JP2013188149A - 分離膜モジュールの蒸気滅菌方法、連続発酵による化学品の製造方法および膜分離型連続発酵装置 - Google Patents

分離膜モジュールの蒸気滅菌方法、連続発酵による化学品の製造方法および膜分離型連続発酵装置 Download PDF

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Abstract

【課題】蒸気滅菌処理後、分離膜を乾燥することなく短時間で冷却することができる分離膜モジュールの蒸気滅菌方法、連続発酵による化学品の製造方法および膜分離型連続発酵装を提供する。
【解決手段】本発明の分離膜モジュールの滅菌方法は、前記分離膜モジュールに蒸気を供給し、蒸気滅菌を行う滅菌工程(ステップS2)と、滅菌工程後、前記分離膜モジュールの2次側から冷却水を供給し、1次側へ前記冷却水を通液して分離膜の降温を行う冷却工程(ステップS3)と、を含むことを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、発酵液等に含まれる化学品を得るために、発酵液から微生物を濾過する場合などに使用する分離膜モジュールの蒸気滅菌方法、連続発酵による化学品の製造方法および膜分離型連続発酵装置に関するものである。
微生物や培養細胞の培養を伴う物質生産方法である発酵法は、大きく(1)回分発酵法(Batch発酵法)および流加発酵法(Fed−Batch発酵法)と、(2)連続発酵法とに分類することができる。
上記(1)の回分発酵法および流加発酵法は、設備的には簡素であり、短時間で培養が終了し雑菌汚染による被害が少ないという利点がある。しかしながら、時間経過と共に発酵培養液中の化学品濃度が高くなり、浸透圧あるいは化学品阻害等の影響により生産性および収率が低下してくる。そのため、長時間にわたり安定して高収率かつ高生産性を維持することが困難である。
また、上記(2)の連続発酵法は、発酵槽内で目的化学品が高濃度に蓄積することを回避することによって、長時間にわたって高収率かつ高生産性を維持できるという特徴がある。この連続発酵法については、L−グルタミン酸やL−リジンの発酵についての連続培養法が開示されている(非特許文献1参照)。しかしながら、この例では、発酵培養液に原料の連続的な供給を行うと共に、微生物や培養細胞を含んだ発酵培養液を抜き出すために、発酵培養液中の微生物や培養細胞が希釈されることから、生産効率の向上は限定されたものであった。
そこで、連続発酵法において、微生物や培養細胞を分離膜で濾過し、濾液から化学品を回収すると同時に濃縮液中の微生物や培養細胞を発酵培養液に保持または還流させることにより、発酵培養液中の微生物や培養細胞濃度を高く維持する方法が提案されている。例えば、分離膜として有機高分子からなる平膜を用いた連続発酵装置において、連続発酵する技術が提案されている(特許文献1参照)。
この様な連続発酵では、雑菌混入(コンタミネーション)を防いだ状態で純粋培養を行うことが好ましい。発酵培養液を濾過する際に分離膜モジュール等から雑菌が混入すると、発酵効率の低下、発酵槽内での発泡等により化学品の製造が効率的に行えなくなる。そこで、雑菌混入を防ぐために、発酵前に発酵槽や周辺設備、そして分離膜を滅菌する必要がある。
滅菌の方法としては、火炎滅菌、乾熱滅菌、煮沸滅菌、蒸気滅菌、紫外線滅菌、ガンマ線滅菌、ガス滅菌等の方法が挙げられるが、分離膜孔中の水分が無くなり、分離膜が乾燥してしまうと分離機能がなくなってしまうことに留意する必要がある。薬剤で殺菌する方法もあるが、殺菌後の薬剤の処理または分離膜モジュールへの薬剤の残留の問題がある。さらに、薬剤耐性のある微生物が残る懸念がある。
また、分離膜の形状は、平膜、中空糸膜、スパイラル式などの形状のものがあり、中空糸膜モジュールであれば、外圧式、内圧式がある。特に中空糸膜モジュールは単位装置あたりの膜面積が大きく、工業的にも有用な構造と考えられるが、構造としては複雑なものである。
複雑な構造の分離膜を乾燥させずに滅菌するには、分離膜モジュール内に所定温度の水蒸気を供給して滅菌する蒸気滅菌(一般的には121℃、15分間から20分間)が適している。
この蒸気滅菌を生産スケールの発酵槽などの設備で行う場合、一般的には、発酵槽や周辺設備に、所定温度・圧力の蒸気、例えば125℃の飽和水蒸気を供給し、一般的な蒸気滅菌の温度である121℃まで各設備を昇温し、滅菌温度を所定時間(20分以上)保持して、蒸気滅菌を行っている。蒸気滅菌後、装置をそのまま冷却すると、蒸気が凝縮することにより装置内が負圧となり雑菌混入の懸念が生じる。一方、蒸気滅菌後、装置内の冷却のために高温の装置内に液体の水を供給すると、急激な温度変化と、供給した水の急な蒸発のためハンマリングが発生し、設備異常につながる懸念があった。
これに対して、半透膜モジュールの蒸気滅菌後、原液側(1次側)から熱水を導入し、濾過装置内が負圧になることを防止する技術が提案されている(特許文献2)。
また、蒸気滅菌後、原液側(1次側)である中空糸膜内側から空気を供給し、透過側(2次側)である中空糸膜の外側に空気の一部を膜透過させて、透過側の空間を満たした後、原液側より水を供給してモジュールの温度を下げる中空糸膜モジュールの蒸気滅菌方法が提案されている(特許文献3参照)。
特開2007−252367号公報 特開昭61−242605号公報 特公平8−4726号公報
Toshihiko Hirao et al., Appl. Microbiol. Biotechnol.,32,269−273(1989)
しかしながら、特許文献2の方法は、原水タンク内の原水を間接的に蒸気滅菌用の蒸気で加熱して熱水を生成し蒸気滅菌後のモジュールに供給するものであり、熱水を生成するのに設備が必要となるのに加え、原水タンクから分離膜モジュールへの熱水の供給にも時間がかかるという問題を有していた。
また、特許文献3に記載の方法は、モジュール内の中空糸膜に空気を透過させるため、中空糸膜中の水分が気化し、濾過処理をするためには分離膜孔中の気相を液相に再度置換する必要がある。分離膜孔中の気相の液相置換は、親水性の分離膜の場合、水に濡れるために置換は容易であるが、耐薬品性や耐熱性などの必要な性能を具備する分離膜は、疎水性物質をベースにした分離膜が多く、分離膜孔中の気相を液相に置換するには一旦、疎水性膜に親和性のある液体で置換した後、水に置換する必要があるため、多大な労力を要する。さらに、供給する空気により分離膜の破損や、透過水量の低下のおそれもある。
さらに、長時間の蒸気滅菌を行うと、蒸気滅菌中に分離膜孔中の水分が、飽和水蒸気との接触で、平衡状態となり、徐々に少なくなり、分離膜の乾燥が増加する懸念があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、蒸気滅菌後、装置内が負圧になることによる雑菌混入や、分離膜の透過水量の低下を防止するとともに、蒸気滅菌処理後、分離膜を乾燥することなく短時間で冷却することができる分離膜モジュールの蒸気滅菌方法、連続発酵による化学品の製造方法および膜分離型連続発酵装置を提供するものである。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分離膜モジュールの蒸気滅菌方法は、分離膜モジュールに蒸気を供給し、蒸気滅菌を行う滅菌工程と、前記滅菌工程後、前記分離膜モジュールの2次側から冷却水を供給し、1次側へ前記冷却水を通液することで分離膜の降温を行う冷却工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明の分離膜モジュールの蒸気滅菌方法は、上記発明において、前記冷却工程は、前記冷却水として温水を供給することを特徴とする。
また、本発明の分離膜モジュールの蒸気滅菌方法は、上記発明において、第1冷却工程および第2冷却工程を含み、前記第1冷却工程における冷却水の流束は、前記第2冷却工程における冷却水の流束よりも小さいことを特徴とする。
また、本発明の連続発酵による化学品の製造方法は、発酵槽にて発酵原料を微生物または培養細胞の発酵培養により化学品を含有する発酵液へと変換する発酵工程と、該発酵液から分離膜モジュールにより濾過液として化学品を回収するとともに、非濾過液を前記発酵槽に還流する膜分離工程と、を含む連続発酵による化学品の製造方法であって、前記発酵工程前に、前記発酵槽および前記分離膜モジュールに蒸気を供給し、蒸気滅菌を行う滅菌工程と、前記滅菌工程後、前記分離膜モジュールの2次側から冷却水を供給し、1次側へ前記冷却水を通液して前記分離膜モジュールの降温を行う冷却工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明の連続発酵による化学品の製造方法は、上記発明において、前記冷却工程は、前記発酵槽と前記分離膜モジュールとを縁切りした後、前記冷却水を前記分離膜モジュールの2次側から1次側に通液して前記分離膜モジュールを冷却するとともに、前記発酵槽に圧縮空気を供給して、前記発酵槽を冷却することを特徴とする。
また、本発明の膜分離型連続発酵装置は、発酵原料を微生物による発酵培養することにより、該発酵原料を、化学品を含有する発酵液に変換する発酵槽と、前記発酵液から化学品を分離する分離膜モジュールと、前記発酵槽から前記分離膜モジュールに発酵液を送液する発酵液循環手段と、前記発酵槽および前記分離膜モジュールに蒸気を供給する蒸気供給手段と、前記分離膜モジュールの2次側に冷却水を供給する冷却水供給手段と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の膜分離型連続発酵装置は、上記発明において、前記冷却水供給手段は、供給する冷却水の温度を調整可能であることを特徴とする。
また、本発明の膜分離型連続発酵装置は、上記発明において、圧縮空気を供給する圧縮空気供給手段を備えることを特徴とする。
本発明の分離膜モジュールの蒸気滅菌方法、連続発酵による化学品の製造方法および膜分離型連続発酵装置は、分離膜モジュールの蒸気滅菌処理において、分離膜の乾燥を防止しながら短時間に冷却可能とするとともに、装置内のハンマリングによる設備異常の懸念を抑制することが可能となる。さらに、本発明によれば、蒸気滅菌処理を連続して行った後でも、分離膜モジュールのろ過性を維持できるという効果を奏する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる膜分離型連続発酵装置の概略図である。 図2は、本発明の実施の形態にかかる滅菌処理を説明するフローチャートである。 図3は、本発明の実施の形態の変形例1にかかる膜分離型連続発酵装置の概略図である。 図4は、本発明の実施の形態の変形例1にかかる滅菌処理を説明するフローチャートである。
以下に、本発明の実施の形態にかかる分離膜モジュールの滅菌方法、連続発酵による化学品の製造方法および膜分離型連続発酵装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、本発明にかかる分離膜モジュールの滅菌方法の一例として、膜分離型連続発酵装置を例示するが、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
図1は、本発明の実施の形態にかかる膜分離型連続発酵装置の概略図である。膜分離型連続発酵装置100は、発酵原料を微生物の発酵培養により化学品を含有する発酵液への変換を行う発酵槽1と、発酵液から化学品を分離する分離膜モジュール2と、分離膜モジュール2に発酵液を供給する循環ポンプ8と、蒸気滅菌用の蒸気を供給する蒸気供給部20と、分離膜モジュール2の2次側に冷却水を供給する冷却水供給部40と、各部を制御する制御装置50と、を備える。分離膜モジュール2には、多数の中空糸膜が組み込まれている。なお、以下、分離膜モジュール2内の、処理対象である原液と接する側を1次側と呼び、処理後の濾過液と接する側を2次側と呼ぶ。
分離膜モジュール2は、分離膜と該分離膜を収容する容器とを備える。本実施の形態に使用される分離膜は、有機膜、無機膜を問わない。分離膜の洗浄に逆圧洗浄や薬液浸漬による洗浄などを行うため、分離膜は、これらに対する耐久性を有することが好ましい。分離膜の形状は、平膜、中空糸膜、スパイラル式などいずれの形状のものも採用することができる。中でも、中空糸膜モジュールが好ましく、中空糸膜モジュールであれば、外圧式、内圧式のいずれの形状のものも採用することができる。
本実施の形態に使用される分離膜として、分離性能及び透水性能、さらには耐汚れ性の観点から、有機高分子化合物を好適に使用することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、セルロース系樹脂およびセルローストリアセテート系樹脂などが挙げられ、これらの樹脂を主成分とする樹脂の混合物であってもよい。
溶液による製膜が容易で物理的耐久性や耐薬品性にも優れているポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂およびポリアクリロニトリル系樹脂が好ましく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂またはそれを主成分とする樹脂が、化学的強度(特に耐薬品性)と物理的強度を併せ有する特徴をもつためより好ましく用いられる。
ここで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体が好ましく用いられる。さらに、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との共重合体を用いても構わない。フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび三塩化フッ化エチレンなどが例示される。
実施の形態に使用される分離膜の平均細孔径は、使用する目的や状況に応じて適宜決定することができるが、ある程度小さい方が好ましく、通常は0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。中空糸膜の平均細孔径が0.01μm未満であると、糖や蛋白質などの成分やその凝集体などの膜汚れ成分が細孔を閉塞して、安定運転ができなくなる。透水性能とのバランスを考慮した場合、好ましくは0.02μm以上であり、さらに好ましくは0.03μm以上である。また、1μmを超える場合、膜表面の平滑性と膜面の流れによる剪断力や、逆洗やエアースクラビングなどの物理洗浄による細孔からの汚れの成分の剥離が不十分となり、安定運転ができなくなる。
また、平均細孔径が微生物または培養細胞の大きさに近づくと、これらが直接細孔を塞いでしまう場合がある。さらに発酵液中の微生物または培養細胞の一部が死滅することにより細胞の破砕物が生成する場合があり、これらの破砕物によって細孔の閉塞を回避するために、平均細孔径は0.4μm以下が好ましく、0.2μm以下が好適である。
ここで、分離膜の平均細孔径は、倍率10,000倍以上の走査型電子顕微鏡観察で観察される複数の細孔の直径を測定し、平均することにより求めることができる。10個以上、好ましくは20個以上の細孔を無作為に選び、それら細孔の直径を測定し、数平均して求めることが好ましい。細孔が円状でない場合などは画像処理装置等によって、細孔が有する面積と等しい面積を有する円、すなわち等価円を求め、等価円直径を細孔の直径とする方法により求めることも好ましく採用できる。
分離膜モジュール2を使用した膜分離処理を行う際、雑菌等による装置内および/または濾過液の汚染を防止するために、膜分離工程前に分離膜モジュール2の滅菌処理を行うことが好ましい。
発酵槽1内には、培地供給ポンプ9により原料及び微生物または培養細胞が投入される。発酵工程は発酵槽1内で進行する。膜分離型連続発酵装置100は、撹拌装置4および気体供給装置15を備える。撹拌装置4は発酵槽1内の発酵液を撹拌する。また、気体供給装置15は、必要とする気体を供給することができる。このとき、供給された気体を回収し、リサイクルして再び気体供給装置15で供給することができる。
膜分離型連続発酵装置100は、pHセンサー・制御装置5および中和剤供給ポンプ10を備える。pHセンサー・制御装置5は培養液のpHを検出し、その結果に応じて、培養液が設定範囲内のpHを示すように、中和剤供給ポンプ10を制御する。中和剤供給ポンプ10は、酸性水溶液の槽及びアルカリ性水溶液の槽に接続されており、いずれかの水溶液を発酵槽1に添加することによって培養液のpHを調節する。培養液のpHが一定範囲内に保たれることで、生産性の高い発酵生産を行うことができる。中和剤、つまり酸性水溶液およびアルカリ性水溶液は、pH調整液に該当する。
循環ポンプ8は、装置内の培養液、つまり発酵液を、発酵槽1から分離膜モジュール2に送液し、クロスフローにより未濾過の発酵液を、分離膜モジュール2から発酵槽1に循環する。循環ポンプ8は、循環バルブ17、配管23を介して、発酵液を分離膜モジュール2に送液し、分離膜モジュール2で濾過されなかった未濾過の発酵液を、配管25を介して、発酵槽1に循環させる。発酵生産物である化学品を含む発酵液は、分離膜モジュール2によって濾過されることで微生物と発酵生産物である化学品に分離され、装置系から濾過液として取り出される。また、分離された微生物は、装置系内にとどまるので、装置系内の微生物濃度が高く維持される。その結果、生産性の高い発酵生産を可能としている。
分離膜モジュール2は、循環ポンプ8を介して発酵槽1に接続されている。分離膜モジュール2による濾過は、濾過ポンプ11により吸引しながら行うことが好ましい。分離膜モジュール2により濾過された濾液は、濾液排出ライン24から濾過バルブ13を介して排出・回収される。膜分離型連続発酵装置100は、分離膜モジュール2の分離膜の差圧を検出する差圧センサー・制御装置7を備えることができる。差圧センサー・制御装置7により、分離膜モジュール2の分離膜の差圧を検出しながら、分離膜モジュール2の分離膜の差圧が一定の範囲内の値を示すように、濾過ポンプ11を制御することで、安定したろ過を行うことができる。あるいは、濾過ポンプ11による吸引を行うことなく、循環ポンプ8による圧力のみによって、特別な動力を使用することなく濾過を行うことも可能である。循環ポンプ8の出力を調整することで、発酵槽1から分離膜モジュール2へ送られる発酵液量を適当に調整することができる。
発酵槽1は、温度制御装置3を備えることができる。温度制御装置3は、温度検出する温度センサーと、加熱部と、冷却部と、制御部とを備える。温度制御装置3は、温度センサーによって発酵槽1内の温度を検出し、検出結果に応じて、温度が一定の範囲内の値を示すように制御部によって加熱部及び冷却部温度を制御する。こうして、発酵槽1の温度が一定に維持されることで、微生物濃度が高く維持される。
また、発酵槽1には直接又は間接的に水を添加することができる。水供給部は、発酵槽1に直接的に水を供給し、具体的には水供給ポンプ16で構成される。間接的な水の供給は、原料の供給およびpH調整液の添加等を含む。膜分離型連続発酵装置100に添加される物質は、コンタミによる汚染を防止し、発酵を効率よく行うため、滅菌されていることが好ましい。例えば、培地は、培地原料を混合後に加熱されることで滅菌されてもよい。また、培地、pH調整液および発酵槽1に添加される水は、必要に応じて、滅菌用フィルターを通すなどして無菌化されてもよい。
レベルセンサー・制御装置6は、発酵槽1内の液面の高さを検知するセンサーと、制御装置とを備える。制御装置は、このセンサーの検知結果に基づいて、培地供給ポンプ9、水供給ポンプ16等を制御することによって、発酵槽1内に流入する液量を制御することで、発酵槽1内の液面の高さを一定の範囲内に維持する。
分離膜洗浄装置18は、洗浄液槽と、洗浄液供給ポンプ12と、洗浄液バルブ14とを備える。分離膜洗浄装置18は、洗浄液供給ポンプ12を駆動することにより、洗浄液槽から分離膜モジュール2の2次側に洗浄液を供給して逆圧洗浄を行う。ここで、逆圧洗浄とは、分離膜の2次側である濾過液側から、1次側である発酵液側へ洗浄液を送ることにより、分離膜表面に堆積した汚れ物質を除去する方法である。分離膜モジュール2の2次側に供給された洗浄液は、分離膜を透過して1次側に濾過される。洗浄液が分離膜モジュール2に供給されることで、分離膜の洗浄が実行される。逆圧洗浄を行う場合、分離膜モジュール2と濾過ポンプ11との間に配置される濾過バルブ13、を閉とすることで、分離膜モジュール2における濾過が停止される。同様に、後述する冷却水供給部40の供給バルブ22も閉として、洗浄液を分離膜モジュール2に供給する。逆圧洗浄を行う際は、循環ポンプ8を運転しても、または停止してもよい。循環ポンプ8を運転しながら逆圧洗浄を行う場合は、洗浄液供給ポンプ12の圧力を循環ポンプ8の圧力と分離膜差圧の和より高く設定すればよい。
逆圧洗浄に用いられる洗浄液には、発酵に大きく阻害しない範囲で、アルカリ、酸、酸化剤または還元剤を添加することができる。ここで、アルカリの例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどを挙げることができる。酸の例としては、シュウ酸、クエン酸、塩酸、硝酸などを挙げることができる。また酸化剤の例としては、次亜塩素酸塩、過酸化などを挙げることができる。還元剤の例としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどの無機系還元剤などを挙げることができる。
微生物または培養細胞の発酵液を分離膜モジュール2中の分離膜で濾過処理する際の膜間差圧は、微生物および培養細胞、並びに培地成分が容易に目詰まりしない条件であればよい。例えば、膜間差圧を0.1kPa以上20kPa以下の範囲にして濾過処理することができる。膜間差圧は、好ましくは0.1kPa以上10kPa以下の範囲であり、さらに好ましくは0.1kPa以上5kPa以下の範囲である。上記膜間差圧の範囲内であれば、微生物(特に原核生物)および培地成分の目詰まり、並びに透過水量の低下を抑制することで、連続発酵運転に不具合を生じることを効果的に抑制することができる。
蒸気供給部20は、発酵槽1、分離膜モジュール2および周辺配管に、供給バルブ19を介して蒸気を供給する。蒸気供給部20により膜分離型連続発酵装置100の各部に蒸気を供給し、所定の蒸気滅菌条件により装置の滅菌を行う。
蒸気供給部20から供給する滅菌用水は、イオン交換水、逆浸透膜透過水、蒸留水、またはそれと同程度の清浄性を有する水を用いることが好ましい。滅菌用水は、イオン交換水、逆浸透膜透過水、蒸留水などを予め滅菌し、その後に所定の温度、圧力の蒸気となるように処理をしてもよく、イオン交換水、逆浸透膜透過水、蒸留水などを予め所定の温度、圧力の蒸気とした後、滅菌フィルター等を通して滅菌処理するようにしてもよい。蒸気滅菌後、気体供給バルブ30を介して圧縮空気を発酵槽1に供給して、発酵槽1内から蒸気を排出し、冷却する。
冷却水供給部40は、冷却水を分離膜モジュール2の2次側に供給する冷却水供給ポンプ21と、供給バルブ22と、冷却水供給ライン31と、を備える。冷却水供給ライン31は、濾液排出ライン24および洗浄液供給ライン29から分岐して設けられるが、濾液排出ライン24および洗浄液供給ライン29と独立して設けてもよい。また、冷却水供給部40が供給する冷却水は、温度調整可能であることが好ましく、一般的な蒸気滅菌温度である121℃、または蒸気滅菌後、陽圧を維持しながら放冷した場合の100℃以上の温度に近く、かつ、降温効果も有する60℃〜90℃が好ましい。冷却水を温度調整する場合、蒸留水、逆浸透膜の透過水、イオン交換水などを昇温して供給すればよい。冷却水供給部40は、蒸気滅菌終了後、60℃〜90℃程度に加温した温水を供給した後、供給する冷却水の温度を降下させることにより、膜分離型連続発酵装置100を冷却することが好適である。
冷却水に使用する水の代わりに、シリコーンオイルや、界面活性剤を添加した水も使用することができる。また、電解質を溶解した水や、アルカリ、酸、酸化剤または還元剤を添加した水であってもよい。ただし、分解物が発生するなどして、分離膜やモジュール部材等に悪影響することのないことを確認しておくことが好ましい。分離膜モジュール2内への液体残存時の濾過液への混入等を考慮すると、冷却水としては、蒸留水、逆浸透膜の透過水、イオン交換水などの水が好適である。
分離膜モジュール2に冷却水を供給する際、一定流量で冷却水を供給することもできるが、分離膜モジュール2の急激な温度変化を回避するために、通液初期の冷却水流束を、例えば、0.01〜0.1m/d程度に低く制御し、分離膜モジュール2の温度がある程度降下した後、供給する冷却水流束を例えば、0.05〜1m/d程度に増加させるよう制御することが好ましい。
次に、図2を参照して、実施の形態にかかる分離膜モジュール2の滅菌方法を説明する。図2は、実施の形態にかかる分離膜モジュール2の滅菌処理を説明するフローチャートである。
本実施の形態にかかる分離膜モジュール2の滅菌方法では、まず、蒸気供給部20から供給バルブ19を介して、膜分離型連続発酵装置100に蒸気を供給し、供給された蒸気により装置内を昇温する(ステップS1)。蒸気供給部20は、発酵槽1に蒸気を供給し、発酵槽1に供給された蒸気は、配管23を介して分離膜モジュール2に供給される。各部の温度が滅菌温度に昇温するまで、蒸気供給部20により蒸気が供給される。蒸気滅菌時に発生する蒸気の凝縮水により、蒸気滅菌時の温度上昇や分離膜モジュール2への蒸気供給に支障がある場合は、分離膜モジュール2に蒸気を、図示しない他の蒸気供給部により別のラインで供給しても良い。
蒸気の供給により、各部の温度が滅菌温度まで昇温した後、所定時間滅菌処理を行う(ステップS2)。滅菌処理では、蒸気の供給は、各部分の放熱分を補う量の蒸気を供給する。膜分離型連続発酵装置100の各部を保温することにより、蒸気の供給を減らすことも好ましい。滅菌処理は、一般的には121℃で、15分間から20分間行うが、滅菌対象や装置により条件は変更しうるものである。
蒸気滅菌終了し、蒸気供給を停止した後、冷却水供給部40により分離膜モジュール2の2次側に冷却水を供給し、2次側から1次側に冷却水を通液させて膜分離型連続発酵装置100の各部を冷却する(ステップS3)。分離膜モジュール2の2次側に供給され、1次側に通液した冷却水は、配管23および25を介して発酵槽1に供給し、冷却してもよいが、発酵槽1には冷却水を通液せずに圧縮空気でブローして冷却してもよい。発酵槽1や分離膜モジュール2に水を残さないことが望ましい場合は、冷却後、分離膜モジュール2で冷却水を濾過しても良い。
冷却水供給部40により分離膜モジュール2に供給する冷却水の温度と膜分離型連続発酵装置100の各部の温度との差が大きいと、熱による膨張・収縮により耐久性が低下する懸念がある。したがって、発酵槽1に冷却水を通液する場合には、部材の耐久性や配管等でハンマリング等の問題が出ないことを確認してから行うことが好ましい。あるいは、蒸気滅菌終了後、冷却水供給部40により分離膜モジュール2に加温した温水を供給し、徐々に供給する冷却水の温度を降下させることが好適である。
さらに、分離膜モジュール2に供給する冷却水の温度と膜分離型連続発酵装置100の各部の温度との差を小さくするために、蒸気滅菌処理温度から、膜分離型連続発酵装置100を所定の温度まで放冷してから、冷却水供給部30により冷却水を供給してもよい。例えば、121℃で蒸気滅菌した後、110℃まで放冷してから、放圧し、冷却水供給部30による冷却水の供給を行ってもよい。
膜分離型連続発酵装置100の冷却後、装置内から冷却水を排出して、滅菌処理を終了する(ステップS4)。
本実施の形態の滅菌方法によれば、分離膜モジュール2や発酵槽1内を負圧にすることなく短時間に膜分離型連続発酵装置100を冷却することができ、また滅菌処理の終了後、速やかに濾過処理を行うことが可能となる。なお、分離膜洗浄用の洗浄液として水を使用する場合には、冷却水供給部40としての分離膜洗浄装置18を使用して、冷却水である水(洗浄液)を分離膜モジュール2の2次側に供給することもできる。
次に、本実施の形態にかかる膜分離型発酵装置100で使用される微生物および培養細胞について説明する。本実施の形態で使用する微生物および培養細胞については特に制限はなく、例えば、発酵工業においてよく使用されるパン酵母などの酵母、および糸状菌等の菌類;大腸菌およびコリネ型細菌などのバクテリア;放線菌などが挙げられる。また、培養細胞としては、動物細胞および昆虫細胞等が挙げられる。また、使用する微生物や培養細胞は、自然環境から単離されたものでもよく、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。
乳酸を製造する場合、真核細胞であれば酵母、原核細胞であれば乳酸菌を用いることが好ましい。このうち酵母は、乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子を細胞に導入した酵母が好ましい。このうち乳酸菌は、消費したグルコースに対して対糖収率として50%以上の乳酸を産生する乳酸菌を用いることが好ましく、更に好ましくは対糖収率として80%以上の乳酸菌であることが好適である。
また、本実施の形態で使用する発酵原料としては、培養する微生物および培養細胞の生育を促し、目的とする発酵生産物である化学品を良好に生産させ得るものであればよい。
発酵原料としては、液体培地が用いられる。培地中の成分であって、目的の化学品に変換される物質(すなわち狭義の原料)を原料と称することもあるが、本書では、特に区別しない場合には、培地全体を原料と称する。狭義の原料とは、例えば化学品としてアルコールを得るための発酵基質であるグルコース、フルクトース、ショ糖などの糖である。
原料は、炭素源、窒素源、無機塩類、および必要に応じてアミノ酸やビタミンなどの有機微量栄養素を適宜含有する。炭素源としては、グルコース、シュークロース、フラクトース、ガラクトースおよびラクトース等の糖類、これら糖類を含有する澱粉糖化液、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、酢酸等の有機酸、エタノールなどのアルコール類、およびグリセリンなどが使用される。窒素源としては、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類、各種発酵菌体およびその加水分解物などが使用される。無機塩類としては、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩およびマンガン塩等が添加されてもよい。
微生物または培養細胞が生育のために特定の栄養素を必要とする場合には、その栄養物が標品またはそれを含有する天然物として、原料に添加される。
原料は、消泡剤を必要に応じて含有してもよい。
本明細書において、培養液とは、発酵原料に微生物または培養細胞が増殖した結果得られる液である。連続発酵においては、培養液に発酵原料を追加することができるが、追加する発酵原料の組成は、目的とする化学品の生産性が高くなるように、培養開始時の組成から適宜変更してもよい。例えば、狭義の発酵原料の濃度、培地における他の成分の濃度等は、変更可能である。
また、本明細書において、発酵液とは、発酵の結果生じた物質を含有する液であり、原料、微生物または培養細胞、及び化学品を含有してもよい。つまり、文言「培養液」と「発酵液」とはほぼ同じ意味で用いられることがある。
本実施の形態にかかる膜分離型連続発酵装置100によれば、上記の微生物または培養細胞によって、発酵液中に、化学品すなわち変換後の物質が生産される。化学品としては、例えば、アルコール、有機酸、アミノ酸および核酸など発酵工業において大量生産されている物質を挙げることができる。例えば、アルコールとしては、エタノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールおよびグリセロール等が挙げられる。また、有機酸としては、酢酸、乳酸、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸およびクエン酸等を挙げることができ、核酸であればイノシン、グアノシンおよびシチジン等を挙げることができる。また、本発明の方法を、酵素、抗生物質および組換えタンパク質のような物質の生産に適用することも可能である。
本実施の形態にかかる膜分離型連続発酵装置100は、化成品、乳製品、医薬品、食品または醸造品の製造に適用できる。ここで化成品としては、例えば、有機酸、アミノ酸および核酸が挙げられ、乳製品としては、例えば、低脂肪牛乳などが挙げられ、食品としては、例えば、乳酸飲料など、醸造品としては、例えば、ビール、焼酎が挙げられる。また、本発明の製造方法によって製造された、酵素、抗生物質、組み換えタンパク質等は、医薬品に適用可能である。
連続発酵による化学品の製造では、培養初期にBatch培養またはFed−Batch培養を行って、微生物濃度を高くした後に、連続発酵(つまり培養液の引き抜き)を開始しても良い。または、微生物濃度を高くした後に、高濃度の菌体をシードし、培養開始とともに連続発酵を行っても良い。連続発酵による化学品の製造では、適当な時期から原料培養液の供給および培養物の引き抜きを行うことが可能である。原料培養液供給と培養液の引き抜きの開始時期は必ずしも同じである必要はない。また、原料培養液の供給と培養液の引き抜きは連続的であってもよいし、間欠的であってもよい。
培養液には菌体増殖に必要な栄養素を添加し、菌体増殖が連続的に行われるようにすればよい。培養液中の微生物または培養細胞の濃度は、培養液の環境が微生物または培養細胞の増殖にとって不適切となって死滅する比率が高くならない範囲で、高い状態で維持することが、効率よい生産性を得る上で好ましい態様である。培養液中の微生物または培養細胞の濃度は、一例として、SL乳酸菌を用いたD−乳酸発酵では、乾燥重量として、微生物濃度を5g/L以上に維持することにより良好な生産効率が得られる。
連続発酵による化学品の製造において、原料に糖類を使用する場合は、培養液中の糖類濃度は5g/L以下に保持されることが好ましい。培養液中の糖類濃度を5g/L以下に保持することが好ましい理由は、培養液の引き抜きによる糖類の流失を最小限にするためである。
微生物および培養細胞の培養は、通常、pH3以上8以下、温度20℃以上60℃以下の範囲で行われる。培養液のpHは、無機の酸あるいは有機の酸、アルカリ性物質、さらには尿素、炭酸カルシウムおよびアンモニアガスなどによって、通常、pH3以上8以下のあらかじめ定められた値に調節する。酸素の供給速度を上げる必要があれば、空気に酸素を加えて酸素濃度を21%以上に保つ、培養液を加圧する、攪拌速度を上げる、あるいは通気量を上げるなどの手段を用いることができる。
連続発酵の運転においては、微生物発酵槽の微生物濃度をモニタリングすることが望ましい。微生物濃度の測定はサンプルを採取し、測定することでも可能だが、微生物発酵槽に、MLSS測定器など、微生物濃度センサーを設置し、微生物濃度の変化状況を連続的にモニタリングすることが望ましい。
連続発酵による化学品の製造では、必要に応じて、発酵槽内から培養液、微生物または培養細胞を引き抜くことができる。例えば、発酵槽内の微生物または培養細胞濃度が高くなりすぎると、分離膜の閉塞が発生しやすくなることから、引き抜くことで、閉塞から回避することができる。また、発酵槽内の微生物または培養細胞濃度によって化学品の生産性能が変化することがあるが、生産性能を指標として微生物または培養細胞を引き抜くことで、生産性能を維持させることも可能である。
連続発酵による化学品の製造では、発酵生産能力のあるフレッシュな菌体を増殖させつつ行う連続培養操作は、菌体を増殖させつつ生産物を生成する連続培養法であれば、発酵槽の数は問わない。連続発酵による化学品の製造では、連続培養操作は、通常、培養管理上単一の発酵槽で行うことが好ましい。発酵槽の容量が小さい等の理由から、複数の発酵槽を用いることも可能である。この場合、配管によって並列または直列に接続された複数の発酵槽を用いて連続培養を行っても、発酵生産物の高生産性は得られる。
本実施の形態によれば、蒸気供給部20により膜分離型連続発酵装置100の各部に蒸気を供給し、滅菌終了後、冷却水供給部40により分離膜モジュール2の2次側に冷却水を供給することにより、ハンマリングや、雑菌混入を抑制しながら膜分離型連続発酵装置100の滅菌処理を行うことが可能となる。また、実施の形態1では、分離膜モジュール2の2次側に冷却水を供給することにより、冷却後、分離膜の液相置換等の余分な工程を省略することができる。
また、本実施の形態の変形例1として、図3に示す膜分離型連続発酵装置100Aを例示することができる。膜分離型連続発酵装置100Aは、発酵槽1と分離膜モジュール2とを接続する配管23上に、圧縮空気を供給する気体供給バルブ30を備える。膜分離型連続発酵装置100Aは、蒸気滅菌終了後、発酵槽1と分離膜モジュール2とを、循環バルブ17および28で縁切りした後、分離膜モジュール2を冷却水供給部40により冷却水を供給して冷却するとともに、発酵槽1に気体供給バルブ30を介して圧縮空気を供給して冷却する。
図4を参照して、実施の形態の変形例1にかかる滅菌方法を説明する。図4は、本実施の形態の変形例1にかかる滅菌処理を説明するフローチャートである。
本変形例1にかかる滅菌方法では、上記実施の形態と同様に、蒸気供給部20から供給バルブ19を介して、膜分離型連続発酵装置100に蒸気を供給し、供給された蒸気により装置内を昇温し(ステップS11)、各部の温度が滅菌温度まで昇温した後、所定時間滅菌処理を行う(ステップS12)。
蒸気滅菌終了後、循環バルブ17および28を閉処理とし、発酵槽1と分離膜モジュール2とを縁切りする(ステップS13)。
発酵槽1と分離膜モジュール2とを縁切りした後、冷却水供給部40により分離膜モジュール2の2次側に冷却水を供給し、2次側から1次側に冷却水を通液させて分離膜モジュール2内を冷却する(ステップS14)。分離膜モジュール2の冷却後、分離膜モジュール2内の冷却水は、排液排出ライン26および排液バルブ27を介して排出される(ステップS15)。
分離膜モジュール2を冷却水により冷却するのと並行して、発酵槽1を気体供給部30により圧縮空気を供給することにより冷却する(ステップS16)。
分離膜モジュール2に使用される分離膜には、急激な温度変化に対し脆いものがあり、同一の冷却条件で短時間に冷却した場合、分離膜が破損する危険性がある。一方、分離膜に合わせて装置全体を冷却すると、冷却時間が長くなる。したがって、発酵槽1等と分離膜モジュール2とを分離して冷却処理を行うことにより、発酵槽1では、短時間で冷却を終了し、その後の処理、例えば、発酵槽1に培地を供給するなど、発酵の準備を行うことができる。
以下、本発明の効果をさらに詳細に、実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(参考例1)中空糸膜の作製
重量平均分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーとγ−ブチロラクトンとを、それぞれ38重量%と62重量%の割合で170℃の温度で溶解した。この高分子溶液をγ−ブチロラクトンを中空部形成液体として随伴させながら口金から吐出し、温度20℃のγ−ブチロラクトン80重量%水溶液からなる冷却浴中で固化して球状構造からなる中空糸膜を作製した。次いで、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを14重量%、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社製、CAP482−0.5)を1重量%、N−メチル−2−ピロリドンを77重量%、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン(三洋化成株式会社、商品名イオネット(登録商標)T−20C)を5重量%、水を3重量%の割合で95℃の温度で混合溶解して高分子溶液を調製した。この製膜原液を、球状構造からなる中空糸膜の表面に均一に塗布し、すぐに水浴中で凝固させて球状構造層の上に三次元編目構造を形成させた中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜の被処理水側表面の平均細孔径は、0.04μmであった。次に、上記の分離膜である中空糸多孔性膜について純水透水量を評価したところ、5.5×10-93/m2/s/Paであった。透水量の測定は、逆浸透膜による25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで行った。
(参考例2)分離膜モジュール2の作製
分離膜モジュールケースにはポリスルホン樹脂製筒状容器(内径35mm)である成型品を用いて分離膜モジュール2を作製した。分離膜として参考例1で作製した中空糸膜を用い、121℃の飽和水蒸気と1時間接触させた。飽和水蒸気との接触には、TOMY社製のオートクレーブ「LSX−700」を使用した。中空糸膜を前記モジュールケース内に挿入し、ウレタン樹脂(サンユレック社製、SA−7068A/SA−7068B、2剤を重量比が64:100となるように混合)を用いてモジュールケースと中空糸膜の両端を接着した。モジュール上端は中空糸膜を開口させるために、余分な接着部は切り落として用いた。中空糸膜のモジュール充填率は40%とした。発酵培養液はモジュール横下部ノズルから導入し、モジュール横上部ノズルから発酵槽1に戻す構造とした。モジュールケースの1次側にエタノール80%水溶液を供給し、一部を2次側から濾過して、分離膜モジュール内をエタノール80%水溶液で満たし、1時間静置した。その後、エタノールを排出し、蒸留水で分離膜モジュール内を洗浄、置換した。分離膜モジュール内に水を満たして保管した。
(実施例1)
上記の通り作製した分離膜モジュール2を図1に示す膜分離型連続発酵装置100の発酵液循環ラインに設置し、蒸気滅菌を行った。膜分離型連続発酵装置100の発酵槽1の容量は20(L)、有効容積は15(L)、分離膜モジュール2内で使用する分離膜は、ポリフッ化ビニリデン中空糸膜250本(有効長20cm、総有効膜面積 0.4(m))である。蒸気は供給バルブ19を開けて発酵槽1に直接供給し、発酵槽1から、配管23および25を介して分離膜モジュール2に蒸気を供給した。発酵槽1が121℃以上になった後、121℃の温度を20分保持して、配管23および25、循環ポンプ8、分離膜モジュール2などを蒸気滅菌した。その後、蒸気の供給を停止し、分離膜モジュール2のモジュール横上部ノズル中心部の気相温度が100℃まで降温した後、分離膜モジュール2内の圧力を放圧した。その後、冷却水供給ポンプ21で冷却水供給ライン31を介して、分離膜モジュール2の2次側に冷却水を供給し、さらに分離膜の2次側から1次側へ冷却水を通水した。1次側に供給した水は発酵槽1に送液した。供給した冷却水の温度は30℃であり、2m/dの流束で分離膜モジュール2に3分間供給した。
分離膜モジュール2の純水透水量は、1回目の蒸気滅菌後、分離膜モジュール2製作時の101%であった。上記した条件での蒸気滅菌を繰り返し、10回目の蒸気滅菌後は、分離膜モジュール2製作時の95%であった。
(実施例2)
実施例1と同様に分離膜モジュール2を図3の膜分離型連続発酵装置100に設置し、発酵開始前に蒸気滅菌を行った。蒸気は供給バルブ19を開けて発酵槽1に直接供給し、発酵槽1から、配管23および25を介して分離膜モジュール2に蒸気を供給した。発酵槽1が121℃以上になった後、121℃の温度を20分保持して、配管23および25、循環ポンプ8、分離膜モジュール2などを蒸気滅菌した。蒸気滅菌後、冷却水供給ポンプ21で冷却水供給ライン31を介して、分離膜モジュール2の2次側に冷却水を供給し、さらに分離膜の2次側から1次側へ冷却水を通水した。1次側に供給した水は発酵槽1に送液した。冷却水の供給は流束0.2m/dとし、はじめに80℃に加温した温水を供給し、2分後に30℃の水に切り替えて3分間供給した。
分離膜モジュール2の純水透水量は、1回目の蒸気滅菌後、分離膜モジュール2製作時の99%であった。上記した条件での蒸気滅菌を繰り返し、10回目の蒸気滅菌後は、分離膜モジュール2製作時の97%であった。
(比較例1)
実施例1と同様に分離膜モジュール2を図1の膜分離型連続発酵装置100に設置し、発酵開始前に蒸気滅菌を行った。蒸気は供給バルブ19を開けて発酵槽に直接供給し、発酵槽1から、配管23および25を介して分離膜モジュール2に蒸気を供給した。発酵槽が121℃以上になった後、121℃の温度を20分保持して、配管23および25、循環ポンプ8、分離膜モジュール2などを蒸気滅菌した。その後、蒸気の供給を停止し、分離膜モジュール2のモジュール横上部ノズル中心部の気相温度が110℃まで降温した後、分離膜モジュール2内の圧力を放圧した。その後、気体供給バルブ30を開けて、配管23および25、循環ポンプ8、分離膜モジュール2に圧縮空気をブローして、分離膜モジュール2などを降温した。
分離膜モジュール2の純水透水量は、1回目の蒸気滅菌後、分離膜モジュール2製作時の95%であった。上記した条件での蒸気滅菌を繰り返し、10回目の蒸気滅菌後は、分離膜モジュール2製作時の80%まで低下した。
本発明によれば、簡便な方法で、分離膜モジュール2の蒸気滅菌後の乾燥を防止することが可能となり、繰り返し蒸気滅菌しても安定した濾過性能を保持することができ、広く発酵工業において、発酵生産物である化学品を低コストで安定に生産することが可能となる。
1:発酵槽
2:分離膜モジュール
3:温度制御装置
4:撹拌装置
5:pHセンサー・制御装置
6:レベルセンサー・制御装置
7:差圧センサー・制御装置
8:循環ポンプ
9:培地供給ポンプ
10:中和剤供給ポンプ
11:濾過ポンプ
12:洗浄液供給ポンプ
13:濾過バルブ
14:洗浄液バルブ
15:気体供給装置
16:水供給ポンプ
17:循環バルブ
18:分離膜洗浄装置
19:供給バルブ
20:蒸気供給部
21:冷却水供給ポンプ
22:供給バルブ
23、25:配管
24:濾液排出ライン
26:排液排出ライン
27:排出バルブ
28:循環バルブ
29:洗浄液供給ライン
30:気体供給バルブ
31:冷却水供給ライン
40:冷却水供給部
50:制御装置
100、100A:膜分離型連続発酵装置

Claims (8)

  1. 分離膜モジュールに蒸気を供給し、蒸気滅菌を行う滅菌工程と、
    前記滅菌工程後、前記分離膜モジュールの2次側から冷却水を供給し、1次側へ前記冷却水を通液することで分離膜の降温を行う冷却工程と、
    を含むことを特徴とする分離膜モジュールの蒸気滅菌方法。
  2. 前記冷却工程は、前記冷却水として温水を供給することを特徴とする、請求項1に記載の分離膜モジュールの蒸気滅菌方法。
  3. 前記冷却工程は、第1冷却工程および第2冷却工程を含み、
    前記第1冷却工程における冷却水の流束は、前記第2冷却工程における冷却水の流束よりも小さいことを特徴とする、請求項1または2に記載の分離膜モジュールの蒸気滅菌方法。
  4. 発酵槽にて発酵原料を微生物または培養細胞の発酵培養により化学品を含有する発酵液へと変換する発酵工程と、該発酵液から分離膜モジュールにより濾過液として化学品を回収するとともに、非濾過液を前記発酵槽に還流する膜分離工程と、を含む連続発酵による化学品の製造方法であって、
    前記発酵工程前に、前記発酵槽および前記分離膜モジュールに蒸気を供給し、蒸気滅菌を行う滅菌工程と、
    前記滅菌工程後、前記分離膜モジュールの2次側から冷却水を供給し、1次側へ前記冷却水を通液して前記分離膜モジュールの降温を行う冷却工程と、
    を含むことを特徴とする連続発酵による化学品の製造方法。
  5. 前記冷却工程は、前記発酵槽と前記分離膜モジュールとを縁切りした後、前記冷却水を前記分離膜モジュールの2次側から1次側に通液して前記分離膜モジュールを冷却するとともに、前記発酵槽に圧縮空気を供給して、前記発酵槽を冷却することを特徴とする請求項4に記載の連続発酵による化学品の製造方法。
  6. 発酵原料を微生物による発酵培養することにより、該発酵原料を、化学品を含有する発酵液に変換する発酵槽と、
    前記発酵液から化学品を分離する分離膜モジュールと、
    前記発酵槽から前記分離膜モジュールに発酵液を送液する発酵液循環手段と、
    前記発酵槽および前記分離膜モジュールに蒸気を供給する蒸気供給手段と、
    前記分離膜モジュールの2次側に冷却水を供給する冷却水供給手段と、
    を備えることを特徴とする膜分離型連続発酵装置。
  7. 前記冷却水供給手段は、供給する冷却水の温度を調整可能であることを特徴とする請求項6に記載の膜分離型連続発酵装置。
  8. 圧縮空気を供給する圧縮空気供給手段を備えることを特徴とする請求項6または7に記載の膜分離型連続発酵装置。
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