JP5862337B2 - 電子鍵盤装置 - Google Patents

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Description

本発明は、鍵の回動動作に対して慣性を付与するハンマ体を有した電子鍵盤装置に関する。
従来、鍵の回動動作に対して慣性を付与するハンマ体を有する電子鍵盤装置においては通常、ハンマ体の自重による復帰力が押鍵時の静荷重に反力として関与する。下記特許文献1の鍵盤装置では、ハンマ体に形成した錘を選択的に切除することで質量分布を異ならせ、慣性力を調節することができる。ところが慣性力の調節に伴い、ハンマ体が鍵の離鍵方向に付与する復帰力も変化するため、静荷重までが変化してしまう。
ここで、静荷重を調節する技術も知られている。例えば下記特許文献2に示される鍵盤装置は、ハンマ体を有するものではないが、鍵の後端に階段状に引掛け部を設け、シャーシとの間にバネを張架して押鍵反力を得る。バネを張架する引掛け部を選択することによってバネの張力を調節し、静荷重を調節することができる。
実公平5−8635号公報 実開昭52−52930号公報
鍵盤装置において静荷重の設定は重要で、製品完成の段階で調節が容易であることが望ましい。しかし、上記特許文献1の鍵盤装置では、慣性力に影響を与えずに静荷重を調節することは困難であった。一方、上記特許文献2の鍵盤装置では、静荷重を調節する際、バネを架け替えなければならず、調節作業が容易でない。
ところで、適正な静荷重は、鍵盤楽器の種類(例えば、アコースティックピアノとオルガン)によっても異なる。同じ鍵盤装置で異なる楽器種類のタッチを実現することについては、深い取り組みがなされていない。
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ハンマ体を有した鍵盤装置において押鍵時の静荷重を容易に調節することができる電子鍵盤装置を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明の請求項1の電子鍵盤装置は、各々の鍵支点(Pk)を中心に押離鍵方向に回動する鍵(10)と、前記鍵に対応して設けられ、各々対応する鍵に連動してハンマ支点(Ph)を中心に回動して対応する鍵の回動動作に対して慣性を付与するハンマ体(HM)と、少なくとも前記ハンマ体の自重による復帰力を含む付勢力によって前記鍵を離鍵方向に付勢する押鍵反力発生手段(HM、42、45)と、前記鍵に対応し、且つ位置ないし姿勢が可変に設けられ、前記鍵における前記鍵支点よりも前側の部分を押鍵方向に付勢して押鍵力に対し助成力を与えることが可能な弾性部材(23)と、前記弾性部材の位置ないし姿勢を変えることで前記弾性部材による助成力を調節する調節手段(20、30)とを有することを特徴とする。
好ましくは、前記ハンマ体を、少なくとも押鍵開始時において対応する鍵によって駆動されないような所定の回動位置に維持する維持手段(35、36B)を有する(請求項2)。
好ましくは、共通の操作により、前記ハンマ体を前記所定の回動位置まで回動させると同時に前記弾性部材の位置ないし姿勢を変化させて前記鍵への助成力を変化させるための操作手段(34)を有する(請求項3)。
好ましくは、前記操作手段の前記共通の操作により、複数の鍵に対応するハンマ体が一斉に回動して回動位置が変化すると共に、前記複数の鍵に対応する弾性部材の位置ないし姿勢が一斉に変化する(請求項4)。
好ましくは、押鍵時の静荷重が、前記操作手段の前記共通の操作の前後で略一致する(請求項5)。
好ましくは、前記操作手段の前記共通の操作の後においては、前記弾性部材は、押離鍵の全行程において前記鍵と当接しない位置ないし姿勢に変位して前記鍵を全く付勢しない状態となる(請求項6)。
好ましくは、前記操作手段の前記共通の操作によって一体に回動する第1のカム(31)と第2のカム(32)とを有し、前記弾性部材は回動体(20)と一体に回動するように前記回動体に固定され、前記共通の操作によって、前記第1のカムが前記ハンマ体を押鍵方向に対応する方向に回動させて前記所定の回動位置まで回動させると共に、前記第2のカムが前記回動体を回動させて前記弾性部材の位置ないし姿勢を変化させる(請求項7)。
なお、上記括弧内の符号は例示である。
本発明の請求項1によれば、ハンマ体を有した鍵盤装置において押鍵時の静荷重を容易に調節することができる。
請求項2によれば、ハンマ体による慣性力が無い状態に切り替えることができる。
請求項3によれば、簡単な操作でハンマ体の慣性有りの状態と慣性無しの状態とに状態を切り替えると共に、各状態に応じた適正な静荷重を自動的に設定することが可能となる。
請求項4によれば、簡単な操作で複数の鍵の静荷重を一斉に調節することができる。
請求項5によれば、慣性有りと無しの各状態の静荷重を略一致させることができる。
請求項6によれば、例えばアコースティックピアノタッチとオルガンタッチとの切り替えが簡単にできる。
請求項7によれば、簡単な操作でハンマ体の慣性有りの状態と慣性無しの状態とに状態を切り替えると共に、各状態に応じた適正な静荷重を自動的に設定することが可能となる。
本発明の一実施の形態に係る電子鍵盤装置の1つの鍵に着目した要部の断面図であり、ピアノタッチ状態(図(a))、オルガンタッチ状態(図(b))を示す図である。 静荷重調節手段の平面図(図(a))、回転操作部の側面図(図(b))である。 変形例のカム機構部の平面図(図(a))、回転操作部の側面図(図(b))、摩擦部材の変形例(図(c)、(d))である。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1(a)、(b)は、本発明の一実施の形態に係る電子鍵盤装置の1つの鍵に着目した要部の断面図である。この電子鍵盤装置は電子鍵盤楽器に適用される。図1においては、シャーシ等の図示は省略され、鍵10として白鍵とそれに対応するハンマ体HMとを示している。本発明に関し、白鍵と黒鍵の構成、及びそれらに対応する構成要素の構成は基本的に同様である。
鍵10は、後端部10aの鍵支点Pkを中心に押離鍵方向に回動自在に、不図示のフレームに配設される。鍵10は、その前半部の上下方向中間部10bが木質部であり、その他の部分は樹脂で構成される鍵構造体である。鍵10には駆動部11が突設されている。ハンマ体HMは対応する鍵10の下方に配置され、ハンマ支点Phを中心に回動自在に配設される。ハンマ体HMは、質量が集中している棒状部15を有し、その自重により図1の反時計方向に常に付勢されている。鍵盤装置本体(シャーシや棚板等)には、ハンマ上限ストッパ13、ハンマ下限ストッパ14が設けられる。
また、各鍵10の前部の下方にアクチュエータ40が配設される。アクチュエータ40は、ソレノイドコイル45に電流を流すことにより、プランジャ41が上方に突出するよう動作し、対応する鍵10の前部に力を与える。アクチュエータ40には、ソレノイドスプリング42が設けられており、電磁的な駆動力が発生していないときでも、鍵10の前部は、ソレノイドスプリング42の弾性による弱い力によってプランジャ41を介して上方(離鍵方向)に常時付勢されている。
後ろ側のアクチュエータ40のソレノイドコイル45、プランジャ41は、図示しない他の鍵に対応するものである。アクチュエータ40は、押鍵時のタッチ感触がプログラムされた感触の通りになるよう制御され、変更設定によって適宜異なるタッチ感触にも変更制御される。
本実施の形態では、カム機構部30の操作により、アコースティックグランドピアノのようなタッチ(以下、ピアノタッチ)とオルガンのようなタッチ(以下、オルガンタッチ)とを切り替えることを実現している。さらにソレノイドコイル45、プランジャ41によって、ピアノタッチとオルガンタッチの中間のタッチも実現が可能である。図1(a)、(b)では、いずれも鍵10は非押鍵状態であるが、カム機構部30による状態は、ピアノタッチ状態、オルガンタッチ状態をそれぞれ示している。
ここで、タッチの重さは、押鍵したときの慣性力による影響を含めた動荷重と、非常にゆっくりと押鍵したときの静荷重とにより把握される。静荷重は、非押鍵状態において押鍵位置P1を押鍵して鍵10を押鍵方向に変位させ始めるのに必要な最低限の押鍵力である。押鍵時の静荷重の適正値は音域によっても異なり、低音側の方が重く設定される。静荷重は概ねピアノで55gf、オルガンで40gf程度とされるが、両者とも50gfでほぼ同じと考えてもよい。
ピアノタッチ状態(図1(a))において、非押鍵状態では、ハンマ体HMはその自重によりハンマ下限ストッパ14に棒状部15が当接して回動初期位置が規制されている。それと同時に、ハンマ体HMの被駆動部16が鍵10の駆動部11と当接し、鍵10の回動初期位置(レスト位置)も規制される。なお、鍵10と係合して鍵10の離鍵方向へのさらなる回動を規制するためのストッパを設けてもよい。
押鍵されると、ハンマ体HMの被駆動部16を鍵10の駆動部11が駆動する。すると、ハンマ体HMが押鍵方向に対応する回動方向(図1の時計方向)に連動して回動し、ハンマ上限ストッパ13に棒状部15が当接する。これにより、ハンマ体HM及び鍵10の回動終了位置(エンド位置)が規制される。
また、本鍵盤装置には、回動体であるリンク構体20が設けられる。リンク構体20及びカム機構部30が、押鍵時の静荷重を調節する静荷重調節手段を構成する。以下、図1に図2も併せて静荷重調節手段を説明する。
図2(a)、(b)はそれぞれ、静荷重調節手段の平面図、回転操作部の側面図である。
静荷重調節手段は、複数の鍵10に共通に設けられ、本実施の形態では全ての鍵10に共通に本鍵盤装置に1つ設けられる。リンク構体20は基部21を有し、基部21が、鍵盤装置本体に対して回動支点Paを中心に図1の時計及び反時計方向に回動自在に配設されている。
リンク構体20は、リンクアーム22、カウンタースプリング23、バックプレート24を有する。カム機構部30は、第1のカム31、第2のカム32、回動軸部33、回転操作部34を有する。カム機構部30の各構成要素とリンクアーム22は1つしか存在しないが、カウンタースプリング23及びバックプレート24は各鍵10ごとに設けられる。
リンク構体20において、基部21は、鍵10の後方に配置される。リンクアーム22は鍵盤装置本体の側部近傍において基部21に固定され、側面視クランク型に形成され、下部が鍵10の後端部10aの下方に延びている。カウンタースプリング23及びバックプレート24は、それぞれの基端部が基部21に固定されて前方(図1の右方)に延び、片持ち状態で基部21に支持され、基部21の回転と共に位置ないし姿勢が可変である。カウンタースプリング23及びバックプレート24の各先端は鍵10の後端部10aの上方に位置する。
鍵10の後端部10aの上部には摩擦部材12が固定されている(図1)。摩擦部材12は、滑りにくいものであっても滑りやすいものであってもよい。カウンタースプリング23の先端は下方に凸となるように湾曲形成されており、その下端が摩擦部材12を摺接しつつ押圧することができる押圧部23aとなっている。カウンタースプリング23は、その弾性によって押圧部23aが摩擦部材12を押圧する状態においては、対応する鍵10に押鍵方向への力を助成する助成力を与える。
カウンタースプリング23は、鍵10と係合していない自由状態においては、その弾性によってバックプレート24に上方から当接するような位置の設定となっている(図1(b)参照)。
カム機構部30において、回動軸部33が、鍵盤装置本体に対して回動自在に軸支される。第1のカム31及び第2のカム32は回動軸部33に固定され、鍵盤装置本体に対して回動軸部33と共に一体に回転するように構成される。第1のカム31は、側面視で卵型に形成され(図1)、尖った部分が、対応するハンマ体HMの棒状部15を駆動する駆動部31aとなる。
第2のカム32は、鍵並び方向においてリンクアーム22と同じ位置に設けられる(図2(a))。第2のカム32は、リンクアーム22の下部の被当接部22aを摺動駆動するカム面32aを有する。リンク構体20は不図示の付勢手段により図1の反時計方向に常に付勢されている。カム面32aの後端側(図1の左側)の領域が被当接部22aと当接してリンクアーム22の回動位置を規制する。回動軸部33が、図1(a)から図1(b)に示す状態にまで回転するにつれて、カム面32aの後端位置が徐々に後方に変位するように形成されている。なお、第2のカム32及びリンクアーム22はそれぞれ、鍵盤装置本体の左右両側に一対設けてもよい。
図2(a)に示すように、回動軸部33は回転操作部34に連結固定され、回転操作部34の回転操作によって回転する。回転操作部34は、固定部17の外側に配置され、手動操作が可能な位置に配置される。固定部17は、鍵盤装置本体に対して固定的な部分であって、例えば、シャーシ側部や側板等である。図2(b)に示すように、回転操作部34には2つの締結穴36A、36Bが形成されている。締結穴36A、36Bのいずれかを介してネジまたはピン等の締結具35を、固定部17に形成されているネジ穴またはピン穴でなる締結部に螺合または嵌合により係合することで、その位置にて回転操作部34の回転方向の位置が規定・維持される。これにより、回動軸部33、ひいてはカム31、32の回転方向の位置も規定・維持される。
すなわち、締結穴36A、36Bによって、カム機構部30は2つの安定位置のいずれかに維持される。締結穴36Aで螺合される位置が図1(a)に示すピアノタッチ状態に対応し、締結穴36Bで螺合される位置が図1(b)に示すオルガンタッチ状態に対応する。
ところで、アクチュエータ40は、不図示のCPUの制御に基づきプランジャ41が推力を発揮することで鍵10に力を付与して力覚を与える。力覚を与えるための力覚制御データは、不図示の記憶部に力覚付与テーブルとして予め記憶されている。ただし、力覚を与えるように制御することは必須でない。本実施の形態では、力覚制御を行わない場合の静荷重を考察する。プランジャ41は押離鍵の全行程において鍵10と当接しているものとし、アクチュエータ40のうち押鍵時の静荷重に関与するのはソレノイドスプリング42による付勢力だけであるとする。
かかる構成において、締結穴36Aを介して締結具35を固定部17の締結部に係合すると、図1(a)に示すピアノタッチ状態となる。すなわち、第2のカム32のカム面32aは後方に大きくせり出す。リンク構体20は図1(a)の反時計方向に常に付勢されているため、リンクアーム22の被当接部22aがカム面32aに当接した位置で、リンク構体20の反時計方向の回転位置が規制される。この状態では、カウンタースプリング23の押圧部23aが摩擦部材12を弾性的に押圧し、その押圧する状態は押離鍵の全行程において継続される。
一方、第1のカム31の駆動部31aは後方を向いており、ハンマ体HMの棒状部15に当接していない。従って、ハンマ体HMは、ハンマ下限ストッパ14に棒状部15が当接した回動初期位置で静止している。この状態で押鍵されれば、鍵10の回動動作に対してハンマ体HMによる慣性力が付与される。
このような図1(a)に示すピアノタッチ状態において、押鍵時の静荷重は、鍵支点Pk周りの回転モーメントのバランスによって決定される。静荷重として次のものが関与する。
まず、押鍵時に図1の反時計方向(離鍵方向)の回転モーメントを生じさせるものとして、ハンマ体HMの被駆動部16が鍵10の駆動部11を上方に付勢する力と、アクチュエータ40のソレノイドスプリング42が鍵10を上方に付勢する力とがある。これら2つは、押鍵に対して反力を作用させるものであり、ハンマ体HM及びソレノイドスプリング42が「押鍵反力発生手段」となる。
一方、押鍵時に図1の時計方向(押鍵方向)の回転モーメントを生じさせるものとして、カウンタースプリング23の押圧部23aが摩擦部材12を押圧する助成力と、鍵10自体の自重と、押鍵位置P1での押鍵力とがある。
そして、これらすべての回転モーメントが作用する環境で、押鍵開始時に鍵10が押鍵方向に動き始めるのに必要な押鍵位置P1での押鍵力が静荷重となる。図1(a)に示すピアノタッチ状態において、静荷重がアコースティックグランドピアノの適正な静荷重(例えば50gf)と同じとなるように、カウンタースプリング23の押圧部23aによる押圧力が設定されている。
次に、締結穴36Aから締結具35を一旦抜き、回転操作部34を図2(b)の時計方向に回転させ、締結穴36Bを介して締結具35を固定部17の締結部に係合すると、図1(b)に示すオルガンタッチ状態となる。すなわち、第2のカム32のカム面32aの後方へのせり出しが小さくなり、リンク構体20は反時計方向に回動して図1(b)に示す位置となる。
この状態では、カウンタースプリング23及びバックプレート24も反時計方向に回動している。従って、カウンタースプリング23はバックプレート24に当接し、押圧部23aが摩擦部材12から上方に離れる。押圧部23aが摩擦部材12と当接しない状態は押離鍵の全行程において維持される。従って、カウンタースプリング23による押鍵方向への助成力は0(鍵10を全く付勢しない状態)となる。
一方、回転操作部34を時計方向に回転させることで、第1のカム31の駆動部31aがハンマ体HMの棒状部15を上方に駆動し、ハンマ体HMは図1(b)に示すような回動終了位置(所定の回動位置)に変位し、そのまま維持される。この状態では、押鍵開始時にはハンマ体HMの被駆動部16が鍵10の駆動部11から離れているため、ハンマ体HMによる復帰力は鍵10に与えられない。この状態で押鍵されても、ハンマ体HMによる慣性力は付与されない。ただし、押し切り操作時の押鍵終了間際には駆動部11は被駆動部16に当接する。
ここで、ピアノタッチ状態からオルガンタッチ状態に遷移したことで、カウンタースプリング23による助成力の減少量とハンマ体HMによる復帰力の減少量とが同じ値となるように設定されている。その結果、オルガンタッチ状態においても、静荷重はピアノタッチ状態の場合と変わらない。その一方、ハンマ体HMによる慣性力は作用しなくなるので、タッチ感触はオルガンらしくなる。
回転操作部34を反時計方向に回転させれば、再びピアノタッチ状態に戻すことができる。このように、回転操作部34の回転操作という簡単な操作により、慣性力があるピアノタッチと慣性力のないオルガンタッチとを、静荷重を変化させることなく切り替えることが可能となる。
ところで、押圧部23aは鍵10の後端部10aの上方に配置されたので、ハンマ体HMを有する鍵盤装置において配置スペースを有効に活用している。また、押圧部23aは摩擦部材12を押圧するので、押鍵行程と離鍵行程とで摩擦力を異ならせることができ、助成力のヒステリシスを生じさせることが容易である。この観点からは、摩擦を発生させる部材は、鍵10側またはカウンタースプリング23側の少なくとも一方に設ければよい。
本実施の形態によれば、簡単な操作で、ハンマ体HMによる慣性有りのピアノタッチ状態と慣性無しのオルガンタッチ状態とに状態を切り替えると共に、各状態において静荷重を略一致させ、適正な静荷重を維持することができる。アコースティックグランドピアノとオルガンとにタッチ感触を切り替えるのに特に好適である。
ところで、本実施の形態では、オルガンタッチ状態においては、押圧部23aが摩擦部材12から完全に離間して助成力が0となるとしたが、これは一例である。例えば、押圧部23aが摩擦部材12を押圧する度合を弱めて、助成力を少し残すようにカウンタースプリング23の位置ないし姿勢(位置及び/または姿勢)の変化を設定してもよい。これはカウンタースプリング23の位置ないし姿勢やバネ定数の選定によって如何ようにも設定可能である。カウンタースプリング23による助成力を可変としたことで、慣性有りの状態と慣性無しの状態の各状態に応じた適正な静荷重を自動的に設定することが可能となる。
本実施の形態では、回転操作部34の回転操作により、全ての鍵10に対応するハンマ体HMが一斉に回動して回動位置が変化すると共に、全ての鍵10に対応するカウンタースプリング23の位置も一斉に移動する構成であった。ハンマ体HMの回動とカウンタースプリング23の位置可変の操作が、共通する1つの操作であるので、簡単な操作で全ての鍵10の静荷重を一斉に調節することができる。ただし、静荷重調節手段を全ての鍵10に1つではなく、複数の鍵10ごとに設けて、それら複数の鍵10の静荷重を一斉に調節できるように構成してもよい。
なお、ハンマ体HMの自重が静荷重に影響しない所定の回動位置が回動終了位置であるとしたが、静荷重の調節を可能にするという観点に限れば、押鍵開始時に駆動されないような回動位置であればよい。
なお、押鍵に対する助成力を与える弾性部材として板状のカウンタースプリング23を例示したが、これに限らない。例えば、つるまきバネやゴムであってもよい。
また、アクチュエータ40を設けることは必須でない。アクチュエータ40を設けない場合は、アクチュエータ40のソレノイドスプリング42を「押鍵反力発生手段」から除外して、静荷重を考察することになる。
なお、カム機構部30を回転操作する操作手段として回転操作部34は例示である。また、ハンマ体HMを、少なくとも押鍵開始時において対応する鍵によって駆動されないような所定の回動位置に維持する維持手段として、締結具35を用いて締結穴36を介して螺合等の締結をする構成も例示である。従って、これらの構成に限定されるものではない。例えば、回転操作部34にギヤを設けると共に、このギヤに噛み合うラックを固定部17に設け、適切な相対位置で両者を噛合させる構成を採用してもよい。そうすれば、締結具35や締結穴36は不要となる。
ところで、本実施の形態では、回転操作部34の共通の回転操作によって、カム機構部30における第1のカム31及び第2のカム32が一体に回転する構成であった。しかしこれに限られず、図3(a)、(b)に変形例を示すように、別個独自に回転する構成としてもよい。
図3(a)、(b)は、変形例のカム機構部30の平面図、回転操作部の側面図である。図3(a)に示すように、回動軸部33L、33Rが、それぞれ鍵盤装置本体に対して回動自在に軸支される。第1のカム31は、回動軸部33Rに固定される。回動軸部33Rは回転操作部34Rに連結固定されて、回転操作部34Rの回転操作によって回転する。第2のカム32は、回動軸部33Lに固定される。回動軸部33Lは回転操作部34Lに連結固定されて、回転操作部34Lの回転操作によって回転する。回転操作部34L、33Rは、それぞれ、固定部17L、17Rの外側に配置され、手動操作が可能な位置に配置される。
回転操作部34Rの構成は、図2(b)に示した回転操作部34と同じであり、2つの締結穴36A、36Bが形成されている(図示せず)。一方、回転操作部34Lには締結穴36A、36Bに加えて締結穴36C、36Dが形成されている。締結穴36A〜36Dのいずれかを介して締結具35Lを固定部17Lの締結部に係合することで、その位置にて回転操作部34Lの回転方向の位置が規定・維持される。これにより、回動軸部33L、ひいては第2のカム32の回転方向の位置も規定・維持される。
かかる構成において、回転操作部34Lと回転操作部34Rとは別個に操作可能である。ピアノタッチ状態とオルガンタッチ状態との慣性力の切り替えについては、回転操作部34Rを用いる。図1、図2で説明した回転操作部34の回転操作と同じように回転操作部34Rを回転させることでハンマ体HMの位置を変位させて慣性力の切り替えが実現される。
一方、ピアノタッチ状態とオルガンタッチ状態との静荷重の切り替えについては、回転操作部34Lを用いる。回転操作部34Lには、4つの締結穴36A〜36Dが形成されているので、回転操作部34Lの回転位置を4段階で選択できる。従って、カウンタースプリング23の押圧部23aによる助成力が4段階で調節できる。ハンマ体HMの慣性力の有無は任意に選択できるので、結局、ハンマ体HMを有した鍵盤装置において、慣性力の有無にかかわらず、押鍵時の静荷重を容易に調節することが可能となる。
なお、この変形例では、カウンタースプリング23による助成力を段階的に調節可能としたが、回転操作部34Lを任意の回転位置で固定する手段を設ければ、無段階での調節も可能となる。
ところで、上記した各種の実施形態において、カウンタースプリング23によって鍵10の後端部10aが直接に押圧されるようにしてもよい。また、押圧される箇所は、鍵支点Pkより前側の部分であればよい。
一方、後端部10aに設けた摩擦部材12が押圧される構成において、摩擦部材12の形状は平坦に限られるものではない。図3(c)、(d)に摩擦部材12の変形例を示す。
例えば、図3(c)に示すように、鍵10の後方にいくにつれて上方に傾斜した傾斜面を有する摩擦部材12Aとしてもよい。この構成によると、押鍵行程において摩擦部材12Aの斜面を押圧部23aが登る方向に摺動する。従って、押離鍵行程におけるカウンタースプリング23による助成力の変化を非線形にすることが可能となる。
また、図3(d)に示すように、摩擦部材12Bに側面視V型の溝12aを形成し、カウンタースプリング23については、先端が押圧部23aであるとし、押圧部23aが溝12aに嵌入される構成としてもよい。これによれば、押離鍵行程における鍵10に対する押圧部23aの押圧位置が一定となる。これにより、助成力を正確に発揮させ、静荷重の設定精度を高めると共に、助成作用が長期間安定する。
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
Pk 鍵支点、 Ph ハンマ支点、 HM ハンマ体(押鍵反力発生手段)、 10 鍵、 20 リンク構体(回動体、調節手段)、 23 カウンタースプリング(弾性部材)、 30 カム機構部(調節手段)、 31 第1のカム、 32 第2のカム、 34 回転操作部(操作手段)、 35 締結具(維持手段)、 36B 締結穴(維持手段)、 42 ソレノイドスプリング(押鍵反力発生手段) 45 ソレノイドコイル(押鍵反力発生手段)

Claims (7)

  1. 各々の鍵支点を中心に押離鍵方向に回動する鍵と、
    前記鍵に対応して設けられ、各々対応する鍵に連動してハンマ支点を中心に回動して対応する鍵の回動動作に対して慣性を付与するハンマ体と、
    少なくとも前記ハンマ体の自重による復帰力を含む付勢力によって前記鍵を離鍵方向に付勢する押鍵反力発生手段と、
    前記鍵に対応し、且つ位置ないし姿勢が可変に設けられ、前記鍵における前記鍵支点よりも前側の部分を押鍵方向に付勢して押鍵力に対し助成力を与えることが可能な弾性部材と、
    前記弾性部材の位置ないし姿勢を変えることで前記弾性部材による助成力を調節する調節手段とを有することを特徴とする電子鍵盤装置。
  2. 前記ハンマ体を、少なくとも押鍵開始時において対応する鍵によって駆動されないような所定の回動位置に維持する維持手段を有することを特徴とする請求項1記載の電子鍵盤装置。
  3. 共通の操作により、前記ハンマ体を前記所定の回動位置まで回動させると同時に前記弾性部材の位置ないし姿勢を変化させて前記鍵への助成力を変化させるための操作手段を有することを特徴とする請求項2記載の電子鍵盤装置。
  4. 前記操作手段の前記共通の操作により、複数の鍵に対応するハンマ体が一斉に回動して回動位置が変化すると共に、前記複数の鍵に対応する弾性部材の位置ないし姿勢が一斉に変化することを特徴とする請求項3記載の電子鍵盤装置。
  5. 押鍵時の静荷重が、前記操作手段の前記共通の操作の前後で略一致することを特徴とする請求項3または4記載の電子鍵盤装置。
  6. 前記操作手段の前記共通の操作の後においては、前記弾性部材は、押離鍵の全行程において前記鍵と当接しない位置ないし姿勢に変位して前記鍵を全く付勢しない状態となることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の電子鍵盤装置。
  7. 前記操作手段の前記共通の操作によって一体に回動する第1のカムと第2のカムとを有し、前記弾性部材は回動体と一体に回動するように前記回動体に固定され、前記共通の操作によって、前記第1のカムが前記ハンマ体を押鍵方向に対応する方向に回動させて前記所定の回動位置まで回動させると共に、前記第2のカムが前記回動体を回動させて前記弾性部材の位置ないし姿勢を変化させることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の電子鍵盤装置。
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