JP2013226486A - 分離膜モジュールの滅菌方法、化学品の製造方法および膜分離型連続発酵装置 - Google Patents
分離膜モジュールの滅菌方法、化学品の製造方法および膜分離型連続発酵装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】分離膜の乾燥を防止しながら、複雑な形状の分離膜モジュールでも滅菌可能な分離膜モジュールの滅菌方法、化学品の製造方法および膜分離型連続発酵装置を提供する。
【解決手段】本発明の分離膜モジュール2の滅菌方法は、分離膜を有する分離膜モジュール2に水供給装置41により分離膜の2次側から1次側へ大気圧下での沸点が80℃以上の液体を通液しながら、前記分離膜の1次側へ蒸気供給装置34により蒸気を供給すること、および分離膜の1次側から2次側へ大気圧下での沸点が80℃以上の液体を通液しながら、前記分離膜の2次側へ蒸気供給装置により蒸気を供給することの少なくとも一方によって、分離膜モジュール2を蒸気滅菌することを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の分離膜モジュール2の滅菌方法は、分離膜を有する分離膜モジュール2に水供給装置41により分離膜の2次側から1次側へ大気圧下での沸点が80℃以上の液体を通液しながら、前記分離膜の1次側へ蒸気供給装置34により蒸気を供給すること、および分離膜の1次側から2次側へ大気圧下での沸点が80℃以上の液体を通液しながら、前記分離膜の2次側へ蒸気供給装置により蒸気を供給することの少なくとも一方によって、分離膜モジュール2を蒸気滅菌することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、発酵液等に含まれる化学品を得るために、発酵液から微生物を濾過する場合などに使用する分離膜モジュールの滅菌方法、化学品の製造方法および膜分離型連続発酵装置に関するものである。
微生物や培養細胞の培養を伴う物質生産方法である発酵法は、大きく(1)回分発酵法(Batch発酵法)および流加発酵法(Fed−Batch発酵法)と、(2)連続発酵法とに分類することができる。
上記(1)の回分発酵法および流加発酵法は、設備的には簡素であり、短時間で培養が終了し雑菌汚染による被害が少ないという利点がある。しかしながら、時間経過と共に発酵培養液中の化学品濃度が高くなり、浸透圧あるいは化学品阻害等の影響により生産性および収率が低下してくる。そのため、長時間にわたり安定して高収率かつ高生産性を維持することが困難である。
また、上記(2)の連続発酵法は、発酵槽内で目的化学品が高濃度に蓄積することを回避することによって、長時間にわたって高収率かつ高生産性を維持できるという特徴がある。この連続発酵法については、L−グルタミン酸やL−リジンの発酵についての連続培養法が開示されている(非特許文献1参照)。しかしながら、この例では、発酵培養液に原料の連続的な供給を行うと共に、微生物や培養細胞を含んだ発酵培養液を抜き出すために、発酵培養液中の微生物や培養細胞が希釈されることから、生産効率の向上は限定されたものであった。
そこで、連続発酵法において、微生物や培養細胞を分離膜で濾過し、濾液から化学品を回収すると同時に濃縮液中の微生物や培養細胞を発酵培養液に保持または還流させることにより、発酵培養液中の微生物や培養細胞濃度を高く維持する方法が提案されている。例えば、分離膜として有機高分子からなる平膜を用いた連続発酵装置において、連続発酵する技術が提案されている(特許文献1参照)。
この様な連続発酵では、雑菌混入(コンタミネーション)を防いだ状態で純粋培養を行うことが好ましい。発酵培養液を濾過する際に分離膜モジュール等から雑菌が混入すると、発酵効率の低下、発酵槽内での発泡等により化学品の製造が効率的に行えなくなる。そのため、雑菌混入を防ぐために、発酵前に発酵槽や周辺設備、そして分離膜を滅菌する必要がある。
滅菌の方法としては、火炎滅菌、乾熱滅菌、煮沸滅菌、蒸気滅菌、紫外線滅菌、ガンマ線滅菌、ガス滅菌等の方法が挙げられるが、分離膜孔中の水分が無くなり、分離膜が乾燥してしまうと分離機能がなくなってしまうことに留意する必要がある。薬剤で殺菌する方法もあるが、殺菌後の薬剤の処理または分離膜モジュールへの薬剤の残留の問題がある。さらに薬剤耐性のある微生物が残る懸念がある。
また、分離膜の形状は、平膜、中空糸膜、スパイラル式などの形状のものがあり、中空糸膜モジュールであれば、外圧式、内圧式がある。特に中空糸膜モジュールは単位装置あたりの膜面積が大きく、工業的にも有用な構造と考えられるが、構造としては複雑なものである。
複雑な構造の分離膜を乾燥させずに滅菌するには、分離膜モジュール内に所定温度の水蒸気を供給して滅菌する蒸気滅菌(一般的には121℃、15分間から20分間)が適している。
この蒸気滅菌を生産スケールの発酵槽などの設備で行う場合、一般的には、発酵槽や周辺設備に、所定温度・圧力の蒸気、例えば125℃の飽和水蒸気を供給し、一般的な蒸気滅菌の温度である121℃まで各設備を昇温し、滅菌温度を所定時間保持して(20min以上)、蒸気滅菌を行っている。
濾過装置の蒸気滅菌システムとして、半透膜モジュールの蒸気滅菌後、装置等が負圧になることを防止するため、原水側から熱水を導入し、濾過装置の透過側が負圧になることを防止する技術が提案されている(特許文献2参照)。
また、蒸気滅菌後、原液側(1次側)である中空糸内側から空気を供給し、透過側(2次側)である中空糸の外側に空気の一部を膜透過させて、透過側の空間を満たした後、原液側より水を供給してモジュールの温度を下げる中空糸膜モジュールの蒸気滅菌方法が提案されている(特許文献3参照)。
さらに、中空糸膜の外側から内側に蒸気を通気、または外側と内側とに同時に蒸気を通気することにより、中空糸のゆれによる中空糸とケースとの接着界面でのリークを防止しながら、中空糸膜モジュールの蒸気滅菌を行う技術が提案されている(特許文献4参照)。
Toshihiko Hirao et al., Appl. Microbiol. Biotechnol.,32,269−273(1989)
蒸気滅菌方法は、スパイラルや中空糸膜等の複雑な形状を有する分離膜モジュールにおいて、適した滅菌方法であり、上記した種々の技術が提案されている。
ところで、発酵槽や周辺配管などを蒸気滅菌する場合、蒸気の供給温度は、最も温度が上がりにくい場所でも、所定の蒸気滅菌の温度以上になるように設定される。また、蒸気の供給時間は、最も温度が上がりにくい場所が、所定の蒸気滅菌の温度以上に昇温してから、所定の蒸気滅菌の時間以上滅菌するように設定する。通常、保温などで放熱対策を講じるが、供給する蒸気の温度は121℃以上とされる。
しかしながら、蒸気の供給温度が高く、かつ供給時間が長くなると、高温の蒸気と長時間接触した場合、また、蒸気を分離膜の1次側から2次側へ透過処理、または2次側から1次側へ透過処理した場合、分離膜の細孔が乾燥し易くなる。分離膜の細孔が乾燥すると、液体による分離膜の細孔の置換処理が必要となる場合がある。
分離膜の細孔が乾燥した場合、液体を濾過するためには、濾過の前に分離膜の細孔に水等を再度満たす操作が必要となる。分離膜の細孔径や分離膜材料の濡れ性によっては、乾燥した分離膜の細孔に水を通液する場合、通常の濾過条件よりも高い圧力が必要となる場合がある。特に疎水性物質が主成分を占める分離膜ではこの傾向が顕著である。そのため、はじめに、低級アルコールなどの濡れ性のよい液体で分離膜の細孔を置換しておき、その後、水に置き換える方法を採用することがある。
しかし蒸気滅菌の度に、上述の乾燥対策を実施すると、工程数が増加し、液体置換用の設備も必要となる。また濡れ性のよい液体を水に置換する際に、濡れ性のよい液体が後工程に残らない様に、水で何回も洗浄を行う必要があり、濡れ性のよい液体のロス、排水処理といった課題も発生する。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、分離膜モジュールを分離膜の乾燥を防止しながら、確実に滅菌する分離膜モジュールの滅菌方法、化学品の製造方法および膜分離型連続発酵装置を提供するものである。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分離膜モジュールの滅菌方法は、分離膜を有する分離膜モジュールに、前記分離膜の2次側から1次側へ大気圧下での沸点が80℃以上の液体を通液しながら、前記分離膜の1次側へ水蒸気を供給すること、および前記分離膜の1次側から2次側へ大気圧下での沸点が80℃以上の液体を通液しながら、前記分離膜の2次側へ水蒸気を供給することの少なくとも一方によって、前記分離膜モジュールを滅菌することを特徴とする。
また、本発明の分離膜モジュールの蒸気滅菌方法は、上記発明において、前記分離膜に供給する液体は水であることを特徴とする。
また、本発明の化学品の製造方法は、分離膜を有する分離膜モジュールに、前記分離膜の2次側から1次側へ大気圧下での沸点が80℃以上の液体を通液しながら、前記分離膜の1次側へ水蒸気を供給すること、および前記分離膜の1次側から2次側へ大気圧下での沸点が80℃以上の液体を通液しながら、前記分離膜の2次側へ水蒸気を供給することの少なくとも一方によって、前記分離膜モジュールを蒸気滅菌する滅菌工程と、発酵原料を微生物の発酵培養により化学品を含有する発酵液へと変換する発酵工程と、該発酵液から前記分離膜モジュールにより濾過液として化学品を回収する膜分離工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明の化学品の製造方法は、上記発明において、前記分離膜に供給する液体は水であることを特徴とする。
また、本発明の膜分離型連続発酵装置は、発酵原料を微生物による発酵培養することにより、該発酵原料を化学品を含有する発酵液に変換する発酵槽と、前記発酵液から化学品を分離する分離膜モジュールと、前記発酵槽から前記分離膜モジュールに発酵液を送液する発酵液循環手段と、前記分離膜モジュールの分離膜の2次側から1次側へ大気圧下での沸点が80℃以上の液体を供給する液体供給手段、および前記分離膜モジュールの分離膜の1次側に水蒸気を供給する蒸気供給手段、並びに前記分離膜モジュールの分離膜の1次側から2次側に大気圧下での沸点が80℃以上の液体を供給する液体供給手段、および前記分離膜モジュールの分離膜の2次側に水蒸気を供給する蒸気供給手段の少なくとも一方と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の膜分離型連続発酵装置は、上記発明において、前記液体供給手段は、前記分離膜に水を供給することを特徴とする。
本発明によれば、分離膜モジュールを蒸気滅菌する際に、分離膜の乾燥を抑制しながら、確実に滅菌処理することが可能となる。
以下に、本発明の実施の形態にかかる分離膜モジュールの滅菌方法、化学品の製造方法および連続発酵装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施の形態により本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる分離膜モジュールの蒸気滅菌用装置の概略図である。蒸気滅菌用装置100は、分離膜モジュール2の1次側に蒸気を供給する蒸気供給部34と、分離膜モジュール2の2次側に液体を供給する液体供給装置44と、を備える。
図1は、本発明の実施の形態1にかかる分離膜モジュールの蒸気滅菌用装置の概略図である。蒸気滅菌用装置100は、分離膜モジュール2の1次側に蒸気を供給する蒸気供給部34と、分離膜モジュール2の2次側に液体を供給する液体供給装置44と、を備える。
本実施の形態1において、蒸気滅菌時に分離膜モジュール2に供給する液体としては、大気圧下での沸点が80℃以上の液体であることが好ましい。一般的な蒸気滅菌の滅菌温度は121℃であるため、蒸気滅菌時に分離膜モジュール2に供給する液体の気化による分離膜モジュール2への影響を小さくするために、液体の大気圧下での沸点は80℃以上であることが好ましい。滅菌温度を121℃より低くして滅菌する場合には、大気圧下での沸点が80℃以下の液体も選択可能である。また、分離膜モジュールに供給する液体を2次側から1次側に通液しながら、蒸気を1次側に供給して滅菌温度まで昇温する場合、供給する液体の熱容量が小さい方が、蒸気滅菌時の分離膜モジュール2の昇温には有利であり、分離膜モジュール2内部の熱伝導に熱容量の大小も影響すると考えられる。
分離膜モジュール2に供給される液体は、例えば、イオン交換水、逆浸透膜透過水、蒸留水等の水や、アルコール類が好適に使用される。アルコール類としては、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ヘプタノール等の1価のアルコール類、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールに加え、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等が例示される。また、シリコーンオイルや、界面活性剤を添加した水も使用することができる。
液体は、水に電解質を溶解したものであっても良く、アルカリ、酸、酸化剤または還元剤を添加したものあってもよい。なお、添加物としては、分解物が発生するなどして、分離膜やモジュール部材等に悪影響を与えないものが好適に用いられる。特に添加物を含有しない水は、濾過液に混入しても濾過液の性質に与える変化が小さい点で好ましい。
液体は、水に電解質を溶解したものであっても良く、アルカリ、酸、酸化剤または還元剤を添加したものあってもよい。なお、添加物としては、分解物が発生するなどして、分離膜やモジュール部材等に悪影響を与えないものが好適に用いられる。特に添加物を含有しない水は、濾過液に混入しても濾過液の性質に与える変化が小さい点で好ましい。
液体は、分離膜との親和性が高い方が液体の供給が容易となる。したがって、分離膜が親水性の場合には、親水性の液体を選択し、疎水性の分離膜には疎水性の液体を選択することが好ましい。あるいは、疎水性の分離膜を使用する場合であっても、例えば、水と相溶性のグリセリンに疎水性分離膜を浸漬処理することにより、もしくは、一旦、グリセリンをアルコールに置換することにより、グリセリンを水で置換することができるため、疎水性分離膜の液体として水を選択することが可能となる。
液体として水以外の溶媒を使用する場合、蒸気滅菌工程後、分離膜モジュール2に洗浄液や水を供給して、残存する液体を洗浄する。分離膜の洗浄は、分離膜モジュール2の1次側に洗浄液や水を供給し、分離膜の2次側に濾過をすることで洗浄しても良いし、分離膜モジュール2の2次側から、洗浄液や水を供給し、分離膜の1次側へ通液をすることで洗浄しても良い。
蒸気供給装置34は、分離膜を備えた分離膜モジュール2の1次側に蒸気を供給して、分離膜モジュール2を蒸気滅菌する。蒸気供給装置34は、蒸気供給部31と、蒸気供給ライン32と、蒸気供給バルブ33と、を備える。蒸気供給部31は、分離膜モジュール2の分離膜の1次側に設けられた蒸気供給ライン32および蒸気供給バルブ33を介して分離膜モジュール2に接続される。蒸気供給装置34から分離膜モジュール2の1次側上部に供給された蒸気、および熱交換で発生した蒸気の凝縮液は、ドレン排出ライン35およびドレン排出バルブ36を介して分離膜モジュール2の系外に排出される。なお、以下、分離膜モジュール2内の、処理対象である原液と接する側を1次側と呼び、処理後の濾過液と接する側を2次側と呼ぶ。また、分離膜モジュール2を図1の様に縦に配置した場合を想定して、分離膜モジュールの上部、下部を示したが、分離膜モジュールの配置は縦の配置に限らない。
分離膜モジュール2へは、被濾過液である原液を、分離膜モジュール2の下部から供給する。原液供給部51は、分離膜モジュール2の1次側に設けられた原液供給ライン52および原液供給バルブ53を介して分離膜モジュール2に接続される。
被濾過液である原液を、クロスフロー濾過する場合は、原液は、分離膜モジュール2の1次側から、分離膜モジュール2の1次側上部に設けられた原液排出ライン54および原液排出バルブ55を介して分離膜モジュール2から排出される。
被濾過液である原液を、クロスフロー濾過する場合は、原液は、分離膜モジュール2の1次側から、分離膜モジュール2の1次側上部に設けられた原液排出ライン54および原液排出バルブ55を介して分離膜モジュール2から排出される。
原液供給部51から分離膜モジュール2の1次側に供給された原液は、分離膜により2次側に透過される。分離膜により透過された透過液は、濾過液排出ライン56を介して排出される。
液体供給装置44は、液体供給部41と、液体供給ライン42と、液体供給バルブ43と、を備える。液体供給部41は、分離膜モジュール2の分離膜の2次側に設けられた液体供給ライン42および液体供給バルブ43を介して分離膜モジュール2に接続される。液体供給装置44から分離膜モジュール2の2次側に供給された液体は、分離膜モジュール2の1次側に透過され、ドレン排出ライン35およびドレン排出バルブ36を介して分離膜モジュール2の系外に排出される。
分離膜モジュール2は、分離膜と該分離膜を収容する容器とを備える。本実施の形態1に使用される分離膜は、有機膜、無機膜を問わない。分離膜の洗浄に逆圧洗浄や薬液浸漬による洗浄などを行うため、分離膜は、これらに対する耐久性を有することが好ましい。分離膜の形状は、平膜、中空糸膜、スパイラル式などいずれの形状のものも採用することができる。中でも、中空糸膜モジュールが好ましく、中空糸膜モジュールであれば、外圧式、内圧式のいずれの形状のものも採用することができる。
本実施の形態1に使用される分離膜として、分離性能及び透水性能、さらには耐汚れ性の観点から、有機高分子化合物を好適に使用することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、セルロース系樹脂およびセルローストリアセテート系樹脂などが挙げられ、これらの樹脂を主成分とする樹脂の混合物であってもよい。
溶液による製膜が容易で物理的耐久性や耐薬品性にも優れているポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂およびポリアクリロニトリル系樹脂が好ましく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂またはそれを主成分とする樹脂が、化学的強度(特に耐薬品性)と物理的強度を併せ有する特徴をもつためより好ましく用いられる。
ここで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体が好ましく用いられる。さらに、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との共重合体を用いても構わない。フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび三塩化フッ化エチレンなどが例示される。
実施の形態1に使用される分離膜の平均細孔径は、使用する目的や状況に応じて適宜決定することができるが、ある程度小さい方が好ましく、通常は0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。中空糸膜の平均細孔径が0.01μm未満であると、糖や蛋白質などの成分やその凝集体などの膜汚れ成分が細孔を閉塞して、安定運転ができなくなる。透水性能とのバランスを考慮した場合、好ましくは0.02μm以上であり、さらに好ましくは0.03μm以上である。また、1μmを超える場合、膜表面の平滑性と膜面の流れによる剪断力や、逆洗やエアースクラビングなどの物理洗浄による細孔からの汚れの成分の剥離が不十分となり、安定運転ができなくなる。
また、平均細孔径が微生物または培養細胞の大きさに近づくと、これらが直接細孔を塞いでしまう場合がある。さらに発酵液中の微生物または培養細胞の一部が死滅することにより細胞の破砕物が生成する場合があり、これらの破砕物によって細孔の閉塞を回避するために、平均細孔径は0.4μm以下が好ましく、0.2μm以下が好適である。
ここで、分離膜の平均細孔径は、倍率10,000倍以上の走査型電子顕微鏡観察で観察される複数の細孔の直径を測定し、平均することにより求めることができる。10個以上、好ましくは20個以上の細孔を無作為に選び、それら細孔の直径を測定し、数平均して求めることが好ましい。細孔が円状でない場合などは画像処理装置等によって、細孔が有する面積と等しい面積を有する円、すなわち等価円を求め、等価円直径を細孔の直径とする方法により求めることも好ましく採用できる。
分離膜モジュール2を使用した膜分離処理を行う際、雑菌等による装置内および/または濾過液の汚染を防止するために、膜分離工程前に分離膜モジュール2の滅菌処理を行うことが好ましい。本実施の形態1にかかる分離膜モジュール2の滅菌方法において、分離膜モジュール2を蒸気滅菌する際、分離膜の2次側から1次側へ液体を通液しながら、分離膜の1次側へ蒸気を供給して、蒸気滅菌を行うことが好ましい。分離膜の2次側から1次側へ液体を通液しながら、蒸気滅菌を行うことにより、分離膜の乾燥を防止することができる。
実施の形態1にかかる滅菌方法において、蒸気供給部31は分離膜モジュール2に水蒸気を供給する。分離膜モジュール2に供給する水蒸気の温度は、121℃以上が好ましく、一般的な蒸気滅菌の滅菌温度である121℃以上とする。分離膜モジュール2の滅菌は、121℃以上で15分〜20分間保持されることが好ましく、分離膜モジュール2に121℃以上の水蒸気を15〜20分間供給し続けることにより滅菌を行うことが特に好ましい。
蒸気供給部31は、所定の滅菌温度の水蒸気を分離膜モジュール2に供給することができるが、分離膜モジュール2の部材に急激な温度変化に対して耐久性が低いものを含む場合は、所定の滅菌温度に到達するまで徐々に温度を上げて水蒸気を供給しても良い。
実施の形態1にかかる蒸気滅菌装置100において、分離膜モジュール2の滅菌中、蒸気供給部31により分離膜モジュール2の1次側に供給された水蒸気の温度が所定の滅菌温度を保持するように温度制御することが好ましい。分離膜モジュール2自体からの放熱分などを考慮し、所定の滅菌温度よりも高めの温度の水蒸気を供給することが好ましい。
蒸気は逆浸透膜を透過させた水や蒸留水、イオン交換水をヒーター等で加熱し蒸発したものを用いる。滅菌に使用することから、フィルターを透過させてフィルター滅菌する等、滅菌してから使用することが好ましい。なお、フィルターは市販の滅菌用フィルターを使用することができ、捕捉径が0.2μm程度のものが好ましい。
蒸気滅菌は、分離膜モジュール2に水蒸気を供給して分離膜モジュール2を昇温する工程(昇温工程)と、分離膜モジュール2に水蒸気を供給して分離膜モジュール2を滅菌する工程(蒸気滅菌工程)、および分離膜モジュール2の蒸気滅菌が終了し分離膜モジュール2を降温する際(降温工程)からなる。本実施の形態1では、蒸気滅菌工程にのみならず、昇温工程および降温工程においても分離膜モジュール2に水蒸気を供給する場合は、分離膜モジュール2の2次側に液体供給装置44から液体を供給し、供給された液体を2次側から1次側に通液しながら、分離膜モジュール2に水蒸気を供給することが好ましい。
図1では、液体供給装置44から分離膜モジュール2の2次側に供給された液体は、分離膜モジュール2の1次側に透過され、ドレン排出ライン35およびドレン排出バルブ36を介して分離膜モジュール2の系外に排出される。
液体供給部41は、分離膜モジュール2の蒸気滅菌工程中は所定の滅菌温度を保持するように、供給する液体の温度および流量を制御することが好ましい。供給する液体の温度が低く流量が多いと、分離膜モジュール2の2次側から1次側へ透過する液体により、分離膜モジュール2の分離膜近傍の温度が、所定の滅菌温度より低下する可能性がある。したがって、使用する分離膜モジュール2について、事前に液体の供給温度および供給量と、供給する蒸気温度および蒸気供給量と、分離膜モジュール2の温度の関係を確認しておくことが好ましい。特に分離膜モジュール2に供給する液体の流束については、0.001〜1m/dが好ましく、0.01〜0.1m/dがさらに好ましい。例えば、121℃以上に保持する蒸気滅菌条件で、125℃の蒸気を供給する場合、この程度の流束であれば、分離膜への供給および分離膜中を通液する間に、所定の蒸気滅菌温度まで昇温されるため、蒸気滅菌温度の保持に悪影響する懸念は無い。
液体供給部41による液体の供給は間欠、または連続で供給することができるが、分離膜の乾燥防止と蒸気滅菌保持条件の安定性を考慮すると、連続で供給することが好ましい。
液体供給部41による液体の供給は間欠、または連続で供給することができるが、分離膜の乾燥防止と蒸気滅菌保持条件の安定性を考慮すると、連続で供給することが好ましい。
分離膜モジュール2に供給する液体として水を使用する場合、逆浸透膜を透過させた水や蒸留水、イオン交換水を用いることが好ましい。必要によりヒーター等で温度を制御しても良い。滅菌に使用することから、フィルターを透過させてフィルター滅菌する等、滅菌してから使用することが好ましい。なお、フィルターは市販の滅菌用フィルターを使用することができ、捕捉径が0.2μm程度のものが好ましい。
水はタンク等に貯蔵しておき、分離膜モジュール2に送液しても良い。この場合、タンクで所定の温度に加熱しておくこともできる。また分離膜モジュール2の送液時に、途中に熱交換器を設けて、加熱することもできる。熱交換器には、プレート式、チューブ式、スパイラル式、二重管式等の一般的な熱交換器を用いることもできる。
なお、水には、酸、アルカリ、界面活性剤などを添加しても良いが、蒸気滅菌時の分離膜モジュール2の部材等の耐久性や添加物の熱分解により悪影響しないことを確認して使用することが好ましい。
なお、水には、酸、アルカリ、界面活性剤などを添加しても良いが、蒸気滅菌時の分離膜モジュール2の部材等の耐久性や添加物の熱分解により悪影響しないことを確認して使用することが好ましい。
蒸気供給部31は、図1に示すように、水蒸気を、分離膜モジュール2の1次側(原水側)に供給する。分離膜モジュール2内に水蒸気の凝縮液溜まりが発生しないように、分離膜モジュール2の上側から水蒸気を供給し、分離膜モジュール2の下側から水蒸気の凝縮液を排出することが好ましい。供給口または排出口は、円筒形状の分離膜モジュール容器であれば、円筒のサイドノズルを使用しても良い。
実施の形態1にかかる分離膜モジュール2の滅菌方法において、分離膜モジュール2内部が予熱温度に達するまでの昇温時間、および滅菌可能な温度に昇温するまでの昇温時間は、分離膜モジュール2内に熱電対を設置して事前に測定して決定することが好ましい。または、特定の微生物を分離膜モジュール2内に配置し、滅菌性を確認して決定も良い。
なお、分離膜モジュール2内の、最も温度が上がりにくい場所でも、所定の滅菌温度以上になるように昇温時間を設定することが好ましい。通常、保温などで放熱対策を講じるが、水蒸気の供給温度は121℃以上とすることが好ましい。
実施の形態1にかかる分離膜モジュール2の滅菌方法において、滅菌処理の終了後、所定の滅菌温度から、直ちに低下させて、分離膜モジュール2の温度を低下させることもできるが、分離膜モジュール2の部材に急激な温度変化に対して耐久性が低いものを含む場合は、所定の滅菌温度から徐々に温度を下げるように制御することが好ましい。かかる制御のためには、液体供給部41により、加温された液体を供給し、徐々に供給する液体の温度を下げて分離膜モジュール2の温度を低下させてもよい。また、滅菌終了後、水蒸気の供給を停止し、その状態で放置しておくこともできる。
本実施の形態1では、分離膜モジュール2に液体を供給しながら蒸気滅菌処理を行うことにより、分離膜モジュール2の分離膜の乾燥を防止することが可能となる。これにより、蒸気滅菌終了後、余計な工程を経ることなく、速やかに膜分離処理を行うことが可能となる。
なお、本実施の形態1では、分離膜モジュール2の1次側を蒸気滅菌する場合について説明したが、分離側モジュール2の2次側を蒸気滅菌する場合には、図2に示すような蒸気滅菌用装置により蒸気滅菌を行うことができる。蒸気滅菌用装置100Aは、原液供給ライン52上に分離膜モジュール2の1次側に液体を供給する液体供給装置44Aを有するとともに、蒸気供給装置34Aが分離膜モジュール2の1次側および2次側に選択的に蒸気を供給する点で実施の形態1の蒸気滅菌用装置100と異なる。本変形例では、液体供給装置44Aを別途設けているが、1次側に液体を供給できれば、原液供給ライン52および原液供給バルブ53を使用して供給してもよい。
蒸気供給装置34Aは、原液排出ライン54と、ろ過液排出ライン56とを接続する接続ライン37を備る。蒸気供給装置34Aから1次側に水蒸気を供給する際は、蒸気供給バルブ33を開とし、接続ライン37上に設置された蒸気供給バルブ38を閉とする。2次側に水蒸気を供給する際は、蒸気供給バルブ33を閉とし、蒸気供給バルブ38を開とする。
また、蒸気滅菌用装置100Aは、分離膜モジュールの2次側下部からドレンを排出するドレン排出ライン39を備え、液体供給装置44Aにより分離膜の1次側から2次側へ液体を通液しながら、蒸気供給装置34Aにより分離膜の2次側に水蒸気を供給して滅菌を行う際のドレン、すなわち供給された蒸気、および熱交換で発生した蒸気の凝縮液を排出する。
実施の形態1の変形例にかかる蒸気滅菌用装置100Aでは、分離膜モジュール2の1次側または2次側から、2次側または1次側に液体を通液しながら、蒸気滅菌を行うことで、分離膜の乾燥を防止することができ、滅菌処理終了後、分離膜の液体置換工程等を行うことなく、直ちに膜分離処理を行うことが可能となる。
ここで、分離膜の1次側から2次側へ通液しながらの蒸気滅菌と、2次側から1次側へ通液しながらの蒸気滅菌とを交互に行っても良い。この場合、事前に分離膜モジュール内の滅菌領域の温度が低下せずに滅菌可能な操作条件を確認しておくことが好ましい。
ここで、分離膜の1次側から2次側へ通液しながらの蒸気滅菌と、2次側から1次側へ通液しながらの蒸気滅菌とを交互に行っても良い。この場合、事前に分離膜モジュール内の滅菌領域の温度が低下せずに滅菌可能な操作条件を確認しておくことが好ましい。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、本発明の滅菌方法により滅菌した分離膜モジュール2を用いる膜分離型連続発酵装置である。本発明に係る滅菌方法により滅菌した分離膜モジュールを膜分離型連続発酵装置で使用することにより、安定的に発酵を行うことが可能となる。以下、図面を参照して本実施の形態2を説明する。図3は、本発明の実施の形態2にかかる膜分離型連続発酵装置を説明するための概略図である。
本発明の実施の形態2は、本発明の滅菌方法により滅菌した分離膜モジュール2を用いる膜分離型連続発酵装置である。本発明に係る滅菌方法により滅菌した分離膜モジュールを膜分離型連続発酵装置で使用することにより、安定的に発酵を行うことが可能となる。以下、図面を参照して本実施の形態2を説明する。図3は、本発明の実施の形態2にかかる膜分離型連続発酵装置を説明するための概略図である。
図3に示す膜分離型連続発酵装置200は、分離膜モジュール2が、発酵槽1の外部に設置された代表的な構成の例である。膜分離型連続発酵装置200は、発酵原料を微生物の発酵培養により化学品を含有する発酵液への変換を行う発酵槽1と、発酵液から化学品を分離する分離膜モジュール2と、分離膜モジュール2を洗浄する分離膜洗浄装置18と、各部を制御する制御装置30と、水蒸気を供給する蒸気供給部20と、分離膜モジュール2の2次側に水を供給する水供給装置28とを備える。分離膜モジュール2には、多数の中空糸膜が組み込まれている。なお、本実施の形態2において、水供給装置28が液体供給手段として機能する。
発酵槽1内には、原料供給ポンプ9により原料及び微生物または培養細胞が投入される。発酵工程は発酵槽1内で進行する。膜分離型連続発酵装置200は、攪拌装置4および気体供給装置15を備える。攪拌装置4は発酵槽1内の発酵液を攪拌する。また、気体供給装置15は、必要とする気体を供給することができる。このとき、供給された気体を回収し、リサイクルして再び気体供給装置15で供給することができる。
膜分離型連続発酵装置200は、pHセンサー・制御装置5および中和剤供給ポンプ10を備える。pHセンサー・制御装置5は培養液のpHを検出し、その結果に応じて、培養液が設定範囲内のpHを示すように、中和剤供給ポンプ10を制御する。中和剤供給ポンプ10は、酸性水溶液の槽及びアルカリ性水溶液の槽に接続されており、いずれかの水溶液を発酵槽1に添加することによって培養液のpHを調節する。培養液のpHが一定範囲内に保たれることで、生産性の高い発酵生産を行うことができる。中和剤、つまり酸性水溶液およびアルカリ性水溶液は、pH調整液に該当する。
膜分離型連続発酵装置200は、装置内の培養液、つまり発酵液を、発酵槽1から分離膜モジュール2に送液し、クロスフローにより未濾過の発酵液を、分離膜モジュール2から発酵槽1に循環する、循環ポンプ8を備える。発酵生産物である化学品を含む発酵液は、分離膜モジュール2によって濾過されることで微生物と発酵生産物である化学品に分離され、装置系から濾過液として取り出される。また、分離された微生物は、装置系内にとどまるので、装置系内の微生物濃度が高く維持される。その結果、生産性の高い発酵生産を可能としている。循環ポンプ8と分離膜モジュール2との間には、循環バルブ17が設けられる。
分離膜モジュール2は、膜分離を実行する装置の一例である。分離膜モジュール2は、循環ポンプ8を介して発酵槽1に接続されている。分離膜モジュール2による濾過は、濾過ポンプ11により吸引しながら行うことが好ましい。差圧センサー・制御装置7により、分離膜モジュール2の分離膜の差圧を検出しながら、分離膜モジュール2の分離膜の差圧が一定の範囲内の値を示すように、濾過ポンプ11を制御することで、発酵槽1から分離膜モジュール2へ送られる発酵液量を適当に調整することができる。あるいは、濾過ポンプ11による吸引を行うことなく、循環ポンプ8による圧力のみによって、特別な動力を使用することなく濾過を行うことも可能である。
発酵槽1は、温度制御装置3を備えることができる。温度制御装置3は、温度検出する温度センサーと、加熱部と、冷却部と、制御部とを備える。温度制御装置3は、温度センサーによって発酵槽1内の温度を検出し、検出結果に応じて、温度が一定の範囲内の値を示すように制御部によって加熱部及び冷却部温度を制御する。こうして、発酵槽1の温度が一定に維持されることで、微生物濃度が高く維持される。
また、発酵槽1には直接又は間接的に水を添加することができる。水供給部は、発酵槽1に直接的に水を供給し、具体的には水供給ポンプ16で構成される。間接的な水の供給は、原料の供給およびpH調整液の添加等を含む。連続発酵装置に添加される物質は、コンタミによる汚染を防止し、発酵を効率よく行うため、滅菌されていることが好ましい。例えば、培地は、培地原料を混合後に加熱されることで滅菌されてもよい。また、培地、pH調整液および発酵槽に添加される水は、必要に応じて、滅菌用フィルターを通すなどして無菌化されてもよい。
レベルセンサー・制御装置6は、発酵槽1内の液面の高さを検知するセンサーと、制御装置とを備える。制御装置は、このセンサーの検知結果に基づいて、原料ポンプ9、水供給ポンプ16等を制御することによって、発酵槽1内に流入する液量を制御することで、発酵槽1内の液面の高さを一定の範囲内に維持する。
分離膜洗浄装置18は、洗浄液槽と、洗浄液供給ポンプ12と、洗浄液バルブ14とを備える。分離膜洗浄装置18は、洗浄液供給ポンプ12を駆動することにより、洗浄液槽から分離膜モジュール2の2次側に洗浄液を供給して逆圧洗浄を行う。ここで、逆圧洗浄とは、分離膜の2次側である濾過液側から、1次側である発酵液側へ洗浄液を送ることにより、分離膜表面に堆積した汚れ物質を除去する方法である。分離膜モジュール2の2次側に供給された洗浄液は、分離膜を透過して1次側に濾過される。洗浄液が分離膜モジュール2に供給されることで、分離膜の洗浄が実行される。逆圧洗浄を行う場合、分離膜モジュール2と濾過ポンプ11との間に配置される濾過バルブ13を閉とすることで、分離膜モジュール2における濾過が停止される。逆圧洗浄を行う際は、循環ポンプ2を運転しても、または停止してもよい。循環ポンプ8を運転しながら逆圧洗浄を行う場合は、洗浄液供給ポンプ12の圧力を循環ポンプ8の圧力より高く設定すればよい。
逆圧洗浄に用いられる洗浄液には、発酵に大きく阻害しない範囲で、アルカリ、酸、酸化剤または還元剤を添加することができる。ここで、アルカリの例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどを挙げることができる。酸の例としては、シュウ酸、クエン酸、塩酸、硝酸などを挙げることができる。また酸化剤の例としては、次亜塩素酸塩、過酸化などを挙げることができる。還元剤の例としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどの無機系還元剤などを挙げることができる。
微生物または培養細胞の発酵液を分離膜モジュール2中の分離膜で濾過処理する際の膜間差圧は、微生物および培養細胞、並びに培地成分が容易に目詰まりしない条件であればよい。例えば、膜間差圧を0.1kPa以上20kPa以下の範囲にして濾過処理することができる。膜間差圧は、好ましくは0.1kPa以上10kPa以下の範囲であり、さらに好ましくは0.1kPa以上5kPa以下の範囲である。上記膜間差圧の範囲内であれば、微生物(特に原核生物)および培地成分の目詰まり、並びに透過水量の低下を抑制することで、連続発酵運転に不具合を生じることを効果的に抑制することができる。
蒸気供給部20は、分離膜モジュール2に水蒸気を供給する。実施の形態2にかかる蒸気供給部20は、発酵槽1に水蒸気を供給する。実施の形態2では、まず、蒸気供給バルブ19を開として蒸気供給部20により発酵槽1に水蒸気を供給し、発酵槽1内を滅菌した後、循環バルブ17を開として、水蒸気を周辺配管、および分離膜モジュール2に供給する。水蒸気を供給し、図示しない排出ラインから排出して、膜分離型連続発酵装置200の各部の温度が所定の滅菌温度になるまで昇温する。滅菌する箇所全てが所定の滅菌温度まで昇温できた後、所定の蒸気滅菌温度で所定の時間保持して、滅菌を行うことが好ましい。
分離膜モジュール2には、分離膜モジュール2から発酵槽1への循環ラインを利用して、または循環ポンプ8を通って発酵槽1から分離膜モジュール2の1次側に水蒸気が供給される。分離膜モジュール2の1次側に水蒸気を供給する際、水供給装置28により分離膜モジュール2の2次側に水を供給し、分離膜の1次側に水を通液する。分離膜モジュール2の1次側に供給された水蒸気の凝縮液および通液された水は、分離膜モジュール2の1次側から排出され、発酵槽1に循環またはドレン排出バルブ25を開としてドレン排出ライン24から装置外へ排出される。水蒸気により分離膜モジュール2が所定温度まで昇温した後、所定の滅菌温度で所定時間保持することにより、分離膜モジュール2の滅菌を行うことができる。本実施の形態2では、蒸気供給部20により膜分離型連続発酵装置200の全体を滅菌することができる。
また、分離膜モジュール2に単独で水蒸気を供給しても良い。図4は、実施の形態2の変形例1にかかる膜分離型連続発酵装置の該略図である。図4に示す、膜分離型連続発酵装置200Aは、分離膜モジュール2の1次側上部に、蒸気供給部21から蒸気供給ライン23および蒸気供給バルブ22を介して、温度が制御された水蒸気を供給することができる。
本実施の形態2において、分離膜モジュール2に水蒸気を供給して分離膜モジュール2を滅菌する工程のみならず、分離膜モジュール2に水蒸気を供給して分離膜モジュール2を昇温する際、および分離膜モジュール2の蒸気滅菌条件の保持が終了し分離膜モジュール2を降温する際にも、分離膜モジュール2に水蒸気を供給する場合は、水供給装置28により分離膜モジュール2に水を供給して2次側から1次側へ水を通液しながら分離膜モジュール2に水蒸気を供給することが好ましい。水は間欠、または連続で供給することができるが、分離膜の乾燥防止と蒸気滅菌保持条件の安定性を考慮すると、連続で供給することが好ましい。
また、分離膜洗浄装置18を利用して、分離膜モジュール2に水を供給してもよい。図5は、実施の形態2の変形例2にかかる膜分離型連続発酵装置の該略図である。図5に示す、膜分離型連続発酵装置200Bは、洗浄液供給ポンプ12と洗浄液バルブ14を介して、分離膜モジュール2の2次側に水を供給する。
滅菌処理の終了後、発酵槽1や分離膜モジュール2への水蒸気の供給を停止し、装置内の蒸気ドレンを排出する。蒸気ドレンの排出後、圧空でブローして、発酵槽1や分離膜モジュール2を使用条件まで冷却する。または、水蒸気の供給を停止した後、分離膜モジュール2をバルブ等で区分し、発酵槽1や周辺設備の冷却と、分離膜モジュール2の冷却とを別々の条件で行ってもよい。分離膜モジュール2に使用される分離膜には、急激な温度変化に対し脆いものがあり、同一の冷却条件で短時間に冷却した場合、分離膜が破損する危険性がある。一方、分離膜に合わせて装置全体を冷却すると、冷却時間が長くなる。したがって、発酵槽1等と分離膜2とを分離して冷却処理を行うことにより、発酵槽1では、短時間で冷却を終了し、その後の処理、例えば、発酵槽1に培地を供給するなど、発酵の準備を行うことができる。
次に、本実施の形態2にかかる膜分離型発酵装置200で使用される微生物および培養細胞について説明する。本実施の形態2で使用する微生物および培養細胞については特に制限はなく、例えば、発酵工業においてよく使用されるパン酵母などの酵母、および糸状菌等の菌類;大腸菌およびコリネ型細菌などのバクテリア;放線菌などが挙げられる。また、培養細胞としては、動物細胞および昆虫細胞等が挙げられる。また、使用する微生物や培養細胞は、自然環境から単離されたものでもよく、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。
乳酸を製造する場合、真核細胞であれば酵母、原核細胞であれば乳酸菌を用いることが好ましい。このうち酵母は、乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子を細胞に導入した酵母が好ましい。このうち乳酸菌は、消費したグルコースに対して対糖収率として50%以上の乳酸を産生する乳酸菌を用いることが好ましく、更に好ましくは対糖収率として80%以上の乳酸菌であることが好適である。
また、本実施の形態2で使用する発酵原料としては、培養する微生物および培養細胞の生育を促し、目的とする発酵生産物である化学品を良好に生産させ得るものであればよい。
発酵原料としては、液体培地が用いられる。培地中の成分であって、目的の化学品に変換される物質(すなわち狭義の原料)を原料と称することもあるが、本書では、特に区別しない場合には、培地全体を原料と称する。狭義の原料とは、例えば化学品としてアルコールを得るための発酵基質であるグルコース、フルクトース、ショ糖などの糖である。
発酵原料としては、液体培地が用いられる。培地中の成分であって、目的の化学品に変換される物質(すなわち狭義の原料)を原料と称することもあるが、本書では、特に区別しない場合には、培地全体を原料と称する。狭義の原料とは、例えば化学品としてアルコールを得るための発酵基質であるグルコース、フルクトース、ショ糖などの糖である。
原料は、炭素源、窒素源、無機塩類、および必要に応じてアミノ酸やビタミンなどの有機微量栄養素を適宜含有する。炭素源としては、グルコース、シュークロース、フラクトース、ガラクトースおよびラクトース等の糖類、これら糖類を含有する澱粉糖化液、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、酢酸等の有機酸、エタノールなどのアルコール類、およびグリセリンなどが使用される。窒素源としては、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類、各種発酵菌体およびその加水分解物などが使用される。無機塩類としては、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩およびマンガン塩等が添加されてもよい。
微生物または培養細胞が生育のために特定の栄養素を必要とする場合には、その栄養物が標品またはそれを含有する天然物として、原料に添加される。
原料は、消泡剤を必要に応じて含有してもよい。
原料は、消泡剤を必要に応じて含有してもよい。
本明細書において、培養液とは、発酵原料に微生物または培養細胞が増殖した結果得られる液である。連続発酵においては、培養液に発酵原料を追加することができるが、追加する発酵原料の組成は、目的とする化学品の生産性が高くなるように、培養開始時の組成から適宜変更してもよい。例えば、狭義の発酵原料の濃度、培地における他の成分の濃度等は、変更可能である。
また、本明細書において、発酵液とは、発酵の結果生じた物質を含有する液であり、原料、微生物または培養細胞、及び化学品を含有してもよい。つまり、文言「培養液」と「発酵液」とはほぼ同じ意味で用いられることがある。
本実施の形態2にかかる膜分離型連続発酵装置200によれば、上記の微生物または培養細胞によって、発酵液中に、化学品すなわち変換後の物質が生産される。化学品としては、例えば、アルコール、有機酸、アミノ酸および核酸など発酵工業において大量生産されている物質を挙げることができる。例えば、アルコールとしては、エタノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールおよびグリセロール等が挙げられる。また、有機酸としては、酢酸、乳酸、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸およびクエン酸等を挙げることができ、核酸であればイノシン、グアノシンおよびシチジン等を挙げることができる。また、本発明の方法を、酵素、抗生物質および組換えタンパク質のような物質の生産に適用することも可能である。
本実施の形態2にかかる膜分離型連続発酵装置100は、化成品、乳製品、医薬品、食品または醸造品の製造に適用できる。ここで化成品としては、例えば、有機酸、アミノ酸および核酸が挙げられ、乳製品としては、例えば、低脂肪牛乳などが挙げられ、食品としては、例えば、乳酸飲料など、醸造品としては、例えば、ビール、焼酎が挙げられる。また、本発明の製造方法によって製造された、酵素、抗生物質、組み換えタンパク質等は、医薬品に適用可能である。
連続発酵による化学品の製造では、培養初期にBatch培養またはFed−Batch培養を行って、微生物濃度を高くした後に、連続発酵(つまり培養液の引き抜き)を開始しても良い。または、微生物濃度を高くした後に、高濃度の菌体をシードし、培養開始とともに連続発酵を行っても良い。連続発酵による化学品の製造では、適当な時期から原料培養液の供給および培養物の引き抜きを行うことが可能である。原料培養液供給と培養液の引き抜きの開始時期は必ずしも同じである必要はない。また、原料培養液の供給と培養液の引き抜きは連続的であってもよいし、間欠的であってもよい。
培養液には菌体増殖に必要な栄養素を添加し、菌体増殖が連続的に行われるようにすればよい。培養液中の微生物または培養細胞の濃度は、培養液の環境が微生物または培養細胞の増殖にとって不適切となって死滅する比率が高くならない範囲で、高い状態で維持することが、効率よい生産性を得る上で好ましい態様である。培養液中の微生物または培養細胞の濃度は、一例として、SL乳酸菌を用いたD−乳酸発酵では、乾燥重量として、微生物濃度を5g/L以上に維持することにより良好な生産効率が得られる。
連続発酵による化学品の製造において、原料に糖類を使用する場合は、培養液中の糖類濃度は5g/L以下に保持されることが好ましい。培養液中の糖類濃度を5g/L以下に保持することが好ましい理由は、培養液の引き抜きによる糖類の流失を最小限にするためである。
微生物および培養細胞の培養は、通常、pH3以上8以下、温度20℃以上60℃以下の範囲で行われる。培養液のpHは、無機の酸あるいは有機の酸、アルカリ性物質、さらには尿素、炭酸カルシウムおよびアンモニアガスなどによって、通常、pH3以上8以下のあらかじめ定められた値に調節する。酸素の供給速度を上げる必要があれば、空気に酸素を加えて酸素濃度を21%以上に保つ、培養液を加圧する、攪拌速度を上げる、あるいは通気量を上げるなどの手段を用いることができる。
連続発酵の運転においては、微生物発酵槽の微生物濃度をモニタリングすることが望ましい。微生物濃度の測定はサンプルを採取し、測定することでも可能だが、微生物発酵槽に、MLSS測定器など、微生物濃度センサーを設置し、微生物濃度の変化状況を連続的にモニタリングすることが望ましい。
連続発酵による化学品の製造では、必要に応じて、発酵槽内から培養液、微生物または培養細胞を引き抜くことができる。例えば、発酵槽内の微生物または培養細胞濃度が高くなりすぎると、分離膜の閉塞が発生しやすくなることから、引き抜くことで、閉塞から回避することができる。また、発酵槽内の微生物または培養細胞濃度によって化学品の生産性能が変化することがあるが、生産性能を指標として微生物または培養細胞を引き抜くことで、生産性能を維持させることも可能である。
連続発酵による化学品の製造では、発酵生産能力のあるフレッシュな菌体を増殖させつつ行う連続培養操作は、菌体を増殖させつつ生産物を生成する連続培養法であれば、発酵槽の数は問わない。連続発酵による化学品の製造では、連続培養操作は、通常、培養管理上単一の発酵槽で行うことが好ましい。発酵槽の容量が小さい等の理由から、複数の発酵槽を用いることも可能である。この場合、配管によって並列または直列に接続された複数の発酵槽を用いて連続培養を行っても、発酵生産物の高生産性は得られる。
本実施の形態2によれば、分離膜モジュール2に水を供給しながら、蒸気滅菌を行うことにより、分離膜モジュール2の分離膜の乾燥を防止することができ、膜分離型連続発酵装置においても確実な滅菌処理が可能となる。さらに、安定的に化学品の製造を行うことができる。
以下、本発明の効果をさらに詳細に、実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(参考例1)中空糸膜の作製
質量平均分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーとγ−ブチロラクトンとを、それぞれ38質量%と62質量%の割合で170℃の温度で溶解した。この高分子溶液をγ−ブチロラクトンを中空部形成液体として随伴させながら口金から吐出し、温度20℃のγ−ブチロラクトン80質量%水溶液からなる冷却浴中で固化して球状構造からなる中空糸膜を作製した。次いで、質量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを14質量%、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社製、CAP482−0.5)を1質量%、N−メチル−2−ピロリドンを77重量%、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン(三洋化成株式会社、商品名イオネット(登録商標)T−20C)を5質量%、水を3質量%の割合で95℃の温度で混合溶解して高分子溶液を調製した。この製膜原液を、球状構造からなる中空糸膜の表面に均一に塗布し、すぐに水浴中で凝固させて球状構造層の上に三次元編目構造を形成させた中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜の被処理水側表面の平均細孔径は、0.04μmであった。次に、上記の分離膜である中空糸多孔性膜について純水透水量を評価したところ、5.5×10-9m3/m2/s/Paであった。透水量の測定は、逆浸透膜による25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで行った。
質量平均分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーとγ−ブチロラクトンとを、それぞれ38質量%と62質量%の割合で170℃の温度で溶解した。この高分子溶液をγ−ブチロラクトンを中空部形成液体として随伴させながら口金から吐出し、温度20℃のγ−ブチロラクトン80質量%水溶液からなる冷却浴中で固化して球状構造からなる中空糸膜を作製した。次いで、質量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを14質量%、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社製、CAP482−0.5)を1質量%、N−メチル−2−ピロリドンを77重量%、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン(三洋化成株式会社、商品名イオネット(登録商標)T−20C)を5質量%、水を3質量%の割合で95℃の温度で混合溶解して高分子溶液を調製した。この製膜原液を、球状構造からなる中空糸膜の表面に均一に塗布し、すぐに水浴中で凝固させて球状構造層の上に三次元編目構造を形成させた中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜の被処理水側表面の平均細孔径は、0.04μmであった。次に、上記の分離膜である中空糸多孔性膜について純水透水量を評価したところ、5.5×10-9m3/m2/s/Paであった。透水量の測定は、逆浸透膜による25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで行った。
(参考例2)
分離膜モジュールケースにはポリスルホン樹脂製筒状容器(内径35mm)である成型品を用いて中空糸膜モジュールを作製した。分離膜として参考例1で作製した中空糸膜を用い、121℃の飽和水蒸気と1時間接触させた。飽和水蒸気との接触には、TOMY社製のオートクレーブ「LSX−700」を使用した。中空糸膜を前記モジュールケース内に挿入し、ウレタン樹脂(サンユレック社製、SA−7068A/SA−7068B、2剤を質量比が64:100となるように混合)を用いてモジュールケースと中空糸膜の両端を接着した。モジュール上端は中空糸膜を開口させるために、余分な接着部は切り落として用いた。中空糸膜のモジュール充填率は45%とした。発酵培養液はモジュール横下部ノズルから導入し、モジュール横上部ノズルから発酵槽1に戻す構造とした。
分離膜モジュールケースにはポリスルホン樹脂製筒状容器(内径35mm)である成型品を用いて中空糸膜モジュールを作製した。分離膜として参考例1で作製した中空糸膜を用い、121℃の飽和水蒸気と1時間接触させた。飽和水蒸気との接触には、TOMY社製のオートクレーブ「LSX−700」を使用した。中空糸膜を前記モジュールケース内に挿入し、ウレタン樹脂(サンユレック社製、SA−7068A/SA−7068B、2剤を質量比が64:100となるように混合)を用いてモジュールケースと中空糸膜の両端を接着した。モジュール上端は中空糸膜を開口させるために、余分な接着部は切り落として用いた。中空糸膜のモジュール充填率は45%とした。発酵培養液はモジュール横下部ノズルから導入し、モジュール横上部ノズルから発酵槽1に戻す構造とした。
モジュールケースの1次側にエタノール80%水溶液を供給し、一部を2次側から濾過して、分離膜モジュール2内をエタノール80%水溶液で満たし、1時間静置した。その後、エタノールを排出し、蒸留水で分離膜モジュール2内を洗浄、置換した。分離膜モジュール2内に水を満たして保管した。
(参考例3)
参考例2の通り作製した分離膜モジュール2の1次側に、100kPaの空気を供給し、分離膜モジュール2の1次側の水を2次側に濾過した後、分離膜モジュール2の1次側を封じ込めして、100kPaの空気で加圧状態とした。ここで、分離膜モジュール2の1次側供給ラインに圧力計を設置し、分離膜モジュール2の1次側の圧力を確認できるようにした。また分離膜モジュール2の2次側は大気開放して、1次側からリークがあれば、放圧できるようにした。10分後、分離膜モジュール2の1次側の圧力の低下が3kPa以内、また分離膜2次側からの気泡の発生が無ければ、リークは無いと判断した。
参考例2の通り作製した分離膜モジュール2の1次側に、100kPaの空気を供給し、分離膜モジュール2の1次側の水を2次側に濾過した後、分離膜モジュール2の1次側を封じ込めして、100kPaの空気で加圧状態とした。ここで、分離膜モジュール2の1次側供給ラインに圧力計を設置し、分離膜モジュール2の1次側の圧力を確認できるようにした。また分離膜モジュール2の2次側は大気開放して、1次側からリークがあれば、放圧できるようにした。10分後、分離膜モジュール2の1次側の圧力の低下が3kPa以内、また分離膜2次側からの気泡の発生が無ければ、リークは無いと判断した。
(実施例1)
参考例2の通り作製した分離膜膜モジュール2を図3に示す膜分離型連続発酵装置200の発酵液循環ラインに設置し、滅菌を行った。発酵槽1に蒸気供給部20から、蒸気を供給し、発酵槽1が121℃以上になった後、循環ライン、循環ポンプ8、分離膜モジュール2などに蒸気を供給した。分離膜モジュール2が121℃になった後、20分間、蒸気を供給した。この間、水供給装置28から、分離膜モジュール2の2次側へ蒸留水を、温度40℃、流束0.05m/dで供給し続けた。その後、蒸気供給を停止し、発酵槽1などを放冷した。
参考例2の通り作製した分離膜膜モジュール2を図3に示す膜分離型連続発酵装置200の発酵液循環ラインに設置し、滅菌を行った。発酵槽1に蒸気供給部20から、蒸気を供給し、発酵槽1が121℃以上になった後、循環ライン、循環ポンプ8、分離膜モジュール2などに蒸気を供給した。分離膜モジュール2が121℃になった後、20分間、蒸気を供給した。この間、水供給装置28から、分離膜モジュール2の2次側へ蒸留水を、温度40℃、流束0.05m/dで供給し続けた。その後、蒸気供給を停止し、発酵槽1などを放冷した。
この分離膜モジュール2の蒸気滅菌を繰り返した。中空糸膜モジュールの純水透水量は、5回目の蒸気滅菌後、中空糸膜作成時の99%であった。
実施例1の蒸気滅菌後の分離膜モジュール2を用いて、乳酸の連続発酵を行った。運転条件は、特に断らない限り、以下のとおりである。
発酵槽容量:20(L)
発酵槽有効容積:15(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン中空糸膜250本(有効長20cm、総有効膜面積 0.4(m2))
温度調整:37(℃)
発酵槽通気量:窒素ガス2(L/min)
発酵槽攪拌速度:600(rpm)
pH調整:3N Ca(OH)2によりpH6に調整
乳酸発酵培地供給:発酵槽液量が約15Lで一定になる様に制御して添加
発酵液循環装置による循環液量:10(L/min)
膜濾過流量制御:吸引ポンプによる流量制御
間欠的な濾過処理:濾過処理(9分間)〜濾過停止 (1分間)の周期運転
膜濾過流束:0.01(m/day)以上0.3(m/day)以下の範囲で膜間差圧が20kPa以下となる様に可変。膜間差圧が範囲を超えて上昇し続けた場合は、連続発酵を終了した。
培地は121℃、20分での飽和水蒸気下の蒸気滅菌をして用いた。微生物としてSporolactobacillus laevolacticus JCM2513(SL株)を用い、培地として表1に示す組成の乳酸発酵培地を用い、生産物である乳酸の濃度の評価には、下記に示したHPLCを用いて以下の条件下で行った。
発酵槽容量:20(L)
発酵槽有効容積:15(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン中空糸膜250本(有効長20cm、総有効膜面積 0.4(m2))
温度調整:37(℃)
発酵槽通気量:窒素ガス2(L/min)
発酵槽攪拌速度:600(rpm)
pH調整:3N Ca(OH)2によりpH6に調整
乳酸発酵培地供給:発酵槽液量が約15Lで一定になる様に制御して添加
発酵液循環装置による循環液量:10(L/min)
膜濾過流量制御:吸引ポンプによる流量制御
間欠的な濾過処理:濾過処理(9分間)〜濾過停止 (1分間)の周期運転
膜濾過流束:0.01(m/day)以上0.3(m/day)以下の範囲で膜間差圧が20kPa以下となる様に可変。膜間差圧が範囲を超えて上昇し続けた場合は、連続発酵を終了した。
培地は121℃、20分での飽和水蒸気下の蒸気滅菌をして用いた。微生物としてSporolactobacillus laevolacticus JCM2513(SL株)を用い、培地として表1に示す組成の乳酸発酵培地を用い、生産物である乳酸の濃度の評価には、下記に示したHPLCを用いて以下の条件下で行った。
カラム:Shim−Pack SPR−H(島津社製)
移動相:5 mM p−トルエンスルホン酸(0.8 mL/min)
反応相:5 mM p−トルエンスルホン酸、20 mM ビストリス、0.1 mM EDTA・2Na(0.8 mL/min)
検出方法:電気伝導度
カラム温度:45℃
なお、乳酸の光学純度の分析は、以下の条件下で行った。
カラム:TSK−gel Enantio L1(東ソー社製)
移動相 :1 mM 硫酸銅水溶液
流速:1.0 mL/分
検出方法 :UV 254 nm
温度 :30℃
L−乳酸の光学純度は、次式(1)で計算される。
光学純度(%)=100×(L−D)/(D+L) ・・・(1)
また、D−乳酸の光学純度は、次式(2)で計算される。
光学純度(%)=100×(D−L)/(D+L) ・・・(2)
ここで、LはL−乳酸の濃度を表し、DはD−乳酸の濃度を表す。
移動相:5 mM p−トルエンスルホン酸(0.8 mL/min)
反応相:5 mM p−トルエンスルホン酸、20 mM ビストリス、0.1 mM EDTA・2Na(0.8 mL/min)
検出方法:電気伝導度
カラム温度:45℃
なお、乳酸の光学純度の分析は、以下の条件下で行った。
カラム:TSK−gel Enantio L1(東ソー社製)
移動相 :1 mM 硫酸銅水溶液
流速:1.0 mL/分
検出方法 :UV 254 nm
温度 :30℃
L−乳酸の光学純度は、次式(1)で計算される。
光学純度(%)=100×(L−D)/(D+L) ・・・(1)
また、D−乳酸の光学純度は、次式(2)で計算される。
光学純度(%)=100×(D−L)/(D+L) ・・・(2)
ここで、LはL−乳酸の濃度を表し、DはD−乳酸の濃度を表す。
培養は、まずSL株を試験管で5mLの乳酸発酵培地で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を新鮮な乳酸発酵培地200mLに植菌し、1000mL容坂口フラスコで24時間、30℃で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図3に示す膜分離型連続発酵装置200の15Lの発酵槽1に培地を入れて植菌し、発酵槽1を付属の攪拌装置4によって攪拌し、発酵槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、循環ポンプ8を稼働させることなく、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、循環ポンプ8を稼働させ、前培養時の運転条件に加え、乳酸発酵培地の連続供給を行い、連続発酵装置の発酵液量が15Lとなるよう膜透過水量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるD−乳酸の製造を行った。連続発酵試験を行うときの膜透過水量の制御は、濾過ポンプ11により濾過量が発酵培地供給流量と同一となるように制御した。適宜、膜透過発酵液中の生産されたD−乳酸濃度および残存グルコース濃度を測定した。
間欠的な濾過処理で、濾過処理(9分間)〜濾過停止処理(1分間)の周期運転を行った。図3に示す膜分離型連続発酵装置200において化学品を製造したことにより、連続発酵を420時間行うことができた。
(比較例1)
実施例1と同様に分離膜モジュール2を図3の膜分離型発酵装置200に設置し、蒸気供給部20から蒸気を供給し、分離膜モジュール2を滅菌した。分離膜モジュール2が121℃になった後、20分間、蒸気を供給し、その後、蒸気供給を停止し、発酵槽1などを放冷した。
この分離膜モジュール2の蒸気による滅菌を繰り返した。中空糸膜モジュールの純水透水量は、5回目の蒸気滅菌後、中空糸膜作成時の90%であった。
実施例1と同様に分離膜モジュール2を図3の膜分離型発酵装置200に設置し、蒸気供給部20から蒸気を供給し、分離膜モジュール2を滅菌した。分離膜モジュール2が121℃になった後、20分間、蒸気を供給し、その後、蒸気供給を停止し、発酵槽1などを放冷した。
この分離膜モジュール2の蒸気による滅菌を繰り返した。中空糸膜モジュールの純水透水量は、5回目の蒸気滅菌後、中空糸膜作成時の90%であった。
本発明は、複雑な形状の分離膜を備える分離膜モジュールの滅菌に好適であり、特に、該分離膜モジュールを使用する化学品の製造装置に有用である。
1:発酵槽
2:分離膜モジュール
3:温度制御装置
4:撹拌装置
5:pHセンサー・制御装置
6:レベルセンサー・制御装置
7:差圧センサー・制御装置
8:循環ポンプ
9:原料供給ポンプ
10:中和剤供給ポンプ
11:濾過ポンプ
12:洗浄液供給ポンプ
13:濾過バルブ
14:洗浄液バルブ
15:気体供給装置
16:水供給ポンプ
17:循環バルブ
18:分離膜洗浄装置
19:蒸気供給バルブ
20:蒸気供給部
21:蒸気供給部
22:蒸気供給バルブ
23:蒸気供給ライン
24:ドレン排出ライン
25:ドレン排出バルブ
26:水供給ポンプ
27:水供給バルブ
28:水供給装置
31:蒸気供給部
32:蒸気供給ライン
33:蒸気供給バルブ
34、34A:蒸気供給装置
35、39:ドレン排出ライン
36:ドレン排出バルブ
37:接続ライン
38:接続バルブ
41、41a:液体供給部
42、42a:液体供給ライン
43、43a:液体供給バルブ
44、44A:液体供給装置
51:原液供給部
52:原液供給ライン
53:原液供給バルブ
54:原液排出ライン
55:原液排出バルブ
100,100A:蒸気滅菌装置
200、200A、200C:膜分離型連続発酵装置
2:分離膜モジュール
3:温度制御装置
4:撹拌装置
5:pHセンサー・制御装置
6:レベルセンサー・制御装置
7:差圧センサー・制御装置
8:循環ポンプ
9:原料供給ポンプ
10:中和剤供給ポンプ
11:濾過ポンプ
12:洗浄液供給ポンプ
13:濾過バルブ
14:洗浄液バルブ
15:気体供給装置
16:水供給ポンプ
17:循環バルブ
18:分離膜洗浄装置
19:蒸気供給バルブ
20:蒸気供給部
21:蒸気供給部
22:蒸気供給バルブ
23:蒸気供給ライン
24:ドレン排出ライン
25:ドレン排出バルブ
26:水供給ポンプ
27:水供給バルブ
28:水供給装置
31:蒸気供給部
32:蒸気供給ライン
33:蒸気供給バルブ
34、34A:蒸気供給装置
35、39:ドレン排出ライン
36:ドレン排出バルブ
37:接続ライン
38:接続バルブ
41、41a:液体供給部
42、42a:液体供給ライン
43、43a:液体供給バルブ
44、44A:液体供給装置
51:原液供給部
52:原液供給ライン
53:原液供給バルブ
54:原液排出ライン
55:原液排出バルブ
100,100A:蒸気滅菌装置
200、200A、200C:膜分離型連続発酵装置
Claims (6)
- 分離膜を有する分離膜モジュールに、前記分離膜の2次側から1次側へ大気圧下での沸点が80℃以上の液体を通液しながら、前記分離膜の1次側へ水蒸気を供給すること、および前記分離膜の1次側から2次側へ大気圧下での沸点が80℃以上の液体を通液しながら、前記分離膜の2次側へ水蒸気を供給することの少なくとも一方によって、前記分離膜モジュールを蒸気滅菌することを特徴とする分離膜モジュールの滅菌方法。
- 前記分離膜に供給する液体は水であることを特徴とする請求項1に記載の分離膜モジュールの蒸気滅菌方法。
- 分離膜を有する分離膜モジュールに、前記分離膜の2次側から1次側へ大気圧下での沸点が80℃以上の液体を通液しながら、前記分離膜の1次側へ水蒸気を供給すること、および前記分離膜の1次側から2次側へ大気圧下での沸点が80℃以上の液体を通液しながら、前記分離膜の2次側へ水蒸気を供給することの少なくとも一方によって、前記分離膜モジュールを蒸気滅菌する滅菌工程と、
発酵原料を微生物の発酵培養により化学品を含有する発酵液へと変換する発酵工程と、
該発酵液から前記分離膜モジュールにより濾過液として化学品を回収する膜分離工程と、
を含むことを特徴とする化学品の製造方法。 - 前記分離膜に供給する液体は水であることを特徴とする請求項3に記載の化学品の製造方法。
- 発酵原料を微生物による発酵培養することにより、該発酵原料を、化学品を含有する発酵液に変換する発酵槽と、
前記発酵液から化学品を分離する分離膜モジュールと、
前記発酵槽から前記分離膜モジュールに発酵液を送液する発酵液循環手段と、
前記分離膜モジュールの分離膜の2次側から1次側に大気圧下での沸点が80℃以上の液体を供給する液体供給手段、および前記分離膜モジュールの分離膜の1次側に水蒸気を供給する蒸気供給手段、並びに前記分離膜モジュールの分離膜の1次側から2次側に大気圧下での沸点が80℃以上の液体を供給する液体供給手段、および前記分離膜モジュールの分離膜の2次側に水蒸気を供給する蒸気供給手段の少なくとも一方と、
を備えることを特徴とする膜分離型連続発酵装置。 - 前記液体供給手段は、前記分離膜に水を供給することを特徴とする請求項5に記載の膜分離型連続発酵装置。
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JP2012099044A JP2013226486A (ja) | 2012-04-24 | 2012-04-24 | 分離膜モジュールの滅菌方法、化学品の製造方法および膜分離型連続発酵装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2018147289A1 (ja) * | 2017-02-07 | 2018-08-16 | 東レ株式会社 | 連続発酵によるアルコールの製造方法およびそれに用いる連続発酵装置 |
JP7022247B1 (ja) | 2021-02-01 | 2022-02-17 | 岩井ファルマテック株式会社 | 精製水供給システム |
JP2022516516A (ja) * | 2018-12-31 | 2022-02-28 | レプリゲン・コーポレーション | 疎水性中空繊維による哺乳類細胞培養物の灌流および浄化用フィルター |
WO2024161931A1 (ja) * | 2023-01-30 | 2024-08-08 | 日本碍子株式会社 | 分離装置の停止方法 |
WO2024162397A1 (ja) * | 2023-02-03 | 2024-08-08 | 日本碍子株式会社 | 分離装置の過渡運転方法 |
-
2012
- 2012-04-24 JP JP2012099044A patent/JP2013226486A/ja active Pending
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---|---|---|---|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
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