化学品の製造方法は、上記発明において、前記膜分離工程は、濾過停止処理中に洗浄液で浸漬洗浄を行うことを特徴とする。
前記分離膜モジュールの濾過停止処理のタイミングは、前記分離膜モジュールから前記発酵槽に還流する単位時間あたりの非濾過液量および逆圧洗浄液量の変化が小さくなるよう制御することを特徴とする。
また、本発明の連続発酵による化学品の製造方法は、上記発明において、前記膜分離工程は、並列に配置した前記複数の分離膜モジュールにより間欠濾過運転を行うことを特徴とする。
また、本発明の連続発酵による化学品の製造方法は、上記発明において、前記膜分離工程は、直列に配置した前記複数の分離膜モジュールにより間欠濾過運転を行うことを特徴とする。
また、本発明の連続発酵による化学品の製造方法は、上記発明において、前記直列に配置した各分離膜モジュールにおける分離膜の差圧が一定になるように制御することを特徴とする。
また、本発明の連続発酵による化学品の製造方法は、上記発明において、前記直列に配置した複数の分離膜モジュールへの発酵液を送液する順番が変更可能であることを特徴とする。
前記膜分離工程は、複数の並列ライン内に、直列配置した複数の分離膜モジュールを有する分離膜ユニットにより間欠濾過運転を行うことを特徴とする。
また、本発明の連続発酵による化学品の製造方法は、上記発明において、前記膜分離工程は、分離膜の一次側に供給する発酵液の圧力を変動させて濾過処理を行うことを特徴とする。
本発明によれば、分離膜の洗浄を効率的に行いながら、かつ安定的に発酵を行うことができ、広く発酵工業において、発酵生産物である化学品を低コストで安定に生産することが可能となる。
図1は、本発明の実施の形態1に係る分離膜モジュールを並列に配置して運転可能な膜分離型連続発酵装置の概略図である。 図2は、本発明の実施の形態1にかかる間欠濾過処理を説明するフローチャートである。 図3は、本発明の実施の形態1の変形例にかかる間欠濾過処理を説明するフローチャートである。 図4は、本発明の実施の形態2に係る分離膜モジュールを直列に配置して運転する膜分離型連続発酵装置の概略図である。 図5は、本発明の実施の形態2の変形例に係る分離膜モジュールを直列に配置して運転する膜分離型連続発酵装置の概略図である。 図6は、本発明の実施の形態3に係る複数の分離膜モジュールを直列に配置し、さらに直列に配置した分離膜モジュールを複数系列、並列に配置して運転する膜分離型連続発酵装置の概略図である。 図7は、本発明の実施の形態3にかかる間欠濾過処理を説明するフローチャートである。 図8は、本発明の実施の形態3にかかる濾過停止処理中に逆圧洗浄を行う間欠濾過処理を説明するフローチャートである。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。まず、本発明にかかる連続発酵による化学品の製造方法の概要について説明した後、具体的な実施の形態について説明する。
<化学品の製造方法>
1.発酵工程
本形態において、化学品の製造方法は、発酵原料を微生物の発酵培養により化学品を含有する発酵液へと変換する発酵工程を含む。
(A)微生物および培養細胞
以下、微生物および培養細胞について述べる。
化学品の製造において使用される微生物については特に制限はなく、例えば、発酵工業においてよく使用されるパン酵母などの酵母、および糸状菌等の菌類;大腸菌およびコリネ型細菌などのバクテリア;放線菌などが挙げられる。また、培養細胞としては、動物細胞および昆虫細胞等が挙げられる。また、使用する微生物や培養細胞は、自然環境から単離されたものでもよく、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。
乳酸を製造する場合、真核細胞であれば酵母、原核細胞であれば乳酸菌を用いることが好ましい。このうち酵母は、乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子を細胞に導入した酵母が好ましい。このうち乳酸菌は、消費したグルコースに対して対糖収率として50%以上の乳酸を産生する乳酸菌を用いることが好ましく、更に好ましくは対糖収率として80%以上の乳酸菌であることが好適である。
乳酸を製造する場合に好ましく用いられる乳酸菌としては、例えば、野生型株では、乳酸を合成する能力を有するラクトバチラス属(Lactobacillus)、バチラス属(Bacillus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)、テトラゲノコッカス属(Genus Tetragenococcus)、カルノバクテリウム属(Genus Carnobacterium)、バゴコッカス属(Genus Vagococcus)、ロイコノストック属(Genus Leuconostoc)、オエノコッカス属(Genus Oenococcus)、アトポビウム属(Genus Atopobium)、ストレプトコッカス属(Genus Streptococcus)、エンテロコッカス属(Genus Enterococcus)、ラクトコッカス属(Genus Lactococcus)およびスポロラクトバチルス属(Genus Sporolactobacillus)に属する細菌が挙げられる。
また、乳酸の対糖収率や光学純度が高い乳酸菌を選択して用いることができ、例えば、D−乳酸を選択して生産する能力を有する乳酸菌としてはスポロラクトバチルス属に属するD−乳酸生産菌が挙げられ、好ましい具体例として、スポロラクトバチルス・ラエボラクティカス(Sporolactobacillus laevolacticus)またはスポロラクトバチルス・イヌリナス(Sporolactobacillus inulinus)が使用できる。さらに好ましくは、スポロラクトバチルス・ラエボラクティカス ATCC 23492、ATCC 23493、ATCC 23494、ATCC 23495、ATCC 23496、ATCC 223549、IAM12326、IAM 12327、IAM 12328、IAM 12329、IAM 12330、IAM 12331、IAM 12379、DSM 2315、DSM 6477、DSM 6510、DSM 6511、DSM 6763、DSM 6764、DSM 6771などとスポロラクトバチルス・イヌリナスJCM 6014などが挙げられる。
L−乳酸の対糖収率が高い乳酸菌としては、例えば、ラクトバシラス・ヤマナシエンシス(Lactobacillus yamanashiensis)、ラクトバシラス・アニマリス(Lactobacillus animalis)、ラクトバシラス・アジリス(Lactobacillus agilis)、ラクトバシラス・アビアリエス(Lactobacillus aviaries)、ラクトバシラス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバシラス・デルブレッキ(Lactobacillus delbruekii)、ラクトバシラス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバシラス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバシラス・ルミニス(Lactobacillus ruminis)、ラクトバシラス・サリバリス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバシラス・シャーピイ(Lactobacillus sharpeae)、ラクトバシラス・デクストリニクス(Pediococcus dextrinicus)、およびラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)などが挙げられ、これらを選択して、L−乳酸の生産に用いることが可能である。
(B)発酵原料
発酵原料としては、培養する微生物および培養細胞の生育を促し、目的とする発酵生産物である化学品を良好に生産させ得るものであればよい。
発酵原料としては、液体培地が用いられる。培地中の成分であって、目的の化学品に変換される物質(すなわち狭義の原料)を原料と称することもあるが、本書では、特に区別しない場合には、培地全体を原料と称する。狭義の原料とは、例えば化学品としてアルコールを得るための発酵基質であるグルコース、フルクトース、ショ糖などの糖である。
原料は、炭素源、窒素源、無機塩類、および必要に応じてアミノ酸やビタミンなどの有機微量栄養素を適宜含有する。炭素源としては、グルコース、シュークロース、フラクトース、ガラクトースおよびラクトース等の糖類、これら糖類を含有する澱粉糖化液、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、酢酸等の有機酸、エタノールなどのアルコール類、およびグリセリンなどが使用される。窒素源としては、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類、各種発酵菌体およびその加水分解物などが使用される。無機塩類としては、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩およびマンガン塩等が添加されてもよい。
微生物または培養細胞が生育のために特定の栄養素を必要とする場合には、その栄養物が標品またはそれを含有する天然物として、原料に添加される。
原料は、消泡剤を必要に応じて含有してもよい。
(C)培養液
培養液とは、発酵原料に微生物または培養細胞が増殖した結果得られる液である。
連続発酵においては、培養液に発酵原料を追加することができるが、追加する発酵原料の組成は、目的とする化学品の生産性が高くなるように、培養開始時の組成から適宜変更してもよい。例えば、狭義の発酵原料の濃度、培地における他の成分の濃度等は、変更可能である。
(D)発酵液
発酵液は、発酵の結果生じた物質を含有する液であり、原料、微生物または培養細胞、及び化学品を含有してもよい。つまり、文言「培養液」と「発酵液」とはほぼ同じ意味で用いられることがある。
(E)化学品
本形態の方法によると、上記の微生物または培養細胞によって、発酵液中に、化学品すなわち変換後の物質が生産される。化学品としては、例えば、アルコール、有機酸、アミノ酸および核酸など発酵工業において大量生産されている物質を挙げることができる。例えば、アルコールとしては、エタノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールおよびグリセロール等が挙げられる。また、有機酸としては、酢酸、乳酸、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸およびクエン酸等を挙げることができ、核酸であればイノシン、グアノシンおよびシチジン等を挙げることができる。また、本発明の方法を、酵素、抗生物質および組換えタンパク質のような物質の生産に適用することも可能である。
また、本発明の製造方法は、化成品、乳製品、医薬品、食品または醸造品の製造に適用できる。ここで化成品としては、例えば、有機酸、アミノ酸および核酸が挙げられ、乳製品としては、例えば、低脂肪牛乳などが挙げられ、食品としては、例えば、乳酸飲料など、醸造品としては、例えば、ビール、焼酎が挙げられる。また、本発明の製造方法によって製造された、酵素、抗生物質、組み換えタンパク質等は、医薬品に適用可能である。
(F)培養
連続発酵による化学品の製造では、培養初期にBatch培養またはFed−Batch培養を行って、微生物濃度を高くした後に、連続発酵(つまり培養液の引き抜き)を開始しても良い。または、微生物濃度を高くした後に、高濃度の菌体をシードし、培養開始とともに連続発酵を行っても良い。連続発酵による化学品の製造では、適当な時期から原料培養液の供給および培養物の引き抜きを行うことが可能である。原料培養液供給と培養液の引き抜きの開始時期は必ずしも同じである必要はない。また、原料培養液の供給と培養液の引き抜きは連続的であってもよいし、間欠的であってもよい。
培養液には菌体増殖に必要な栄養素を添加し、菌体増殖が連続的に行われるようにすればよい。培養液中の微生物または培養細胞の濃度は、培養液の環境が微生物または培養細胞の増殖にとって不適切となって死滅する比率が高くならない範囲で、高い状態で維持することが、効率よい生産性を得る上で好ましい態様である。培養液中の微生物または培養細胞の濃度は、一例として、SL乳酸菌を用いたD−乳酸発酵では、乾燥重量として、微生物濃度を5g/L以上に維持することにより良好な生産効率が得られる。
連続発酵による化学品の製造において、原料に糖類を使用する場合は、培養液中の糖類濃度は5g/L以下に保持されることが好ましい。培養液中の糖類濃度を5g/L以下に保持することが好ましい理由は、培養液の引き抜きによる糖類の流失を最小限にするためである。
微生物および培養細胞の培養は、通常、pH3以上8以下、温度20℃以上60℃以下の範囲で行われる。培養液のpHは、無機の酸あるいは有機の酸、アルカリ性物質、さらには尿素、炭酸カルシウムおよびアンモニアガスなどによって、通常、pH3以上8以下のあらかじめ定められた値に調節する。酸素の供給速度を上げる必要があれば、空気に酸素を加えて酸素濃度を21%以上に保つ、培養液を加圧する、攪拌速度を上げる、あるいは通気量を上げるなどの手段を用いることができる。
連続発酵の運転においては、微生物発酵槽の微生物濃度をモニタリングすることが望ましい。微生物濃度の測定はサンプルを採取し、測定することでも可能だが、微生物発酵槽に、MLSS測定器など、微生物濃度センサーを設置し、微生物濃度の変化状況を連続的にモニタリングすることが望ましい。
連続発酵による化学品の製造では、必要に応じて、発酵槽内から培養液、微生物または培養細胞を引き抜くことができる。例えば、発酵槽内の微生物または培養細胞濃度が高くなりすぎると、分離膜の閉塞が発生しやすくなることから、引き抜くことで、閉塞から回避することができる。また、発酵槽内の微生物または培養細胞濃度によって化学品の生産性能が変化することがあるが、生産性能を指標として微生物または培養細胞を引き抜くことで、生産性能を維持させることも可能である。
連続発酵による化学品の製造では、発酵生産能力のあるフレッシュな菌体を増殖させつつ行う連続培養操作は、菌体を増殖させつつ生産物を生成する連続培養法であれば、発酵槽の数は問わない。連続発酵による化学品の製造では、連続培養操作は、通常、培養管理上単一の発酵槽で行うことが好ましい。発酵槽の容量が小さい等の理由から、複数の発酵槽を用いることも可能である。この場合、配管によって並列または直列に接続された複数の発酵槽を用いて連続培養を行っても、発酵生産物の高生産性は得られる。
2.膜分離工程
(A)分離膜
化学品の製造方法における膜分離工程において用いられる分離膜について説明する。
分離膜は、有機膜、無機膜を問わない。分離膜の洗浄に逆圧洗浄や薬液浸漬による洗浄などを行うため、分離膜は、これらに対する耐久性を有することが好ましい。
分離性能及び透水性能、さらには耐汚れ性の観点から、有機高分子化合物を好適に使用することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、セルロース系樹脂およびセルローストリアセテート系樹脂などが挙げられ、これらの樹脂を主成分とする樹脂の混合物であってもよい。
溶液による製膜が容易で物理的耐久性や耐薬品性にも優れているポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂およびポリアクリロニトリル系樹脂が好ましく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂またはそれを主成分とする樹脂が、化学的強度(特に耐薬品性)と物理的強度を併せ有する特徴をもつためより好ましく用いられる。
ここで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体が好ましく用いられる。さらに、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との共重合体を用いても構わない。フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび三塩化フッ化エチレンなどが例示される。
分離膜は、さらに好ましくは、フッ素樹脂系高分子を含む中空糸膜であり、三次元網目構造と球状構造の両方を有し、三次元網目構造中に脂肪酸ビニルエステル、ビニルピロリドン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種を有する親水性高分子、またはセルロースエステルを含有することで親水性を有する中空糸膜である。
ここで、三次元網目構造とは、固形分が三次元的に網目状に広がっている構造を意味する。三次元網目構造は、網を形成する固形分に仕切られた細孔およびボイドを有する。
また、球状構造とは、多数の球状もしくは略球状の固形分が、直接もしくは筋状の固形分を介して連結している構造を意味する。
さらに、球状構造層と三次元網目構造層の両方を有していれば特に限定されないが、球状構造層と三次元網目構造層とが積層されたものであることが好ましい。一般に層を多段に重ねると、各層の界面では層同士が互いに入り込むために緻密になり、透過性能が低下する。層同士が互いに入り込まない場合は、透過性能は低下しないが、界面の剥離強度が低下する。従って、各層の界面の剥離強度と透過性能を考慮すると、球状構造層と三次元網目構造層の積層数は少ない方が好ましく、球状構造層1層と三次元網目構造層1層の合計2層が積層されることが特に好ましい。
また、分離膜は、球状構造層と三次元網目構造層以外の層、例えば多孔質基材などの支持体層を含んでいても良い。多孔質基材としては、有機材料、無機材料等、特に限定されないが、軽量化しやすい点から有機繊維が好ましい。多孔質基材は、さらに好ましくは、セルロース系繊維、酢酸セルロース系繊維、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維などの有機繊維からなる織布や不織布である。
三次元網目構造層と球状構造層の上下や内外の配置は、濾過方式によって変えることができるが、三次元網目構造層が分離機能を担い、球状構造層が物理的強度を担うため、三次元網目構造層を分離対象側に配置することが好ましい。特に、汚れ物質の付着による透過性能の低下を抑制するためには、分離機能を担う三次元網目構造層を分離対象側の最表層に配置することが好ましい。
また平均細孔径は、使用する目的や状況に応じて適宜決定することができるが、ある程度小さい方が好ましく、通常は0.01μm以上1μm以下であることが良い。中空糸膜の平均細孔径が0.01μm未満であると、糖や蛋白質などの成分やその凝集体などの膜汚れ成分が細孔を閉塞して、安定運転ができなくなる。透水性能とのバランスを考慮した場合、好ましくは0.02μm以上であり、さらに好ましくは0.03μm以上である。また、1μmを超える場合、膜表面の平滑性と膜面の流れによる剪断力や、逆洗やエアースクラビングなどの物理洗浄による細孔からの汚れの成分の剥離が不十分となり、安定運転ができなくなる。さらに中空糸膜の平均細孔径が微生物または培養細胞の大きさに近づくと、これらが直接孔を塞いでしまう場合がある。また発酵液中の微生物または培養細胞の一部が死滅することにより細胞の破砕物が生成する場合があり、これらの破砕物によって中空糸膜の閉塞することから回避するために、平均細孔径は0.4μm以下が好ましく、0.2μm以下であれば、より好適に実施することができる。
ここで、平均細孔径は、倍率10,000倍以上の走査型電子顕微鏡観察で観察される複数の細孔の直径を測定し、平均することにより求めることができる。10個以上、好ましくは20個以上の細孔を無作為に選び、それら細孔の直径を測定し、数平均して求めることが好ましい。細孔が円状でない場合などは画像処理装置等によって、細孔が有する面積と等しい面積を有する円、すなわち等価円を求め、等価円直径を細孔の直径とする方法により求めることも好ましく採用できる。
(B)分離条件
微生物または培養細胞の発酵液を膜モジュール中の分離膜で濾過処理する際の膜間差圧は、微生物および培養細胞、並びに培地成分が容易に目詰まりしない条件であればよい。例えば、膜間差圧を0.1kPa以上20kPa以下の範囲にして濾過処理することができる。膜間差圧は、好ましくは0.1kPa以上10kPa以下の範囲であり、さらに好ましくは0.1kPa以上5kPaの範囲である。上記膜間差圧の範囲内であれば、微生物(特に原核生物)および培地成分の目詰まり、並びに透過水量の低下を抑制することで、連続発酵運転に不具合を生じることを効果的に抑制することができる。
濾過の駆動力としては、発酵液と多孔性膜処理水の液位差(水頭差)を利用したサイホン、またはクロスフロー循環ポンプにより分離膜に膜間差圧を発生させることができる。また、濾過の駆動力として分離膜処理水側に吸引ポンプを設置してもよい。また、クロスフロー循環ポンプを使用する場合には、吸引圧力により膜間差圧を制御することができる。更に、発酵液側の圧力を導入する気体または液体の圧力によっても膜間差圧を制御することができる。これら圧力制御を行う場合には、発酵液側の圧力と多孔性膜処理水側の圧力差をもって膜間差圧とし、膜間差圧の制御に用いることができる。
(C)分離膜の様式
分離膜の形状は、平膜、中空糸膜、スパイラル式などいずれの形状のものも採用することができ、中空糸膜モジュールであれば、外圧式、内圧式のいずれの形状のものも採用することができる。
分離膜モジュールの長さ、充填率、分離膜種類などの仕様は同じでも、変更しても良い。ただし、例えば充填率を変えると、モジュール毎にクロスフロー流束が異なり、クロスフローの剪断力による分離膜の洗浄効果が異なる現象が発生する。またモジュールの濾過速度の設定も個別に行う必要があり、品番が増えるため在庫管理も手間が増え、生産管理の観点からは、仕様は同じである方が好ましい。
3.分離膜の洗浄工程
化学品の製造方法は、分離膜の洗浄工程を含んでいてもよい。洗浄工程は、具体的な方法に限定されるものではないが、濾過処理と濾過停止処理を繰り返す間欠濾過処理により分離膜の1次側の表面において、クロスフローの剪断力により、分離膜上の微生物等の堆積物を除去するほか、逆圧洗浄や逆圧洗浄液で浸漬して分離膜を洗浄することが好ましい。複数の分離膜モジュールを使用し、間欠濾過処理を行う場合、並列または直列に配置した複数の分離膜モジュールの濾過停止処理が重複しないように制御して、濾過が全停止しないようにすることが好ましい。
ここで、分離膜の洗浄は、濾過を停止して分離膜の2次側から1次側へ洗浄液を通液する洗浄(逆圧洗浄)、および分離膜の2次側から1次側へ洗浄液を通液し分離膜部分で浸漬洗浄する方法、また、濾過を停止して、分離膜の2次側から1次側に酸化剤を含む洗浄液を供給し逆圧洗浄を実施した後に、還元剤を含む洗浄液を、分離膜の1次側から2次側へ、または分離膜の2次側から1次側へ通液して洗浄する方法、を指す。
濾過を停止して分離膜を洗浄する際、同時に連続的または間欠的に、気体をモジュールへ供給しても良い。なお、分離膜を逆圧洗浄する際、クロスフローの流れは有り/無しの何れでも良く、クロスフローの流れが有りで逆圧洗浄する場合は、クロスフローの圧力と分離膜間差圧の総和より大きい圧力にて逆圧洗浄をすれば良い。
ここで、逆圧洗浄とは、分離膜の2次側である濾過液側から、1次側である発酵液側へ洗浄液を送ることにより、膜面の汚れ物質を除去する方法である。逆圧洗浄は、水、または洗浄液により行うことができる。洗浄液には、発酵に大きく阻害しない範囲で、アルカリ、酸、酸化剤または還元剤を含む水を使用することができる。ここで、アルカリの例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどを挙げることができる。酸の例としては、シュウ酸、クエン酸、塩酸、硝酸などを挙げることができる。また酸化剤の例としては、次亜塩素酸塩、過酸化などを挙げることができる。還元剤の例としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどの無機系還元剤などを挙げることができる。
なお、逆圧洗浄は、分離膜の膜間差圧が大きくなっていくのを防止するのに行うため、適当な時間間隔で周期的に行うことが好ましい。連続発酵の場合、発酵は連続的に行われるので、発酵によるpHの変化が生じた際、pH調整液もいつでも添加できることが必要で、連続的なpH調整液の添加が必要となる。アルカリや酸を逆圧洗浄液に添加し、これを発酵液のpH調整に用いることも考えられるが、pH調整が必要なタイミングで、逆圧洗浄するとは限らず、pH調整への使用には適さない。
また、逆圧洗浄で分離膜の洗浄のため添加しているアルカリまたは酸と、その時点でpH調整に必要なアルカリまたは酸が一致しているとは限らず、逆圧洗浄でアルカリを添加しているが、pH調整で酸を添加する必要があるケースもあり得る。
さらに、逆圧洗浄では、分離膜の2次側から1次側に透過させるため、アルカリまたは酸は固形物を含まないことが好ましいが、pH調整では、発酵液に添加された状態で溶解できれば良いので、スラリー状のアルカリまたは酸を使用することもできる。
例えば発酵で得られる化学品が乳酸である場合、発酵に適したpHを維持するため、乳酸の生成により酸性サイドにシフトするpHをアルカリで中和する必要があるが、連続発酵では、発酵速度が速くなるため、多くのアルカリを添加する必要がある。中和剤に水酸化カルシウムを用いる場合、水酸化カルシウムは約0.01Nより濃い濃度では、水酸化カルシウムが溶解せずに固体として存在するため、逆圧洗浄液としては適さない。そのため、約0.01N以下の水酸化カルシウム溶液で中和を行うが、この場合、pH調整液として添加する量が多くなり、結果として発酵液を希釈して、化学品の濃度が小さくなり、発酵液から化学品を得るため、後工程で蒸発などを行う際に、余分なエネルギーが必要となる課題がある。
発酵液のpHが一時的にでも適正範囲を外れれば、その期間の発酵成績が低下し、また微生物の活性が低下する懸念がある。そのため、逆圧洗浄にアルカリや酸を添加するとしても、逆圧洗浄液とpH調整液としての機能の両立は困難であり、発酵液のpHを適正な範囲に制御するため、別にpH調整の制御装置を持つことが必要である。
逆圧洗浄液が酸化剤を含有する場合は、洗浄後に分離膜モジュールおよび2次側である濾過側配管内に酸化剤が残留する可能性がある。よって、逆圧洗浄後、還元剤を含有する水溶液を1次側から2次側へ濾過させることもできる。この時、還元剤の濃度としては、1ppm以上5000ppm以下の範囲でよく、残留していると思われる酸化剤に対し、還元中和するのに必要な理論濃度の1倍から5倍以下程度がより好ましい。また還元剤を含む水溶液を濾過する周期は、酸化剤による逆圧洗浄周期と合わせて決定される。微生物への影響など考慮して、必要に応じて、複数の酸化剤による逆圧洗浄を行った後、還元剤の洗浄を行うこともできる。
なお、還元剤を含む水を濾過する時間および注入速度としては、分離膜モジュールの中などの酸化剤が還元中和されるまで行うことが好ましい。例えば酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いた場合、濾過側の2次配管中の遊離塩素濃度が0.1ppm程度となる程度まで実施することが望ましい。遊離塩素濃度の測定法には、DPD法、電流法、吸光光度計などが用いられる。測定は適宜採水し、DPD法および電流法により遊離塩素濃度の測定を行うが、吸光光度計を用いた連続自動測定機器より、遊離塩素濃度の測定を行う。これらの測定により、遊離塩素濃度を監視し、還元剤を添加した水を濾過する時間を決定する。
ここで、発明の効果を阻害しない範囲の洗浄液とは、例えば次亜塩素酸ナトリウムの場合は、有効塩素濃度が10〜5000ppmの洗浄液を使用することが好ましく、例えば水酸化ナトリウムおよび水酸化カルシウムは、pHが10〜13の洗浄液を使用することが好ましい。この範囲を超える濃度では分離膜の損傷、微生物への悪影響が考えられ、これ未満の濃度では、膜洗浄効果の低下が懸念される。
この逆圧洗浄液は高温で使用することもできる。なお、逆圧洗浄液の逆圧洗浄速度は、膜濾過速度の0.5倍以上10倍以下の範囲が好ましく、1倍以上5倍以下の範囲であることがより好ましい。逆圧洗浄速度が膜濾過速度の10倍以下であることで、分離膜に損傷を与える可能性を低減し、また0.5倍以上であることで洗浄効果を充分に得ることができる。
逆圧洗浄液の逆圧洗浄周期は、膜差圧および膜差圧の変化により決定することができる。逆圧洗浄周期は、時間あたり0.5回以上12回以下の範囲であり、より好ましくは時間あたり1回以上6回以下の範囲である。逆圧洗浄周期がこの範囲より多いと、分離膜に損傷を与える可能性があり、濾過を行う時間が短くなる。またこの範囲より少ないと、洗浄効果が充分に得られないことがある。
逆圧洗浄液の逆圧洗浄時間は、逆圧洗浄周期、膜差圧および膜差圧の変化により決定することができる。逆圧洗浄時間は、1回あたり5秒以上300秒以下の範囲であり、より好ましくは1回あたり30秒以上120秒以下の範囲である。逆圧洗浄時間がこの範囲より長いと、分離膜に損傷を与える可能性があり、またこの範囲より短いと、洗浄効果が充分に得られないことがある。
また逆圧洗浄をする際に、一旦濾過を停止し、逆圧洗浄液で分離膜を浸漬することができる。浸漬時間は、浸漬洗浄周期、膜差圧および膜差圧の変化により決定することができる。浸漬時間は、好ましくは1回あたり1分以上24時間以下、より好ましくは1回あたり10分以上12時間以下の範囲である。
連続発酵装置においては、分離膜を複数系列とし、分離膜を逆圧洗浄液で浸漬洗浄する際に、一部の系列のみを浸漬洗浄するように切り替えて、濾過が全停止しないようにすることも好ましく採用できる。
洗浄液保管タンク(洗浄液槽)、洗浄液供給ポンプ、洗浄液保管タンクからモジュールまでの配管およびバルブは、耐薬品性に優れるものを使用すれば良い。逆圧洗浄液の注入は手動でも可能だが、濾過・逆洗制御装置を設け、濾過ポンプおよび濾過側バルブ、洗浄液供給ポンプおよび洗浄液供給バルブを、タイマーなどにより自動的に制御して注入することが望ましい。
<化学品の製造装置>
本発明の実施の形態に用いられる連続発酵装置について、図を用いて説明する。以下の連続発酵装置は、上述した化学品の製造方法を実行するための装置の一例である。よって、製造方法を実行するための装置の構成として製造方法の欄で既に言及された構成については、説明を省略することがある。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る膜分離型連続発酵装置の概略図である。本発明の実施の形態1に係る膜分離型連続発酵装置100は、発酵原料を微生物等の発酵培養により化学品を含有する発酵液へと変換する発酵槽1と、発酵槽1で変換された発酵液を濾過して化学品を濾過液として回収するとともに、非濾過液を発酵槽1に還流する分離膜ユニット30と、を備える。本実施の形態1の分離膜ユニット30では、3本の分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cを並列に配置している。
発酵槽1は、発酵槽1内の温度を制御する温度制御装置3と、発酵槽1内の発酵液を撹拌する攪拌装置4と、培養液のpHを検出し、その結果に応じて、培養液のpHを設定範囲内のpHを示すように、中和剤供給ポンプ10を制御するpHセンサー・制御装置5と、発酵槽1内の液面の高さを検知し、設定範囲内の液面を示すように、培地供給ポンプ9および水供給ポンプ14を制御するレベルセンサー・制御装置6と、発酵槽1内に気体を供給する気体供給装置13と、を備える。
発酵槽1内には、原料及び微生物または培養細胞が投入される。発酵工程は発酵槽1内で進行する。最初に、培地供給ポンプ9によって、原料が原料槽から発酵槽1に投入される。中和剤供給ポンプ10は、中和剤を貯蔵する中和剤槽に接続されており、中和剤槽には、使用する原料及び微生物または培養細胞に応じて適宜選択された、酸性水溶液またはアルカリ性水溶液が貯蔵されている。pHセンサー・制御装置5は、中和剤供給ポンプ10を駆動して中和剤を発酵槽1に添加することによって培養液のpHを設定されたpHに調節する。培養液のpHが一定範囲内に保たれることで、生産性の高い発酵生産を行うことができる。中和剤、つまり酸性水溶液およびアルカリ性水溶液は、pH調整液に該当する。
温度制御装置3は、温度検出する温度センサーと、加熱部と、冷却部と、制御部とを備える。温度制御装置3は、温度センサーによって発酵槽1内の温度を検出し、検出結果に応じて、温度が一定の範囲内の値を示すように制御部によって加熱部及び冷却部温度を制御する。こうして、発酵槽1の温度が一定に維持されることで、微生物濃度が高く維持される。
発酵槽1には直接又は間接的に水を添加することができる。水供給ポンプ14は、発酵槽1に直接的に水を供給する。間接的な水の供給は、原料の供給およびpH調整液の添加等を含む。連続発酵装置に添加される物質は、コンタミによる汚染を防止し、発酵を効率よく行うため、滅菌されていることが好ましい。例えば、培地は、培地原料を混合後に加熱されることで滅菌されてもよい。また、培地、pH調整液および発酵槽に添加される水は、必要に応じて、滅菌用フィルターを通すなどして無菌化されてもよい。
レベルセンサー・制御装置6は、発酵槽1内の液面の高さを検知するセンサーと、制御装置とを備える。制御装置は、このセンサーの検知結果に基づいて、培地供給ポンプ9、水供給ポンプ14等を制御することによって、発酵槽1内に流入する液量を制御することで、発酵槽1内の液面の高さを一定の範囲内に維持する。
好気発酵においては、発酵槽1に気体供給装置13により気体を供給し、発酵液に酸素を溶解させて発酵を行うが、連続発酵法において、微生物や培養細胞を分離膜モジュール2で濾過する際、濾液から化学品を回収すると同時に濃縮液中の微生物や培養細胞を発酵培養液に保持または還流させるため、分離膜モジュール2において発酵液をクロスフロー循環させる。この循環を行う送液ラインや分離膜モジュール2に気体を供給することで、発酵槽1とは別の場所で、発酵液に酸素を溶解させることもでき、かつ気体の剪断力により分離膜表面へ堆積した微生物等を除去することができる。
ここで、気体については、好気性発酵の場合は、酸素を含む気体が必要であり、純酸素で供給しても良く、発酵に悪影響のない気体、例えば、空気、窒素、二酸化炭素、メタン、または前記した気体の混合気体などを混合して酸素の濃度を調整した気体でも良い。一方で嫌気性発酵の場合において、酸素の供給速度を下げる必要があれば、二酸化炭素、窒素、メタンおよびアルゴンなど、酸素を含まないガスを空気に混合して供給することも可能である。
気体供給源は、気体を圧縮した後、一定な圧力で気体を供給することが可能な装置、または、気体が圧縮されていて、一定な圧力で気体を供給することが可能なタンクで良い。ガスボンベ、ブロアー、コンプレッサー、あるいは配管によって供給される圧縮ガスなどを使用することができる。
また、気体供給源から気体供給口までの配管には流量計などを設置し、気体供給量の測定ができるようにし、前記配管にバルブなどを設置し、供給流量を制御する。バルブは気体の流量を調整することができるもので、自動バルブを設け、気体供給を間欠的に行うことができる。気体供給は、バルブを用いて手動で行うことも可能だが、気体供給量を制御する装置を設け、濾過ポンプおよび濾過側バルブ、気体供給バルブおよび流量計を、タイマーなどにより自動的に制御して供給することが望ましい。前記流量計、バルブ、制御装置を設置しなくても、供給する気体の流量が確認でき、その流量を制御することができるものであれば、特に限定されない。
気体供給源から気体供給口までの配管には、発酵系の中に雑菌が入らないように、滅菌用装置や滅菌用フィルターなどを設置することが好ましい。
気体供給口は、気体供給源から分離膜モジュール2の1次側に気体を供給することができれば良い。気体供給口は、分離膜モジュール2の下部に設けても良く、さらには、発酵槽1と分離膜モジュール2とを連通する配管20に設けることもできる。循環ポンプ8を用いて発酵槽1から分離膜モジュール2まで発酵液を送液する際には、発酵液と循環ポンプ8の間、または循環ポンプ8と分離膜モジュール2の間に気体供給口を設けることができる。
気体供給口の大きさは、気体供給量が供給可能で、かつ、発酵液により詰まりが発生しないような大きさであれば良い。発酵系の中に雑菌が入らないように、滅菌用フィルターなどを設置することもできる。
なお、気体の供給ラインを分離膜モジュール2A、2B、2C毎に設置すれば、気体の供給についても分離膜モジュール2A、2B、2C毎に行うことができる。気体の剪断力により分離膜表面へ堆積した微生物等を除去効果により、間欠的に気体を供給し、気体の使用量を抑制することもできる。
分離膜ユニット30は、分離膜モジュール2と、分離膜モジュール2に発酵液を送液する循環ポンプ8と、分離膜モジュール2の逆圧洗浄を行う分離膜洗浄装置40と、分離膜ユニット30の各部を制御する制御装置50と、を備える。
分離膜モジュール2には、多数の中空糸膜が組み込まれている。分離膜モジュール2には、均等に発酵液が送液されることが好ましく、そのため、送液する発酵液の粘度、送液ラインの配管長さ及び太さにより送液抵抗が送液圧に対して小さいことが好ましい。本実施の形態1では、3本の分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cを並列に配置しているが、分離膜モジュール2の数は複数であれば特に制限は無い。分離膜モジュール2の系列数は、後述する分離膜モジュール2の運転方法に加えて、使用する循環ポンプの仕様も考慮して決定することが好ましい。
分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cの長さ、充填率、分離膜種類などの仕様は同じでも、変更しても良い。ただし、例えば充填率を変えると、分離膜モジュール2毎にクロスフロー流束が異なり、クロスフローの剪断力による分離膜の洗浄効果が異なる現象が発生する。また分離膜モジュール2の濾過速度の設定も個別に行う必要があり、品番が増えるため在庫管理も手間が増え、生産管理の観点からは、分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cの仕様は同じである方が好ましい。
循環ポンプ8は、発酵槽1内の発酵液を、配管20を介して分離膜モジュール2A、2B、2Cに送液する。循環ポンプ8と分離膜モジュール2A、2B、2Cとの間には、送液バルブ28が配置される。配管20は、配管20A、配管20B、配管20Cに分岐し、配管20A、配管20B、配管20Cには、バルブ19A、バルブ19B、バルブ19Cがそれぞれ配置される。
発酵槽1から分離膜モジュール2への発酵液の供給ラインである配管20には、分離膜モジュール2を経由しないで発酵槽1に循環するバイパスとしての配管27およびバルブ17と、循環ポンプ8の入りラインに循環するバイパスとしての配管29およびバルブ18とを有する。循環するバイパスラインを設けることで、濾過性が悪化した場合などに分離膜モジュール2の一部を停止する場合、停止する分離膜モジュール2の分のクロスフロー流量をバイパスにて流すことができ、クロスフローの圧力変動を抑えることができる。
分離膜モジュール2A、2B、2Cでそれぞれ濾過された濾過液は、配管21A、配管21B、配管21Cを介して濾過液回収部に送液される。配管21A、配管21B、配管21Cには、濾過バルブ15A、濾過バルブ15B、濾過バルブ15Cと、濾過ポンプ11A,濾過ポンプ11B、濾過ポンプ11Cがそれぞれ配置される。また、分離膜モジュール2A、2B、2Cには、発酵液が供給される1次側と、濾過液が濾過される2次側の差圧を計測する差圧センサー7A、7B、7Cが設置される。
制御装置50は、送液バルブ28、バルブ19および濾過バルブ15を開とし、循環ポンプ8により分離膜モジュール2A、2B、2Cに発酵液を送液することにより、発酵生産物である化学品を濾過により回収する。濾過の際、差圧センサー7により、1次側と2次側の差圧を計測し、濾過ポンプ11を駆動して濾過吸引してもよいが、差圧センサー7および濾過ポンプ11の設置なしでも濾過液を回収することができる。
分離膜モジュール2A、2B、2Cで濾過されなかった発酵液(非濾過液)は、配管23A、配管23B、配管23Cを介して発酵槽1に還流される。配管23A、配管23B、配管23Cには、バルブ22A、バルブ22B、バルブ22Cがそれぞれ配置される。
分離膜洗浄装置40は、洗浄液を貯蔵する洗浄液槽と、分離膜モジュール2A、2B、2Cにそれぞれ洗浄液を送液する配管24A、配管24B、配管24Cと、供給ポンプ12A、供給ポンプ12B、供給ポンプ12Cとを備える。また、配管24A、配管24B、配管24C上には、洗浄液バルブ16A、洗浄液バルブ16B、洗浄液バルブ16Cがそれぞれ配置されている。
洗浄液槽と、供給ポンプ12、ならびに洗浄液槽から分離膜モジュール2までの配管24および洗浄液バルブ16は、耐薬品性に優れるものを使用すれば良い。逆圧洗浄液の注入は手動でも可能だが、制御装置50により、濾過ポンプ11および濾過バルブ15、供給ポンプ12および洗浄液バルブ16を、タイマーなどにより自動的に制御して注入することが望ましい。
分離膜モジュール2A、2B、2Cの逆圧洗浄の条件は、同一にしても良いし、個別に変更しても良い。例えば、分離膜間差圧を差圧センサー7により測定し、閉塞が大きい(差圧が大きい)分離膜モジュール2について、逆圧洗浄速度を大きくしても良いし、逆圧洗浄時間を長くしても良い。逆に、分離膜モジュール2の閉塞が小さい分離膜モジュール2について、逆圧洗浄速度を小さくしても良いし、逆圧洗浄時間を短くして濾過時間を長くしても良い。
また、分離膜モジュール2の一次側に供給する発酵液の圧力を変動させることにより、分離膜の濾過性能を良好に維持することができる。循環ポンプ8の吐出圧力を変動することにより局所的に乱流領域をつくることができ、クロスフローの発酵液の剪断力が増大し、分離膜表面に堆積した微生物等の堆積物を除くことができる。
循環ポンプ8の吐出圧力の変動は、連続的に変動させることもできる。通常、循環ポンプ8の吐出圧力は、ほぼ一定で運転しているが、設定の時間のみ、制御バルブを操作することなどにより、設定した時間のみ変動させ断続的に変動させることもできる。
循環ポンプ8の吐出圧力の変動が小さすぎると、堆積物の除去効果が小さく、また圧力変動が大きすぎると、送液配管のハンチングによる接続部からの漏れが発生する懸念もある。そのため、循環ポンプ8の圧力変動の大きさは、吐出圧力に対して、3%以上20%以下であることが望ましい。
また、循環ポンプ8の吐出圧力を変動する際、クロスフロー循環の送液ライン、例えば、配管20や、分離膜モジュール2に同時に気体を供給することで、供給する発酵液中に気体を混入させることができ、発酵液中に混入した気体により剪断力を増加させることができる。これにより、分離膜表面へ堆積した微生物等の除去効果をさらに増大させることができる。
制御装置50は、洗浄液バルブ16を開とし、供給ポンプ12により洗浄液を分離膜モジュール2の2次側である濾過液側に送液することにより分離膜モジュール2の逆圧洗浄を行う。このとき、発酵液を分離膜モジュール2に供給する配管20上のバルブ19は閉とし、非濾過液を発酵槽1に還流する配管23上のバルブ22を開とする。また、濾過液回収部への洗浄液の混入を防止するため、濾過バルブ15は閉とするよう制御する。
本実施の形態1にかかる膜分離型連続発酵装置100において、発酵生産物を含む発酵液は、分離膜モジュール2によって濾過されることで微生物または培養細胞と発酵生産物に分離され、装置系から取り出される。また、分離された微生物または培養細胞は、発酵槽1に還流され、装置系内にとどまるので、装置系内の微生物濃度が高く維持される。その結果、生産性の高い発酵生産を可能としている。
分離膜ユニット30において、クロスフローの流れの剪断力により分離膜表面の堆積物を除去することができる。濾過処理と濾過停止処理とを交互に繰り返す間欠的濾過を行い、特に濾過を停止する濾過停止処理時にクロスフローの流れの剪断力を大きくすることにより分離膜表面の堆積物を除去することが好ましい。例えば9分間の濾過処理と1分間の濾過停止処理とを繰り返し行なう間欠濾過において、濾過時の9分間は、濾過で発酵液が減量した分、発酵槽に原料が添加されるが、濾過停止時の1分間は、循環ポンプ8により発酵液が全量発酵槽1に還流され、発酵液は減量しないので、発酵槽に原料は添加されない。膜分離型連続発酵装置100において、分離膜モジュール2A、2B、2Cを、全て同じタイミングで9分間の濾過処理と、1分間の濾過停止処理を行うと、濾過を行う際は原料が添加されるが、濾過停止処理の際は原料が添加されない。原料の添加が間欠的になると、発酵槽1中の原料濃度が安定せず、そのため安定した発酵が困難となる懸念がある。そのため、本実施の形態1においては、分離膜モジュール2A、2B、2Cを同時に濾過停止せず、分離膜モジュール2の濾過停止処理が重複しないよう制御して、濾過量が均等化するように調整することが有効である。
図2を参照して、実施の形態1にかかる間欠濾過処理を説明する。図2は、実施の形態1にかかる間欠濾過処理を説明するフローチャートである。実施の形態1において、複数の分離膜モジュール2A、2B、2Cを間欠濾過処理する場合、分離膜モジュール2A、2B、2Cの濾過停止処理のタイミングを制御して間欠濾過処理を行うことが好ましい。実施の形態1において、濾過停止処置のタイミングを制御するとは、例えば、少なくとも1本の分離膜モジュール2の濾過停止処理を、他の分離膜モジュール2の濾過処理中に行うことを意味し、好ましくは、分離膜モジュール2A、2B、2Cの濾過停止処理が重複しないよう制御する。分離膜モジュール2A、2B、2Cの濾過停止処理が重複しないように間欠濾過する場合、まず、すべての分離膜モジュール2A、2B、2Cで濾過処理を行う(ステップS1)。すべての分離膜モジュール2A、2B、2Cで濾過処理を行うためには、濾過バルブ15A、15Bおよび15Cを開とし、濾過ポンプ11A、11Bおよび11Cを運転するとともに、循環ポンプ8により分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cに発酵液を供給することにより濾過される。なお、以下のすべての工程において、循環バルブ28、バルブ19A、バルブ19B、およびバルブ19C、バルブ22A、バルブ22B、バルブ22Cはいずれも開の状態であり、分離膜モジュール2A、2B、2Cで濾過されなかった発酵液は、発酵槽1にクロスフローされている。
所定時間経過後(例えば2分後)、分離膜モジュール2Aを濾過停止処理する(ステップS2)。分離膜モジュール2Aを濾過停止処理し、かつその他の分離膜モジュール2Bおよび2Cを濾過処理する場合、濾過バルブ15Bおよび15Cを開、15Aを閉とし、濾過ポンプ11Bおよび11Cを運転、11Aを停止するとともに、循環ポンプ8により分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cに発酵液を供給することにより、分離膜モジュール2Bおよび2Cのみで濾過される。分離膜モジュール2Aでは、濾過停止処理となり、分離膜モジュール2A内でクロスフローされる発酵液により膜の堆積物を除去している。
所定時間経過後(例えば1分後)、分離膜モジュール2Aの濾過停止処理を終了して、すべての分離膜モジュール2A、2B、2Cで濾過処理を行う(ステップS3)。濾過バルブ15Aを開に切替え、濾過ポンプ11Aを運転することによりすべての分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cで濾過処理される。
所定時間経過後(例えば2分後)、分離膜モジュール2Bを濾過停止処理する(ステップS4)。分離膜モジュール2Bを濾過停止処理し、かつその他の分離膜モジュール2Aおよび2Cを濾過処理する場合、濾過バルブ15Bを閉に切替え、濾過ポンプ11Bを停止することにより、分離膜モジュール2Aおよび2Cのみで濾過され、分離膜モジュール2Bでは、濾過停止処理となる。分離膜モジュール2B内では、クロスフローされる発酵液により膜の堆積物を除去している。
所定時間経過後(例えば1分後)、分離膜モジュール2Bの濾過停止処理を終了して、すべての分離膜モジュール2A、2B、2Cで濾過処理を行う(ステップS5)。濾過バルブ15Bを開に切替え、濾過ポンプ11Bを運転することによりすべての分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cで濾過処理される。
所定時間経過後(例えば2分後)、分離膜モジュール2Cを濾過停止処理する(ステップS6)。分離膜モジュール2Cを濾過停止処理し、かつその他の分離膜モジュール2Aおよび2Bを濾過処理する場合、濾過バルブ15Cを閉に切替え、濾過ポンプ11Cを停止することにより、分離膜モジュール2Aおよび2Bのみで濾過され、分離膜モジュール2Cでは、濾過停止処理となる。分離膜モジュール2C内では、クロスフローされる発酵液により膜の堆積物を除去している。
このような間欠濾過処理を繰り返すことで、分離膜モジュール2A、2B、2Cの濾過停止処理が重複しないよう制御することができる。
なお、上記のフローでは、濾過停止する分離膜モジュール2にも循環ポンプ8により発酵液を通液しているが、濾過停止する分離膜モジュール2のバルブ19を閉として、循環ポンプ8による通液を停止しても良い。循環ポンプ8によるクロスフローの流れの剪断力により、分離膜モジュール2の膜表面の汚れを除去することが期待できることから、濾過停止でもクロスフローの流れがあることが好ましい。
また、濾過停止処理中に膜の逆圧洗浄を行うこともできる。
濾過停止時に逆圧洗浄を行う場合、例えば、濾過時の9分間は、濾過で発酵液が減量した分、発酵槽に原料が添加されるが、濾過停止時に逆圧洗浄する1分間は、逆圧洗浄の洗浄液が発酵槽1に流入するため、発酵槽1の発酵液量が増加する。発酵槽1の液量が設定値を超える場合は、逆圧洗浄液の増加分が解消されるまで、発酵槽1に原料は添加されない。複数の分離膜モジュール2が、全て同じタイミングで9分間濾過と1分濾過停止・逆圧洗浄とを繰り返す場合、原料の添加が間欠的となり、発酵槽1中の原料濃度が安定せず、そのため安定した発酵が困難となる懸念がある。そのため、分離膜モジュール2A、2B、2Cについて、同時に逆圧洗浄しないようにタイミングをずらして、濾過量が均等化するように調整することが有効である。
図3を参照して、本実施の形態1において、濾過停止処理中に逆圧洗浄を行う場合の間欠濾過処理を説明する。図3は、本発明の実施の形態1の変形例にかかる間欠濾過処理を説明するフローチャートである。複数の分離膜モジュール2A、2B、2Cを濾過停止中に逆圧洗浄する場合、分離膜モジュール2A、2B、2Cの逆圧洗浄のタイミングを制御して間欠濾過処理を行うことが好ましい。実施の形態1において逆圧洗浄のタイミングを制御するとは、例えば、少なくとも1本の分離膜モジュール2の逆圧洗浄処理を、他の分離膜モジュール2の濾過処理中に行うことを意味し、好ましくは、分離膜モジュール2A、2B、2Cの逆圧洗浄処理が重複しないように制御する。分離膜モジュール2A、2B、2Cの逆圧洗浄処理が重複しないように間欠濾過する場合、まず、すべての分離膜モジュール2A、2B、2Cで濾過処理を行う(ステップS11)。すべての分離膜モジュール2A、2B、2Cで濾過処理を行うためには、濾過バルブ15A、15Bおよび15Cを開とし、濾過ポンプ11A、11Bおよび11Cを運転するとともに、循環ポンプ8により分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cに発酵液を供給することにより濾過される。なお、以下のすべての工程において、循環バルブ28、バルブ19A、バルブ19B、およびバルブ19C、バルブ22A、バルブ22B、バルブ22Cはいずれも開の状態であり、分離膜モジュール2A、2B、2Cで濾過されなかった発酵液は、発酵槽1にクロスフローされている。
所定時間経過後(例えば2分後)、分離膜モジュール2Aを逆圧洗浄処理する(ステップS12)。分離膜モジュール2Aを逆圧洗浄処理し、かつその他の分離膜モジュール2Bおよび2Cを濾過処理する場合、濾過バルブ15Bおよび15Cを開、15Aを閉とし、濾過ポンプ11Bおよび11Cを運転、11Aを停止するとともに、循環ポンプ8により分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cに発酵液を供給する。さらに洗浄液バルブ16Bおよび16Cを閉、16Aを開とし、供給ポンプ12Bおよび12Cを停止、12Aを運転することで、分離膜モジュール2B、2Cが濾過、2Aが逆圧洗浄となる。分離膜モジュール2Aでは、供給ポンプ12Aにより洗浄液が分離膜モジュール2Aの2次側に供給され、洗浄液が1次側に濾過されることにより膜の堆積物を除去している。
所定時間経過後(例えば1分後)、分離膜モジュール2Aの逆圧洗浄処理を終了して、すべての分離膜モジュール2A、2B、2Cで濾過処理を行う(ステップS13)。洗浄液バルブ16Aを閉に切替え、供給ポンプ12Aを停止するとともに、濾過バルブ15Aを開に切替え、濾過ポンプ11Aを運転することによりすべての分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cで濾過処理される。
所定時間経過後(例えば2分後)、分離膜モジュール2Bを逆圧洗浄処理する(ステップS14)。分離膜モジュール2Bを逆圧洗浄処理し、かつその他の分離膜モジュール2Aおよび2Cを濾過処理する場合、濾過バルブ15Bを閉に切替え、濾過ポンプ11Bを停止するとともに、洗浄液バルブ16Bを開に切替え、供給ポンプ12Bを運転することで分離膜モジュール2A、2Cが濾過、2Bが逆圧洗浄となる。分離膜モジュール2Bでは、供給ポンプ12Bにより洗浄液が分離膜モジュール2Bの2次側に供給され、洗浄液が1次側に濾過されることにより膜の堆積物を除去している。
所定時間経過後(例えば1分後)、分離膜モジュール2Bの逆圧洗浄処理を終了して、すべての分離膜モジュール2A、2B、2Cで濾過処理を行う(ステップS15)。洗浄液バルブ16Bを閉に切替え、供給ポンプ12Bを停止するとともに、濾過バルブ15Bを開に切替え、濾過ポンプ11Bを運転することによりすべての分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cで濾過処理される。
所定時間経過後(例えば2分後)、分離膜モジュール2Cを逆圧洗浄処理する(ステップS16)。分離膜モジュール2Cを逆圧洗浄処理し、かつその他の分離膜モジュール2Aおよび2Bを濾過処理する場合、濾過バルブ15Cを閉に切替え、濾過ポンプ11Cを停止するとともに、洗浄液バルブ16Cを開に切替え、供給ポンプ12Cを運転することで分離膜モジュール2A、2Bが濾過、2Cが逆圧洗浄となる。分離膜モジュール2Cでは、供給ポンプ12Cにより洗浄液が分離膜モジュール2Cの2次側に供給され、洗浄液が1次側に濾過されることにより膜の堆積物を除去している。
このような間欠濾過処理を繰り返すことで、分離膜モジュール2A、2B、2Cの逆圧洗浄処理が重複しないよう制御することができる。
上記において、間欠濾過処理の濾過停止処理中に膜の逆圧洗浄を行う場合について説明したが、間欠濾過処理のすべての濾過停止処理中に逆圧洗浄を行う必要はなく、分離膜の閉塞を防止することができれば、濾過停止処理の一部でのみ逆圧洗浄を行うこととしてもよい。例えば、図2に示す間欠濾過処理1(分離膜モジュール2A、2B、2Cの濾過停止処理を重複しないように制御)と、図3に示す間欠濾過処理2(分離膜モジュール2A、2B、2Cの逆圧洗浄処理を重複しないように制御)とを交互に繰り替えしてもよく、または間欠濾過処理1を2回連続し、その後間欠濾過処理2を1回等、を繰り返し行ってもよく、分離膜モジュールの性能や、濾過処理対象、濾過処理量等の濾過条件等を考慮して決定すればよい。あるいは、間欠濾過処理の濾過停止処理中には逆液洗浄を行わずに、別工程で逆液洗浄を行い、分離膜モジュール2の逆圧洗浄工程を重複しないよう制御すればよい。
本実施の形態1では、上記のようにして分離膜モジュール2A、2B、2Cの濾過停止処理や逆圧洗浄処理のタイミングを分散させるよう制御することにより、発酵液量の変動や培地供給量の変動が少なくなるため、安定的に発酵を行うことができ、かつ化学品を高い回収率で回収することができる。
なお、実施の形態1で使用する膜分離型連続発酵装置100では、3本の分離膜モジュール2A、2B、2Cを並列に配置して、3系列で運転可能な仕様となっているが、分離膜モジュール2の数は2本以上であれば特に制限は無い。例えば、数十本の分離膜モジュール2を並列に配置して膜分離工程を行う場合でも、少なくとも1本の分離膜モジュール2の濾過停止処理(逆圧洗浄処理)を他の分離膜モジュールの濾過処理中に行うようにすればよい。
また、使用する分離膜モジュール2の数が多い場合は、発酵槽1に還流する非濾過液量や洗浄液量の時間当たりの変化量が小さくなるよう各分離膜モジュール2の濾過停止処理や逆圧洗浄処理のタイミングを制御してもよい。発酵槽1に還流する非濾過液量や洗浄液量の時間当たりの変化量を小さくするためには、濾過停止処理や逆圧洗浄処理を行う分離膜モジュール2の数を均等に分散して間欠濾過処理を行うよう制御すればよい。例えば、20本の分離膜モジュール2を並列に配置し、9分間の濾過と1分間の濾過停止を繰り返す間欠濾過処理を行う場合、例えば、1分間の濾過停止処理を2本ずつ順番に行うことにより、発酵液量や培地供給量の変動を少なくでき、安定的に発酵を行うことができる。これは、1分間の濾過停止処理中に逆圧洗浄を行う場合も同様であり、これにより、発酵液量や培地供給量の変動を小さくするとともに、発酵液のpHの変動も小さくすることができる。
さらに、例えば、12本の分離膜モジュール2を並列に配置し、9分間の濾過と、1分間の濾過停止を繰り返す間欠濾過処理を行う場合、1の間欠処理工程(10分間)に、12本すべての分離膜モジュール2について、濾過停止処理が重複しないよう制御することはできない。また、1の間欠処理工程ですべての分離膜モジュール2について均等に濾過停止処理を行う制御もできないため、かかる場合は、1分間の濾過停止処理を2本ずつ順番に行い、6回の間欠濾過処理で、すべての分離膜モジュール2について均等(すべての分離膜モジュール2が1分間×5回)に濾過停止処理を行えばよい。
実施の形態1では、各分離膜モジュール2には、均等に発酵液が送液されることが好ましく、そのため、送液する発酵液の粘度、送液ラインの配管長さ及び太さにより送液抵抗が送液圧に対して小さいことが好ましく、系列数は、分離膜モジュール2の運転方法に加えて、使用する循環ポンプ8の仕様も考慮して決定することが好ましい。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2で使用する膜分離型連続発酵装置の概略図である。本発明の実施の形態2に係る膜分離型連続発酵装置200は、3本の分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cを直列に配置するための、配管26A、26Bおよび26Cを備える点で、実施の形態1にかかる膜分離型連続発酵装置100と異なる。以下、実施の形態2に係る膜分離型連続発酵装置200について説明する。
膜分離ユニット30Aは、配管23A、配管23B、配管23Cからそれぞれ分岐する配管26A、配管26B、配管26Cを有する。配管26A、配管26B、配管26C上には、バルブ25A、25Bおよび25Cがそれぞれ配置されている。配管26Aは、分離膜モジュール2Aの1次側と分離膜モジュール2Bの1次側とを接続し、配管26Bは、分離膜モジュール2Bの1次側と分離膜モジュール2Cの1次側とを接続し、配管26Cは、分離膜モジュール2Cの1次側と分離膜モジュール2Aの1次側とを接続している。
分離膜ユニット30Aにおいて、循環バルブ28、バルブ19A、バルブ25Aおよび25Bならびにバルブ22Cを開とし、バルブ19B、19C、バルブ22Aおよび22B、ならびにバルブ25Cを閉とすることにより、発酵槽1から循環ポンプ8により、分離膜モジュール2Aに発酵液が送液され、分離膜モジュール2Aで濾過されなかった発酵液が配管26Aを介して分離膜モジュール2Bに送液される。さらに、分離膜モジュール2Bで濾過されなかった発酵液が配管26Bを介して分離膜モジュール2Cに送液され、分離膜モジュール2Cで濾過されなかった発酵液が配管23Cを介して発酵槽1に還流される。分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cを3本直列に配置した場合、3本並列に配置した場合に対して、同じクロスフロー流束を維持しながら、クロスフロー流量の総量を1/3程度に削減することができる。
クロスフロー流量が多くなると、発酵槽1から分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cへ送液する配管、バルブおよび送液ポンプなどの機器、設備を大型化する必要があり、そのため、送液配管等の容量が増加する。これより、発酵槽1においては、原料の供給、また好気発酵では酸素供給が行われ、発酵培養の環境が適正に整えられているが、この発酵槽1の容量に対し、発酵槽1以外の送液配管等の容量が相対的に大きくなり、発酵効率が低下する懸念がある。さらに、機器、設備が大型化することによる設備費が増加、またクロスフロー流量の増加により送液ポンプ電力が増加し、コストアップの大きな問題がある。本実施の形態2にかかる膜分離型連続発酵装置200は、分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cを直列に配置することでクロスフロー流量を削減し、前記の課題を改善することができる。
また、分離膜ユニット30Aでは、各バルブの開閉を変更することにより、分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cへの発酵液の送液の順番を変更することができる。例えば、分離膜モジュール2Bに最初に発酵液を送液する場合には、循環バルブ28、バルブ19B、バルブ25Bおよび25Cならびにバルブ22Aを開とし、バルブ19A、19C、バルブ22Bおよび22C、ならびにバルブ25Aを閉とすればよい。これにより、発酵槽1から循環ポンプ8により、まず分離膜モジュール2Bに発酵液が送液され、分離膜モジュール2Bで濾過されなかった発酵液が配管26Bを介して分離膜モジュール2Cに送液される。さらに、分離膜モジュール2Cで濾過されなかった発酵液が配管26Cを介して分離膜モジュール2Aに送液され、分離膜モジュール2Aで濾過されなかった発酵液が配管23Aを介して発酵槽1に還流される。
同様に、分離膜モジュール2Cに最初に発酵液を送液する場合には、循環バルブ28、バルブ19C、バルブ25Aおよび25Cならびにバルブ22Bを開とし、バルブ19A、19B、バルブ22Aおよび22C、ならびにバルブ25Bを閉とすればよい。これにより、発酵槽1から循環ポンプ8により、まず分離膜モジュール2Cに発酵液が送液され、分離膜モジュール2Cで濾過されなかった発酵液が配管26Cを介して分離膜モジュール2Aに送液される。さらに、分離膜モジュール2Aで濾過されなかった発酵液が配管26Aを介して分離膜モジュール2Bに送液され、分離膜モジュール2Bで濾過されなかった発酵液が配管23Bを介して発酵槽1に還流される。
分離膜モジュール2A、2B、2Cを直列配置する場合は、クロスフローによる分離膜モジュールの圧力損失分だけ、後段の分離膜モジュールの分離膜1次側の発酵液供給圧力が低下する。そのため、分離膜2次側の圧力制御を行わない場合は、前段の分離膜モジュールの方が、後段の分離膜モジュールより、分離膜の差圧が大きくなるため、前段と後段の分離膜モジュールの形状、膜面積が同じならば、濾過の初期の段階では、前段の分離膜モジュールの方が濾過速度は高くなり、前段の分離膜モジュールの方が、後段の分離膜モジュールより分離膜の閉塞が速く進行する可能性がある。実施の形態2にかかる分離膜ユニット30Aでは、分離膜モジュール2A、2B、2Cへの発酵液の送液の順番を変えて運転することにより、分離膜モジュール2A、2B、2Cの濾過量を揃え、分離膜モジュール2A、2B、2Cの分離膜の閉塞を防止することができる。
分離膜モジュール2A、2B、2Cへの発酵液の送液の順番を変更する時間は、適宜設定することができる。あるいは、分離膜モジュール2A、2B、2Cについて差圧センサー7A、7B、7Cにより分離膜の差圧を測定して、該差圧により分離膜が閉塞が進行したと判断された場合に、送液の順番を変更してもよい。
次に、実施の形態2にかかる分離膜ユニット30Aの間欠濾過処理について説明する。分離膜ユニット30Aの間欠濾過処理は、実施の形態1の間欠濾過処理と同様の工程で行うことができる(図2参照)。分離膜モジュール2A、2B、2Cの濾過停止処理が重複しないように間欠濾過する場合、まず、すべての分離膜モジュール2A、2B、2Cで濾過処理を行う(ステップS1)。すべての分離膜モジュール2A、2B、2Cで濾過処理を行うためには、濾過バルブ15A、15Bおよび15Cを開とし、濾過ポンプ11A、11Bおよび11Cを運転するとともに、循環ポンプ8により分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cの順番に発酵液を供給することにより分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cで発酵液が濾過される。なお、以下のすべての工程において、バルブ19A、バルブ25Aおよび25Bならびにバルブ22Cは開であり、バルブ19B、19C、バルブ22Aおよび22B、ならびにバルブ25Cは閉であり、発酵液は、分離膜モジュール2A、2B、2Cの順番に送液され、分離膜モジュール2Cで濾過されなかった発酵液が発酵槽1に還流されている。
所定時間経過後(例えば2分後)、分離膜モジュール2Aを濾過停止処理する(ステップS2)。分離膜モジュール2Aを濾過停止処理し、かつその他の分離膜モジュール2Bおよび2Cを濾過処理する場合、濾過バルブ15Bおよび15Cを開、15Aを閉とし、濾過ポンプ11Bおよび11Cを運転、11Aを停止するとともに、循環ポンプ8により分離膜モジュール2A、2B、2Cに発酵液を供給することにより、分離膜モジュール2Bおよび2Cのみで濾過される。分離膜モジュール2Aでは、濾過停止処理となり、分離膜モジュール2A内でクロスフローされる発酵液により膜の堆積物を除去している。
所定時間経過後(例えば1分後)、分離膜モジュール2Aの濾過停止処理を終了して、すべての分離膜モジュール2A、2B、2Cで濾過処理を行う(ステップS3)。濾過バルブ15Aを開に切替え、濾過ポンプ11Aを運転することによりすべての分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cで濾過処理される。
所定時間経過後(例えば2分後)、分離膜モジュール2Bを濾過停止処理する(ステップS4)。分離膜モジュール2Bを濾過停止処理し、かつその他の分離膜モジュール2Aおよび2Cを濾過処理する場合、濾過バルブ15Bを閉に切替え、濾過ポンプ11Bを停止することにより、分離膜モジュール2Aおよび2Cのみで濾過され、分離膜モジュール2Bでは、濾過停止処理となる。分離膜モジュール2B内では、クロスフローされる発酵液により膜の堆積物を除去している。
所定時間経過後(例えば1分後)、分離膜モジュール2Bの濾過停止処理を終了して、すべての分離膜モジュール2A、2B、2Cで濾過処理を行う(ステップS5)。濾過バルブ15Bを開に切替え、濾過ポンプ11Bを運転することによりすべての分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cで濾過処理される。
所定時間経過後(例えば2分後)、分離膜モジュール2Cを濾過停止処理する(ステップS6)。分離膜モジュール2Cを濾過停止処理し、かつその他の分離膜モジュール2Aおよび2Bを濾過処理する場合、濾過バルブ15Cを閉に切替え、濾過ポンプ11Cを停止することにより、分離膜モジュール2Aおよび2Bのみで濾過され、分離膜モジュール2Cでは、濾過停止処理となる。分離膜モジュール2C内では、クロスフローされる発酵液により膜の堆積物を除去している。
このような間欠濾過処理を繰り返すことで、分離膜モジュール2A、2B、2Cの濾過停止処理が重複しないよう制御することができる。
上記したような間欠濾過処理を、各バルブの開閉により、分離膜モジュール2A、2B、2Cへの発酵液の送液の順番を変更して順次行うことが好ましい。
また、実施の形態2にかかる分離膜ユニット30Aは、実施の形態1と同様に、間欠濾過処理における濾過停止処理中に膜の逆圧洗浄を行うことができる。膜分離ユニット30Aの逆圧洗浄工程を含む間欠濾過処理は、実施の形態1の間欠濾過処理と同様の工程で行うことができる(図3参照)。
分離膜モジュール2A、2B、2Cの圧洗浄処理が重複しないように間欠濾過する場合、まず、すべての分離膜モジュール2A、2B、2Cで濾過処理を行う(ステップS11)。すべての分離膜モジュール2A、2B、2Cで濾過処理を行うためには、濾過バルブ15A、15Bおよび15Cを開とし、濾過ポンプ11A、11Bおよび11Cを運転するとともに、循環ポンプ8により分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cの順番に発酵液を供給することにより分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cで発酵液が濾過される。なお、以下のすべての工程において、バルブ19A、バルブ25Aおよび25Bならびにバルブ22Cは開であり、バルブ19B、19C、バルブ22Aおよび22B、ならびにバルブ25Cは閉であり、発酵液は、分離膜モジュール2A、2B、2Cの順番に送液され、分離膜モジュール2Cで濾過されなかった発酵液が発酵槽1に還流されている。
所定時間経過後(例えば2分後)、分離膜モジュール2Aを逆圧洗浄処理する(ステップS12)。分離膜モジュール2Aを逆圧洗浄処理し、かつその他の分離膜モジュール2Bおよび2Cを濾過処理する場合、濾過バルブ15Bおよび15Cを開、15Aを閉とし、濾過ポンプ11Bおよび11Cを運転、11Aを停止するとともに、循環ポンプ8により分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cに発酵液を供給する。さらに洗浄液バルブ16Bおよび16Cを閉、16Aを開とし、供給ポンプ12Bおよび12Cを停止、12Aを運転することで、分離膜モジュール2B、2Cが濾過、2Aが逆圧洗浄となる。分離膜モジュール2Aでは、供給ポンプ12Aにより洗浄液が分離膜モジュール2Aの2次側に供給され、洗浄液が1次側に濾過されることにより膜の堆積物を除去している。
所定時間経過後(例えば1分後)、分離膜モジュール2Aの逆圧洗浄処理を終了して、すべての分離膜モジュール2A、2B、2Cで濾過処理を行う(ステップS13)。洗浄液バルブ16Aを閉に切替え、供給ポンプ12Aを停止するとともに、濾過バルブ15Aを開に切替え、濾過ポンプ11Aを運転することによりすべての分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cで濾過処理される。
所定時間経過後(例えば2分後)、分離膜モジュール2Bを逆圧洗浄処理する(ステップS14)。分離膜モジュール2Bを逆圧洗浄処理し、かつその他の分離膜モジュール2Aおよび2Cを濾過処理する場合、濾過バルブ15Bを閉に切替え、濾過ポンプ11Bを停止するとともに、洗浄液バルブ16Bを開に切替え、供給ポンプ12Bを運転することで分離膜モジュール2A、2Cが濾過、2Bが逆圧洗浄となる。分離膜モジュール2Bでは、供給ポンプ12Bにより洗浄液が分離膜モジュール2Bの2次側に供給され、洗浄液が1次側に濾過されることにより膜の堆積物を除去している。
所定時間経過後(例えば1分後)、分離膜モジュール2Bの逆圧洗浄処理を終了して、すべての分離膜モジュール2A、2B、2Cで濾過処理を行う(ステップS15)。洗浄液バルブ16Bを閉に切替え、供給ポンプ12Bを停止するとともに、濾過バルブ15Bを開に切替え、濾過ポンプ11Bを運転することによりすべての分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cで濾過処理される。
所定時間経過後(例えば2分後)、分離膜モジュール2Cを逆圧洗浄処理する(ステップS16)。分離膜モジュール2Cを逆圧洗浄処理し、かつその他の分離膜モジュール2Aおよび2Bを濾過処理する場合、濾過バルブ15Cを閉に切替え、濾過ポンプ11Cを停止するとともに、洗浄液バルブ16Cを開に切替え、供給ポンプ12Cを運転することで分離膜モジュール2A、2Bが濾過、2Cが逆圧洗浄となる。分離膜モジュール2Cでは、供給ポンプ12Cにより洗浄液が分離膜モジュール2Cの2次側に供給され、洗浄液が1次側に濾過されることにより膜の堆積物を除去している。
このような間欠濾過処理を繰り返すことで、分離膜モジュール2A、2B、2Cの逆圧洗浄処理が重複しないよう制御することができる。
上記したような間欠濾過処理を、各バルブの開閉により、分離膜モジュール2A、2B、2Cへの発酵液の送液の順番を変更して順次行うことが好ましい。
上記において、間欠濾過処理の濾過停止処理中に膜の逆圧洗浄を行う場合について説明したが、間欠濾過処理のすべての濾過停止処理中に逆圧洗浄を行う必要はなく、分離膜の閉塞を防止することができれば、濾過停止処理の一部でのみ逆圧洗浄を行うこととしてもよい。あるいは、間欠濾過処理の濾過停止処理中には逆液洗浄を行わずに、別工程で逆液洗浄を行い、分離膜モジュール2の逆圧洗浄工程を重複しないよう制御すればよい。
また、膜分離型発酵装置200では、培地供給ポンプ9によって培地を発酵槽1に投入し、必要に応じて、撹拌装置4で発酵槽1内の発酵液を撹拌し、また、必要に応じて、気体供給装置13によって必要とする気体を供給している。気体は分離膜モジュール2A、2B、2Cに供給することもでき、気体による剪断力により、分離膜表面の堆積物を除去することができる。特に好気発酵の場合は、酸素溶解効率をあげることもできる。
直列に分離膜モジュール2A、2B、2Cを配置した場合は、直列の先頭のモジュールから気体を供給することもでき、直列の途中の分離膜モジュールから供給することもできる。気体を分離膜モジュール2に供給する場合は、気体による分離膜の洗浄効果から、直列の先頭の分離膜モジュール2から気体を供給することが好ましい。このとき、供給された気体を回収リサイクルして再び気体供給装置13で供給することができる。
実施の形態2では、上記のようにして分離膜モジュール2A、2B、2Cの濾過停止処理や逆圧洗浄処理のタイミングを分散させるように制御することにより、発酵液量の変動や培地供給量の変動が少なくなるため、安定的に発酵を行うことができ、かつ化学品を高い回収率で回収することができる。また、分離膜モジュール2A、2B、2Cを直列に配置することにより、装置内を循環する発酵液のクロスフロー量の総和を低減することができるので、装置の小型化、ならびにランニングコストの低減を図ることが可能となる。
実施の形態2にかかる膜分離型連続発酵装置200では、3本の分離膜モジュール2A、2B、2Cを直列に配置して、3系列で運転可能な仕様となっているが、分離膜モジュール2の数は2本以上であれば特に制限は無い。例えば、数十本の分離膜モジュール2を並列に配置して膜分離工程を行う場合でも、少なくとも1本の分離膜モジュール2の濾過停止処理(逆圧洗浄処理)を他の分離膜モジュールの濾過処理中に行うようにすればよい。
また、使用する分離膜モジュール2の数が多い場合は、発酵槽1に還流する非濾過液量や洗浄液量の時間当たりの変化量が小さくなるよう各分離膜モジュール2の濾過停止処理や逆圧洗浄処理のタイミングを制御してもよい。発酵槽1に還流する非濾過液量や洗浄液量の時間当たりの変化量を小さくするためには、濾過停止処理や逆圧洗浄処理を行う分離膜モジュール2の数を均等に分散して間欠濾過処理を行うよう制御すればよい。
実施の形態2において、各分離膜モジュール2では、送液の順番や分離膜の差圧を調整することにより、均等に発酵液が濾過されることが好ましい。分離膜モジュール2の設置数は、分離膜モジュール2の運転方法に加えて、使用する循環ポンプ8の仕様も考慮して決定することが好ましい。
また分離膜モジュール2A、2B、2Cを直列配置する膜分離型連続発酵装置として、図5に示すものを使用してもよい。図5は、本発明の実施の形態2の変形例に係る膜分離型連続発酵装置の概略図である。変形例にかかる膜分離型連続装置200Aは、発酵液が循環ポンプ8から、分離膜モジュール2A、2B、2Cの順番に送液されるように各モジュールが直列配置されている。膜分離型連続装置200Aでは、分離膜モジュール2A、2B、2Cの送液の順番を変更するための配管等を設けておらず、送液の順番を変更することはできない。
変形例に係る膜分離型連続発酵装置では、発酵液の送液の順番が固定されているため、前段の分離膜モジュール2Aの分離膜が閉塞しやすい。分離膜モジュール2Aの分離膜の閉塞を防止するために、差圧センサー7A、7B、7Cにより分離膜モジュール2A、2B、2Cの分離膜の差圧を測定し、各分離膜の差圧が略一定となるように制御することが好ましい。分離膜モジュール2A、2B、2Cの分離膜の差圧を一定に制御するためには、例えば、バルブ15A、15B、15Cの開度を調整すればよく、分離膜モジュールあたりの濾過流量が一定になるようにバルブ開度を自動または手動で制御すればよい。
変形例に係る膜分離型連続発酵装置200Aでは、使用していない送液ラインがないため、発酵液の滞留によって微生物が死滅し、分離膜の汚れ物質が発生し、濾過性能が低下することを防止することができる。
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3に使用することができる膜分離型連続発酵装置の概略図である。本発明の実施の形態3に係る膜分離型連続発酵装置300は、3本の分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cを直列に配置した分離膜ラインXと、3本の分離膜モジュール2D、2Eおよび2Fを直列に配置した分離膜ラインYとを、並列に配置している。
分離膜ラインXは、3本の分離膜モジュール2A、2Bおよび2Cからなり、循環ポンプ8により配管20Aを介して供給された発酵液は、まず、分離膜モジュール2Aに送液される。分離膜モジュール2Aで濾過された発酵液は、配管21Aを介して装置外に排出される。分離膜モジュール2Aで濾過されなかった発酵液は、配管26Aを介して分離膜モジュール2Bに送液される。分離膜モジュール2Bに供給され、濾過された発酵液は、配管21Bを介して装置外に排出され、濾過されなかった発酵液は、配管26Bを介して分離膜モジュール2Cに送液される。分離膜モジュール2Cに供給され、濾過された発酵液は、配管21Cを介して装置外に排出され、濾過されなかった発酵液は、配管23Cを介して発酵槽1に還流される。
分離膜ラインYは、3本の分離膜モジュール2D、2Eおよび2Fからなり、循環ポンプ8により配管20Bを介して供給された発酵液は、まず、分離膜モジュール2Dに送液される。分離膜モジュール2Dで濾過された発酵液は、配管21Dを介して装置外に排出される。分離膜モジュール2Dで濾過されなかった発酵液は、配管26Dを介して分離膜モジュール2Eに送液される。分離膜モジュール2Eに供給され、濾過された発酵液は、配管21Eを介して装置外に排出され、濾過されなかった発酵液は、配管26Eを介して分離膜モジュール2Fに送液される。分離膜モジュール2Fに供給され、濾過された発酵液は、配管21Fを介して装置外に排出され、濾過されなかった発酵液は、配管23Fを介して発酵槽1に還流される。
分離膜ラインXおよび分離膜ラインYにおいて、直列配置の後段の分離膜モジュール2への発酵液供給圧力低下に対し、差圧センサー7、濾過ポンプ11および濾過バルブ15により分離膜の2次側の圧力制御を行い、直列に配置した分離膜モジュール2の濾過量を揃えてもよい。直列配置の分離膜モジュール2の2次側の圧力制御を行わない場合は、直列に配置する分離膜モジュール2の数を一定数以下に制限することが好ましい。
次に、実施の形態3にかかる分離膜ユニット30Cの間欠濾過処理について図7を参照して説明する。図7は、実施の形態3にかかる間欠濾過処理を説明するフローチャートである。分離膜モジュール2A〜2Fの濾過停止処理が重複しないように間欠濾過する場合、まず、すべての分離膜モジュール2A〜2Fで濾過処理を行う(ステップS21)。
所定時間経過後(例えば2分後)、分離膜モジュール2Aおよび2Dを濾過停止処理する(ステップS22)。分離膜モジュール2Aおよび2Dを濾過停止処理し、かつその他の分離膜モジュール2B、2C、2Eおよび2Fを濾過処理する場合、濾過バルブ15Aおよび15Dを閉とし、濾過ポンプ11Aおよび11Dを停止する。
所定時間経過後(例えば1分後)、分離膜モジュール2Aおよび2Dの濾過停止処理を終了して、すべての分離膜モジュール2A〜2Fで濾過処理を行う(ステップS23)。
所定時間経過後(例えば2分後)、分離膜モジュール2Bおよび2Eを濾過停止処理する(ステップS24)。分離膜モジュール2Bおよび2Eを濾過停止処理し、かつその他の分離膜モジュール2A、2C、2Dおよび2Fを濾過処理する場合、濾過バルブ15Eおよび15Eを閉とし、濾過ポンプ11Bおよび11Eを停止する。
所定時間経過後(例えば1分後)、分離膜モジュール2Bおよび2Eの濾過停止処理を終了して、すべての分離膜モジュール2A〜2Fで濾過処理を行う(ステップS25)。
所定時間経過後(例えば2分後)、分離膜モジュール2Cおよび2Fを濾過停止処理する(ステップS26)。分離膜モジュール2Cおよび2Fを濾過停止処理し、かつその他の分離膜モジュール2A、2B、2Dおよび2Eを濾過処理する場合、濾過バルブ15Cおよび15Fを閉とし、濾過ポンプ11Cおよび11Fを停止する。
このような間欠濾過処理を繰り返すことで、分離膜モジュール2A〜2Fの濾過停止処理が重複しないよう制御することができる。
また、実施の形態3にかかる分離膜ユニット30Cにおいて、濾過停止処理中に膜の逆圧洗浄を行うことができる。図8は、実施の形態3にかかる分離膜ユニットCにおいて、濾過停止処理中に逆圧洗浄を行う間欠濾過処理を説明するフローチャートである。
分離膜モジュール2A〜2Fの逆圧洗浄処理が重複しないように間欠濾過する場合、まず、すべての分離膜モジュール2A〜2Fで濾過処理を行う(ステップS31)。
所定時間経過後(例えば2分後)、分離膜モジュール2Aおよび2Dを逆圧洗浄処理する(ステップS32)。分離膜モジュール2Aおよび2Dを逆圧洗浄処理し、かつその他の分離膜モジュール2B、2C、2Eおよび2Fを濾過処理する場合、濾過バルブ15Aおよび15Dを閉とし、濾過ポンプ11Aおよび11Dを停止するとともに、洗浄液バルブ16Aおよび16Dを開、供給ポンプ12Aおよび12Dを運転する。
所定時間経過後(例えば1分後)、分離膜モジュール2Aおよび2Dの逆圧洗浄処理を終了して、すべての分離膜モジュール2A〜2Fで濾過処理を行う(ステップS33)。
所定時間経過後(例えば2分後)、分離膜モジュール2Bおよび2Eを逆圧洗浄処理する(ステップS34)。分離膜モジュール2Bおよび2Eを逆圧洗浄処理し、かつその他の分離膜モジュール2A、2C、2Dおよび2Fを濾過処理する場合、濾過バルブ15Bおよび15Eを閉とし、濾過ポンプ11Bおよび11Eを停止するとともに、洗浄液バルブ16Bおよび16Eを開、供給ポンプ12Bおよび12Eを運転する。
所定時間経過後(例えば1分後)、分離膜モジュール2Bおよび2Eの逆圧洗浄処理を終了して、すべての分離膜モジュール2A〜2Fで濾過処理を行う(ステップS35)。
所定時間経過後(例えば2分後)、分離膜モジュール2Cおよび2Fを逆圧洗浄処理する(ステップS36)。分離膜モジュール2Cおよび2Fを逆圧洗浄処理し、かつその他の分離膜モジュール2A、2B、2Dおよび2Eを濾過処理する場合、濾過バルブ15Cおよび15Fを閉とし、濾過ポンプ11Cおよび11Fを停止するとともに、洗浄液バルブ16Cおよび16Fを開、供給ポンプ12Cおよび12Fを運転する。
このような間欠濾過処理を繰り返すことで、分離膜モジュール2A〜2Fの逆圧洗浄処理が重複しないよう制御することができる。
本実施の形態3では、上記のようにして分離膜モジュール2A〜2Fの濾過停止処理や逆圧洗浄処理のタイミングを分散させるように制御することにより、発酵液量の変動や培地供給量の変動が少なくなるため、安定的に発酵を行うことができ、かつ化学品を高い回収率で回収することができる。また、複数の分離膜モジュール2を直列配置した分離膜ラインを複数並列に配置することにより、分離膜の閉塞の進行を防止して安定的に化学品を回収できるとともに、装置の大型化や、ランニングコストの上昇を抑制することが可能となる。
また、実施の形態3では、2つの並列に配置した分離膜ラインを構成する複数の分離膜モジュール2のうちの1つを同時に濾過停止処理する例を説明したが、すべての分離膜モジュール2の濾過停止処理のタイミングを重複しないように制御してもよい。例えば、数十本の分離膜モジュール2を並列に配置して膜分離工程を行う場合でも、少なくとも1本の分離膜モジュール2の濾過停止処理(逆圧洗浄処理)を他の分離膜モジュールの濾過処理中に行うようにすればよい。
以下、本発明の効果をさらに詳細に、上記化学品としてD−乳酸を選定し、実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(参考例1)中空糸膜の作製
質量平均分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーとγ−ブチロラクトンとを、それぞれ38質量%と62質量%の割合で170℃の温度で溶解した。この高分子溶液をγ−ブチロラクトンを中空部形成液体として随伴させながら口金から吐出し、温度20℃のγ−ブチロラクトン80質量%水溶液からなる冷却浴中で固化して球状構造からなる中空糸膜を作製した。次いで、質量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを14質量%、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社製、CAP482−0.5)を1質量%、N−メチル−2−ピロリドンを77質量%、T−20Cを5質量%、水を3質量%の割合で95℃の温度で混合溶解して高分子溶液を調製した。この製膜原液を、球状構造からなる中空糸膜の表面に均一に塗布し、すぐに水浴中で凝固させて球状構造層の上に三次元編目構造を形成させた中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜の被処理水側表面の平均細孔径は、0.04μmであった。次に、上記の分離膜である中空糸多孔性膜について純水透水量を評価したところ、5.5×10-93/m2/s/Paであった。透水量の測定は、逆浸透膜による25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで行った。
(実施例1)
参考例1の中空糸膜を用いて分離膜モジュールを製作した。分離膜モジュールケースにはポリスルホン樹脂製筒状容器である成型品を用いて中空糸膜モジュールを作製した。製作した多孔性中空糸膜および膜濾過モジュールを用いて、実施例1を行った。実施例1における運転条件は、特に断らない限り、以下のとおりである。
発酵槽容量:2(L)
発酵槽有効容積:1.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン中空糸膜22本(有効長8cm、総有効膜面積 0.023(m2))
中空糸膜モジュール本数:3本。並列に設置し、3系列とした。
温度調整:37(℃)
発酵槽通気量:窒素ガス0.2(L/min)
発酵槽攪拌速度:600(rpm)
pH調整:3N Ca(OH)2によりpH6に調整
乳酸発酵培地供給:発酵槽液量が約1.5Lで一定になる様に制御して添加
発酵液循環装置によるクロスフロー流束:0.3(m/s)
膜濾過流量制御:吸引ポンプによる流量制御
間欠的な濾過処理:濾過処理(9分間)〜濾過停止処理(1分間)の周期運転
膜濾過流束:0.01(m/day)以上0.3(m/day)以下の範囲で膜間差圧が20kPa以下となる様に可変。膜間差圧が範囲を超えて上昇し続けた場合は、連続発酵を終了した。
培地は121℃、20分での飽和水蒸気下の蒸気滅菌をして用いた。微生物としてSporolactobacillus laevolacticus JCM2513(SL株)を用い、培地として表1に示す組成の乳酸発酵培地を用い、生産物である乳酸の濃度の評価には、下記に示したHPLCを用いて以下の条件下で行った。
Figure 0005862561
カラム:Shim-Pack SPR-H(島津社製)
移動相:5mM p-トルエンスルホン酸(0.8mL/min)
反応相:5mM p-トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(0.8mL/min)
検出方法:電気伝導度
カラム温度:45℃
なお、乳酸の光学純度(鏡像体過剰率)の分析は、以下の条件下で行った。
カラム:TSK-gel Enantio L1(東ソー社製)
移動相:1mM硫酸銅水溶液
流束:1.0mL/分
検出方法:UV254nm
温度:30℃
L-乳酸の光学純度は、次式(5)で計算される。
光学純度(%)=100×(L-D)/(D+L) ・・・(5)
また、D-乳酸の光学純度は、次式(6)で計算される。
光学純度(%)=100×(D-L)/(D+L) ・・・(6)
ここで、LはL-乳酸の濃度を表し、DはD-乳酸の濃度を表す。
培養は、まずSL株を試験管で5mLの乳酸発酵培地で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を新鮮な乳酸発酵培地100mLに植菌し、500mL容坂口フラスコで24時間、30℃で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図1に示す膜分離型連続発酵装置100の1.5Lの発酵槽に培地を入れて植菌し、発酵槽1を付属の攪拌装置4によって攪拌し、発酵槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、発酵培養液循環ポンプ8を稼働させることなく、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、発酵培養液循環ポンプ8を稼働させ、前培養時の運転条件に加え、乳酸発酵培地の連続供給を行い、連続発酵装置の発酵液量を1.5Lとなるよう膜透過水量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるD−乳酸の製造を行った。連続発酵試験を行うときの膜透過水量の制御は、濾過ポンプ11A、11B、11Cにより濾過量が発酵培地供給流量と同一となるように制御した。適宜、膜透過発酵液中の生産されたD−乳酸濃度および残存グルコース濃度を測定した。
膜分離型連続発酵装置100において、図2に示すようなフローにより分離膜モジュール2A、2B、2Cの濾過停止処理が重複しないよう間欠濾過処理を行った。間欠濾過処理は、全分離膜モジュール2を2分間濾過処理運転し、その後、分離膜モジュール2Aのみ1分間濾過停止処理する。再度全分離膜モジュール2を2分間濾過処理運転し、分離膜モジュール2Bのみ1分間濾過停止処理する。そして、再度全分離膜モジュール2を2分間濾過処理運転し、分離膜モジュール2Cのみ1分間濾過停止処理する。該間欠濾過処理を連続して繰り返すことにより連続発酵しながら、生産されたD−乳酸を回収した。
上記の間欠濾過処理による連続発酵試験を行った結果を表2に示す。図1に示す膜分離型連続発酵装置100において、連続発酵を380時間行うことができ、D−乳酸生産速度は、最大2.8g/L/hrであった。なお、循環ポンプ流量は2.5L/minであった。
Figure 0005862561
(実施例2)
実施例2は、膜分離型連続発酵装置100において、間欠濾過処理の濾過停止処理中に逆圧洗浄を行いながらD−乳酸の連続発酵を行った。間欠濾過処理は、図3に示すようなフローにより分離膜モジュール2A、2B、2Cの逆圧洗浄処理が重複しないよう制御した。間欠濾過処理は、全分離膜モジュール2を2分間濾過処理運転し、分離膜モジュール2Aのみ1分間逆圧洗浄処理する。その後、再度全分離膜モジュール2を2分間運転し、分離膜モジュール2Bのみ1分間逆圧洗浄処理する。再度全分離膜モジュール2を2分間運転し、分離膜モジュール2Cのみ1分間逆圧洗浄処理した。該間欠濾過処理を連続して繰り返すことにより連続発酵しながら、生産されたD−乳酸を回収した。逆圧洗浄の流束は濾過流束の2倍に設定して、蒸留水を用いて逆圧洗浄を行った。その他の条件は、実施例1と同様である。
上記のようにして濾過停止処理中に逆圧洗浄処理する間欠濾過処理を行いながら連続発酵試験を行った結果を表2に示す。図1に示す膜分離型連続発酵装置100において、連続発酵を420時間行うことができ、D−乳酸生産速度は、最大4.0g/L/hrであった。なお、循環ポンプ流量は2.5L/minであった。
(比較例1)
比較例1は、膜分離型連続発酵装置100において、分離膜モジュール2A、2B、2Cを同時に濾過停止処理する間欠濾過処理を行いながらD−乳酸の連続発酵を行った。間欠濾過処理は、全分離膜モジュール2を2分間運転し、その後全分離膜モジュール2を1分間濾過停止処理し、再度全分離膜モジュール2を6分間濾過運転する。該間欠濾過処理を連続して繰り返すことにより連続発酵しながら、生産されたD−乳酸を回収した。その他の条件は、実施例1と同様である。
上記の間欠濾過処理による連続発酵試験を行った結果を表2に示す。図1に示す膜分離型連続発酵装置100において、連続発酵を340時間行うことができ、D−乳酸生産速度は、最大2.4g/L/hrであった。なお、循環ポンプ流量は2.5L/minであった。
(実施例3)
図4に示す膜分離型連続発酵装置200で、分離膜モジュール2A、2B、2Cを直列に配置し、分離膜モジュール2A、2B、2Cの濾過停止処理が重複しないように間欠濾過処理を行いながら、連続発酵試験を行った。その他の条件は、実施例1と同様である。
膜分離型連続発酵装置200において、図2に示すようなフローにより分離膜モジュール2A、2B、2Cの濾過停止処理が重複しないよう間欠濾過処理を行った。間欠濾過処理は、全分離膜モジュール2を2分間濾過処理運転し、その後、分離膜モジュール2Aのみ1分間濾過停止処理する。再度全分離膜モジュール2を2分間濾過処理運転し、分離膜モジュール2Bのみ1分間濾過停止処理する。そして、再度全分離膜モジュール2を2分間濾過処理運転し、分離膜モジュール2Cのみ1分間濾過停止処理する。該間欠濾過処理を連続して繰り返すことにより連続発酵しながら、生産されたD−乳酸を回収した。
上記の間欠濾過処理による連続発酵試験を行った結果を表2に示す。図4に示す膜分離型連続発酵装置200において、連続発酵を370時間行うことができ、D−乳酸生産速度は最大3.8g/L/hrで、循環ポンプ流量は0.9L/minであった。
(実施例4)
図4に示す膜分離型連続発酵装置200で、分離膜モジュール2A、2B、2Cを直列に配置し、濾過停止処理中に逆圧洗浄処理を行う間欠濾過処理を行い、分離膜モジュール2A、2B、2Cの逆圧洗浄処理が重複しないように間欠濾過処理を行いながら、連続発酵試験を行った。逆圧洗浄の流束は濾過流束の2倍に設定して、蒸留水を用いて逆圧洗浄を行った。その他の条件は、実施例1と同様である。
膜分離型連続発酵装置200において、図3に示すようなフローにより分離膜モジュール2A、2B、2Cの逆圧洗浄処理が重複しないよう間欠濾過処理を行った。間欠濾過処理は、全分離膜モジュール2を2分間濾過処理運転し、その後、分離膜モジュール2Aのみ1分間逆圧洗浄処理する。再度全分離膜モジュール2を2分間濾過処理運転し、分離膜モジュール2Bのみ1分間逆圧洗浄処理する。そして、再度全分離膜モジュール2を2分間濾過処理運転し、分離膜モジュール2Cのみ1分間逆圧洗浄処理する。該間欠濾過処理を連続して繰り返すことにより連続発酵しながら、生産されたD−乳酸を回収した。
上記の間欠濾過処理による連続発酵試験を行った結果を表2に示す。図4に示す膜分離型連続発酵装置200において、連続発酵を400時間行うことができ、D−乳酸生産速度は最大4.2g/L/hrで、循環ポンプ流量は0.9L/minであった。
(比較例2)
図1に示す膜分離型連続発酵装置100で、中空糸膜モジュール数を1本とし(分離膜モジュール2Aのみとし、2Bおよび2Cを除去する)、連続発酵試験を行った。間欠濾過処理は、濾過処理2分、濾過停止処理1分、濾過6分であり、該間欠濾過処理を繰り返すことより連続発酵しながら、生産されたD−乳酸を回収した。その他の条件は、実施例1と同様である。
上記の間欠濾過処理による連続発酵試験を行った結果を表2に示す。図1に示す膜分離型連続発酵装置100において化学品を製造したことにより、連続発酵を320時間行うことができ、D−乳酸生産速度は最大0.7g/L/hrと実施例1よりも低かった。モジュール本数が1本のため、循環ポンプ流量は0.9L/minであった。
(実施例5)
図1の膜分離型連続発酵装置100の循環ポンプ8の吐出側に循環バルブ28を設け、循環ポンプ8の吐出圧力の変動幅が10%で、変動周期は2秒となるように発酵液を送液した。その他の条件は実施例2と同様とした。
連続発酵試験を行った結果を表2に示す。図1に示す膜分離型連続発酵装置100において、連続発酵を400時間行うことができ、D−乳酸生産速度は最大4.5g/L/hrであった。なお、循環ポンプ流量は2.5L/minであった。
(実施例6)
実施例6は、膜分離型連続発酵装置100において、間欠濾過処理の濾過停止処理中に逆圧洗浄を行いながらD−乳酸の連続発酵を行った。間欠濾過処理は、図3に示すようなフローにより分離膜モジュール2A、2B、2Cの逆圧洗浄処理が重複しないよう制御した。間欠濾過処理は、全分離膜モジュール2を2分間濾過処理運転し、分離膜モジュール2Aのみ1分間逆圧洗浄処理する。その後、再度全分離膜モジュール2を2分間運転し、分離膜モジュール2Bのみ1分間逆圧洗浄処理する。再度全分離膜モジュール2を2分間運転し、分離膜モジュール2Cのみ1分間逆圧洗浄処理した。該間欠濾過処理を連続して繰り返すことにより連続発酵しながら、生産されたD−乳酸を回収した。逆圧洗浄の流束は濾過流束の2倍に設定して、0.005規定の水酸化カルシウム水溶液を用いて逆圧洗浄を行った。その他の条件は、実施例1と同様である。
上記のようにして濾過停止処理中に逆圧洗浄処理する間欠濾過処理を行いながら連続発酵試験を行った結果を表2に示す。図1に示す膜分離型連続発酵装置100において、連続発酵を420時間行うことができ、D−乳酸生産速度は、最大4.4g/L/hrであった。なお、循環ポンプ流量は2.5L/minであった。
本発明の方法によれば、簡便な運転条件で、長時間にわたり安定して高生産性を維持した連続発酵が可能となり、広く発酵工業において、発酵生産物である化学品を低コストで安定に生産することが可能となる。
1:発酵槽
2A、2B、2C:分離膜モジュール
3:温度制御装置
4:撹拌装置
5:pHセンサー・制御装置
6:レベルセンサー・制御装置
7A、7B、7C:差圧センサー
8:循環ポンプ
9:培地供給ポンプ
10:中和剤供給ポンプ
11A、11B、11C:濾過ポンプ
12A、12B、12C:供給ポンプ
13:気体供給装置
14:水供給ポンプ
15A、15B、15C:濾過バルブ
16A、16B、16C:洗浄液バルブ
30、30A、30B、30C:分離膜ユニット
40、40C:分離膜洗浄装置
50、50A、50B、50C:制御装置
100、200、200A、300:膜分離型連続発酵装置

Claims (12)

  1. 発酵槽にて発酵原料を微生物または培養細胞の発酵培養により化学品を含有する発酵液へと変換する発酵工程と、該発酵液から複数の分離膜モジュールにより濾過液として化学品を回収するとともに、非濾過液を前記発酵槽に還流する膜分離工程と、を含む連続発酵による化学品の製造方法であって、
    前記膜分離工程は、直列に配置した前記複数の分離膜モジュールについて濾過処理と濾過停止処理とを交互に繰り返す間欠濾過処理を行い、該間欠濾過処理の際、各分離膜モジュールの濾過停止処理のタイミングを制御するとともに、前記複数の分離膜モジュールへの発酵液を送液する順番が変更可能であることを特徴とする連続発酵による化学品の製造方法。
  2. 発酵槽にて発酵原料を微生物または培養細胞の発酵培養により化学品を含有する発酵液へと変換する発酵工程と、該発酵液から複数の分離膜モジュールにより濾過液として化学品を回収するとともに、非濾過液を前記発酵槽に還流する膜分離工程と、を含む連続発酵による化学品の製造方法であって、
    前記膜分離工程は、複数の並列ライン内に、直列配置した前記複数の分離膜モジュールについて濾過処理と濾過停止処理とを交互に繰り返す間欠濾過処理を行い、該間欠濾過処理の際、各分離膜モジュールの濾過停止処理のタイミングを制御することを特徴とする連続発酵による化学品の製造方法。
  3. 前記分離膜モジュールの濾過停止処理は、少なくとも1本の分離膜モジュールの濾過運転の停止を他の分離膜モジュールの濾過運転中に行うよう制御することを特徴とする請求項1または2に記載の連続発酵による化学品の製造方法。
  4. 前記分離膜モジュールの濾過停止処理は、各分離膜モジュールの濾過停止処理を重複しないよう制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の連続発酵による化学品の製造方法。
  5. 前記分離膜モジュールの濾過停止処理のタイミングは、前記分離膜モジュールから前記発酵槽に還流する単位時間あたりの非濾過液量の変化が小さくなるよう制御することを特徴とする請求項1または2に記載の連続発酵による化学品の製造方法。
  6. 前記膜分離工程は、濾過停止処理中に水を洗浄液として逆圧洗浄を行うことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一つに記載の連続発酵による化学品の製造方法。
  7. 前記膜分離工程は、濾過停止処理中に酸化剤または還元剤を含む水を洗浄液として逆圧洗浄を行うことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一つに記載の連続発酵による化学品の製造方法。
  8. 前記膜分離工程は、濾過停止処理中に酸またはアルカリを含む水を洗浄液として逆圧洗浄を行うことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一つに記載の連続発酵による化学品の製造方法。
  9. 前記膜分離工程は、濾過停止処理中に洗浄液で浸漬洗浄を行うことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一つに記載の連続発酵による化学品の製造方法。
  10. 前記分離膜モジュールの濾過停止処理のタイミングは、前記分離膜モジュールから前記発酵槽に還流する非濾過液および逆圧洗浄に使用する洗浄液の量が略均等となるよう制御することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一つに記載の連続発酵による化学品の製造方法。
  11. 前記直列に配置した各分離膜モジュールにおける分離膜の差圧が一定になるように制御することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の連続発酵による化学品の製造方法。
  12. 前記膜分離工程は、分離膜の一次側に供給する発酵液の圧力を変動させて濾過処理を行うことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一つに記載の連続発酵による化学品の製造方法。
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